(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067402
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】火災収束装置および火災収束方法
(51)【国際特許分類】
A62C 2/00 20060101AFI20240510BHJP
A62C 19/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A62C2/00 A
A62C19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177453
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 和秀
(57)【要約】 (修正有)
【課題】火災収束装置および火災収束ユニットにおいて、火災を早期に収束可能とする。
【解決手段】火災発生現場を被覆可能な不燃シート11と、不燃シート11を支持すると共に不燃シート11の落下姿勢を維持する支持部材12と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災発生現場を被覆可能な不燃シートと、
前記不燃シートを支持すると共に前記不燃シートの落下姿勢を維持する支持部材と、
を備える火災収束装置。
【請求項2】
前記不燃シートは、落下時に空気抵抗が減少するように折り畳まれる閉止状態と、少なくとも落下後に広がる開放状態とに変化自在である、
請求項1に記載の火災収束装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記不燃シートを前記閉止状態と前記開放状態とに保持可能である、
請求項2に記載の火災収束装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記不燃シートの中心部に連結される軸部と、前記軸部から放射状に配置されて前記不燃シートに連結される複数の骨部とを有し、前記複数の骨部の端部が前記軸部に揺動自在に支持されることで、前記不燃シートが前記閉止状態と前記開放状態とに変化可能である、
請求項2または請求項3に記載の火災収束装置。
【請求項5】
前記不燃シートの落下方向の下方に消火剤が充填された消火剤容器が設けられる、
請求項1に記載の火災収束装置。
【請求項6】
前記支持部材は、前記不燃シートの落下方向の上方の中央部に固定される第1支持板と、前記第1支持板に対して直交する方向に沿って連結される第2支持板とを有する、
請求項1に記載の火災収束装置。
【請求項7】
前記第1支持板における長手方向の各両端部に前記第2支持板が回動自在に支持される、
請求項6に記載の火災収束装置。
【請求項8】
前記不燃シートおよび前記支持部材の落下速度を軽減する浮力付与部材または抵抗部材を有する、
請求項1に記載の火災収束装置。
【請求項9】
前記不燃シートは、熱可塑性部材により形成される、
請求項1に記載の火災収束装置。
【請求項10】
火災発生現場に向けて傘形状をなす第1不燃シートを閉止状態で落下させる工程と、
少なくとも着地時に前記第1不燃シートを開放して前記火災発生現場を被覆する工程と、
着地した複数の前記第1不燃シートの間の領域に向けて中央部に支持板が固定された第2不燃シートを落下させて着地させる工程と、
を有する火災収束方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、火災発生現場の火災を消火して収束させる火災収束装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、海上や森林などで火事が発生したとき、海上や森林などに消火剤を噴霧して消火する。海上や森林などに対して消火剤を噴霧する場合、例えば、ヘリコプターなどから消火剤を噴霧することが考えられる。ところが、ヘリコプターでは、十分な量の消火剤を搬送して噴霧することができず、早期の消火が困難である。そこで、例えば、特許文献1に記載された消火器具は、所定の温度により膨張する無機系発泡剤を含有する消火薬剤を、その膨張圧力により破裂可能な包装容器に封入し、火災に対して反応して包装容器の破壊と共に消火薬剤を飛散、拡散するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の消火器具は、海上や森林などの火災発生現場に、消火薬剤が封入された包装容器を投入し、包装容器が破壊されることで消火薬剤を飛散、拡散する。このような構成であっても、実際は、海上や森林などの火災発生現場に消火薬剤を飛散させて拡散することとなり、十分な量の消火薬剤を噴霧することができず、早期の消火が困難であるという課題がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、火災を早期に収束可能とする火災収束装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の火災収束装置は、火災発生現場を被覆可能な不燃シートと、前記不燃シートを支持すると共に前記不燃シートの落下姿勢を維持する支持部材と、を備える。
