(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067390
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】粉砕ローラ、粉砕テーブル及び固体燃料粉砕装置並びに粉砕ローラの製造方法
(51)【国際特許分類】
B02C 15/04 20060101AFI20240510BHJP
C10L 9/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B02C15/04
C10L9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177432
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山口 聡太朗
【テーマコード(参考)】
4D063
4H015
【Fターム(参考)】
4D063EE03
4D063EE13
4D063GA08
4D063GB05
4D063GD04
4H015AA10
4H015AA12
4H015AB01
4H015BA01
4H015BB10
4H015CA01
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】粉砕ローラや粉砕テーブルを製造する際の歩留まりを向上させるとともに、粉砕ローラや粉砕テーブルの長寿命化を図ることを目的とする。
【解決手段】粉砕ローラ13は、ハウジングに対して回転可能に支持されるジャーナルハウジング43と、ジャーナルハウジング43に固定され、粉砕テーブルとの間で固体燃料を粉砕する円環状のローラ部49と、を備えている。ローラ部49は、ジャーナルハウジングに固定される基部51と、基部51の外周部に設けられ基部51と線膨張係数が異なるとともに基部51よりも耐摩耗性が優れているセラミック部52と、を有している。セラミック部52は、母材52b及び母材52bに含まれるセラミックス粒子52cを有し、回転中心軸線C2方向に沿って母材52bに対するセラミックス粒子52cの含有量であるセラミック密度が変化している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの内部に収容され、回転する粉砕テーブルとの間に固体燃料を挟み込んで前記固体燃料を粉砕し、前記粉砕テーブルからの回転力を受けて回転軸線を中心として連れ回る粉砕ローラであって、
前記ハウジングに対して回転可能に支持される支持部と、
前記支持部に固定され、前記粉砕テーブルとの間で前記固体燃料を粉砕する円環状のローラ部と、を備え、
前記ローラ部は、前記支持部に固定される基部と、前記基部の外周部に設けられ、前記基部と線膨張係数が異なるとともに前記基部よりも耐摩耗性が優れているセラミック部と、を有し、
前記セラミック部は、母材及び前記母材に設けられるセラミックス粒子を有し、前記回転軸線方向に沿って前記母材に対する前記セラミックス粒子の含有量であるセラミック密度が変化している粉砕ローラ。
【請求項2】
前記セラミック部は、前記ローラ部の外周面の最も摩耗し易い点である最大摩耗点を含む第1領域の前記セラミック密度が、前記第1領域よりも前記回転軸線方向の端部側に位置する第2領域の前記セラミック密度よりも高い請求項1に記載の粉砕ローラ。
【請求項3】
前記セラミック部は、前記回転軸線方向において、前記ローラ部の前記外周面の中点を通過する面を基準として前記最大摩耗点と対称となる点を含む第3領域の前記セラミック密度が前記第2領域の前記セラミック密度よりも高い請求項2に記載の粉砕ローラ。
【請求項4】
前記セラミック部は、前記回転軸線方向において、前記ローラ部の前記外周面の中点を通過する面を基準として前記最大摩耗点と対称となる点と前記最大摩耗点との間の領域の前記セラミック密度が他の領域の前記セラミック密度よりも高い請求項2に記載の粉砕ローラ。
【請求項5】
前記セラミック部は、前記第1領域を含み前記セラミック密度が一様である高密度部と、前記第2領域を含み前記セラミック密度が一様であり前記高密度部と前記回転軸線方向に隣接して設けられ前記高密度部よりも前記セラミック密度が低い低密度部と、を有し、
前記高密度部と前記低密度部とは固定されている請求項2から請求項4のいずれかに記載の粉砕ローラ。
【請求項6】
ハウジングの内部に収容され、駆動部から伝達される駆動力により中心軸線を中心として回転し、粉砕ローラとの間に固体燃料を挟み込んで前記固体燃料を粉砕する粉砕テーブルであって、
前記固体燃料が供給されるテーブル部を備え、
前記テーブル部は、基部と、前記基部の上面に設けられ前記基部と線膨張係数が異なるとともに前記基部よりも耐摩耗性が優れているセラミック部と、を有し、
前記セラミック部は、母材及び前記母材に含まれるセラミックを有し、前記中心軸線を基準とする半径方向に沿って前記母材に対する前記セラミックの含有量であるセラミック密度が変化している粉砕テーブル。
【請求項7】
前記セラミック部は、前記半径方向において、前記テーブル部の上面の最も摩耗し易い点である最大摩耗点を含む第1領域の前記セラミック密度が、前記第1領域よりも前記半径方向の端部側に位置する第2領域の前記セラミック密度よりも高い請求項6に記載の粉砕テーブル。
【請求項8】
請求項1に記載の粉砕ローラ及び/又は請求項6に記載の粉砕テーブルを備える固体燃料粉砕装置。
【請求項9】
ハウジングの内部に収容され、回転する粉砕テーブルとの間に固体燃料を挟み込んで前記固体燃料を粉砕し、前記粉砕テーブルからの回転力を受けて回転軸線を中心として連れ回る粉砕ローラの製造方法であって、
前記粉砕ローラは、
前記ハウジングに対して回転可能に支持される支持部と、
前記支持部に固定され、前記粉砕テーブルとの間で前記固体燃料を粉砕する円環状のローラ部と、を備え、
前記ローラ部は、前記支持部に固定される基部と、前記基部の外周部に設けられ前記基部と線膨張係数が異なるとともに前記基部よりも耐摩耗性が優れているセラミック部と、を有し、
前記セラミック部は、母材及び前記母材に設けられるセラミックス粒子を有し、前記回転軸線方向に沿って前記母材に対する前記セラミックス粒子の含有量であるセラミック密度が変化していて、
前記基部と前記セラミック部とを鋳造により一体的に成形する工程を備える粉砕ローラの製造方法。
【請求項10】
前記セラミック部は、前記セラミック密度が高い高密度部と、前記高密度部と前記回転軸線方向に隣接して設けられ前記高密度部よりも前記セラミック密度が低い低密度部と、を有し、
前記高密度部と前記低密度部とが固定された状態で前記セラミック部を鋳型内の所定の箇所に配置するセラミック部配置工程を備える請求項9に記載の粉砕ローラの製造方法。
【請求項11】
前記セラミック部は、前記セラミック密度が高い高密度部と、前記高密度部と前記回転軸線方向に隣接して設けられ前記高密度部よりも前記セラミック密度が低い低密度部と、を有し、
高密度部固定部によって前記高密度部を鋳型の所定の箇所に固定する高密度部固定工程と、
低密度部固定部によって前記低密度部を前記鋳型の所定の箇所に固定する低密度部固定工程と、を備える請求項9に記載の粉砕ローラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉砕ローラ、粉砕テーブル及び固体燃料粉砕装置並びに粉砕ローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオマス燃料や石炭等の固体燃料は、粉砕機(ミル)で所定粒径範囲内の微粉状に粉砕して、燃焼装置へ供給される。ミルは、粉砕テーブルへ投入された固体燃料を、粉砕テーブルと粉砕ローラの間に挟み込んで粉砕し、粉砕されて微粉状となった固体燃料のうち、所定粒径範囲内の微粉燃料を分級機で選別し、粉砕テーブルの外周から供給される搬送用ガス(一次空気)によって、ボイラへ搬送して燃焼装置で燃焼させている。火力発電プラントでは、ボイラで微粉燃料を燃焼して生成された燃焼ガスとの熱交換により蒸気を発生させ、該蒸気により蒸気タービンを回転駆動して、蒸気タービンに接続した発電機を回転駆動することで発電が行なわれる。
【0003】
ミルに設けられる粉砕ローラとして、固体燃料と接触する箇所に耐摩耗性が高いセラミックを埋め込んだセラミック埋込型の粉砕ローラや粉砕テーブルが知られている(例えば、特許文献1)。このようなセラミック埋込型の粉砕ローラや粉砕テーブルは、従来の粉砕ローラや粉砕テーブルと比較して、耐摩耗性や許容摩耗量に優れており、長寿命化を図ることができる。
特許文献1には、多角形の空間を形成しつつ連続して支持壁が形成される高Cr鋼製の支持体と、高Cr鋼製の支持体の空間内に配設されるセラミックス製部材とからなる粉砕部材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セラミック埋込型の粉砕ローラや粉砕テーブルを製造する際は、まず、粒子状のセラミックス(以下、「セラミックス粒子」と称する。)をブロック状に成形することで、セラミック部の一部を構成するセラミックブロックを製造する。次に、鋳型内の所定位置にセラミックブロックを設置した状態で、鋳型内に溶融した金属を流し込む。その後に鋳型内の金属を冷却し、凝固させる。このようにして、セラミック部(セラミックを含む部分)と基部(セラミックを含まない部分)とが一体的に固定されたセラミック埋込型の粉砕ローラや粉砕テーブルを製造する。
【0006】
鋳型内の金属を冷却する際には、熱収縮による損傷が懸念される。セラミック部は、鋳型内の金属に比較して線膨張係数が小さい。このため、冷却時におけるセラミック部の収縮率は基部の収縮率よりも小さくなる。したがって、冷却時にセラミック部と基部との収縮量が異なってくる。このとき、セラミック部と基部とは一体化しているため、基部はセラミック部を縮めようとし、セラミック部は基部の収縮を抑えようとする。よって、基部及びセラミック部の内部に熱応力が作用し、粉砕ローラや粉砕テーブルが損傷してしまう可能性があった。このように、セラミック埋込型の粉砕ローラや粉砕テーブルは、セラミック部と基部との線膨張係数の差に起因して、製造時に損傷する可能性があった。よって、粉砕ローラや粉砕テーブルを製造する際の歩留まりが悪化する可能性があった。
