(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067362
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】地図に基づくドライバ心理特性可視化システム及びドライバ心理特性可視化方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240510BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G01C21/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177374
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 高彰
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 章
(72)【発明者】
【氏名】村上 健祐
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 和真
(72)【発明者】
【氏名】相良 俊介
(72)【発明者】
【氏名】安富祖 瞬
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129DD34
2F129DD39
2F129EE02
2F129EE57
2F129EE77
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2F129FF11
2F129FF61
2F129HH12
5H181AA01
5H181BB04
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5H181FF05
5H181FF10
5H181FF22
5H181FF32
5H181FF40
5H181MB02
(57)【要約】
【課題】ドライバの心理特性を地図上に心理特性マップとして可視化するシステム及び方法を提供すること。
【解決手段】
複数のドライバそれぞれが運転する車両の移動履歴データを格納する第1のデータベースから、前記複数のドライバそれぞれが運転する車両の移動履歴データを取得し、前記複数のドライバそれぞれの心理特性を示すデータを格納する第2のデータベースから、前記複数のドライバの心理特性を示すデータを取得し、取得した前記移動履歴データ及び前記心理特性を示すデータに基づいて、心理特性マップを生成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のドライバそれぞれが運転する車両の移動履歴データを格納する第1のデータベースと、
前記複数のドライバそれぞれの心理特性を示すデータを格納する第2のデータベースと、
前記ドライバの心理特性を可視化する第1の機能ブロックと
を備えたシステムであって、
前記第1の機能ブロックは、
前記第1のデータベースから、前記複数のドライバそれぞれが運転する車両の移動履歴データを取得するとともに、
前記第2のデータベースから、前記複数のドライバそれぞれの心理特性を示すデータを取得し、
取得した前記移動履歴データ及び前記心理特性を示すデータに基づいて、心理特性マップを生成する、ドライバ心理特性可視化システム。
【請求項2】
前記第1の機能ブロックは、
予め、前記第1のデータベースから、前記心理特性マップのエリアを通過した全車両の移動履歴データを取得するとともに、前記第2のデータベースから、前記車両それぞれを運転するドライバの心理特性を示すデータを取得しておき、
前記取得した移動履歴データから所定期間分の通過車両それぞれの前記移動履歴データを抽出し、
前記エリアを所定の単位に分割し、
前記所定期間分の通過車両それぞれを運転するドライバの心理特性を示すデータに基づいて、前記移動履歴データを絞り込み、絞り込まれた前記移動履歴データに基づいて、前記所定の単位を通過した車両の数を前記所定の単位毎に集計し、
前記集計した値に基づいて前記所定の単位毎に濃淡をつけ、前記エリアの地図情報に前記所定の単位毎の濃淡を重畳して心理特性マップを生成する、請求項1に記載のドライバ心理特性可視化システム。
【請求項3】
前記第1の機能ブロックは、前記ドライバの心理特性を示すデータのうち所定の心理特性を示すデータを予め設定された閾値と比較することにより前記移動履歴データを絞り込む、請求項2に記載のドライバ心理特性可視化システム。
【請求項4】
前記ドライバへの働きかけを行う第2の機能ブロックをさらに備え、
前記第2の機能ブロックは、前記心理特性マップを用いて前記ドライバへの働きかけを行う、請求項2又は請求項3に記載のドライバ心理特性可視化システム。
【請求項5】
前記第2の機能ブロックは、外部データベースから、生成した前記心理特性マップと関連するデータを取得し、前記外部データベースから取得したデータに基づく表示を前記心理特性マップに重畳する、請求項4に記載のドライバ心理特性可視化システム。
【請求項6】
前記第2の機能ブロックは、前記エリアを通過した車両のドライバの心理特性を示すデータと類似する心理特性を示すデータを有する他のドライバが運転する車両が通過する他のエリアを特定し、当該他のエリアを通過するドライバに前記エリアに関連する所定の働きかけを行う請求項5に記載のドライバ心理特性可視化システム。
