(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067425
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】跨線構造物のメンテナンス方法、作業床構造及び床板セット
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20240510BHJP
E01D 18/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D18/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177484
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511080638
【氏名又は名称】株式会社日本コンポジット工業
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野村 英一
(72)【発明者】
【氏名】良川 一斗
(72)【発明者】
【氏名】西垣 隆士
(72)【発明者】
【氏名】小川 直也
(72)【発明者】
【氏名】栗崎 智之
(72)【発明者】
【氏名】高田 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真也
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059BB03
2D059EE03
2D059EE10
2D059GG39
(57)【要約】
【課題】メンテナンス工期の短縮及び省力化が可能な跨線構造物のメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】本開示は、鉄道の軌道を跨ぐ跨線構造物のメンテナンス方法である。跨線構造物のメンテナンス方法は、軌道の上り線及び下り線を跨ぐように同一形状の複数の床板を配置する工程を備える。配置する工程では、上り線と下り線との間に配置された中央受台に複数の床板の第1端部を配置すると共に、上り線の幅方向外側に配置された上り側受台に複数の床板の第2端部を配置することで上り線側の作業床を形成し、中央受台に複数の床板の第1端部を配置すると共に、下り線の幅方向外側に配置された下り側受台に複数の床板の第2端部を配置することで下り線側の作業床を形成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道の軌道を跨ぐ跨線構造物のメンテナンス方法であって、
前記軌道の上り線及び下り線それぞれのレールを跨ぐように同一形状の複数の床板を配置する工程と、
配置された前記複数の床板の上に高所作業車を設置する工程と、
を備え、
前記配置する工程では、前記上り線と前記下り線との間に配置された中央受台に前記複数の床板それぞれの第1端部を配置すると共に、前記上り線の幅方向外側に配置された上り側受台に前記複数の床板それぞれの第2端部を配置することで上り線側の作業床を形成し、前記中央受台に前記複数の床板それぞれの前記第1端部を配置すると共に、前記下り線の幅方向外側に配置された下り側受台に前記複数の床板それぞれの前記第2端部を配置することで下り線側の作業床を形成する、跨線構造物のメンテナンス方法。
【請求項2】
請求項1に記載の跨線構造物のメンテナンス方法であって、
前記配置する工程では、前記複数の床板と前記レールとの間に上下方向の隙間が設けられるように前記複数の床板が配置される、跨線構造物のメンテナンス方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の跨線構造物のメンテナンス方法であって、
前記複数の床板の前記軌道の幅方向における長さは、前記軌道における前記上り線の中心線と前記下り線の中心線との距離と等しい、跨線構造物のメンテナンス方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の跨線構造物のメンテナンス方法であって、