【0007】
部材の剛性を低くすると、部材が良く伸びるようになる。このため、同じ変位を与えた時に発生する応力が低く抑えられることから、熱応力が小さくなる。したがって、セラミック埋込型の粉砕ローラや粉砕テーブルの内部熱応力を小さくするために、セラミック部全体においてセラミックス粒子の密度を下げることにより、セラミック部の剛性を低くすることが考えられる。しかしながら、セラミック部のセラミックス粒子の密度を低くして剛性を低下させると、粉砕ローラや粉砕テーブルの耐摩耗性や許容摩耗量が低減し、粉砕ローラや粉砕テーブルの寿命が短くなってしまうという問題があった。
このような事情から、粉砕ローラや粉砕テーブルを製造する際の歩留まりを向上させるとともに、粉砕ローラや粉砕テーブルを長寿命化することが望まれていた。
【0008】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、粉砕ローラや粉砕テーブルを製造する際の歩留まりを向上させるとともに、粉砕ローラや粉砕テーブルの長寿命化を図ることができる粉砕ローラ、粉砕テーブル及び固体燃料粉砕装置並びに粉砕ローラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の粉砕ローラ、粉砕テーブル及び固体燃料粉砕装置並びに粉砕ローラの製造方法は以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る粉砕ローラは、ハウジングの内部に収容され、回転する粉砕テーブルとの間に固体燃料を挟み込んで前記固体燃料を粉砕し、前記粉砕テーブルからの回転力を受けて回転軸線を中心として連れ回る粉砕ローラであって、前記ハウジングに対して回転可能に支持される支持部と、前記支持部に固定され、前記粉砕テーブルとの間で前記固体燃料を粉砕する円環状のローラ部と、を備え、前記ローラ部は、前記支持部に固定される基部と、前記基部の外周部に設けられ前記基部と線膨張係数が異なるとともに前記基部よりも耐摩耗性が優れているセラミック部と、を有し、前記セラミック部は、母材及び前記母材に設けられるセラミックを有し、前記回転軸線方向に沿って前記母材に対する前記セラミックの含有量であるセラミック密度が変化している。
【0010】
本開示の一態様に係る粉砕ローラの製造方法は、ハウジングの内部に収容され、回転する粉砕テーブルとの間に固体燃料を挟み込んで前記固体燃料を粉砕し、前記粉砕テーブルからの回転力を受けて回転軸線を中心として連れ回る粉砕ローラの製造方法であって、前記粉砕ローラは、前記ハウジングに対して回転可能に支持される支持部と、前記支持部に固定され、前記粉砕テーブルとの間で前記固体燃料を粉砕する円環状のローラ部と、を備え、前記ローラ部は、前記支持部に固定される基部と、前記基部の外周部に設けられ前記基部と線膨張係数が異なるとともに前記基部よりも耐摩耗性が優れているセラミック部と、を有し、前記セラミック部は、母材及び前記母材に設けられるセラミックを有し、前記回転軸線方向に沿って前記母材に対する前記セラミックの含有量であるセラミック密度が変化していて、前記基部と前記セラミック部とを鋳造により一体的に成形する工程を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、粉砕ローラや粉砕テーブルを製造する際の歩留まりを向上させるとともに、粉砕ローラや粉砕テーブルの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る固体燃料粉砕装置およびボイラを示す構成図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る固体燃料粉砕装置に設けられた粉砕ローラの模式的な側面図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係る粉砕ローラの要部断面図である。
【
図4】本開示の第1実施形態の変形例に係る粉砕ローラの要部断面図である。
【
図5】本開示の第1実施形態の変形例に係るローラ部の斜視図である。
【
図8】本開示の第1実施形態に係る固体燃料粉砕装置に設けられた粉砕テーブルの模式的な縦断面図である。
【
図10】本開示の第1実施形態に係る粉砕ローラを製造する鋳型を示す模式的な図である。
【
図13】本開示の第1実施形態に係る粉砕ローラの模式的な側面図であり、摩耗の進行状態を示す図である。
【
図14】本開示の第2実施形態に係る粉砕ローラの要部断面図である。
【
図16】本開示の第2実施形態に係る粉砕ローラの回転中心軸線方向の位置を示す図である。
【
図17】本開示の第2実施形態に係る粉砕ローラの回転中心軸線方向の位置における要求される耐摩耗性及びセラミック密度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示に係る粉砕ローラ、粉砕テーブル及び固体燃料粉砕装置並びに粉砕ローラの製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の第1実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る発電プラント1は、固体燃料粉砕装置100とボイラ200とを備えている。
以降の説明では、上方とは鉛直上側の方向を、上部や上面などの“上”とは鉛直上側の部分を示している。また同様に“下”とは鉛直下側の部分を示すものであり、鉛直方向は厳密ではなく誤差を含むものである。
【0015】
本実施形態の固体燃料粉砕装置100は、一例としてバイオマス燃料や石炭等の固体燃料を粉砕し、微粉燃料を生成してボイラ200のバーナ(燃焼装置)220へ供給する装置である。
図1に示す固体燃料粉砕装置100とボイラ200とを含む発電プラント1は、1台の固体燃料粉砕装置100を備えるものであるが、1台のボイラ200の複数のバーナ220のそれぞれに対応する複数台の固体燃料粉砕装置100を備えるシステムとしてもよい。
【0016】
本実施形態の固体燃料粉砕装置100は、ミル(粉砕部)10と、バンカ(貯蔵部)21と、給炭機(燃料供給機)25と、送風部(搬送用ガス供給部)30と、状態検出部40と、制御部50とを備えている。
【0017】
ボイラ200に供給する石炭やバイオマス燃料等の固体燃料を、微粉状の固体燃料である微粉燃料へと粉砕するミル10は、石炭のみを粉砕する形式であっても良いし、バイオマス燃料のみを粉砕する形式であっても良いし、石炭とともにバイオマス燃料を粉砕する形式であってもよい。
ここで、バイオマス燃料とは、再生可能な生物由来の有機性資源であり、例えば、間伐材、廃木材、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などであり、ここに提示したものに限定されることはない。バイオマス燃料は、バイオマスの成育過程において二酸化炭素を取り込むことから、地球温暖化ガスとなる二酸化炭素を排出しないカーボンニュートラルとされるため、その利用が種々検討されている。
【0018】
ミル10は、ハウジング11と、粉砕テーブル12と、粉砕ローラ13と、減速機(駆動伝達部)14と、減速機14に接続され粉砕テーブル12を回転駆動させるミルモータ(駆動部)15と、回転式分級機(分級部)16と、給炭管(燃料供給部)17と、回転式分級機16を回転駆動させる分級機モータ18とを備えている。
ハウジング11は、鉛直方向に延びる筒状に形成されるとともに、粉砕テーブル12と粉砕ローラ13と回転式分級機16と、給炭管17とを収容する筐体である。
ハウジング11の天井部42の中央部には、給炭管17が取り付けられている。この給炭管17は、バンカ21から給炭機25を介して導かれた固体燃料をハウジング11内に供給するものであり、ハウジング11の中心位置に上下方向に沿って配置され、下端部がハウジング11内部まで延設されている。
【0019】
ハウジング11の底面部41付近には減速機14が設置され、この減速機14に接続されたミルモータ15から伝達される駆動力により回転する粉砕テーブル12が回転自在に配置されている。
粉砕テーブル12は、平面視円形の部材であり、給炭管17の下端部が対向するように配置されている。粉砕テーブル12の上面は、例えば、中心部が低く、外側に向けて高くなるような傾斜形状をなし、外周部が上方に曲折した形状をなしていてもよい。給炭管17は、固体燃料(本実施形態では例えば石炭やバイオマス燃料)を上方から下方の粉砕テーブル12に向けて供給し、粉砕テーブル12は供給された固体燃料を粉砕ローラ13との間に挟み込んで粉砕する。
【0020】
固体燃料が給炭管17から粉砕テーブル12の中央部へ向けて投入されると、粉砕テーブル12の回転による遠心力によって、固体燃料は粉砕テーブル12の外周側へと導かれ、粉砕テーブル12と粉砕ローラ13との間に挟み込まれて粉砕される。粉砕された固体燃料は、搬送用ガス流路(以降は、一次空気流路と記載する)110から導かれた搬送用ガス(以降は、一次空気と記載する)によって上方へと吹き上げられ、回転式分級機16へと導かれる。
粉砕テーブル12の外周には、一次空気流路110から流入する一次空気を、ハウジング11内の粉砕テーブル12の上方の空間に流出させる吹出口(図示省略)が設けられている。吹出口には旋回羽根(図示省略)が設置されており、吹出口から吹き出した一次空気に旋回力を与える。旋回羽根により旋回力が与えられた一次空気は、旋回する速度成分を有する気流となって、粉砕テーブル12上で粉砕された固体燃料を、ハウジング11内の上方にある回転式分級機16へと搬送する。なお、粉砕された固体燃料のうち、所定粒径より大きいものは回転式分級機16により分級されて、または、回転式分級機16まで到達することなく落下して、粉砕テーブル12上に戻されて、粉砕テーブル12と粉砕ローラ13との間で再度粉砕される。
【0021】
粉砕ローラ13は、給炭管17から粉砕テーブル12上に供給された固体燃料を粉砕する回転体である。粉砕ローラ13は、粉砕テーブル12の上面に押圧されて粉砕テーブル12と協働して固体燃料を粉砕する。