【請求項7】
前記第2の機能ブロックは、働きかけを行う対象のドライバに対する効果が期待できる行動変容指標毎に予め用意された文章を用いて前記対象のドライバへの働きかけを行う、請求項6に記載のドライバ心理特性可視化システム。
【請求項8】
複数のドライバそれぞれが運転する車両の移動履歴データを格納する第1のデータベースから、前記複数のドライバそれぞれが運転する車両の移動履歴データを取得するステップと、
前記複数のドライバそれぞれの心理特性を示すデータを格納する第2のデータベースから、前記複数のドライバの心理特性を示すデータを取得するステップと、
取得した前記移動履歴データ及び前記心理特性を示すデータに基づいて、心理特性マップを生成するステップと、
を備えるドライバ心理特性可視化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図に基づいてドライバの心理特性を可視化するシステム及びドライバの心理特性を可視化する方法に関し、特に、複数のドライバそれぞれが運転する車両の移動履歴データと複数のドライバそれぞれの心理特性を示すデータとに基づいて、地図上の心理特性マップを生成するドライバ心理特性可視化システム及びドライバ心理可視化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライバの心理特性を車両の運転支援に活用する技術としては、例えば、特許文献1の発明や非特許文献1の技術が知られている。
特許文献1の発明は、車両におけるドライバの心理特性を推定する技術に関し、特に、自車両のドライバが、その車両の周辺で走行中の他の車両のドライバの心理特性を認識し得るようにする技術に関する。
【0003】
非特許文献1の技術では、被験者であるドライバに対して、その運転特性をドライビングシミュレータにより取得するとともに、その心理特性をディグラム診断と呼ばれる心理テストにより把握し、取得した運転特性と把握した心理特性との関連性を分析している。その結果、心理特性を運転特性に適切に反映することで、マインドウェアを含めた運転支援システムが実現可能になると考えられると結論づけている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】吉田侑司、長谷川浩志、「自動車の運転特性と心理特性の関連性についての検討」、第26回設計光学・システム部門講演会講演論文集、日本機械学会、2016年10月8日~10日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明によれば、観測車両(自車両)から見て、その観測車両の周辺で走行中の被観測車両の運転信号・車両信号を取得できなくても、その被観測車両のドライバの心理特性を推定することができるようになるものの、推定した被観測車両のドライバの心理特性を具体的に観測車両のドライバの運転支援にどのように活用すればよいかについては何らの示唆も与えていない。
【0007】
また、非特許文献1は、心理特性を運転特性に反映した運転支援システムの実現可能性について言及しているが、実現可能性を抽象的に示唆するにとどまっており、心理特性を運転特性に適切に反映させる具体的な手法についての考察は行っていない。
【0008】
そこで、本発明は、複数のドライバそれぞれが運転する車両の移動履歴データと複数のドライバそれぞれの心理特性を示すデータとに基づいて、地図上の心理特性マップを生成することにより、生成した心理特性マップをユーザであるドライバの運転支援に活用することができるドライバ心理特性可視化システム及びドライバ心理可視化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るドライバ心理特性可視化システム(例えば、後述の「ドライバ心理特性可視化システム1」)は、複数のドライバそれぞれが運転する車両の移動履歴データを格納する第1のデータベース(例えば、後述の「CANデータベース1」)と、前記複数のドライバそれぞれの心理特性を示すデータを格納する第2のデータベース(例えば、後述の「心理特性データベース4」)と、前記ドライバの心理特性を可視化する第1の機能ブロック(例えば、後述の「可視化部6」)とを備えたシステムであって、前記第1の機能ブロックは、前記第1のデータベースから、前記複数のドライバそれぞれが運転する車両の移動履歴データ(例えば、後述の「GPSデータ」)を取得するとともに、前記第2のデータベースから、前記複数のドライバそれぞれの心理特性を示すデータを取得し、取得した前記移動履歴データ及び前記心理特性を示すデータに基づいて、心理特性マップを生成する。
【0010】
(2)また、前記(1)のドライバ心理特性可視化システムにおいて、前記第1の機能ブロックは、予め、前記第1のデータベースから、生成する前記心理特性マップのエリアを通過した全車両の移動履歴データを取得するとともに、前記第2のデータベースから、前記車両それぞれを運転するドライバの心理特性を示すデータを取得しておき、前記取得した移動履歴データから所定期間分の通過車両それぞれの前記移動履歴データを抽出し、前記エリアを所定の単位に分割し、前記所定期間分の通過車両それぞれを運転するドライバの心理特性を示すデータに基づいて、前記移動履歴データを絞り込み、絞り込まれた前記移動履歴データに基づいて、前記所定の単位を通過した車両の数を前記所定の単位毎に集計し、前記集計した値に基づいて前記所定の単位毎に濃淡をつけ、前記エリアの地図情報に前記所定の単位毎の濃淡を重畳して心理特性マップを生成する。
