(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067411
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】センサデバイス及びセンシングシステム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240510BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20240510BHJP
G01D 11/24 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
C12M1/00 C
G08C15/00 D
G01D11/24 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177467
(22)【出願日】2022-11-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-21
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
(71)【出願人】
【識別番号】518240369
【氏名又は名称】株式会社IDDK
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(72)【発明者】
【氏名】上野 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩屋 雄介
【テーマコード(参考)】
2F073
4B029
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA02
2F073AA11
2F073AB01
2F073AB11
2F073BB01
2F073BB04
2F073BC01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CD11
2F073DD07
2F073EF09
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073FG11
2F073GG01
2F073GG04
2F073GG09
4B029AA27
4B029BB01
4B029CC01
4B029CC02
4B029DF10
4B029GB04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】インキュベータ内部の培養用容器のそれぞれの位置において環境情報を取得する。
【解決手段】インキュベータ内で使用されるセンサデバイスであって、周囲の環境情報を検出するセンサ16と、センサが設けられた基板15と、前記センサによって検出された環境情報を送信する通信モジュール17と、を備える。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキュベータ内で使用されるセンサデバイスであって、
周囲の環境情報を検出するセンサと、
センサが設けられた基板と、
前記センサによって検出された環境情報を送信する通信モジュールと、
を備えるセンサデバイス。
【請求項2】
前記センサは筐体に少なくとも一部が覆われており
前記筐体の少なくとも一面のパネルには、複数の開口が形成されるように、少なくとも一つの羽根部材が設けられている
請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項3】
前記センサの検出面が横向きまたは下方に向くように当該センサが前記基板に設置されている
請求項1または2に記載のセンサデバイス。
【請求項4】
培養用容器内の観察対象物を下から撮像可能なように設けられた光電変換素子を更に備え、
前記通信モジュールは、前記環境情報に加えて更に前記光電変換素子で得られた画像信号を送信する
請求項1または2に記載のセンサデバイス。
【請求項5】
前記基板及び前記センサを収容する筐体を更に備え、
前記筐体は、前記光電変換素子の下方に設けられている
請求項4に記載のセンサデバイス。
【請求項6】
前記光電変換素子で得られた画像信号に対して信号処理を施すロジック回路部を備え、
前記ロジック回路部は、前記筐体の内天面側の面とは反対の前記基板の面に設けられている
請求項4に記載のセンサデバイス。
【請求項7】
筐体を備え、
前記基板は、前記筐体の内天面に固定されており、
前記センサは、前記筐体の内天面側の面とは反対の前記基板の面に設けられている
請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項8】
前記通信モジュールは、前記筐体の内天面側の面とは反対の前記基板の面に設けられている
請求項7に記載のセンサデバイス。
【請求項9】
対象物に対して取り外し可能に取り付けるための取付部材を備える
請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項10】
