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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006741
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】油性レッドインク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20240110BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240110BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C09D11/322
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107918
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 直宏
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC02
2H186BA08
2H186DA14
2H186FB02
2H186FB15
2H186FB24
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB55
4J039BC01
4J039BC06
4J039BC07
4J039BC20
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039CA07
4J039EA15
4J039EA42
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】高彩度な赤色画像を印刷可能な油性レッドインクを提供する。
【解決手段】顔料、トコフェロール、及び非水系溶剤を含み、顔料は、C.I. Pigment Red 254とC.I. Pigment Yellow 154とを含む、油性レッドインクである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、トコフェロール、及び非水系溶剤を含み、前記顔料は、C.I. Pigment Red 254とC.I. Pigment Yellow 154とを含む、油性レッドインク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性レッドインクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、流動性の高いインクジェットインクを微細なノズルから液滴として噴射し、ノズルに対向して置かれた基材に画像を記録するものであり、低騒音で高速印字が可能であることから、近年急速に普及している。このようなインクジェット記録方式に用いられるインクとして、水を主溶媒として含有する水性インク、重合性モノマーを主成分として高い含有量で含有する紫外線硬化型インク(UVインク)、ワックスを主成分として高い含有量で含有するホットメルトインク(固体インク)とともに、非水系溶剤を主溶媒として含有する、いわゆる非水系インクが知られている。非水系インクは、主溶媒が揮発性有機溶剤であるソルベントインク(溶剤系インク)と、主溶媒が低揮発性あるいは不揮発性の有機溶剤である油性インク(オイル系インク)に分類できる。ソルベントインクは主に有機溶剤の蒸発によって基材上で乾燥するのに対して、油性インクは基材への浸透が主となって乾燥する。
【0003】
油性インクでは発色が良好なレッドインクが求められている。特許文献1には、ジケトピロロピロール赤顔料と、特定のグリコールジエーテル及び特定のグリコールモノエーテルとを含む非水系インクジェット組成物を用いて記録物の彩度を改善することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-132888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の非水系インクジェット組成物は、ジケトピロロピロール赤顔料を含むことで赤色を呈する画像が印刷されるものであって、記録物上で顔料の凝集を防止して記録物の彩度を改善しようとするものであるが、ジケトピロロピロール赤顔料が呈する赤色の彩度をより改善する試みはなされていない。また、インクジェット印刷方法の他にも各種印刷方法において油性レッドインクの赤色の発色性が求められている。
【0006】
本発明の一目的としては、高彩度な赤色画像を印刷可能な油性レッドインクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としては、顔料、トコフェロール、及び非水系溶剤を含み、前記顔料は、C.I. Pigment Red 254とC.I. Pigment Yellow 154とを含む、油性レッドインクである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、高彩度な赤色画像を印刷可能な油性レッドインクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を一実施形態を用いて説明する。以下の実施形態における例示が本発明を限定することはない。
【0010】
一実施形態による油性レッドインクとしては、顔料、トコフェロール、及び非水系溶剤を含み、顔料は、C.I. Pigment Red 254とC.I. Pigment Yellow 154とを含むことを特徴とする。この油性レッドインクによれば、高彩度な赤色画像を印刷することができる。以下、油性レッドインクを単に「インク」と称することがある。