【0011】
(3)また、前記(2)のドライバ心理特性可視化システムにおいて、前記第1の機能ブロックは、前記ドライバの心理特性を示すデータのうち所定の心理特性を示すデータを予め設定された閾値と比較することにより前記移動履歴データを絞り込む。
【0012】
(4)また、前記(2)又は(3)のドライバ心理特性可視化システムにおいて、前記ドライバへの働きかけを行う第2の機能ブロックをさらに備え、前記第2の機能ブロックは、前記心理特性マップを用いて前記ドライバへの働きかけを行う。
【0013】
(5)また、前記(4)のドライバ心理特性可視化システムにおいて、前記第2の機能ブロックは、外部データベース(例えば、後述の「外部データベース8」)から、生成した前記心理特性マップと関連するデータを取得し、前記外部データベースから取得したデータに基づく表示を前記心理特性マップに重畳する。
【0014】
(6)また、前記(5)のドライバ心理特性可視化システムにおいて、前記第2の機能ブロックは、前記エリアを通過した車両のドライバの心理特性を示すデータと類似する心理特性を示すデータを有する他のドライバが運転する車両が通過する他のエリアを特定し、当該他のエリアを通過するドライバに前記エリアに関連する所定の働きかけ(例えば、所定のエリアが交通事故を起こしやすいエリアの場合は交通事故に関する通知、所定のエリアが観光地を含むエリアの場合は観光に関する推奨)を行う。
【0015】
(7)また、前記(6)のドライバ心理特性可視化システムにおいて、前記第2の機能ブロックは、働きかけを行う対象のドライバに対する効果が期待できる行動変容指標毎に予め用意された文章を用いて前記対象のドライバへの働きかけを行う。
【0016】
(8)さらに、本発明に係るドライバ心理特性可視化方法は、複数のドライバそれぞれが運転する車両の移動履歴データを格納する第1のデータベースから、前記複数の車両それぞれの移動履歴データを取得するステップと、前記複数のドライバそれぞれの心理特性を示すデータを格納する第2のデータベースから、前記複数のドライバの心理特性を示すデータを取得するステップと、取得した前記移動履歴データ及び前記心理特性を示すデータに基づいて、地図上の心理特性マップを生成するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ドライバ毎の心理特性データを用いて心理特性マップを生成して可視化することにより、例えば交通事故情報と組み合わせて活用した場合には、交通事故発生の背景理解からドライバへの働きかけまでの全体を一元的に効率よく行うことができるという格別の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態のドライバ心理特性可視化システムの構成例を示す図であり、また、心理特性マップを交通事故情報と組み合わせる活用例1のフローイメージを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態における心理特性マップの生成手順の説明図である。
【
図3】本発明の実施形態における生成された心理特性マップを特定の心理特性を有するドライバへの働きかけのために好適化する例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態における生成された心理特性マップを観光情報と組み合わせる活用例2のフローイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1に実施形態のドライバ心理特性可視化システムの構成例を示す。
(ドライバ心理特性可視化システム1)
図1に示すように、本発明の実施形態に係るドライバ心理特性可視化システム1は、複数の車両それぞれの移動履歴データを格納するCANデータベース2と、スマホサービス利用データベース3と、複数のドライバそれぞれの心理特性を示すデータを格納するドライバ毎の心理特性データベース4と、ドライバ毎に効果があると推定される複数の行動変容手法(指標)を格納する行動変容指標データベース5と、前記ドライバの心理特性を可視化処理する可視化部6と、前記可視化処理されたドライバの心理特性を表示する働きかけ部7とを備える。ここで、可視化部6と働きかけ部7は、同一サーバ上に実装される別々の機能ブロックであり、サーバのハードウェア資源を共有し、それぞれソフトウェアで実現されるものであってよい。
【0020】
(CANデータベース2)
「CAN(Controller Area Network)」とは、ドイツのボッシュ社が開発した通信プロトコルであり、データ収集のために自動車やファクトリーオートメーション(FA)等の分野で広く活用されている。
自動車分野の場合、現在市販されているほぼすべての自動車がCANを用いてデータを収集しており、収集するデータは、走行距離(オドメータ値)、速度(車速、車輪速度)、加速度(前後方向加速度、左右方向加速度)、角速度、エンジンのデータ(エンジン回転数)、走行に関するデータ(アクセルペダル操作量)、停止に関するデータ(ブレーキペダル操作量)、操舵に関するデータ(ステアリング操舵角)、ランプに関するデータ(ヘッドランプ状態、ターンランプスイッチ状態、ハザードランプスイッチ状態)、その他のデータ(アシスト機能の利用状況等)を含む。
【0021】
