(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067408
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
B60R 1/20 20220101AFI20240510BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240510BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240510BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20240510BHJP
B60R 1/26 20220101ALI20240510BHJP
B60R 11/04 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B60R1/20 100
H04N7/18 J
G09G5/00 550C
G09G5/00 510Z
G09G5/38
B60R1/26 100
B60R11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177460
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海野 和也
(72)【発明者】
【氏名】都築 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴洋
【テーマコード(参考)】
3D020
5C054
5C182
【Fターム(参考)】
3D020BA04
3D020BA20
3D020BB01
3D020BC01
3D020BC13
3D020BD09
3D020BE03
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA05
5C054FC12
5C054FE25
5C054FF03
5C054HA30
5C182AA02
5C182AA03
5C182AB25
5C182AC03
5C182BA14
5C182BA56
5C182CB41
5C182DA70
(57)【要約】
【課題】車両への組み付け作業性のよい画像表示装置を提供すること。
【解決手段】本開示の画像表示装置は、車両の外部を撮像可能な第1の撮像装置と、前記第1の撮像装置が撮像した画像のうちの特定の領域の画像で構成された表示画像を表示可能なモニタ及び前記モニタに取り付けられ運転者の顔を含む前記車両の内部を撮像可能な第2の撮像装置を備え、車両の任意の位置に角度調整可能に取り付けられる表示ユニットと、前記第2の撮像装置で取得した運転者の視点位置に基づいて、前記表示画像を構成する領域を変更する表示制御部と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部を撮像可能な第1の撮像装置と、
前記第1の撮像装置が撮像した画像のうちの特定の領域の画像で構成された表示画像を表示可能なモニタ及び前記モニタに取り付けられ運転者の顔を含む前記車両の内部を撮像可能な第2の撮像装置を備え、車両の任意の位置に角度調整可能に取り付けられる表示ユニットと、
前記第2の撮像装置で取得した運転者の視点位置に基づいて、前記表示画像を構成する領域を変更する表示制御部と、を備える、
画像表示装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記第2の撮像装置で撮像した画像内の特徴点を取得する特徴点取得部を備え、
前記第2の撮像装置で取得した前記視点位置と、前記特徴点取得部で取得した前記特徴点の位置とに基づいて、前記表示画像を構成する領域を変更する、
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記運転者の視点位置の基準位置を設定する基準位置設定部をさらに備える、
請求項1又は請求項2に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるミラー、具体的にはルームミラーやサイドミラーに、従来の光学ミラー(鏡面反射ミラー)に代えて車両外部を撮像した映像を表示する電子ミラー(「電子インナーミラー」あるいは「デジタルインナーミラー」と呼ばれることもある)が用いられることがある。また、このような電子ミラーの表示画像を、光学ミラーと同様に運転者の視点位置に合わせて調整するものがある(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