【0007】
また、本開示の火災収束方法は、火災発生現場に向けて傘形状をなす第1不燃シートを閉止状態で落下させる工程と、着地時に前記第1不燃シートを開放して前記火災発生現場を被覆する工程と、少なくとも着地した複数の前記第1不燃シートの間の領域に向けて中央部に支持板が固定された第2不燃シートを落下させて着地させる工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の火災収束装置および方法によれば、火災を早期に収束することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の火災収束装置を表す概略図である。
【
図2】
図2は、火災収束装置の作動状態を表す概略図である。
【
図3】
図3は、火災収束装置による火災収束状態を表す平面図である。
【
図4】
図4は、火災収束装置による火災収束状態を表す正面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の火災収束装置を表す概略図である。
【
図6】
図6は、火災収束装置の作動状態を表す概略図である。
【
図7】
図7は、火災収束装置による火災収束状態を表す平面図である。
【
図8】
図8は、火災収束装置による火災収束状態を表す正面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態の火災収束方法を表す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0011】
[第1実施形態]
<火災収束装置>
図1は、第1実施形態の火災収束装置を表す概略図、
図2は、火災収束装置の作動状態を表す概略図である。
【0012】
火災収束装置は、例えば、海上油田プラットフォームで火事が発生したとき、海上の火災を早期に収束させるものである。このとき、火災発生現場は、火事が発生した海上であり、海上に火災源である原油が漏洩している。火災収束装置は、火災が発生している海上および海上油田プラットフォームに向けて落下させることで、火災を収束させる。なお、火災発生現場は、海上油田プラットフォームに限るものではなく、地上に設置された石油・天然ガスの掘削・精製設備、または、森林や建屋などである。
【0013】
図1および
図2に示すように、火災収束装置10は、傘形状をなす。火災収束装置10は、不燃シート11と、支持部材12とを備える。
【0014】
不燃シート11は、燃えない材料としての不燃膜材(例えば、ガラス繊維など)により形成されたシートであり、一定時間以上燃え抜けずに気密性を保つ。不燃シート11は、円形状をなす。不燃シート11は、落下時に空気抵抗が減少するように折り畳まれる閉止状態(
図1)と、落下後に広がる開放状態(
図2)とに変化自在である。不燃シート11は、開放状態にあるとき、火災発生現場を被覆可能である。
【0015】
なお、不燃シート11は、不燃膜材により形成されると共に、熱可塑性部材により形成されることが望ましい。不燃シート11は、落下後に開放状態(
図2)に変化したとき、火災発生現場で発生する熱により変形することで、火災発生現場の形状に応じた形状となり、外部から火災発生現場への空気の流入を遮断するように被覆する。
【0016】
支持部材12は、不燃シート11を支持する。すなわち、支持部材12は、不燃シート11を閉止状態と開放状態とに支持すると共に、閉止状態と開放状態との間で変化可能とする。すなわち、支持部材12は、不燃シート11が落下するとき、落下姿勢である閉止状態を維持する。また、支持部材12は、不燃シート11が落下した後、火災発生現場を被覆する開放状態を維持する。
【0017】
具体的に、支持部材12は、軸部21と、複数の骨部22と、消火剤容器23と、留め具(拘束部材)24と、フィン(垂直安定板)25を有する。
【0018】
軸部21は、所定長さの円柱形状をなす。軸部21は、長手方向の一端部が不燃シート11の中心部に連結される。複数の骨部22は、所定長さを有し、長手方向の一端部が軸部21の一端部に揺動自在に連結される。複数の骨部22は、軸部21の一端部である不燃シート11の中心部から径方向の外方に向けて放射状に配置される。複数の骨部22は、同じ長さであって、不燃シート11の周方向に間隔(好ましくは、等間隔)を空けて配置される。複数の骨部22は、長手方向の他端部が不燃シート11の外周縁から外方に突出し、不燃シート11に連結される。不燃シート11は、複数の骨部22の一端部が軸部21の一端部に対して揺動することで、閉止状態と開放状態とに変化可能となる。