前記環境情報は、温度、湿度または二酸化炭素濃度のうち少なくとも一つである
請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項11】
インキュベータ内で使用される、請求項1に記載の複数のセンサデバイスと、
複数の前記センサデバイスによって検出された環境情報を取得する情報処理装置と、
を備えるセンシングシステム。
【請求項12】
複数の前記センサそれぞれは、当該センサの検出面が横向きまたは下向きに向くように設置されている
請求項11に記載のセンシングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサデバイス及びセンシングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インキュベータ内部の環境情報(例えば、温度、湿度または二酸化炭素濃度など)を取得し、監視することが行われている。例えば、特許文献1では、環境情報取得部は、インキュベータ内部の温度、湿度及び二酸化炭素濃度の少なくともいずれか1つに関する情報を環境情報として取得することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-11号公報
【特許文献2】特開2020-8667号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様に係るセンサデバイスは、インキュベータ内で使用されるセンサデバイスであって、周囲の環境情報を検出するセンサと、センサが設けられた基板と、前記センサによって検出された環境情報を送信する通信モジュールと、を備える。
【0005】
本発明の第2の態様に係るセンサデバイスは、第1の態様に係るセンサデバイスであって、前記センサは筐体に少なくとも一部が覆われており前記筐体の少なくとも一面のパネルには、複数の開口が形成されるように、少なくとも一つの羽根部材が設けられている。
【0006】
本発明の第3の態様に係るセンサデバイスは、第1または2の態様に係るセンサデバイスであって、前記センサの検出面が横向きまたは下方に向くように当該センサが前記基板に設置されている。
【0007】
本発明の第4の態様に係るセンサデバイスは、第1から3のいずれかの態様に係るセンサデバイスであって、培養用容器内の観察対象物を下から撮像可能なように設けられた光電変換素子を更に備え、前記通信モジュールは、前記環境情報に加えて更に前記光電変換素子で得られた画像信号を送信する。
【0008】
本発明の第5の態様に係るセンサデバイスは、第4の態様に係るセンサデバイスであって、前記基板及び前記センサを収容する筐体を更に備え、前記筐体は、前記光電変換素子の下方に設けられている。
【0009】
本発明の第6の態様に係るセンサデバイスは、第4または5の態様に係るセンサデバイスであって、前記光電変換素子で得られた画像信号に対して信号処理を施すロジック回路部を備え、前記ロジック回路部は、前記筐体の内天面側の面とは反対の前記基板の面に設けられている。
【0010】
本発明の第7の態様に係るセンサデバイスは、第1から6のいずれかの態様に係るセンサデバイスであって、筐体を備え、前記基板は、前記筐体の内天面に固定されており、前記センサは、前記筐体の内天面側の面とは反対の前記基板の面に設けられている。
【0011】
本発明の第8の態様に係るセンサデバイスは、第7の態様に係るセンサデバイスであって、前記通信モジュールは、前記筐体の内天面側の面とは反対の前記基板の面に設けられている。
【0012】
本発明の第9の態様に係るセンサデバイスは、第1から8のいずれかの態様に係るセンサデバイスであって、対象物に対して取り外し可能に取り付けるための取付部材を備える。
【0013】
本発明の第10の態様に係るセンサデバイスは、第1から9のいずれかの態様に係るセンサデバイスであって、前記環境情報は、温度、湿度または二酸化炭素濃度のうち少なくとも一つである。
【0014】
本発明の第11の態様に係るセンシングシステムは、インキュベータに第1から9のいずれかの態様に係る複数のセンサデバイスと、複数の前記センサデバイスによって検出された環境情報を取得する情報処理装置と、を備える。
【0015】
本発明の第12の態様に係るセンシングシステムは、第11の態様に係るセンシングシステムであって、複数の前記センサそれぞれは、当該センサの検出面が横向きまたは下向きに向くように設置されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、インキュベータ内における各位置での環境情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】各実施形態に係るセンサシステムの一例の概略構成図である。
【
図2】各実施形態に係るセンサデバイスの配置の一例である。
【
図3】第1の実施形態に係るセンサデバイスの概略斜視図である。
【
図4A】第1の実施形態に係るセンサデバイスの縦断面図である。
【
図4B】第1の実施形態に係るセンサデバイスを上斜めの位置から見た図である。
