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特開2024-6739温度調節装置、温度調節方法、及び温度調節プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006739
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】温度調節装置、温度調節方法、及び温度調節プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/08 20060101AFI20240110BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240110BHJP
【FI】
H02P27/08
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107915
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】柏▲崎▼ 貴司
(72)【発明者】
【氏名】青木 康明
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE48
5H505EE49
5H505GG04
5H505HA10
5H505HB01
5H505HB05
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505JJ24
5H505JJ29
5H505LL01
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL41
5H505LL44
5H505LL45
5H505LL58
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA05
5H770DA10
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA07Z
5H770JA09X
5H770PA11
5H770PA31
5H770PA41
(57)【要約】
【課題】回転電機の出力を維持しつつ、所望の発熱量を得ることができる温度調節装置、温度調節方法、及び温度調節プログラムを提供すること。
【解決手段】温度調節装置10は、5相のステータ巻線21を有する多相交流式の回転電機20と、インバータ30と、インバータ30を制御する制御装置50と、冷媒通路40と、を備え、冷媒通路40を流れる冷却水の温度を調整することにより、冷媒通路40に熱的に接続される蓄電池12の温度を調節する。制御装置50は、インバータのスイッチング制御を実施して、相電流を各相のステータ巻線21に入力させるスイッチ制御部と、昇温要求を入力し、冷却水の温度を調整する温度制御部と、を備える。制御装置50は、冷却水の温度を昇温させると決定された場合、いずれか1相の相電流の入力を停止するとともに、残り4相の相電流を入力させ、回転電機20を駆動させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子巻線(21)を有する多相交流式の回転電機(20)と、前記電機子巻線に電気的に接続されるインバータ(30)と、前記インバータを制御する制御装置(50)と、前記インバータ及び前記回転電機のうち少なくともいずれか一方に対して熱的に接続される冷媒通路(40)と、を備え、前記冷媒通路を流れる冷媒の温度を調整することにより、前記冷媒通路に熱的に接続される対象部材(12)の温度を調節する温度調節装置(10)であって、
前記制御装置は、
前記インバータのスイッチング制御を実施して、相電流を各相の前記電機子巻線に入力させるスイッチ制御部と、
昇温要求を入力し、前記冷媒の温度を調整する温度制御部と、を備え、
前記スイッチ制御部は、前記温度制御部によって、前記冷媒の温度を昇温させると決定された場合、いずれか1相又は複数相の前記電機子巻線への前記相電流の入力を停止するとともに、残り3相以上の前記電機子巻線に前記相電流を入力させ、前記回転電機を駆動させる温度調節装置。
【請求項2】
前記スイッチ制御部は、いずれか1相又は複数相の前記相電流の入力を停止する場合、残りの前記相電流を増大させ、かつ、前記相電流の位相を変更する請求項1に記載の温度調節装置。
【請求項3】
前記相電流の入力を停止させない前記電機子巻線によって形成される回転磁界が円形状となるように、前記相電流の入力を停止させない各相の前記電機子巻線に入力される相電流の位相を指定する電圧指令値が設定される請求項2に記載の温度調節装置。
【請求項4】
前記電圧指令値は、停止させる相、要求トルク及び回転数に基づいてマップを参照して特定される請求項3に記載の温度調節装置。
【請求項5】
前記スイッチ制御部は、いずれか1相又は複数相の前記相電流の入力を停止する場合、前記相電流の入力を停止させない前記電機子巻線のうち、停止させる相よりも電気角において1つ前の相の相電流の位相を遅角させるとともに、停止させる相よりも電気角において1つ後の相の相電流の位相を進角させる請求項1~4のうちいずれか1項に記載の温度調節装置。
【請求項6】
前記スイッチ制御部は、いずれか1相又は複数相の相電流の入力を停止する場合、所定の変更タイミングで、前記相電流の入力を停止させる相を変更する請求項1~4のうちいずれか1項に記載の温度調節装置。
【請求項7】