下記特許文献1には、ドライバの視点位置の検出結果及び表示装置の角度の検出結果のうち少なくとも一方に基づいて、少なくとも車外画像を用いてルームミラーの写像に似せた出力画像を作成し、ここで作成された出力画像を表示装置に表示することで、電子ミラーとして機能する画像表示システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子ミラーを用いると、車両後方の障害物によって後方視野が制限される(つまり、オクルージョンが生じる)ことがなく、且つ夜間等でも後方視界が明るく表示できるという利点がある。また、上記特許文献1のもののように、ドライバの視点の位置に基づいて表示画像を調整すれば、後方の視界を広く確保しつつ表示画像に表示される画像の縮尺を大きく維持することができ、画像視認性を向上させることができる。加えて、表示画像の奥行き感や立体感が向上し、後方車両との距離感等がつかみやすくなる。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のもののように、表示装置とドライバの視点を撮像するための撮像装置とを異なる場所に取り付ける構造とすると、各構成要素を個別に組み付け且つそれらを接続するために配索作業を行う必要があり、組み付け作業性が悪い。
【0007】
本開示は、上述した課題に鑑み、車両への組み付け作業性のよい画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様に係る画像表示装置は、車両の外部を撮像可能な第1の撮像装置と、前記第1の撮像装置が撮像した画像のうちの特定の領域の画像で構成された表示画像を表示可能なモニタ及び前記モニタに取り付けられ運転者の顔を含む前記車両の内部を撮像可能な第2の撮像装置を備え、車両の任意の位置に角度調整可能に取り付けられる表示ユニットと、前記第2の撮像装置で取得した運転者の視点位置に基づいて、前記表示画像を構成する領域を変更する表示制御部と、を含む。
【0009】
上記のような画像表示装置においては、表示ユニットを車両に取り付けるだけでモニタと第2の撮像装置の組み付け作業が完了する。
【0010】
本開示の第2の態様に係る画像表示装置は、上記本開示の第1の態様に係る画像表示装置において、前記表示制御部は、前記第2の撮像装置で撮像した画像内の特徴点を取得する特徴点取得部を含み、前記第2の撮像装置で取得した前記視点位置と、前記特徴点取得部で取得した前記特徴点の位置とに基づいて、前記表示画像を構成する領域を変更する。
【0011】
上記のような画像表示装置においては、特徴点の位置から表示ユニットの角度を把握することができ、表示ユニットの角度が変更された場合であっても当該角度変更を考慮した表示画像を構成する領域の調整が可能となる。
【0012】
本開示の第3の態様に係る画像表示装置は、上記本開示の第1又は第2の態様に係る画像表示装置において、前記運転者の視点位置の基準位置を設定する基準位置設定部をさらに含む。
【0013】
上記のような画像表示装置においては、運転者が変わった際や表示ユニットの角度が変更された際にも、基準位置を更新することにより、運転者に違和感を生じさせることなく視点位置に基づく表示画像を構成する領域の調整を継続することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の画像表示装置によれば、車両への組み付け作業性がよくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の第1の実施の形態に係る画像表示装置を搭載した車両の一例を示す平面図である。
【
図2】本開示の第1の実施の形態に係る画像表示装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】表示ユニットの角度を考慮せずに運転者の視点位置の移動に基づく表示画像の生成を行った場合の表示領域の向きの変移を示す概略説明図である。
【
図4】
図2に示す画像表示装置の機能ブロック図である。
【
図5】
図4に示す表示画像生成部で運転者の視点位置の移動に基づく表示画像の生成を行った場合の表示領域の向きの変移を示す概略説明図である。
【
図6】本開示の第2の実施の形態に係る画像表示装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図6に示す画像表示装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本開示を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本開示の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本開示の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。また、図中の互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。さらに、一の図面中に互いに同一又は相当する部材が複数個含まれている場合には、図を見易くするために、そのうちのいくつかにのみ符号を付している場合がある。
【0017】
<第1の実施の形態>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る画像表示装置を搭載した車両の一例を示す平面図である。また、
