(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067377
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】セルコントローラ
(51)【国際特許分類】
G05B 19/18 20060101AFI20240510BHJP
G05B 19/05 20060101ALN20240510BHJP
【FI】
G05B19/18 X
G05B19/05 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177408
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀井 慎平
【テーマコード(参考)】
3C269
5H220
【Fターム(参考)】
3C269AB01
3C269AB33
3C269BB10
3C269BB12
3C269PP05
3C269QE23
3C269QE37
5H220BB09
5H220BB12
5H220BB15
5H220CC09
5H220CX09
5H220DD04
5H220JJ12
5H220KK06
5H220MM06
(57)【要約】
【課題】加工セルが異常停止した際に、オペレータが当該加工セルを容易に復旧できるセルコントローラを提供する。
【解決手段】セルコントローラ10は、複数の作業リソースを含む加工セル70を制御する。複数の作業リソースは、1以上の加工機72と、1以上のロボット74と、を含む。セルコントローラ10は、PLC30と、管理装置20と、を含み、前記PLC30は、前記管理装置20からの指示に従って、前記複数の作業リソースの動作を制御するとともに、前記複数の作業リソースとワーク100を含む複数の作業要素の状態を取得する。前記管理装置20は、前記加工セル70の異常停止が発生した場合、前記複数の作業要素それぞれの復旧可能状態を特定し、前記複数の作業要素それぞれを前記復旧可能状態に遷移させるための復旧手順のガイドをオペレータに提示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業リソースを含む加工セルを制御するセルコントローラであって、
前記複数の作業リソースは、1以上の加工機と、1以上のロボットと、を含み、
前記セルコントローラは、PLCと、管理装置と、を含み、
前記PLCは、前記管理装置からの指示に従って、前記複数の作業リソースの動作を制御するとともに、前記複数の作業リソースとワークを含む複数の作業要素の状態を取得し、
前記管理装置は、前記加工セルの異常停止が発生した場合、前記複数の作業要素それぞれの復旧可能状態を特定し、前記複数の作業要素それぞれを前記復旧可能状態に遷移させるための復旧手順のガイドをオペレータに提示する、
ことを特徴とするセルコントローラ。
【請求項2】
請求項1に記載のセルコントローラであって、
前記管理装置は、
前記複数の作業要素それぞれの前記復旧可能状態をアラーム種類ごとに記録した復旧条件情報と、前記複数の作業要素それぞれの前記復旧手順を前記復旧可能状態ごとに記録した遷移情報と、を予め記憶しており、
前記復旧条件情報に基づいて、前記複数の作業要素それぞれの前記復旧可能状態を特定し、
前記遷移情報に基づいて、前記復旧手順を特定する、
ことを特徴とするセルコントローラ。
【請求項3】
請求項1に記載のセルコントローラであって、
前記管理装置は、前記作業要素に応じて、前記ガイドを提示するUI装置を変更する、ことを特徴とするセルコントローラ。
【請求項4】
請求項3に記載のセルコントローラであって、
前記加工セルは、前記ロボットを取り囲む安全柵を有し、
前記管理装置は、前記安全柵の外側に設けられた第一UI装置を有し、
前記セルコントローラは、さらに、前記ロボットをマニュアル操作可能であり、可搬型の第二UI装置を有しており、
前記管理装置は、前記加工機に関する前記ガイドを、前記第一UI装置を介して前記オペレータに提示し、前記ロボットに関する前記ガイドを、前記第二UI装置を介して前記オペレータに提示する、
ことを特徴とするセルコントローラ。
【請求項5】
請求項1に記載のセルコントローラであって、
前記管理装置は、前記作業要素に応じて、前記復旧手順で前記オペレータに操作させるUI装置を変更する、ことを特徴とするセルコントローラ。
【請求項6】
請求項5に記載のセルコントローラであって、
前記加工機は、NC操作盤を有しており、
前記セルコントローラは、さらに、前記ロボットをマニュアル操作可能で、可搬型の第二UI装置を有しており、
前記加工機に関する前記復旧手順は、前記NC操作盤の操作を含み、
前記ロボットに関する前記復旧手順は、前記第二UI装置の操作を含む、
ことを特徴とするセルコントローラ。
【請求項7】
請求項1に記載のセルコントローラであって、
前記加工機は、NC操作盤を含み、
前記管理装置は、第一UI装置を有しており、
前記加工機に関する前記復旧手順は、前記NC操作盤への操作を含み、
前記管理装置は、前記加工機に関する前記ガイドを前記第一UI装置を介して前記オペレータに提示する、
ことを特徴とするセルコントローラ。
【請求項8】
請求項1に記載のセルコントローラであって、
前記ワークに関する前記復旧手順は、前記ワークの移動と、前記ワークの移動後位置の入力操作を含み、