前記複数の床板は、非導電性繊維を含む繊維強化プラスチックで構成される、跨線構造物のメンテナンス方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の跨線構造物のメンテナンス方法であって、
前記配置する工程では、前記軌道のカントを補正するための調整材を前記レールと前記複数の床板との間に配置する、跨線構造物のメンテナンス方法。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の跨線構造物のメンテナンス方法であって、
前記複数の床板は、
平坦な上面と、
上方に凹んだ凹部を有する下面と、
を有する、跨線構造物のメンテナンス方法。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の跨線構造物のメンテナンス方法であって、
前記複数の床板は、
上板及び下板と、
前記上板と前記下板との間の空間を囲う側板と、
前記上板と前記下板とを連結するリブと、
を有し、
前記リブは、
前記上板に接触する第1フランジと、
前記下板に接触する第2フランジと、
前記第1フランジと前記第2フランジとを連結するウェブと、
を有する、跨線構造物のメンテナンス方法。
【請求項8】
請求項7に記載の跨線構造物のメンテナンス方法であって、
前記下板は、前記中央受台、前記上り側受台及び前記下り側受台と重ならない領域に配置された少なくとも1つの第1空気穴を有し、
前記リブは、前記ウェブを貫通する少なくとも1つの第2空気穴を有する、跨線構造物のメンテナンス方法。
【請求項9】
請求項7に記載の跨線構造物のメンテナンス方法であって、
前記上板の厚みは、前記下板の厚みよりも大きい、跨線構造物のメンテナンス方法。
【請求項10】
鉄道の軌道を跨ぐ跨線構造物をメンテナンスするための作業床構造であって、
前記軌道の上り線及び下り線それぞれのレールを跨ぐように配置された同一形状の複数の床板と、
前記上り線と前記下り線との間に配置された中央受台と、
前記上り線の幅方向外側に配置された上り側受台と、
前記下り線の幅方向外側に配置された下り側受台と、
を備え、
前記複数の床板は、第1端部が前記中央受台に配置されると共に、第2端部が前記上り側受台又は前記下り側受台に配置される、作業床構造。
【請求項11】
鉄道の軌道を跨ぐ跨線構造物をメンテナンスするための作業床構造を構成する床板セットであって、
前記軌道の上り線及び下り線それぞれのレールを跨ぐように配置可能な同一形状の複数の床板を備え、
前記複数の床板は、第1端部が前記上り線と前記下り線との間に配置された中央受台に配置されると共に、第2端部が前記上り線の幅方向外側に配置された上り側受台又は前記下り線の幅方向外側に配置された下り側受台に配置されるように構成される、床板セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、跨線構造物のメンテナンス方法、作業床構造及び床板セットに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道路線には、軌道の上を立体的に跨ぐ跨線構造物が設けられた区間が存在する(特許文献1参照)。このような跨線構造物は、定期的な点検及び補修が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
跨線橋などの跨線構造物のメンテナンス方法としては、軌道の上にパイプ、板材等で立体的な足場を組み上げる方法がある。しかし、跨線構造物のメンテナンスは、路線を閉鎖している限られた時間内に行う必要があるため、このような足場の組立及び解体の時間によって実作業時間に制限がかかる。そのため、1つの跨線構造物におけるメンテナンス工期が長くなる。また、足場の組立及び解体には、多くの部品と熟練技術とを要し、省力化が難しい。
【0005】
本開示の一局面は、メンテナンス工期の短縮及び省力化が可能な跨線構造物のメンテナンス方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、鉄道の軌道を跨ぐ跨線構造物のメンテナンス方法である。跨線構造物のメンテナンス方法は、軌道の上り線及び下り線それぞれのレールを跨ぐように同一形状の複数の床板を配置する工程と、配置された複数の床板の上に高所作業車を設置する工程と、を備える。
【0007】