図2は、本開示の第1の実施の形態に係る画像表示装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態に係る画像表示装置10は、
図1に例示したような車両1に搭載することで、車両1外部を表示可能な電子ミラーとして機能するものとすることができる。また、本実施の形態においては、この画像表示装置10をルームミラーとして用いるものを例示している。なお、以下の説明においては、
図1中の矢印FRが示す方向を車両前方と、矢印FRと交差する矢印Wが示す方向を車両幅方向とそれぞれ規定して説明を行うものとする。
【0018】
本実施の形態に係る画像表示装置10は、少なくとも、車両1の任意の位置に角度調整可能に取り付けられる表示ユニット20と、車両1の外部を撮像可能な第1の撮像装置の一例としての後方カメラ30と、表示ユニット20に表示する表示画像を生成する表示制御部40と、を含む。
【0019】
表示ユニット20は、車室2内の前方中央部に、光学ミラーからなるルームミラーに代えて設置することができる。この表示ユニット20は、後方カメラ30が撮像した画像に基づいて生成された表示画像を表示可能なモニタ21と、モニタ21に取り付けられ運転者Dの顔を含む車両1の内部を撮像可能な第2の撮像装置の一例としての室内カメラ22と、を含むものである。
【0020】
上述したモニタ21及び室内カメラ22は、左右方向に長尺な矩形状の表示ユニット本体23に取り付けられていてよい。換言すると、モニタ21と室内カメラ22とは、表示ユニット本体23に取り付けられることによって、単一のユニットを構成していてよい。モニタ21は、表示ユニット本体23の車両後方に向いた一面に取り付けられていてよい。また、室内カメラ22は、表示ユニット本体23の外周縁の一部、例えば上部にその撮像方向が固定された状態で取り付けられていてよい。
【0021】
この表示ユニット本体23は、所定の長さを有するアーム24を介して車室2内、例えば運転席よりも車両前方であって且つ運転席と助手席の間の位置に固定されていてよい。アーム24の一端には、車室2内の適所、例えばフロントガラスやルーフの一部に固定するための固定部25が設けられていてよい。また、アーム24の他端には、表示ユニット本体23のモニタ21が取り付けられた面とは反対側の面に連結する連結部26が設けられていてよい。
【0022】
固定部25は、例えば板状の部材で構成することができ、その一面をフロントガラスやルーフの一部に接着剤等を用いて接着することで、車室2内に表示ユニット20を固定することができるものとすることができる。固定部25の具体的に固定方法については、ネジ止め等の他の方法に適宜変更することができる。
【0023】
連結部26は、表示ユニット20、詳しくは表示ユニット本体23を角度調整可能に支持するために、任意の角度位置で保持可能な多軸ヒンジ構造を有していてよい。この連結部26には、表示ユニット本体23を、連結部26を中心に車両左右方向及び車両上下方向に回動可能に支持することが可能な種々の構造を採用することができる。なお、本実施の形態においては、連結部26によって表示ユニット本体23が角度調整可能となっているものを例示しているが、角度調整機能を実現可能なものであれば他の構造に変更することもできる。また、連結部26にて角度調整機能を実現することに代えて、固定部25に上述した多軸ヒンジ構造を採用する、あるいは連結部26と固定部25の両方にヒンジ構造を採用することによって角度調整機能を実現することも可能である。
【0024】
モニタ21は、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display、LCD)や有機ELディスプレイ(Organic Electro-Luminescent Display、OELD)といった周知のディスプレイ装置で構成することができる。このモニタ21には、後方カメラ30で撮像された画像に基づいて表示制御部40で生成された表示画像が表示され得る。表示画像は、光学ミラーで構成されたルームミラーによって視認可能な後方視界と同様の縮尺及び表示領域に調整されているとよい。この表示画像の生成プロセスについては後述する。
【0025】
室内カメラ22は、車室2の内部を撮像可能なカメラであって、少なくとも運転席シート4(
図3及び
図5参照)に着座した運転者Dの顔が撮像可能なように調整されたカメラで構成することができる。この室内カメラ22には、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の撮像素子を用いた二次元カメラを採用することができる。
【0026】
ここで、室内カメラ22とモニタ21とは、表示ユニット本体23に取り付けられることで単一のユニットの形式となっていることは、特に留意すべき事項である。本実施の形態においては、上述のように室内カメラ22とモニタ21とを一体で形成したことにより、車両1に表示ユニット20を取り付けるだけで、モニタ21と室内カメラ22の組み付け作業が完了できる。