前記管理装置は、前記オペレータから入力された前記移動後位置を前記PLCに登録する、
ことを特徴とするセルコントローラ。
【請求項9】
請求項1に記載のセルコントローラであって、
前記管理装置は、前記ロボットに関する前記復旧手順の完了後に、前記ワークに関する前記ガイドを前記オペレータに提示する、
ことを特徴とするセルコントローラ。
【請求項10】
複数の作業リソースを含む加工セルを制御するセルコントローラであって、
前記複数の作業リソースは、1以上の加工機と、1以上のロボットと、を含み、
前記セルコントローラは、プロセッサと、メモリと、1以上のUI装置と、を含み、
前記プロセッサは、
前記複数の作業リソースの動作を制御するとともに、前記複数の作業リソースとワークを含む複数の作業要素の状態を取得し、
前記加工セルの異常停止が発生した場合、前記複数の作業要素それぞれの復旧可能状態を特定し、
前記複数の作業要素それぞれを前記復旧可能状態に遷移させるための手順である復旧手順のガイドを、前記1以上のUI装置を介してオペレータに提示する、
ように構成されている、ことを特徴とするセルコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、複数の作業リソースを有する加工セルを制御するセルコントローラを開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の作業リソース、例えば、加工機やロボット等を有する加工セルが知られている(例えば特許文献1等)。かかる加工セルを用いれば、ワークの搬送や、取り付け、機械加工、後工程等を、連続して自動実行できる。こうした加工セルは、セルコントローラにより制御される。セルコントローラは、加工セルを構成する複数の作業リソースに対して、生産したい物品の品目に応じた指令を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした加工セルは、様々な要因で異常停止することがある。従来、異常停止が発生した場合、復旧のために必要な作業内容を、オペレータが判断していた。すなわち、異常停止が発生した場合、オペレータは、アラームの内容、および、加工セルに関係する複数の作業要素(例えば加工機やワーク等)の状態を把握する。そして、オペレータは、把握した情報に基づいて、復旧のために必要な作業を特定し、実行する。
【0005】
しかし、作業要素の状態を収集して、復旧作業を特定するために、十分な知識や経験が必要であった。特に、セルコントローラの構成によっては、復旧のために、PLCを直接操作しなければならない場合があった。この場合、PLC言語を熟知した担当者が必要となるため、オペレータが加工セルを容易に復旧できない場合があった。
【0006】
そこで、本明細書では、加工セルが異常停止した際に、オペレータが当該加工セルを容易に復旧できるセルコントローラを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示するセルコントローラは、複数の作業リソースを含む加工セルを制御する前記セルコントローラであって、前記複数の作業リソースは、1以上の加工機と、1以上のロボットと、を含み、セルコントローラは、PLCと、管理装置と、を含み、前記PLCは、前記管理装置からの指示に従って、前記複数の作業リソースの動作を制御するとともに、前記複数の作業リソースとワークを含む複数の作業要素の状態を取得し、前記管理装置は、前記加工セルの異常停止が発生した場合、前記複数の作業要素それぞれの復旧可能状態を特定し、前記複数の作業要素それぞれを前記復旧可能状態に遷移させるための復旧手順のガイドをオペレータに提示する、ことを特徴とする。
【0008】
セルコントローラが、復旧手順を判断してオペレータにガイドを提示することで、オペレータの知識や経験が乏しくても、加工セルを適正に復旧できる。
【0009】
この場合、前記管理装置は、前記複数の作業要素それぞれの前記復旧可能状態をアラーム種類ごとに記録した復旧条件情報と、前記複数の作業要素それぞれの前記復旧手順を前記復旧可能状態ごとに記録した遷移情報と、を予め記憶しており、前記復旧条件情報に基づいて、前記複数の作業要素それぞれの前記復旧可能状態を特定し、前記遷移情報に基づいて、前記復旧手順を特定してもよい。
【0010】
かかる構成とすることで、簡易、かつ、適切に、復旧手順を特定できる。
【0011】
また、前記管理装置は、前記作業要素に応じて、前記ガイドを提示するUI装置を変更してもよい。
【0012】
復旧手順の具体的内容は、作業要素によって異なる。こうした復旧手順の違いを考慮して、復旧手順を提示するUI装置を変更することで、オペレータが復旧手順をより簡易に実行できる。
【0013】
この場合、前記加工セルは、前記ロボットを取り囲む安全柵を有し、前記管理装置は、前記安全柵の外側に設けられた第一UI装置を有し、前記セルコントローラは、さらに、前記ロボットをマニュアル操作可能であり、可搬型の第二UI装置を有しており、前記管理装置は、前記加工機に関する前記ガイドを、前記第一UI装置を介して前記オペレータに提示し、前記ロボットに関する前記ガイドを、前記第二UI装置を介して前記オペレータに提示してもよい。
【0014】
