(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067380
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 3/00 20060101AFI20240510BHJP
B43K 31/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B43K3/00 A
B43K31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177414
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 香寿美
(57)【要約】
【課題】軸筒への筆記部材の着脱が容易であり、かつ軸筒を構成する材料の選択の自由度が高められる筆記具を提供する。
【解決手段】中心軸Cに沿って軸方向に延びる軸筒1と、軸筒1の内部に着脱可能に取り付けられる筆記部材2と、を備え、軸筒1は、軸筒1の周壁を径方向に貫通し、軸筒1の前側部分に配置される第1開口部11Aと、軸筒1の周壁を径方向に貫通し、軸筒1の後側部分に配置され、径方向において第1開口部11Aとは反対側に向けて開口する第2開口部11Bと、を有し、筆記部材2は、中心軸Cに沿って延びる取付位置と、中心軸Cに対して傾斜して延び、第1開口部11A及び第2開口部11Bに挿通される解放位置と、に移動可能である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って軸方向に延びる軸筒と、
前記軸筒の内部に着脱可能に取り付けられる筆記部材と、を備え、
前記軸筒は、
前記軸筒の周壁を径方向に貫通し、前記軸筒の前側部分に配置される第1開口部と、
前記軸筒の周壁を径方向に貫通し、前記軸筒の後側部分に配置され、径方向において前記第1開口部とは反対側に向けて開口する第2開口部と、を有し、
前記筆記部材は、
前記中心軸に沿って延びる取付位置と、
前記中心軸に対して傾斜して延び、前記第1開口部及び前記第2開口部に挿通される解放位置と、に移動可能である、
筆記具。
【請求項2】
前記軸筒は、
前記軸筒の周壁の前側部分のうち、周方向において前記第1開口部とは異なる部分に配置される前側支持部と、
前記軸筒の周壁の後側部分のうち、周方向において前記第2開口部とは異なる部分に配置される後側支持部と、を有する、
請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記軸筒は、単一の部材により構成される、
請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記軸筒は、軸方向の少なくとも一部に配置され、前記取付位置の前記筆記部材に係止される係止部を有し、
前記係止部は、前記中心軸回りの半周以上にわたって前記筆記部材を径方向外側から囲う、
請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項5】
前記軸筒は、
前記取付位置の前記筆記部材の前側への移動を規制する前側規制部と、
前記取付位置の前記筆記部材の後側への移動を規制する後側規制部と、を有する、
請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項6】
前記筆記部材は、
前記筆記部材のうち最も外径寸法が小さいペン先と、
前記筆記部材のうち最も外径寸法が大きい本体部と、
軸方向において前記ペン先と前記本体部との間に配置され、後側へ向かうに従い外径寸法が段階的にまたは徐々に大きくなる外径変化部と、を有し、
前記前側規制部は、前記外径変化部に前側から接触する、
請求項5に記載の筆記具。
【請求項7】
前記後側規制部は、前記筆記部材の後端面に後側から接触する、