【0027】
後方カメラ30は、車両1の後方の適所、例えば車両幅方向の略中央部に設置され、車両1の後方を撮像可能なカメラで構成することができる。この後方カメラ30は、車両1の後方に1又は複数台が設置されていてよく、室内カメラ22と同様に、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を用いた二次元カメラを用いることができる。また、後方カメラ30によって撮像される画像は広角に撮像された画像であると好ましく、これに関連して、後方カメラ30には広角カメラが用いられ得る。後方カメラ30が撮像する画像は、少なくともモニタ21に表示される表示画像を構成する表示領域に比べて大きな領域の画像であるものとする。
【0028】
表示制御部40は、モニタ21に表示するための表示画像を生成するためのものであって、例えばマイクロコントローラを含む周知のコンピュータで構成することができる。表示制御部40を構成するコンピュータは、画像表示装置10のために単独で用意されたコンピュータであってもよいし、車両1内のECU(Electronic Control Unit)を用いて実現してもよい。また、表示制御部40を構成するコンピュータを単独で用意する場合において、当該コンピュータを表示ユニット本体23の内部に搭載すれば、表示制御部40と表示ユニット20との間の配索作業を省略することもできる。
【0029】
この表示制御部40は、少なくとも、プロセッサの一例としてのCPU(Central Processing Unit)41と、メモリの一例としてのROM(Read Only Memory)42及びRAM(Random Access Memory)43と、ストレージ44と、入出力インタフェース45とを含んでいてよい。またこれらの構成は、内部バスを介して相互に通信可能に接続されていてよい。
【0030】
CPU41は、中央演算処理ユニットであって、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりすることができるものであってよい。具体的にいえば、このCPU41は、ROM42又はストレージ44に格納されている種々のプログラムを読み出し、RAM43を作業領域として当該プログラムを実行することができるものであってよい。CPU41は、プログラムに従って画像表示装置10を構成する各構成要素の制御や各種の演算処理を行うことができるものであってよい。
【0031】
ROM42は、各種プログラム及び各種データを格納することができるものであってよい。また、RAM43は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶することができるものであってよい。
【0032】
ストレージ44は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリといった記録媒体で構成することができる。このストレージ44には、オペレーティングシステムを含む各種プログラムや、画像表示装置10を動作させるために必要な各種データ(例えば、運転者Dの視点位置VPの基準となる位置のデータ)が格納されていてよい。本実施の形態においては、ROM42又はストレージ44には、後方カメラ30で撮像された画像に基づいて表示画像を生成するためのプログラムや各種データが格納され得る。
【0033】
入出力インタフェース45は、少なくとも電子ミラーの機能を実現するために必要な車両1に搭載あるいは取り付けられた各種構成要素との間で、各種データの送受信を行うためのインタフェースであってよい。本実施の形態に係る入出力インタフェース45としては、少なくともモニタ21と、室内カメラ22と、後方カメラ30とが電気的に接続されているものが例示されている。
【0034】
上述した一連の構成を備える画像表示装置10を用いて、モニタ21に車両1後方の画像を生成する方法を以下に簡単に例示する。例えば車両1の始動に連動して画像表示装置10の動作が開始されると、先ず後方カメラ30による車両後方の撮像を開始する。次いで、室内カメラ22による撮像も開始し、当該室内カメラ22で撮像された画像内の運転者Dの視点位置VP(
図3及び
図5参照)を特定する。運転者Dの視点位置VPが特定されると、予め登録されていた視点位置の基準となる位置、例えば表示ユニット20の正面位置C(
図3及び
図5参照)に対する相対位置の検出を開始する。表示制御部40は、現在の運転者Dの視点位置VP、より詳しくは、表示ユニット20の正面位置Cに対する現在の運転者Dの視点位置VPの相対位置に基づいて、後方カメラ30が撮像した画像から、表示画像として表示する領域を特定する。最後に、ここで特定された領域の画像を表示画像としてモニタ21に表示する。
【0035】