配置する工程では、上り線と下り線との間に配置された中央受台に複数の床板それぞれの第1端部を配置すると共に、上り線の幅方向外側に配置された上り側受台に複数の床板それぞれの第2端部を配置することで上り線側の作業床を形成し、中央受台に複数の床板それぞれの第1端部を配置すると共に、下り線の幅方向外側に配置された下り側受台に複数の床板それぞれの第2端部を配置することで下り線側の作業床を形成する。
【0008】
このような構成によれば、複数の床板を軌道の上に配置することで、比較的短時間で高所作業車が走行可能な作業床を構成することができる。そのため、メンテナンス工期を短縮できる。また、同一形状の複数の床板を上り線及び下り線で共通使用することができるため、床板の管理が容易となる。そのため、メンテナンスの省力化を図ることができる。
【0009】
本開示の一態様では、配置する工程では、複数の床板とレールとの間に上下方向の隙間が設けられるように複数の床板が配置されてもよい。このような構成によれば、中央受台と、上り側受台又は下り側受台との間の高低差を、床板とレールとの隙間によって吸収できる。
【0010】
本開示の一態様では、複数の床板の軌道の幅方向における長さは、軌道における上り線の中心線と下り線の中心線との距離と等しくてもよい。このような構成によれば、床板の端部の向きを気にすることなく、上り線及び下り線に床板を配置することができる。そのため、メンテナンス工期の短縮及び省力化が促進される。
【0011】
本開示の一態様では、複数の床板は、非導電性繊維を含む繊維強化プラスチックで構成されてもよい。このような構成によれば、床板を軽量化できる。また、床板が絶縁体となるため、レールとの接触による短絡を避けることができる。
【0012】
本開示の一態様では、配置する工程では、軌道のカントを補正するための調整材をレールと複数の床板との間に配置してもよい。このような構成によれば、カントが設けられた軌道上に高所作業車が走行可能な作業床を形成することができる。そのため、直線区間とカント区間とで床板を共通使用できるため、メンテンナンスコストが低減できる。
【0013】
本開示の一態様では、複数の床板は、平坦な上面と、上方に凹んだ凹部を有する下面と、を有してもよい。このような構成によれば、床板と2つのレール間にある支障物(例えば脱線防止ガード)との干渉を防ぐことができる。
【0014】
本開示の一態様では、複数の床板は、上板及び下板と、上板と下板との間の空間を囲う側板と、上板と下板とを連結するリブと、を有してもよい。リブは、上板に接触する第1フランジと、下板に接触する第2フランジと、第1フランジと第2フランジとを連結するウェブと、を有してもよい。このような構成によれば、床板を軽量化することができる。そのため、床板の配置及び撤去の負荷を低減できる。
【0015】
本開示の一態様では、下板は、中央受台、上り側受台及び下り側受台と重ならない領域に配置された少なくとも1つの第1空気穴を有してもよい。リブは、ウェブを貫通する少なくとも1つの第2空気穴を有してもよい。このような構成によれば、床板の内部空気の温度差による膨張及び収縮に起因する、床板の膨れ及び凹みを抑制できる。
【0016】
本開示の一態様では、上板の厚みは、下板の厚みよりも大きくてもよい。このような構成によれば、高所作業車を搬出する機器(例えば門型フレーム)の荷重による上板の破損を抑制できる。
【0017】
本開示の別の一態様は、鉄道の軌道を跨ぐ跨線構造物をメンテナンスするための作業床構造である。作業床構造は、軌道の上り線及び下り線それぞれのレールを跨ぐように配置された同一形状の複数の床板と、上り線と下り線との間に配置された中央受台と、上り線の幅方向外側に配置された上り側受台と、下り線の幅方向外側に配置された下り側受台と、を備える。複数の床板は、第1端部が中央受台に配置されると共に、第2端部が上り側受台又は下り側受台に配置される。
【0018】
本開示の別の一態様は、鉄道の軌道を跨ぐ跨線構造物をメンテナンスするための作業床構造を構成する床板セットである。床板セットは、軌道の上り線及び下り線それぞれのレールを跨ぐように配置可能な同一形状の複数の床板を備える。複数の床板は、第1端部が上り線と下り線との間に配置された中央受台に配置されると共に、第2端部が上り線の幅方向外側に配置された上り側受台又は下り線の幅方向外側に配置された下り側受台に配置されるように構成される。