図1では、粉砕ローラ13が代表して1つのみ示されているが、粉砕テーブル12の上面を押圧するように、周方向に一定の間隔を空けて、複数の粉砕ローラ13が配置される。例えば、外周部上に120°の角度間隔を空けて、3つの粉砕ローラ13が周方向に均等な間隔で配置される。この場合、3つの粉砕ローラ13が粉砕テーブル12の上面と接する部分(押圧する部分)は、粉砕テーブル12の回転中心軸からの距離が等距離となる。
【0022】
粉砕ローラ13は、ジャーナルヘッド45によって、上下に揺動・変位可能となっており、粉砕テーブル12の上面に対して接近離間自在に支持されている。粉砕ローラ13は、外周面が粉砕テーブル12の上面の固体燃料に接触した状態で、粉砕テーブル12が回転すると、粉砕テーブル12から回転力を受けて連れ回りするようになっている。給炭管17から固体燃料が供給されると、粉砕ローラ13と粉砕テーブル12との間で固体燃料が押圧されて粉砕される。この押圧する力を、粉砕荷重と言う。
【0023】
ジャーナルヘッド45の支持アーム47は、中間部が水平方向に沿った支持軸48によって、ハウジング11の側面部に支持軸48を中心として粉砕ローラ13を上下方向に揺動・変位可能に支持されている。また、支持アーム47の鉛直上側にある上端部には、押圧装置(粉砕荷重付与部)46が設けられている。押圧装置46は、ハウジング11に固定されており、粉砕ローラ13を粉砕テーブル12に押し付けるように、支持アーム47等を介して粉砕ローラ13に粉砕荷重を付与する。粉砕荷重は、例えば、ミル10の外部に設置された油圧装置(図示省略)から供給される作動油の圧力により作動する油圧シリンダ(図示省略)によって与えられる。また、粉砕荷重は、ばね(図示省略)の反発力によって与えられてもよい。
【0024】
減速機14は、ミルモータ15に接続されており、ミルモータ15の駆動力を粉砕テーブル12に伝達し、粉砕テーブル12を中心軸回りに回転させる。
【0025】
回転式分級機(分級部)16は、ハウジング11の上部に設けられ中空状の逆円錐状の外形を有している。回転式分級機16は、その外周位置に上下方向に延在する複数のブレード16aを備えている。各ブレード16aは、回転式分級機16の中心軸線周りに所定の間隔(均等間隔)で設けられている。
回転式分級機16は、粉砕テーブル12と粉砕ローラ13により粉砕された固体燃料(以降、粉砕された固体燃料を「粉砕燃料」という。)を、所定粒径(例えば、石炭では70~100μm)より大きいもの(以降、所定粒径を超える粉砕燃料を「粗粉燃料」という。)と、所定粒径以下のもの(以降、所定粒径以下の粉砕燃料を「微粉燃料」という。)に分級する装置である。回転式分級機16は、制御部50によって制御される分級機モータ18により回転駆動力を与えられ、ハウジング11の上下方向に延在する円筒軸(図示省略)を中心に給炭管17の周りを回転する。
なお、分級部としては、固定された中空状の逆円錐形状のケーシングと、そのケーシングの外周位置にブレード16aに替わって複数の固定旋回羽根とを備えた固定式分級機を用いてもよい。
【0026】
回転式分級機16に到達した粉砕燃料は、ブレード16aの回転により生じる遠心力と、一次空気の気流による向心力との相対的なバランスにより、大きな径の粗粉燃料は、ブレード16aによって叩き落とされ、粉砕テーブル12へと戻されて再粉砕され、微粉燃料はハウジング11の天井部42にある出口ポート19に導かれる。回転式分級機16によって分級された微粉燃料は、一次空気とともに出口ポート19から微粉燃料供給流路(微粉燃料供給管)120へ排出され、ボイラ200のバーナ220へ供給される。
【0027】
給炭管17は、ハウジング11の天井部42を貫通するように上下方向に沿って下端部がハウジング11内部まで延設されて取り付けられ、給炭管17の上部から投入される固体燃料を粉砕テーブル12の中央部に供給する。給炭管17の上端には、給炭機25が接続されており、固体燃料が供給される。
【0028】
給炭機25は、バンカ21の下端部から上下方向に延在する管であるダウンスパウト部22によって、バンカ21と接続されている。ダウンスパウト部22の途中には、バンカ21からの固体燃料の排出状態を切り替える弁(コールゲート、図示省略)を設けてもよい。給炭機25は、搬送部26と、給炭機モータ27とを備える。搬送部26は、例えばベルトコンベアであり、ダウンスパウト部22の下端部から排出される固体燃料を、給炭機モータ27の駆動力によって給炭管17の上部に搬送し、内部へ投入する。ミル10へ供給される固体燃料の供給量は、制御部50からの信号によって、例えば、搬送部26のベルトコンベアの移動速度を調整して制御される。
【0029】
通常、ミル10の内部には、微粉燃料をバーナ220へ搬送するための一次空気が供給されており、給炭機25やバンカ21よりも圧力が高くなっている。バンカ21と給炭機25を接続するダウンスパウト部22の内部は、燃料が積層状態となっている。この固体燃料層により、ミル10からバンカ21に向けて、一次空気と微粉燃料が逆流を抑制するためのシール性(マテリアルシール)を確保している。
【0030】
送風部30は、粉砕燃料を乾燥させるとともに、回転式分級機16へ搬送するための一次空気を、ハウジング11の内部へ送風する装置である。
送風部30は、ハウジング11の内部へ送風される一次空気の流量と温度を適切に調整するために、本実施形態では、一次空気通風機(PAF:Primary Air Fan)31と、熱ガス流路30aと、冷ガス流路30bと、熱ガスダンパ30cと、冷ガスダンパ30dとを備えている。
【0031】
本実施形態では、熱ガス流路30aは、一次空気通風機31から送出された空気の一部を、空気予熱器(熱交換器)34を通過して加熱された熱ガスとして供給する。熱ガス流路30aには、熱ガスダンパ30cが設けられている。熱ガスダンパ30cの開度は、制御部50によって制御される。熱ガスダンパ30cの開度によって、熱ガス流路30aから供給する熱ガスの流量が決定される。
【0032】
冷ガス流路30bは、一次空気通風機31から送出された空気の一部を常温の冷ガスとして供給する。冷ガス流路30bには、冷ガスダンパ30dが設けられている。冷ガスダンパ30dの開度は、制御部50によって制御される。冷ガスダンパ30dの開度によって、冷ガス流路30bから供給する冷ガスの流量が決定される。
【0033】
一次空気の流量は、本実施形態では、熱ガス流路30aから供給する熱ガスの流量と冷ガス流路30bから供給する冷ガスの流量の合計の流量となり、一次空気の温度は、熱ガス流路30aから供給する熱ガスと冷ガス流路30bから供給する冷ガスの混合比率で決まり、制御部50によって制御される。
また、熱ガス流路30aから供給する熱ガスに、例えば、ガス再循環通風機(図示省略)によってボイラ200から排出された燃焼ガスの一部を導き、混合することで、一次空気流路110からハウジング11の内部へ送風する一次空気中の酸素濃度を調整してもよい。一次空気中の酸素濃度を調整することによって、例えば、着火性の高い(着火しやすい)固体燃料を使用する場合、ミル10からバーナ220に至るまでの経路において、固体燃料が着火することを抑制することができる。
【0034】
本実施形態では、ミル10の状態検出部40により計測または検出したデータを、制御部50に送信する。本実施形態の状態検出部40は、例えば、差圧計測手段であり、一次空気流路110からハウジング11の内部へ一次空気が流入する部分における圧力と、ハウジング11の内部から微粉燃料供給管120へ一次空気と微粉燃料が排出される出口ポート19における圧力との差圧を、ミル10の差圧として計測する。このミル10の差圧の増減は、回転式分級機16の分級効果によってハウジング11内部の回転式分級機16付近と粉砕テーブル12付近の間を循環している粉砕燃料の循環量の増減に対応する。すなわち、このミル10の差圧に応じて回転式分級機16の回転数を調整することで、出口ポート19から排出される微粉燃料の量と粒径範囲を調整することができるので、微粉燃料の粒径をバーナ220における固体燃料の燃焼性に影響しない範囲に維持しつつ、ミル10への固体燃料の供給量に対応した量の微粉燃料を、ボイラ200に設けられたバーナ220に安定して供給することができる。
また、本実施形態の状態検出部40は、例えば、温度計測手段であり、ハウジング11の内部へ供給される一次空気の温度(ミル入口一次空気温度)や、出口ポート19における一次空気と微粉燃料との混合気体の温度(ミル出口一次空気温度)を検出して、それぞれの上限温度を超えないように送風部30を制御する。各上限温度は、固体燃料の性状に応じた着火の可能性等を考慮して決定される。なお、一次空気は、ハウジング11の内部において、粉砕燃料を乾燥しながら搬送することによって冷却されるため、ミル入口の一次空気温度は、例えば常温から約300度程度、ミル出口の一次空気温度は、例えば常温から約90度程度となる。
【0035】
制御部50は、固体燃料粉砕装置100の各部を制御する装置である。
制御部50は、例えば、ミルモータ15に駆動指示を伝達して粉砕テーブル12の回転速度を制御してもよい。
制御部50は、例えば、分級機モータ18へ駆動指示を伝達して回転式分級機16の回転速度を制御して分級性能を調整し、微粉燃料の粒径をバーナ220における固体燃料の燃焼性に影響しない範囲に維持しつつ、ミル10への固体燃料の供給量に対応した量の微粉燃料を、バーナ220へ安定して供給することができる。
また、制御部50は、例えば給炭機モータ27へ駆動指示を伝達することにより、ミル10へ供給する固体燃料の供給量(給炭量)を調整することができる。
また、制御部50は、送風部30へ開度指示を伝達することにより、熱ガスダンパ30cおよび冷ガスダンパ30dの開度を制御して一次空気の流量と温度を調整することができる。具体的には、制御部50は、ハウジング11の内部へ供給される一次空気の流量と、出口ポート19における一次空気の温度(ミル出口一次空気温度)が、固体燃料の種別毎に、給炭量に対応して設定された所定値となるように、熱ガスダンパ30cおよび冷ガスダンパ30dの開度を制御する。なお、一次空気の温度の制御は、ミル入口における温度(ミル入口一次空気温度)に対して行ってもよい。
【0036】
制御部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。また、HDDはソリッドステートディスク(SSD)等で置き換えられてもよい。