本発明では、前述の各データに、GPSから受信した車両の位置情報を所定のレートでサンプリングした移動履歴のデータ(以下「GPSデータ」という。)を加えたものを「CANデータ」という。CANデータベース2は、各車両のCANデータを、車両を特定する情報(車両ID)と対応付けて、所定の期間(例えば1年)分格納している。
【0022】
(スマホサービス利用データベース3)
本発明に係るスマホサービス利用データは、使用端末データ(色、メーカ、機種名、OS、購入/機種変更年月)、通信プランデータ(基本料金、データ容量、通話定額プラン契約有無、固定回線とのセット割の利用有無)、エンタメサービスに関するデータ(電子書籍系サービスの利用有無/サブスクor従量課金/月額利用料金、音楽系サービスの利用有無/サブスクor従量課金/月額利用料金、動画系サービスの利用有無/サブスクor従量課金/月額利用料金、ECサイトの利用有無/月額利用料金)、金融サービスに関するデータ(ネット銀行加入有無)、その他のデータ(新電力加入有無)、キャリア決済月額利用金額を含む。
スマホサービス利用データベース3は、ドライバ毎のスマホサービス利用データを、ドライバを特定する情報(ドライバID)と対応付けて格納している。
【0023】
(心理特性データベース4)
「心理特性」とは、その人の持つ考え方等の傾向をいう。本発明の実施形態では、心理学で用いられる「Big5」(詳細は後述する。)により定量化した人の性格や、同じく「対人反応性指標(IRI)」(詳細は後述する。)のような共感性指標により、ドライバの心理特性を推定(スコア化)し、前記指標のスコア化された値を心理特性データとして用いる。
心理特性データベース4は、ドライバ毎の心理特性データを、ドライバを特定する情報(ドライバID)と対応付けて格納している。
【0024】
「Big5」とは、人の性格を5つの軸(指標)で定量化したものである。ここで、5つの軸とは、知的好奇心(O:Openness)、誠実性(C:Conscientiousness)、外向性(E:Extraversion)、協調性(A:Agreeableness)及び情緒不安定性(N:Neuroticism)であり、例えば、これら5つの指標を軸とする五角形のレーダーチャートを用いて人の性格を表す等により、広告、金融、人事等、様々なサービスでの活用が進んでいる。
【0025】
「対人反応性指標(IRI:Interpersonal Reactivity Index)」とは、個人の社会生活を支える能力である共感の特性(共感性)を多角的に測定する共感性指標の一種であり、以下の4つの指標が定められている。
第一の指標は、共感的関心(EC:Empathic concern)であり、同情などの他者指向性感情の想起されやすさ、すなわち、他者に温かい気持ちを抱いたり、共感したり、心配したりする傾向である。第二の指標は、視点取得(PT:Perspective Taking)であり、他者の視点に立って気持ちを考える程度、すなわち、他者の視点を受け入れる傾向である。第三の指標は、個人的苦痛(PD:Personal Distress)であり、他者の苦痛の観察による自己不安の程度、すなわち、他者の感情に反応して自分が落ち着かなくなったり、不安になったりする傾向である。第四の指標は、想像性(FS:Fantasy Scale)であり、フィクションの登場人物に自分を置き換える程度、すなわち、架空の人物の気持ちや行動を想像上で経験する傾向である。
【0026】
本発明の実施形態では、ドライバの心理特性と、後述するドライバ毎に効果のある複数の行動変容手法(指標)を総称して「ドライバ特性」という。
図1に示しているように、本発明の実施形態では、CANデータベース2に格納されたドライバ毎のCANデータとスマホサービス利用データベース3に格納されたドライバ毎のスマホサービス利用データから、ドライバ特性(ドライバ毎の心理特性データ及び行動変容指標)を理解(推定)するための技術(以下「ドライバ理解技術」という。)を用いてドライバ特性を推定することができる。
【0027】
ここで、ドライバ理解技術として、例えば、運転場面毎に前記CANデータを分類した後、運転習慣、運転操作に分けて特徴量を作成し、機械学習(AI)で推定モデルを構築し、当該推定モデルを用いてドライバ特性を推定するようにしてもよい。また、CANデータだけでなく、スマホサービス利用データを用いてもよい。例えば、サブスク等の新しいサービスを利用する人は知的好奇心が高い傾向にあるため、Big5の知的好奇心(O)軸の値が大きい傾向にある可能性がある。
ただし、ドライバ特性は、必ずしもドライバ理解技術を用いて推定しなければならないわけではなく、例えば、ドライバに対してアンケートを実施し、その回答を分析することによって推定してもよい。
【0028】
(行動変容指標データベース5)
「行動変容」とは、ユーザの目標達成を実現するために、コミュニケーションを通じて心理的にユーザに介入することによって、目標達成に向けて必要なユーザの行動や態度を形成し、変化させ又は強化することをいう。また、本発明では、行動変容を起こさせる技術全体を総称して「行動変容技術」といい、行動変容を起こさせる個別の手法(心理的介入手段)を「行動変容手法」といい、複数ある行動変容手法のうちの一つ一つを指す場合「行動変容指標」という。
【0029】
行動変容手法には、「説得」や「ナッジ」がある。なお、「ナッジ」とは、行動科学の知見から、目標達成に向けて望ましい行動や態度をとれるようユーザを後押しするアプローチのことである。