請求項5に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の筆記具として、軸筒の内部に筆記部材が着脱可能に取り付けられる構成が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のシャープペンシル用クリップ筒では、シャープペンシル装脱用横孔部から挿入筒部にシャープペンシルの握り部分を挿入し、シャープペンシルの頭部に、掛合筒部を弾発的に掛合させる。これによりシャープペンシルは、シャープペンシル用クリップ筒に嵌合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、シャープペンシル用クリップ筒(軸筒)の細巾の部分を反らしたり伸ばしたりして弾性変形させつつ、シャープペンシル(筆記部材)を着脱する。この際の弾性変形量が大きいため、軸筒を構成する材料には弾性変形しやすいものを選択する必要がある。軸筒として、例えば硬質の樹脂材料や、金属材料等を用いることはできず、材料の選択の自由度が低かった。
また、軸筒に筆記部材を着脱する際の作業性を、より向上させる点に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、軸筒への筆記部材の着脱が容易であり、かつ軸筒を構成する材料の選択の自由度が高められる筆記具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0007】
〔本発明の態様1〕
中心軸に沿って軸方向に延びる軸筒と、前記軸筒の内部に着脱可能に取り付けられる筆記部材と、を備え、前記軸筒は、前記軸筒の周壁を径方向に貫通し、前記軸筒の前側部分に配置される第1開口部と、前記軸筒の周壁を径方向に貫通し、前記軸筒の後側部分に配置され、径方向において前記第1開口部とは反対側に向けて開口する第2開口部と、を有し、前記筆記部材は、前記中心軸に沿って延びる取付位置と、前記中心軸に対して傾斜して延び、前記第1開口部及び前記第2開口部に挿通される解放位置と、に移動可能である、筆記具。
【0008】
この筆記具では、筆記具の使用者が、指先や指間で軸筒を保持し、筆記を行う。使用者は、筆記部材が収容される軸筒を把持することにより、スムーズに安定して筆記することができる。
【0009】
そして本発明では、軸筒が、軸筒の前側部分に位置する第1開口部と、軸筒の後側部分に位置する第2開口部と、を有している。第1開口部と第2開口部とは、径方向において互いに反対側を向く。
【0010】
使用者は、筆記部材を軸筒の中心軸に対して傾斜させ、第1開口部及び第2開口部に挿通した姿勢(解放位置)から、筆記部材を軸筒に対して回動させるように移動する。これにより、筆記部材は、中心軸に沿って延び、軸筒に取り付けられた取付位置となる。
また、筆記部材を軸筒から取り外す際は、上述とは逆の手順で、筆記部材を取付位置から解放位置へと回動させるように移動する。これにより、第1開口部及び第2開口部から筆記部材を抜き出して、新しい筆記部材などに交換することができる。
【0011】
したがって、軸筒の内部に筆記部材を取り付ける際、従来のように軸筒を反らしたり伸ばしたりしなくても、つまり大きく弾性変形させなくても、本発明では第1開口部及び第2開口部を通して、軸筒の内部に筆記部材をスムーズに挿入することができる。そして、筆記部材を解放位置から取付位置に移動させる簡単な操作により、筆記部材を軸筒に取り付けることができる。また、軸筒の内部から筆記部材を取り外す際、取付位置から解放位置に移動した筆記部材を、第1開口部及び第2開口部を通してスムーズに取り出すことができる。このため、軸筒への筆記部材の着脱作業が容易である。
【0012】
また、筆記部材の着脱にあたり軸筒を大きく弾性変形させる必要がないため、軸筒を、例えば硬質の樹脂材料や、金属材料等により構成することが可能となる。このため、軸筒を構成する材料の選択の自由度が高められる。また、材料の選択肢が広がることにより、筆記具の触り心地や使用感、外観のデザイン性などを高めることが可能となる。
【0013】
以上より本発明によれば、軸筒への筆記部材の着脱が容易であり、かつ軸筒を構成する材料の選択の自由度が高められる。
また本発明では、軸筒の周壁に第1開口部及び第2開口部が開口していることで、軸筒の材料使用量を削減することができる。例えば、軸筒をプラスチック材料により構成した場合には、プラスチック材料の使用量を減らすことができ、地球環境等への配慮がなされた筆記具を提供することができる。
【0014】
〔本発明の態様2〕
前記軸筒は、前記軸筒の周壁の前側部分のうち、周方向において前記第1開口部とは異なる部分に配置される前側支持部と、前記軸筒の周壁の後側部分のうち、周方向において前記第2開口部とは異なる部分に配置される後側支持部と、を有する、態様1に記載の筆記具。
【0015】
