(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067426
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】車両用電子制御システム及び車両用電子制御システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20240510BHJP
F02M 25/08 20060101ALI20240510BHJP
G04F 3/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
F02D45/00 345
F02M25/08 Z
G04F3/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177488
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓哉
【テーマコード(参考)】
3G144
3G384
【Fターム(参考)】
3G144BA18
3G144BA22
3G144CA02
3G144DA02
3G144DA03
3G144DA07
3G144FA39
3G144FA40
3G144HA02
3G144HA07
3G144HA09
3G144HA22
3G144HA29
3G384AA01
3G384BA38
3G384DA41
3G384DA42
3G384EB08
3G384ED11
(57)【要約】
【課題】計時手段に故障が発生した場合に、その計時機能を補償する。
【解決手段】IGNSW45のオフ操作後の経過時間を計測可能なRTC130を有し、RTC130により計測された経過時間が設定時間に達したときに起動して第1処理を実施するECU100と、ECU100と通信可能に接続され、IGNSW45のオフ操作後の経過時間を計測可能な計時部230を有するECU200と、を備えた車両用電子制御システムにおいて、RTC130に故障が発生した場合に、ECU200は、計時部230により計測された経過時間に基づいて起動して、ECU100の起動を要求する起動要求信号をECU100へ送信し、ECU100は、RTC130による経過時間の計測を無効にして、起動要求信号の受信に基づいて起動したことを条件に第1処理を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イグニッションスイッチのオフ操作後の経過時間を計測可能な第1計時手段を有し、前記第1計時手段により計測された前記経過時間が第1設定時間に達したときに起動して第1処理を行う第1電子制御装置と、
前記第1電子制御装置と通信可能に接続され、前記経過時間を計測可能な第2計時手段を有する第2電子制御装置と、
を備え、
前記第1計時手段に故障が発生した場合に、前記第2電子制御装置は、前記第2計時手段により計測された前記経過時間に基づいて起動して、前記第1電子制御装置の起動を要求する起動要求信号を前記第1電子制御装置へ送信し、かつ、前記第1電子制御装置は、前記第1計時手段による前記経過時間の計測を無効にして、前記起動要求信号の受信に基づいて起動したことを条件に前記第1処理を行うように構成された、車両用電子制御システム。
【請求項2】
前記第1計時手段に故障が発生した場合に、前記第2電子制御装置は、前記第1電子制御装置から前記第1設定時間に関する情報を受信し、前記第2計時手段により計測された前記経過時間が前記第1設定時間に達したときに起動して、前記起動要求信号を前記第1電子制御装置へ送信し、かつ、前記第1電子制御装置は、前記起動要求信号の受信により起動して前記第1処理を行う、請求項1に記載の車両用電子制御システム。
【請求項3】
前記第2電子制御装置は、前記第2計時手段により計測された前記経過時間が第2設定時間に達したときに起動して第2処理を行うように構成され、
前記第1計時手段に故障が発生した場合に、前記第2電子制御装置は、前記第2計時手段により計測された前記経過時間が前記第2設定時間に達して起動したときに、前記起動要求信号を前記第1電子制御装置へ送信し、かつ、前記第1電子制御装置は、前記起動要求信号の受信により起動したときに、前記第2計時手段の計時データに基づいて、前記イグニッションスイッチのオフ操作から前記第1電子制御装置の起動までの停止時間を算出し、前記停止時間と前記第1設定時間との比較結果に基づいて、前記第1処理を行うか否かを判定する、請求項1に記載の車両用電子制御システム。
【請求項4】
前記第2設定時間は複数設定可能である、請求項3に記載の車両用電子制御システム。
【請求項5】
前記第2電子制御装置と通信可能に接続され、前記経過時間を計測可能な第3計時手段を有する第3電子制御装置をさらに備え、
前記第2電子制御装置は、前記第2計時手段により計測された前記経過時間が前記第1設定時間に達して起動したときに、前記起動要求信号を前記第1電子制御装置へ送信する前に前記第3電子制御装置を起動させ、前記第3計時手段により計測された前記経過時間と前記第1設定時間との差分に基づいて、前記起動要求信号を前記第1電子制御装置へ送信するか否かを判定する、請求項2に記載の車両用電子制御システム。
【請求項6】
前記第2電子制御装置と通信可能に接続され、前記経過時間を計測可能な第3計時手段を有する第3電子制御装置をさらに備え、
前記第2電子制御装置は、前記第2計時手段により計測された前記経過時間が前記第2設定時間に達して起動したときに、前記第3電子制御装置を起動させ、前記第3計時手段により計測された前記経過時間と前記第2設定時間との差分に基づいて、前記第1処理を行うか否かを判定し、その判定結果を前記第1電子制御装置へ送信する、請求項3に記載の車両用電子制御システム。
【請求項7】
前記第1電子制御装置と通信可能に接続され、前記経過時間を計測可能な第3計時手段を有する第3電子制御装置をさらに備え、
前記第1電子制御装置は、前記起動要求信号の受信により起動したときに、前記第3電子制御装置を起動させ、前記第3計時手段により計測された前記経過時間と前記第2設定時間との差分に基づいて、前記第1処理を行うか否かを判定する、請求項3に記載の車両用電子制御システム。
【請求項8】
前記第2電子制御装置と通信可能に接続され、前記経過時間を計測可能な第3計時手段を有する第3電子制御装置をさらに備え、
前記第2電子制御装置は、前記第2計時手段により計測された前記経過時間が前記第2設定時間に達して起動したときに、前記起動要求信号を前記第1電子制御装置へ送信する前に前記第3電子制御装置を起動させ、前記第3計時手段により計測された前記経過時間と前記第2設定時間との差分に基づいて、前記起動要求信号を前記第1電子制御装置へ送信するか否かを判定する、請求項3に記載の車両用電子制御システム。
【請求項9】
前記第1処理は、内燃機関の燃料噴射弁から噴射される燃料を貯留する燃料タンクからの蒸発燃料が流通する蒸発燃料流通系のリーク診断処理であり、前記第1設定時間は、前記イグニッションスイッチのオフ操作から前記燃料タンクの燃料状態が一定となるまでの時間である、請求項1~請求項8のいずれか1つに記載の車両用電子制御システム。
【請求項10】
イグニッションスイッチのオフ操作後の経過時間を計測可能な第1計時手段を有し、前記第1計時手段により計測された前記経過時間が設定時間に達したときに起動して第1処理を行う第1電子制御装置と、
前記第1電子制御装置と通信可能に接続され、前記経過時間を計測可能な第2計時手段を有する第2電子制御装置と、
を備えた車両用電子制御システムの制御方法であって、
