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特開2024-67384樹脂組成物、及びそれを用いた接着剤、粘着剤、又は積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067384
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物、及びそれを用いた接着剤、粘着剤、又は積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20240510BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20240510BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20240510BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240510BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20240510BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
C08L53/02
C08L25/04
C09J153/02
B32B27/00 M
B32B27/28
B32B27/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177421
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(72)【発明者】
【氏名】安田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕貴
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK12A
4F100AK42B
4F100AK73A
4F100AL02A
4F100AL05A
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA04A
4F100CA16A
4F100CB00A
4F100CB05A
4F100GB41
4F100JD02B
4F100JD04
4F100JK06
4F100JK07
4F100JK07A
4F100JN01
4J002BC042
4J002BP011
4J002FD342
4J002GF00
4J002GP00
4J002GQ00
4J040DM011
4J040HD30
4J040HD36
4J040JB09
4J040KA23
4J040KA25
4J040KA26
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA35
4J040KA36
4J040KA38
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA06
4J040MA10
4J040NA17
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】
本発明は、接着性又は粘着性、透明性及び低透湿性に優れ、電子デバイス製造後は電子デバイス材料間が剥離しないよう十分な剥離強度が得られる樹脂組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】
スチレン系ブロック共重合体、スチレン系粘着付与樹脂及び可塑剤を含有する樹脂組成物であり、スチレン系ブロック共重合体の70~100質量%がスチレン-イソブチレン系ブロック共重合体であり、スチレン系ブロック共重合体100質量部に対して、スチレン系粘着付与樹脂を50~100質量部、可塑剤を1~15質量部含有し、23℃及び85℃における貯蔵弾性率が5.0~16.0MPaの範囲であり、120℃における貯蔵弾性率が、1.0MPa以下であり、120℃における損失正接が(tanδ)、0.6以上であり、及び[(23℃における貯蔵弾性率)-(85℃における貯蔵弾性率)]の値が6.0MPa以下である樹脂組成物とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系ブロック共重合体、スチレン系粘着付与樹脂及び可塑剤を含有する樹脂組成物であり、スチレン系ブロック共重合体の70~100質量%がスチレン-イソブチレン系ブロック共重合体であり、スチレン系ブロック共重合体100質量部に対して、スチレン系粘着付与樹脂を50~100質量部、可塑剤を1~15質量部含有し、23℃及び85℃における貯蔵弾性率が5.0~16.0MPaの範囲であり、120℃における貯蔵弾性率が、1.0MPa以下であり、120℃における損失正接(tanδ)が、0.6以上であり、及び[(23℃における貯蔵弾性率)-(85℃における貯蔵弾性率)]の値が6.0MPa以下である樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物を含有する接着剤又は粘着剤。
【請求項3】
請求項1に記載の樹脂組成物を含有する層を有する積層体。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂組成物又は請求項2に記載の接着剤若しくは粘着剤及び、基材層からなる積層体であって、基材層が、樹脂フィルム又はガスバリア層を設けた樹脂フィルムである積層体。
【請求項5】
請求項4に記載の積層体を備える電子部材又は光学部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防湿性及び接着性又は粘着性に優れた樹脂組成物、及びそれを用いた防湿性接着剤、防湿性粘着剤、又は積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置、太陽電池、薄膜二次電池等の電子デバイスは、高機能化と平行して、薄型化、軽量化及びフレキシブル化が進んでいる。
これらの電子デバイスは薄膜のフィルム、ガラス、金属、接着剤等の材料が何層にも積層されているため、これらの材料についても薄型化が顕著に求められている。
太陽電池、有機発光素子を用いた画像表示装置、電子ペーパー等の電子デバイスは水分に弱いため、低透湿材料又は防湿材料で湿度を遮断し保護する必要がある。