「説得」には、提示する情報の魅力度に基づく心理的効果を狙った説得や、アメリカの心理学者ロバート・B・チャルディーニが提唱した「説得力の6原則」のそれぞれに基づく説得といった行動変容指標がある。なお、チャルディーニの「説得力の6原則」とは、希少性、返報性、権威、コミットメントと一貫性、社会的証明及び好意である。
さらに、「ナッジ」には、インセンティブ付与やフィードバック付与といった行動変容指標がある。
本発明の実施形態で用いる13種類の行動変容指標は表1のとおりである。
【0030】
【0031】
本発明の実施形態では、行動変容指標データベース5に格納されたドライバ毎に効果のある行動変容指標のデータから、ドライバへの働きかけを行う際の「行動指針」を決定する。ここで、「行動指針」とは、ドライバに納得して行動してもらえるように説得する際の枠組み(フレームワーク)をいう。なお、本発明では、心理学で使われている行動変容のフレームワークを用いている。
【0032】
例えば、行動変容指標8(説得/チャルディーニの6原則の権威)の値が高いドライバは、権威のある人の発言に従いやすい傾向があるので、当該ドライバに働きかける際の行動指針は、権威のある人の発言を引用しての説得をメインにするとよい。また、行動変容指標1(説得/情報の魅力度)の値が高いドライバは、情報の魅力度に魅かれやすい傾向があるので、当該ドライバに働きかける際の行動指針は、魅力度の高い情報を提示しての説得をメインにするとよい。
なお、ドライバへの働きかけについての詳細は後述する。
【0033】
(可視化部6)
可視化部6は、予め、CANデータベース2から、所定の期間(例えば数か月)に心理特性マップを生成するエリアを通過した全車両の移動履歴データ(CANデータのGPSデータ)を取得するとともに、心理特性データベース4から、前記車両それぞれを運転するドライバの心理特性を示すデータを取得しておく。
そして、取得した前記データから、所定の期間(例えば1日)分の通過車両それぞれのGPSデータを抽出する。そして、抽出した前記移動履歴データ及び当該移動履歴データに対応する車両を運転するドライバの心理特性を示すデータに基づいて、地図上の心理特性マップを生成する。
【0034】
なお、心理特性マップを生成するエリアは、道路単位で分割してもよいし、所定の大きさのメッシュ単位で分割してもよいし、住居表示区画(丁目、番地等)単位で分割してもよい。以下では、メッシュ単位で分割した例を説明する。
【0035】
図2を用いて、本発明の実施形態における心理特性マップの生成手順を説明する。
まず、可視化部6は、CANデータベース2から、過去数か月の間に心理特性マップを生成するエリアを通過した全車両のGPSデータ(移動経路)を取得するとともに、心理特性データベース4から、前記車両それぞれを運転するドライバの心理特性データを取得しておく。そして、取得した前記データから、1日分の通過車両それぞれのGPSデータを抽出する。
図2(A)は、それぞれ破線、点線、一点鎖線及び二点鎖線で表す4台の通過車両の移動経路が抽出された例を示している。なお、
図2(A)では、移動経路以外の地図情報の表示を省略している。
【0036】
次に、可視化部6は、
図2(A)に示すように、心理特性マップを生成するエリアを所定の大きさ(例えば250m×250m)のメッシュに分割する。
次に、可視化部6は、
図2(B)に示すように、前記4台の車両それぞれを運転するドライバの心理特性データに基づいて前記GPSデータを絞り込む。
図2(B)の例では、Big5の協調性(A)が高いドライバが運転する車両のGPSデータのみに絞り込み、その結果、4台のうち1台の車両の移動経路が除外されたことを示している。
【0037】
次に、絞り込まれた前記GPSデータに基づいて、各メッシュを通過した車両の数をメッシュ毎に集計する。
図2(C)の各メッシュには、通過車両の数を表す数値を示している。
次に、前記集計した値に基づいて各メッシュに濃淡をつける。
図2(C)の例では、集計した値が大きいメッシュほど色を濃くしている(ハッチングの細かさを変えて濃淡を表現している。)。
最後に、地図情報に、前記濃淡をつけたメッシュを重畳したものを心理特性マップとして生成する(
図2(D)参照。)。
【0038】
前述した例では、Big5の協調性(A)軸のドライバの心理特性を用い、協調性(A)が高いドライバが運転する車両のGPSデータのみに絞り込んで心理特性マップを作成しているが、逆に協調性(A)が低いドライバが運転する車両のGPSデータのみに絞り込んでもよい。
同様に、協調性(A)以外の指標(例えば、Big5の情緒不安定性(N))が高い/低いドライバが運転する車両のGPSデータのみに絞り込んだ場合の心理特性マップも、指標毎に生成しておくとよい。
【0039】
例えば、後述する、交通事故情報と組み合わせて心理特性マップを活用する例の場合、(現時点では未だ仮説の域であるが)Big5の誠実性(C)が低いドライバや、IRIが低い(共感性が低い)ドライバが運転する車両の通過が多いエリアで事故が起きやすい可能性があるので、これらの指標も用いて心理特性マップを生成するとよい。
また、複数の心理特性の指標を組み合わせて(例えば、協調性(A):高+情緒不安定性(N):高など)GPSデータを絞り込んで心理特性マップを作成してもよい。
【0040】