前記第1計時手段に故障が発生した場合に、前記第2電子制御装置は、前記第2計時手段により計測された前記経過時間に基づいて起動して、前記第1電子制御装置の起動を要求する起動要求信号を前記第1電子制御装置へ送信し、かつ、前記第1電子制御装置は、前記第1計時手段による前記経過時間の計測を無効にして、前記起動要求信号の受信に基づいて起動したことを条件に前記第1処理を行う、車両用電子制御システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの電子制御装置を含む車両用電子制御システム、及び、当該車両用電子制御システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において2つの電子制御装置が、それぞれイグニッションスイッチのオフ操作後の経過時間を計測する計時手段を有し、2つの計時手段の計時データを照らし合わせて、計時手段の故障を検出するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、計時手段の故障を検出できても、その計時機能を補償できなければ、例えば燃料供給経路における蒸発燃料のリーク診断等、イグニッションスイッチのオフ操作後に所定のタイミングで起動して所定の制御処理を実施することが困難となる。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、イグニッションスイッチのオフ操作後の経過時間を計時する計時手段が故障した場合でも、その計時機能を補償可能な車両用電子制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明に係る車両用電子制御システムは、イグニッションスイッチのオフ操作後の経過時間を計測可能な第1計時手段を有し、第1計時手段により計測された上記経過時間が第1設定時間に達したときに起動して第1処理を行う第1電子制御装置と、第1電子制御装置と通信可能に接続され、上記経過時間を計測可能な第2計時手段を有する第2電子制御装置と、を備え、第1計時手段に故障が発生した場合に、第2電子制御装置は、第2計時手段により計測された上記経過時間に基づいて起動して、第1電子制御装置の起動を要求する起動要求信号を第1電子制御装置へ送信し、かつ、第1電子制御装置は、第1計時手段による上記経過時間の計測を無効にして、上記起動要求信号の受信に基づいて起動したことを条件に第1処理を行うように構成されている。
【0007】
また、本発明に係る車両用電子制御システムの制御方法は、イグニッションスイッチのオフ操作後の経過時間を計測可能な第1計時手段を有し、第1計時手段により計測された上記経過時間が第1設定時間に達したときに起動して第1処理を実施する第1電子制御装置と、第1電子制御装置と通信可能に接続され、上記経過時間を計測可能な第2計時手段を有する第2電子制御装置と、を備えた車両用電子制御システムの制御方法であり、第1計時手段に故障が発生した場合に、第2電子制御装置は、第2計時手段により計測された上記経過時間に基づいて起動して、第1電子制御装置の起動を要求する起動要求信号を第1電子制御装置へ送信し、かつ、第1電子制御装置は、第1計時手段による上記経過時間の計測を無効にして、上記起動要求信号の受信に基づいて起動したことを条件に第1処理を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用電子制御システム及びその制御方法によれば、イグニッションスイッチのオフ操作後の経過時間を計時する計時手段が故障した場合でも、その計時機能を補償することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の車両用電子制御システムの適用例を示す構成図である。
【
図2】同実施形態の車両用電子制御システムの一例を示す構成図である。
【
図3】同実施形態で計時手段正常時のECU動作例を示すタイムチャートである。
【
図4】同実施形態で計時手段故障時のECU動作例を示すタイムチャートである。
【
図5】同実施形態の第1事前処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】同実施形態の基本処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】同実施形態の計時機能補償処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態の第1事前処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】同実施形態の基本処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】同実施形態の計時機能補償処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】第3実施形態の車両用電子制御システムの一例を示す構成図である。
【
図12】同実施形態の第1例に係る計時機能補償処理を示すフローチャートである。
【
図13】同実施形態の第1例に係る並行計時処理を示すフローチャートである。
【
図14】同実施形態の第2例に係る基本処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】同実施形態の第2例に係る計時機能補償処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る車両用電子制御システムが適用される車両装置の一例を模式的に示す。図中の車両装置は、車両に搭載された多気筒のガソリンエンジンである内燃機関1及びこれに関連する装置である。
【0012】
〔内燃機関〕
内燃機関1の吸気は、電制スロットル弁2が配置された吸気管3とこれに接続された各気筒の吸気ポート4とを介して、吸気ポート4に配置された吸気バルブ5の開弁期間中に車両外部から各気筒の燃焼室6へ流入する。また、内燃機関1には、吸気管3、吸気ポート4ないし燃焼室6へ燃料(ガソリン)を噴射する燃料噴射弁7が気筒毎に配置され、燃料噴射弁7から噴射された燃料は吸気と混合して、燃焼室6内に混合気が形成される。
【0013】
燃焼室6内に形成された混合気は、吸気バルブ5と排気ポート8に配置された排気バルブ9とが閉弁する閉弁期間中に、燃焼室6に臨む点火プラグ10の火花点火によって着火燃焼する。これにより生成された燃焼排気は、排気ポート8とこれに接続された排気管11とを介して、排気バルブ9の開弁期間中に外部へ排出される。燃焼圧力によるピストン12の往復動は、ピストン12と連結されたクランク軸13によって回転運動に変換された後、内燃機関1の出力として図示省略の車輪へ伝達される。
【0014】
電制スロットル弁2、燃料噴射弁7及び点火プラグ10は、マイクロコンピュータを内蔵したエンジン・コントロール・モジュール(以下、「ECM」という)14によって制御される。ECM14は、各種センサの出力信号を入力し、これらの出力信号に基づいて演算処理を行う。各種センサとして、電制スロットル弁2の上流側で吸気量を計測するエアフローメータ(AFM)15、クランク軸13の回転角度を計測するクランク角センサ16、アクセルペダル17の踏み込み量(アクセル開度)を計測するアクセル開度センサ18等が設けられる。
【0015】