【0003】
そのような防湿性、接着性に優れた接着剤、コート剤となる樹脂組成物として、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、イソシアネート化合物及び有機化層状粘土を含むことを特徴とする樹脂組成物が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、ガスバリア層及び粘着剤層をそれぞれ少なくとも1層有するガスバリア性粘着シートであって、前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が、1.5×10~1.0×10Paの範囲であり、かつ、基材層を有しないことを特徴とするガスバリア性粘着シートが知られている(特許文献2参照)。
【0005】
一方、良好な透明性、耐透湿性、耐熱性、耐湿熱性、帯電防止性を併せ持った樹脂組成物として、ポリイソブチレン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、粘着付与樹脂、ポリスチレン-ポリオレフィンブロック共重合体及びイオン性界面活性剤を含有する樹脂組成物が知られている(特許文献3参照)。これらの樹脂組成物をシート状にすることにより、有機EL素子の封止材として好適に使用できることが知られている。
【0006】
低透湿性であって、高温環境下においても浮きや剥がれ等の不具合を生じない高い耐久性を有する粘着剤層を形成することができる粘着剤組成物として、ゴム系ポリマー(A)、及び粘着付与剤(B)を含有する粘着剤組成物であって、前記ゴム系ポリマー(A)が、スチレン系熱可塑性エラストマー(A1)、及び重量平均分子量が50万以上であるイソブチレン系ポリマー(A2)からなる群から選択される少なくとも1種のゴム系ポリマーを含み、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(A1)を含む場合には、天然物系粘着付与剤(B1)、石油樹脂系粘着付与剤(B2)、及びこれらの水素添加物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する粘着剤組成物が知られている(特許文献4参照)。この粘着剤組成物をバリア層又はバリア機能を持つ光学用フィルムを有機ELパネルの表面に貼り付けるための粘着剤として用いることができる。
【0007】
さらに、高温加湿環境下における片保護偏光フィルムの偏光子の劣化を抑制することができる、粘着剤層付偏光フィルムとして、厚みが10μm以下の偏光子の片側にのみ透明保護フィルムを有する片面保護偏光フィルムであって、前記粘着剤層Aは、前記偏光子の前記透明保護フィルムを有さない側に設けられており、前記粘着剤層Aは、透湿度が300g/(m・24h)以下であり、厚みが50μm以下であることを特徴とする粘着剤層付偏光フィルムが知られている(特許文献5参照)。粘着剤は、スチレン系熱可塑性エラストマー等のゴム系ポリマーを主成分として、粘着付与樹脂を含ませることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-028892号公報
【特許文献2】国際公開2013-18602号公報
【特許文献3】特開2017-122136号公報
【特許文献4】特開2017-057382号公報
【特許文献5】特開2021-101249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1記載の樹脂組成物の防湿性は有機化層状粘土を添加することで付与されているため、透明性が十分でなく、画像表示装置等での使用は好ましくないという問題があった。
【0010】
特許文献2に記載の粘着剤層にはガスバリア性は付与されていないため、粘着シート側面からの湿気の混入を抑制することは難しく、長期的に電子デバイスに使用する場合、故障の原因となる虞れがあるという問題があった。
【0011】
粘着剤には電子デバイス材料間が剥離しないよう十分な粘着強度が求められるが、相反して、組み立て時に容易に電子デバイス材料間を再剥離し、位置調整や不良品の再利用を行える機能も求められる。
本発明は、接着性又は粘着性、透明性及び低透湿性に優れ、既存の設備を使用しながらも組み立て工程時には再剥離が行え、電子デバイス製造後は電子デバイス材料間が剥離しないよう十分な剥離強度が得られる樹脂組成物、それを用いた接着剤又は粘着剤、及び積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有するスチレン系ブロック共重合体、特定の割合のスチレン系粘着付与樹脂及び可塑剤を含有する樹脂組成物であって、特定の値の貯蔵弾性率及び損失正接を有する樹脂組成物を用いることで本課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに到った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下に示す事項で特定されるとおりである。
[1]スチレン系ブロック共重合体、スチレン系粘着付与樹脂及び可塑剤を含有する樹脂組成物であり、スチレン系ブロック共重合体の70~100質量%がスチレン-イソブチレン系ブロック共重合体であり、スチレン系ブロック共重合体100質量部に対して、スチレン系粘着付与樹脂を50~100質量部、可塑剤を1~15質量部含有し、23℃及び85℃における貯蔵弾性率が5.0~16.0MPaの範囲であり、120℃における貯蔵弾性率が、1.0MPa以下であり、120℃における損失正接(tanδ)が、0.6以上であり、及び[(23℃における貯蔵弾性率)-(85℃における貯蔵弾性率)]の値が6.0MPa以下である樹脂組成物。
[2][1]に記載の樹脂組成物を含有する接着剤又は粘着剤。
[3][1]に記載の樹脂組成物を含有する層を有する積層体。
[4][1]に記載の樹脂組成物又は[2]に記載の接着剤若しくは粘着剤及び、基材層からなる積層体であって、基材層が、樹脂フィルム又はガスバリア層を設けた樹脂フィルムである積層体。
[5][4]に記載の積層体を備える電子部材又は光学部材。
【発明の効果】
【0014】