ロボットの復旧手順は、安全柵の内側で行われることが多い。そのため、上記の構成とすることで、オペレータは、復旧手順を行う場所の近くで、ガイドを確認できる。結果として、オペレータは、復旧手順を容易に実行できる。
【0015】
また、前記管理装置は、前記作業要素に応じて、前記復旧手順で前記オペレータに操作させるUI装置を変更してもよい。
【0016】
作業要素の特性に応じて、前記オペレータに操作させるUI装置を変更することで、オペレータの作業性が向上する。
【0017】
この場合、前記加工機は、NC操作盤を有しており、前記セルコントローラは、さらに、前記ロボットをマニュアル操作可能で、可搬型の第二UI装置を有しており、前記加工機に関する前記復旧手順は、前記NC操作盤の操作を含み、前記ロボットに関する前記復旧手順は、前記第二UI装置の操作を含んでもよい。
【0018】
多くのオペレータは、NC操作盤で加工機を操作することに慣れている。また、可搬型の第二UI装置を用いれば、オペレータは、ロボットの近傍において、ロボットの姿勢を目視で確認しながら、ロボットを操作できる。したがって、上記の構成とすることで、オペレータは、加工機およびロボットを簡易に復旧可能状態に遷移させることができる。
【0019】
また、前記加工機は、NC操作盤を含み、前記管理装置は、第一UI装置を有しており、前記加工機に関する前記復旧手順は、前記NC操作盤への操作を含み、前記管理装置は、前記加工機に関する前記ガイドを前記第一UI装置を介して前記オペレータに提示してもよい。
【0020】
復旧手順を提示するUI装置と、実際に操作させるUI装置と、を異ならせることで、ガイド画面が、加工機の操作の邪魔になることを防止できる。
【0021】
また、前記ワークに関する前記復旧手順は、前記ワークの移動と、前記ワークの移動後位置の入力操作を含み、前記管理装置は、前記オペレータから入力された前記移動後位置を前記PLCに登録してもよい。
【0022】
かかる構成とすることで、ワークの移動後位置をセルコントローラ側で正確に把握できる。
【0023】
また、前記管理装置は、前記ロボットに関する前記復旧手順の完了後に、前記ワークに関する前記ガイドを前記オペレータに提示してもよい。
【0024】
通常、ワークの復旧手順には、当該ワークの移動が含まれる。ロボットの姿勢によっては、当該ロボットがワークの移動の邪魔になることがある。上記のように、ロボットの復旧手順が完了し、ロボットが復旧可能状態となった後であれば、ロボットがワークの移動の邪魔になりにくい。
【0025】
本明細書で開示する他のセルコントローラは、複数の作業リソースを含む加工セルを制御するセルコントローラであって、前記複数の作業リソースは、1以上の加工機と、1以上のロボットと、を含み、前記セルコントローラは、プロセッサと、メモリと、1以上のUI装置と、を含み、前記プロセッサは、前記複数の作業リソースの動作を制御するとともに、前記複数の作業リソースとワークを含む複数の作業要素の状態を取得し、前記加工セルの異常停止が発生した場合、前記複数の作業要素それぞれの復旧可能状態を特定し、前記複数の作業要素それぞれを前記復旧可能状態に遷移させるための手順である復旧手順のガイドを、前記1以上のUI装置を介してオペレータに提示する、ように構成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本明細書で開示する技術によれば、加工セルが異常停止した際に、オペレータが当該加工セルを容易に復旧できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】セルコントローラおよび加工セルの構成を示す図である。
【
図5】メインディスプレイに表示される管理画面の一例を示す図である。
【
図6】メインディスプレイに表示されるガイド画面の一例を示す図である。
【
図7】ガイド画面が表示された第二UI装置の一例を示す図である。
【
図8】ワークに関するガイド画面の一例を示す図である。
【
図9】生産プログラムに関するガイド画面の一例を示す図である。
【
図10】管理装置による復旧手順のガイド処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】
図10のステップS14の詳細な流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照してセルコントローラ10の構成について説明する。
図1は、セルコントローラ10、および、当該セルコントローラ10の制御対象である加工セル70の構成を示す図である。はじめに、制御対象である加工セル70について説明する。加工セル70は、1以上の加工機72を有しており、ワーク100に対して様々な加工を施す。本例の加工セル70は、加工機72と、ロボット74と、周辺機器76と、パレット78と、を有する。加工機72は、例えば、金属素材を加工する金属加工機である。本例では、加工機72は、ワーク100に対して切削加工を施す切削加工機、具体的には、旋盤である。なお、加工機72は、当該加工機72を操作するためのUI装置であるNC(Numerical Control)操作盤86を有している。なお、本明細書において「UI装置」とは、情報を提示する出力装置と、操作入力を受け付ける入力装置と、を有したユーザインターフェース装置を意味する。出力装置は、例えば、ディスプレイ、スピーカ、および、ランプの少なくとも一つを含む。入力装置は、例えば、スイッチ、キーボード、マウス、タッチパネル、および、マイクの少なくとも一つを含む。