電機子巻線(21)を有する多相交流式の回転電機(20)と、前記電機子巻線に電気的に接続されるインバータ(30)と、前記インバータを制御する制御装置(50)と、前記インバータ及び前記回転電機のうち少なくともいずれか一方に対して熱的に接続される冷媒通路(40)と、を備え、前記冷媒通路を流れる冷媒の温度を調整することにより、前記冷媒通路に熱的に接続される対象部材(12)の温度を調節する温度調節装置(10)の前記制御装置が実施する温度調節方法であって、
前記インバータのスイッチング制御を実施して、相電流を各相の前記電機子巻線に入力させるスイッチ制御ステップと、
昇温要求を入力し、前記冷媒の温度を調整する温度制御ステップと、を有し、
前記スイッチ制御ステップでは、前記温度制御ステップにおいて、前記冷媒の温度を昇温させると決定された場合、いずれか1相又は複数相の前記電機子巻線への前記相電流の入力を停止するとともに、残り3相以上の前記電機子巻線に前記相電流を入力させ、前記回転電機を駆動させる温度調節方法。
【請求項8】
電機子巻線(21)を有する多相交流式の回転電機(20)と、前記電機子巻線に電気的に接続されるインバータ(30)と、前記インバータを制御する制御装置(50)と、前記インバータ及び前記回転電機のうち少なくともいずれか一方に対して熱的に接続される冷媒通路(40)と、を備え、前記冷媒通路を流れる冷媒の温度を調整することにより、前記冷媒通路に熱的に接続される対象部材(12)の温度を調節する温度調節装置(10)の前記制御装置が実施する温度調節プログラムであって、
前記インバータのスイッチング制御を実施して、相電流を各相の前記電機子巻線に入力させるスイッチ制御ステップと、
昇温要求を入力し、前記冷媒の温度を調整する温度制御ステップと、を有し、
前記スイッチ制御ステップでは、前記温度制御ステップにおいて、前記冷媒の温度を昇温させると決定された場合、いずれか1相又は複数相の前記電機子巻線への前記相電流の入力を停止するとともに、残り3相以上の前記電機子巻線に前記相電流を入力させ、前記回転電機を駆動させる温度調節プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調節装置、温度調節方法、及び温度調節プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータに接続されたインバータにおける電力損失を意図的に大きくし、当該電力損失により生じた熱を利用して、バッテリを昇温する温度調節装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-189249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の温度調節装置では、オンさせるスイッチング素子に対して印加させるゲート電圧を低くして、インバータのスイッチング素子の導通損が大きくすることにより、バッテリを昇温するための熱を確保している。
【0005】
しかしながら、ゲート電圧を低くしすぎると、発熱量は増加するものの、所望の相電流を流すことが難しくなり、モータトルクが低下する、又は十分なモータ回転数を得られなくなるという問題がある。一方、ゲート電圧を低くしないと、十分な発熱量を得ることができない場合がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、回転電機の出力を維持しつつ、所望の発熱量を得ることができる温度調節装置、温度調節方法、及び温度調節プログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する温度調節装置は、電機子巻線を有する多相交流式の回転電機と、前記電機子巻線に電気的に接続されるインバータと、前記インバータを制御する制御装置と、前記インバータ及び前記回転電機のうち少なくともいずれか一方に対して熱的に接続される冷媒通路と、を備え、前記冷媒通路を流れる冷媒の温度を調整することにより、前記冷媒通路に熱的に接続される対象部材の温度を調節する温度調節装置であって、
前記制御装置は、
前記インバータのスイッチング制御を実施して、相電流を各相の前記電機子巻線に入力させるスイッチ制御部と、
昇温要求を入力し、前記冷媒の温度を調整する温度制御部と、を備え、
前記スイッチ制御部は、前記温度制御部によって、前記冷媒の温度を昇温させると決定された場合、いずれか1相又は複数相の前記電機子巻線への前記相電流の入力を停止するとともに、残り3相以上の前記電機子巻線に前記相電流を入力させ、前記回転電機を駆動させる。
【0008】
上記構成において、いずれか1相の相電流を停止させると、電力損失が大きくなり、発熱量が増加する。また、いずれか1相の相電流を停止させた場合、回転電機の出力を維持するために、残りの相電流を大きくする必要がある。この場合、電気ヒータなどを備えなくても、発熱量が多くして、所望の発熱量を得ることができる。
【0009】
上記課題を解決する温度調節方法は、電機子巻線を有する多相交流式の回転電機と、前記電機子巻線に電気的に接続されるインバータと、前記インバータを制御する制御装置と、前記インバータ及び前記回転電機のうち少なくともいずれか一方に対して熱的に接続される冷媒通路と、を備え、前記冷媒通路を流れる冷媒の温度を調整することにより、前記冷媒通路に熱的に接続される対象部材の温度を調節する温度調節装置の前記制御装置が実施する温度調節方法であって、
前記インバータのスイッチング制御を実施して、相電流を各相の前記電機子巻線に入力させるスイッチ制御ステップと、
昇温要求を入力し、前記冷媒の温度を調整する温度制御ステップと、を有し、
前記スイッチ制御ステップでは、前記温度制御ステップにおいて、前記冷媒の温度を昇温させると決定された場合、いずれか1相又は複数相の前記電機子巻線への前記相電流の入力を停止するとともに、残り3相以上の前記電機子巻線に前記相電流を入力させ、前記回転電機を駆動させる。