本発明の樹脂組成物は、接着性又は粘着性、透明性及び低透湿性に優れる。さらに、本発明の樹脂組成物を電子デバイス等の封止材の接着剤又は粘着剤として用いた場合には、既存の設備を使用しながらも電子デバイスの組み立て工程時には再剥離が行え、電子デバイス製造後は電子デバイス材料間が剥離しないよう十分な剥離強度が得られる接着剤又は粘着剤とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の樹脂組成物は、スチレン系ブロック共重合体、スチレン系粘着付与樹脂及び可塑剤を含有する樹脂組成物であり、スチレン系ブロック共重合体の70~100質量%がスチレン-イソブチレン系ブロック共重合体であり、スチレン系ブロック共重合体100質量部に対して、スチレン系粘着付与樹脂を50~100質量部、可塑剤を1~15質量部含有し、23℃及び85℃における貯蔵弾性率が5.0~16.0MPaの範囲であり、120℃における貯蔵弾性率が、1.0MPa以下であり、120℃における損失正接(tanδ)が、0.6以上であり、及び23℃から85℃における貯蔵弾性率の変化が6.0MPa以下である。
【0016】
本発明の樹脂組成物に用いられるスチレン系ブロック共重合体は、上記樹脂組成物の特性を満たす範囲であって、スチレン又はスチレン誘導体をモノマーとして付加重合により誘導される構成単位を有するブロック共重合体であれば、その他の構成単位の構造、分子量等は特に制限されない。
【0017】
上記スチレン誘導体として、具体的には、o-、m-又はp-メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、2,6-ジメチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、α-メチル-o-メチルスチレン、α-メチル-m-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、β-メチル-o-メチルスチレン、β-メチル-m-メチルスチレン、β-メチル-p-メチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、α-メチル-2,6-ジメチルスチレン、α-メチル-2,4-ジメチルスチレン、β-メチル-2,6-ジメチルスチレン、β-メチル-2,4-ジメチルスチレン、o-、m-又はp-クロロスチレン、2,6-ジクロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、α-クロロ-o-クロロスチレン、α-クロロ-m-クロロスチレン、α-クロロ-p-クロロスチレン、β-クロロ-o-クロロスチレン、β-クロロ-m-クロロスチレン、β-クロロ-p-クロロスチレン、2,4,6-トリクロロスチレン、α-クロロ-2,6-ジクロロスチレン、α-クロロ-2,4-ジクロロスチレン、β-クロロ-2,6-ジクロロスチレン、β-クロロ-2,4-ジクロロスチレン、o-、m-又はp-t-ブチルスチレン、o-、m-又はp-メトキシスチレン、o-、m-又はp-クロロメチルスチレン、o-、m-又はp-ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン、インデン、ビニルナフタレン等を挙げることができる。
【0018】
本発明に用いられるスチレン系ブロック共重合として、具体的には、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS、SISの水素添加物)、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体(SEP、スチレン-イソプレンブロック共重合体の水素添加物)、スチレン-イソブチレンブロック共重合体(SIB)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等を挙げることができる。これらは一種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
より具体的には、(株)クラレ製のSEPTON、HYBRAR、旭化成ケミカルズ(株)製のタフテック、(株)カネカ製のSIBSTAR等を挙げることができる。
【0020】
上記スチレン系ブロック共重合体の質量平均分子量としては、特に限定されるものではないが、5万~50万程度であることが好ましく、5万~30万程度であることがより好ましく、5万~25万程度であることがより一層好ましい。スチレン系ブロック共重合体の質量平均分子量が前記範囲にあることで、ポリマーの凝集力と粘弾性を両立できるため好ましい。
【0021】
上記スチレン系共重合体の分子量分布(質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(Mw/Mn)で表される数値)は、1.0~3.0の範囲が好ましく、1.0~2.0の範囲がより好ましい。3.0を超える場合は、分子量の均一性が低く、溶融状態での粘度が低くなり過ぎるかまたは高くなり過ぎる場合があり、加工安定性の点で好ましくなく、作業性が悪化する場合がある。そのため、特に、樹脂の溶融粘度を低粘度化できることから2.0より小さいことが好ましい。
なお、上記分子量は、いずれもゲルパーミエーションクロマトグラムで測定したポリスチレン換算分子量である。
【0022】
前記スチレン系ブロック共重合体中のスチレン含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、5~70質量%程度であることが好ましく、5~40質量%程度であることがより好ましく、10~20質量%程度であることがより一層好ましい。スチレン系共重合体中のスチレン含有量が前記範囲であることにより、スチレン部位による凝集力を保ちながら、ソフトセグメントによる粘弾性を確保できるため好ましい。
【0023】
本発明に用いられるスチレン系ブロック共重合体中、スチレン-イソブチレンブロック共重合体が70~100質量%の範囲である。スチレン-イソブチレンブロック共重合体は、スチレン又は上記例示したようなスチレン誘導体を単量体として付加重合により得られる構成単位、及びイソブチレンを単量体として付加重合により得られる構成単位をブロック結合で有する共重合体であれば、その構造は特に制限されず、ジブロック体、トリブロック体、テトラブロック体、ラジアル体(スター型)等いずれであってもよい。また、これらは1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