ECM14は、具体的には、各種センサの出力信号に基づいて、燃料噴射時期及び燃料噴射量、点火時期、並びに、スロットル開度等の目標値を求める。そして、ECM14は、目標の燃料噴射時期及び燃料噴射量に応じた噴射制御信号を燃料噴射弁7に出力し、目標の点火時期に応じた点火制御信号を点火プラグ10に出力し、目標のスロットル開度に応じたスロットル制御信号を電制スロットル弁2へ出力する。
【0016】
〔燃料タンク〕
燃料噴射弁7から噴射される燃料は、密閉型の燃料タンク19に貯留された燃料が用いられる。燃料タンク19内には燃料ポンプ20が設置されており、燃料ポンプ20によって吸引された燃料が、図示省略の燃料供給管を介して燃料噴射弁7に供給される。また、燃料タンク19は、給油燃料の導入路となる給油管21を備え、給油管21の先端部の給油口21aには、これを閉塞する給油キャップ22が着脱可能に装着される。車体の一部が給油口21aと接続されて形成される接続部開口には、閉状態で給油口21aの給油キャップ22を覆い、開状態で給油口21aの給油キャップ22を露出させるフィラーリッド23が開閉可能に設けられている。フィラーリッド23は、閉じられると機械的に閉状態にロックされる一方、外部からの制御が可能なリッドオープナー24によってロックが解除されて開状態となるように構成されている。
【0017】
〔蒸発燃料処理装置〕
内燃機関1には、これに関連する装置として蒸発燃料処理装置25が備えられている。蒸発燃料処理装置25は、容器内に活性炭等の吸着剤を充填させたキャニスタ26に燃料タンク19内に発生した蒸発燃料を一時的に吸着させて捕集し、キャニスタ26から脱離させた蒸発燃料を含むパージガスを電制スロットル弁2の下流側の吸気管3に供給する。
【0018】
燃料タンク19とキャニスタ26とは、封鎖弁27が介装された蒸発燃料導入路28によって接続されている。封鎖弁27は、常閉型の電磁弁であり、外部から封鎖弁27を開弁する信号が入力されていないオフ状態では、燃料タンク19からキャニスタ26への蒸発燃料の流出を遮断する。一方、封鎖弁27は、外部から封鎖弁27を開弁する信号が入力されたオン状態では、燃料タンク19からキャニスタ26へ蒸発燃料の流出を可能にする。
【0019】
キャニスタ26と電制スロットル弁2の下流側の吸気管3とは、パージ制御弁(PCV)29が介装されたパージ通路30によって接続されている。パージ制御弁29は、常閉型の電磁弁であり、外部からパージ制御弁29を開弁する信号が入力されないオフ状態では、キャニスタ26から吸気管3へのパージガスの供給を遮断する。一方、パージ制御弁29は、外部からパージ制御弁29を開弁する信号が入力されたオン状態では、キャニスタ26から吸気管3へのパージガスの供給を可能にする。
【0020】
キャニスタ26には外部と連通させるための外部連通路31が接続されている。この外部連通路31は、電磁式の切換弁32によって、大気に開放された大気開放路33と、大気を吸入するエアポンプ34の吐出口に接続されたポンプ吐出路35と、に選択的に接続される。切換弁32は、外部から制御信号が入力されないオフ状態では、外部連通路31を大気開放路33に接続し、外部から制御信号が入力されたオン状態では、外部連通路31をポンプ吐出路35に接続するように構成されている。
【0021】
ポンプ吐出路35と外部連通路31との間には、切換弁32をバイパスするバイパス通路36が設けられ、このバイパス通路36には基準口径を有する基準オリフィス37が設けられる。大気開放路33、及び、エアポンプ34の吸入口に接続されたポンプ吸入路38の2つの通路の大気開放側には、エアフィルタ39が設けられる。
【0022】
蒸発燃料処理装置25は、封鎖弁27、パージ制御弁29、切換弁32、エアポンプ34及びリッドオープナー24を制御して種々の蒸発燃料処理を行うEVAP制御ユニットを備えている。EVAP制御ユニットは、ECM14を含む複数の電子制御装置をCAN(Controller Area Network)等の車載通信ネットワーク40を介して通信可能に接続して構成された車両用電子制御システムの1つの電子制御装置(以下、「ECU(Electronic Control Unit)」という)である。以下、EVAP制御ユニットを第1のECU100というものとする。
【0023】
〔第1のECU〕
第1のECU100は、コンピュータを内蔵し、各種センサ及び各種スイッチの出力信号を入力する。第1のECU100に接続される各種センサ及び各種スイッチには、燃料状態検出センサ41、電流センサ42、開閉センサ43、給油スイッチ(以下、「RFSW」という)44及びイグニッションスイッチ(以下、「IGNSW」という)45が含まれる。燃料状態検出センサ41は燃料タンク19の内圧及び燃料温度の少なくとも1つを計測し、電流センサ42はエアポンプ34を駆動する電動モータ(図示省略)の駆動電流を計測し、それぞれ計測値に応じた信号を出力する。開閉センサ43は、フィラーリッド23が閉じられて機械的に閉状態にロックされたときに、出力信号の電位レベルが遷移するように構成されている。RFSW44は、燃料タンク19への給油要求等に伴うオン操作により、アクティブレベルに保持される給油信号RFを出力する。給油信号RFは、開閉センサ43の出力信号がフィラーリッド23を閉状態にロックしたことを示す電位レベルへ変化したときに、アクティブレベルから非アクティブレベルへ遷移する。IGNSW45は、内燃機関1の始動要求等に伴ってオン操作が行われることでアクティブレベルに保持されるイグニッション信号IGNを出力する。イグニッション信号IGNは、IGNSW45のオフ操作を契機としてアクティブレベルから非アクティブレベルへ遷移する。
【0024】
第1のECU100は、ECM14の送信情報や各種センサ及び各種スイッチの出力信号に基づいて種々の蒸発燃料処理を行う。蒸発燃料処理には、吸着処理、パージ処理及びリーク診断処理が含まれる。ここで、吸着処理は、燃料タンク19内の蒸発燃料をキャニスタ26に吸着させる処理であり、パージ処理は、キャニスタ26に吸着した蒸発燃料を脱離させる(パージする)処理である。また、リーク診断処理は、燃料タンク19からキャニスタ26を経てパージ制御弁29へ至る蒸発燃料流通系の配管の亀裂や配管間の接合部のシール不良によって蒸発燃料のリークが発生しているか否かの診断(以下、「リーク診断」という)を行う処理である。
【0025】
(吸着処理)
吸着処理では、第1のECU100は、RFSW44のオン操作を条件として、燃料タンク19内の蒸発燃料を吸着する。具体的には、第1のECU100は、RFSW44から出力されたアクティブレベルの給油信号RFに応じてリッドオープナー24に制御信号を出力し、フィラーリッド23のロックを解除してこれを開状態とする。そして、第1のECU100は、開閉センサ43の出力信号がフィラーリッド23を開状態にしたことを示す電位レベルへ遷移すると、パージ制御弁29及び切換弁32をオフ状態にして閉弁させたまま、封鎖弁27をオン状態にして開弁させる。第1のECU100は、開閉センサ43の出力信号がフィラーリッド23を閉状態にしたことを示す電位レベルへ遷移したときに、吸着処理を終了する。
【0026】
吸着処理により、燃料タンク19は、蒸発燃料導入路28、キャニスタ26、外部連通路31、大気開放路33を介して、大気と連通する。このため、燃料タンク19内に発生した蒸発燃料は、燃料タンク19の内圧と大気圧との圧力差によりキャニスタ26へ向かって流出する。これにより、蒸発燃料がキャニスタ26に吸着して捕集されるとともに燃料タンク19の内圧が低下するので、給油口21aから給油キャップ22を取り外したときに、給油口21aからの蒸発燃料の放散を抑制しつつ給油を行うことができる。
【0027】
