(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067382
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】車輪用取付具
(51)【国際特許分類】
B66C 1/20 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B66C1/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177416
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】513278068
【氏名又は名称】株式会社ALFA
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 好孝
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004AG10
3F004EA32
3F004EA40
(57)【要約】
【課題】多様な状況に対応可能な車輪用取付具を提供する。
【解決手段】車輪用取付具11は、本体フレーム20を車輪1に固縛して取り付けることができるので、地面から浮いた車輪1であっても容易に、かつしっかり取り付けることができる。また、直立姿勢以外の姿勢で車輪1に取り付けることができるので、フック14に接続したワイヤをウィンチ等によって巻き取ることにより、車輪1を車両前側又は車両後側へ引っ張って車両を前方又は後方へ移動させることが可能である。このように、車輪用取付具11は、多様な状況に対応することができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に取り付けて使用される車両用取付具であって、
一対の本体バーを有し、車輪の外側面に対向するように配置されるV字状の本体フレームと、
前記本体フレームの一側に設けられ、車両の外側へ突出するフックと、
前記本体フレームの他側に設けられ、車輪の外周面を受ける一対の片持ちバーと、
前記本体フレームを車輪に固縛する固縛手段と、
を備えることを特徴とする車両用取付具。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用取付具であって、
前記固縛手段は、前記一対の片持ちバーの間に掛け渡すように設けられ、車輪の内側面に対向するように配置される固縛バーと、前記固縛バーを前記本体フレームに向かって引き寄せる第1のラッシングベルトと、を有することを特徴とする車両用取付具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用取付具であって、
前記固縛手段は、前記本体フレームの一側を車両内側に向かって引き寄せる第2のラッシングベルトを有することを特徴とする車両用取付具。
【請求項4】
請求項3に記載の車輪用取付具であって、
前記第2のラッシングベルトは、前記固縛バーに接続される一側のフックと、前記本体フレームに接続される他側のフックと、を有し、
前記本体フレームには、前記他側のフックを接続するための複数個の掛止部が設けられることを特徴とする車輪用取付具。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用取付具であって、
前記一対の片持ちバーは、全ねじの棒部材であることを特徴とする車両用取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪用取付具に関するもので、例えば、故障等により自走不能となった不動車を移動させるために車輪に取り付けて使用される車輪用取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、支持部材20によって、前アーム21、後アーム22を揺動自在に支持し、タイヤTに装着する際に、前アーム21の前タイヤ支持部52をタイヤTの接地面の前に挿入するとともに、後アーム22の後タイヤ支持部55を接地面の後に挿入し、さらに前タイヤ支持部52及び後タイヤ支持部55の先端側を、前環状係合部63、後環状係合部66に係合させることにより、タイヤTの下部をタイヤ保持空間H(以下「保持枠」と称する)に挿入するようにしたタイヤフック11(以下「従来の吊り上げ装置」と称する)が開示されている。
【0003】
従来の吊り上げ装置を用いて自動車Cを吊り上げる際には、タイヤフック11を自動車Cの全てのタイヤT(4つの車輪)に取り付け、次に、クレーンKによって吊り上げハンガー14を引き上げることにより、左右の索状態12,13を介して各タイヤフック11を真上へ引き上げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の吊り上げ装置では、タイヤフックを、接地していないタイヤに取り付けることができないため、例えば、車両(自動車)が縁石に乗り上げてタイヤが地面から浮いている場合、当該タイヤにタイヤフックを取り付けることができない。また、従来の吊り上げ装置では、タイヤの内側を支持する保持枠のバー(連結部材)が細いため、変形する(内圧が低い)タイヤを支持することができず、パンクしたタイヤに用いることができない。