また、上記スチレン-イソブチレンブロック共重合体は、上記した本発明の樹脂組成物の特性を逸脱しない範囲で、様々な官能基で変性されていてもよい。そのような官能基として、具体的には、カルボキシル基、酸無水物基[-C(O)-O-C(O)-]、エポキシ基、アミノ基、水酸基、オキサゾリン基、オキセタン基、シアネート基、フェノール基[-Ph-OH]、ヒドラジド基、アミド基等を挙げることができる。また、これらはいずれか1種であっても、2種以上であってもよい。
【0025】
上記スチレン-イソブチレンブロック共重合体として、具体的には、カネカ社製「SIBSTAR(登録商標)102T」(スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、数平均分子量:100,000、スチレン含量:15質量%)、カネカ社製「SIBSTAR103T」(スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、数平均分子量:100,000、スチレン含量:30質量%)、カネカ社製「SIBSTAR072T」(スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、数平均分子量:40,000、スチレン含量:23質量%)、カネカ社製「SIBSTAR073T」(スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、数平均分子量:40,000、スチレン含量:30質量%)、カネカ社製「SIBSTAR062T」(スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、数平均分子量:40,000、スチレン含量:23質量%)、カネカ社製「SIBSTAR062H」(スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体/スチレン-イソブチレンブロック共重合体、数平均分子量:30,000、スチレン含量:23質量%)、カネカ社製「SIBSTAR062M」(スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体/スチレン-イソブチレンブロック共重合体、数平均分子量:30,000、スチレン含量:23質量%)、星光PMC社製「T-YP757B」(無水マレイン酸変性スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、酸無水物基濃度:0.464mmol/g、数平均分子量:100,000)、星光PMC社製「T-YP766」(グリシジルメタクリレート変性スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:100,000)、星光PMC社製「T-YP8920」(無水マレイン酸変性スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体、酸無水物基濃度:0.464mmol/g、数平均分子量:35,800)、星光PMC社製「T-YP8930」(グリシジルメタクリレート変性スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:48,700)等を挙げることができる。
【0026】
本発明の樹脂組成物には、上記特性を逸脱しない範囲で、スチレン系ブロック共重合体以外の熱可塑性エラストマーを含有させることができる。そのような熱可塑性エラストマーとして、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレンとEPDM(三元系エチレン-プロピレン-ジエンゴム)とのポリマーブレンド等ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、EPDM相を高度に架橋してPPの連続相に細かく分散したEPDMとPPとの複合体、アクリロニトリル-ブタジエンゴム相を高度に架橋してPPの連続相に細かく分散したNBRとPPとの複合体、天然ゴム相を高度に架橋してPPの連続相に細かく分散したNRとPPとの複合体、エポキシ化天然ゴム相を高度に架橋してPPの連続相に細かく分散したENRとPPとの複合体、ブチルゴム相を高度に架橋してPPの連続相に細かく分散したIIRとPPとの複合体、アクリロニトリル-ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンド等のブレンド系熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。
【0027】
本発明に用いられるスチレン系粘着付与樹脂は、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、イソプロペニルトルエン、インデン等のエチレン性の炭素-炭素二重結合を有する芳香族化合物の付加重合体であり、通常、質量平均分子量が1,000~10,000のものが好ましい。また、前記スチレン系粘着付与樹脂は、前記単量体のホモポリマー、又は前記単量体を2種以上用いたコポリマーである。前記コポリマーの場合に、重合様式は特に制限されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体等を挙げることができる。
【0028】
前記スチレン系粘着付与樹脂は、前記芳香族化合物以外の単量体を付加重合して得られる構成単位を有していてもよい。そのような前記芳香族化合物以外の単量体として、具体的には、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-2-ブテン等の炭素数5の脂肪族オレフィン、ジシクシロペンタジエン、テルペン、ピネン、ジペンテン等の脂環族オレフィンなどを挙げることができる。さらに、フェノール化合物や無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸などで変性したものであってもよい。
【0029】
これらのなかでも、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、イソプロペニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物を主成分とするホモポリマーまたはコポリマーが好ましく、特に耐候性に優れることからスチレンまたはα-メチルスチレンを主成分とするホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。