【0037】
次に、固体燃料粉砕装置100から供給される微粉燃料の燃焼によって蒸気を発生させるボイラ200について説明する。ボイラ200は、火炉210とバーナ220とを備えている。
【0038】
バーナ220は、微粉燃料供給管120から供給される微粉燃料と一次空気との混合気と、押込通風機(FDF:Forced Draft Fan)32から送出される空気(外気)を空気予熱器34で加熱して供給される二次空気とを用いて、微粉燃料を燃焼させて火炎を形成する装置である。微粉燃料の燃焼は火炉210内で行われ、高温の燃焼ガスは、蒸発器、過熱器、節炭器などの熱交換器(図示省略)を通過した後にボイラ200の外部に排出される。
【0039】
ボイラ200から排出された燃焼ガスは、環境装置(脱硝装置、集塵装置、脱硫装置などで図示省略)で所定の処理を行うとともに、空気予熱器34で一次空気や二次空気との熱交換が行われ、誘引通風機(IDF:Induced Draft Fan)33を介して煙突(図示省略)へと導かれて外気へと放出される。空気予熱器34において燃焼ガスにより加熱された一次空気通風機31から送出される空気は、前述した熱ガス流路30aに供給される。
ボイラ200の各熱交換器への給水は、節炭器(図示省略)において加熱された後に、蒸発器(図示省略)および過熱器(図示省略)によって更に加熱されて高温高圧の過熱蒸気が生成され、発電部である蒸気タービン(図示省略)へと送られて蒸気タービンを回転駆動し、蒸気タービンに接続した発電機(図示省略)を回転駆動して発電が行われ、発電プラント1を構成する。
【0040】
次に、本実施形態に係る粉砕ローラ13及び粉砕テーブル12の詳細について、
図1から
図13を参照して詳細に説明する。
図1及び
図2に示すように、各粉砕ローラ13は、ジャーナルシャフト44、ジャーナルヘッド45及び支持軸48を介して、回転中心軸線C2を中心として回転可能にハウジング11に対して支持されている。ジャーナルシャフト44は、ハウジング11の側面部近傍からハウジング11の中心部側へ下方に傾斜するように延在している。ジャーナルシャフト44は、基端部(ハウジング11の側面部側の端部)がジャーナルヘッド45に固定されている。また、ジャーナルシャフト44の先端部(ミル10の中心部側の端部)には、軸受(図示省略)を介して粉砕ローラ13が回転自在に支持されている。すなわち、粉砕ローラ13は、粉砕テーブル12の鉛直上方で、上部側が下部側よりもハウジング11の中心部側に向くように位置する傾斜した状態で、回転可能に支持されている。
【0041】
粉砕ローラ13は、
図2に示すように、ジャーナルシャフト44の先端部に回転中心軸線C2を中心として回転自在に支持されるジャーナルハウジング(支持部)43と、ジャーナルハウジング43に外嵌される略円環状のローラ部49と、を備えている。ジャーナルハウジング43は、ジャーナルシャフト44の先端を覆うように設けられ、外周面が円筒状に形成されている。
【0042】
図3及び
図4は、ローラ部49を、ローラ部49の回転中心軸線C2が延在する方向を含む面で切断した際の断面(以下、「軸線方向断面」と称する。)の要部を示している。
ローラ部49は、
図3及び
図4に示すように、ジャーナルハウジング43に嵌合する高クロム鋳鉄製の基部51と、基部51の外周面51aに設けられるセラミック製の部材を一部に含むセラミック部52とを備えている。すなわち、本実施形態に係るローラ部49は、いわゆるセラミック埋め込み型高クロム鋳鉄ローラである。
ローラ部49は、外周面49aが略円環状であって、かつ、内周面(ジャーナルハウジング43の外周面と接触する面)が略円筒状を為している。ローラ部49は、外周面49aと内周面とを端面が接続している。ローラ部49の外周面49aは、軸線方向断面において、中心点CPを中心とした円弧状となるように湾曲している。ローラ部49の内周面は、軸線方向断面において、回転中心軸線C2と平行な直線とされている。
【0043】
基部51は、ジャーナルハウジング43に支持されている。基部51は、略円環形状に形成される。また、基部51は、内周面がジャーナルハウジング43の外周面と接触するように、該ジャーナルハウジング43と嵌合している。セラミック部52は、円環状の基部51の外周部に固定されている。セラミック部52は、基部51の周方向の略全域に亘って設けられている。すなわち、セラミック部52は、略円環形状に形成されている。また、セラミック部52は、基部51の外周面51aの全域を覆っているのではなく、基部51の外周面51aのうち、ローラ部49の基端側を覆っている。ここで、基端側とは、粉砕ローラ13が接続されるジャーナルシャフト44側であり、粉砕テーブル12の半径方向において外周側を示し、先端側とは、粉砕テーブル12の半径方向において回転中心軸線C1(
図1参照)側を示す。すなわち、ローラ部49の外周面49a(固体燃料を粉砕する面)は、基端側がセラミック部52の外周面52aで形成され、先端側(基端側とは反対側)が基部51の外周面51aで形成されている。
【0044】
セラミック部52は、セラミック製の部材(セラミックス粒子52c)を含んでいるので、高クロム鋳鉄製の基部51よりも線膨張係数が小さい。また、セラミック部52は、基部51よりも耐摩耗性に優れている。基部51の材料は、上記説明の材料に限定されない。
【0045】
図2の破線L1は、一般的なミル10(換言すれば、本開示に係る粉砕ローラ13や粉砕テーブル12を適用していないミル)が固体燃料を粉砕することで進行するローラ部49の摩耗の進行態様を示している。すなわち、ローラ部49は、ローラ部49の基端側(すなわち、先端側とは反対側)の一部分P1(以下、「最大摩耗点P1」と称する)が、他の部分よりも大きく摩耗する状況にある。上述のように、基端側とは粉砕テーブル12の半径方向において外周側を示し、先端側とは粉砕テーブル12の回転中心軸線C1(
図1参照)側を示す。また、
図2の破線L2は、粉砕テーブル12の摩耗の進行態様を示している。粉砕テーブル12のテーブル部12a(
図8参照)は、一部分P2(以下、「最大摩耗点P2」と称する)が、他の部分よりも大きく摩耗する状況にある。
なお、
図2では、摩耗前の最大摩耗点を符号「P1」及び「P2」で示し、実際に摩耗が進行した状態の最大摩耗点を符号「P1´」及び「P2´」で示している。摩耗前の最大摩耗点P1及びP2は、摩耗に対する対策を施していない場合に、摩耗が最も進行し易いと予想される点である。
【0046】
図3及び
図4に示すように、最大摩耗点P1は、ローラ部49の外周面49aにおいて、回転中心軸線C2と直交するとともに回転中心軸線C2が延在する方向における中央部を通過する線である中心線C3に対して、中心点CPにおいて基端側に所定の角度θ1を為す位置である。詳細には、中心線C3と所定の角度θ1を為す線L3と、外周面49aとが交差する位置である。本実施形態では、角度θ1は、一例として、8度とされているが、角度θ1は8度に限定されない。角度θ1は、3度から13度の範囲(8度のプラスマイナス5度の範囲)内であればよい。
また、本実施形態では、中心線C3と所定の角度θ1を為す線L3が通過する部分において、セラミック部52の軸線方向断面における厚さが最も厚くなっている。
【0047】
次に、セラミック部52の詳細について
図3及び
図4等を使用して説明する。
図3は、本実施形態に係るセラミック部52を示している。また、
図4は本実施形態の変形例に係るセラミック部52Aを示している。
【0048】
図3に示すように、本実施形態に係るセラミック部52は、金属製の母材52b及び母材52bに含まれる多数のセラミックス粒子52cを有している。多数のセラミックス粒子52cは母材52b中に散在しており、隣接するセラミックス粒子52cと結合している。セラミックス粒子52cの粒径は、例えば、1mmから2mm程度とされている。
【0049】
また、セラミック部52は、回転中心軸線C2方向(紙面左右方向)に沿って母材52bに対するセラミックの含有量であるセラミック密度(セラミックス粒子52cの密度)が変化している。具体的には、セラミック部52は、ローラ部49の外周面49aの最も摩耗し易い点である最大摩耗点P1を含む領域(第1領域)のセラミック密度が他の領域(第2領域)のセラミック密度よりも高くなっている。詳細には、セラミック部52は、最大摩耗点P1(詳細には、最大摩耗点P1と中心点CPとを通過する線L3)から回転中心軸線C2方向に離れるにしたがって連続的にセラミックス粒子52cの密度(セラミック密度)が低くなっている。
セラミック部52は、ローラ部49の周方向においてセラミック密度は一様とされると好適である。
また、セラミック密度の変化率は、各部位に要求される耐摩耗性の0.5乗以上の傾きとされると好適である。
【0050】
図4に示すように、本実施形態の変形例に係るセラミック部52Aは、セラミック密度が高い高密度部52Aaと、高密度部52Aaの回転中心軸線C2方向の両側に隣接して設けられ高密度部52Aaよりもセラミック密度が低い2つの中密度部52Abと、各中密度部52Abの回転中心軸線C2方向の高密度部52Aaとは反対側に隣接して設けられ、中密度部52Abよりもセラミック密度が低い2つの低密度部52Acと、を有する。セラミック部52Aは、最大摩耗点P1から回転中心軸線C2方向に離れるにしたがって段階的(本実施形態では一例として3段階)にセラミックス粒子52cの密度(セラミック密度)が低くなっている。
高密度部52Aa、中密度部52Ab及び低密度部52Acとは、各々に含まれる母材同士が結合することで連結している。高密度部52Aa、中密度部52Ab及び低密度部52Acは、各々、ローラ部49の周方向の全域に亘って設けられている。
高密度部52Aa、中密度部52Ab及び低密度部52Acは、各々、セラミック密度が一様となるように形成されている。
【0051】
図4に示すように、高密度部52Aaと中密度部52Abと低密度部52Acとを並べて配置するセラミック部52Aとすることで、異なるセラミック密度である高密度部52Aaと中密度部52Abと低密度部52Acとを製造し、高密度部52Aaと中密度部52Abと低密度部52Acとを回転軸線方向に並べて配置するだけで、セラミック部52Aの回転軸線方向においてセラミック密度を変化させたセラミック部52Aを容易に製造することができる。
