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  • 特開-ぼかし肥料及び酵素培養液の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067393
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ぼかし肥料及び酵素培養液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C05F 11/08 20060101AFI20240510BHJP
   C05F 9/04 20060101ALI20240510BHJP
   C05F 17/30 20200101ALI20240510BHJP
   C05F 17/50 20200101ALI20240510BHJP
   C12N 9/14 20060101ALI20240510BHJP
   C12N 9/00 20060101ALI20240510BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20240510BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20240510BHJP
【FI】
C05F11/08
C05F9/04
C05F17/30
C05F17/50
C12N9/14
C12N9/00
C12M1/00 H
C12N1/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177435
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】505434973
【氏名又は名称】株式会社吉良商店
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】神谷 保徳
【テーマコード(参考)】
4B029
4B050
4B065
4H061
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA03
4B029BB01
4B029BB16
4B050CC07
4B050DD01
4B050EE02
4B050LL05
4B050LL10
4B065AA01X
4B065AC02
4B065AC09
4B065BA22
4B065BB26
4B065BC31
4B065BC32
4B065BC48
4B065CA49
4H061AA02
4H061CC42
4H061CC47
4H061EE66
4H061GG29
4H061GG48
4H061GG62
4H061GG67
4H061HH08
4H061HH42
4H061LL22
4H061LL25
(57)【要約】
【課題】臭い成分の発生が抑制されたぼかし肥料の製造方法を提供すること。
【解決手段】実施形態のぼかし肥料の製造方法は、光好性/好熱性の双方を備えた微生物群が混合された有機物を、太陽光が透過する密閉室10に充填して太陽光を照射させて、該有機物を発酵させて堆肥化を行なう方法である。密閉室10には、有機物にエアを送風するブロア21と、有機物から発生する酵素を含むガスを捕集する捕集器41と、ガスを液化して酵素液とする液化器43と、が設けられ、有機物には、酵素液を穀物酢と糖蜜とで培養した酵素培養液を含有する酵素含有液が散布される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光好性/好熱性の双方を備えた微生物群が混合された有機物を、太陽光が透過する密閉室に充填して太陽光を照射させて、該有機物を発酵させて堆肥化を行なうぼかし肥料の製造方法であって、
該密閉室には、該有機物にエアを送風するブロアと、該有機物から発生する酵素を含むガスを捕集する捕集器と、該ガスを液化して酵素液とする液化器と、が設けられ、
該酵素液を穀物酢と糖蜜とで培養した酵素培養液を含有する酵素含有液を該有機物に散布することを特徴とするぼかし肥料の製造方法。
【請求項2】
前記酵素含有液は、前記酵素培養液を50~500倍に希釈したものであり、
前記有機物1m3に対して、該酵素含有液を0.005~0.05m3散布することを特徴とする請求項1に記載のぼかし肥料の製造方法。
【請求項3】
前記酵素含有液のpHが4以下であることを特徴とする請求項1に記載のぼかし肥料の製造方法。
【請求項4】