前記したスチレン系粘着付与樹脂は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
粘着付与樹脂の軟化点(軟化温度)は、特に限定されない。低温でも良好な接着性を発揮しやすくする観点から、粘着付与樹脂の軟化点は、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下であり、150℃以下、140℃以下、又は135℃以下がより一層好ましい。また、室温以上の温度域において凝集力が低下することを抑制する観点から、粘着付与樹脂の軟化点は、60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、90℃以上であることがより一層好ましい。軟化点が異なる複数種類の粘着付与樹脂を用いる場合には、少なくとも一種類の粘着付与樹脂が上記軟化点を有することが好ましい。例えば、粘着付与樹脂の合計量のうち50重量%以上、70重量%以上、90重量%以上または100重量%が上記軟化点を有することが好ましい。なお、粘着付与樹脂の軟化点は、メーカーカタログに記載の値を採用することができ、あるいはJIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定することができる。
【0031】
上記したスチレン系粘着付与樹脂として、より具体的には、Endex 155(軟化点153℃、EASTMAN社製)、Kristalex 5140(軟化点139℃、EASTMAN社製)、FTR0150(軟化点145℃、三井化学社製)、FTR2140(137℃、三井化学社製)、Sylvales SA140(軟化点140℃、アリゾナケミカル社製)、Kristalex 1120(軟化点120℃、EASTMAN社製)、FTR2120(軟化点125℃、三井化学社製)、FTR6110(軟化点110℃、三井化学社製)、FTR6125(軟化点125℃、三井化学社製)、FTR8120(軟化点120℃、三井化学社製)等を挙げることができる。
【0032】
本発明のスチレン系粘着付与樹脂を、上記したスチレン系ブロック共重合体100質量部に対して、50~100質量部用いるのが好ましく、50~80質量部用いるのがより好ましく、60~50質量部用いるのがより一層好ましい。100質量部より大きい場合には、室温で樹脂組成物が硬くなりすぎて、荷重が印加した際に割れてしまう虞れがある。50質量未満では、加熱時に軟化し難くなり、加熱後の剥離強度が低下する虞れがある。
【0033】
本発明の樹脂組成物には、上記した樹脂組成物の特性を逸脱しない範囲で、スチレン系粘着付与樹脂以外の粘着付与樹脂を含有させることができる。そのような粘着付与樹脂として、具体的には、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジン、ロジングリセリンエステル、水添ロジングリセリンエステル等のロジン系樹脂、テルペン樹脂(α-ピネン主体、β-ピネン主体、ジペンテン主体等)、水素化テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、水素化芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、テルペンフェノール共重合樹脂、水素化テルペンフェノール共重合樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、水素化ジシクロペンタジエン系樹脂等の脂環族系樹脂、C5系炭化水素樹脂、水素化C5系炭化水素樹脂、C5/C9系炭化水素樹脂、水素化C5/C9系炭化水素樹脂などの脂肪族系炭化水素樹脂、水素化C9系炭化水素樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等フェノール樹脂、水素化芳香族炭化水素樹脂などを挙げることができる。
【0034】
より具体的には、アイマーブP140(出光興産社製、軟化点140℃)、ECR5340(エクソンモービル社製、軟化点140℃)、アルコンP140(荒川化学社製、軟化点140℃)、アイマーブP125(出光興産社製、軟化点125℃)、アルコンP125(荒川化学社製、軟化点125℃)、アルコンP100(荒川化学社製、軟化点100℃)、リガライトR1125(イーストマンケミカル社製、軟化点125℃)、ECR5320(エクソンモービル社製、軟化点120℃)、Sukorez SU-100(KOLON社製、軟化点105℃)、クイントンCX495(日本ゼオン社製、軟化点96℃)等を挙げることができる。
【0035】
本発明の樹脂組成物に用いられる可塑剤は、樹脂組成物の接着力とタックのバランスを向上させることができるものであれば、特に制限されない。具体的には、樹脂組成物に用いられる可塑剤として、ジブチルフタレート、ジn-オクチルフタレート、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート、ビス(2-エチルヘキシル)テレフタレート、ジn-デシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジn-オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類、ビス(2-エチルヘキシル)セバケート、ジn-ブチルセバケート等のセバシン酸エステル類、ビス(2-エチルヘキシル)アゼレート等のアゼライン酸エステル類、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル類、塩素化パラフィン等のパラフィン類、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ変性植物油類、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類、トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル類、アジピン酸と1,3-ブチレングリコールとのエステル化物、安息香酸とジプロピレングリコールのエステル化物等エステルオリゴマー類、イソ酪酸酢酸スクロース等の糖誘導体、低分子量ポリブテン、低分子量ポリイソブチレン、低分子量ポリイソプレンなどの低分子量重合体、ポリアクリル酸n-ブチル、ポリアクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリルオリゴマー、ダイアナプロセスオイルPWシリーズ(出光興産株式会社製)、SUNPURE LW70及びPシリーズ(日本サン石油株式会社製)等のパラフィン系オイル、SUNPURE N90及びNX90、SUNTHENEシリーズ(日本サン石油株式会社製)等のナフテン系オイル、JSO AROMA790(日本サン石油株式会社製)、Vivatec500(H&R社製)等のアロマ系オイル等を挙げることができる。これら可塑剤は1種単独で又は2種以上を混合して用いることできる。