【0029】
ロボット74は、加工機72によるワーク100の加工を補助するために設けられている。例えば、ロボット74は、ワーク100や加工機72で使用するチャックの爪等を搬送する。本例において、ロボット74は、複数のリンクが関節を介して連結された多関節型のシリアルマニピュレータである。ロボット74の先端には、ワーク100等を保持するためのハンド84が交換可能に取り付けられている。ロボット74の動作モードは、オペレータによってマニュアルで操作されるマニュアルモードと、自動運転する自動モードと、に切り替え可能である。自動モードの場合、ロボット74を安全柵で囲むことが法規で規定されている。そこで、本例では、加工セル70全体を、安全柵80で囲っている。
【0030】
周辺機器76は、ワーク100に対して前処理または後処理を施したり、加工機72またはロボット74の動作を補助したりする機器である。例えば、周辺機器76は、ワーク100、および、ロボット74の少なくとも一つを清掃するクリーナを含んでもよい。また、周辺機器76は、ワーク100等の対象物を計測する計測装置を含んでもよい。周辺機器76は、当該周辺機器76を操作するための周辺機器操作盤90を有している。なお、周辺機器76が単純な構成の場合、周辺機器操作盤90は、電源ボタンやリセットボタン等、複数のボタンだけを含む構成でもよい。また、パレット78は、ワーク100の待機場所である。
【0031】
ここで、以下では、加工セル70を構成する要素であって、製品の生産に関与する要素を、「作業要素」と呼ぶ。この作業要素には、上述した加工機72やロボット74、周辺機器76、ワーク100、パレット78、安全柵80等が含まれる。また、作業要素のうち、後述するセルコントローラ10から動作指令を受け付ける要素を「作業リソース」と呼ぶ。作業リソースは、加工機72、ロボット74、および、周辺機器76を含む。
【0032】
なお、
図1に示す加工セル70は、一例である。したがって、加工セル70は、1以上の加工機72と、1以上のロボット74と、を有するのであれば、その他の構成は適宜変更されてもよい。例えば、加工機72、ロボット74、および周辺機器76それぞれの個数は、適宜変更されてもよい。また、作業リソースや作業要素の種類および個数も適宜変更されてもよい。したがって、加工セル70は、加工機72、ロボット74、および、周辺機器76以外に別の作業リソース、例えば塗装装置等を有してもよい。また、加工セル70は、さらに別の作業要素、例えば、ハンド84などを保管するストッカや、ワーク100を一時的に載置する作業台等を有してもよい。
【0033】
セルコントローラ10は、こうした加工セル70の動作を制御する。より具体的には、セルコントローラ10は、加工セル70に設けられた複数の作業リソースの動作を一括して制御する。セルコントローラ10は、必要な品目の物品を必要数だけ生産するために、複数の作業要素の状態を監視するとともに、複数の作業リソース(例えば加工機72やロボット74等)に指令を与える。
【0034】
セルコントローラ10は、管理装置20と、プログラマブルロジックコントローラ(以下「PLC」と呼ぶ)30と、第二UI装置28と、を含む。
【0035】
管理装置20およびPLC30は、それぞれ、互いに独立し、物理的に離れた位置に存在するコンピュータである。PLC30は、加工セル70の複数の作業要素から入力信号を受信し、得られた入力信号に基づいてシーケンス制御のための演算を行い、作業リソースに対して動作指令を出力する。
【0036】
PLC30は、ラダー言語等の専用のプログラム言語を使ったPLCプログラムに基づいて複数の作業リソースの動作を制御する。ただし、こうしたPLCプログラムを作成するためには、専門知識が必要であり、加工セル70の設備管理者またはオペレータが、自らPLCプログラムの作成や修正を行うことは難しかった。
【0037】
そこで、本例では、PLC30に加えて、管理装置20を設けている。管理装置20は、オペレータが容易に作成可能な生産プログラムに基づいて、PLC30を制御する。生産プログラムは、物品を加工セル70で一つだけ生産する際に実行すべき1以上の工程を記録したプログラムである。こうした生産プログラムは、加工セル70で生産する品目の数だけ用意される。管理装置20は、生産プログラムが入力されれば、当該生産プログラムをPLC30で解釈可能な形式に変換したうえで、PLC30に出力する。
【0038】
ここで、管理装置20は、PLC30とは独立したプロセッサ22とメモリ24と通信I/F25と第一UI装置26とを有したコンピュータである。通常、この管理装置20は、安全柵80の外側に配置される。
【0039】
第二UI装置28は、管理装置20と通信可能な可搬型のUI装置である。換言すれば、第二UI装置28は、安全柵80の内側で取り扱い可能なUI装置である。したがって、第二UI装置28は、いわゆる、ティーチングペンダントとして機能する。後述する通り、オペレータは、この第二UI装置28を操作することで、ロボット74をマニュアル操作できる。なお、第一UI装置26および第二UI装置28は、いずれも、オペレータに情報を提示するディスプレイと、オペレータからの操作指示を受け付ける入力装置と、を有している。
【0040】