この場合、使用者は筆記時に、軸筒の周壁の前側部分のうち、周方向において第1開口部以外の部分に配置される前側支持部を、人差し指及び親指等で支持することができる。また、軸筒の周壁の後側部分のうち、周方向において第2開口部以外の部分に配置される後側支持部を、指間等で支持することができる。これにより、上述のように筆記部材の着脱操作を容易化しつつも、軸筒を安定して保持することができる。なお上記「指間」とは、使用者の手のうち人差し指の付け根と親指の付け根との間に位置する部分を指す。
【0016】
〔本発明の態様3〕
前記軸筒は、単一の部材により構成される、態様1または2に記載の筆記具。
【0017】
この場合、軸筒が単一の部材により形成されているため、部品点数が削減され、構造がシンプルになり、筆記具の製造が容易となる。
【0018】
〔本発明の態様4〕
前記軸筒は、軸方向の少なくとも一部に配置され、前記取付位置の前記筆記部材に係止される係止部を有し、前記係止部は、前記中心軸回りの半周以上にわたって前記筆記部材を径方向外側から囲う、態様1から3のいずれか1つに記載の筆記具。
【0019】
この場合、取付位置とされた筆記部材が、軸筒の係止部により安定して軸筒内に保持される。筆記部材が、意図せず取付位置から解放位置へと移動し軸筒の内部から外部へ抜け出すようなことが抑えられる。
【0020】
〔本発明の態様5〕
前記軸筒は、前記取付位置の前記筆記部材の前側への移動を規制する前側規制部と、前記取付位置の前記筆記部材の後側への移動を規制する後側規制部と、を有する、態様1から4のいずれか1つに記載の筆記具。
【0021】
この場合、筆記部材が軸筒の内部に取り付けられた状態(取付位置)において、前側規制部によって筆記部材の前側への移動が規制され、後側規制部によって筆記部材の後側への移動が規制される。すなわち、軸筒に対する筆記部材の前後移動が抑えられるため、例えば、使用者の筆記時の筆圧の大きさ等に関わらず、この筆記具によってスムーズに安定して筆記を行うことができる。
【0022】
〔本発明の態様6〕
前記筆記部材は、前記筆記部材のうち最も外径寸法が小さいペン先と、前記筆記部材のうち最も外径寸法が大きい本体部と、軸方向において前記ペン先と前記本体部との間に配置され、後側へ向かうに従い外径寸法が段階的にまたは徐々に大きくなる外径変化部と、を有し、前記前側規制部は、前記外径変化部に前側から接触する、態様5に記載の筆記具。
【0023】
この場合、外径変化部には、前側を向く段部や、前側へ向かうに従い縮径するテーパ筒部などが設けられる。このような外径変化部に対して、前側規制部が前側から接触するので、前側規制部によって、より安定して筆記部材の前側への移動を抑えることができる。
【0024】
〔本発明の態様7〕
前記後側規制部は、前記筆記部材の後端面に後側から接触する、態様5または6に記載の筆記具。
【0025】
上記構成によれば、筆記部材に特別な構造や複雑な構造を用いることなく、例えば従来品(規格に準じた筆記部材、すなわち流通品)の筆記部材を用いた場合であっても、筆記部材の後側への移動を、後側規制部によって安定して抑えることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の前記態様の筆記具によれば、軸筒への筆記部材の着脱が容易であり、かつ軸筒を構成する材料の選択の自由度が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本実施形態の筆記具を示す斜視図であり、筆記部材の取付位置を表している。
【
図2】
図2は、本実施形態の筆記具を示す斜視図であり、筆記部材の取付位置を表している。
【
図5】
図5は、
図2のV-V断面の一部を示す断面図(横断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一実施形態の筆記具10について、
図1~
図5を参照して説明する。本実施形態の筆記具10は、例えばボールペン等である。
【0029】
図1に示すように、筆記具10は、中心軸Cを中心とする概略円柱状をなしている。筆記具10は、中心軸Cに沿って延びる軸筒1と、軸筒1の内部に着脱可能に取り付けられる筆記部材2と、を備える。筆記部材2が軸筒1に取り付けられた状態(後述する取付位置)において、軸筒1及び筆記部材2は、中心軸Cを共通軸として互いに同軸に配置されている。
【0030】
本実施形態で用いる方向の定義について、説明する。