【0006】
本発明は、多様な状況に対応可能な車輪用取付具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車輪用取付具は、車輪に取り付けて使用される車両用取付具であって、一対の本体バーを有し、車輪の外側面に対向するように配置されるV字状の本体フレームと、前記本体フレームの一側に設けられ、車両の外側へ突出するフックと、前記本体フレームの他側に設けられ、車輪の外周面を受ける一対の片持ちバーと、前記本体フレームを車輪に固縛する固縛手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多様な状況に対応可能な車輪用取付具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】車輪に取り付けられた車輪用取付具を車両外側から見たときの図である。
【
図2】車輪に取り付けられた車輪用取付具を車両前側から見たときの図である。
【
図3】車輪に取り付けられた車輪用取付具を車両後側から見たときの図である。
【
図4】車輪に取り付けられた車輪用取付具を車両上側から見たときの図である。
【
図5】車輪に取り付けられた車輪用取付具を車両内側から見たときの図である。
【
図6】直立姿勢以外の姿勢で車輪に取り付けられた車輪用取付具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態を添付した図を参照して説明する。
ここで、本実施形態に係る車輪用取付具11は、車両(図示省略)に装着された4つの車輪1の何にも取り付けることができるが、車両の左前輪(車輪1)に取り付けた場合を例示して説明する。便宜上、
図1における「上側」を「上側」、
図1における「下側」を「下側」、
図1における「右側」を「車両前側」、
図1における「左側」を「車両後側」、
図2における「左側」を「車両外側」、
図2における「右側」を「車両内側」と呼ぶが、車輪用取付具11を取り付ける向きを限定するものではない。
【0011】
図1に示されるように、車輪用取付具11は、一対の本体バー21,31の相互の上側(一側)の端部を接続することでV字状に形成された本体フレーム20を備える。ここで、本体バー21と本体バー31との交角は鋭角であり、例えば40度である。なお、本体フレーム20は、本体バー21と本体バー31との交角を固定するために両者間に掛け渡された補強バー15を有する。
図2に示されるように、本体フレーム20の上側(一側)の端部、即ち一方の本体バー21と他方の本体バー31との接合部には、補強板12,13が接合される。2つの補強板12,13のうち、車両外側に設けられた補強板12には、車両外側へ突出して引き上げ用ワイヤ等が接続されるフック14(本実施形態では「アイボルト」)が設けられる。
【0012】
図1乃至
図3に示されるように、本体バー21,31の下側(他側)の端には、本体フレーム20を地面に直立させるときに接地させる円筒状の接地部材22,32が設けられる。また、本体バー21,31の下側の端部(接地部材22,32の近傍)には、本体バー21,31の内側面23,33と外側面24,34とを貫通するスリーブ(図示省略)が設けられる。当該スリーブには、車輪1の外周面5(タイヤのトレッド部)を受ける片持ちバー25,35が挿通される。片持ちバー25,35は、車両内側へ向かって車輪1の内側面2を越えて延びる。
【0013】
図2、
図3に示されるように、片持ちバー25,35は、本体バー21,31の内側面23,33及び外側面24,34に直交する直線に対して、車両内側に向かって下り勾配(本実施形態では「4度から5度」)で傾斜する。これにより、車輪1と本体フレーム20の上側(一側)との間に後述する緩衝部材66(
図2、
図3のみ表示)を挿入することができる。なお、本実施形態では、片持ちバー25,35として全ねじの棒材が適用される。また、片持ちバー25,35の車両外側の端部には、ストッパ27,37(本実施形態では「ナット」)が取り付けられる。
【0014】
車輪用取付具11は、本体フレーム20の下側(他側)を車輪1に固縛する第1の固縛手段と、本体フレーム20の上側(一側)を車輪1に固縛する第2の固縛手段と、を備える。
図1乃至
図3に示されるように、第1の固縛手段は、車両前側に配置される片持ちバー25と車両後側に配置される片持ちバー35との間に掛け渡される固縛バー41と、固縛バー41と本体フレーム20とによって車輪1を挟圧するために使用されるラッシングベルト51(第1のラッシングベルト)と、を有する。