【0010】
上記構成において、いずれか1相の相電流を停止させた場合、電力損失が大きくなり、発熱量が増加する。また、いずれか1相の相電流を停止させた場合、回転電機の出力を維持するために、残りの相電流を大きくする必要がある。この場合、電気ヒータなどを備えなくても、発熱量が多くして、所望の発熱量を得ることができる。
上記課題を解決する温度調節プログラムは、電機子巻線を有する多相交流式の回転電機と、前記電機子巻線に電気的に接続されるインバータと、前記インバータを制御する制御装置と、前記インバータ及び前記回転電機のうち少なくともいずれか一方に対して熱的に接続される冷媒通路と、を備え、前記冷媒通路を流れる冷媒の温度を調整することにより、前記冷媒通路に熱的に接続される対象部材の温度を調節する温度調節装置の前記制御装置が実施する温度調節プログラムであって、
前記インバータのスイッチング制御を実施して、相電流を各相の前記電機子巻線に入力させるスイッチ制御ステップと、
昇温要求を入力し、前記冷媒の温度を調整する温度制御ステップと、を有し、
前記スイッチ制御ステップでは、前記温度制御ステップにおいて、前記冷媒の温度を昇温させると決定された場合、いずれか1相又は複数相の前記電機子巻線への前記相電流の入力を停止するとともに、残り3相以上の前記電機子巻線に前記相電流を入力させ、前記回転電機を駆動させる。
上記構成において、いずれか1相の相電流を停止させた場合、電力損失が大きくなり、発熱量が増加する。また、いずれか1相の相電流を停止させた場合、回転電機の出力を維持するために、残りの相電流を大きくする必要がある。この場合、電気ヒータなどを備えなくても、発熱量が多くして、所望の発熱量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】温度調節装置の構成を示す図。
図2】回転電機とインバータの構成図。
図3】電流フィードバック制御処理を示すブロック図。
図4】スイッチ制御処理を示すフロチャート。
図5】PWM制御を示す図。
図6】温度調節処理を示すフロチャート。
図7】(a)は、正常時における相電流の電流波形を示す図、(b)は、相電流停止時における相電流の電流波形を示す図。
図8】回転磁界を示す図。
図9】各相電流を停止させる変更タイミングを示す図。
図10】1相の相電流停止時における相電流及びトルクを示す図。
図11】別例における相電流の電流波形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る温度調節装置、温度調節方法、及び温度調節プログラムを具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本発明に係る温度調節装置、温度調節方法、及び温度調節プログラムは、この実施形態において、車両(例えば、電気自動車やハイブリッド車)に適用されている。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付している。
【0013】
図1に示すように、温度調節装置10は、回転電機20と、インバータ30と、インバータ30及び回転電機20に対して熱的に接続される冷媒通路40と、インバータ30を制御する制御装置50と、を備える。冷媒通路40は、直流電源である蓄電池12とも熱的に接続されており、本実施形態では、蓄電池12が、温度調節の対象部材である。
【0014】
蓄電池12は、例えば組電池であり、蓄電池12の端子電圧は例えば数百Vである。蓄電池12は、例えば、リチウムイオン電池又はニッケル水素蓄電池等の2次電池である。
【0015】
図2に示すように、回転電機20は、5相の電機子巻線を有する多相交流式の同期モータであり、星形結線された各相の電機子巻線としてのステータ巻線21を備えている。本実施形態では、U,V,W,X,Y相とする。各相のステータ巻線21は、電気角で72°ずつずれて配置されている。本実施形態の回転電機20は、回転子としてのロータ22に界磁極としての永久磁石を備える永久磁石同期モータである。
【0016】
回転電機20は、車載主機であり、ロータ22が図示しない車両の駆動輪と動力伝達可能とされている。回転電機20が電動機として機能することにより発生するトルクが、ロータ22から駆動輪に伝達される。これにより、駆動輪が回転駆動させられる。なお、回転電機20は、車両の車輪に一体に設けられるインホイールモータであってもよいし、車両の車体に備えられるいわゆるオンボードモータであってもよい。
【0017】
インバータ30は、上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの直列接続体を5相分備えている。本実施形態において、各スイッチSp,Snは、電圧制御形の半導体スイッチング素子であり、具体的にはIGBTである。このため、各スイッチSp,Snの高電位側端子はコレクタであり、低電位側端子はエミッタである。各スイッチSp,Snには、フリーホイールダイオードDp,Dnが逆並列に接続されている。
【0018】
各相において、上アームスイッチSpのエミッタと、下アームスイッチSnのコレクタとには、ステータ巻線21の第1端が接続されている。各相のステータ巻線21の第2端同士は、中性点で接続されている。なお、本実施形態において、各相のステータ巻線21は、ターン数が同じに設定されている。
【0019】