本実施形態では、筆記具10の中心軸Cが延びる方向、つまり中心軸Cに沿う方向を、軸方向と呼ぶ。ここで、筆記具10の軸方向の両端部のうち、一方を第1端部、他方を第2端部とする。筆記部材2のペン先を構成するチップ21は、筆記具10の軸方向の両端部のうち、第1端部に配置される。軸方向のうち、チップ21が配置される第1端部から第2端部へ向かう方向を後側と呼び、第2端部から第1端部へ向かう方向を前側と呼ぶ。このため、軸方向は前後方向と言い換えてもよい。各図において軸方向(前後方向)は、Y軸方向に相当する。前側は-Y側に相当し、後側は+Y側に相当する。
【0031】
中心軸Cと直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Cに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Cから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
また、中心軸C回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。
【0032】
図1、
図2及び
図4に示すように、軸筒1は、第1開口部11Aと、第2開口部11Bと、を有する。第1開口部11Aは、軸筒1の周壁を径方向に貫通し、軸筒1の前側部分に配置される。第2開口部11Bは、軸筒1の周壁を径方向に貫通し、軸筒1の後側部分に配置され、径方向において第1開口部11Aとは反対側に向けて開口する。すなわち、第1開口部11Aと第2開口部11Bとは、径方向において、互いに反対側に向けて開口する。
【0033】
本実施形態では、径方向のうち、軸方向から見て第1開口部11Aと第2開口部11Bとを結ぶ方向を上下方向と呼ぶ。また、上下方向のうち、第1開口部11Aが開口する方向を下側と呼び、第2開口部11Bが開口する方向を上側と呼ぶ。各図において上下方向は、Z軸方向に相当する。上側は+Z側に相当し、下側は-Z側に相当する。
【0034】
軸方向(前後方向)及び上下方向と直交する方向(
図5に符号Hの直線で示す方向)を、左右方向と呼ぶ。各図において左右方向は、X軸方向に相当する。左側は-X側に相当し、右側は+X側に相当する。
【0035】
なお本実施形態において、前側、後側、上側、下側、左側及び右側とは、各構成要素の相対位置関係等を説明するための便宜的な名称である。このため、筆記具10の使用時などにおける実際の配置関係等は、これらの名称により限定されるものではない。
【0036】
筆記具10の各構成要素について、説明する。
図1及び
図2に示すように、筆記部材2は、軸筒1の内部に収容される。筆記部材2は、軸筒1の内部から取り外し可能である。すなわち、筆記部材2は交換可能である。筆記部材2は、替芯またはレフィル等と言い換えてもよい。
【0037】
図3に示すように、筆記部材2は、中心軸Cを中心とする多段円筒状であり、軸方向に延びる。筆記部材2は、筆記部材2のうち最も外径寸法が小さいチップ(ペン先)21と、筆記部材2のうち最も外径寸法が大きいインク貯留筒(本体部)22と、軸方向においてチップ21とインク貯留筒22との間に配置され、後側へ向かうに従い外径寸法が段階的にまたは徐々に大きくなる外径変化部23と、を有する。
【0038】
チップ21は、筆記部材2の前端部に配置される。チップ21は、中心軸Cを中心とする略円筒状であり、軸方向に延びる。チップ21のうち前端部は、前側へ向かうに従い縮径するテーパ筒状である。チップ21のうち前端部以外の部分は、円筒状である。
【0039】
チップ21は、チップ21の前端部に配置されるボール21aと、ボール21aを保持するホルダー21bと、を有する。
図1及び
図2に示すように、筆記部材2が軸筒1の内部に装着されたときに、チップ21のうち少なくとも前端部は、軸筒1の前端面から前側へ突出する。
【0040】
図3に示すように、インク貯留筒22は、チップ21よりも後側に配置される。インク貯留筒22は、中心軸Cを中心とする円筒状であり、軸方向に延びる。特に図示しないが、インク貯留筒22の内部には、例えばゲルインク等のインクと、インクの後側に配置されてインクの蒸発や逆流(後側への流動)を抑えるグリスと、が収容される。インク貯留筒22は、カートリッジ等と言い換えてもよい。インク貯留筒22の内部とチップ21の内部とは、後述する外径変化部23の内部を通して、互いに連通する。