【0036】
可塑剤の含有量は、スチレン系ブロック共重合体100質量部に対して1~15質量部である。1質量部未満では、本発明の樹脂組成物に十分なタック性を付与することができず、15質量部より大きいと、本発明の樹脂組成物に十分な接着力を持たせることができない。
【0037】
本発明の樹脂組成物の貯蔵弾性率G’、損失正接(tanδ)は、周波数10Hzの粘弾性測定により求められる。損失正接(tanδ)は、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の比G”/G’である。貯蔵弾性率G’は、材料が変形する際に弾性エネルギーとして貯蔵される部分に相当し、硬さの程度を表す指標である。樹脂組成物の貯蔵弾性率が大きいほど、接着保持力が高く、歪による剥がれが抑制される傾向がある。損失弾性率G”は、材料が変形する際に内部摩擦等により散逸される損失エネルギー部分に相当し、粘性の程度を表す。損失正接(tanδ)が大きいほど粘性の傾向が強く、変形挙動が液体的となり、反発弾性エネルギーが小さくなる傾向がある。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、23℃及び85℃における貯蔵弾性率が5.0~16.0MPaの範囲であり、120℃における貯蔵弾性率が1.0MPa以下であり、[(23℃における貯蔵弾性率)-(85℃における貯蔵弾性率)]の値が6.0MPa以下である。さらに、120℃における損失正接(tanδ)が、0.6以上である。樹脂組成物を接着剤として用いて被着物に部材を接着した場合に、このような範囲に設定することにより、前記部材の再剥離が可能となり、接着後においても十分な剥離強度を得ることができる。
【0039】
本発明の樹脂組成物には、上記した樹脂組成物の特性を逸脱しない範囲で各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、具体的には、染料、有機顔料、無機顔料、無機補強剤、アクリル加工助剤等の加工助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、ワックス、結晶核剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、防徽剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填材、有機充填材等を挙げることができる。
【0040】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、本発明の樹脂組成物を製造することが可能であれば特に限定されない。具体的には、スチレン系ブロック共重合体、スチレン系粘着付与樹脂及び可塑剤、さらに必要に応じて有機溶剤、酸化防止剤、各種添加剤等を、溶液混合、溶融混合等により混合する方法等を挙げることができる。
【0041】
溶融混合は、例えば、機械加圧式混練機、ロール成形機、単軸押出し機、2軸押出し機等の押出し成形機等のプラスチックまたはゴムの加工に使用される混練成形機により溶融混合する方法が挙げられる。
【0042】
溶液混合は、例えば、攪拌機付き溶解設備を用いて室温混合する方法、加熱混合する方法等が挙げられ、溶解が速いことから加熱混合する方法が好ましく用いられる。加熱混合する際の温度は30~150℃が好ましく、50~110℃がより好ましい。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、接着性又は粘着性に優れることから、各種基材への他の部材を接着又は粘着するための接着剤又は粘着剤として使用することができる。
【0044】
被着物となる各種基材、又は接着させる部材として、具体的には、樹脂フィルム、発泡体、布、不織布、合成繊維、合成皮革、皮革、金属、金属酸化物、ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紙、木材、ガラス、石材、陶器、磁器等を挙げることができる。
【0045】
本発明の樹脂組成物を接着剤又は粘着剤として用いる場合、必要に応じて本発明樹脂組成物に各種添加剤を含有させることができる。各種添加剤として、具体的には、シランカップリング剤、リン酸又はリン酸誘導体、レベリング剤又は消泡剤、充填剤、噴射剤、可塑剤、超可塑剤、湿潤剤、難燃剤、粘度調整剤、保存剤、安定剤、着色剤等の公知の添加剤を挙げることができる。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、各種基材と組み合わせることにより、積層体とすることができる。各種基材として、具体的には、樹脂フィルム、発泡体、布、不織布、合成繊維、合成皮革、皮革、金属、金属酸化物、ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紙、木材、ガラス、石材、陶器、磁器等を挙げることができる。中でも樹脂フィルムが好ましい。
【0047】
樹脂フィルムとして、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、4-フッ化エチレン-パークロロアルコキシ共重合体、4-フッ化エチレン-6-フッ化プロピレン共重合体、2-エチレン-4-フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等のフッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレン系樹脂鹸化物フィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを挙げることができる。中でも、耐熱性、耐久性に優れることから、ポリエステルフィルム、フッ素樹脂フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリフッ化ビニルフィルムが特に好ましい。