(パージ処理)
パージ処理では、第1のECU100は、IGNSW45がオン状態のときにおけるECM14からのパージ要求信号の受信を条件として、キャニスタ26に吸着した蒸発燃料をパージする。具体的には、第1のECU100は、切換弁32をオフ状態にしたままパージ制御弁29をオン状態にして開弁させる。封鎖弁27は、キャニスタ26からの蒸発燃料のパージを促進するために、オフ状態にして閉弁させる。なお、パージ要求信号は、ECM14において、エアフローメータ15、クランク角センサ16、アクセル開度センサ18等の各種センサの出力信号から取得される内燃機関1の運転状態が所定のパージ許可条件を満たしていると判断されたときに、送信される。
【0028】
パージ制御弁29が開弁すると、内燃機関1の吸気負圧と大気圧との圧力差によって、大気開放路33及び外部連通路31を介して新気がキャニスタ26に導入される。このため、キャニスタ26に吸着している蒸発燃料がパージされて、蒸発燃料を含むパージガスがパージ通路30を介して吸気管3へ供給される。吸気管3に供給されたパージガスは、吸気とともに燃焼室6へ流入して点火プラグ10の火花点火による着火燃焼に供される。
【0029】
(リーク診断処理)
リーク診断処理では、第1のECU100は、IGNSW45のオフ操作後の経過時間が設定時間Tset1(例えば6時間)に達したことを条件として、リーク診断を行う。設定時間Tset1は、IGNSW45のオフ操作後の経過時間が設定時間Tset1に達したときに、燃料状態(燃料タンク19内の燃料温度や圧力等)が安定して、リーク診断の良好な診断精度を担保可能な時間である。
【0030】
IGNSW45のオフ操作後の経過時間が設定時間Tset1に達すると、第1のECU100は、先ず、リーク診断の実施条件を成立させるために、蒸発燃料流通系の雰囲気を初期化する制御を行う。具体的には、第1のECU100は、切換弁32をオフ状態にしたまま封鎖弁27及びパージ制御弁29をオン状態にして開弁させるとともにエアポンプ34を作動させて、この状態を一定時間継続する。これにより、エアポンプ34から吐出されてバイパス通路36を通った空気は、キャニスタ26を経てパージ通路30から吸気管3へ放出されるとともに切換弁32を経て大気開放路33から大気中へ放出され、蒸発燃料流通系から残圧及び残留ガスが除去され初期化が完了する。
【0031】
次に、第1のECU100は、リーク診断の第1段階として、リークの基準レベルを設定する。具体的には、第1のECU100は、パージ制御弁29及び切換弁32をオフ状態にしたまま封鎖弁27をオン状態にして開弁させるとともにエアポンプ34を作動させて、この状態を一定時間継続する。これにより、エアポンプ34から吐出されてバイパス通路36(基準オリフィス37)を通った空気は、切換弁32を経て大気開放路33から大気中に放出される。所定時間経過後、第1のECU100は、電流センサ42の出力信号から取得されたエアポンプ34の駆動電流の計測値を、リークの基準レベルとして記憶する。
【0032】
次に、第1のECU100は、リーク診断の第2段階として、実際のリークレベルを計測する。具体的には、第1のECU100は、パージ制御弁29をオフ状態にしたまま封鎖弁27及び切換弁32をオン状態にするとともにエアポンプ34を作動させて、この状態を所定時間継続する。これにより、エアポンプ34から吐出された空気は、ポンプ吐出路35から切換弁32を経て外部連通路31へ流れた後、キャニスタ26内を通って蒸発燃料流通系へ流入する。所定時間経過後、第1のECU100は、電流センサ42の出力信号から取得されたエアポンプ34の駆動電流の計測値を、実際のリークレベルとして記憶する。
【0033】
そして、第1のECU100は、リーク診断の第3段階として、基準レベルと実際のリークレベルとを比較し、その比較結果に基づいて、蒸発燃料流通系における蒸発燃料のリークを診断する。実際のリークレベルが基準レベルよりも小さい場合には、エアポンプ34の駆動負荷は、吐出空気が蒸発燃料流通系に流入するときよりも基準オリフィス37を通過するときの方が高い。このため、蒸発燃料流通系には、基準オリフィス37の基準口径よりも大きな孔が開口しているのと同等の失陥が発生していると診断できる。以上のようなリーク診断については、例えば特開2001-12319号公報に詳細に説明されている。
【0034】
〔車両用電子制御システムの詳細〕
図2は、第1実施形態に係る車両用電子制御システムとして、リーク診断処理に関連するECUを示している。第1実施形態に係る車両用電子制御システムには、EVAP制御ユニットである第1のECU100に加えて、第1のECU100と車載通信ネットワーク40を介して通信可能に接続された第2のECU200が含まれる。なお、
図2では、第1のECU100の入力信号として、リーク診断処理の実施を目的とした第1のECU100の起動に関連する信号(イグニッション信号IGN及び車載通信ネットワーク40を介した通信信号)のみを示すものとする。以下において同様である。
【0035】
第1のECU100は、その主要構成要素として、電源回路110、電源リレー120、RTC(Real Time Clock)130、通信制御回路140、OR回路(論理和ゲート)150及び第1制御器160を備え、例えば集積回路として一体的に構成されている。
【0036】
電源回路110は、電源ライン100Aを介して車載バッテリ46と接続され、IGNSW45のオンオフ状態にかかわらず車載バッテリ46から出力電圧VBATが供給可能となっている。そして、電源回路110は、車載バッテリ46の出力電圧VBATを、第1のECU100内の第1制御器160等の各電子デバイスの動作電圧に応じた電源電圧VREG1に調整して供給する。
【0037】
電源リレー120は、電源ライン100Aに介装され、リレー外部からの制御信号に基づいてオン状態とオフ状態との間で切り替わる、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor field effect transistor)等の無接点リレー又は電磁式の有接点リレーである。電源リレー120がオフ状態からオン状態へ切り替わることで、車載バッテリ46の出力電圧VBATが電源回路110へ供給される。これにより、第1制御器160には電源回路110から電源電圧VREG1が供給されて、第1制御器160は動作可能なアクティブ状態となって起動する。
【0038】
RTC130は、第1制御器160とは独立した計時手段であり、電源ライン100Aを介して車載バッテリ46から出力電圧VBATが常時供給されて電源リレー120のオフ状態でも計時可能となっている。具体的には、RTC130は、IGNSW45のオフ操作後の経過時間を計測するソークタイマを有している。RTC130は、SPI(Serial Peripheral Interface)通信等によって、第1制御器160と通信可能に構成され、第1制御器160から設定時間Tset1に関する情報を受信する。そして、RTC130は、そのソークタイマによる計時データを内蔵の記憶手段に逐次記憶し、IGNSW45のオフ操作後の経過時間が設定時間Tset1に達すると、アラーム信号ALM1をアクティブレベルに保持してOR回路150及び第1制御器160へ出力する。
【0039】