【0041】
図1及び
図2に示すように、筆記部材2が軸筒1の内部に取り付けられたときに、インク貯留筒22の後端面は、軸筒1の後端面よりも前側に配置される。言い換えると、軸筒1の後端面は、インク貯留筒22の後端面すなわち筆記部材2の後端面よりも、後側に突出している。
【0042】
外径変化部23は、中心軸Cを中心とする略多段円筒状であり、軸方向に延びる。外径変化部23の前端部は、チップ21の後端部と接続される。外径変化部23の後端部は、インク貯留筒22の前端部と接続される。
【0043】
図3に示すように、外径変化部23は、円筒部23aと、テーパ筒部23bと、段部23c,23dと、を有する。
円筒部23aは、中心軸Cを中心とする円筒状である。円筒部23aの外径寸法は、チップ21の外径寸法よりも大きく、インク貯留筒22の外径寸法よりも小さい。
【0044】
テーパ筒部23bは、円筒部23aよりも後側に配置される。テーパ筒部23bは、中心軸Cを中心とするテーパ筒状であり、後側へ向かうに従い徐々に外径寸法が大きくなる(拡径する)。
【0045】
段部23c,23dは、チップ21と円筒部23aとの間、及び、円筒部23aとテーパ筒部23bとの間の少なくとも一方に設けられ、本実施形態では両方に設けられる。すなわち、段部23c,23dは、外径変化部23に軸方向に並んで複数設けられており、本実施形態では一対設けられる。一対の段部23c,23dのうち、一方の段部23cは、チップ21と円筒部23aとの間に配置され、前側を向く。一対の段部23c,23dのうち、他方の段部23dは、円筒部23aとテーパ筒部23bとの間に配置され、前側を向く。
【0046】
軸筒1は、例えば樹脂製や金属製等である。ただしこれに限らず、軸筒1は、例えばエラストマー製やゴム製、木製等であってもよい。本実施形態の軸筒1には、多種多様な材料を適宜選択することができる。
【0047】
図1及び
図2に示すように、軸筒1は、中心軸Cに沿って軸方向に延びる。本実施形態では軸筒1が、単一の部材により一体的に構成されている。軸筒1の外周面のうち前端部は、前側へ向かうに従い縮径するテーパ面状をなしている。
軸筒1は、第1開口部11Aと、第2開口部11Bと、前側支持部16と、後側支持部17と、係止部12と、前側規制部13と、後側規制部14と、を有する。
【0048】
図2及び
図4に示すように、第1開口部11Aは、軸筒1の周壁のうち少なくとも前端部を含む前側部分に配置されている。第1開口部11Aは、軸筒1の前端面にも開口する。第1開口部11Aは、軸筒1の周壁の下側(-Z側)部分に位置している。第1開口部11Aは、軸方向に延びる長孔状である。
【0049】
図1及び
図4に示すように、第2開口部11Bは、軸筒1の周壁のうち少なくとも後端部を含む後側部分に配置されている。第2開口部11Bは、軸筒1の後端面にも開口する。第2開口部11Bは、軸筒1の周壁の上側(+Z側)部分に位置している。第2開口部11Bは、軸方向に延びる長孔状である。
【0050】
図4に示すように、筆記部材2は、中心軸Cに沿って延びる取付位置と、中心軸Cに対して傾斜して延び、第1開口部11A及び第2開口部11Bに挿通される解放位置と、に移動可能である。
【0051】
取付位置は、
図4に実線及び破線で示す筆記部材2の姿勢であり、筆記部材2が軸筒1の内部に取り付けられた(固定された)状態を指す。取付位置において、筆記部材2は軸筒1と同軸に配置されている。
【0052】
解放位置は、
図4に2点鎖線で示す筆記部材2の姿勢であり、軸筒1による筆記部材2の係止が解除された状態を指す。解放位置において、筆記部材2の前側部分は第1開口部11Aに挿通され、筆記部材2の後側部分は第2開口部11Bに挿通されている。解放位置において、筆記部材2は軸筒1から抜き出し可能とされている。
【0053】
図1及び
図4に示すように、前側支持部16は、軸筒1の周壁の前側部分のうち、周方向において第1開口部11Aとは異なる部分に配置される。本実施形態において前側支持部16は、軸筒1の周壁の前側部分のうち、周方向において第1開口部11A以外の部分に位置する。前側支持部16は、軸筒1の周壁の外周面の一部により構成される。前側支持部16は、筆記時に、使用者の指先(特に人差し指及び親指)等により支持される。
【0054】
図2及び