【0015】
ラッシングベルト51は、車輪1及び本体フレーム20の下側(他側)の周囲に巻き付けられ、一側のフック53が固縛バー41の車両前側(一側)の端部43に接続され、他側のフック54が固縛バー41の車両後側(他側)の端部44に接続される。そして、ラッシングベルト51のバックル52に設けられたリール(図示省略)に帯体を巻き取ると、車輪1の車両内側に配置された固縛バー41が車輪1の車両外側に配置された本体フレーム20に引き寄せられる。これにより、本体フレーム20と固縛バー41とによって車輪1が挟圧され、その結果、本体フレーム20の下側(他側)が車輪1に固縛される。なお、フック53,54は、J型フック、I型フック、スナップフック等から適宜に選択することができる。
【0016】
一方、第2の固縛手段は、本体フレーム20の上側(一側)を車輪1に固縛するために使用されるラッシングベルト61(第2のラッシングベルト)を有する。ラッシングベルト61は、車輪1の上側(タイヤのトレッド部)の周囲に巻き付けられ、一側のフック63が固縛バー41の車両前側(一側)の端部43に接続され、他側のフック64が本体バー31の掛止部65に接続される。そして、ラッシングベルト61のバックル62に設けられたリール(図示省略)に帯体を巻き取ると、本体フレーム20の上側(一側)が車両内側に引き寄せられ、本体フレーム20の上側が車輪1に固縛される。
【0017】
なお、車輪1(タイヤのサイドウォール部)と本体フレーム20の上側(一側)との間には、車輪1に傷が付くことを防止するポリウレタン等の緩衝部材66が挿入される。また、フック63,64は、J型フック、I型フック、スナップフック等から適宜に選択することができる。さらに、フック64を接続する掛止部65は、本体フレーム31又は本体フレーム21に設けられた複数個の掛止部65(本実施形態では「掛止孔」)から適宜に選択することができる。
【0018】
次に、本実施形態の作用を説明する。
ここでは、車輪用取付具11を直立姿勢(
図1参照)で車輪1に取り付ける手順を説明する。まず、本体フレーム20、片持ちバー25,35、固縛バー41(固縛手段)、ラッシングベルト51(固縛手段)、ラッシングベルト61(固縛手段)、及び緩衝部材66を用意する。そして、本体フレーム20のスリーブ(図示省略)に片持ちバー25,35を車両外側から車両内側へ向かって挿通する。
【0019】
次に、本体フレーム20から延伸する片持ちバー25,35を車輪1の下に差し込み、本体フレーム20を車輪1の外側面3に対向させる。次に、片持ちバー25,35の車両内側の先端部(車輪1の内側面2を越えて延びる部分)に固縛バー41を掛け渡す。この状態で、固縛バー41は、車輪1の内側面2の下側に対向されている。即ち、本体フレーム20と固縛バー41との間に車輪1の下側が位置している。
【0020】
次に、ラッシングベルト51を車両外側から本体フレーム20及び車輪1の周囲に巻き付け、当該ラッシングベルト51の一側のフック53を固縛バー41の一側の端部43に接続し、他側のフック54を固縛バー41の他側の端部44に接続する。次に、ラッシングベルト51のバックル52のラチェットレバー(図示省略)を操作して帯体をリール(図示省略)に巻き取り、ラッシングベルト51を緊縛する。これにより、本体フレーム20と固縛バー41とによって車輪1の下側が挟持され、本体フレーム20の下側が車輪1の下側に固縛される。
【0021】
次に、ラッシングベルト61の一側のフック63を固縛バー41の一側の端部43に接続し、当該ラッシングベルト61の帯体を車輪1の上側の周囲に巻き付け(
図4参照)、ラッシングベルト61の他側のフック64を本体フレーム20の車両後側(他側)の本体バー31の掛止部65の1つに接続する。次に、車輪1(タイヤのサイドウォール部)の上側と本体フレーム20との間に緩衝部材66を挿入した後、ラッシングベルト61のバックル62のラチェットレバー(図示省略)を操作して帯体をリール(図示省略)に巻き取り、ラッシングベルト61を緊縛すると、本体フレーム20の上側(一側)が車両内側に引き寄せられる。これにより、車輪1と本体フレーム20とによって緩衝部材66が挟圧され、本体フレーム20の上側が車輪1に固縛される。
【0022】
ここで、従来の吊り上げ装置では、クレーンの引き上げ力が吊り上げ装置に作用したときに初めて、車輪の保持力が発生するので、当該保持力が発生して安定するまでの間、複数人の作業者によるサポートが必要であり、人手と手間とを要していた。また、クレーンの引き上げ力のバランスが四輪間で偏った場合、吊り上げ装置に引き上げ力が作用したときにいくつかの車輪が保持空間から外れる虞がある。さらに、従来の吊り上げ装置では、吊り上げた車輪を接地させると装置が車輪から外れてしまうので、再び吊り上げるには、装置を最初から車輪に取り付ける必要がある。