さらに、GPSデータを抽出する所定の期間を、特定の1日ではなく、例えば、平日/休日としてもよい。また、特定の1日の心理特性マップを、朝/昼/晩の別に絞り込んだ場合のそれぞれの心理特性マップを生成しておき、切り替えられるようにしてもよい。
【0041】
このように、種々の心理特性の指標を単独で又は組み合わせて用いて心理特性マップを生成したり、GPSデータを抽出する所定の期間を切り替えることで、例えば、交通事故発生の背景を理解することができるようになったり、潜在的な事故発生エリアを推定することができるようになる。この活用例の詳細は後述する。
【0042】
(働きかけ部7)
働きかけ部7は、ドライバ心理特性可視化システム1外のオープンデータ/他社データを格納したデータベース(
図1の外部データベース8)にアクセスして、生成した心理特性マップと組み合わせて表示することが効果的と考えられるデータを取得し、取得したデータに基づいて可視化部6が生成した心理特性マップに表示を加える。また、働きかけ部7は、表示を加えた心理特性マップを用いてドライバへの働きかけを行う。
以下、心理特性マップを交通事故情報と組み合わせる活用例(活用例1)を説明する。
【0043】
(心理特性マップを交通事故情報と組み合わせる活用例1)
働きかけ部7は、例えば警察庁が公開している交通事故統計情報を格納した外部データベース8から、交通事故情報のオープンデータにアクセスし、発生地点が作成した心理特性マップのエリアに含まれる交通事故データを抽出し、抽出した交通事故データの発生地点(緯度、経度)情報に基づいて、心理特性マップ上の当該地点にピンマークを重畳・表示する。なお、
図2(D)は、可視化部6が生成した心理特性マップに、過去数か月間の交通事故発生地点を示すピンマークを重畳・表示した例を示している。
【0044】
(交通事故発生の背景理解)
図1は、心理特性マップを交通事故情報と組み合わせることによって、交通事故発生の背景理解に活用する活用例1のフローイメージを示している。
働きかけ部7は、可視化部6が生成した複数の心理特性マップのそれぞれに、交通事故データの交通事故発生地点情報に基づいて、ピンマークを重畳・表示する。
そして、その中に、ピンマークの分布と濃淡が比較的濃いメッシュの分布が比較的一致する心理特性マップがあった場合、当該心理特性マップから、以下に説明する推定アルゴリズムにより、交通事故発生の背景を理解することができる。
【0045】
例えば、協調性(A):低の指標を用いて生成した心理特性マップにおいて、他の指標を用いて生成した心理特性マップと比べて、主要道路が存在するメッシュの濃淡にはあまり差がないが、幅が細い抜け道が存在するメッシュの濃淡が明らかに濃く(協調性(A)が低いドライバの通行が比較的多い傾向が把握され)、かつ当該メッシュにピンマークがある場合、事故の背景として、抜け道を利用したがる協調性(A)が低いドライバの存在を推定することができる。
さらに、ピンマークがないメッシュであっても、濃淡が濃く抜け道の存在するメッシュは、協調性(A):低の心理特性を有するドライバにとっての潜在的な事故発生危険エリアであると推定することができる。
【0046】
このように、交通事故の発生地点に該当するメッシュの濃淡を複数の心理特性マップの間で比較し、当該メッシュ内の道路の特徴も合わせて分析することによって、交通事故発生の背景を理解するとともに、どのような心理特性を有するドライバにとって当該メッシュのエリアが事故発生リスクのあるエリアであるかを推定することができる。
むろん、このような推定が的外れである可能性もあるので、結果からのフィードバックを行うとよい。例えば、ある推定アルゴリズムに基づいて背景を理解し、後述するドライバへの働きかけを行っても効果がない(事故が減らない)場合は、推定が的外れであったと判断し、他の推定アルゴリズムを試すようにしてもよい。
【0047】
例えば、上の例では、交通事故データ及びメッシュ内の道路の特徴も合わせて分析して事故発生可能性を推定するアルゴリズムを用いたが、エリアを通過するドライバの心理特性の傾向のみを用いて推定してもよい。例えば、メッシュ毎の通過車両を運転するドライバの心理特性傾向(全通過車両のうち、知的好奇心(O):高のドライバが運転する車両が○%、協調性(A):低のドライバが運転する車両が△%・・・)からメッシュ毎に事故発生可能性を推定して事故が起きやすいメッシュを特定するようにしてもよい。
【0048】
(ドライバへの働きかけ)
交通事故発生の背景を理解することができ、特定の心理特性を有するドライバにとっての事故発生リスクエリアを推定することができた場合、働きかけ部7は、当該心理特性を有するドライバへの働きかけを行う。
働きかけは、行動変容指標データベース5から、働きかけを行いたいドライバに対して効果があると考えられる行動変容手法(指標)を取得し、取得した行動変容指標に基づいて働きかけの内容を好適化する。
【0049】
図3は、本発明の実施形態における生成された心理特性マップを特定の心理特性を有するドライバへの働きかけのために好適化する例を示す図である。
図3(A)は、例えば、協調性(A):高と情緒不安定性:高の心理特性の指標を組み合わせて生成した心理特性マップであり、好適化する前の心理特性マップを表す。
ここで、心理特性データベース4から取得した働きかけを行いたいドライバ(対象ドライバ)の心理特性が情緒不安定性:高であり、かつ、行動変容指標データベース5から取得した対象ドライバに対して効果があると考えられる行動変容指標データが、行動変容指標2(説得/結論の明示):高であったとする。この場合、対象ドライバに働きかける際の行動指針は、結論を明示した説得をメインにするとよいので、