各相の上アームスイッチSpのコレクタと、蓄電池12の正極端子とは、正極側母線Lpにより接続されている。各相の下アームスイッチSnのエミッタと、蓄電池12の負極端子とは、負極側母線Lnにより接続されている。正極側母線Lpと負極側母線Lnとの間には、平滑コンデンサ31が設けられている。なお、平滑コンデンサ31は、インバータ30に内蔵されていてもよいし、インバータ30の外部に設けられていてもよい。
【0020】
図1に示すように、冷媒通路40は、冷媒としての冷却水が循環するように形成されており、蓄電池12と、回転電機20と、インバータ30と、が熱的に接続されている。冷媒通路40において、インバータ30と、回転電機20と、蓄電池12とは、この順番で直列に配置されている。なお、冷媒通路40の構成及び部材の配置順序は任意に変更してもよい。例えば、蓄電池12と、インバータ30と、並列に配置してもよいし、インバータ30、蓄電池12、回転電機20の順番で配置されていてもよい。
【0021】
また、冷媒通路40は、冷却水の流れを生成するポンプ41や、熱交換器42を備える。ポンプ24は、冷却水が、冷媒通路40を介して、蓄電池12、回転電機20、及びインバータ30の間で巡回するように、冷却水の流れ(水圧や方向等)を制御するものである。ポンプ41は、インバータ30の上流側に配置されている。なお、ポンプ41は、冷却水の流れや温度を制御する外部装置からの指令に基づいて制御されているが、制御装置50からの指令に基づいて制御されてもよい。
【0022】
熱交換器42は、例えば、チラーやラジエータなどが想定され、冷却水を冷却するものである。なお、冷媒通路40には、図1に示すように、熱交換器42が配置されている通路42aに対して並列となるバイパス経路43が設けられている。そして、熱交換器42が配置されている通路42aと、バイパス経路43とを接続する箇所には三方向弁44が設けられており、通路42aへの流量とバイパス経路43への流量が調整可能に構成されている。熱交換器42や三方向弁44は、冷却水の流れを制御する外部装置からの指令に基づいて制御されているが、制御装置50からの指令に基づいて制御されてもよい。
【0023】
なお、前述同様、ポンプ41及び熱交換器42の配置場所や、通路42a及びバイパス経路43を含む冷媒通路40の構成は任意に変更可能である。ただし、インバータ30及び回転電機20を通過した冷却水が、熱交換器42を通過せずに、蓄電池12を通過することができるように冷媒通路40が構成され、各部材が配置されていることが望ましい。
【0024】
また、図2に示すように、温度調節装置10は、電流センサ32、電圧センサ33、回転角センサ34等を備えている。電流センサ32は、各相のステータ巻線21に流れる電流を検出する。電圧センサ33は、平滑コンデンサ31の端子電圧を電源電圧Vdcとして検出する。回転角センサ34は、例えばレゾルバであり、ロータ22の回転角(具体的には、電気角θ)を検出する。各センサ32~34の検出値は、制御装置50に入力される。
【0025】
制御装置50は、マイコン50aを主体として構成され、マイコン50aは、CPU、ROM,RAM等を備えている。マイコン50aが提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコン50aがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコン50aは、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行され、また、プログラムに対応する機能が実現する。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークを介して更新可能である。
【0026】
制御装置50は、図示しない上位制御装置(走行制御を行うECU等)からトルク指令値(要求トルク)を受信する。制御装置50は、回転電機20のトルクを受信したトルク指令値に制御すべく、インバータ30を構成する各スイッチSp,Snのスイッチング制御を行う。各相において、上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとは、デッドタイムを挟みつつ交互にオンされる。
【0027】
続いて、図3を用いて、制御装置50により実行される回転電機20のトルク制御の一例について説明する。図3に示す例では、トルク制御として、U,V,W,X,Y相の各相電流を制御する電流フィードバック制御が行われる。図3は、電流フィードバック制御処理を示すブロック図である。なお、電流フィードバック制御に代えて、トルクフィードバック制御が行われてもよい。
【0028】
図3において、電流指令値設定部51は、トルク-dqマップを用い、回転電機20に対するトルク指令値(力行トルク指令値又は発電トルク指令値)や、電気角θを時間微分して得られる電気角速度ωに基づいて、d軸の電流指令値とq軸の電流指令値とを設定する。なお、発電トルク指令値は、例えば回転電機20が車両用動力源として用いられる場合、回生トルク指令値である。
【0029】
dq変換部52は、相ごとに設けられた電流センサ32による電流検出値(5つの相電流)を、界磁方向をd軸とする直交2次元回転座標系の成分であるd軸電流とq軸電流とに変換する。
【0030】
d軸電流フィードバック制御部53は、d軸電流をd軸の電流指令値にフィードバック制御するための操作量としてd軸の指令電圧を算出する。また、q軸電流フィードバック制御部54は、q軸電流をq軸の電流指令値にフィードバック制御するための操作量としてq軸の指令電圧を算出する。これら各フィードバック制御部53,54では、d軸電流及びq軸電流の電流指令値に対する偏差に基づき、PIフィードバック手法を用いて指令電圧が算出される。
【0031】