図4に示すように、後側支持部17は、軸筒1の周壁の後側部分のうち、周方向において第2開口部11Bとは異なる部分に配置される。本実施形態において後側支持部17は、軸筒1の周壁の後側部分のうち、周方向において第2開口部11B以外の部分に位置する。後側支持部17は、軸筒1の周壁の外周面のうち上記一部とは別の一部により構成される。後側支持部17は、筆記時に、使用者の指間等により支持される。なお上記「指間」とは、使用者の手のうち人差し指の付け根と親指の付け根との間に位置する部分を指す。
【0055】
図2に示すように、係止部12は、軸筒1のうち軸方向の少なくとも一部に配置され、取付位置の筆記部材2に係止される。本実施形態では係止部12が、軸筒1のうち、第1開口部11Aを通して外部に露出する位置に配置されている。なお係止部12は、軸筒1のうち、第2開口部11Bを通して外部に露出する位置に配置されていてもよい。これにより、使用者は、第1開口部11Aまたは第2開口部11Bを通して、指先等により筆記部材2を係止部12に係止しやすく、また係止を解除しやすい。
【0056】
本実施形態では、係止部12が、軸筒1のうち少なくとも円筒部23a(外径変化部23)と対向する部分に配置される。すなわち、係止部12は、円筒部23a(外径変化部23)に係止される。ただしこれに限らず、係止部12は、軸筒1のうち少なくともチップ(ペン先)21と対向する部分に配置されていてもよい。あるいは、係止部12は、軸筒1のうち少なくともインク貯留筒(本体部)22と対向する部分に配置されていてもよい。すなわち、係止部12は、チップ21またはインク貯留筒22に係止されてもよい。
また、係止部12は、軸筒1に1つのみ設けられていてもよく、あるいは、軸方向に互いに間隔をあけて複数設けられていてもよい。
【0057】
図5に示すように、係止部12は、中心軸C回りの半周以上にわたって筆記部材2を径方向外側から囲う。すなわち、係止部12は、中心軸Cを中心とする周方向の180°以上の範囲にわたって、筆記部材2の外周面を径方向外側から覆っている。係止部12は、軸方向から見て、中心軸C回りに延びる湾曲状をなしており、本実施形態では略C字状をなす。
【0058】
係止部12の開口部分12aの開口寸法Wは、筆記部材2のうち係止部12に係止される部分の外径寸法D以下である。上記開口寸法Wは、上記外径寸法Dよりも小さいことがより好ましい。上記構成により、筆記部材2は係止部12によって安定して係止(固定)される。
【0059】
そして、筆記部材2を解放位置から取付位置に移動して軸筒1に取り付ける際は、係止部12の開口部分12aの開口寸法Wが、筆記部材2のうち係止部12に対向する部分の外径寸法D以上となるまで、開口部分12aを押し広げるように軸筒1を僅かに弾性変形させればよい。
【0060】
詳しくは、使用者が、第1開口部11A(または第2開口部11B)を通して指先等により筆記部材2を係止部12の開口部分12aに押し当てる。これにより、軸筒1が僅かに弾性変形させられ開口部分12aの開口寸法Wが広がり、筆記部材2は係止部12内に挿入可能となって、係止部12内に嵌合する。このようにして、筆記部材2は係止部12内に押し込まれる。
【0061】
また、筆記部材2を取付位置から解放位置に移動して軸筒1から取り外す際は、例えば、筆記部材2のチップ21のうち軸筒1の前端面より前側に突出する部分を、指先等で下側(-Z側)へ押し下げる。あるいは、筆記部材2の後端面を指先等で上側(+Z側)へ引き上げる。これにより、筆記部材2が軸筒1に対して回動し、筆記部材2と係止部12との係止状態が解除される。筆記部材2は取付位置から解放位置へと移動可能となって、筆記部材2を軸筒1の外部へ取り出す(抜き出す)ことができる。
【0062】
図2に示すように、前側規制部13は、軸筒1の内周面に配置される。本実施形態では前側規制部13が、後側を向く段差面を有する。ただしこれに限らず、特に図示しないが前側規制部13は、例えば、軸筒1の内周面から径方向内側に突出する突起状等であってもよい。前側規制部13は、段部23dに対して前側から接触する。これにより前側規制部13は、取付位置の筆記部材2の前側への移動を規制している。すなわち、前側規制部13は、外径変化部23に前側から接触し、筆記部材2の前側への移動を規制する。
【0063】