上述した通り、セルコントローラ10は、オペレータが入力した生産プログラムに基づいて、加工セル70の動作を制御する。このセルコントローラ10の処理は、例えば、特許文献1に記載の技術で実現できる。ところで、加工セル70の動作中、何らかの原因で、加工セル70が、異常停止する場合がある。この場合、加工セル70を異常停止から復旧させるためには、複数の作業要素を、復旧可能状態に遷移させる必要がある。例えば、アラーム番号「1」のアラームが発生し、加工セル70が異常停止した場合を考える。この場合、加工セル70を適正に復旧させるためには、
図2に示すように、ロボット74を原位置(原点姿勢ともいう)に位置させ、ハンド84を開状態にし、加工機72を運転停止させ、周辺機器76を運転停止させ、復旧時に実行する生産プログラムのシーケンスナンバとして「4」を設定し、複数のワーク100をパレット78に配置する必要がある。また、ロボット74を原位置に移動させるためには、ロボット74と他の作業リソースとの連動を解除したり、ロボット74をマニュアルモードに切り替えたりする等、様々な手順を実行する必要がある。
【0041】
このように復旧可能状態に遷移させるために必要な手順(以下「復旧手順」と呼ぶ)は、異常停止した際の状況(例えば発生したアラーム番号の違い等)によって異なる。そのため、こうした復旧手順を、オペレータが自分自身で判断して実行することは難しかった。そこで、本例では、加工セル70において異常停止が発生した場合、セルコントローラ10が、復旧手順のガイドをオペレータに提示する。以下、このガイド提示機能について詳説する。
【0042】
復旧手順のガイドのために、管理装置20は、予め、復旧条件情報50および遷移情報52をメモリ24に記憶している。復旧条件情報50は、複数の作業要素それぞれの復旧可能状態を、アラーム種類ごとに記録したデータである。
図2は、復旧条件情報50の一例を示す図である。
図2に示す通り、復旧条件情報50は、複数の作業要素それぞれに、復旧可能状態が、対応付けられている。また、復旧可能状態は、異常停止の原因となったアラーム番号によって異なる場合がある。例えば、加工機72の復旧可能状態は、アラーム番号「1」で異常停止した場合は「停止」であり、アラーム番号「2」で異常停止した場合は、「運転中」である。復旧条件情報50には、複数のアラーム番号それぞれでの復旧可能状態が記録されている。なお、
図2では、作業要素として、ロボット74、ハンド84、加工機72、周辺機器76、生産プログラムのシーケンスナンバ、および、ワーク100のみを例示している。しかし、復旧のために復旧可能状態が設定される作業要素の個数や種類は、加工セル70の構成に応じて、適宜、変更されてもよい。例えば、加工機72で使用するチャックの爪等の治具も、作業要素として、復旧可能状態が設定されてもよい。
【0043】
また、遷移情報52は、作業要素を、停止時状態から復旧可能状態に遷移させるために必要な復旧手順を記録したデータである。なお、停止時状態とは、加工セル70が異常停止した時点での作業要素の状態である。この遷移情報52は、作業要素ごとに用意されている。
図3は、加工機72の遷移情報52の一例であり、
図4は、
図3における略語を説明する図である。
【0044】
停止時状態と復旧可能状態との組み合わせは、複数想定できる。
図3に示す通り、遷移情報52には、この複数の組み合わせそれぞれでの復旧手順が記録されている。例えば、停止時状態(
図3の表の1列目)が「動作中」であり、復旧可能状態(
図3の表の2列目)が、「動作中」の場合を考える。この場合、停止時状態(動作中)は、復旧可能状態(動作中)と一致しているため、状態遷移のための復旧手順は不要である。したがって、この場合、遷移情報52には、「ST0:手順なし」が記録される。一方、停止時状態が「動作中」であり、復旧可能状態が、「停止中」である場合を考える。この場合、遷移情報52には、「ST1:運転準備をOFFする」、「ST2:連動をOFFする」等、加工機72を停止するために必要な手順が、順番に記録される。
【0045】
なお、図示しないが、管理装置20は、複数の手順それぞれに対応付けて、オペレータによる復旧手順の実行を促すためのメッセージも、記憶している。例えば、「ST1:運転準備をOFFする」に対応付けて、メッセージとして「運転準備をOFFにしてください。」とのメッセージを記憶している。そして、管理装置20は、オペレータに対して、手順「ST1:運転準備をOFFする」の実行を求める場合、対応付けられたメッセージを、第一UI装置26または第二UI装置28に表示する。
【0046】
次に、復旧手順のガイドの様子について、
図5~
図9を参照して説明する。
図5は、第一UI装置26のディスプレイ(以下「メインディスプレイ34」と呼ぶ)に表示される管理画面36の一例を示す図である。加工セル70が、正常に動作している場合、メインディスプレイ34には、
図5に示すような管理画面36が表示される。管理画面36には、現在生産している品目名や、複数の作業リソースの状態等が表示される。オペレータは、管理画面36の表示を参考に、第一UI装置26の入力装置を操作して、必要な指令を入力する。
【0047】