上述した通り、本実施の形態に係る画像表示装置10においては、運転者の視点位置に基づいて表示画像を変更することが可能な電子ミラーを提供することができる。加えて、本実施の形態に係る画像表示装置10においては、モニタ21と室内カメラ22とが単一のユニットとして形成されているため、これらの部材を一括して車両に取り付けることができる。したがって、例えば表示制御部40が表示ユニット本体23内に格納されている場合には、本実施の形態に係る画像表示装置10は、車両1の適所に表示ユニット20と後方カメラ30を設置し、両者を電気的に接続するだけで、一連の組み付け作業が完了する。このことから、本実施の形態に係る画像表示装置10は、従来の画像表示装置に比べて、その組み付けに要する工数が削減されているといえる。
【0036】
ところで、電子ミラーの技術分野においては、例えば上記特許文献1のもののように、モニタ表面にハーフミラーを設置し、モニタをオフとすることでモニタ表示面を光学ミラーとして利用できるようにしたものがある。このように、電子ミラーを光学ミラーとしても利用可能とした場合、例えば光学ミラーを用いて車両後方中央部以外を見たい場合や、直前の運転者とは異なる運転者が運転を行うタイミング等において、電子ミラーの角度が変更される場合がある。このとき、上述した本実施の形態に係る画像表示装置10のように、モニタ21と室内カメラ22とが単一のユニットとなっていると、表示ユニット本体23の角度が調整されることに追従して室内カメラ22の画角も変更されることになる。このように、室内カメラ22の画角が意図せず変わり得る場合には、以下に説明する、表示画像を構成する領域と運転者の意図した表示領域との間にズレが生じる場合があることに注意が必要である。
【0037】
図3は、表示ユニットの角度を考慮せずに運転者の視点位置の移動に基づく表示画像の生成を行った場合の表示領域の向きの変移を示す概略説明図である。このうち、
図3(A)は、表示ユニット20を光学ミラーとして用いた場合における運転者Dの視線方向Aと、表示画像を構成する表示領域の向きBとがいずれも車両後方中央部に向いている状態を示している。
図3(A)に示す状態のときの表示領域の向きBは、運転者Dの視点位置VP、より詳しくは、例えば表示ユニット20の正面位置Cとのなす角θ1と関連付けて事前に設定しておくことができる。この
図3(A)に示す状態で表示ユニット20を使用している場合には、運転者Dは、モニタ21を動作させて電子ミラーとして利用する場合も、モニタ21を停止させて光学ミラーとして利用する場合も、同一の方向を視認することができる。したがって、
図3(A)に示す状態が、表示ユニット20の最も一般的な使用角度となり得る。なお、
図3においては、運転者Dの視点位置VPを運転者Dの両眼の中間点と規定している。
【0038】
ここで、例えば運転者Dが左後方を視認するために、表示ユニット20を
図3(A)に示す角度位置から
図3(B)に示すような角度位置に変更した場合を想定する。この場合には、当該変更後の表示ユニット20の正面位置Cとのなす角θ2は、
図3(A)に示す状態における同様の角度θ1よりも大きくなる。したがって、上述した2つの角度θ1、θ2の差分を考慮した表示領域の調整を行えば、
図3(B)における運転者Dの視線方向Aと表示画像を構成する表示領域の向きBとを、いずれも車両の左後方の略同一方向に向いている状態とすることが可能である。
【0039】
しかしながら、
図3(B)に示す状態から、例えば運転者Dが視点位置VPを一方向、例えば車両幅方向における左側に移動(例えば、
図3(C)参照)させて、車両後方中央部を見ようとした場合には、運転者Dの視線方向Aと表示画像を構成する表示領域の向きBとの間にズレが発生する。具体例として、以下には、
図3(C)に示すように、例えば運転者Dが、移動後の視点位置VPが
図3(B)に示す状態の表示ユニット20の正面位置Cとのなす角が
図3(A)に示した角度と同様の角度(すなわち、θ1)となる位置まで移動した場合を説明する。
【0040】
図3(B)の状態から、
図3(C)に示す位置へ運転者Dの視点位置VPが移動すると、表示ユニット20を光学ミラーとして利用した場合の運転者Dの視線方向Aは、
図3(C)に示す通り、車両後方の僅かに左方向を向いている状態となる。他方、表示領域の向きBは、視点位置VPと表示ユニット20の正面位置Cとのなす角が
図3(A)に示した角度と同様の角度θ1となっているから、
図3(A)の状態と同様の向き、すなわち車両後方中央部を向くこととなる。したがって、仮に運転者Dが表示ユニット20を電子ミラーとして利用している場合は、モニタ21上に、実際の視点位置VPの移動量からは想定できない程度に大きく右側に移動した表示画像が表示されることとなる。このような表示画像を見た運転者Dは、表示画像の動作等に違和感を覚える可能性が高い。
【0041】
本実施の形態に係る画像表示装置10では、上述した違和感を抑制するために、さらに表示ユニット20の角度を考慮した表示画像の生成を行っている。
【0042】
図4は、
図2に示す画像表示装置の機能ブロック図である。本実施の形態に係る画像表示装置10の表示制御部40は、
図4に示すように、少なくとも、視点位置取得部51と、特徴点取得部52と、表示画像生成部53とを含んでいてよい。
【0043】