【
図5A】第1の実施形態に係るセンサデバイスを横から見た概略図である。
【
図5B】第1の実施形態の変形例に係るセンサデバイスを横から見た概略図である。
【
図6】第1の実施形態に係るセンサの概略縦断面図である。
【
図7】第1の実施形態に係る情報処理装置の構成を示す概略図である。
【
図8】第2の実施形態に係るセンサデバイスの概略斜視図である。
【
図9】第2の実施形態に係るセンサデバイスの縦断面図である。
【
図10】第2の実施形態に係るデバイスの断面図の一例である。
【
図11】本実施形態に係るデバイスを用いた観察システムを模式的に示す電気ブロック図である。
【
図12】デバイスの載置部の上方に観察対象が配置された様子を示す上面図である。
【
図13】取得される顕微画像と、温度、湿度、二酸化炭素濃度の時系列変化を表す模式図である。
【
図14】第2の実施形態の変形例に係るセンサデバイスの概略縦断面図である。
【
図15】第3の実施形態に係るセンサデバイスの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0019】
インキュベータ内部では、内部における位置によって環境情報(例えば、温度、湿度または二酸化炭素濃度など)が異なっている可能性がある。インキュベータ内部で位置によって環境情報が異なる場合、細胞が成長しやすい位置と、細胞が成長しにくい位置ができてしまい、インキュベータ内部での位置によって細胞の生育度合いに差ができてしまう。また各位置での生育速度や、それぞれの位置の間での生育速度の差を予測できないという問題がある。これに対して、インキュベータ内部の培養用容器(例えば、ディッシュまたはシャーレ)の位置それぞれについて環境情報を取得するのが難しいという問題がある。
【0020】
本実施形態の一態様では、上記問題に鑑みてなされたものであり、インキュベータ内部の培養用容器のそれぞれの位置において環境情報を取得することを可能とするセンサデバイス及びセンシングシステムを提供することを目的とする。
【0021】
また各位置における環境情報(例えば、温度、湿度または二酸化炭素濃度など)によって、細胞の状態が変化することが考えられるが、各位置における環境状態と細胞の状態の因果関係を把握することが難しいという問題もある。
【0022】
本実施形態の別の一態様では、各位置における環境状態と細胞の状態の因果関係を把握することを可能とするセンサデバイス及びセンシングシステムを提供することを目的とする。
【0023】
まず、はじめに各実施形態に共通する構成について説明する。
図1は、各実施形態に係るセンサシステムの一例の概略構成図である。
図1に示すように、センサシステムSは、センサデバイス1-1、1-2、1-3、センサデバイス1-1、1-2、1-3と通信可能な情報処理装置6、情報処理装置6に接続された表示装置7を備える。センサデバイス1-1、1-2、1-3と情報処理装置6との通信は有線であっても無線であってもよい。情報処理装置6は例えば、パソコン、ノートパソコン、携帯端末、またはタブレットなどである。
【0024】
図2は、各実施形態に係るセンサデバイスの配置の一例である。
図2に示すように、センサデバイス1-1、1-2、1-3は、インキュベータ100の内部に設けられている。インキュベータ100の内部には棚101と棚102が設けられている。センサデバイス1-1は一例として、対象物である棚101に対して取り外し可能に取り付けられている。培養用容器の一例であるシャーレ2がセンサデバイス1-1の上に設けられている。センサデバイス1-2は一例として、インキュベータの内側面に取り外し可能に取り付けられている。センサデバイス1-3は一例として、インキュベータの内天面に取り外し可能に取り付けられている。以下、センサデバイス1-1~1-3を総称してセンサデバイス1ともいう。
【0025】
なお、センサデバイス1-1はシャーレ2の下に設けられているとして説明したが、上に設けられていてもよい。
【0026】
<第1の実施形態>
図3は、第1の実施形態に係るセンサデバイスの概略斜視図である。
図3に示すように、シャーレ2は、上側が解放された円柱状の載置部材21と、載置部材21の上側を覆うシャーレカバー22を有する。センサデバイス1は、載置部材21の下方に設けられている。
【0027】
図4Aは、第1の実施形態に係るセンサデバイスの縦断面図である。
図4Bは、第1の実施形態に係るセンサデバイスを上斜めの位置から見た図である。
図4Aに示すように、センサデバイス1は、筐体10を備え、筐体10は底板11を有する。センサデバイス1は、底板11の裏面側には、対象物に対して取り外し可能に取り付けるための取付部材20を備える。ここで取付部材20は例えば、マグネット、吸盤、または両面テープのような接着層である。
【0028】
図4Bに示すように、センサデバイス1は、底板11の上に設けられた柱部材12a~12fと、柱部材12a~12fの上に設けられた天板14を備える。天板14の裏面には基板15が固定されている。基板15の下方側の面(裏面ともいう)に、周囲の環境情報(例えば、温度、湿度、または二酸化炭素濃度など)を検出するセンサ16と、センサ16によって検出された環境情報を送信する通信モジュール17が固定されて設けられている。