【0048】
樹脂フィルムには、ガスバリア層を設けた樹脂フィルムであってもよい。ガスバリア層として、具体的には、無機蒸着膜からなるガスバリア層、ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層、高分子化合物を含む層にイオンを注入して得られるガスバリア層等を挙げることができる。これらの中でも、薄く、ガスバリア性に優れる層を効率よく形成できることから、無機蒸着膜からなるガスバリア層、及び高分子化合物を含む層にイオンを注入して得られるガスバリア層を好ましく挙げることができる。
【0049】
無機蒸着膜として、具体的には、無機化合物、金属等の蒸着膜を挙げることができる。無機化合物の蒸着膜の原料として、具体的には、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等の無機酸化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン等の無機窒化物、無機炭化物、無機硫化物、酸化窒化ケイ素等の無機酸化窒化物、無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化炭化物などを挙げることができる。
金属の蒸着膜の原料としては、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、スズ等を挙げることができる。これらは、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
これらの中でも、ガスバリア性の点から、無機酸化物、無機窒化物又は金属を原料とする無機蒸着膜が好ましく、透明性の点から、無機酸化物又は無機窒化物を原料とする無機蒸着膜がより好ましい。また、無機蒸着膜は、単層でもよく、多層でもよい。
【0051】
無機蒸着膜の厚みは、ガスバリア性と取り扱い性の観点から、好ましくは10~2000nm、より好ましくは20~1000nm、より一層好ましくは30~500nm、更に好ましくは40~200nmの範囲である。
【0052】
無機蒸着膜を形成する方法として、具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等のCVD法などを挙げることができる。
【0053】
高分子化合物を含む層にイオン注入して得られるガスバリア層において、用いる高分子化合物としては、例えば、ケイ素系高分子化合物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体、及びこれらの高分子の二種以上の組合せ等が挙げられる。これらの中でも、ケイ素系高分子化合物が好ましい。
【0054】
高分子化合物を含む層の厚みは、ガスバリア性と取り扱い性の観点から、好ましくは10~2000nm、より好ましくは20~1000nm、より一層好ましくは30~500nm、さらに好ましくは40~200nmの範囲である。
【0055】
高分子化合物を含む層に注入されるイオンとして、具体的には、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオン、フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、クロム、チタン、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、アルミニウム等の金属のイオン等などを挙げることができる。
【0056】
これらの中でも、より簡便に注入することができ、優れたガスバリア性と透明性を有するガスバリア層が得られることから、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のイオンが好ましい。
【0057】
イオンの注入量やイオンが注入される部分の厚みは、ガスバリア層の厚み、ガスバリア性粘着シートの使用目的等を考慮して適宜決定することができる。
イオンが注入される部分の厚みは、通常、イオンが注入される面から10~1000nm、好ましくは10~200nmである。その厚みは、イオンの種類や印加電圧、処理時間等の注入条件により制御することができる。
【0058】
イオンを注入する方法としては、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法(プラズマイオン注入法)等を挙げることができる。これらの中でも、簡便に優れたガスバリア性等を有するガスバリア性粘着シートが得られることから、プラズマイオン注入法が好ましい。
【0059】
プラズマイオン注入法は、例えば、プラズマ生成ガスを含む雰囲気下でプラズマを発生させ、高分子化合物を含む層に負の高電圧パルスを印加することにより、該プラズマ中のイオン(陽イオン)を、高分子化合物を含む層の表面部に注入して行うことができる。
【0060】
本発明の積層体の製造方法として、具体的には、ロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、グラビアコーター法等による溶液塗工方法、溶液キャスト法、押出しラミネート法、サーマルラミネート法、ヒートシール法、真空ラミネート法等を挙げることができる。中でも、厚み精度等の品質安定性の観点から、溶液塗工法、溶液キャスト法とサーマルラミネート法を組み合わせた方法が好ましい。
【0061】
本発明の電子部材又は光学部材は、本発明の積層体を備える。
電子部材として、具体的には、液晶ディスプレイ部材、有機ELディスプレイ部材、無機ELディスプレイ部材、電子ペーパー部材、太陽電池、熱電変換部材等のフレキシブル基板などを挙げることができる。
光学部材として、具体的には、光学フィルター、波長変換デバイス、調光デバイス、偏光板、位相差板等をあげることができる。
【0062】
本発明の電子部材及び光学部材は、本発明の積層体を備えていることから、ガスバリア性に優れ、水蒸気等のガスの浸入を防ぐことができる。
また、本発明の電子部材及び光学部材は、軽量で薄型化が可能であり、かつ、耐久性が高く、丸めたり折り曲げたりした場合や、高温条件下や高湿条件下で用いる場合においても、本発明の積層体が剥がれず、ガスバリア性が低下しにくくなっている。
【実施例0063】