視点位置取得部51は、室内カメラ22で撮像された画像中の、運転者Dの視点位置VPの情報(例えば画像内における座標、あるいは表示ユニット20の正面位置Cとの間の角度)を取得するものであってよい。画像内の視点位置VPの特定方法については、パターンマッチング等の周知の画像認識技術を用いて特定すればよく、具体的な方法は特に限定されない。
【0044】
特徴点取得部52は、室内カメラ22で撮像される画像に含まれる特徴的な構造の位置情報(例えば画像内における座標)を、特徴点として取得するものであってよい。この特徴点取得部52で取得される特徴点としては、車両1内において表示ユニット20の角度等に関わらず常に特定の位置にある構成要素の中から、予め1乃至複数個を特定しておけばよい。特徴点として特定され得る構成要素は、例えば、サイドガラスの枠部分、ピラー、シートベルトあるいはルーフに固定されたマップランプ等を挙げることができる。また、車室2内の既存の構成要素に代えて、特徴点として機能するマーカーを室内カメラ22で撮像可能な任意の位置(例えばルーフ)に取り付けることで特徴点としてもよい。
【0045】
特徴点取得部52において特徴点の位置を継続的に取得すると、表示ユニット20の角度(向き)を算出することができる。具体的には、例えば表示ユニット20が予め規定された基準位置にあるときの特徴点の位置情報と、リアルタイムで取得される特徴点の位置情報とを比較することで、表示ユニット20の基準位置と比較した角度変化を特定することができる。ここでいう基準位置は、任意のタイミング、例えば画像表示装置10を設置した際の初期設定時に設定しておくとよい。
【0046】
表示画像生成部53は、後方カメラ30が撮像した画像から、視点位置取得部51にて取得した視点位置VPの情報と特徴点取得部52にて取得した特徴点の位置情報とに基づいて表示画像を構成する領域を特定することで、表示画像を生成するものであってよい。この表示画像生成部53では、視点位置VPの情報に加えて、特徴点の位置情報から特定される表示ユニット20の角度に基づいて、表示画像を構成する領域を特定する。そのため、表示ユニット20の角度が変更された場合であっても、変更された角度を踏まえた表示領域の特定を行うことができ、運転者Dにとって違和感のない表示画像を常に生成することができる。
【0047】
図5は、
図4に示す表示画像生成部で運転者の視点位置の移動に基づく表示画像の生成を行った場合の表示領域の向きの変移を示す概略説明図である。ここで、
図5(A)乃至
図5(C)は、上述した
図3(A)乃至
図3(C)にそれぞれ対応するものである。
図5に示す例では、特徴点Pをサイドガラスの窓枠としたものが例示されており、特徴点Pの位置情報を特徴点Pと表示ユニット20の表示面とのなす角(
図5中の角度Xに対応)の形態で検出するものが例示されている。
【0048】
本実施の形態に係る表示画像生成部53においては、先ず、特徴点Pの基準位置情報として、車両の幅方向に対する角度βを取得する。そして、特徴点Pの位置情報を継続的に取得することで、特徴点Pの位置情報の基準位置情報に対する変化量を表示ユニット20の角度変位として特定して、表示領域の向きの特定に利用するものである。
【0049】
具体的な表示領域の向きBの特定手法としては、例えば下記式(1)を用いて特定することができる。
【数1】
ここで、δは車両前後方向に延びる車両の中心線を基準とした表示領域の向きBのなす角度であり、Xは表示ユニット20の正面位置Cと視点位置VPとのなす角度であり、Yは特徴点Pと表示ユニット20(モニタ21)の表示面とのなす角度である。また、δは車両の中心線を基準として、
図5における時計方向を正、反時計方向を負の角度として算出されるものとする。
【0050】
上記式(1)を用いれば、表示領域の向きBを算出するに際し、常に特徴点Pの基準位置情報としての角度βに対する変化量が考慮されることになる。したがって、たとえ表示ユニット20の角度が変更されたとしても、モニタ21に表示される表示画像を構成する表示領域の向きBと表示ユニット20を光学ミラーとして利用した場合の運転者Dの視線方向Aとを一致させることができる。
【0051】
上述した通り、本実施の形態に係る画像表示装置10においては、表示画像を生成する際、運転者の視点位置と特徴点の位置情報とに基づいて表示画像を構成する表示領域を特定する。これにより、表示ユニット20の角度が変更された場合であっても違和感のない表示画像の生成を継続して実施することができる。
【0052】
<第2の実施の形態>
上記第1の実施の形態においては、室内カメラ22で撮像された画像から、表示制御部40内の特徴点取得部52により特徴点の位置情報を取得することにより、表示ユニット20の角度が変更された場合に生じ得る違和感を抑制している。しかしながら、本開示において、表示ユニット20の角度を変更したことに起因して運転者が感じ得る違和感を抑制する方法は、上述の方法に限定されない。そこで、以下には本開示の第2の実施の形態として、特徴点取得部52を用いることなく上述の違和感を抑制する方法を例示する。
【0053】