【0029】
このように、基板15は、筐体10の内天面に固定されており、センサ16は、筐体の内天面側の面とは反対の基板15の面に設けられている。通信モジュール17は、筐体の内天面側の面とは反対の前記基板の面に設けられている。
【0030】
図5Aは、第1の実施形態に係るセンサデバイスを横から見た概略図である。
図4及び
図5Aに示すように、柱部材12a~12f同士の間には、空間が設けられている。これによって、柱部材12a~12f同士の間に、空気が通ることができる。
【0031】
なお、センサデバイスの外観は、これに限ったわけではない。
図5Bは、第1の実施形態の変形例に係るセンサデバイスを横から見た概略図である。
図5Bに示すように、リング状の側板18に空気を通すために貫通孔19が設けられていてもよい。
【0032】
図6は、第1の実施形態に係るセンサの概略縦断面図である。
図6に示すように、センサ16は、筐体の一部を構成する底板161と、筐体の一部を構成する天板162と、底板161に固定されたセンサ本体163を備える。更に筐体10の一方の側面側に羽根部材164a、164b、164cが設けられ、筐体10の他方の側面側に羽根部材165a、165b、165cが設けられている。
このように、センサ16は筐体10に少なくとも一部が覆われており、当該筐体10の少なくとも一面のパネルには、複数の開口が形成されるように、少なくとも一つの羽根部材164aが設けられている。
【0033】
センサ本体163には、センサ16の検出面1631が設けられており、このセンサの検出面1631が下方に向くように当該センサが前記基板に設置されている。なお、これに限らず、センサの検出面1631が横向きに設けられていてもよい。
このように、センサ16の検出面1631が横向きまたは下向きに向くように当該センサ16が基板15に設置されている。これにより、インキュベータ内部において、センサ16の検出面1631に付いた水滴が自動的に流れ落ちるので、センサによる環境情報の検出精度を維持することができる。
【0034】
図7は、第1の実施形態に係る情報処理装置の構成を示す概略図である。
図7に示すように、情報処理装置6は、入力インタフェース61、通信モジュール62、ストレージ63、メモリ64、出力インタフェース65、プロセッサ66を備える。
入力インタフェース61は、ユーザからの入力を受け付ける。通信モジュール62は、センサデバイス1-1、1-2、1-3と通信する。この通信は有線であっても無線であってもよい。ストレージ63は、プロセッサ66が読み出して実行するためのプログラムが格納されている。メモリ64は一時的にデータが格納される。出力インタフェース65
は、表示装置7と接続されており、プロセッサ66によって映像信号が出力される。プロセッサ66は、通信モジュール62で受信した環境情報をストレージ63に蓄積する。
【0035】
以上、第1の実施形態に係るセンサデバイス1は、インキュベータ内で使用されるセンサデバイスであって、周囲の環境情報を検出するセンサ16と、センサ16が設けられた基板15と、対象物に対して取り外し可能に取り付けるための取付部材20と、センサ16によって検出された環境情報を送信する通信モジュール17と、を備える。これにより、インキュベータ内における各位置での環境情報を取得することができる。
【0036】
また第1の実施形態に係るセンシングシステムSは、インキュベータにセンサデバイス1が複数設けられており、このセンシングシステムSは、複数のセンサデバイス1によって検出された環境情報を取得する情報処理装置6を備える。これにより、インキュベータ内における各位置での環境情報を取得することができる。
【0037】
<第2の実施形態>
続いて第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態と比べて、培養用容器内の観察対象を下から撮像可能なように設けられた光電変換素子を更に備える点が異なっており、通信モジュールは、環境情報に加えて更に前記光電変換素子で得られた画像信号を送信する。
【0038】
図8は、第2の実施形態に係るセンサデバイスの概略斜視図である。
図9は、第2の実施形態に係るセンサデバイスの縦断面図である。
図8に示すように、センサデバイス1bの上に載置部材21が設けられている。またシャーレカバー22の上に配置するための照明デバイス3が設けられている。照明デバイス3は、円盤状の基板31と基板31に設けられた光源32を有する。光源32は例えばLEDである。
図9に示すように、基板31のシャーレカバー22側の面側において、基板31に設けられた窪みに光源32が埋め込まれて固定されていてもよい。これにより、基板31をシャーレカバー22の上に置いたときに、光源32によって基板31がシャーレカバー22の表面から浮くことを防止することができる。
【0039】