【0019】
消火剤容器23は、軸部21の一端部に設けられる。消火剤容器23は、不燃シート11の落下方向の下方に装着される。消火剤容器23は、容器本体の内部に消火剤が充填されて構成される。消火剤容器23は、火災収束装置10が火災発生現場に落下したとき、その衝撃力により破砕され、内部の消火剤が飛散される。但し、消火剤容器23は、火災発生現場における火災の状況に応じて省略してもよい。
【0020】
留め具24は、不燃シート11を閉止状態に維持するための拘束部材として機能する。留め具24は、回転体24aと、複数の翼24bとを有する。回転体24aは、軸部21の他端部に形成されたねじ部21aに回転自在に支持される。複数の翼24bは、回転体24aの周囲に周方向に間隔(好ましくは、等間隔)を空けて固定される。不燃シート11は、軸部21に設けられた付勢部材(図示略)の付勢力により開放状態に付勢支持される。留め具24は、複数の骨部22の他端部を拘束することで、不燃シート11を閉止状態に維持する。フィン25は、火災収束装置10が落下するときに、鉛直方向に沿った落下姿勢に維持するための垂直安定板として機能する。フィン25は、軸部21の他端部側であって、留め具24より下方に固定される。フィン25は、軸部21の周方向に間隔(好ましくは、等間隔)を空けて固定される。
【0021】
火災収束装置10は、留め具24が複数の骨部22の他端部を拘束することで、不燃シート11を閉止状態に維持している。火災収束装置10が落下すると、留め具24は、複数の翼24bが風を受けることで回転体24aと一緒に回転し、軸部21の他端部側に移動する。すると、複数の骨部22は、留め具24による拘束が解除され、不燃シート11が閉止状態から開放状態に変化する。留め具24が不燃シート11の拘束を解除して開放状態に変化させるタイミングは、火災収束装置10の落下途中または落下後であってもよい。また、火災収束装置10は、落下中に、複数のフィン25により鉛直方向に沿った落下姿勢が維持され、狙った位置へと垂直に落下することができる。
【0022】
なお、留め具24は、このような構成に限定されるものではない。例えば、火災発生現場に落下した衝撃により拘束部材による拘束が解除されたり、落下途中あるいは落下後に火災発生現場の熱が作用して拘束部材による拘束が解除されたりするように構成してもよい。
【0023】
<火災収束方法>
図3は、火災収束装置による火災収束状態を表す平面図、
図4は、火災収束装置による火災収束状態を表す正面図である。
【0024】
図1に示すように、火災収束装置10は、支持部材12により不燃シート11が閉じられた閉止状態で保持される。火災収束装置10は、閉止状態でドローンやヘリコプターなどに搭載されて火災発生現場100(
図4参照)に搬送される。火災収束装置10は、閉止状態でドローンやヘリコプターなどから火災発生現場100に向けて投下される。すると、火災収束装置10は、閉止状態のままで火災発生現場100に向けて下降し、火災発生現場100に着地したとき、
図2に示すように、支持部材12により不燃シート11が拡げられて開放状態となって保持される。
【0025】
すなわち、
図3および
図4に示すように、火災発生現場100は、海上111であり、表面に漏洩した油112が漂っており、火災101が発生している。不燃シート11が閉じられた閉止状態で落下する火災収束装置10は、海上111への着地時、または、落下途中で不燃シート11が拡げられて開放状態となり、海上111で発生している火災101を上方から被覆する。すると、火災収束装置10は、円形に広がった不燃シート11が火災101を被覆することとなり、不燃シート11により被覆された空間部への空気の供給が遮断される。その結果、海上111(油112)の火災101は、酸欠状態となって消火され、火災101が収束される。
【0026】
[第2実施形態]
<火災収束装置>
図5は、第2実施形態の火災収束装置を表す概略図、
図6は、火災収束装置の作動状態を表す概略図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0027】
図5および
図6に示すように、火災収束装置30は、不燃シート31と、支持部材32とを備える。
【0028】
不燃シート31は、燃えない材料としての不燃膜材(例えば、ガラス繊維など)により形成されたシートであり、一定時間以上燃え抜けずに気密性を保つ。不燃シート31は、正方形状をなす。但し、不燃シート31は、正方形状に限らず、長方形状、多角形状、円形状、楕円形状などであってもよい。不燃シート31は、落下後に広がることが可能である。不燃シート11は、広がったとき、火災発生現場を被覆可能である。