前記有機物が植物由来有機物であることを特徴とする請求項1に記載のぼかし肥料の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の酵素液と穀物酢と糖蜜とを混合して、培養することを特徴とする酵素培養液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載のぼかし肥料及び酵素培養液の製造方法の技術分野は、有機物を、光好性/好熱性の微生物群を利用して堆肥化(コンポスト(compost)化)して製造するぼかし肥料及び酵素培養液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物を、微生物群を利用して堆肥化する方法として、特許文献1に、有機物を、少なくとも光好性/好熱性の微生物群と混合して密閉室に充填後、この有機物に光エネルギーを与えて発酵・分解させることにより堆肥化を行なう堆肥化処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-019580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された堆肥化処理方法は、脱臭処理について十分に検討が行われているものではなかったため、製造された堆肥は臭いをともなうものであり、臭い成分の発生が抑制されたぼかし肥料(堆肥)が要望されていた。
【0005】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、上述の点に鑑みてなされたものであり、臭い成分の発生が抑制されたぼかし肥料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の実施形態に係るぼかし肥料の製造方法は、光好性/好熱性の双方を備えた微生物群が混合された有機物を、太陽光が透過する密閉室に充填して太陽光を照射させて、該有機物を発酵させて堆肥化を行なうぼかし肥料の製造方法であって、
該密閉室には、該有機物にエアを送風するブロアと、該有機物から発生する酵素を含むガスを捕集する捕集器と、該ガスを液化して酵素液とする液化器と、が設けられ、
該酵素液を穀物酢と糖蜜とで培養した酵素培養液を含有する酵素含有液を該有機物に散布することを特徴とする。
【0007】
本明細書の実施形態に係るぼかし肥料の製造方法によれば、酵素含有液によって有機物の発酵を活性化させ、有機物の分解を促進させることができるため、製造されるぼかし肥料の臭い成分の発生を抑制することができる。
【0008】
ここで、上記のぼかし肥料の製造方法において、前記酵素含有液は、前記酵素培養液を50~500倍に希釈したものであり、
前記有機物1m3に対して、該酵素含有液を0.005~0.05m3散布するものとすることができる。
【0009】
これによれば、製造されるぼかし肥料の臭い成分の発生を好適に抑制することができる。
【0010】
また、上記のぼかし肥料の製造方法において、前記酵素含有液のpHが4以下であるものとすることができる。
【0011】
これによれば、ぼかし肥料中の有機物から発生するアンモニアガスの発生量を抑制することができ、臭い成分の発生を抑制することができる。
【0012】
また、上記のぼかし肥料の製造方法において、前記有機物が植物由来有機物であるものとすることができる。
【0013】
これによれば、植物由来有機物は、他の有機物と比して発する臭いが少なく、臭い成分の発生を抑制することができる。
【0014】
ここで、実施形態に係る酵素培養液の製造方法は、上記の酵素液と穀物酢と糖蜜とを混合して、培養することを特徴とする。
【0015】
実施形態に係る酵素培養液の製造方法によれば、酵素含有割合が高められた酵素培養液とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のぼかし肥料の製造方法によれば、酵素含有液によって有機物の発酵を活性化させ、有機物の分解を促進させることができるため、製造されるぼかし肥料の臭い成分の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態のぼかし肥料の製造方法に使用される有機物堆肥化処理装置の概念を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るぼかし肥料及び酵素培養液の製造方法について説明する。実施形態のぼかし肥料の製造方法は、光好性/好熱性の双方を備えた微生物群が混合された有機物を、太陽光が透過する密閉室10に充填して太陽光を照射させて、有機物を発酵させ、有機物から発生する酵素を含むガスを捕集して、酵素を培養した酵素培養液を含有する酵素含有液を、該有機物に散布することを特徴とするものである。
【0019】