【0019】
これらのような構成によれば、複数の床板によって比較的短時間で高所作業車が走行可能な作業床を構成することができる。そのため、メンテナンス工期を短縮できる。また、同一形状の複数の床板を上り線及び下り線で共通使用することができるため、床板の管理が容易となり、メンテナンスの省力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態における跨線構造物のメンテナンス方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、路線、跨線構造物及び実施形態における作業床構造を示す模式的な平面図である。
【
図5】
図5Aは、
図2の作業床構造の模式的な正面図であり、
図5Bは、荷重が加わっていない床板とレールとの関係を示す模式図であり、
図5Cは、荷重が加わっている床板とレールとの関係を示す模式図である。
【
図6】
図6Aは、
図2の作業床構造の中央受台の模式的な断面図であり、
図6Bは、
図2の作業床構造の下り側受台の模式的な断面図であり、
図6Cは、
図6Bの下り側受台のストッパの模式的な平面図である。
【
図8】
図8は、
図2の作業床構造における調整材の模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す跨線構造物のメンテナンス方法は、配置工程S10と、高所作業車設置工程S20と、保守作業工程S30と、撤去工程S40とを備える。
【0022】
本実施形態の跨線構造物のメンテナンス方法は、
図2に示すように、鉄道の軌道100を跨ぐように配置された跨線構造物200を対象とする。跨線構造物200は、軌道100の上り線101及び下り線102の双方に上方から重なる跨線橋である。なお、跨線構造物には、トンネル、架空線なども含まれる。
【0023】
<配置工程>
本工程では、
図2に示す作業床構造300を形成する。作業床構造300は、軌道100のうち少なくとも跨線構造物200と重なる部分に設けられる。
【0024】
図3に示すように、作業床構造300は、複数の床板1と、中央受台11と、上り側受台12と、下り側受台13とを備える。作業床構造300は、複数の床板1を備える床板セットを用いて形成される。
【0025】
複数の床板1は、上り線101の2つのレール101A及び下り線102の2つのレール102Aのいずれかを跨ぐように配置されている。複数の床板1は、全て同一形状である。
【0026】
なお、本実施形態では、床板1において、軌道100に配置した際に軌道100の長手方向(つまりレールの延伸方向)と平行となる軸をX軸、軌道100に配置した際に軌道100の幅方向(つまり枕木の延伸方向)と平行となる軸をY軸、軌道100に配置した際に鉛直方向と平行となる軸をZ軸とする。
【0027】
図4Aに示すように、各床板1は、帯板状の部材である。床板1は、Y軸に沿った長さがX軸に沿った長さよりも大きい。また、床板1は、長手方向において床板1を2等分する中心線を対称軸とする線対称形状である。つまり、床板1をZ軸と平行な回転軸の周りに180°回転させた形状は、回転させる前の床板1の形状に一致する。
【0028】
床板1は、非導電性繊維を含む繊維強化プラスチックで構成された複数の板材を連結することで構成されている。非導電性繊維としては、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維等が挙げられる。床板1の上面には、滑り止めの凹凸加工が施されている。また、床板1の上面は、ブラスト処理によって粗面化されてもよい。床板1は、第1端部2と、第2端部3と、凹部4と、複数の切り欠き5(
図4B参照)とを有する。
【0029】
第1端部2及び第2端部3は、床板1の長手方向(つまりY軸と平行な方向)における端部である。本実施形態では、第1端部2の形状と第2端部3の形状とは同じである。凹部4は、床板1の下面の一部が上方に向かって凹んだ部位である。凹部4は、床板1の長手方向における中央部分に設けられている。
【0030】