【0029】
なお、不燃シート31は、不燃膜材により形成されると共に、熱可塑性部材により形成されることが望ましい。不燃シート31は、落下後に広がったとき、火災発生現場で発生する熱により変形することで、火災発生現場の形状に応じた形状となり、火災発生現場を外部から遮断するように被覆する。
【0030】
なお、不燃シート31は、外周縁31aに硬質の縁部材31bが固定されることで、常時、正方形状が維持されるようにしてもよい。
【0031】
支持部材32は、不燃シート31を支持する。すなわち、支持部材32は、第1支持板41と、一対の第2支持板42,43、バルーン(浮力付与部材、抵抗部材)44とを有する。但し、バルーン44は、火災発生現場における火災の状況に応じて省略してもよい。
【0032】
第1支持板41は、鋼製部材や樹脂部材などにより構成される。第1支持板41は、矩形の板形状をなす。第1支持板41は、不燃シート31の落下方向の上方の中央部に固定される。すなわち、第1支持板41は、不燃シート31の上面の中央部に固定される。
【0033】
第2支持板42,43は、鋼製部材や樹脂部材などにより構成される。第2支持板42,43は、矩形の板形状をなす。第2支持板42,43は、第1支持板41に対して直交する方向に沿って連結される。一方の第2支持板42は、第1支持板41における長手方向の一端部に回動自在に連結される。他方の第2支持板43は、第1支持板41における長手方向の他端部に回動自在に連結される。
【0034】
バルーン44は、不燃シート31および支持部材32を運びやすくするための浮力付与機能を有する浮力付与部材や落下速度を軽減するための抵抗部材として機能する。バルーン44は、ケーブル44aを介して第2支持板42,43に連結される。バルーン44は、火災収束装置30が落下するとき、落下速度を軽減することで火災発生現場への落下速度を調整する。火災収束装置30を火災発生現場100に搬送するとき、上昇流の速度に応じてバルーン44の大きさや数等を調整する。
【0035】
なお、火災収束装置30は、第1実施形態と同様に、消火剤容器を有していてもよい。消火剤容器は、不燃シート31の落下方向の下方に装着される。
【0036】
火災収束装置30は、複数のドローン45により吊り下げられ、搬送可能である。複数のドローン45は、ケーブル45aにより第2支持板42,43に連結される。火災収束装置30は、複数のドローン45により吊り下げられるとき、一対の第2支持板42,43が鉛直方向に沿って位置する。そして、火災収束装置30は、複数のドローン45により落下することで、不燃シート31が海上111上に着地する。そして、複数のドローン45が支持部材32から切り離されると、一対の第2支持板42,43が自重により外側に回動して不燃シート31に密着する。
【0037】
<火災収束方法>
図7は、火災収束装置による火災収束状態を表す平面図、
図8は、火災収束装置による火災収束状態を表す正面図である。
【0038】
図5に示すように、火災収束装置30は、不燃シート31の中央部に支持部材32が取付けられた状態で保持される。火災収束装置30は、この状態でドローンやヘリコプターなどに搭載されて火災発生現場100(
図8参照)に搬送される。火災収束装置30は、複数のバルーン44が装着されると共に、複数のドローン45が連結される。火災収束装置30は、複数のバルーン44により落下速度が軽減されながら、複数のドローン45により吊り下げられた状態で火災発生現場100に向けて投下される。火災収束装置30は、複数のドローン45の降下により火災発生現場100に向けて下降し、火災発生現場100に着地したとき、
図6に示すように、不燃シート11が拡げられ、複数のドローン45が切り離されて第2支持板42,43が外側に回動して不燃シート31に密着する。
【0039】
すなわち、
図7および
図8に示すように、火災発生現場100は、海上111であり、表面に漏洩した油112が漂っており、火災101が発生している。火災収束装置30は、海上111へ着地すると、不燃シート31が拡げられた開放状態となり、海上111で発生している火災101を上方から被覆する。すると、火災収束装置30は、矩形に広がった不燃シート31が火災101を被覆することとなり、不燃シート31により被覆された空間部ヘの空気の供給が遮断される。その結果、海上111(油112)の火災101は、酸欠状態となって消火され、火災101が収束される。
【0040】
なお、上述の説明では、複数のドローン45により吊り下げられた状態で火災収束装置30を火災発生現場100に向けて投下するとき、複数のドローン45を切り離したが、この方法に限定されない。例えば、火災収束装置30からドローン45を切り離さずに保持しておき、不燃シート31の下部の火災101が収束した後に、別の火災が生じている地点へと不燃シート31を移動して消火を繰り返してもよい。これにより火災収束装置30の必要数を抑制しコストを抑制することができる。