以下、実施例を用いて本発明の詳細を説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されない。
【実施例0064】
スチレン系ブロック共重合体(カネカ社製、SIBSTAR(登録商標)062H)100質量部、スチレン系粘着付与樹脂(ヤスハラケミカル社製、YSレジンSX-100)50質量部、可塑剤(ENEOS社製、ポリブテンHV100)10質量部をトルエン160質量部に攪拌溶解し樹脂組成物溶液1を得た。
【0065】
得られた樹脂組成物溶液1を剥離性PETフィルム上に、乾燥後の厚みが25μmになるように塗工し、エアバスで100℃×3分乾燥させ積層体1を得た。得られた積層体1の樹脂組成物層上に剥離性PETフィルムを100℃で熱ラミネートして、粘着シート1を得た。
【実施例0066】
スチレン系ブロック共重合体(カネカ社製、SIBSTAR(登録商標)062H)100質量部、スチレン系粘着付与樹脂(ヤスハラケミカル社製、YSレジンSX-100)80質量部、可塑剤(ENEOS社製、ポリブテンHV100)10質量部をトルエン160質量部に攪拌溶解し樹脂組成物溶液2を得た。
得られた樹脂組成物溶液2を剥離性PETフィルム上に、乾燥後の厚みが25μmになるように塗工し、エアバスで100℃×3分乾燥させ積層体2を得た。得られた積層体2の樹脂組成物層上に剥離性PETフィルムを100℃で熱ラミネートして、粘着シート2を得た。
【0067】
[比較例1]
スチレン系ブロック共重合体(カネカ社製、SIBSTAR(登録商標)062H)100質量部、スチレン系粘着付与樹脂(ヤスハラケミカル社製、YSレジンSX-100)50質量部、水素添加脂環族粘着付与樹脂(KOLON社製、Sukorez SU-100)25質量部、可塑剤(ENEOS社製、ポリブテンHV100)10質量部をトルエン160質量部に攪拌溶解し樹脂組成物溶液3を得た。
得られた樹脂組成物溶液3を剥離性PETフィルム上に、乾燥後の厚みが25μmになるように塗工し、エアバスで100℃×3分乾燥させ積層体3を得た。得られた積層体3の樹脂組成物層上に剥離性PETフィルムを100℃で熱ラミネートして、粘着シート3を得た。
【0068】
得られた粘着シート1,2及び粘着シート3を以下の方法で評価を行った。
<透湿度試験>
得られた各粘着シート1~3を210mm幅×300mm長になるように裁断し、両面に担持された剥離性PETフィルムを剥離し、ローラーを用いて各粘着シート1~3の両面に厚さ25μmのPETフィルムに貼り合わせ、その後80℃、0.5MPa条件下で10分間オートクレーブ処理を行って試験片とした。
得られた試験片をJIS Z 0208に基づき、透湿カップを作製して測定した(条件B:40±0.5℃、90±2%RH)。得られた結果を透湿度とした。
【0069】
<全光線透過率>
分光ヘーズメーター(日本電色製工業社製、SH7000)を用いてJIS K 7361に準じて測定した。全光線透過率は、91%以上で「◎」(特に優れている)、90%以上で「〇」(良好)、89%以上で「△」(実用上問題ないレベル)89%未満で「×」(不良)とした。
【0070】
<23℃で1日静置した後の剥離強度試験>
得られた各粘着シート1~3を25mm幅×150mm長になるように裁断し、担持された剥離性PETフィルムの片面を剥離した後、ローラーを用いて厚さ100μmのPETフィルム(26mm幅×160mm長)に貼り合わせた。その後、80℃、0.5MPa条件下で10分間オートクレーブ処理を行なった。もう一方の剥離性PETフィルムを剥離し、ローラーを用いて各粘着シート1~3を厚さ200μmのPETフィルム(60mm×200mm)に貼り合わせて試験片を得た。
得られた試験片を23℃、50%RH条件下で一昼夜静置し、引張り試験機で速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離し、得られた剥離強度を粘着力とした。
剥離強度は、0.05~0.50N未満/25mmで「◎」(特に優れている)、0.01~0.05N未満/25mm、0.50~1.00N未満/25mmで「〇」(良好)、1.00N以上/25mmで「×」(接着不可)とした。
【0071】
<120℃で5分静置した後の剥離強度試験>
23℃×1日後剥離強度試験と同様に得られた試験片を、120℃に加温したエアバス内で5分間静置し、23℃、50%RH条件下で2時間静置した。その後、引張り試験機で速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離し、得られた剥離強度を粘着力とした。
剥離強度は、8N以上/25mmで「◎」(特に優れている)、4~8N未満/25mmで「〇」(良好)、4N未満/25mmで「×」(接着不可)とした。
【0072】
<損失正接(tanδ)及び貯蔵弾性率(G’)の測定>
得られた各粘着シート1~3の剥離性PETフィルムを剥がして重ね合わせ、50mm幅×50mm長×2mm高の粘着シート1~3のサンプルを作成した。粘着シート1~3のサンプルを直径8mmの円になるように裁断し試験片を得た。得られた試験片の動的粘弾性を粘弾性測定装置(TA Instruments社製、Disco-veryHR-2)を用いて測定し、23℃、85℃及び120℃における貯蔵弾性率G’及び損失正接(tanδ)を得た。測定は下記条件にて行った。
印加周波数:10Hz
法線応力:0.4N
昇温速度:5℃/min
【0073】
評価結果をまとめて表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
なお、以下の項目を基準に◎、〇、×で総合評価を行った。
◎:透湿度が10.0g/m2/day以下かつ23℃1日後の剥離強度が0.5N以下かつ120℃5分後の剥離強度が4.0N以上
〇:透湿度が10.0g/m2/day以下かつ23℃1日後の剥離強度が1.5N以下かつ120℃5分後の剥離強度が4.0N以上
×:透湿度が10.0g/m2/dayより大きい、23℃1日後の剥離強度が2.0N以上、120℃5分後の剥離強度が4.0Nより小さいのいずれか一つ以上である場合
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の樹脂組成物は、透湿度が低く、透明性が高く、加熱加工しても再剥離が容易であることから、有機ELパネル、液晶パネル等電子部品、光学部品の封止材として有用である。