図9に示すように、第2の実施形態に係るセンサデバイス1bは、
図4の第1の実施形態に係るセンサデバイスに比べて、筐体10bを構成する天板14の上に、切り欠きが形成されている基板4と、基板4に形成された切り欠きに設けられた複数の光電変換素子を含むデバイス5とを備える。このような構成により、光源32は、デバイス5に向かって光を照射可能である。ここでデバイス5は、マイクロイメージングデバイス(Micro Imaging Device:MID)ともいう。
【0040】
更に、基板15の下方側の面(裏面)には、光電変換素子で得られた画像信号に対して信号処理を施すロジック回路部200が固定されて設けられている。すなわち、ロジック回路部200は、筐体の内天面側の面とは反対の基板15の面に設けられている。
このように、基板15及びセンサ16を収容する筐体は、光電変換素子の下方に設けられており、光電変換素子で得られた画像信号に対して信号処理を施すロジック回路部200を備える。
【0041】
図10は、第2の実施形態に係るデバイスの断面図の一例である。
図10に示すように、デバイス5は、固体撮像装置51と、撮影対象を配置することができる載置部52と、を具備する。固体撮像装置51は、光を集光するマイクロレンズ53、およびマイクロレンズ53により集光される光を受光する受光部、を含む画素54が、所定の間隔で複数個配列されることにより構成されるセンサ部を有するものである。以下に、この固体撮像装置51について具体的に説明する。
【0042】
図10に示す固体撮像装置51において、例えばシリコン等からなる半導体基板55には、複数の不純物層である複数のフォトダイオード層56が、配列形成されている。本実施形態においては、例えばフォトダイオード層56が受光部となるが、受光部は、入射される光を受光して光電変換することができる光電変換素子であればよく、必ずしもフォトダイオード層56である必要はない。
【0043】
また、複数のフォトダイオード層56が設けられた半導体基板55の表面上には、中間層57が設けられており、中間層57の表面上には、複数のマイクロレンズ53が、配列された複数のフォトダイオード層56の位置に対応して、配列形成されている。マイクロレンズ53は、フォトダイオード層56を基準に所定の視野角に収まるように入射した光の進行角度を制御する視野角制御層の一例である。
【0044】
なお、中間層57は、例えばカラーフィルタ層等のような波長選択層、中間層の表面上を平坦にするための平坦化層等である。
【0045】
このような固体撮像装置51は、フォトダイオード層56と、このフォトダイオード層56に光を集光するためのマイクロレンズ53と、を含む画素54を複数個有している。固体撮像装置51において、複数の画素54を所定の間隔で配列することによりセンサ部が構成されている。
【0046】
このようなデバイス5は、光源32下に配置された状態で載置部52に観察対象を配置し、具体的には、光源32下に配置された状態で載置部52の表面上あるいは内部に観察対象を配置し、このように配置された観察対象を固体撮像装置51において撮影することにより、観察対象を観察することができるものである。なお、ここでは一例として光源32は、観察対象をより詳細に撮影するために設けられた撮影専用の光源であるとして説明するが、例えばデバイス5が配置されるインキュベータ内の光源等であってもよい。
【0047】
図11は、本実施形態に係るデバイスを用いた観察システムを模式的に示す電気ブロック図である。
図11に示す観察システムは、デバイス5のフォトダイオード層56、信号処理回路であるロジック回路部200、および情報処理装置6、表示装置7によって構成される。
【0048】
ロジック回路部200は、デバイス5により得られた電圧信号(raw data)に対して色補正(ホワイトバランス、カラーマトリクス)、ノイズ補正(ノイズリダクション、傷補正)、画質補正(エッジ強調、ガンマ補正)等の所定の信号処理を施し、信号処理された電圧信号を画像信号として出力する。本実施形態においては、デバイス5に、像を結像するためのレンズや拡大縮小を目的とするレンズ等の光学レンズ系を含まないため、ロジック回路部200には、このようなレンズ収差の補正やシェーディング補正するための補正回路は含まれていない。
【0049】
ここでは一例として、ロジック回路部200は、固体撮像装置51とは別基板に設けられた、固体撮像装置51とは別部品あるものとして説明したが、これに限ったものではない。例えば画素54が配列された領域であるセンサ部の周囲の半導体基板55に設けることによって固体撮像装置51に内蔵させてもよい。
【0050】
次に、情報処理装置6はロジック回路部200から通信モジュール17を介して画像信号を受信する。表示装置7は、例えばディスプレイ装置であり、この画像信号に基づいて観察対象の画像を形成し、表示する。表示装置7は、載置部材21の内底に配置された観察対象の全体を一度に表示することができる。
【0051】
図12は、デバイスの載置部の上方に観察対象が配置された様子を示す上面図である。