【0041】
[第3実施形態]
<火災収束方法>
図9は、第3実施形態の火災収束方法を表す正面図、
図10は、火災収束方法を表す正面図である。なお、第3実施形態の基本的な構成は、上述した第1実施形態および第2実施形態と同様であり、
図1から
図5を用いて説明し、同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
第3実施形態の火災収束方法は、第1実施形態の火災収束装置10と第2実施形態の火災収束装置30とを用いたものである。火災収束方法は、
図9および
図10に示すように、火災発生現場100に向けて傘形状をなす不燃シート(第1不燃シート)11を閉止状態で落下させる工程と、着地時に不燃シート11を開放して火災発生現場100を被覆する工程と、着地した複数の不燃シート11の間の領域に向けて中央部に第1支持板(支持板)41が固定された不燃シート(第2不燃シート)31を着地させる工程とを有する。
【0043】
まず、
図1に示すように、閉止状態である複数の火災収束装置10を火災発生現場100に向けて投下させる。すると、火災収束装置10は、
図2に示すように、火災発生現場100に着地したとき、支持部材12により不燃シート11が拡げられて開放状態となる。このとき、複数の火災収束装置10は、
図3および
図4に示すように、開放された複数の不燃シート11が海上111で発生している火災101を上方から被覆する。すると、円形に広がった複数の不燃シート11により被覆された海上111(油112)の火災101は、酸欠状態となって消火される。
【0044】
次に、
図5に示すように、複数のバルーン44に支持されると共に複数のドローン45に吊り下げられた複数の火災収束装置30を火災発生現場100に向けて投下させる。このとき、複数のドローン45の飛行位置を調整することで、複数の火災収束装置30を着地している複数の火災収束装置30(複数の不燃シート31)の間の領域に向けて投下させる。また、海上111で発生している火災101は、火災収束装置10(複数の不燃シート11)により一部が消火されていることから、複数のドローン45を低高度に調整することで、低高度から複数の火災収束装置30を投下させる。
【0045】
すると、
図9および
図10に示すように、複数の火災収束装置30は、複数の不燃シート11の間の領域に着地し、複数の不燃シート31が海上111で発生している残りの火災101を上方から被覆する。すると、複数の不燃シート31により被覆された海上111(油112)の火災101は、酸欠状態となって消火される。その結果、2種類の不燃シート11,31により海上111で発生しているほぼ全域の火災101を上方から被覆することで、火災101を消火し、火災101が収束される。
【0046】
すなわち、火災発生現場100は、海上111で広範囲にわたって火災101が発生していることから、海上111から上方に向けて高温空気の上昇流が発生している。火災収束装置10は、不燃シート11が支持部材12に折り畳まれた閉止状態で落下することから、火災発生現場100に対する高高度の位置から、上昇する高温空気に対して小さい抵抗で目標位置に落下することができる。火災発生現場100の火災101の一部が複数の不燃シート11に被覆されて消火されると、上昇する高温空気が減少する。そこで、火災発生現場100に対する低高度の位置から、火災収束装置30を落下させて複数の不燃シート11の間の領域の火災101を複数の不燃シート31により高精度に被覆することができる。その結果、2種類の不燃シート11,31により海上111で発生している火災101を早期に消火することができる。
【0047】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る火災収束装置は、火災発生現場100を被覆可能な不燃シート11,31と、不燃シート11,31を支持すると共に不燃シート11,31の落下姿勢を維持する支持部材12,32とを備える。
【0048】
第1の態様に係る火災収束装置によれば、支持部材12,32により不燃シート11,31の落下姿勢を維持し、不燃シート11,31の落下時に火災発生現場100を被覆する。そのため、不燃シート11,31により被覆された火災発生現場100の空間部は、酸素濃度が低下することで火災101が早期に消火されることとなる。その結果、火災発生現場100の火災101を早期に収束することができる。
【0049】