図4Bに示すように、複数の切り欠き5は、第1端部2において、X軸と平行な端縁と、Y軸と平行な端縁とにそれぞれ設けられている。同様に、複数の切り欠き5は、第2端部3においても、X軸と平行な端縁と、Y軸と平行な端縁とにそれぞれ設けられている。
【0031】
複数の切り欠き5は、床板1の内側に向かって凹んだ部位で構成されている。床板1を軌道100上に配置する際に作業員が複数の切り欠き5に手をかけることで、隣接する床板1との間、又は受台との間で指を挟むことが抑制できる。なお、切り欠き5は、X軸と平行な端縁のみに設けられてもよいし、Y軸と平行な端縁のみに設けられてもよい。
【0032】
図5Aに示すように、上り線101の上に配置される床板1は、中央受台11と上り側受台12とに支持され、上り線101の2つのレール101A及び2つの脱線防止ガード101Bを覆うように配置される。
【0033】
下り線102の上に配置される床板1は、中央受台11と下り側受台13とに支持され、下り線102の2つのレール102A及び2つの脱線防止ガード102Bを覆うように配置される。
【0034】
上り線101及び下り線102それぞれにおいて、2つの脱線防止ガード101B,102Bは、2つのレール101A,102Aの内側に配置されている。また、脱線防止ガード101B,102Bの上面は、レール101A,102Aの頂面よりも上方に位置する。
【0035】
床板1は、凹部4が上下方向において脱線防止ガード101B,102Bと重なるように配置される。凹部4は、レール101A,102Aとは重ならない。
図5Bに示すように、凹部4の角部は、応力集中を抑制するために円弧状に湾曲している。
【0036】
図5Bに示すように、床板1に上方から荷重が加わっていない状態(つまり、高所作業車が載っていない状態)では、床板1は、レール101A,102Aに接触しない。つまり、床板1とレール101A,102Aとの間には上下方向の隙間が存在する。そのため、高所作業車による荷重を受けて初めて床板1がレール101A,102Aに接触する。これにより、メンテナンス作業中に床板1の端部が浮くことが抑制される。
【0037】
図5Cに示すように、床板1に上方から荷重が加わると、床板1の中央部分が下方に撓むことで床板1がレール101A,102Aに接触する。これにより、床板1がレール101A,102Aによって支持される。なお、床板1がレール101A,102Aに接触した状態でも、床板1は脱線防止ガード101B,102Bには接触しない。
【0038】
図5Aに示すように、床板1の軌道100の幅方向における長さL(つまりX軸に沿った長さ)は、軌道100における上り線101の中心線C1と下り線102の中心線C2との距離D(つまり軌道100の中心線間距離)と等しい。
【0039】
床板1を保持する中央受台11、上り側受台12及び下り側受台13は、軌道100に沿って配置されている。これらの受台は、建築限界外に配置されており、メンテナンス時に設置及び撤去がされない恒常的設備である。
【0040】
中央受台11は、上り線101と下り線102との間に配置されている。具体的には、中央受台11は、上り線101の中心線C1及び下り線102の中心線C2からの距離が等しくなる位置に配置されている。中央受台11は、上り線101に配置される床板1と、下り線102に配置される床板1とで共有される。
【0041】
上り側受台12は、上り線101の幅方向外側に配置されている。下り側受台13は、下り線102の幅方向外側に配置されている。上り側受台12と中央受台11との距離は、下り側受台13と中央受台11との距離と等しい。
【0042】
図6Aに示すように、中央受台11は、基部11Aと、受容部11Bとを有する。基部11Aは、2つの床板1それぞれの第1端部2を支持する上面を有する。基部11Aは、例えば鋼管等によって構成される。
【0043】
受容部11Bは、基部11Aの上面から上方に突出している。受容部11Bは、床板1の第1端部2がY軸に沿って挿入可能な凹部を軌道100の幅方向両側に有する。受容部11Bは、例えば汎用のH型鋼で構成することができる。
【0044】
図6Bに示すように、下り側受台13は、基部13Aと、ストッパ13Bと、ボルト13Cとを有する。基部13Aは、床板1の第2端部3を支持する上面を有する。基部13Aは、例えば鋼管等によって構成される。