【0052】
高密度部52Aaは、最大摩耗点P1を含むように配置されている。詳細には、高密度部52Aaの回転中心軸線C2方向の中間に最大摩耗点P1が重なるように配置されている。また、2つの中密度部52Abは、回転中心軸線C2方向に高密度部52Aaを挟むように配置されている。各中密度部52Abは、高密度部52Aaと低密度部52Acとに挟まれるように配置されている。また、2つの低密度部52Acは、回転中心軸線C2方向に中密度部52Abを挟むように配置されている。各低密度部52Acは、セラミック部52Aの回転中心軸線C2方向の両端部に配置されている。
【0053】
なお、上記説明では、高密度部52Aa、中密度部52Ab及び低密度部52Acの3つを各々ローラ部49の周方向の全域に亘って設ける例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、
図6及び
図7に示すように、高密度部52Aaと低密度部52Acをローラ部49の周方向に交互に並べることで中密度部52Abを代用してもよい。このようにすることで、セラミック密度の異なる部品の製造種類を低減することができるので、セラミック部52Aの製造を容易化することができる。また、異なるセラミック密度のセラミック部をローラ部49の周方向に並べることで、摩耗量の差によってローラ表面に周方向に凹凸が形成される。この凹凸が被粉砕物である固体燃料の噛み込みを促進するため、粉砕ローラ13のスリップを抑制することができる。
なお、
図6及び
図7は、
図5に示すローラ部49の外周面49aの要部(VI部分)の拡大図である。また、
図6及び
図7の矢印は、ローラ部49の回転方向を示している。
【0054】
図6に示すように、中密度領域に配置される高密度部52Aaは、高密度領域に配置される高密度部52Aaとは別体として設けられてもよい。この場合、
図6に示すように、中密度領域に配置される高密度部52Aaと高密度領域に配置される高密度部52Aaとを周方向にずらして配置してもよい。また、同様に、中密度領域に配置される低密度部52Acは、低密度領域に配置される低密度部52Acとは別体として設けられてもよい。この場合に、中密度領域に配置される低密度部52Acと低密度領域に配置される低密度部52Acとを周方向にずらして配置してもよい。
また、各高密度部52Aa及び各低密度部52Acは、平面視で矩形に形成されている。このように高密度部52Aa及び低密度部52Acを比較的単純な形状とすることで、高密度部52Aa及び低密度部52Acを容易に製造することができる。
【0055】
また、
図7に示すように、中密度領域に配置される高密度部52Aaは、高密度領域に配置される高密度部52Aaと一体的に設けられてもよい。この場合、
図7に示すように、高密度部52Aaと低密度部52Acとは、周方向にずらして配置される。また、高密度部52Aaの回転中心軸線C2方向(紙面左右方向)の両端部は、中密度領域に配置される。高密度部52Aaの中密度領域に配置される部分は、回転中心軸線C2方向の端部に向かうにしたがって周方向の長さが短くなるように形成されている。
また、低密度部52Acの回転中心軸線C2方向(紙面左右方向)の中心側端部は、中密度領域に配置される。低密度部52Acの中密度領域に配置される部分は、回転中心軸線C2方向の中央に向かうにしたがって周方向の長さが短くなるように形成されている。
図7の例では、中密度領域において、テーパ状の高密度部52Aaと低密度部52Acとが噛み合うように交互に配置されている。
【0056】
次に、
図1、
図8及び
図9を用いて粉砕テーブル12について説明する。
図1に示すように、粉砕テーブル12には、給炭管17(
図1参照)から固体燃料が供給される。粉砕テーブル12は、ミルモータ15から伝達される駆動力により回転中心軸線C1を中心として回転する。また、粉砕テーブル12は、
図8に示すように、固体燃料が供給されるテーブル部12aとテーブル部12aを下方から支持する支持部12bと、を備えている。
【0057】
テーブル部12aは、支持部12bに支持される基部12cと、基部12cの上面に設けられ基部12cと線膨張係数が異なるとともに基部12cよりも耐摩耗性が優れているセラミック部12dと、を有している。
固体燃料は、セラミック部12dの上面に供給される。セラミック部12dは、テーブル部12aの周方向の略全域に亘って形成されている。すなわち、セラミック部12dは、上面視で円環形状を為している。
【0058】
セラミック部12dは、金属製の母材及び母材に含まれる多数のセラミックス粒子52cを有している。多数のセラミックス粒子52cは母材中に散在しており、隣接するセラミックス粒子52cと結合している。セラミックス粒子52cの粒径は、例えば、1mmから2mm程度とされている。
【0059】
また、
図9に示すように、セラミック部12dは、テーブル部12aの半径方向(紙面左右方向)に沿って母材に対するセラミックの含有量であるセラミック密度(セラミックス粒子52cの密度)が変化している。具体的には、セラミック部12dは、テーブル部12aの上面の最も摩耗し易い点である最大摩耗点P2を含む領域(第1領域)のセラミック密度が他の領域(第2領域)のセラミック密度よりも高くなっている。詳細には、セラミック部12dは、最大摩耗点P2からテーブル部12aの半径方向に離れるにしたがってセラミックス密度が低くなっている。テーブル部12aの最大摩耗点P2は、粉砕ローラ13の中心線C3よりも半径方向の中心側となる。
【0060】
セラミック部12dは、セラミック密度が高い高密度部12daと、高密度部12daの半径方向の両側に隣接して設けられ高密度部12daよりもセラミック密度が低い2つの中密度部12dbと、各中密度部12dbの半径方向の高密度部12daとは反対側に隣接して設けられ中密度部12dbよりもセラミック密度が低い2つの低密度部12dcと、を有する。セラミック部12dは、最大摩耗点P2からテーブル部12aの半径方向に離れるにしたがって段階的(本実施形態では一例として3段階)にセラミックス密度が低くなっている。
高密度部12da、中密度部12db及び低密度部12dcとは、各々に含まれる母材同士が結合することで連結している。高密度部12da、中密度部12db及び低密度部12dcは、各々、テーブル部12aの周方向の全域に亘って設けられている。
【0061】
高密度部12daは、最大摩耗点P2を含むように配置されている。詳細には、高密度部12daの半径方向の略中央に最大摩耗点P2が重なるように配置されている。また、2つの中密度部12dbは、半径方向に高密度部12daを挟むように配置されている。各中密度部12dbは、高密度部12daと低密度部12dcとに挟まれるように配置されている。また、2つの低密度部12dcは、半径方向に中密度部12dbを挟むように配置されている。各低密度部12dcは、セラミック部12dの半径方向の両端部に配置されている。
【0062】
次に、ローラ部49を製造する方法について
図10から
図12を参照して説明する。
図10から
図12に示されるUPは、鉛直方向の上方を示している。
【0063】
まず、
図3に示す連続的にセラミック密度が変化するセラミック部52を備えるローラ部49の製造方法について
図10を用いて説明する。
まず、セラミックス粒子52cをブロック状(セラミック部52に対応する形状)に整形することで、セラミック部52の一部を構成するセラミックブロックCBを製造する。セラミックブロックCBは、粒子状のセラミックスを結合させたもので、セラミックス粒子52c同士の間に、比較的多くの隙間が形成されている。セラミックブロックCBの外周面の形状は、セラミック部52の外周面52a(
図3及び
図4等参照)の形状と略同一である。
セラミックブロックCBは、製造するローラ部49に供えられるセラミック部52に対応するように製造される。したがって、
図10の例では、最大摩耗点P1(
図3等参照)から回転中心軸線C2方向に離れるにしたがってセラミックス粒子52cの密度(セラミック密度)が連続的に低くなるように形成されたセラミックブロックCBを製造する。
【0064】
次に、製造したセラミックブロックCBを鋳型60内の所定の位置に設置する。次に、湯口61から湯道62を介して、鋳型60内に溶融した金属を流し込む。これにより、鋳型60内に溶融した金属が充填される(矢印m参照)。このとき、セラミックブロックCBは、溶融した金属よりも比重が軽いため、浮力によって、鋳型60の内周面の所定の位置に押し付けられる。詳細には、
図10に示すように、セラミックブロックCBの上面CBa(セラミック部52の基端側の端面に対応する面)が鋳型60の天井面に押し付けられ、この上面CBaによってセラミックブロックCBが鋳型60に支持される。また、このとき、セラミックブロックCB内部のセラミックス粒子52c同士の間に形成された隙間にも溶融した金属が流入する。これにより、セラミック部52はセラミックス粒子52cが散在するように設けられる。
【0065】
次に、溶融した金属を冷却し、凝固させる。これにより、セラミックブロックCB内部のセラミックス粒子52c同士の間に金属が入り込んだ耐摩耗性の優れたセラミック部52と、凝固した金属のみで形成された基部51とが一体化されたローラ部49が完成する。
また、セラミック部52においては、結合したセラミックス粒子52c同士の間の隙間に流入し凝固した金属がセラミック部52の母材52bとなる。
このようにして、本実施形態のローラ部49は、基部51とセラミック部52とを鋳ぐるみすることで製造される。
【0066】
次に、
図4に示すセラミック部52Aを備えるローラ部49の製造方法について
図11を用いて説明する。
セラミック部52Aを製造する際には、高密度部52Aa、中密度部52Ab及び低密度部52Acに対応するセラミックブロックを製造する。次に、高密度部52Aaに対応する高密度ブロックCBAa、中密度部52Abに対応する中密度ブロックCBAb及び低密度部52Acに対応する低密度ブロックCBAcを固定部材53で固定して、1つのセラミックブロックCBAを製造する。なお、このときセラミックブロック同士の間に僅かな隙間があってもよい。