通信制御回路140は、所定の通信プロトコルに従って、第2のECU200等の他のECUとの間で車載通信ネットワーク40を介して行われる通信を制御する。これにより、通信制御回路140は、第1制御器160の出力信号を車載通信ネットワーク40へ送出する一方、車載通信ネットワーク40からの入力信号を第1制御器160へ送出する。通信制御回路140は、電源ライン100Aを介して車載バッテリ46から出力電圧VBATが常時供給され、電源リレー120がオフ状態であっても動作可能に構成されている。また、通信制御回路140は、車載通信ネットワーク40を介して、第1のECU100の起動すなわち第1制御器160の起動を要求する信号(以下、「起動要求信号」という)を外部から受信すると、ウェイクアップ信号WK1をアクティブレベルに保持してOR回路150へ出力する。さらに、通信制御回路140は、受信した起動要求信号を第1制御器160へ送出するように構成されている。
【0040】
OR回路150は、4つの入力信号に基づいて、電源リレー120のオンオフ状態を決定する信号を出力する。具体的には、OR回路150は、イグニッション信号IGN、アラーム信号ALM1、ウェイクアップ信号WK1及び自己保持信号SH1を入力し、これらの4つの入力信号の少なくとも1つがアクティブレベルであるときに、出力信号をアクティブレベルに保持する。OR回路150の出力信号がアクティブレベルとなると電源リレー120がオン状態となり、これにより、第1制御器160は、電源回路110から電源電圧VREG1が供給されてアクティブ状態となる。ここで、自己保持信号SH1は、第1制御器160から出力される信号であり、IGNSW45のオフ操作に伴い非アクティブレベルからアクティブレベルへ遷移し、所定のセルフシャットオフ(以下、「SSOFF」という)期間の経過に伴い非アクティブレベルへ戻る。
【0041】
第1制御器160は、図示省略するが、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリ、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリ及び入出力インタフェース等を内部バスで接続して構成されたコンピュータである。第1制御器160は、アクティブ状態で不揮発性メモリから所定の制御プログラムを揮発性メモリに読み出してリーク診断処理を実行する。第1制御器160で実行するリーク診断処理には、IGNSW45のオフ操作後の経過時間が設定時間Tset1に達したときに行う処理(以下、「基本処理」という)の他、基本処理の前に行う処理(以下、「第1事前処理」という)が含まれる。具体的には、第1制御器160は、入出力インタフェースを介して、イグニッション信号IGN、アラーム信号ALM1、自己保持信号SH1及び第2のECU200との通信信号等を入力し、これらの入力信号に基づいて、リーク診断処理を実行する。一方、第1制御器160は、電源電圧VREG1の供給が遮断されて全ての機能が停止するシャットダウン状態では、リーク診断処理を行うことができないだけでなく、固有の計時手段による計時機能も喪失する。
【0042】
図3は、RTC130のソークタイマが正常であるときのリーク診断処理において、第1のECU100の動作の一例を示す。なお、
図3において、イグニッション信号IGN、自己保持信号SH1、アラーム信号ALM1等のOR回路150の入力信号は、アクティブレベルのときに高電位(H)レベル、非アクティブレベルのときに低電位(L)レベルとなる、正論理信号とする。以下の説明において同様である。
【0043】
時刻t1において、第1制御器160は、IGNSW45のオフ操作により、入力したイグニッション信号IGNがHレベルからLレベルへと遷移すると、自己保持信号SH1をLレベルからHレベルに変化させてOR回路150へ出力する。これにより電源リレー120はオン状態を維持し、第1制御器160は、電源電圧VREG1が供給されたアクティブ状態のままSSOFF期間に移行する。SSOFF期間中の時刻t2において、第1制御器160は、第1事前処理としてIGNSW45のオフ操作時の燃料状態に基づいて設定時間Tset1を計算し、その算出値T1(>0)を設定時間Tset1に関する情報としてRTC130へ送信する。ここで、RTC130のソークタイマは、水晶振動子等を用いたパルス発生器(図示省略)から発生する一定周期の基準パルスのエッジを所定数カウントするたびにカウント値が順次変化するカウンタ(図示の例ではアップカウンタ)として構成されている。このため、RTC130において、設定時間Tset1は、基準パルスの周期に基づいて、設定時間Tset1に達するまでに必要なカウント値(閾値)THに変換され、この閾値THが設定時間Tset1の代替値として設定されてRTC130に内蔵の記憶手段に記憶される。RTC130は、閾値THの設定を契機として、ソークタイマによるカウントを開始する。時刻t3において、第1制御器160は、所定のSSOFF期間が終了すると、自己保持信号SH1をHレベルからLレベルへ変化させてOR回路150へ出力する。これにより電源リレー120はオフ状態に変化し、第1制御器160は、電源電圧VREG1の供給が遮断されてシャットダウン状態となる。RTC130は、第1制御器160がシャットダウン状態であってもソークタイマによるカウントを継続する。
【0044】
時刻t4において、RTC130は、ソークタイマのカウント値が閾値THに到達すると、アラーム信号ALM1をLレベルからHレベルへ変化させてOR回路150及び第1制御器160へ出力する。アラーム信号ALM1がHレベルへ遷移すると、電源リレー120がオン状態に変化し、これにより第1制御器160は起動して、シャットダウン状態からアクティブ状態へ移行する。このとき、第1制御器160は、Hレベルのアラーム信号ALM1に基づいて、基本処理(リーク診断)を行うために起動したと判断する。そして、第1制御器160は、前述のようにリーク診断の実施条件を成立させるための制御処理を行ったうえでリーク診断を行う。リーク診断が完了すると、時刻t5において、第1制御器160は、RTC130へリセット要求信号を送信する。RTC130は、リセット要求信号を受信すると、カウント値を初期値(例えばゼロ)へリセット(初期化)する。これにより、カウント値が閾値THを下回って、アラーム信号ALM1がHレベルからLレベルへ遷移するので、電源リレー120はオフ状態に変化して、第1制御器160は再びシャットダウン状態に移行する。
【0045】
上記のように、第1のECU100では、IGNSW45のオフ操作後の経過時間の計測は、第1制御器160をアクティブ状態にして行われるのではなく、RTC130で行われる。これは、RTC130の計時に伴う消費電力が、アクティブ状態にした第1制御器160の計時に伴う消費電力と比較して小さく、車載バッテリ46の電力消費を低減できるためである。しかし、RTC130のソークタイマが何らかの原因によって故障した場合には、IGNSW45のオフ操作後の経過時間を計測することができず、リーク診断の実施タイミングを逸してしまうことになる。このような問題に対処するため、車両用電子制御システムには、第1のECU100に加えて、RTC130と同様のソークタイマを有する第2のECU200が含まれる。なお、ECM14は、RTC130のソークタイマと同様の計時手段を有していないものとする。
【0046】
第2のECU200は、第1のECU100と異なり、専ら蒸発燃料処理を行うためのECUではないが、RTC130が故障したときにその計時機能を補償する機能を有している。すなわち、第2のECU200は、RTC130に代わってIGNSW45のオフ操作後の経過時間の計測を行い、IGNSW45のオフ操作後の経過時間が設定時間Tset1に達したときに第1制御器160を起動させることができる。第2のECU200は、その主要構成要素として、第1のECU100と同様に、電源回路210、電源リレー220、計時部230、通信制御回路240、OR回路250及び第2制御器260を備えている。