5相変換部55は、d軸及びq軸の指令電圧を、U相、V相、W相、X相、及びY相の指令電圧に変換する。なお、上記の各部51~55が、dq変換理論による基本波電流のフィードバック制御を実施するフィードバック制御部であり、U相、V相、W相、X相、及びY相の指令電圧がフィードバック制御値である。本実施形態において、U相、V相、W相、X相、及びY相の指令電圧は、電気角で位相が72°ずつずれた正弦波状の波形となる。上記の各部51~55は、制御装置50がプログラムを実行することにより実現される。
【0032】
信号生成部56は、U相、V相、W相、X相、及びY相の指令電圧及び電源電圧Vdcに基づく5相変調により、各相の上,下アームスイッチSp,Snの駆動信号GUを生成するためのスイッチ制御処理を実施する。ここで、図4を参照してスイッチ制御処理について詳しく説明する。以下では、U相を例にして説明する場合もあるが、他相も同様である。スイッチ制御処理は、信号生成部56としての制御装置50(マイコン50a)により実施される。つまり、制御装置50が所定のプログラムを実行することにより、信号生成部56としての機能が実現される。
【0033】
制御装置50は、各相の指令電圧と電源電圧Vdcに基づいて、各相の規格化指令電圧を算出する(ステップS101)。そして、制御装置50は、各相の規格化指令電圧を変調信号S1として生成し、変調信号S1とキャリア信号Sigに基づいてPWM制御を実施する(ステップS102)。
【0034】
すなわち、制御装置50は、図5に示すように、変調信号S1(=規格化指令電圧)と、キャリア信号Sigとの大小比較に基づいて、各相のPWM信号を算出する。なお、図5では、U相における例、つまり、U相の規格化指令電圧Vuに基づく変調信号S1の例を示す。制御装置50は、各相のPWM信号と、各相のPWM信号の論理反転信号とに基づいて、各相の上,下アームスイッチSp、Snの駆動信号GUを生成する。つまり、制御装置50は、各相の上アームスイッチSpの駆動信号GUH及び各相の下アームスイッチSnの駆動信号GULを生成する。なお、図5には、電気角で180度の期間にわたるキャリア信号Sig等の推移を示す。
【0035】
制御装置50は、生成した各相の駆動信号GUをそれぞれ各相の上,下アームスイッチSp,Snのゲートに対してドライバを介して出力する。このように、インバータ30のスイッチング制御としてのPWM制御が実行され、PWM電圧波形(出力波形)がステータ巻線21に入力される。これにより、各相のステータ巻線21に、相電圧が入力され、相電流が流れることとなる。
【0036】
なお、制御装置50の制御周期は、キャリア信号Sigの周期よりも十分に短い。また、本実施形態のキャリア信号Sigは、搬送波であり、上昇速度及び下降速度が等しい三角波信号である。
【0037】
ところで、蓄電池12は、低温状態となると、充放電性能が低下する。このため、冬期における車両の始動時などにおいては、蓄電池12の温度を昇温する必要がある。この場合、電気ヒータを備えて、電気ヒータにより昇温することが考えられる。しかしながら、電気ヒータを備えるにはコストがかかり、また、構造が複雑化して、車体重量も重くなるという問題点がある。
【0038】
そこで、本実施形態では、回転電機20及びインバータ30による発熱を利用して蓄電池12を昇温する構成とした。なお、通常の駆動方法では、十分な発熱量を得にくいため、発熱量が大きくなるように制御方法を工夫している。以下、蓄電池12を昇温するために実行される温度調節処理について図6を参照して説明する。温度調節処理を実施することにより、温度調節方法が実現される。また、この温度調節処理を実施する制御装置50が、スイッチ制御部としての機能し、また、温度制御部としての機能することとなる。
【0039】
この温度調節処理は、車両始動時(イグニッションスイッチ又は始動スイッチがオンされたとき)などに、制御装置50により実施される。なお、外部気温や電池温度が判定値以下の場合に実施されてもよい。
【0040】
温度調節処理を開始すると、制御装置50は、冷却水の昇温が必要か否かを判定する(ステップS201)。例えば、制御装置50冷却水の昇温を要求する昇温要求信号を入力したか否かに基づいて、冷却水の昇温が必要であるか否かを判定する。この昇温要求信号は、図示しないBMU(バッテリーマネジメントユニット)や、電池監視装置などの外部装置から入力する信号である。具体的には、外部装置は、蓄電池12の温度を検出し、電池温度が電池温度の閾値以下である場合、昇温要求信号を制御装置50に出力することとなる。
【0041】
なお、制御装置50が、蓄電池12の温度を検出し、電池温度が電池温度の閾値以下であるか否かを判定して、冷却水の昇温が必要であるか否かを判定してもよい。また、制御装置50が、冷却水の温度を検出し、冷却水の温度が冷却水の温度の閾値以下であるか否かを判定して、冷却水の昇温が必要であるか否かを判定してもよい。また、制御装置50が、インバータ30又は回転電機20の温度を検出し、検出された温度がそれぞれの閾値以下であるか否かを判定して、冷却水の昇温が必要であるか否かを判定してもよい。
【0042】
ステップS201の判定結果が否定の場合、制御装置50は、温度調節処理を終了する。一方、ステップS201の判定結果が肯定の場合、制御装置50は、意図的に相電流の入力を停止させるステータ巻線21の相を決定する(ステップS202)。相電流の入力を停止させるステータ巻線21の相は、所定の変更タイミングで、予め決められた順番に従って変更されることが定められている。ステップS202では、予め決められた順番に従って最初に入力を停止させる相を決定する。本実施形態では、U相、V相、W相、X相、Y相の順番で変更されることが決まっている。この場合、U相が最初に相電流が停止させるステータ巻線21として決定される。