有機物は、特に限定されるものではないが、植物由来有機物(トウモロコシの茎葉、マメ殻、もみがら、木質ペレットなどの農作物の非可食部)とすることができる。植物由来有機物は、水分を50~60質量%含有するものである。
【0020】
また、好光性/好熱性の微生物群とは、好光性/好熱性の双方を備えている微生物の一群をいう。例えば、光合成細菌のうち好熱性を備えているものを使用できる。そして、光合成細菌としては、紅色細菌、緑色細菌、好気性光合成細菌、ヘリオバクテリウムなど、特に限定されない。当然、光をエネルギーとして増殖する耐熱性の酵母も使用可能である。
【0021】
ここで、好熱性細菌とは、「生育至適温度が、50~105℃で、30℃以下の温度ではほとんど増殖しない細菌の総称である。通常の細菌は中性温(mesophilic)、すなわち生育の至適温度が25~40℃であり、50℃以上では一般に生育し難い。なお、高温でも定温でも生育可能な細菌は耐熱性細菌(thermore-sistant bacteria)とよんで区別される。」(八杉他編「岩波生物学辞典第4版」(1996-3-21)岩波、p452参照)とされているが、本明細書では、好熱性細菌には耐熱性細菌も含む。昼間の密閉室10内は高温となるが、夜間は、温調しなければ、通常細菌の生育至適温度25~40℃に下がる場合もあるためである。
【0022】
さらに、本発明では、堆肥化したものを施肥した場合、塩害の発生のおそれがないように、微生物が好塩性のものを含むことが望ましい。ここで、「好塩性」とは、「5~10wt%あるいはそれ以上の食塩濃度の培地を好む細菌や菌類の性質」をいい、菌体内に多量のNa+を取り入れて塩濃度を低下させると推定される(同p424参照)。
【0023】
これらの好光性/好熱性の特性を備えた微生物群としては、これらの要件を満たしている限り、特に限定されない。例えば、株式会社吉良商店(愛知県西尾市吉良町駮馬内ノ山23)が製造販売している「ケイエヌ菌」群を好適に使用できる。この「ケイエヌ菌」は、好塩性も有している。
【0024】
「ケイエヌ菌」群は、本発明者らが、下記の如く、日本各地から採取した種菌(微生物種)を工場で40年以上、培養・安定化させた一連の微生物群である。
1、日本各地の山や神社の大木(通常、樹齢100年以上)の根っこに小穴(径・深さとも約10~15cm)を掘りそこへ、砂糖50~100cc、酢10~15ccを添加して、土を被せて2~3日放置後、種菌を採取する。
2、上記種菌を工場に持ち帰り、栄養源となるカット野菜(レタス、キャベツ、白菜、スイカ、なす等)と混合して、加温(30~40℃)しながら発酵させて培養する。
3、菌が安定してきたら(約1年後)、太陽光を培地に直接照射した後、残存生菌のみを取り出し、上記と同様にして培養を1年間行なう。この工程を繰り返す。この際、直接照射の期間は、1日、3日、1週間、1ケ月、2ケ月、3ケ月と順次増やして行く。培養期間が5年程経過したら、直接照射の際に、培地が60℃以上となるように温調を行なう。
【0025】
こうして、微生物群は、好光性とともに好熱性を備えたもののみとなる。「ケイエヌ菌」の特性は、下記の如くである。
1、主として太陽光線の光で反応し、好気性・嫌気性のどちらの状態でも活動する。
2、植物由来有機物の水分(湿量含量基準)が70wt%以下(望ましくは45~65%)、温度40~100℃(望ましくは50~70℃)において、太陽光線があれば増殖して、植物由来有機物の発酵・分解を促進させる。
3、塩のNa+を選択的に取り込み、通常の発酵分解の場合に比して、発酵残渣・発酵残水中の塩濃度(主としてNaCl)が半分以下となる。したがって、有機物の発酵を促進させ、高温発酵と相まって、処理物が早く乾燥する。
4、分解・発酵時に70℃以上の高温となる。腐敗菌などの雑菌が死滅して、腐敗菌などの雑菌に起因するアンモニアガス、メタンガス、エタンガス、ブタンガス等の発生が抑制される。
5、有機物と無機塩との分離作用を有する。
【0026】
有機物(植物由来有機物)を発酵させて堆肥化するには、有機物に好光性/好熱性の微生物群を混合して、微生物群が混合された有機物を、太陽光が透過する密閉室10に充填して太陽光を照射させて、有機物を発酵させて堆肥化を行なう。有機物と好光性/好熱性の微生物群との混合比は、有機物(水分50~60質量%含有)1000質量部に対して好光性/好熱性の微生物群を10~50質量部含有させることができる。別の実施形態として、有機物1000質量部に対して好光性/好熱性の微生物群を20~40質量部とすることができる。
【0027】
有機物には、詳しくは後述する酵素含有液を散布する。酵素が有機物の分解を促進するとともに、酵素が微生物群の餌となり、有機物の堆肥化(発酵)を促進することができるためである。酵素液は、有機物1m3に対して、0.005~0.05m3散布する。別の実施形態として、酵素液は、有機物1m3に対して、0.008~0.02m3散布するものとすることができる。