図4に示すように、後側規制部14は、軸筒1の内周面に配置される。本実施形態では後側規制部14が、前側を向く段差面を有する。ただしこれに限らず、特に図示しないが後側規制部14は、例えば、軸筒1の内周面から径方向内側に突出する突起状等であってもよい。後側規制部14は、筆記部材2の後端面に後側から接触する。これにより後側規制部14は、取付位置の筆記部材2の後側への移動を規制する。
【0064】
以上説明した本実施形態の筆記具10では、筆記具10の使用者が、指先や指間で軸筒1を保持し、筆記を行う。使用者は、筆記部材2が収容される軸筒1を把持することにより、スムーズに安定して筆記することができる。
【0065】
そして本実施形態では、軸筒1が、軸筒1の前側部分に位置する第1開口部11Aと、軸筒1の後側部分に位置する第2開口部11Bと、を有している。第1開口部11Aと第2開口部11Bとは、径方向において互いに反対側を向く。
【0066】
使用者は、筆記部材2を軸筒1の中心軸Cに対して傾斜させ、第1開口部11A及び第2開口部11Bに挿通した姿勢(解放位置)から、筆記部材2を軸筒1に対して回動させるように移動する。これにより、筆記部材2は、中心軸Cに沿って延び、軸筒1に取り付けられた取付位置となる。
また、筆記部材2を軸筒1から取り外す際は、上述とは逆の手順で、筆記部材2を取付位置から解放位置へと回動させるように移動する。これにより、第1開口部11A及び第2開口部11Bから筆記部材2を抜き出して、新しい筆記部材2などに交換することができる。
【0067】
したがって、軸筒1の内部に筆記部材2を取り付ける際、従来のように軸筒を反らしたり伸ばしたりしなくても、つまり大きく弾性変形させなくても、本実施形態では第1開口部11A及び第2開口部11Bを通して、軸筒1の内部に筆記部材2をスムーズに挿入することができる。そして、筆記部材2を解放位置から取付位置に移動させる(回動させる)簡単な操作により、筆記部材2を軸筒1に取り付けることができる。また、軸筒1の内部から筆記部材2を取り外す際、取付位置から解放位置に移動(回動)した筆記部材2を、第1開口部11A及び第2開口部11Bを通してスムーズに取り出すことができる。このため、軸筒1への筆記部材2の着脱作業が容易である。
【0068】
また、筆記部材2の着脱にあたり軸筒1を大きく弾性変形させる必要がないため、軸筒1を、例えば硬質の樹脂材料や、金属材料等により構成することが可能となる。このため、軸筒1を構成する材料の選択の自由度が高められる。また、材料の選択肢が広がることにより、筆記具10の触り心地や使用感、外観のデザイン性などを高めることが可能となる。
【0069】
以上より本実施形態によれば、軸筒1への筆記部材2の着脱が容易であり、かつ軸筒1を構成する材料の選択の自由度が高められる。また、筆記具10のデザイン性や使用感を高めることもできる。
また本実施形態では、軸筒1の周壁に第1開口部11A及び第2開口部11Bが開口していることで、軸筒1の材料使用量を削減することができる。例えば、軸筒1をプラスチック材料により構成した場合には、プラスチック材料の使用量を減らすことができ、地球環境等への配慮がなされた筆記具10を提供することができる。
【0070】
また本実施形態では、軸筒1は、軸筒1の周壁の前側部分のうち、周方向において第1開口部11Aとは異なる部分に配置される前側支持部16と、軸筒1の周壁の後側部分のうち、周方向において第2開口部11Bとは異なる部分に配置される後側支持部17と、を有する。
この場合、使用者は筆記時に、軸筒1の周壁の前側部分のうち、周方向において第1開口部11A以外の部分に配置される前側支持部16、具体的には上側(+Z側)及び左右方向(X軸方向)を向く前側支持部16を、人差し指及び親指等で支持することができる。また、軸筒1の周壁の後側部分のうち、周方向において第2開口部11B以外の部分に配置される後側支持部17、具体的には下側(-Z側)及び左右方向を向く後側支持部17を、指間等で支持することができる。これにより、上述のように筆記部材2の着脱操作を容易化しつつも、軸筒1を安定して保持することができる。
【0071】
また本実施形態では、軸筒1が単一の部材により一体に形成されているため、部品点数が削減され、構造がシンプルになり、筆記具10の製造が容易となる。
【0072】
また本実施形態では、軸筒1の係止部12が、取付位置の筆記部材2を径方向外側から周方向の半周以上にわたって囲う。このため、取付位置とされた筆記部材2が、軸筒1の係止部12により安定して軸筒1内に保持される。筆記部材2が、意図せず取付位置から解放位置へと移動し軸筒1の内部から外部へ抜け出すようなことが抑えられる。