図12では、載置部材21の内底に配置された観察対象物81(例えば細胞)が配置されたものとする。本実施例においては、例えば画素54の間隔Pが1μm、マイクロレンズ53の視野角θが10deg、固体撮像装置51内に1000個×1000個の画素54が形成された10Mセンサを有するデバイス50の載置部52の上方、すなわち載置部材の内底に、1000μmの観察対象物81が配置されたものとする。なお、
図12においては、固体撮像装置51内に配置される画素54の数については省略している。また、
図12に示すセンサ部52は、この周囲に設けられたワイヤー83により、例えばロジック回路部200が設けられた基板84に電気的に接続されている。
【0052】
図13は、取得される顕微画像と、温度、湿度、二酸化炭素濃度の時系列変化を表す模式図である。
図13において、横軸が時間で縦軸が温度、湿度または二酸化炭素濃度の値を示す。このように時系列で、温度、湿度、二酸化炭素濃度等の環境情報だけでなく、顕微画像が得られる。
【0053】
なお、センサデバイスは、特許文献2の蛍光検出器の構成を含むように構成して、例えば
図14のように構成されてもよい。
図14は、第2の実施形態の変形例に係るセンサデバイスの概略縦断面図である。
図14に示すように、載置部材21には一例として略円状の空洞が設けられている。透明部材23は、載置部材21の空洞を覆うように載置部材21の裏面に固定されており、光を透過させるものであり、例えばガラスである。例えば透明部材23の上に観察対象物Tが載置される。観察対象物Tは、例えば細胞である。
【0054】
図14において、センサデバイス1cは、観察対象物Tは光源からの励起光によって散乱された散乱光L2を検出(いわゆる透過光観察)してもよいし、観察対象物Tに蛍光物質が含まれている場合には、励起光L1によって励起されて発する蛍光L2を検出(いわゆる蛍光観察)してもよい。透過光観察する場合には、後述するフィルタ25がなくてよい。以下、蛍光観察する場合の構成について説明する。
【0055】
図14に示すように、センサデバイス1cは、デバイス5cを備える。このデバイス5cは、第1の光学系24と、フィルタ25と、第2の光学系26と、半導体基板55と、半導体基板55の上面に設けられた複数のフォトダイオード層56とを備える。複数のフォトダイオード層56が設けられた半導体基板55の表面上には、中間層57が設けられており、中間層57の表面上には、複数のマイクロレンズ53が、配列された複数のフォトダイオード層56の位置に対応して、配列形成されている。本実施形態においては、例えばフォトダイオード層56が受光部となるが、受光部は、入射される光を受光して光電変換することができる光電変換素子であればよく、必ずしもフォトダイオード層56である必要はない。
【0056】
透過光観察の場合、観察対象物Tは光源からの透過光によって散乱された散乱光L2を発する。第1の光学系24は、散乱光L2と一部の透過光L3を含む複数の光を光制御する。
一方、蛍光観察の場合、観察対象物Tに含まれる蛍光物質は光源からの励起光によって励起され蛍光L2を発する。第1の光学系24は、この蛍光L2と一部の励起光L3を含む複数の光を光制御する。ここで光制御には、光の進行角度の制御(集光を含む)、導光またはこれらの組み合わせである。本実施形態では導光の例について説明する。一部の励起光L3は、観察対象の周りを通過した光である。
【0057】
一態様における第1の光学系24は、複数のセルフォックレンズ241を有し、当該複数のセルフォックレンズ241により複数の光を導光する。この構成によれば、セルフォックレンズ241で導光することにより、球面レンズと異なりレンズの多層化が不要で、コンパクト化、低コスト化が可能となり、全幅にわたり均等な像と光量を得ることができる。
【0058】
一態様における第1の光学系24は、第1の光学系24の観察対象物側の端部と観察対象物Tとの間の距離が設定距離(例えば、1mm)以上離れるように、第1の光学系24の観察対象側の焦点距離が設定されている。ここでは、具体的にはセルフォックレンズ241の観察対象物側の端部と観察対象物Tとの間の距離が設定距離(例えば、1mm)以上離れるように、セルフォックレンズ241の観察対象物側の焦点距離が設定されている。
【0059】
この構成によれば、観察対象物Tが垂直方向に厚みがあったとしても、手動または機械的にデバイス5c全体を設定距離(例えば、1mm)の範囲で光電変換素子9の入射面に対して略垂直方向(
図14のz方向)に移動させることができるので、観察対象Tの厚み方向に観察することができる。
【0060】
フィルタ25は、第1の光学系24によって光制御された複数の光のうち、励起光の波長帯域の光の強度を低減する。本実施形態に係るフィルタ25は一例として光学特性に入射角度依存性があり、例えば誘電体多層膜フィルタである。ここで光学特性の入射角度依存性は例えば、入射光の入射角度の増加に伴い透過帯が短波長側に移動する特性である。ここで入射光の入射角度は、入射光とフィルタ25の法線とがなす角度である。また誘電体多層膜フィルタは、基板表面にフィルタとして機能する誘電体多層膜を蒸着したタイプである。誘電体多層膜フィルタは、光の干渉効果により波長を選択的に取り出すことができる。分光透過特性のグラフにおいて、パス/カットの急激な立ち上がり(或いは立ち下がり)を示すのが誘電体多層膜フィルタの特長である。