【0028】
堆肥化(発酵)を密閉室10で行うのは、有機物から発生する臭気(特に、堆肥化の初期発酵時)を外部へ放出させないためである。堆肥化(発酵)の光エネルギー源は、通常、太陽光であるが、紫外線照射ランプなども使用することができる。例えば、曇天や雨天の日又は夜間に、紫外線照射ランプを補助的に使用して、有機物の堆肥化(発酵)を促進させることができる。
【0029】
堆肥化中の有機物の撹拌は、有機物の下側(密閉室10の床壁13側)からブロア21を用いて空気を流して、空気撹拌を行なう。有機物の下側から流された空気は有機物の上側に流れる。このとき、空気は、有機物の発酵による発酵熱によって加温され、さらに、太陽光の光エネルギーにより加温され、60~90℃の高温のガスとなる。このため、好光性/好熱性の微生物群は、増殖が促進され、その他の雑菌(60℃以上では死滅する。)の増殖が抑制される。空気の流量は、有機物1000kg当たり、50~1000L/minとすることができる。効率よく有機物の撹拌を行なうことができ、有機物の発酵・分解を促進することができるためである。空気の流量が有機物1000kg当たり50L/min未満である場合には、有機物の発酵を十分に促進することができないおそれがある。一方、1000L/minを超えると、発酵・分解を促進することはできるが、空気の流量が過剰となり、硬化が頭打ちとなるおそれがある。なお、混合物の温度が90℃を超えた際には、空気導入口13aからの空気の導入を止め、微生物群の活動を抑えることができる。
【0030】
有機物の上側に流れるガス(空気)には、有機物から発生する水分や酵素が含まれ、酵素を含むガスを捕集器41で捕集し、ガスを液化器43によって液化することによって、酵素液を得ることができる。なお、酵素液には、実施形態の微生物群が混合された有機物の微生物群が含まれることになる。
【0031】
得られた酵素液は、培養することによって、酵素培養液とすることができる。酵素培養液は、酵素液:穀物酢:糖蜜(廃糖蜜)=1:0.5~2:0.5~2の比率のものを、15~25℃の嫌気状態で1週間養生することによって、酵素液に含まれる微生物群により酵素が培養される。
【0032】
酵素培養液は、50~500倍に希釈したもの(酵素含有液)を田畑の作物に散布することができる。酵素含有液が散布された田畑の作物は、成長が良くなるとともに、病気に強く枯れにくいものとなる。また、酵素含有液は、発酵させて堆肥化する実施形態の微生物群が混合された有機物に散布するものである。酵素含有液は、加水分解系酵素(hydrolase)を多く有している。このため、有機物に含まれるアリイン(alliin)を分解しアリシン(allicin)を生成させ、更にアリシンを分解することができる。ニンニク臭や玉葱臭の元となるアリシンを分解することができるため、発酵させて堆肥化する微生物群が混合された有機物から発生する臭い成分を抑制することができる。また、酵素含有液は、pHが4以下であるものとすることができる。発酵させて堆肥化する微生物群が混合された有機物から発生するアンモニアガスの発生量を抑制することができ、臭い成分の発生を抑制することができるためである。なお、酵素含有液は、穀物酢が配合されることによって、pHが4以下とすることができる。
【0033】
有機物の発酵・分解を継続することにより、酵素含有液が散布された有機物と好光性/好熱性の微生物群との混合物は、約20日で、水分が10~15%となり、さらさらのぼかし肥料(堆肥)となる。
【0034】
ぼかし肥料は、高温下(60℃以上)で有機物の発酵・分解が行われているため、雑菌が繁殖し難く、太陽光の照射を受けていることにより、腐敗菌などの雑菌が殺菌されたものである。ぼかし肥料は、有機物の発酵・分解の際に、好光性/好熱性の微生物群によって、臭い成分のアリインやアリシンが分解され、腐敗菌などの雑菌が殺菌されているため、アンモニアガス、メタンガス、エタンガス、ブタンガスなどの腐敗臭の発生が抑制されたものとなる。
【0035】
次に、有機物を発酵させて堆肥化する有機物堆肥化処理装置について、説明する。
【0036】
図1に示すように、有機物堆肥化処理装置は、周壁11、天井壁12及び床壁13から、水平断面矩形の密閉室10が形成されている。天井壁12と周壁11の上半分側11aは、太陽光が透過可能なアクリル板から形成されている。床壁13には、ブロア21からの空気が導入される空気導入口13aが設けられ、周壁11には、密閉構造を保つことができる密閉出入り口(図示せず)が設けられている。また、周壁11には、発酵させる有機物の温度を測定する温度計22が備えられている。密閉室10の天井側には、酵素含有液を散布する散布器31が備えられている。