図6は、加工機72の復旧手順をガイドする際に、メインディスプレイ34に表示されるガイド画面44の一例を示す図である。加工セル70の異常停止が発生した場合、オペレータは、第一UI装置26の入力装置を操作して、復旧手順のガイドの開始を指示する。この指示を受けた場合、管理装置20は、加工機72の停止時状態と復旧可能状態とを比較する。比較の結果、両者が不一致の場合、管理装置20は、
図6に示すように、管理画面36をグレーアウトして操作不能とする一方で、当該管理画面36の上にガイド画面44を重畳表示させる。
【0048】
ガイド画面44には、復旧させるために必要な手順の実行を促すメッセージが表示される。管理装置20は、このガイド画面44に表示するメッセージを、停止時状態と復旧可能状態との組み合わせを遷移情報52に照らし合わせて特定する。オペレータは、ガイド画面44に表示されたメッセージを参考に、復旧のために必要な手順を実行する。このように、復旧させるために必要な手順のガイドをオペレータに提示することで、オペレータが、セルコントローラ10に関して専門的な知識を有さない場合でも、容易に加工セル70を異常停止から適正に復旧させることができる。
【0049】
オペレータは、ガイド画面44に提示された手順の実行が完了すれば、管理装置20に対して、手順完了を通知する。
図6の例では、ガイド画面44に表示された「NEXT」ボタンを選択することで、手順完了が管理装置20に通知される。手順完了が通知された後、管理装置20は、次の手順の有無を確認し、次の手順がある場合には、当該次の手順の実行を促すメッセージをガイド画面44に表示する。一方、次の手順がない場合、管理装置20は、他の作業要素の状態を確認し、必要に応じて、他の作業要素に関して、状態遷移させるためのガイドを開始する。
【0050】
なお、加工機72に関するガイド画面44は、第一UI装置26を介して提示され、加工機72に関する復旧手順は、NC操作盤86の操作を含む。したがって、オペレータは、第一UI装置26のメインディスプレイ34に表示されたガイド画面44を参考に、加工機72に設けられたNC操作盤86を操作して、加工機72を復旧可能状態に遷移させる。
【0051】
ここで、オペレータは、セルコントローラ10の操作よりも、NC操作盤86の操作に慣れている場合が多い。そのため、NC操作盤86を操作して加工機72を復旧可能状態に遷移させる構成とすることで、オペレータの負担をより軽減できる。また、通常、加工機72を復旧可能状態に遷移させる操作は、NC操作盤86に表示される各種情報(以下「加工機情報」と呼ぶ)を確認しながら行う。NC操作盤86に、この加工機情報だけでなく、ガイド画面44までもが表示されると、オペレータは、加工機情報を確認しづらくなり、NC操作盤86の操作性が悪くなる。本例では、ガイド画面44は、第一UI装置26に表示しているため、オペレータは、NC操作盤86を快適に操作できる。
【0052】
次に、周辺機器76の復旧手順およびガイド提示について説明する。周辺機器76に関するガイド画面44は、第一UI装置26を介して提示され、周辺機器76に関する復旧手順は、周辺機器操作盤90の操作を含む。
【0053】
次に、ロボット74の復旧手順およびガイド提示について説明する。ロボット74(ハンド84を含む)に関するガイド画面44は、第二UI装置28を介して提示され、ロボット74に関する復旧手順は、第二UI装置28の操作を含む。
図7は、ガイド画面44が表示された第二UI装置28の一例を示す図である。かかる構成とする理由について説明する。
【0054】
ロボット74を、復旧可能状態に遷移させる場合、オペレータは、ロボット74をマニュアルモードでマニュアル操作する必要がある。マニュアル操作を行う場合、オペレータは、ロボット74の近傍に位置して、ロボット74の状態(例えば姿勢等)を確認する必要がある。つまり、ロボット74を復旧可能状態にする場合、オペレータは、ロボット74の近くに位置する必要がある。
【0055】
一方、管理装置20、ひいては、第一UI装置26は、安全柵80の外側に位置しており、ロボット74から離れている。かかる第一UI装置26で、ロボット74を操作することは難しい。また、第一UI装置26のディスプレイ(以下「サブディスプレイ46」と呼ぶ)にロボット74に関するガイド画面44を表示した場合、ガイド画面44の確認およびロボット74のマニュアル操作のために、ロボット74と第一UI装置26との間を何度も往復しなければならず、手間であった。本例では、上述した通り、ロボット74を、可搬型の第二UI装置28で操作し、この第二UI装置28に設けられたサブディスプレイ46にガイド画面44を表示している。これにより、オペレータは、ロボット74の近くに位置した状態のまま、ガイド画面44の確認およびロボット74のマニュアル操作が可能となる。なお、ロボット74をマニュアル操作する際には、ロボット74の外観を目視できればよく、ロボット74の内部情報(例えばロボット74の正確な移動量等)が不明でも問題ない。そのため、サブディスプレイ46にガイド画面44が表示されたとしても、ロボット74のマニュアル操作には支障ない。
【0056】
次に、ワーク100の復旧手順およびガイド提示について説明する。管理装置20は、ワーク100についても、加工機72やロボット74と同様に、停止時状態と復旧可能状態とを比較し、両者が不一致の場合、復旧手順のガイドを提示する。ワーク100に関するガイド画面44は、第一UI装置26のメインディスプレイ34に表示される。