【0061】
なおフィルタ25は、電気的または機械的に透過、吸収、反射のうち少なくとも一つの波長特性が制御可能であってもよい。例えばフィルタ25は液晶チューナブル、またはファブリペローである。液晶チューナブルは電気的に透過波長を変更することが可能であり、ファブリペローは機械的に透過波長を変更することが可能である。
【0062】
第2の光学系26は、フィルタ25を通過した後の複数の光を光制御する。なお、第2の光学系26は、光の進行角度の制御(集光を含む)あるいは導光を組み合わせて実現してもよい。本実施形態では導光の例について説明する。フォトダイオード層56は第2の光学系26によって光制御された複数の光を電気に変換する。
【0063】
駆動部58は、デバイス5c全体を垂直方向(
図1のz方向)に移動させるものである。すなわち、駆動部58は、第1の光学系24、フィルタ25、第2の光学系26及びフォトダイオード層56を、それぞれの相対位置関係を保ったままフォトダイオード層56の入射面に対して略垂直方向に移動させる。駆動部58は例えばカメラフォーカス用に用いられているアクチュエータであってもよいし、ボイスコイル方式であってもよいし、ピエゾ方式であってもよいし、人工筋肉方式であってもよい。
【0064】
<第3の実施形態>
第3の実施形態では、マルチウェルプレートを対象としており、複数の光源が設けられ、センサデバイスが複数のデバイス5を備える点が異なっている。ここではマルチウェルプレートの一例として6つのウェルを有するマルチウェルディッシュを対象として説明する。
図15は、第3の実施形態に係るセンサデバイスの概略斜視図である。
図15に示すように、マルチウェルプレート121の下にセンサデバイス1dが設けられる。
【0065】
センサデバイス1dには、切り欠きが形成されている基板71と、基板71に形成された切り欠きに設けられた複数の光電変換素子を含むデバイス5とを備える。デバイス5それぞれは、マルチウェルプレートに設けられたウェルそれぞれに対応する水平位置に設けられている。
【0066】
基板71には、マルチウェルプレート121の両端を挟んで支持するための支持部材72、73が設けられている。支持部材72、73の一方または両方は例えば弾性体(例えばゴム、具体的には例えばシリコンゴムなど)であってもよい。また支持部材72、73全体が弾性体であってもよいし、支持部材72、73の基板71側が弾性体であってもよい。
【0067】
基板71の下側に筐体10dが設けられている。筐体10dの裏面には基板15が固定されている。基板15の下方側の面(裏面ともいう)に、周囲の環境情報(例えば、温度、湿度、または二酸化炭素濃度など)を検出するセンサ16と、センサ16によって検出された環境情報を送信する通信モジュール17が固定されて設けられている。更に、基板15の下方側の面(裏面)には、光電変換素子で得られた画像信号に対して信号処理を施すロジック回路部200が固定されて設けられている。
【0068】
筐体10dには、デバイス5及び/またはセンサ16のオンオフを切り替えるベース側スイッチ75が設けられていてもよい。
また例えば、筐体10dには、センサ16、通信モジュール17及びロジック回路部200に電力を供給する電源76(例えば、電池またはバッテリー)が設けられていてもよい。また、センサデバイス1dは電源76の代わりに商用電源に接続されていてもよい。
【0069】
デバイス5それぞれが対応するウェルの対象観察物を観測する。これにより、複数のデバイス5で、異なるウェルの対象観察物(例えば、細胞)を同時に比較できるメリットがある。例えば対象薬剤の効果を試す実験において、一方のウェルは比較(Control)のために対象薬剤投与せず、他方のウェルは対象薬剤を投与したものを比較することができる。
【0070】
照明デバイス3bは、プレートカバー122の上に設けられる。照明デバイス3bは、基板31bと、6つの光源32を備える。光源32は例えばLEDである。
図15に示すように、基板31bのプレートカバー122側の面側において、基板31bに設けられた窪みに光源32が埋め込まれて固定されていてもよい。これにより、基板31bをプレートカバー122の上に置いたときに、光源32によって基板31bがプレートカバー122の表面から浮くことを防止することができる。
【0071】
照明デバイス3bは例えば、カバー通信モジュール33、プロセッサ34、カバー側スイッチ35を備える。照明デバイス3bには例えば、電源36(例えば、電池またはバッテリー)が設けられていてもよく、電源36は、光源32、カバー通信モジュール33、プロセッサ34に電力を供給する。電源36が電池の場合にはボタン電池であってもよい。なお、照明デバイス3bは電源36の代わりに商用電源に接続されていてもよい。
【0072】