図3(A)の心理特性マップから、対象ドライバの心理特性である情緒不安定性:高のメッシュの濃淡を残し、協調性(A):高のメッシュの濃淡を消去して、
図3(B)に示す対象ドライバ向けに好適化された心理特性マップを作成する。
【0050】
そして、働きかけ部7は、前述のようにして作成した好適化された心理特性マップを、対象ドライバが所有する携帯端末に対して、例えば、「濃い色のエリアは事故発生リスクのあるエリアですので、気を付けて運転してください。」のように、結論を明示したメッセージとともに送信することにより働きかけを行う。
あるいは、前記携帯端末にインストールされたマップ/ナビゲーションアプリや、対象ドライバが運転する車両の車載端末(カーナビゲーションシステム)と連携して、対象ドライバが運転する車両が濃いメッシュのエリアに進入するときに、「これより事故発生リスクのあるエリアに入りますので、気を付けて運転してください。」等の音声通知を行ってもよい。
【0051】
なお、対象ドライバへの働きかけの手法としては、上の例以外にも、例えば、事故発生リスクのあるエリアへの進入地点に看板設置を設置する等が考えられる。
これらの例では、携帯端末の画面上に表示、アプリと連携して音声で通知、あるいは、看板に表示するメッセージ(通知文章)が必要となるが、予め行動変容指標毎の通知文章を格納したデータベースを作成しておき、当該データベースにアクセスして取得した通知文章を用いるようにするとよい。
【0052】
本発明の実施形態では、働きかけ部7は、行動変容指標毎(心理的効果毎)の通知文章を格納したデータベース9にアクセスして、前記携帯端末又はカーナビゲーションシステムに表示又は音声案内する際に用いる文章や、設置する看板に表示する文章を取得する。
行動変容指標毎の通知文章のデータベース9は、前述した13種類の行動変容指標/心理的効果毎に、ドライバの心理状況に影響しやすい通知文章を格納している。なお、心理的効果に基づく通知文章は、例えば、複数の候補文章を作成し、ドライバへのアンケート結果によりドライバの心理状況に影響を与えることが確認された候補を実際の通知文章として採用するようにしてもよい。
【0053】
また、データベース9から取得した通知文章を用いて対象ドライバへ働きかけを行う前後のエリアの事故発生件数に有意な差があるかどうかを基準として行動変容指標の効果があったかどうかを確認し、フィードバックを行うとよい。効果がない場合のフィードバックの手法はいくつか考えられるが、例えば、データベース5にはドライバ毎に複数の行動変容指標が格納されているので、他の行動変容指標に切り替えることが考えられる。また、ドライバ理解技術における行動変容手法(指標)を推定するための推定モデルを更新するきっかけにすることも考えられる。
【0054】
以上説明したように、実施形態のドライバ心理特性可視化システムにおいては、ドライバ毎の心理特性データを用いて心理特性マップを生成して可視化することにより、例えば交通事故情報と組み合わせて活用した場合には、交通事故発生の背景理解からドライバへの働きかけまでの全体を一元的に行うことができるという格別の効果を奏する。
【0055】
(心理特性マップを観光情報と組み合わせる活用例2)
次に、心理特性マップの他の活用例として、観光情報と組み合わせる活用例2について説明する。
図4は、本発明の実施形態において生成された心理特性マップを観光情報と組み合わせる活用例2のフローイメージを示す図である。同図から看取されるように、ドライバ心理特性可視化システム1の構成は活用例1のものと特に違いはないが、用いるデータとフローにいくつかの違いがある。以下の説明は、活用例1との違いに焦点を当てて行うこととする。すなわち、煩瑣となることを避けるために、活用例1と同様である点については改めて説明しない。
【0056】
活用例2では、まず、心理特性マップを生成するエリアを、原則として都道府県とする。ただし、北海道のように面積が広い都道府県については、例えば、道北/道東/道央/道南のように分割した地域のうちの一つの地域をエリアとしてもよい。また、例えば、富士・箱根・伊豆エリアのように、複数の県をまたぐエリアが一つの観光エリアとして多くの観光客に認知されている場合は、当該観光エリアの心理特性マップを生成するようにしてもよい。そして、前記エリアを、道路単位、メッシュ単位又は行政区画(市町村等)単位で分割して心理特性マップを作成する。
【0057】
なお、観光情報を組み合わせる活用例2の場合、住居表示区画(丁目、番地等)単位での分割では細かすぎるので、代わりに行政区画(市町村等)単位を用いるとよい。また、メッシュ単位で分割するときは、メッシュの大きさを活用例1の場合よりも大きく(例えば5km×5kmに)することが好適である。さらに、GPSデータを抽出する所定の期間については、特定の1日とするよりは、平日/休日とすることが好適である。
【0058】
また、活用例1では、所定の期間のGPSデータを用いてメッシュを通過した車両を集計したが、活用例2では、観光地を訪問した車両を集計したいので、一定時間以上メッシュ内に留まっていた車両のみを集計する。例えば、GPSデータから、同一メッシュ内で一定時間(例えば30分)以上位置が変化しなかったと判定された(駐車していたと推定された)車両のみを集計するようにしてもよい。