図8は、ワーク100に関するガイド画面44の一例を示す図である。
図8から明らかな通り、ワーク100に関する復旧手順は、ワーク100の移動と移動後位置の入力操作とを含む。オペレータは、ガイドに従って、ワーク100を、指定の位置に手動で移動し、移動後のワーク100の位置を第一UI装置26の入力装置を操作して選択する。管理装置20は、選択された位置を、ワーク100の現在位置として、PLC30に登録する。こうした構成にする理由について説明する。
【0057】
異常停止した加工セル70を適正に復旧させるためには、ワーク100を特定の位置に移動させておく必要がある。ここで、通常、PLC30は、製品の加工処理の進捗を管理し、その進捗から、ワーク100の位置を特定する。換言すれば、ワーク100の位置は、センサ等で検知されるのではなく、加工の進捗から推定されているに過ぎない。そのため、ワーク100が手動で移動された場合、セルコントローラ10は、ワーク100の位置を検知できない。そこで、本例では、復旧手順の過程で、オペレータにワーク100の位置を入力させている。これにより、ワーク100のために専用のセンサを設けなくても、セルコントローラ10において、ワーク100の位置を把握できる。なお、加工機72において、チャックの爪等の治具の交換が必要な場合、これら治具を、ワークと同様の復旧手順で、復旧可能状態に遷移させる。
【0058】
次に、生産プログラムの復旧手順およびガイド提示について説明する。上述した通り、加工セル70には、生産する製品に応じた生産プログラムが登録されている。この生産プログラムは、複数の工程を含んでいる。こうした複数の工程のうち、復旧時に実行されるべき工程を示すシーケンスナンバが、予め、復旧条件情報50に復旧可能状態として記録されている。異常停止した加工セル70を適正に復旧させるためには、復旧可能状態として規定されているシーケンスナンバ(以下「復旧可能シーケンスナンバ」と呼ぶ)がセルコントローラ10に設定されている必要がある。そこで、管理装置20は、停止時に設定されているシーケンスナンバが、復旧可能シーケンスナンバと一致しない場合、オペレータに、当該復旧可能シーケンスナンバの設定を促すガイド画面44を第一UI装置26のメインディスプレイ34に表示する。
図9は、生産プログラムに関するガイド画面44の一例を示す図である。オペレータは、当該ガイド画面44に従って、第一UI装置26を操作して、ガイド画面44で指示された復旧可能シーケンスナンバを入力し、設定する。なお、本例では、シーケンスナンバの設定をオペレータに実行させているが、シーケンスナンバの設定は、セルコントローラ10側で自動的に行ってもよい。また、本例では、オペレータに、復旧可能シーケンスナンバとして一つの数字しか提示していない。しかし、復旧可能シーケンスナンバとして、複数の数字を提示し、提示された複数の数字から一つの数字をオペレータが選択してもよい。また、復旧条件情報50に、復旧可能シーケンスナンバとして、複数の数字を記録しておき、セルコントローラ10が、この複数の数字から一つの数字を選択してもよい。例えば、復旧条件情報50に記録されている複数の数字のうち、異常停止時に実行していたシーケンスナンバより若い方向に最も近い数字を、復旧可能シーケンスナンバとして、オペレータに提示してもよい。
【0059】
ここで、以上の説明で明らかな通り、本例では、加工機72、周辺機器76、ワーク100、および、生産プログラムに関するガイドは、第一UI装置26を介して提示し、ロボット74に関するガイドは、第二UI装置28を介して提示している。換言すれば、本例では、作業要素に応じて、ガイドを提示するUI装置を変更している。かかる構成とすることで、オペレータが、より容易に、復旧作業を実行できる。また、本例において、加工機72に関する復旧作業は、NC操作盤86の操作を含み、周辺機器76に関する復旧作業は、周辺機器操作盤90の操作を含み、ロボット74の復旧作業は、第二UI装置28の操作を含み、ワーク100および生産プログラムに関する復旧作業は、第一UI装置26の操作を含んでいる。換言すれば、本例では、作業要素に応じて、復旧作業で操作させるUI装置を変更している。このように、作業要素の特性に応じて、操作するUI装置を変更することで、オペレータが、より容易に、復旧作業を実行できる。
【0060】
次に、管理装置20による復旧手順のガイド処理の流れを
図10を参照して説明する。
図10に示す通り、管理装置20は、異常停止が発生した場合、異常停止の原因となったアラーム番号を、PLC30から取得して特定する(S10)。
【0061】
次に、管理装置20は、加工機72が、復旧可能状態であるか否かを確認する(S12)。すなわち、管理装置20は、特定したアラーム番号を復旧条件情報50に照らし合わせて、加工機72の復旧可能状態を特定する。また、管理装置20は、異常停止が発生した時点における加工機72の状態、すなわち停止時状態をPLC30から取得する。その後、管理装置20は、特定された復旧可能状態と、停止時状態と、を比較する。比較の結果、両者が一致している場合、管理装置20は、加工機72が復旧可能状態であると判断し、ステップS16に進む。
【0062】
一方、復旧可能状態と停止時状態が一致しない場合、管理装置20は、加工機72が復旧可能状態でないと判断し、ステップS14に進む。ステップS14において、管理装置20は、加工機72を復旧可能状態に遷移させるためのガイドをオペレータに提示し、オペレータは、加工機72を復旧可能状態に遷移させる。