【0043】
次に、制御装置50は、残った4相のステータ巻線21に入力させる相電流(及び相電圧)を指示するための規格化指令電圧(電圧指令値)を特定する(ステップS203)。このステップS203において、制御装置50は、相電流の入力を停止させない、残った4相のステータ巻線21によって形成される回転磁界が円形状となるように、相電流を入力すると決定された各相のステータ巻線21に入力される相電流の位相を決定する。
【0044】
具体的には、相電流を入力させると決定された4相のステータ巻線21のうち、入力を停止させる相よりも電気角において1つ前の相のステータ巻線21に入力させる相電流(及び相電圧)の位相を遅角させるとともに、入力を停止させる相よりも電気角において1つ後の相のステータ巻線21に入力させる相電流(及び相電圧)の位相を進角させるように、残った4相のステータ巻線21に対して入力させる相電流(及び相電圧)を決定する。
【0045】
例えば、ステータ巻線21が、U相、V相、W相、X相、Y相の順番で並んでいる場合において、図7(b)に示すように、W相への入力を停止する場合、V相の相電流を36°遅角させ、X相の相電流を36°進角させるように、残ったステータ巻線21に対して入力させる相電流の位相を決定する。なお、図7(a)は、全ての相に対して相電流を入力するときの各相電流の位相を示し、図7(b)は、W相への相電流の入力を停止した場合における残りの各相電流の位相を示す。
【0046】
また、図8の破線で示すように、いずれかのステータ巻線21への相電流の入力を停止すると、回転磁界が小さくなり、回転電機20のトルク(出力)が低下する。そこで、トルクを維持するため、停止させないステータ巻線21に入力する相電流の振幅を増加させる。
【0047】
そして、制御装置50は、上述したように位相及び振幅が決定された相電流(及び相電圧)を入力させるように、各相の規格化指令電圧(電圧指令値)を特定する。
【0048】
この規格化指令電圧は、例えば、マップ演算により特定されてもよいし、計算により特定されてもよい。なお、マップ演算により特定される場合、停止させる相、出力トルク、及び回転数の各種パラメータ毎に、マップを用意し、停止させる相、出力トルク、及び回転数に基づいてマップを参照して、各相の規格化指令電圧を特定すればよい。
【0049】
そして、制御装置50は、特定した各相の規格化指令電圧に基づいて変調信号S1を生成し、ステップS102と同様にして、変調信号S1と、キャリア信号Sigに基づいてPWM制御を実施する(ステップS204)。これにより、インバータ30のスイッチング制御としてのPWM制御が実行され、PWM電圧波形(出力波形)がステータ巻線21に入力される。このため、停止させない4相のステータ巻線21に、ステップS203で決定された相電圧が入力され、相電流が流れることとなる。
【0050】
その後、制御装置50は、昇温が終了したか否かを判定する(ステップS205)。ステップS205では、例えば、昇温要求信号の入力が停止されたか否かに基づいて判定する。なお、例えば、インバータ30又は回転電機20がそれぞれの所望の温度以上である場合、ステップS205を肯定判定してもよい。また、蓄電池12の温度を検出し、電池温度が所定の電池温度以上である場合、ステップS205を肯定判定してもよい。また、冷却水の温度を検出し、所定の冷却水温度以上である場合、ステップS205を肯定判定してもよい。また、昇温を開始してから、所定期間経過した場合、ステップS205を肯定判定してもよい。また、外部装置から、昇温の中止を指示する中止信号を入力した場合、ステップS205を肯定判定してもよい。ステップS201とステップS205により、温度制御ステップが実現される。
【0051】
ステップS205の判定結果が肯定の場合、制御装置50は、温度調節処理を終了する。温度調節処理の終了後、通常のスイッチ制御処理(図4)を実行することとなる。
【0052】
一方、ステップS205の判定結果が否定の場合(昇温が終了していない場合)、制御装置50は、所定の変更タイミングに達したか否かを判定する(ステップS206)。例えば、ステップS206において、制御装置50は、ステップS204の処理(PWM制御)を実行開始してから所定時間経過した場合、所定の変更タイミングに達したと判定してもよい。また、例えば、制御装置50は、ステータ巻線21のうちいずれの温度がステータ巻線21の閾値以上となった場合、所定の変更タイミングに達したと判定してもよい。また、例えば、制御装置50は、各スイッチSp,Snのうちいずれの温度が各スイッチSp,Snの閾値以上となった場合、所定の変更タイミングに達したと判定してもよい。また、これら複数の判定を組み合わせてもよい。ステップS202,S203,S204,S206,S207により、スイッチ制御ステップが実現される。
【0053】
ステップS206の判定結果が否定の場合、制御装置50は、所定の待機時間経過後、再びステップS205の処理を実施する。一方、ステップS206の判定結果が肯定の場合、制御装置50は、相電流の入力を停止させるステータ巻線21の相を変更する(ステップS207)。すなわち、発熱するステータ巻線21及びスイッチSp,Snに偏りがないように停止させる相を変更する。ステップS207では、図9に示すように、予め決められた順番に従って最初に入力を停止させる相を変更する。本実施形態では、U相、V相、W相、X相、Y相の順番で変更されることが決まっている。例えば、U相を停止させていた場合、V相に変更する。ステップS207の処理を実行した後、制御装置50は、ステップS203以降の処理を再び実行する。