第2の態様に係る火災収束装置は、第1の態様に係る火災収束装置であって、さらに、不燃シート11は、落下時に空気抵抗が減少するように折り畳まれる閉止状態と、少なくとも落下後に広がる開放状態とに変化自在である。これにより、閉止状態にある不燃シート11は、火災発生現場100から上昇する高温空気に対する抵抗が軽減され、火災収束装置10を目標位置に対して高精度に落下させることができる。
【0050】
第3の態様に係る火災収束装置は、第2の態様に係る火災収束装置であって、さらに、支持部材12は、不燃シート11を閉止状態と開放状態とに保持可能である。これにより、支持部材12は、落下時に不燃シート11を閉止状態とすることで、不燃シート11の空気抵抗を軽減することができ、落下後に不燃シート11を開放状態とすることで、不燃シート11により火災101を適切に被覆することができる。
【0051】
第4の態様に係る火災収束装置は、第2の態様または第3の態様に係る火災収束装置であって、さらに、支持部材12は、不燃シート11の中心部に連結される軸部21と、軸部21から放射状に配置されて不燃シート11に連結される複数の骨部22とを有し、複数の骨部22の端部が軸部21に揺動自在に支持されることで、不燃シート11が閉止状態と開放状態とに変化可能である。これにより、構造の簡素化を図ることができる。
【0052】
第5の態様に係る火災収束装置は、第2の態様から第4の態様のいずれか一つに係る火災収束装置であって、さらに、不燃シート11の落下方向の下方に消火剤が充填された消火剤容器23が設けられる。これにより、不燃シート11が火災101を被覆したとき、消火剤容器23から消火剤が散布されることで、火災101を早期の収束させることができる。
【0053】
第6の態様に係る火災収束装置は、第1の態様に係る火災収束装置であって、支持部材32は、不燃シート31の落下方向の上方の中央部に固定される第1支持板41と、第1支持板41に対して直交する方向に沿って連結される第2支持板42,43とを有する。これにより、第1支持板41が不燃シート31の形状を維持し、ドローン45が第2支持板42,43を用いて不燃シート31を吊り下げることができる。
【0054】
第7の態様に係る火災収束装置は、第6の態様に係る火災収束装置であって、さらに、第1支持板41における長手方向の各両端部に第2支持板42,43が回動自在に支持される。これにより、着地時に第2支持板42,43が外側に広がって不燃シート31に接触することで、不燃シート31が火災101を被覆する状態を適切に維持することができる。
【0055】
第8の態様に係る火災収束装置は、第1の態様から第7の態様のいずれか一つに係る火災収束装置であって、さらに、不燃シート11,31および支持部材12,32の落下速度を軽減する浮力付与部材または抵抗部材としてバルーン34を有する。これにより、火災収束装置10,30が火災発生現場100に落下する速度を適正に調整することができる。
【0056】
第9の態様に係る火災収束装置は、第1の態様から第8の態様のいずれか一つに係る火災収束装置であって、さらに、不燃シート11,31は、熱可塑性部材により形成される。これにより、不燃シート11,31は、火災発生現場100に着地したとき、火災発生現場100の形状に応じて変形することで、火災発生現場100を適切に被覆することができる。
【0057】
第10の態様に係る火災収束方法は、火災発生現場100に向けて傘形状をなす不燃シート(第1不燃シート)11を閉止状態で落下させる工程と、少なくとも着地時に不燃シート11を開放して火災発生現場100を被覆する工程と、着地した複数の不燃シート11の間の領域に向けて中央部に第1支持板(支持板)41に固定された不燃シート(第2不燃シート)31を落下させて着地させる工程とを有する。
【0058】
第10の態様に係る火災収束方法によれば、まず、複数の不燃シート11を火災発生現場100に向けて落下させると、複数の不燃シート11は、着地時に開放されて火災101を被覆し、次に、複数の不燃シート31を複数の不燃シート11の間の領域に向けて落下させると、複数の不燃シート31は、着地時に複数の不燃シート11の間の領域に残りの火災101を上方から被覆する。そのため、不燃シート11,31により被覆された火災発生現場100の空間部は、酸素濃度が低下することで火災101が早期に消火されることとなる。その結果、火災発生現場100の火災101を早期に収束することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 火災収束装置
11 不燃シート(第1不燃シート)
12 支持部材
21 軸部
22 骨部
23 消火剤容器
24 留め具(拘束部材)
25 フィン(垂直安定板)
30 火災収束装置
31 不燃シート(第2不燃シート)
32 支持部材
41 第1支持板(支持板)
42,43 第2支持板
44 バルーン(浮力付与部材、抵抗部材)
100 火災発生現場
101 火災
111 海上
112 油