図6は、本開示の第2の実施の形態に係る画像表示装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。また、
図7は、
図6に示す画像表示装置の機能ブロック図である。本実施の形態に係る画像表示装置10Aは、上述した特徴点取得部52に代えて、運転者の視点位置の基準位置を特定するための基準位置設定部を有している点以外は、第1の実施の形態に係る画像表示装置10と同様の構成を含むものであってよい。よって、以下には、第1の実施の形態に係る画像表示装置10と同様の構成からなる部分には第1の実施の形態の説明に用いたものと同一の符号を付してその説明を省略し、第1の実施の形態に係る画像表示装置10とは異なる構成を中心に説明を行うものとする。
【0054】
本実施の形態に係る画像表示装置10Aは、
図6及び
図7に示すように、運転者の視点位置の基準位置を設定する基準位置設定部の一例としての基準位置設定スイッチ60を含む。この基準位置設定スイッチ60が操作されると、当該操作がなされた時点において室内カメラ22で撮像された画像内の視点位置VPを基準位置と特定する。そして、以降の表示画像生成プロセスでは、視点位置VPと基準位置とを比較することで、表示領域の向きBを調整する。
【0055】
基準位置設定スイッチ60は、車室2内の任意の位置に取り付けることが可能であるが、組み付け作業性を考慮すると、表示ユニット本体23の適所、例えば外縁部分のいずれかに設置しておくと良い。基準位置設定スイッチ60は、表示制御部40Aの入出力インタフェース45によって電気的に接続していてよい。基準位置設定スイッチ60の操作情報は、
図7に示すように、表示制御部40Aの基準位置取得部54にて取得することができる。表示制御部40Aの表示画像生成部53は、後方カメラ30が撮像した画像から、視点位置取得部51にて取得した視点位置VPの情報と基準位置情報とに基づいて表示画像を構成する領域を特定することで、表示画像を生成する。
【0056】
基準位置設定スイッチ60が押圧されると、その時点での視点位置VPにおいて、表示領域の向きBが車両後方中央部に向く位置となるように表示画像が調整されるとよい。このように設定すると、例えば運転者が変わった場合等にも、基準位置設定スイッチ60を押圧するだけで簡単に車両後方中央部の表示を設定でき、電子ミラーの向きの調整が容易である。
【0057】
本実施の形態に係る画像表示装置10Aによれば、基準位置設定スイッチ60を押圧することで、視点位置VPの変化を特定するための基準となる基準位置をいつでも更新することができる。これにより、表示ユニット20の角度が変更されたタイミング、例えば車両1の運転者Dが変更したタイミングで基準位置設定スイッチ60を押圧することで、視点位置VPの変化に合わせた表示領域の向きBの調整を、違和感なく実現することができる。
【0058】
上述した各実施の形態においては、画像表示装置10、10Aをルームミラーに適用する場合を例示したが、ルームミラーに代えてサイドミラーに適用することもできる。その場合でも、モニタと室内カメラを単一のユニットとして車両に取り付けることにより、上述した各実施の形態において述べたのと同様の効果が期待できる。なお、本実施の形態においては、第1の実施の形態に係る特徴点取得部52に代えて基準位置設定スイッチ60を採用したものを例示したが、例えば第1の実施の形態に係る特徴点取得部52の機能を補完する目的で特徴点取得部52と共に採用することもできる。
【0059】
また、上記各実施の形態においては、CPU41がROM42あるいはストレージ44に格納されたプログラムを読み込んで実行した処理を、CPU41以外の各種のプロセッサが実行するようにしてもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等を挙げることができる。また、表示画像の生成プロセスを、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせで実行してもよく、例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア構成は、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路であり得る。
【0060】
本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。また、本開示において、各構成要素は、矛盾が生じない限りは1つのみ存在しても2つ以上存在してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 車両
10、10A 画像表示装置
20 表示ユニット
21 モニタ
22 室内カメラ(第2の撮像装置の一例)
23 表示ユニット本体
30 後方カメラ(第1の撮像装置の一例)
40 表示制御部
52 特徴点取得部
54 基準位置取得部
60 基準位置設定スイッチ(基準位置設定部の一例)
D 運転者
P 特徴点
VP 視点位置