図11は、ステップS14の詳細な流れを示すフローチャートである。
図11に示す通り、加工機72の状態遷移が必要な場合、管理装置20は、停止時状態および復旧可能状態を、遷移情報52に照らし合わせて、復旧手順を特定する(S40)。
【0063】
次に、管理装置20は、n番目(nは1以上の整数)の手順の実行を促すメッセージを、第一UI装置26のメインディスプレイ34に表示する(S44)。その後、管理装置20は、n番目の手順が実行完了したか否かを監視する(S46)。本例では、オペレータからn番目の手順の実行完了が入力され、かつ、PLC30でn番目の手順の完了が確認できた場合に、手順の実行が完了したと判断する。
【0064】
例えば、n番目の手順が「ST1:運転準備をOFFする」の場合を考える。この場合、加工機72からPLC30に「運転準備OFF」を示す入力信号が入力され、かつ、オペレータがガイド画面44において「NEXT」ボタンを選択すれば、管理装置20は、手順「ST1」が実行完了したと判断する。ただし、当然ながら、PLC30での検知結果のみに基づいて、または、オペレータからの入力指示のみに基づいて、手順の実行完了を判断してもよい。
【0065】
いずれにしても、管理装置20は、n番目の手順が完了したと判断できるまで、n番目の手順の実行を促すメッセージを、第一UI装置26に表示し続ける。このメッセージを視認したオペレータは、NC操作盤86を操作して、メッセージで指示された手順を実行する。
【0066】
n番目の手順が完了すれば(S46でYes)、管理装置20は、次の手順の有無を確認する(S48)。次の手順が存在する場合(S48でYes)、管理装置20は、パラメータnをインクリメントしたうえで(S50)、ステップS44に戻る。一方、次の手順がない場合(S48でNo)、加工機72は、復旧可能状態に遷移しているため、管理装置20は、加工機72に関するガイドを終了し、
図10のステップS16に進む。なお、
図11では、複数の手順を、順番に一つずつ提示しているが、当然ながら、2以上の手順を同時に提示してもよい。
【0067】
加工機72が復旧可能状態になれば、続いて、管理装置20は、ロボット74が、復旧可能状態か否かを判断する(S16)。この判断は、ステップS12と同様であるため、ここでの詳説は省略する。また、ロボット74が、復旧可能状態でない場合、管理装置20は、ロボット74の復旧手順をガイドする(S18)。ステップS18におけるロボット74のガイドの流れは、ステップS14における加工機72のガイドの流れと、ほぼ同様であるため、ここでの詳説は省略する。
【0068】
以下、同様に、周辺機器76、ワーク100、生産プログラムのシーケンスナンバそれぞれの停止時状態を確認し、これらの停止時状態が復旧可能状態と異なる場合、管理装置20は、対象となる作業要素の復旧手順をガイドする(S20~S30)。そして、全ての作業要素の状態が復旧可能状態になれば、ガイド処理は、終了となる。
【0069】
ここで、
図10に示す通り、本例では、加工機72およびロボット74が復旧可能状態になった後に、ワーク100の状態確認(S24)およびガイド(S26)を行っている。かかる構成とするのは、ワーク100の復旧手順を容易に行うためである。すなわち、通常、ワーク100の復旧手順には、ワーク100の移動が含まれる。ワーク100を移動する際に、ロボット74の姿勢や、加工機72の刃物台等の位置が、意図しない状態であると、ワーク100の移動の邪魔になる。そこで、本例では、ワーク100に関するガイドを、加工機72およびロボット74に関するガイドの後に提示している。これにより、ワーク100の移動の前に、加工機72やロボット74が適正な位置および姿勢になっているため、ワーク100を容易に移動できる。
【0070】
以上の説明で明らかなとおり、本例では、加工セル70が異常停止した場合、セルコントローラ10において、複数の作業要素それぞれの復旧可能状態を特定し、複数の作業要素それぞれを復旧可能状態に遷移させるための復旧手順のガイドをオペレータに提示している。これにより、オペレータの知識や経験が乏しくても、加工セル70を適正に復旧できる。なお、これまで説明した構成は、一例であり、セルコントローラ10の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、上述の説明では、管理装置20とPLC30とを別個のコンピュータとしているが、両者は、一体化された一つのコンピュータでもよい。また、本例では、ロボット74に対する操作を容易にするために、第二UI装置28を設けているが、第二UI装置28は無くてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 セルコントローラ、20 管理装置、22 プロセッサ、24 メモリ、25 通信I/F、26 第一UI装置、28 第二UI装置、30 PLC、34 メインディスプレイ、36 管理画面、44 ガイド画面、46 サブディスプレイ、50 復旧条件情報、52 遷移情報、70 加工セル、72 加工機、74 ロボット、76 周辺機器、78 パレット、80 安全柵、84 ハンド、86 NC操作盤、90 周辺機器操作盤、100 ワーク。