【0011】
一実施形態では、発色が良好な赤色画像を得るために、赤色顔料と各種顔料とを組み合わせて彩度を検討したところ、いくつかの組み合わせにおいて赤色画像の彩度が変化したが、その際に、赤色顔料のC.I. Pigment Red 254と黄色顔料のC.I. Pigment Yellow 154と、さらに添加剤としてトコフェロールとを組み合わせて用いることで、赤色画像の彩度が顕著に向上することを見出した。
【0012】
一実施形態による油性レッドインクでは、赤色顔料のC.I. Pigment Red 254と黄色顔料のC.I. Pigment Yellow 154と、トコフェロールとの間で分子間の水素結合が促進され、見かけの分子量が大きくなり、C.I. Pigment Yellow 154の耐溶剤性が向上することで、非水系溶剤と混合しても安定するため、元の赤色顔料と黄色顔料の組み合わせによる発色が低下しないと考えられる。
【0013】
水素結合は、F原子、O原子、N原子が強い。C.I. Pigment Red 254は、ジケトピロロピロール構造にN原子とO原子を含み、2つのクロロフェニル構造に合計で2つのCl原子を含むことから、N原子とO原子はさらに電気的に陰性に近づきやすく、水素結合の形成を促進することができる。C.I. Pigment Yellow 154は、分子構造にF原子、O原子、及びN原子を多く含むことから、水素結合の形成に寄与することができる。トコフェロールは、立体的に込み合っていないOH基を有していることから、C.I. Pigment Red 254とC.I. Pigment Yellow 154との水素結合の形成を阻害しないように働き、水素結合の形成を促進することができる。なお、本発明は上記した理論に拘束されるものではない。
【0014】
油性レッドインクにおいて、顔料は、C.I. Pigment Red 254とC.I. Pigment Yellow 154とを含む。赤色顔料のC.I. Pigment Red 254と黄色顔料のC.I. Pigment Yellow 154とを組み合わせることで、赤色顔料のC.I. Pigment Red 254を単独で用いる場合に比べて赤色の彩度を高めることができる。さらに、赤色顔料のC.I. Pigment Red 254と、C.I. Pigment Yellow 154以外の黄色顔料と組み合わせる場合に比べて赤色の彩度を高めることができる。
【0015】
C.I. Pigment Red 254の含有量(R)対しC.I. Pigment Yellow 154の含有量(Y)の質量比「Y/R」は、赤色の彩度の観点から、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.10以上がさらに好ましく、0.15以上が一層好ましい。この質量比「Y/R」は、赤色の再現性の観点から、0.50以下が好ましく、0.30以下がより好ましく、0.20以下がさらに好ましい。例えば、この質量比「Y/R」は、0.01~0.50、0.05~0.30、0.10~0.20、又は0.15~0.20であってよい。
【0016】
C.I. Pigment Red 254の含有量は、印刷物の画像濃度と油性レッドインク粘度の観点から、油性レッドインク全量に対し、0.1~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、5~10質量%であることがさらに好ましい。
【0017】
C.I. Pigment Yellow 154の含有量は、赤色の彩度及び再現性の観点からC.I. Pigment Red 254の含有量に合わせて適宜調節すればよいが、油性レッドインク全量に対し、0.05~10質量%であることが好ましく、0.5~8質量%であることがより好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
【0018】
C.I. Pigment Red 254とC.I. Pigment Yellow 154との合計含有量は、印刷物の画像濃度と油性レッドインク粘度の観点から、油性レッドインク全量に対し、0.1~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、5~10質量%であることがさらに好ましい。
【0019】
油性レッドインク中で顔料を安定して分散させるために、顔料とともに顔料分散剤を用いることができる。顔料分散剤としては、顔料を非水系溶剤に安定して分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとの共重合体、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリアミン、ポリアルキレンイミン等が好ましく用いられる。
【0020】