【0054】
なお、ステップS207において、変更する順序は任意に変更してもよい。また、例えば、所定相のステータ巻線21又はスイッチSp,Snの温度が閾値以上であると判定されて、ステップS207が肯定判定された場合、その相への相電流の入力を停止させるように変更してもよい。
【0055】
上記温度調節処理によれば、図8に示すように、いずれか1相のステータ巻線21への相電圧の入力を停止させても、残った4相のステータ巻線21により形成される回転磁界を円形状にすることが可能となる。なお、図8は、模式的に示したものであり、実際には、若干の凹凸(トルクリプル)が形成される。ただし、許容範囲内のトルクリプルとなっている。具体的には、トルクリプルが、10%以下の範囲内に収まるように設定されている。つまり、平均トルクが100Nmの場合、トルクが95Nm~100Nmの範囲内に収まるように設定されている。
【0056】
また、温度調節処理では、停止させない相の相電流を大きくするため、このときに形成される回転磁界は、5相のステータ巻線21に相電流を入力する場合の回転磁界(実線で示す)に比較して、同等の大きさとなる。
【0057】
また、図10に示すように、いずれか1相のステータ巻線21への相電流の入力を停止しても、回転電機20のトルクを制御することが可能となることがわかる。なお、1相のステータ巻線21への相電流の入力を停止することに伴い、他相の相電流を増加させるため、同等のトルクを出力し、同等の回転数を得ることが期待できる。ただし、トルクリプルが増加することとなる。
【0058】
上記実施形態の温度調節装置、温度調節方法、及び温度調節プログラムを採用することにより、以下の優れた効果を奏する。
【0059】
(1)制御装置50は、冷却水の温度を昇温させると決定された場合、いずれか1相のステータ巻線21への相電流の入力を停止するとともに、残り4相のステータ巻線21に相電流を入力させ、回転電機20を駆動させる。これにより、電力損失が大きくなり、発熱量を増加させることができる。また、このとき、停止させない場合と同等の出力(トルク及び回転数)を実現するために、残り4相のステータ巻線21に入力する相電流を大きくする必要がある。したがって、発熱量が多くすることができる。
【0060】
また、制御装置50は、いずれか1相のステータ巻線21への相電流の入力を停止する場合、残り4相のステータ巻線21に入力させる相電流の位相を変更する。これにより、いずれか1相の相電流を停止しても、残りの相電流により、トルクリプルを抑制しつつ、回転電機20の出力を維持することができる。
【0061】
(2)相電流の入力を停止させないステータ巻線21によって形成される回転磁界が円形状となるように、相電流の入力を停止させない各相のステータ巻線21に入力される相電流の位相を指定する電圧指令値が設定される。このため、残りの相電流により、トルクリプルを抑制しつつ、回転電機20の出力を維持することができる。
【0062】
(3)電圧指令値は、停止させる相、要求トルク及び回転数に基づいてマップを参照して特定される。これにより、1相の相電流を停止させた場合において、どのように位相を調整するかについての処理負荷を少なくすることができる。
【0063】
(4)制御装置50は、いずれか1相の相電流の入力を停止する場合、入力を停止させないステータ巻線21のうち、停止させる相よりも電気角において1つ前の相電流の位相を遅角させるとともに、停止させる相よりも電気角において1つ後の相の相電流の位相を進角させる。これにより、制御内容の簡単な変更により、回転磁界を円形状に近づけることが可能となる。
【0064】
(5)制御装置50は、所定のタイミングで、相電流の入力を停止させる相を変更する。これにより、各相のステータ巻線21及びスイッチSp,Snをほぼ均等に発熱させることが可能となる。
【0065】
(他の実施形態)
以下、上記実施形態における温度調節装置10の一部を変更した変形例について説明する。
【0066】
・上記実施形態では、相電流の入力を停止させる相よりも1つ前の相の相電流の位相を遅角させるとともに、1つ後の相の相電流の位相を進角させていた。この別例として、残った4相のステータ巻線21に入力させる相電流の位相が等間隔となるように、相電流の入力を停止させる相よりも1つ前及び2つ前の相の相電流の位相を遅角させるとともに、1つ後の相及び2つ後の相の相電流の位相を進角させてもよい。その際、相毎に、進角又は遅角させる角度を変更してもよい。
【0067】
すなわち、残ったステータ巻線21によって形成される回転磁界が円形状に近づけるのであれば、どのように位相を進角又は遅角させるかは任意に変更してもよい。
【0068】
・上記実施形態において、5相のステータ巻線21を有する回転電機20を採用したが、5相に限定する必要がなく、5相以上の整数相のステータ巻線21を有する回転電機20を採用してもよい。つまり、n相(nは、5以上の整数)のステータ巻線21を有する回転電機20を採用してもよい。この場合、前述したように、相電流の入力を停止させる相よりも1つ前の相の相電流の位相を遅角させるとともに、1つ後の相の相電流の位相を進角させればよい。例えば、電気角でU相、V相、W相、X相、Y相、Z相、A相の順番で7相のステータ巻線21を有するときに、X相の相電流の入力を停止させる場合、図11に示すように、W相を14.5°遅角させ、Y相を14.5°進角させるように相電流を入力させればよい。
【0069】
また、前述同様、残った6相のステータ巻線21に入力させる相電流の位相が等間隔となるように、相電流の入力を停止させる相よりも1~3つ前の相の相電流の位相を遅角させるとともに、1~3つ後の相の相電流の位相を進角させてもよい。