【0047】
電源回路210は、電源ライン200Aを介して車載バッテリ46と接続され、IGNSW45のオンオフ状態にかかわらず車載バッテリ46から出力電圧VBATが供給可能となっている。そして、電源回路210は、車載バッテリ46の出力電圧VBATを、第2のECU200内の第2制御器260等の各電子デバイスの動作電圧に応じた電源電圧VREG2に調整して供給する。
【0048】
電源リレー220は、電源ライン200Aに介装され、リレー外部からの制御信号に基づいてオン状態とオフ状態との間で切り替わる、MOSFET等の無接点リレー又は電磁式の有接点リレーである。電源リレー220がオフ状態からオン状態へ切り替わることで、車載バッテリ46の出力電圧VBATが電源回路210へ供給される。これにより、第2制御器260には電源回路210から電源電圧VREG2が供給されて、第2制御器260は動作可能なアクティブ状態となって起動する。
【0049】
計時部230は、第2制御器260とは独立した計時手段であり、電源ライン200Aを介して車載バッテリ46から出力電圧VBATが常時供給されて電源リレー220のオフ状態でも計時可能となっている。具体的には、計時部230は、RTC130と同様のソークタイマを有している。計時部230は、SPI通信等によって、第2制御器260と通信可能に構成され、第2制御器260から設定時間Tset2に関する情報を受信する。そして、計時部230は、そのソークタイマによる計時データを内蔵の記憶手段に逐次記憶し、IGNSW45のオフ操作後の経過時間が設定時間Tset2に達すると、アラーム信号ALM2をHレベルに保持してOR回路250及び第2制御器260へ出力する。
【0050】
通信制御回路240は、所定の通信プロトコルに従って、第1のECU100等の他のECUとの間で車載通信ネットワーク40を介して行われる通信を制御する。これにより、通信制御回路240は、第2制御器260の出力信号を車載通信ネットワーク40へ送出する一方、車載通信ネットワーク40からの入力信号を第2制御器260へ送出する。通信制御回路240は、電源ライン200Aを介して車載バッテリ46から出力電圧VBATが常時供給され、電源リレー220がオフ状態であっても動作可能に構成されている。
【0051】
OR回路250は、3つの入力信号に基づいて、電源リレー220のオンオフ状態を決定する信号を出力する。具体的には、OR回路250は、イグニッション信号IGN、アラーム信号ALM2及び自己保持信号SH2を入力し、これら3つの入力信号の少なくとも1つがHレベルであるときに、出力信号をアクティブレベルに保持する。OR回路250の出力信号がアクティブレベルとなると電源リレー220がオン状態となり、これにより、第2制御器260は、電源回路210から電源電圧VREG2が供給されてアクティブ状態となる。ここで、自己保持信号SH2は、第2制御器260から出力される信号であり、IGNSW45のオフ操作に伴いLレベルからHレベルへ遷移し、所定のSSOFF期間の経過に伴いLレベルへ戻る。
【0052】
第2制御器260は、第1制御器160と同様に構成されたコンピュータであり、アクティブ状態で不揮発性メモリから所定の制御プログラムを揮発性メモリに読み出して、RTC130の計時機能を補償する処理(以下、「計時機能補償処理」という)を実行する。第2制御器260で実行する計時機能補償処理には、第1制御器160の起動及び停止を要求する処理(以下、「起動/停止処理」)と、起動/停止処理の前に行う処理(以下、「第2事前処理」という)と、が含まれる。具体的には、第2制御器260は、入出力インタフェースを介して、イグニッション信号IGN、アラーム信号ALM2、自己保持信号SH2及び第1のECU100との通信信号等を入力し、これらの入力信号に基づいて、計時機能補償処理を実行する。一方、第2制御器260は、電源電圧VREG2の供給が遮断されたシャットダウン状態では、計時機能補償処理を行うことができないだけでなく、固有の計時手段による計時機能も喪失する。
【0053】
〔車両用電子制御システムの動作〕
ここで、
図5~
図7を用いて、第1制御器160で実行されるリーク診断処理(第1事前処理及び基本処理)及び第2制御器260で実行される計時機能補償処理(第2事前処理及び起動/停止処理)について説明する。かかる説明では、
図3に加えて、RTC130のソークタイマが故障しているときのリーク診断処理における第1のECU100及び第2のECU200の動作の一例を示す
図4を参照して、各処理におけるステップの実施タイミングを付記する。
【0054】
図5及び
図6は、第1実施形態に係る車両用電子制御システムにおいて、第1制御器160が、電源電圧V
REG1の供給を受けて起動するたびに1回実行するリーク診断処理の一例を示す。
【0055】
先ず
図5を参照すると、ステップS101(図中では「S101」と略記する。以下同様である。)では、第1制御器160は、IGNSW45のオン操作により起動したか否かを判定する(
図3の時刻t1前又は時刻t4、
図4の時刻t1前又は時刻t5)。具体的には、第1制御器160は、その入力信号のうちイグニッション信号IGNのみがHレベルであり、かつ、起動要求信号を受信していない場合には、IGNSW45のオン操作により起動したと判定し(YES)、処理をステップS102へ進める。一方、第1制御器160は、イグニッション信号IGN以外の入力信号がHレベルである、又は、起動要求信号を受信している場合には、IGNSW45のオン操作により起動していないと判定し(NO)、処理を
図6のステップS113へ進める。
【0056】
ステップS102(
図3及び
図4の時刻t1前)では、第1制御器160はRTC130の故障診断を行う。RTC130の故障診断には、例えば以下の2つの診断方法が含まれる。
【0057】
第1の診断方法では、第1制御器160の起動時に、特定の時間(例えば1分)を第1制御器160に固有の計時手段(内部クロックカウンタ)及びRTC130のソークタイマのそれぞれを用いて計測し、第1制御器160が2つの計時データを比較する。第1制御器160の起動時の自己診断により固有の計時手段が正常であり、かつ、RTC130による計時データが第1制御器160に固有の計時手段による計時データから乖離している場合には、RTC130のソークタイマに故障が発生していると診断できる。
【0058】
第2の診断方法では、第1制御器160の起動前に、RTC130及び計時部230の2つのソークタイマを用いてIGNSW45のオフ操作後の経過時間をそれぞれ計測し、第1制御器160の起動時に、第1制御器160が2つの計時データを比較する。計時部230による計時データは、第1制御器160の起動時に、車載通信ネットワーク40及び通信制御回路140を介して第2のECU200から第1制御器160へ送信される。計時部230のソークタイマが正常であり、かつ、RTC130による計時データが計時部230による計時データから乖離している場合には、RTC130のソークタイマに故障が発生していると診断できる。
【0059】
第1制御器160は、RTC130の故障診断として、第1の診断方法及び第2の診断方法を含む複数の診断方法のうちの少なくとも1つを行えばよい。第1制御器160は、複数の診断方法を実施する場合には、少なくとも1つの診断方法においてRTC130のソークタイマに故障が発生していると診断したときに、その診断を確定させる。