顔料分散剤の市販品の例としては、アシュランド・ジャパン株式会社製「アンタロンV216(ビニルピロリドン・ヘキサデセン共重合体)、V220(ビニルピロリドン・エイコセン共重合体)」(いずれも商品名)、日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース13940(ポリエステルアミン系)、16000、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、24000、28000」(いずれも商品名)、BASFジャパン株式会社製「エフカ400、401、402、403、450、451、453(変性ポリアクリレート)、46、47、48、49、4010、4055(変性ポリウレタン)」(いずれも商品名)、楠本化成株式会社製「ディスパロンKS-860、KS-873N(ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名)、第一工業製薬株式会社製「ディスコール202、206、OA-202、OA-600(多鎖型高分子非イオン系)」(いずれも商品名)、ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK2155、BYK9077」(いずれも商品名)、クローダジャパン株式会社製「HypermerKD2、KD3、KD11、KD12」(いずれも商品名)、株式会社日本触媒製「エポミンSP-006」、「エポミンSP-012」、「エポミンSP-018」、「エポミンSP-200」(ポリエチレンイミン系、いずれも商品名)、BASF社製「LUPASOL FG」、「LUPASOL G20 WF」、「LUPASOL PR8515」(ポリエチレンイミン系、いずれも商品名)等が挙げられる。
【0021】
顔料分散剤は、顔料1に対し0.2~1.0の質量比で含まれていることが好ましい。顔料分散剤は、油性レッドインク全量に対し、0.5~15質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、1~5質量%であることがさらに好ましい。
【0022】
油性レッドインクは、C.I. Pigment Red 254とC.I. Pigment Yellow 154以外に他の顔料をさらに含んでもよいが、赤色の彩度及び赤色の再現性の観点から、他の顔料は含まれなくてもよい。油性レッドインクは、顔料に加えて染料をさらに含んでもよいが、赤色の彩度及び赤色の再現性の観点から、染料は含まれなくてもよい。他の顔料及び染料は、油性レッドインクに含まれなくてよいが、油性レッドインク全量に対し、合計量で0.5質量%以下、又は0.1質量%以下の範囲で含まれてもよい。
【0023】
油性レッドインクはトコフェロールを含む。トコフェロールは、赤色顔料のC.I. Pigment Red 254と黄色顔料のC.I. Pigment Yellow 154との顔料の組み合わせに作用して、赤色の彩度を高める機能を発揮する。
【0024】
トコフェロールとしては、例えば、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール等が挙げられる。トコフェロールはd体(天然型)及びdl体(合成型)のいずれであってもよい。トコフェロールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
トコフェロールの市販品としては、例えば、「(+)-alpha-Tocopherol、(+)-beta-Tocopherol、(+)-gamma-Tocopherol、(+)-delta-Tocopherol」いずれもフナコシ株式会社製)等が挙げられる。
【0026】
トコフェロールは、赤色の彩度の観点から、C.I. Pigment Red 254とC.I. Pigment Yellow 154の合計量に対し、質量比で0.01~5が好ましく、0.05~1がより好ましく、0.1~0.5がさらに好ましい。
【0027】
トコフェロールは、赤色の彩度の観点から、油性レッドインク全量に対し、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましく、1~3質量%がさらに好ましい。
【0028】
非水系溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤の何れも使用できる。これらは、単独で使用してもよく、組み合わせて使用することもできる。なお、本発明において、非水系溶剤としては、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない非水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
【0029】
非極性有機溶剤としては、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等の石油系炭化水素溶剤を好ましく挙げることができる。脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の非水系溶剤を挙げることができ、市販品としては、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、カクタスノルマルパラフィンN-10、カクタスノルマルパラフィンN-11、カクタスノルマルパラフィンN-12D、カクタスノルマルパラフィンN-13、カクタスノルマルパラフィンN-14、カクタスノルマルパラフィンYHNP、カクタスノルマルパラフィンSHNP、アイソゾール300、アイソゾール400、テクリーンN16、テクリーンN20、テクリーンN22、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号、ナフテゾール160、ナフテゾール200、ナフテゾール220(いずれもENEOS株式会社製の商品名);アイソパーG、アイソパーH BHT、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD110、エクソールD130(いずれもエクソンモービル社製の商品名);モレスコホワイトP-60、モレスコホワイトP-70、モレスコホワイトP-80、モレスコホワイトP-100、モレスコホワイトP-120、モレスコホワイトP-150、モレスコホワイトP-200、モレスコホワイトP-260、モレスコホワイトP-350P(いずれも株式会社MORESCO製の商品名)等を好ましく挙げることができる。芳香族炭化水素溶剤としては、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、ソルベッソ200ND(いずれもエクソンモービル社製の商品名)等を好ましく挙げることができる。石油系炭化水素溶剤の蒸留初留点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがいっそう好ましい。蒸留初留点はJIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定することができる。