【0067】
次に、製造したセラミックブロックCBAを鋳型60内の所定の位置に設置する。すなわち、高密度部52Aaに対応する高密度ブロックCBAa、中密度部52Abに対応する中密度ブロックCBAb及び低密度部52Acに対応する低密度ブロックCBAcが固定された状態でセラミックブロックCBAを鋳型60内の所定の箇所に配置する(セラミック部配置工程)。
その後の工程は、上述のセラミック部52を備えるローラ部49の製造方法と同様であるので記載を省略する。
【0068】
このように製造することで、高密度部52Aaに対応する高密度ブロックCBAa、中密度部52Abに対応する中密度ブロックCBAb及び低密度部52Acに対応する低密度ブロックCBAcの相対位置が決まった状態でセラミックブロックCBAを配置することができるので、容易にセラミックブロックCBAを配置することができる。したがって、高密度部52Aa、中密度部52Ab及び低密度部52Acを有するセラミック部52Aを容易に製造することができる。
【0069】
また、
図4に示すセラミック部52Aは、以下のように製造してもよく、
図12を用いて説明する。
まず、高密度部52Aaに対応する高密度ブロックCBAa、中密度部52Abに対応する中密度ブロックCBAb及び低密度部52Acに対応する低密度ブロックCBAcを製造する。このとき、高密度ブロックCBAaに外周面から突出する高密度部固定部FAaを設ける。また、同様に、中密度ブロックCBAbに外周面から突出する中密度部固定部FAbを設ける。また、同様に、低密度ブロックCBAcに外周面から突出する低密度部固定部FAcを設ける。
【0070】
次に、製造した高密度ブロックCBAa、中密度ブロックCBAb及び低密度ブロックCBAcを鋳型60内の所定の位置に設置する。鋳型60には、所定の箇所に、高密度部固定部FAaと嵌合する高密度凹部、中密度ブロックCBAbと嵌合する中密度凹部及び低密度ブロックCBAcと嵌合する低密度凹部が形成されている。各ブロックを鋳型60内に設置する場合には、高密度部固定部FAaを高密度凹部に嵌合させ、中密度ブロックCBAbを中密度凹部に嵌合させ、低密度ブロックCBAcを低密度凹部に嵌合させる。これにより、高密度ブロックCBAa、中密度ブロックCBAb及び低密度ブロックCBAcが各々所定の位置に位置決めされる(高密度部固定工程、低密度部(中密度部)固定工程)。
その後の工程は、上述のセラミック部52を備えるローラ部49の製造方法と同様であるので記載を省略する。ただし、本変形例では、鋳型60から取り出したローラ部49に対して、高密度部固定部FAa、中密度部固定部FAb及び低密度部固定部FAcを除去する。
【0071】
なお、
図10に示すセラミックブロックCBを、
図12で示す方法で鋳型60に固定してもよい。すなわち、セラミックブロックCBに固定部を設けるとともに、鋳型60に固定部と嵌合する凹部を設け、固定部と凹部とを嵌合させることでセラミックブロックCBを鋳型60内の所定の位置に固定してもよい。
【0072】
このように製造することで、高密度部52Aaに対応する高密度ブロックCBAa、中密度部52Abに対応する中密度ブロックCBAb及び低密度部52Acに対応する低密度ブロックCBAcを鋳型60の所定箇所に容易に固定することができる。したがって、高密度部52Aa、中密度部52Ab及び低密度部52Acを有するセラミック部52Aを容易に製造することができる。
【0073】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、セラミック部52が回転軸線方向に沿ってセラミック密度が変化している。セラミック密度は、剛性に影響する。これにより、セラミック部52の剛性を回転軸線方向に沿って変化させることができる。
【0074】
また、本実施形態では、最大摩耗点P1を含む領域のセラミック密度が他の領域のセラミック密度よりも高くなっている。これにより、最大摩耗点P1を含む領域の耐摩耗性を向上させることができる。したがって、粉砕ローラ13の耐摩耗性を向上させることができる。よって、粉砕ローラ13の寿命が短くなる事態を抑制し、粉砕ローラ13を長寿命化することができる。
一方、他の領域のセラミック密度は低くなっているので、全ての領域のセラミック密度を高くした場合と比較して、セラミック部52全体としての剛性を下げることができる。したがって、基部51とセラミック部52との熱応力をセラミック部52が吸収し易くなるので、線膨張係数の差に起因するセラミック部52の損傷を抑制することができる。よって、粉砕ローラ13を製造する際の歩留まりを向上させることができるので、製造コストを低減することができる。
このように、本実施形態では、粉砕ローラ13を製造する際の歩留まりを向上させるとともに、粉砕ローラ13を長寿命化することができる。
また、セラミック部52を厚くしても鋳造時の損傷を抑制することができることから、従来よりもセラミック部52の厚さを増加することができる。したがって、さらに粉砕ローラ13を長寿命化することができる。
【0075】
また、例えば、
図2に示すように、粉砕ローラ13の表面の一部が局所的に摩耗すると、粉砕テーブル12のテーブル部12aとの噛み合わせが悪くなり、粉砕性能が低下する可能性がある。具体的には、粉砕ローラ13の表面に窪みが形成されると、本来、粉砕ローラ13とテーブル部12aとの間に挟まれて粉砕されるべき固体燃料が、未粉砕のまま粉砕ローラ13を通過することができるようになるため、粉砕効率が低下する。特に粉砕ローラ13の表面で最も効率良く仕事をする部位(最大摩耗点P1)が摩耗によって窪み、粉砕性能が低下すると、最大摩耗点P1の周囲の粉砕効率の悪い部分で粉砕を行うようになるため、全体的なミル10の粉砕性能が徐々に低下していくことになる。
一方、本実施形態では、最大摩耗点P1を含む領域のセラミック密度が他の領域のセラミック密度よりも高くなっている。このため、
図13の破線で示すように、最大摩耗点P1を含む摩耗し易い領域における摩耗が抑制されるとともに、他の領域における摩耗は比較的進み易い。これにより、最大摩耗点P1を含む領域と他の領域との摩耗量が均一化される。したがって、
図13の破線で示すように、セラミック部52の外表面の局所的な摩耗を抑制することができる。よって、粉砕ローラ13と粉砕テーブル12との噛み合わせの悪化を抑制することができるので、粉砕性能の低下を抑制することができる。
なお、粉砕ローラ13の摩耗により、粉砕ローラ13と粉砕テーブル12との間の隙間が大きくなるが、当該隙間が大きくなった時には、隙間の長さを調整可能なギャップボルト(不図示)によって、当該隙間を小さくする。
【0076】
また、ローラ部49をジャーナルハウジング43に取り付ける際に、ローラ部49を加熱してジャーナルハウジング43に焼き嵌めすることがある。この際、ローラ部49の内部に熱応力が発生するが、本実施形態では、上述のように基部51とセラミック部52との熱応力をセラミック部52が吸収し易くなるので、線膨張係数の差に起因するセラミック部52の損傷を抑制することができる。
また、ジャーナルハウジング43からローラ部49を取り外す際に、ローラ部49を加熱して取り外し易くする場合がある。この際にもローラ部49の内部に熱応力が発生するが、本実施形態では、上述のように基部51とセラミック部52との熱応力をセラミック部52が吸収し易くなるので、線膨張係数の差に起因するセラミック部52の損傷を抑制することができる。
このように、本実施形態では、ローラ部49の取付け時や、取り換え時にも、取り扱いを容易にすることができる。
【0077】
また、本実施形態では、粉砕テーブル12のセラミック部12dがテーブル部12aの半径方向に沿ってセラミック密度が変化している。セラミック密度は、剛性に影響する。これにより、セラミック部12dの剛性をテーブル部12aの半径方向に沿って変化させることができる。
また、本実施形態では、粉砕テーブル12の最大摩耗点P2を含む領域のセラミック密度が他の領域のセラミック密度よりも高くなっている。これにより、最大摩耗点P2を含む領域の耐摩耗性を向上させることができる。したがって、粉砕テーブル12の耐摩耗性を向上させることができる。よって、粉砕テーブル12の寿命が短くなる事態を抑制し、粉砕テーブル12を長寿命化することができる。
一方、他の領域のセラミック密度は低くなっているので、全ての領域のセラミック密度を高くした場合と比較して、セラミック部12d全体としての剛性を下げることができる。したがって、基部12cとセラミック部12dとの熱応力をセラミック部12dが吸収し易くなるので、線膨張係数の差に起因するセラミック部12dの損傷を抑制することができる。よって、粉砕テーブル12を製造する際の歩留まりを向上させることができるので、製造コストを低減することができる。
このように、本実施形態では、粉砕テーブル12を製造する際の歩留まりを向上させるとともに、粉砕テーブル12を長寿命化することができる。
【0078】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態について、
図14から
図16を用いて説明する。
ミル10では、ローラ部49の摩耗の進行に伴い、ローラ部49を反転させて使用する場合がある。すなわち、ローラ部49を一度ジャーナルハウジング43から取り外し、基端側と先端側とを入れ替えて、再びローラ部49をジャーナルハウジング43に取り付けて使用する場合がある。この場合には、最大摩耗点が中心線C3を基準とした対称の位置となる。詳細には、
図14に示すように、中心線C3と所定の角度θ1を為す線L3の線対称の線であるL4と、ローラ部49の外周面49aとが交差する点P3となる。
【0079】
本実施形態に係るセラミック部152は、
図14に示すように、回転中心軸線C2方向(紙面左右方向)において、点P3と最大摩耗点P1との間の領域Aのセラミック密度が他の領域のセラミック密度よりも高い。すなわち、領域Aが最もセラミック密度が高い。領域Aは、最大摩耗点P1及び点P3を含んでいる。その他の点では上記第1実施形態と同様であるので、同様の構成については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