【0045】
ストッパ13Bは、基部13Aの上面にボルト13Cによって取り付けられている。ストッパ13Bは、軌道100の幅方向において第2端部3と対向する側壁と、側壁を支持すると共に基部13Aに取り付けられる底壁とを有する。ストッパ13Bは、例えば汎用のL型鋼で構成することができる。
【0046】
図6Cに示すように、ストッパ13Bは、軌道100の長手方向に沿って並置された複数のスリット孔13Dを有する。スリット孔13Dは、軌道100の幅方向に延伸する長孔である。ボルト13Cは、スリット孔13Dに挿通されている。
【0047】
ストッパ13Bは、スリット孔13Dによってボルト13C及び基部13Aに対して軌道100の幅方向にスライド可能に構成されている。そのため、床板1の第2端部3の位置に合わせてストッパ13Bの位置を調整することで、床板1の軌道100の幅方向(つまり床板1の長手方向)の移動を抑制できる。
【0048】
図5Aに示すように、上り側受台12は、下り側受台13を反転したものであり、下り側受台13と同じ構成及び機能を有する。
【0049】
以下、作業床構造300の形成手順について説明する。配置工程S10では、軌道100の上り線101及び下り線102それぞれのレールを跨ぐように同一形状の複数の床板1を配置する。本工程では、複数の床板1とレール101A,102Aとの間に上下方向の隙間が設けられるように複数の床板1が配置される。
【0050】
図1に示すように、本工程は、上り側作業床形成工程S11と、下り側作業床形成工程S12とを有する。これらの工程の順序は問われない。また、これらの工程は交互に繰り返されてもよい。
【0051】
上り側作業床形成工程S11では、中央受台11に複数の床板1それぞれの第1端部2を配置すると共に、上り側受台12に複数の床板1それぞれの第2端部3を配置することで上り線101側の(つまり上り線101の上に配置された)作業床を形成する。
【0052】
下り側作業床形成工程S12では、中央受台11に複数の床板1それぞれの第1端部2を配置すると共に、下り側受台13に複数の床板1それぞれの第2端部3を配置することで下り線102側の(つまり下り線102の上に配置された)作業床を形成する。
【0053】
以下、下り側作業床形成工程S12の手順について説明するが、上り側作業床形成工程S11における手順も、下り側受台13を上り側受台12に置き換える点を除いて同じである。
【0054】
図7Aに示すように、まず、床板1の第2端部3を第1端部2よりも持ち上げた状態で、第1端部2を中央受台11の受容部11Bの凹部に挿入する。次に、
図7Bに示すように、床板1の第2端部3を下り側受台13に向けて下降させ、基部13Aに載置させる。この時、下り側受台13のストッパ13Bは、第2端部3よりも軌道100の幅方向の外側となる位置(つまり干渉しない位置)に配置されている。
【0055】
第2端部3の載置後、
図7Cに示すように、床板1を中央受台11に向けて移動させることで、第1端部2を中央受台11の受容部11Bに押し当てる。第1端部2が受容部11Bに押し当てられた状態で、
図7Dに示すように、下り側受台13のストッパ13Bを第2端部3に近接させ、ボルト13Cでストッパ13Bの位置を固定する。
【0056】
上り線101及び下り線102それぞれにおいて、これらの手順を複数の床板1に対して繰り返すことで、複数の床板1が軌道100の長手方向に沿って2列で並んで配置される。軌道100に配置された複数の床板1の上面は、作業員及び高所作業車400を支持する床面を構成する。
【0057】
また、軌道100にカントが設けられている場合、
図8に示すように、軌道100のカントを補正するための調整材21をレール102Aと複数の床板1との間に配置する。なお、
図8は、下り線102における調整材21の配置例を示しているが、上り線101においても同様の配置が可能である。
【0058】
調整材21は、作業床構造300の一部を構成する。調整材21は、三角部材21Aと、2つの梁部材21Bと、2つの軌道パッド21Cとを有する。
【0059】
三角部材21Aは、2つのレール102Aの頂面に載置されている。三角部材21Aは、軌道100の幅方向において傾斜の下側に向かって厚みが大きくなっている。三角部材21Aは、2つのレール102Aのいずれかの側面に上方から係合する2つの係合部21Dを有する。