電源76(例えば、電池またはバッテリー)のもちを伸ばすために、一定間隔で撮影するタイミングで、通信モジュール17からLED点灯指令信号をカバー通信モジュール33へ有線または無線で送信して、光源32(LED)を点灯させるようにプロセッサ34がカバー側スイッチ35をオンしてもよい。
【0073】
なお、点灯している間だけベース側スイッチ75をオンしてデバイス5及び環境センサに電力を供給し、画像及び環境情報(例えば湿度、温度等)を取得してもよい。これにより、撮影するときだけ、光源32(例えばLED)、デバイス5及びセンサ16に電力を供給するので、消費電力を抑えることができる。
【0074】
また通信モジュール17は、取得された画像及び環境情報を、情報処理装置6へ無線送信してもよい。これにより、インキュベータ内にマルチウェルプレートをおいたまま、リアルタイムで細胞を観察(監視)することができる。遠くに離れた場所(例えば居室、家)でも細胞の様子を監視することができる。なお、センサデバイス1dはメモリを備えてもよく、画像及び環境情報は、このメモリ(図示せず)に格納されてもよい。
【0075】
以上、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1、1b、1c、1d センサデバイス
10、10b、10d 筐体
100 インキュベータ
11 底板
121 マルチウェルプレート
122 プレートカバー
12a~12f 柱部材
14 天板
15 基板
16 センサ
161 底板
162 天板
163 センサ本体
1631 検出面
164a 羽根部材
165a 羽根部材
17 通信モジュール
18 側板
19 貫通孔
2 シャーレ
20 取付部材
200 ロジック回路部
21 載置部材
22 シャーレカバー
23 透明部材
24 第1の光学系
241 セルフォックレンズ
25 フィルタ
26 第2の光学系
3、3b 照明デバイス
31、31b 基板
32 光源
33 カバー通信モジュール
34 プロセッサ
35 カバー側スイッチ
36 電源
4 基板
5、5c デバイス
51 固体撮像装置
52 載置部
53 マイクロレンズ
54 画素
55 半導体基板
56 フォトダイオード層
57 中間層
58 駆動部
【手続補正書】
【提出日】2023-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキュベータ内で使用されるセンサデバイスであって、
周囲の環境情報を検出するセンサと、
センサが設けられた基板と、
前記センサによって検出された環境情報を送信する通信モジュールと、
培養用容器内の観察対象物を下から撮像可能なように設けられた光電変換素子と、
を備え、
前記通信モジュールは、前記環境情報に加えて更に前記光電変換素子で得られた画像信号を送信する
センサデバイス。
【請求項2】
前記センサは筐体に少なくとも一部が覆われており
前記筐体の少なくとも一面のパネルには、複数の開口が形成されるように、少なくとも一つの羽根部材が設けられている
請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項3】
前記センサの検出面が横向きまたは下方に向くように当該センサが前記基板に設置されている
請求項1または2に記載のセンサデバイス。
【請求項4】
前記基板及び前記センサを収容する筐体を更に備え、
前記筐体は、前記光電変換素子の下方に設けられている
請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項5】
前記光電変換素子で得られた画像信号に対して信号処理を施すロジック回路部を備え、
前記ロジック回路部は、前記筐体の内天面側の面とは反対の前記基板の面に設けられている
請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項6】
筐体を備え、
前記基板は、前記筐体の内天面に固定されており、
前記センサは、前記筐体の内天面側の面とは反対の前記基板の面に設けられている
請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項7】
前記通信モジュールは、前記筐体の内天面側の面とは反対の前記基板の面に設けられている
請求項6に記載のセンサデバイス。
【請求項8】
対象物に対して取り外し可能に取り付けるための取付部材を備える
請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項9】
前記環境情報は、温度、湿度または二酸化炭素濃度のうち少なくとも一つである
請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項10】
インキュベータ内で使用される、請求項1に記載の複数のセンサデバイスと、
複数の前記センサデバイスによって検出された環境情報を取得する情報処理装置と、
を備えるセンシングシステム。
【請求項11】
複数の前記センサそれぞれは、当該センサの検出面が横向きまたは下向きに向くように設置されている
請求項10に記載のセンシングシステム。