【0060】
ステップS103(
図3及び
図4の時刻t1前)では、第1制御器160は、ステップS102で行ったRTC130の故障診断の結果に基づいて、書き込み可能な不揮発性メモリに記憶されている診断情報を更新する。
【0061】
ステップS104(
図3及び
図4の時刻t1前)では、第1制御器160は、IGNSW45がオフ操作されたか否かを判定する。具体的には、第1制御器160は、イグニッション信号IGNがHレベルからLレベルに遷移したときに(
図3及び
図4の時刻t1)、IGNSW45がオフ操作されたと判定し(YES)、SSOFF期間へ移行すべく、処理をステップS105へ進める。一方、第1制御器160は、イグニッション信号IGNがHレベルのまま変化していない場合には、IGNSW45はオフ操作されていないと判定し(NO)、再びステップS104を実行する。
【0062】
ステップS105(
図3及び
図4の時刻t1)では、第1制御器160は、SSOFF期間における動作を可能にすべく、自己保持信号SH1をLレベルからHレベルへ変化させ、電源回路110からの電源電圧V
REG1の供給を保持する。
【0063】
ステップS106(
図3及び
図4の時刻t1~t2)では、第1制御器160は、例えば燃料状態検出センサ41の出力信号等、IGNSW45のオフ操作時に検出された燃料状態に基づいて、設定時間Tset1を計算する。
【0064】
ステップS107(
図3及び
図4の時刻t1~t2)では、第1制御器160は、不揮発性メモリに記憶されている診断情報を参照し、RTC130が正常である場合には(YES)、処理をステップS108へ進める。一方、第1制御器160は、RTC130が故障している場合には(NO)、処理をステップS112へ進める。
【0065】
ステップS108(
図3の時刻t2)では、第1制御器160は、ステップS106で算出された算出値T1を設定時間Tset1に関する情報としてRTC130へ送信する。
【0066】
ステップS109(
図3の時刻t2~t3)では、第1制御器160は、通信制御回路140及び車載通信ネットワーク40を介して、設定時間Tset1=0(零)を設定時間Tset1に関する情報として第2のECU200へ送信する。また、第1制御器160は、通信制御回路140及び車載通信ネットワーク40を介して、RTC130のソークタイマが正常である旨の診断情報を第2のECU200へ送信する。設定時間Tset1=0(零)を設定時間Tset1に関する情報として第2のECU200へ送信するのは、第2のECU200においてIGNSW45のオフ操作後の経過時間を計測させないようにするためである。
【0067】
ステップS110(
図3の時刻t2~t3、
図4の時刻t2~t4)では、第1制御器160は、固有の計時手段を用いて、IGNSW45のオフ操作から所定のSSOFF期間が終了したか否かを判定する。第1制御器160は、所定のSSOFF期間が終了した場合には(YES)、処理をステップS111へ進める一方、所定のSSOFF期間が終了していない場合には(NO)、再度ステップS110を実行する。
【0068】
ステップS111(
図3の時刻t3、
図4の時刻t4)では、第1制御器160は、電源回路110からの電源電圧V
REG1の供給を遮断すべく、自己保持信号SH1をHレベルからLレベルへ変化させる。これにより、リーク診断処理のうち第1事前処理が終了する。
【0069】
ステップS112(
図4の時刻t2)では、第1制御器160は、通信制御回路140及び車載通信ネットワーク40を介して、ステップS106で算出された算出値T1を設定時間Tset1に関する情報として第2のECU200へ送信する。また、第1制御器160は、通信制御回路140及び車載通信ネットワーク40を介して、RTC130のソークタイマが故障している旨の診断情報を第2のECU200へ送信する。このように、第1制御器160は、RTC130が故障している場合には、ステップS106で算出された算出値T1を設定時間Tset1に関する情報としてRTC130へ送信せず、これによりRTC130による経過時間の計測を無効としている。
【0070】
第1制御器160は、ステップS112の実行後、さらにステップS110,S111を実行する。上記のステップS101~S112がリーク診断処理のうち第1事前処理に該当する。
【0071】
次に
図6を参照すると、ステップS113(
図3の時刻t4~t5、
図4の時刻t5~t6)では、第1制御器160は、前述のように、リーク診断の実施条件を成立させる制御処理を行ったうえでリーク診断を行う。リーク診断の結果は、第1制御器160の不揮発性メモリ等に記憶される。
【0072】
ステップS114(
図3の時刻t4~t5、
図4の時刻t5~t6)において、第1制御器160は、アラーム信号ALM1がHレベルである場合には(YES)、アラーム信号ALM1に基づいて起動したと判断して、処理をステップS115へ進める。一方、ステップS114において、第1制御器160は、アラーム信号ALM1がLレベルである場合には(NO)、第2のECU200からの起動要求信号により起動したと判断して、処理をステップS116へ進める。
【0073】
ステップS115(
図3の時刻t5)では、第1制御器160は、RTC130のソークタイマのカウント値をリセットすべく、RTC130へリセット要求信号を送信する。これにより、リーク診断処理のうち基本処理が終了する。一方、ステップS116(
図4の時刻t6)では、第1制御器160は、第2のECU200へ基本処理が終了した旨の終了通知を送信する。これにより、リーク診断処理のうち基本処理が終了する。上記のステップS101及びステップS113~S116がリーク診断処理のうち基本処理に該当する。
【0074】
図7は、第1実施形態に係る車両用電子制御システムにおいて、第2制御器260が、電源電圧V
REG2の供給を受けて起動するたびに1回実行する計時機能補償処理の一例を示す。
【0075】
ステップS201(
図4の時刻t1前又は時刻t5)では、リーク診断処理のステップS101と同様に、第2制御器260がIGNSW45のオン操作により起動したか否かを判定する。そして、第2制御器260は、IGNSW45のオン操作により起動したと判定した場合には(YES)、処理をステップS202へ進める。一方、第2制御器260は、IGNSW45のオン操作により起動していないと判定した場合には(NO)、アラーム信号ALM2に基づいて起動したと判断して、処理をステップS210へ進める。
【0076】
ステップS202(
図4の時刻t1前)では、第2制御器260は、リーク診断処理のステップS104と同様に、IGNSW45がオフ操作されたか否かを判定する。そして、第2制御器260は、IGNSW45がオフ操作されたと判定した場合には(YES)、SSOFF期間へ移行すべく、処理をステップS203へ進める。一方、第2制御器260は、IGNSW45がオフ操作されていないと判定した場合には(NO)、再びステップS202を実行する。
【0077】
ステップS203(
図4の時刻t1)では、第2制御器260は、第1事前処理のステップS105と同様にSSOFF期間で動作可能とすべく、自己保持信号SH2をLレベルからHレベルへ変化させ、電源回路210からの電源電圧V
REG2の供給を保持する。
【0078】
ステップS204(