【0070】
・上記各実施形態において、3相以上の相電流を入力して、回転電機20を駆動させることができるのであれば、2相以上の相電流の入力を停止させてもよい。その場合、相電流が入力されるステータ巻線21によって形成される回転磁界が円形状となるように、各相電流の位相を制御すればよい。例えば、停止させない相電流の位相が等間隔となるように、位相を制御すればよい。
【0071】
・上記実施形態において、制御装置50が、スイッチ制御部及び温度制御部としての機能を備えたが、複数の制御装置によって、スイッチ制御部及び温度制御部としての機能を分けて実現してもよい。
【0072】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0073】
以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
電機子巻線(21)を有する多相交流式の回転電機(20)と、前記電機子巻線に電気的に接続されるインバータ(30)と、前記インバータを制御する制御装置(50)と、前記インバータ及び前記回転電機のうち少なくともいずれか一方に対して熱的に接続される冷媒通路(40)と、を備え、前記冷媒通路を流れる冷媒の温度を調整することにより、前記冷媒通路に熱的に接続される対象部材(12)の温度を調節する温度調節装置(10)であって、
前記制御装置は、
前記インバータのスイッチング制御を実施して、相電流を各相の前記電機子巻線に入力させるスイッチ制御部と、
昇温要求を入力し、前記冷媒の温度を調整する温度制御部と、を備え、
前記スイッチ制御部は、前記温度制御部によって、前記冷媒の温度を昇温させると決定された場合、いずれか1相又は複数相の前記電機子巻線への前記相電流の入力を停止するとともに、残り3相以上の前記電機子巻線に前記相電流を入力させ、前記回転電機を駆動させる温度調節装置。
[構成2]
前記スイッチ制御部は、いずれか1相又は複数相の前記相電流の入力を停止する場合、残りの前記相電流を増大させ、かつ、前記相電流の位相を変更する構成1に記載の温度調節装置。
[構成3]
前記相電流の入力を停止させない前記電機子巻線によって形成される回転磁界が円形状となるように、前記相電流の入力を停止させない各相の前記電機子巻線に入力される相電流の位相を指定する電圧指令値が設定される構成1又は2に記載の温度調節装置。
[構成4]
前記電圧指令値は、停止させる相、要求トルク及び回転数に基づいてマップを参照して特定される構成3に記載の温度調節装置。
[構成5]
前記スイッチ制御部は、いずれか1相又は複数相の前記相電流の入力を停止する場合、前記相電流の入力を停止させない前記電機子巻線のうち、停止させる相よりも電気角において1つ前の相の相電流の位相を遅角させるとともに、停止させる相よりも電気角において1つ後の相の相電流の位相を進角させる構成1~4のうちいずれか1項に記載の温度調節装置。
[構成6]
前記スイッチ制御部は、いずれか1相又は複数相の相電流の入力を停止する場合、所定の変更タイミングで、前記相電流の入力を停止させる相を変更する構成1~5のうちいずれか1項に記載の温度調節装置。
[構成7]
電機子巻線(21)を有する多相交流式の回転電機(20)と、前記電機子巻線に電気的に接続されるインバータ(30)と、前記インバータを制御する制御装置(50)と、前記インバータ及び前記回転電機のうち少なくともいずれか一方に対して熱的に接続される冷媒通路(40)と、を備え、前記冷媒通路を流れる冷媒の温度を調整することにより、前記冷媒通路に熱的に接続される対象部材(12)の温度を調節する温度調節装置(10)の前記制御装置が実施する温度調節方法であって、
前記インバータのスイッチング制御を実施して、相電流を各相の前記電機子巻線に入力させるスイッチ制御ステップと、
昇温要求を入力し、前記冷媒の温度を調整する温度制御ステップと、を有し、
前記スイッチ制御ステップでは、前記温度制御ステップにおいて、前記冷媒の温度を昇温させると決定された場合、いずれか1相又は複数相の前記電機子巻線への前記相電流の入力を停止するとともに、残り3相以上の前記電機子巻線に前記相電流を入力させ、前記回転電機を駆動させる温度調節方法。
[構成8]
電機子巻線(21)を有する多相交流式の回転電機(20)と、前記電機子巻線に電気的に接続されるインバータ(30)と、前記インバータを制御する制御装置(50)と、前記インバータ及び前記回転電機のうち少なくともいずれか一方に対して熱的に接続される冷媒通路(40)と、を備え、前記冷媒通路を流れる冷媒の温度を調整することにより、前記冷媒通路に熱的に接続される対象部材(12)の温度を調節する温度調節装置(10)の前記制御装置が実施する温度調節プログラムであって、
前記インバータのスイッチング制御を実施して、相電流を各相の前記電機子巻線に入力させるスイッチ制御ステップと、
昇温要求を入力し、前記冷媒の温度を調整する温度制御ステップと、を有し、
前記スイッチ制御ステップでは、前記温度制御ステップにおいて、前記冷媒の温度を昇温させると決定された場合、いずれか1相又は複数相の前記電機子巻線への前記相電流の入力を停止するとともに、残り3相以上の前記電機子巻線に前記相電流を入力させ、前記回転電機を駆動させる温度調節プログラム。
【符号の説明】
【0074】
10…制御装置、12…蓄電池、20…回転電機、21…ステータ巻線、30…インバータ、40…冷媒通路、50…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11