【0030】
極性有機溶剤としては、脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等を好ましく挙げることができる。例えば、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソブチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ピバリン酸2-オクチルデシル、ドコサン酸エチル、大豆油脂肪酸メチルエステル、大豆油脂肪酸イソブチルエステル、トール油脂肪酸メチルエステル、トール油脂肪酸イソブチルエステル等の1分子中の炭素数が13以上、好ましくは16~30の脂肪酸エステル系溶剤;イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソエイコシルアルコール、デシルテトラデカノール等の1分子中の炭素数が6以上、好ましくは12~20の高級アルコール系溶剤;ラウリン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の1分子中の炭素数が12以上、好ましくは14~20の高級脂肪酸系溶剤等が挙げられる。脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性有機溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、沸点が250℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さない非水系溶剤も含まれる。
【0031】
これらの非水系溶剤は、単独で使用してもよく、単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、使用する非水系溶剤と単一相を形成できる範囲で他の有機溶剤を含ませてもよい。非水系溶剤は、油性レッドインク全量に対し、50~90質量%が好ましく、70~90質量%がより好ましく、80~90質量%がさらに好ましい。
【0032】
油性レッドインクは、非水系溶剤の揮発量を低減して貯蔵安定性を改善する観点から、蒸留初留点が200℃以上及び沸点が200℃以上の非水系溶剤を合計量で50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
【0033】
上記各成分に加えて、油性レッドインクには、本発明の効果を損なわない限り、各種添加剤が含まれていてよい。添加剤としては、ノズルの目詰まり防止剤、酸化防止剤、導電率調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤等を適宜添加することができる。これらの種類は、特に限定されることはなく、当該分野で使用されているものを用いることができる。各種添加剤は、合計量で、油性レッドインク全量に対し、1質量%以下、0.5質量%以下、又は0.1質量%以下で含まれてよい。なお、油性レッドインクは、顔料、トコフェロール、及び非水系溶剤を含み、これら以外に各種添加剤が含まれなくてもよい。
【0034】
油性レッドインクの製造方法は特に限定されないが、一方法としては、各成分を一括ないし分割して混合及び撹拌してインクを作製することができる。具体的には、ビーズミル等の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことにより作製することができる。
【0035】
油性レッドインクは各種印刷方法のインクとして用いることができる。例えば、油性レッドインクは、インクジェット印刷方法、オフセット印刷方法、スクリーン印刷方法、グラビア印刷方法、フレキソ印刷方法等で用いることができる。なかでも、基材に非接触で、オンデマンドで簡便かつ自在に画像形成をすることができるため、インクジェット印刷方法が好ましい。また、油性レッドインクは、印刷用インク以外に、塗料、筆記具用インク等として用いることができる。筆記具用インクは、油性ボールペン、油性マーキングペン等に充填して用いられる。
【0036】
油性レッドインクをインクジェットインクとして用いる場合、印刷方法としては、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式等、いずれの方式のものであってもよい。インクジェット印刷装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから油性レッドインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を基材に付着させるようにすることが好ましい。
【0037】