これに対し、本実施形態では、2つのラッシングベルト51及びラッシングベルト61(固縛手段)を緊縛することで本体フレーム20を車輪1に固縛するので、引き上げ力の有無に関わらず、一人の作業者によって車輪用取付具11を車輪1にしっかり、かつ容易に固定することができる。これにより、フック14に作用する引き上げ力が四輪で偏った場合であっても、車輪用取付具11が車輪1から外れるような事態を阻止することができる。さらに、引き上げた車輪1を接地させても車輪1から車輪用取付具11が外れることがないので、再び引き上げる場合も、車輪用取付具11を車輪1に取り付け直す必要がなく、作業を能率化することができる。
【0023】
また、従来の吊り上げ装置は、車両前後のアームが開閉する構造であるため、車輪への取り付けに時間と手間とを要していた。さらに、車両前後のアームが開閉する構造であるので、アーム支持部の剛性を確保するため、装置全体が重量化する問題があった。
これに対し、本実施形態では、本体フレーム20の本体バー21と本体バー31との交角が固定であるため、簡易な構造で要求される剛性を確保することができ、その結果、車輪用取付具11を軽量化することが可能である。
【0024】
また、従来の吊り上げ装置は、車輪(タイヤ)の内側を支持する(載せる)バーが細いので、タイヤがパンクした車輪を保持枠によってしっかり支持することができないため、タイヤがパンクした車輪に用いることができなかった。
これに対し、本実施形態では、2つのラッシングベルト51及びラッシングベルト61(固縛手段)を緊縛することにより本体フレーム20を車輪1に固縛するので、タイヤがパンクした車輪1であっても、車輪用取付具11をしっかり固縛(固定)することができる。
【0025】
また、従来の吊り上げ装置は、車両の接地した車輪に対して装置の保持枠を位置決めし、当該装置によって車両の四輪を同時に真上に引き上げることにより、車両の各車輪を各装置の保持枠に載せるように構成されているので、例えば、車両が縁石に乗り上げて車輪が地面から浮いている場合、当該浮いた車輪に装置を取り付けることができない。同様に、従来の吊り上げ装置は、直立姿勢以外の姿勢で車輪に取り付けることもできない。
これに対し、本実施形態では、本体フレーム20を車輪1に固縛して固定するように車輪用取付具11を構成したので、地面から浮いた車輪1であっても容易に、かつしっかり取り付けることができる。このように、本実施形態では、縁石に乗り上げた車両の1輪に車輪用取付具11を取り付けて、当該車両を脱出させることができる。
また、
図6に示されるように、車輪用取付具11は、直立姿勢以外の姿勢で車輪1に取り付けることができるので、フック14に接続したワイヤをウィンチ等によって巻き取ることにより、車輪1を車両前側又は車両後側へ引っ張って車両を前方又は後方へ移動させることが可能である。
さらに、車輪用取付具11は、軽量で取回しが容易であることから、その他さまざまな状況下の車両の車輪1にしっかり、かつ容易に取り付けることが可能である。
【0026】
また、本実施形態では、車輪1のトレッド部に当接される片持ちバー25,35に全ねじの棒材を適用したので、車輪用取付具11を車輪1に取り付けたときの、車輪1及び本体フレーム20に対する片持ちバー25,35の軸線に沿う方向への移動を抑止することができる。
【0027】
なお、実施形態は、前述した形態に限定されるものではなく、例えば、次のように構成することができる。
本実施形態では、ラッシングベルト51(固縛手段)を車両外側から本体フレーム20及び車輪1の周囲に巻き付け、当該ラッシングベルト51の一側のフック53を固縛バー41の一側の端部43に接続し、他側のフック54を固縛バー41の他側の端部44に接続することにより、本体フレーム20を車輪1に固縛(固定)するようにした。
前述した固縛形態は一例を示したものであり、作業者は、その場の状況に応じてラッシングベルトの巻き付け方を工夫することができる。例えば、2つのラッシングベルトを用意し、一方のラッシングベルトの一側を固縛バー41の車両前側(一側)の端部43に接続するとともに他側を本体フレーム20の一方の本体バー21の下側(他側)に接続し、他方のラッシングベルトの一側を固縛バー41の車両後側(他側)の端部44に接続するとともに他側を本体フレーム20の他方の本体バー31の下側(他側)に接続し、一方のラッシングベルトと他方のラッシングベルトとを交互に締め付けることにより、本体フレーム20の下側(他側)を車輪1に固縛するようにしてもよい。
この場合、本体フレーム20をより強固に車輪1に固縛することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 車輪、11 車輪用取付具、14 フック、20 本体フレーム、21,31 本体バー、25,35 片持ちバー、41 固縛バー(固縛手段)、51 ラッシングベルト(第1のラッシングベルト)、61 ラッシングベルト(第2のラッシングベルト)