【0037】
空気導入口13aの上側には、上側が狭窄された狭窄部41aを有する筒状の捕集器41が備えられ、捕集器41は、有機物から発生する酵素を含むガスを捕集する。捕集器41の狭窄部41aの上側には、配管42が接続され、配管42の下流には、酵素を含むガスを冷却して液化する液化器43が接続され、酵素を含むガスは、液化器43で液化され、酵素液となって、回収容器44に回収される。
【実施例0038】
(有機物堆肥化処理装置)
実施例で使用した有機物堆肥化処理装置は、その大きさが、水平断面の長手方向が15m、水平断面の短手方向が10m、周壁11の高さが6mであり、密閉室10の大きさが、水平断面の長手方向が10m、水平断面の短手方向が4mであり、有機物を2.5m積み上げることにより、100m3程度の有機物を一度に発酵させることができるものを使用した。
【0039】
(有機物と好光性/好熱性の微生物群との混合)
有機物(農作物の非可食部)に好光性/好熱性の微生物群を混合させる工程である。有機物1m3(約1000kg)に対して「ケイエヌ菌」40L(約40kg)を混ぜ合わせて密閉室10に投入した。これを100回繰り返した。
【0040】
(酵素含有液の散布)
次に、有機物と好光性/好熱性の微生物群との混合物に酵素含有液を散布する工程である。有機物と好光性/好熱性の微生物群との混合物約100m3に、密閉室10の天井側に設けられた散布器31を用いて酵素含有液1000L(1m3)を散布した。
【0041】
(有機物の発酵)
有機物を、微生物群によって、発酵・分解する工程である。有機物と好光性/好熱性の微生物群との混合物には、酵素含有液が散布されているため、酵素が有機物の分解を促進するとともに、酵素が微生物群の餌となり、好光性/好熱性の微生物群の活動を活発にし、有機物の発酵・分解が促進された。有機物堆肥化処理装置は、天井壁12と周壁11の上半分側11aがアクリル板から形成されている。このため、酵素含有液が散布された有機物と好光性/好熱性の微生物群との混合物は、太陽光の照射を受ける。また、混合物には、空気導入口13aから空気が導入されるとともに、混合物が撹拌される。太陽光の照射を受けることにより、好光性/好熱性の微生物群の活動が活発になるとともに、腐敗菌などの雑菌が死滅する。また、空気が導入されることによっても、好光性/好熱性の微生物群の活動が活発になり、有機物の発酵・分解が促進された。空気の導入量は、10m3/min(10000L/min)とした。
【0042】
酵素含有液は、加水分解系酵素を多く含有し、有機物に含まれるアリインを分解しアリシンを生成させ、更にアリシンを分解することができるため、発酵させて堆肥化する微生物群が混合された有機物から発生する臭い成分を抑制することができた。また、酵素含有液は、pHが4以下であるため、ら発生するアンモニアガスの発生量を抑制することができ、臭い成分を更に抑制することができた。
【0043】
有機物の発酵・分解が促進されることにより、発酵熱により有機物の温度が上がるとともに、有機物から水分や酵素を含むガスが発生した。
【0044】
(有機物からぼかし肥料の製造)
有機物の発酵・分解を20日間継続することにより、酵素含有液が散布された有機物と好光性/好熱性の微生物群との混合物から、水分が12%のさらさらのぼかし肥料が得られた。ぼかし肥料は、有機物から発生するアリインやアリシンなどが分解され、臭い成分が抑制されたものであった。また、ぼかし肥料は、高温下(60℃以上)で有機物の発酵・分解行われ、太陽光の照射を受けていることにより、腐敗菌などの雑菌が殺菌され、雑菌によるアンモニアガス、メタンガス、エタンガス、ブタンガスなどの腐敗臭が抑制されたものであった。
【0045】
(有機物から発生する酵素を含むガスの捕集及び酵素含有液の製造)
有機物から発生した水分や酵素を含むガスは、捕集器41によって捕集され、液化器43で液化され、酵素液となって、回収容器44に回収された。酵素液は、酵素液:穀物酢:糖蜜=1:1:1の比率のものを、20℃の恒温室内で嫌気状態として1週間養生することによって酵素培養液とした。酵素培養液は、100倍に希釈し、酵素含有液とした。酵素含有液を田畑の作物に散布したところ、酵素含有液が散布された田畑の作物は、成長が良くなるとともに、病気に強く枯れにくいものとなった。
【符号の説明】
【0046】
10 密閉室
11 周壁
11a 上半分側
12 天井壁
13 床壁
13a 空気導入口
21 ブロア
22 温度計
31 散布器
41 捕集器
41a 狭窄部
42 配管
43 液化器
44 回収容器
図1