油性レッドインクをインクジェットインクとして用いる場合、油性レッドインクの粘度は、インクジェット記録システムの吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5~30mPa・sであることが好ましく、5~15mPa・sであることがより好ましく、8~13mPa・sであることが一層好ましい。本開示において、インク粘度は、23℃において測定した数値である。粘度測定装置には、例えば、株式会社アントンパール・ジャパン製「レオメーターMCR302」を用いることができる。
【0038】
一実施形態において、基材は、特に限定されるものではなく、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙、布、無機質シート、フィルム、OHPシート等、これらを基材として裏面に粘着層を設けた粘着シート等を用いることができる。これらの中でも、インクの浸透性の観点から、普通紙、コート紙等の印刷用紙を好ましく用いることができる。
【0039】
ここで、普通紙とは、通常の紙の上にインクの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。普通紙は、数μm~数十μmの太さの紙繊維が数十から数百μmの空隙を形成しているため、インクが浸透しやすい紙となっている。
【0040】
また、コート紙としては、マット紙、光沢紙、半光沢紙等のインクジェット用コート紙や、いわゆる塗工印刷用紙を好ましく用いることができる。ここで、塗工印刷用紙とは、従来から凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等で使用されている印刷用紙であって、上質紙や中質紙の表面にクレーや炭酸カルシウム等の無機顔料と、澱粉等のバインダーを含む塗料により塗工層を設けた印刷用紙である。塗工印刷用紙は、塗料の塗工量や塗工方法により、微塗工紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、上質コート紙、中質コート紙、アート紙、キャストコート紙等に分類される。
【実施例0041】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0042】
「油性レッドインクの作製」
油性レッドインクの処方を表1に示す。表中において「-」は未添加を示す。表中に示す含有量にしたがって、顔料、添加剤、顔料分散剤、及び非水系溶剤を混合し、ジルコニアビーズ(直径0.5mm)を充填率85%にて充填したビーズミル「ダイノーミルMulti Lab」(株式会社シンマルエンタープライゼス製)により分散し、油性レッドインクを得た。
【0043】
用いた成分は以下の通りである。
(レッド顔料)
C.I. Pigment Red 254;HOSTAPERM RED D3G 70(商品名)、クラリアント社製。
C.I. Pigment Red 48:1;Litiol Scarlet D3700(商品名)、BASF社製。
(イエロー顔料)
C.I. Pigment Yellow 154;HOSTAPERM YELLOW H3G(商品名)、クラリアント社製。
C.I. Pigment Yellow 155;INK JET YELLOW 4G(商品名)、クラリアント社製。
C.I. Pigment Yellow 180;NOVOPERM YELLOW P-HG(商品名)、クラリアント社製。
【0044】
(添加剤)
(+)-alpha-Tocopherol(商品名);α-トコフェロール、フナコシ株式会社製。
(+)-beta-Tocopherol(商品名);β-トコフェロール、フナコシ株式会社製。
(+)-gamma-Tocopherol(商品名);γ-トコフェロール、フナコシ株式会社製。
(+)-delta-Tocopherol(商品名);δ-トコフェロール、フナコシ株式会社製。
スミライザー GM(F)(商品名):ヒンダードフェノール系酸化防止剤、住友化学株式会社製。
【0045】
(顔料分散剤)
ソルスパース18000(商品名);脂肪酸アミン系顔料分散剤、有効成分量100%、ルーブリゾール社製。
エポミンSPー018(商品名);ポリエチレンイミン系顔料分散剤、樹脂分量98%以上、株式会社日本触媒製。
(非水系溶剤)
ドコサン酸エチル;脂肪酸エステル系溶剤、フナコシ株式会社製。
モレスコホワイトP-60(商品名);石油系炭化水素溶剤、株式会社MORESCO社製。
オレイルアルコール;高級アルコール系溶剤、高級アルコール工業株式会社製。
【0046】
「印刷物の彩度の評価」
上記油性レッドインクについて、以下の方法により彩度の評価を行った。評価結果を表中に併せて示す。インクジェットプリンター「オルフィスGD9630」(理想科学工業株式会社製)に搭載されているインクジェットヘッドを用いて、普通紙(理想用紙マルチ、理想科学工業株式会社製)にベタ画像を印刷した。そして、1時間経過後のベタ画像部分の彩度を、分光濃度・測色計「X-Rite eXact」(ビデオジェット・エックスライト株式会社製)で測定した。印刷物の彩度を以下の基準で評価した。なお、彩度は国際照明委員会によるCIE (1976)L*a*b*色空間の規定に従って、下記式により表される。
【0047】
彩度c={(a+(b1/2
A:69.3以上69.8未満。
B:68.8以上69.3未満。
【0048】
【表1】
【0049】
表中に示す通り、各実施例のインクでは、高い彩度の印刷物を得ることができた。実施例1~4より各種トコフェロールにおいて効果が確認された。実施例5~9より顔料分散剤及び非水系溶剤が異なる各種インク処方においても効果が確認された。比較例1、3及び4は顔料がC.I. Pigment Red 254とC.I. Pigment Yellow 154との組み合わせではない例であり、比較例2はトコフェロールが含まれない例であり、それぞれ印刷物の彩度が低下した。