【0073】
また本実施形態では、軸筒1が、前側規制部13と、後側規制部14と、を有する。
この場合、筆記部材2が軸筒1の内部に取り付けられた状態(取付位置)において、前側規制部13によって筆記部材2の前側への移動が規制され、後側規制部14によって筆記部材2の後側への移動が規制される。すなわち、軸筒1に対する筆記部材2の前後移動が抑えられるため、例えば、使用者の筆記時の筆圧の大きさ等に関わらず、この筆記具10によってスムーズに安定して筆記を行うことができる。
【0074】
また本実施形態では、前側規制部13が、取付位置とされた筆記部材2の外径変化部23に前側から接触する。
本実施形態のように外径変化部23には、前側を向く段部23c,23dや、前側へ向かうに従い縮径するテーパ筒部23bなどが設けられる。このような外径変化部23に対して、前側規制部13が前側から接触するので、前側規制部13によって、より安定して筆記部材2の前側への移動を抑えることができる。
【0075】
なお、本実施形態では前側規制部13が、外径変化部23の一対の段部23c,23dのうち他方(後側)の段部23dに対して前側から接触する構成を例に挙げたが、これに限らない。前側規制部13は、外径変化部23のうち一方(前側)の段部23cに対して前側から接触していてもよい。
あるいは、前側規制部13は、外径変化部23のうちテーパ筒部23bに対して前側から接触していてもよい。この場合、前側規制部13は、軸筒1の内周面に配置され、前側へ向かうに従い内径寸法が小さくなる(縮径する)テーパ面状等に形成される。そして、筆記部材2が取付位置とされたときに、前側規制部13は、テーパ筒部23bの外周面に嵌合する。
【0076】
また本実施形態では、後側規制部14が、取付位置とされた筆記部材2の後端面に後側から接触する。
上記構成によれば、筆記部材2に特別な構造や複雑な構造を用いることなく、例えば従来品(規格に準じた筆記部材、すなわち流通品)の筆記部材を用いた場合であっても、筆記部材2の後側への移動を、後側規制部14によって安定して抑えることができる。
【0077】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0078】
前述の実施形態では、軸筒1の前側規制部13及び後側規制部14が、段差状、突起状またはテーパ面状をなす例を挙げたが、これに限らない。また、前側規制部13及び後側規制部14の一方または両方が、設けられなくてもよい。この場合、例えば、互いに接触する軸筒1の内周面及び筆記部材2の外周面のうち少なくとも一方に、滑り止め機能を有する表面加工やコーティング等が施されることが好ましい。これにより、取付位置とされた筆記部材2と軸筒1との前後方向への相対移動が抑制される。
【0079】
また、特に図示しないが、軸筒1の一部(例えば係止部12など)を、軸筒1の本体部材とは別部材により構成してもよい。これにより、軸筒1の各部の機能をより高めたり安定させたりすることができる。すなわち、軸筒1は、複数の部材を組み合わせて構成されていてもよい。
【0080】
特に図示しないが、軸筒1は、その外周面に滑り止め部を有していてもよい。滑り止め部は、例えば、滑り止め機能を有するローレット加工やシボ加工などの表面加工、またはコーティング等が施されることにより形成される。
【0081】
また前述の実施形態では、筆記具10としてボールペンを例に挙げて説明したが、これに限らない。筆記具10は、ボールペン以外のペン等であってもよい。
【0082】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態及び変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の筆記具によれば、軸筒への筆記部材の着脱が容易であり、かつ軸筒を構成する材料の選択の自由度が高められる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0084】
1…軸筒、2…筆記部材、10…筆記具、11A…第1開口部、11B…第2開口部、12…係止部、13…前側規制部、14…後側規制部、16…前側支持部、17…後側支持部、21…チップ(ペン先)、22…インク貯留筒(本体部)、23…外径変化部、C…中心軸、D…外径寸法