このようにすることで、ローラ部49を反転させて使用した場合であっても、摩耗し易い領域におけるセラミック密度を高くすることができる。したがって、粉砕ローラ13をさらに長寿命化させることができる。
【0080】
なお、
図15に示すように、点P3を含む点P3の近傍領域(第3領域)B及び最大摩耗点P1を含む最大摩耗点P1の近傍領域(第1領域)Cのセラミック密度のみを他の領域(第2領域)のセラミック密度よりも高くしてもよい。すなわち、領域B及び領域Cが最もセラミック密度が高い。
このようにすることで、ローラ部49を反転させて使用した場合であっても、摩耗し易い領域におけるセラミック密度を高くすることができるので、粉砕ローラ13をさらに長寿命化させることができる。
【0081】
セラミック部152の要求される耐摩耗性は、
図17に示すように、回転中心軸線C2方向の各位置において異なる。
図17の横軸は、
図16に示す回転中心軸線C2方向の各位置を示す数値に対応している。また、
図17の縦軸は、要求される耐摩耗性及びセラミック密度を示している。なお、
図16は、ローラ部49の回転中心軸線C2方向の位置を示す装置80を用いてローラ部49の位置を示した状態を図示している。
【0082】
セラミック部152の要求される耐摩耗性は、
図17の実線で示すように、位置5(最大摩耗点P1)及び位置7(最大摩耗点P1と対称の点P3)において最大(100%)となっている。位置5及び位置7から位置が1ずつ離れるにしたがって、10%ずつ減算されていく。
【0083】
また、破線で示す線は、各位置における要求される耐摩耗性の0.5乗のセラミック密度を示している。また、一点鎖線で示す線は、各位置における要求される耐摩耗性の2乗のセラミック密度を示している。また、二点鎖線で示す線は、各位置における要求される耐摩耗性の0乗(一定)のセラミック密度を示している。
図17から、本開示では、セラミック密度をハッチングの領域とすることが望ましい。具体的には、セラミック部152が存在している位置1から位置9までの間は、破線で示す線0.5乗のセラミック密度の値よりも小さい値となることが望ましい。以上から、セラミック密度の変化率は、その位置に要求される耐摩耗性の0.5乗以上の傾きとすることが好ましい。仮に混合割合の変化率を要求される耐摩耗性の0.5乗以下とした場合は、二点鎖線で示す線、即ち各位置において要求される耐摩耗性の0乗(一定=変化なし)の混合割合に近づく。したがって、位置によってセラミックス粒子52cの混合割合を変えたことによる効果が表れ難くなる。
【0084】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
例えば、使用する固体燃料は、本開示に限定されず、石炭、バイオマス燃料、石油コークス(PC:Petroleum Coke)などを用いることができる。さらに、それらの固体燃料を組み合わせて使用してもよい。
【0085】
例えば、上記各実施形態では、セラミック密度を変化させる方法として、セラミックス粒子52cの数を変化させる方法を採用した場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、セラミックス粒子52cの粒子径や粒子形状を変化させることで、セラミック密度を変化させてもよい。また、これらを組み合わせることで、セラミック密度を変化させてもよい。
【0086】
また、セラミック部の厚さは粉砕ローラ13の部位により異なる。セラミック部が厚い箇所は仮にセラミック密度が低く耐摩耗性が低くても長寿命を実現し易い。一方で、セラミック部が薄い箇所で厚い箇所と同等の寿命を得るにはセラミック密度を高くして高い耐摩耗性が求められる。したがって、各部位におけるセラミック密度の決定にセラミック部の厚さを加味してもよい。
【0087】
以上説明した実施形態に記載の粉砕ローラ、粉砕テーブル及び固体燃料粉砕装置並びに粉砕ローラの製造方法は、例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係る粉砕ローラは、ハウジング(11)の内部に収容され、回転する粉砕テーブル(12)との間に固体燃料を挟み込んで前記固体燃料を粉砕し、前記粉砕テーブル(12)からの回転力を受けて回転軸線(C2)を中心として連れ回る粉砕ローラ(13)であって、前記ハウジング(11)に対して回転可能に支持される支持部(43)と、前記支持部(43)に固定され、前記粉砕テーブル(12)との間で前記固体燃料を粉砕する円環状のローラ部(49)と、を備え、前記ローラ部(49)は、前記支持部に固定される基部(51)と、前記基部(51)の外周部に設けられ前記基部(51)と線膨張係数が異なるとともに前記基部(51)よりも耐摩耗性が優れているセラミック部(52、52A)と、を有し、前記セラミック部(52、52A)は、母材(52b)及び前記母材(52b)に設けられるセラミックス粒子(52c)を有し、前記回転軸線(C2)方向に沿って前記母材(52b)に対する前記セラミックス粒子(52c)の含有量であるセラミック密度が変化している。
【0088】
上記構成では、セラミック部が回転軸線方向に沿ってセラミック密度が変化している。セラミック密度は、剛性に影響する。これにより、セラミック部の剛性を回転軸線方向に沿って変化させることができる。
したがって、例えば、摩耗し易い箇所のセラミック密度を上げて(すなわち、剛性を上げて)、それ以外の摩耗し難い箇所のセラミック密度を下げた(すなわち、剛性を下げた)場合には、セラミック部全体としての剛性を下げることができる。よって、基部とセラミック部との熱応力をセラミック部が吸収し易くなるので、線膨張係数の差に起因するセラミック部の損傷を抑制することができる。よって、粉砕ローラを製造する際の歩留まりを向上させることができるので、製造コストを低減することができる。一方、摩耗し易い箇所においては、セラミック密度が高いので、粉砕ローラの耐摩耗性を維持することができる。したがって、粉砕ローラの寿命が短くなる事態を抑制し、粉砕ローラを長寿命化することができる。以上から、粉砕ローラを製造する際の歩留まりを向上させるとともに、粉砕ローラを長寿命化することができる。
なお、母材に対するセラミックの含有量(セラミック密度)を変化させる方法の例として、粒子状のセラミックの数を変化させる方法や、粒子状のセラミックの粒子径や粒子形状を変化させる方法や、それらを組み合わせる方法等が挙げられる。
【0089】
本開示の第2態様に係る粉砕ローラは、上記第1態様の粉砕ローラにおいて、前記セラミック部(52、52A)は、前記ローラ部(49)の外周面の最も摩耗し易い点である最大摩耗点(P1)を含む第1領域の前記セラミック密度が、前記第1領域よりも前記回転軸線(C2)方向の端部側に位置する第2領域の前記セラミック密度よりも高い。
【0090】
上記構成では、最大摩耗点を含む第1領域のセラミック密度が、第1領域よりも回転軸線方向の端部側に位置する第2領域のセラミック密度よりも高くなっている。これにより、最大摩耗点を含む第1領域の耐摩耗性を向上させることができる。したがって、粉砕ローラの耐摩耗性を向上させることができる。よって、粉砕ローラの寿命が短くなる事態を抑制し、粉砕ローラを長寿命化することができる。
一方、第2領域のセラミック密度は低くなっているので、全ての領域のセラミック密度を高くした場合と比較して、セラミック部全体としての剛性を下げることができる。したがって、基部とセラミック部との熱応力をセラミック部が吸収し易くなるので、線膨張係数の差に起因するセラミック部の損傷を抑制することができる。よって、粉砕ローラを製造する際の歩留まりを向上させることができるので、製造コストを低減することができる。
このように、上記構成では、粉砕ローラを製造する際の歩留まりを向上させるとともに、粉砕ローラを長寿命化することができる。
また、上記構成では、最大摩耗点を含む第1領域のセラミック密度が第2領域のセラミック密度よりも高くなっているので、最大摩耗点を含む摩耗し易い領域における摩耗が抑制されるとともに、第2領域における摩耗は比較的進み易い。これにより、最大摩耗点を含む第1領域と第2領域との摩耗量が均一化される。したがって、セラミック部の外表面の局所的な摩耗を抑制することができる。よって、粉砕ローラと粉砕テーブルとの噛み合わせの悪化を抑制することができるので、粉砕性能の低下を抑制することができる。
【0091】
本開示の第3態様に係る粉砕ローラは、上記第2態様の粉砕ローラにおいて、前記セラミック部(52、52A)は、前記回転軸線(C2)方向において、前記ローラ部(49)の前記外周面の中点を通過する面を基準として前記最大摩耗点(P1)と対称となる点(P3)を含む第3領域の前記セラミック密度が前記第2領域の前記セラミック密度よりも高い。
【0092】
ローラ部の摩耗の進行に伴い、ローラ部を反転させて使用する場合がある。すなわち、ローラ部の回転軸線方向の基端側と先端側とを逆にして使用する場合がある。この場合には、ローラ部の最大摩耗点が外周面の中点を通過する面を基準とした対称の位置となる。
上記構成では、ローラ部の外周面の中点を通過する面を基準として、最大摩耗点と対象となる点を含む第3領域のセラミック密度が第2領域のセラミック密度よりも高い。これにより、ローラ部を反転させて使用した場合であっても、摩耗し易い領域におけるセラミック密度を高くすることができる。したがって、粉砕ローラをさらに長寿命化させることができる。
【0093】
本開示の第4態様に係る粉砕ローラは、上記第2態様の粉砕ローラにおいて、前記セラミック部(52、52A)は、前記回転軸線(C2)方向において、前記ローラ部(49)の前記外周面の中点を通過する面を基準として前記最大摩耗点(P1)と対称となる点(P3)と前記最大摩耗点(P1)との間の領域の前記セラミック密度が他の領域の前記セラミック密度よりも高い。
【0094】
上記構成では、ローラ部の外周面の中点を通過する面を基準として最大摩耗点と対象となる点と最大摩耗点との間の領域のセラミック密度が他の領域のセラミック密度よりも高い。これにより、ローラ部を反転させて使用した場合であっても、摩耗し易い領域におけるセラミック密度を高くすることができる。したがって、粉砕ローラをさらに長寿命化させることができる。
【0095】