【0059】
さらに、活用例2では、オープンデータ/他社データを格納した外部データベース8から、観光情報を取得して心理特性マップに組み合わせる。ここで、取得する観光情報は、少なくとも観光地の位置を示す情報(以下「観光地位置情報」という。)を含む。そして、活用例1では、交通事故発生地点にピンマークを重畳・表示したが、活用例2では、これに替えて、観光地の位置にピンマークを重畳・表示するようにする。
【0060】
(観光地訪問者の背景理解)
活用例2では、外部データベースから取得した観光情報と組み合わせて心理特性マップを生成したら、観光地訪問者の背景理解を行う。例えば、休日に観光地のメッシュ(観光地の位置を示すピンマークが立っているメッシュ)を訪れた車両を運転するドライバの心理特性の傾向(例えば、知的好奇心(O):高かつ外向性(E):低のドライバが○%、知的好奇心(O):高かつ外向性(E):高のドライバが△%・・・)を把握する。
【0061】
その結果、例えば、あるメッシュに博物館が立地しており、かつ、休日に当該メッシュを訪れた車両を運転するドライバの心理特性の傾向として、知的好奇心(O):高かつ外向性(E):低が最も多かったとする。この場合、知的好奇心(O):高かつ外向性(E):低の人は博物館のような観光地を好み、他の博物館が立地しているメッシュでも、休日に当該メッシュを訪問する車両のドライバは、知的好奇心(O):高かつ外向性(E):低の人が多いのではないかと推定される。
このように、すべての観光地のメッシュについて、訪問したドライバの心理特性を把握し、可能な限り、観光地訪問者の背景理解を行うようにする。
【0062】
(ドライバへの働きかけ)
次に、働きかけ部7は、観光地のメッシュを訪問したドライバの心理特性の傾向に基づいて、ドライバへの働きかけを行う。
例えば、美術館が立地しているメッシュを休日に訪れた車両を運転するドライバの心理特性の傾向と、博物館が立地しているメッシュを訪れた車両を運転するドライバの心理特性の傾向とが似ていることが分かったとする。この場合、後者のドライバのマジョリティである知的好奇心(O):高かつ外向性(E):低のドライバ(対象ドライバ)に対して、美術館が立地しているメッシュ(観光地)への訪問を推奨することが考えられる。そして、対象ドライバ向けに好適化した心理特性マップ(例えば、「休日お出かけマップ」と名付ける。)には、博物館を示すピンマークに加えて、心理特性の傾向が博物館に類似する他の施設(例えば美術館)を示すピンマークを重畳・表示するようにする。
【0063】
また、上述の推奨を行う前に、働きかけ部7は、行動変容指標データベース5から、博物館が立地しているメッシュを訪問した複数の車両を運転するそれぞれのドライバに効果があると推定された複数の行動変容手法(指標)を収集し、それらの中に頻出する行動変容指標があるかどうかを分析する。そして、頻出する行動変容指標がある場合は、働きかけ部7は、推奨文章データベース9から、当該行動変容指標に対応する推奨文を取得し、取得した推奨文を用いて働きかけを行うようにする。
【0064】
また、前述した好適化した休日お出かけマップを対象ドライバの携帯端末や連携アプリに対して送信する際に、一緒にモデルドライブコースやモデル旅行日程を送信して提案するようにしてもよい。
さらに、エリアA(例えば、都道府県A)の観光地Aの訪問者に対し、エリアA全体の訪問者の心理特性の傾向と類似する心理特性の傾向を有するエリアB(例えば、都道府県B)の観光地Bを推奨してもよい。その際、エリアAの訪問者に効果のある行動変容指標に対応した推奨文を用いて働きかけを行うとよい。
【0065】
また、活用例2でも、フィードバックを行うとよいが、その場合、対象ドライバへ働きかけを行う前後の観光地の訪問者数に有意な差があるかどうかを基準として行動変容指標の効果があったかどうかの確認を行なえばよい。
また、活用例1と同様に、活用例2においても、観光地訪問者の背景理解からドライバへの働きかけまでの全体を一元的に効率よく行うことができるという格別の効果を奏する。
【0066】
本発明は、前述した実施形態以外にも種々の変形例が考えられ、これら変形例も本発明の一部である。
例えば、前述した実施形態では、可視化部6と働きかけ部7が同一サーバ上に実装される別々の機能ブロックであるとして説明したが、これらを別々のサーバ上に実装することもできる。
【0067】
なお、本発明により、例えば、ドライバが、好適化された心理特性マップとエリアに合った行動変容指標の通知文の提供を受けられ、これにより安心安全に車両を運転できるようになることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標11-2「2030年までに、女性や子ども、障害のある人、お年寄りなど、弱い立場にある人びとが必要としていることを特によく考え、公共の交通手段を広げるなどして、すべての人が、安い値段で、安全に、持続可能な交通手段を使えるようにする」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0068】
1 ドライバ心理特性可視化システム
2 CANデータベース
3 スマホサービス利用データベース
4 心理特性データベース
5 行動変容指標データベース
6 可視化部
7 働きかけ部
8 オープンデータ/他社データを格納した外部データベース
9 通知又は推奨文章データベース