【0060】
2つの梁部材21Bは、三角部材21Aの上面に載置されている。2つの梁部材21Bの厚みは互いに異なっていてもよい。例えば、三角部材21Aの上面が傾斜している場合は、傾斜の下側の梁部材21Bの厚みを傾斜の上側の梁部材21Bの厚みよりも大きくしてもよい。
【0061】
2つの軌道パッド21Cは、2つの梁部材21Bのいずれかの上面に1つずつ載置されている。なお、調整材21は、1つの軌道パッド21Cのみを有してもよい。つまり、軌道パッド21Cは、2つの梁部材21Bのうちどちらか一方のみに載置されてもよい。
【0062】
なお、床板1に上方から荷重が加わっていない状態で、調整材21(つまり梁部材21B又は軌道パッド21C)と床板1との間に空隙が存在するように、調整材21の厚みは設定される。
【0063】
<高所作業車設置工程>
本工程では、配置された複数の床板1(つまり作業床)の上に高所作業車400(
図5A参照)を設置する。
【0064】
高所作業車400としては、作業員が搭乗するカゴと、カゴを上下に移動させるアームと、走行手段とを備える公知の作業車が使用できる。走行手段としては、面圧が分散されるクローラが好ましい。
【0065】
<保守作業工程>
本工程では、作業床上に設置された高所作業車400を使用して、跨線構造物200に対する保守作業(つまり点検及び補修)を行う。
【0066】
<撤去工程>
本工程では、保守作業の完了後、高所作業車400及び複数の床板1を撤去する。具体的には、高所作業車400を作業床から降ろした後、複数の床板1を中央受台11、上り側受台12及び下り側受台13から取り外す。複数の床板1の取り外し手順は、上述した作業床の形成手順の逆である。
【0067】
<床板の詳細>
図9及び
図10に示すように、床板1は、上板6と、下板7と、側板8と、第1リブ9Aと、第2リブ9Bと、第3リブ9Cとを有する。
【0068】
上板6は、平坦な上面を有する。下板7は、上方に凹んだ凹部4を有する。下板7は、中央受台11、上り側受台12及び下り側受台13と重ならない領域に配置された複数の第1空気穴71を有する。本実施形態では、第1空気穴71は、第1リブ9Aと第2リブ9Bとの間、及び第2リブ9Bと第3リブ9Cとの間に配置されている。また、上板6の厚みは、下板7の厚みよりも大きい。
【0069】
側板8は、上板6と下板7との間の空間を囲っている。具体的には、側板8は、下板7の周縁から上方に延伸しており、下板7と一体化されている。側板8は、上板6に下方から重ね合わされた接合部81を有する。
【0070】
第1リブ9A、第2リブ9B、第3リブ9Cは、それぞれ、床板1の内部空間に配置され、上板6と下板7とを上下方向に連結している。
図11に示すように、第1リブ9Aは、第1フランジ91と、第2フランジ92と、ウェブ93と、複数の第2空気穴94と、補助凹部95とを有する。
【0071】
第1フランジ91は、上板6に下方から接触する板状の部位である。第2フランジ92は、下板7に上方から接触する板状の部位である。ウェブ93は、第1フランジ91と第2フランジ92とを上下方向に連結する板状の部位である。第2空気穴94は、ウェブ93を貫通している。本実施形態では、第2空気穴94は、第1フランジ91の長手方向の両端部に1つずつ設けられている。補助凹部95は、下板7の凹部4に重なる部分であり、上方に凹んでいる。
【0072】
第2リブ9B及び第3リブ9Cは、それぞれ、第1リブ9Aと同じ形状を有する。第1リブ9A、第2リブ9B及び第3リブ9Cは、ウェブ93の厚み方向(つまり床板1の幅方向)に並置されている。
【0073】
第1リブ9A、第2リブ9B及び第3リブ9Cの間隔は、高所作業車のクローラの幅に合わせて決定するとよい。これにより、高所作業車が走行する際に上板6のたわみを小さくすることができる。そのため、高所作業車が傾くことが抑制できる。
【0074】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)複数の床板1を軌道100の上に配置することで、比較的短時間で高所作業車400が走行可能な作業床を構成することができる。そのため、メンテナンス工期を短縮できる。また、同一形状の複数の床板1を上り線101及び下り線102で共通使用することができるため、床板1の管理が容易となる。そのため、メンテナンスの省力化を図ることができる。