本開示の第5態様に係る粉砕ローラは、上記第2態様から第4態様のいずれかに記載の粉砕ローラにおいて、前記セラミック部(52、52A)は、前記第1領域を含み前記セラミック密度が一様である高密度部(52Aa)と、前記第2領域を含み前記セラミック密度が一様であり前記高密度部(52Aa)と前記回転軸線(C2)方向に隣接して設けられ前記高密度部(52Aa)よりも前記セラミック密度が低い低密度部(52Ab、52Ac)と、を有し、前記高密度部と前記低密度部とは固定されている。
【0096】
上記構成では、セラミック部が、セラミック密度が一様である高密度部と、高密度部と回転軸線方向に隣接して設けられセラミック密度が一様であり高密度部よりもセラミック密度が低い低密度部と、を有している。セラミック密度が一様である部品は、セラミック密度が一様でない部品よりも製造し易い。これにより、異なるセラミック密度であってかつセラミック密度が一様である高密度部と低密度部とを製造し、高密度部と低密度部とを回転軸線方向に並べて配置するだけで、セラミック部の回転軸線方向においてセラミック密度を変化させることができる。したがって、セラミック部を容易に製造することができる。
【0097】
本開示の第1態様に係る粉砕テーブルは、ハウジング(11)の内部に収容され、駆動部(15)から伝達される駆動力により中心軸線(C1)を中心として回転し、粉砕ローラ(13)との間に固体燃料を挟み込んで前記固体燃料を粉砕する粉砕テーブル(12)であって、前記固体燃料が供給されるテーブル部(12a)を備え、前記テーブル部(12a)は、基部(12c)と、前記基部(12c)の上面に設けられ前記基部(12c)と線膨張係数が異なるとともに前記基部(12c)よりも耐摩耗性が優れているセラミック部(12d)と、を有し、前記セラミック部(12d)は、母材及び前記母材に含まれるセラミックを有し、前記中心軸線(C1)を基準とする半径方向に沿って前記母材に対する前記セラミックの含有量であるセラミック密度が変化している。
【0098】
上記構成では、セラミック部が粉砕テーブルの半径方向に沿ってセラミック密度が変化している。セラミック密度は、剛性に影響する。これにより、セラミック部の剛性を粉砕テーブルの半径方向に沿って変化させることができる。
したがって、例えば、摩耗し易い箇所のセラミック密度を上げて(すなわち、剛性を上げて)、それ以外の摩耗し難い箇所のセラミック密度を下げた(すなわち、剛性を下げた)場合には、セラミック部全体としての剛性を下げることができる。よって、基部とセラミック部との熱応力をセラミック部が吸収し易くなるので、線膨張係数の差に起因するセラミック部の損傷を抑制することができる。よって、粉砕テーブルを製造する際の歩留まりを向上させることができるので、製造コストを低減することができる。一方、摩耗し易い箇所においては、セラミック密度が高いので、粉砕テーブルの耐摩耗性を維持することができる。したがって、粉砕テーブルの寿命が短くなる事態を抑制し、粉砕テーブルを長寿命化することができる。以上から、粉砕テーブルを製造する際の歩留まりを向上させるとともに、粉砕テーブルを長寿命化することができる。
なお、母材に対するセラミックの含有量(セラミック密度)を変化させる方法の例として、粒子状のセラミックの数を変化させる方法や、粒子状のセラミックの粒子径や粒子形状を変化させる方法や、それらを組み合わせる方法等が挙げられる。
【0099】
本開示の第2態様に係る粉砕テーブルは、上記第1態様の粉砕テーブルにおいて、前記セラミック部(12d)は、前記半径方向において、前記テーブル部(12a)の上面の最も摩耗し易い点である最大摩耗点(P2)を含む第1領域の前記セラミック密度が、前記第1領域よりも前記半径方向の端部側に位置する第2領域の前記セラミック密度よりも高い。
【0100】
上記構成では、最大摩耗点を含む第1領域のセラミック密度が、第1領域よりも半径方向の端部側に位置する第2領域のセラミック密度よりも高くなっている。これにより、最大摩耗点を含む第1領域の耐摩耗性を向上させることができる。したがって、粉砕テーブルの耐摩耗性を向上させることができる。よって、粉砕テーブルの寿命が短くなる事態を抑制し、粉砕テーブルを長寿命化することができる。
一方、第2領域のセラミック密度は低くなっているので、全ての領域のセラミック密度を高くした場合と比較して、セラミック部全体としての剛性を下げることができる。したがって、基部とセラミック部との熱応力をセラミック部が吸収し易くなるので、線膨張係数の差に起因するセラミック部の損傷を抑制することができる。よって、粉砕テーブルを製造する際の歩留まりを向上させることができるので、製造コストを低減することができる。
このように、上記構成では、粉砕テーブルを製造する際の歩留まりを向上させるとともに、粉砕テーブルを長寿命化することができる。
【0101】
本開示の第1態様に係る固体燃料粉砕装置は、上記第1態様から第5態様のいずれかに記載の粉砕ローラ及び/又は上記第1態様または第2態様に記載の粉砕テーブルを備える。
【0102】
本開示の第1態様に係る粉砕ローラの製造方法は、ハウジング(11)の内部に収容され、回転する粉砕テーブル(12)との間に固体燃料を挟み込んで前記固体燃料を粉砕し、前記粉砕テーブル(12)からの回転力を受けて回転軸線(C2)を中心として連れ回る粉砕ローラ(13)の製造方法であって、前記粉砕ローラ(13)は、前記ハウジング(11)に対して回転可能に支持される支持部(43)と、前記支持部(43)に固定され、前記粉砕テーブル(12)との間で前記固体燃料を粉砕する円環状のローラ部(49)と、を備え、前記ローラ部(49)は、前記支持部に固定される基部(51)と、前記基部(51)の外周部に設けられ前記基部(51)と線膨張係数が異なるとともに前記基部(51)よりも耐摩耗性が優れているセラミック部(52、52A)と、を有し、前記セラミック部(52、52A)は、母材(52b)及び前記母材(52b)に設けられるセラミックス粒子(52c)を有し、前記回転軸線(C2)方向に沿って前記母材(52b)に対する前記セラミックス粒子(52c)の含有量であるセラミック密度が変化していて、前記基部(51)と前記セラミック部(52、52A)とを鋳造により一体的に成形する工程を備える。
【0103】
本開示の第2態様に係る粉砕ローラの製造方法は、上記第1態様に係る粉砕ローラの製造方法において、前記セラミック部(52、52A)は、前記セラミック密度が高い高密度部(52Aa)と、前記高密度部(52Aa)と前記回転軸線(C2)方向に隣接して設けられ前記高密度部(52Aa)よりも前記セラミック密度が低い低密度部(52Ab、52Ac)と、を有し、前記高密度部(52Aa)と前記低密度部(52Ab、52Ac)とが固定された状態で前記セラミック部(52、52A)を鋳型(60)内の所定の箇所に配置するセラミック部(52、52A)配置工程を備える。
【0104】
上記構成では、高密度部と低密度部とが固定された状態でセラミック部を鋳型内の所定の箇所に配置するセラミック部配置工程を備えている。これにより、高密度部と低密度部との相対位置が決まった状態でセラミック部を配置することができるので、容易にセラミック部を配置することができる。したがって、高密度部及び低密度部を有する粉砕ローラを容易に製造することができる。
【0105】
本開示の第3態様に係る粉砕ローラの製造方法は、上記第1態様に係る粉砕ローラの製造方法において、前記セラミック部(52、52A)は、前記セラミック密度が高い高密度部(52Aa)と、前記高密度部(52Aa)と前記回転軸線(C2)方向に隣接して設けられ前記高密度部(52Aa)よりも前記セラミック密度が低い低密度部(52Ab、52Ac)と、を有し、高密度部固定部(FAa)によって前記高密度部(52Aa)を鋳型(60)の所定の箇所に固定する高密度部固定工程と、低密度部固定部(FAb、FAc)によって前記低密度部(52Ab、52Ac)を前記鋳型(60)の所定の箇所に固定する低密度部固定工程と、を備える。
【0106】
上記構成では、高密度部固定部によって高密度部を鋳型の所定の箇所に固定する高密度部固定工程と、低密度部固定部によって低密度部を鋳型の所定の箇所に固定する低密度部固定工程とを備えている。これにより、高密度部及び低密度部を鋳型の所定箇所に容易に固定することができる。したがって、高密度部及び低密度部を有する粉砕ローラを容易に製造することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 :発電プラント
10 :ミル
11 :ハウジング
12 :粉砕テーブル
12a :テーブル部
12b :支持部
12c :基部
12d :セラミック部
12da :高密度部
12db :中密度部
12dc :低密度部
13 :粉砕ローラ
14 :減速機
15 :ミルモータ
16 :回転式分級機
16a :ブレード
17 :給炭管
18 :分級機モータ
19 :出口ポート
21 :バンカ
22 :ダウンスパウト部
25 :給炭機
26 :搬送部
27 :給炭機モータ
30 :送風部
30a :熱ガス流路
30b :冷ガス流路
30c :熱ガスダンパ
30d :冷ガスダンパ
31 :一次空気通風機
34 :空気予熱器
40 :状態検出部
41 :底面部
42 :天井部
43 :ジャーナルハウジング
44 :ジャーナルシャフト
45 :ジャーナルヘッド
46 :押圧装置
47 :支持アーム
48 :支持軸
49 :ローラ部
49a :外周面
50 :制御部
51 :基部
51a :外周面
52 :セラミック部
52A :セラミック部
52Aa :高密度部
52Ab :中密度部
52Ac :低密度部
52a :外周面
52b :母材
52c :セラミックス粒子
53 :固定部材
60 :鋳型
61 :湯口
62 :湯道
80 :装置
100 :固体燃料粉砕装置
110 :一次空気流路
120 :微粉燃料供給管
152 :セラミック部
200 :ボイラ
210 :火炉
220 :バーナ
CB :セラミックブロック
CBA :セラミックブロック
CBAa :高密度ブロック
CBAb :中密度ブロック
CBAc :低密度ブロック
CBa :上面
FAa :高密度部固定部
FAb :中密度部固定部
FAc :低密度部固定部