【0075】
また、車両の通行等によって上り線101及び下り線102のどちらかが閉鎖できない場合には、上り線101及び下り線102の一方のみに床板1を配置して作業を行うことができる。
【0076】
(1b)床板1とレール101A,102Aとの間に上下方向の隙間が設けられるように床板1が配置されることで、中央受台11と、上り側受台12又は下り側受台13との間の高低差を、床板1とレール101A,102Aとの隙間によって吸収できる。
【0077】
(1c)床板1の軌道100の幅方向における長さが上り線101の中心線C1と下り線102の中心線C2との距離と等しいことで、床板1の端部の向きを気にすることなく、上り線101及び下り線102に床板1を配置することができる。そのため、メンテナンス工期の短縮及び省力化が促進される。
【0078】
(1d)床板1が非導電性繊維を含む繊維強化プラスチックで構成されることで、床板1を軽量化できる。また、床板1が絶縁体となるため、レール101A,102Aとの接触による短絡を避けることができる。
【0079】
(1e)軌道100のカントを補正するための調整材21をレール101A,102Aと床板1との間に配置することで、カントが設けられた軌道上に高所作業車400が走行可能な作業床を形成することができる。そのため、直線区間とカント区間とで床板1を共通使用できるため、メンテンナンスコストが低減できる。
【0080】
(1f)床板1の下面が凹部4を有することで、床板1と2つのレール間にある支障物(例えば脱線防止ガード)との干渉を防ぐことができる。
【0081】
(1g)床板1が上板6、下板7、側板8、及びリブ9A,9B,9Cを有することで、床板1を軽量化することができる。そのため、床板1の配置及び撤去の負荷を低減できる。
【0082】
(1h)床板1が第1空気穴71及び第2空気穴94を有することで、床板1の内部空気の温度差による膨張及び収縮に起因する、床板1の膨れ及び凹みを抑制できる。
(1i)床板1の上板6の厚みが下板7の厚みよりも大きいことで、高所作業車を搬出する機器(例えば門型フレーム)の荷重による上板6の破損を抑制できる。
【0083】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0084】
(2a)上記実施形態の跨線構造物のメンテナンス方法において、必ずしも床板とレールとの間に上下方向の隙間が設けられなくてもよい。つまり、床板がレールに接触するように床板が配置されてもよい。
【0085】
(2b)上記実施形態の跨線構造物のメンテナンス方法において、床板の軌道の幅方向における長さは、上り線の中心線と下り線の中心線との距離よりも大きいか、又は小さくてもよい。また、床板は、必ずしも長手方向において対称形状でなくてもよい。例えば、床板の第1端部の形状と第2端部の形状とが異なっていてもよい。
【0086】
(2c)上記実施形態の跨線構造物のメンテナンス方法において、床板は必ずしも非導電性繊維を含む繊維強化プラスチックで構成されなくてもよい。例えば、床板は金属材料で構成されてもよい。
【0087】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0088】
1…床板、2…第1端部、3…第2端部、4…凹部、5…切り欠き、6…上板、
7…下板、8…側板、9A,9B,9C…リブ、11…中央受台、11A…基部、
11B…受容部、12…上り側受台、13…下り側受台、13A…基部、
13B…ストッパ、13C…ボルト、13D…スリット孔、21…調整材、
21A…三角部材、21B…梁部材、21C…軌道パッド、21D…係合部、
71…第1空気穴、81…接合部、91…第1フランジ、92…第2フランジ、
93…ウェブ、94…第2空気穴、95…補助凹部、100…軌道、101…上り線、
101A…レール、101B…脱線防止ガード、102…下り線、102A…レール、
102B…脱線防止ガード、200…跨線構造物、300…作業床構造、
400…高所作業車。