図4の時刻t2)では、第2制御器260は、第1のECU100から、車載通信ネットワーク40及び通信制御回路240を介して、設定時間Tset1に関する情報とRTC130の診断情報とを受信する。そして、設定時間Tset1に関する情報、及び、RTC130の診断情報は、書き込み可能な不揮発性メモリに記憶される。本ステップにおける設定時間Tset1に関する情報は、設定時間Tset1を算出値T1とする情報や設定時間Tset1を0(零)とする情報である。
【0079】
ステップS205(
図4の時刻t2~t3)では、第2制御器260は、ステップS204で受信した設定時間Tset1に関する情報に基づいて、設定時間Tset1≠0(零)であるか否かを判定する。そして、第2制御器260は、設定時間Tset1≠0(零)であると判定した場合には(YES)、処理をステップS206へ進める。一方、第2制御器260は、設定時間Tset1≠0(零)ではないと判定した場合には(NO)、処理をステップS208へ進めて、ステップS206,S207を省略する。
【0080】
ステップS206(
図4の時刻t2~t3)では、第2制御器260は、ステップS204で受信した診断情報に基づいて、RTC130のソークタイマが故障しているか否かを判定する。そして、第2制御器260は、RTC130のソークタイマが故障していると判定した場合には(YES)、処理をステップS207へ進める。一方、第2制御器260は、RTC130のソークタイマが正常であると判定した場合には(NO)、処理をステップS208へ進めて、ステップS207を省略する。なお、ステップS205において設定時間Tset1≠0であればRTC130のソークタイマは故障していることになるので、ステップS206を省略してもよい。
【0081】
ステップS207(
図4の時刻t3)では、第2制御器260は、ステップS204で受信した設定時間Tset1に関する情報に基づいて、算出値T1を設定時間Tset1に関する情報として計時部230へ送信する。
【0082】
ステップS208(
図4の時刻t3~t4)では、第2制御器260は、ステップS110と同様に、IGNSW45のオフ操作から所定のSSOFF期間が終了したか否かを判定する。第2制御器260は、所定のSSOFF期間が終了した場合には(YES)、処理をステップS209へ進め、電源電圧V
REG2の供給を遮断すべく自己保持信号SH2をHレベルからLレベルへ変化させる(
図4の時刻t4)。これにより、計時機能補償処理のうち第2事前処理が終了する。一方、第2制御器260は、所定のSSOFF期間が終了していない場合には(NO)、再度ステップS208を実行する。上記のステップS201~S209が計時機能補償処理のうち第2事前処理に該当する。
【0083】
ステップS210では、第2制御器260は、通信制御回路240及び車載通信ネットワーク40を介して、第1のECU100へ起動要求信号を送信する。
【0084】
ステップS211では、第2制御器260は、車載通信ネットワーク40及び通信制御回路240を介して、第1のECU100から終了通知を受信したか否かを判定する。第2制御器260は、終了通知を受信したと判定した場合には(YES)、処理をステップS212へ進める一方、終了通知を受信していないと判定した場合には(NO)、再度ステップS211を実行する。
【0085】
ステップS212では、第2制御器260は、通信制御回路240及び車載通信ネットワーク40を介して、第1のECU100の停止すなわち第1制御器160の停止を要求する停止要求信号を第1のECU100へ送信する。これにより、第1のECU100の通信制御回路140から出力されていたウェイクアップ信号WK1がHレベルからLレベルへ遷移して、電源リレー120がオフ状態に変化する。このため、電源電圧VREG1の供給が遮断された第1制御器160はシャットダウン状態へ移行する。
【0086】
ステップS213では、第2制御器260は、計時部230のソークタイマのカウント値をリセットすべく、計時部230へリセット要求信号を送信する。これにより、計時機能補償処理のうち起動/停止処理が終了する。上記のステップS201及びステップS210~ステップS213が計時機能補償処理のうち起動/停止処理に該当する。
【0087】
このように第1実施形態に係る車両用電子制御システムでは、第1制御器160は、RTC130が故障したと診断するとその故障情報を第2制御器260へ通知し、計時部230がIGNSW45のオフ操作後の経過時間を計測している。すなわち、RTC130のソークタイマが故障した場合でも、その計時機能を計時部230により補償することができる。このため、第2制御器260は、IGNSW45のオフ操作後の経過時間が設定時間Tset1に達したときに起動して、車載通信ネットワーク40を介して第1制御器160を起動させることができる。これにより、第1のECU100は、IGNSW45のオフ操作後の経過時間が設定時間Tset1に達した適切なタイミングで、リーク診断を実施することが可能となる。
【0088】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る車両用電子制御システムについて説明する。なお、第1実施形態に係る車両用電子制御システムと同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略または簡潔化する。以下の実施形態において同様である。
【0089】
上記の第1実施形態に係る車両用電子制御システムでは、第2のECU200は、その計時部230により計測された、IGNSW45のオフ操作後の経過時間が、設定時間Tset1に達したときに起動していた。しかし、第2実施形態に係る車両用電子制御システムでは、第2のECU200は、その計時部230により計測された、IGNSW45のオフ操作後の経過時間が、設定時間Tset1に依存しない設定時間Tset2に達したときに起動するように構成されている。設定時間Tset2は、例えば、第2のECU200がIGNSW45のオフ操作後に、蒸発燃料処理に関連しない所定の制御処理(バッテリ残量チェック)を行うまでの時間を規定している。
【0090】
図8及び
図9は、第2実施形態に係る車両用電子制御システムにおいて、第1制御器160が、電源電圧V
REG1の供給を受けて起動するたびに1回実行するリーク診断処理の一例を示す。
【0091】
先ず
図8を参照すると、ステップS301では、第1制御器160は、
図5のステップS101と同様の処理を行う。そして、第1制御器160は、IGNSW45のオン操作により起動したと判定した場合には(YES)、処理をステップS302へ進める一方、IGNSW45のオン操作により起動していないと判定した場合には(NO)、処理を
図9のステップS314へ進める。また、ステップS302~S307においても、第1制御器160が
図5のステップS101~S107と同様の処理を行う。ステップS307においてRTC130が正常である場合には(YES)、第1制御器160は、処理をステップS308へ進めて
図5のステップS108と同様の処理を行う。一方、ステップS307においてRTC130が故障している場合には(NO)、第1制御器160は、処理をステップS312へ進めて
図5のステップS112と同様の処理を行う。
【0092】
第2のECU200では、IGNSW45のオフ操作後の経過時間が設定時間Tset1に達したか否かの判定は行わない。このため、ステップS309では、第1制御器160は、RTC130のソークタイマが正常である旨の診断情報を送信するが、設定時間Tset1に関する情報を送信しなくてもよい。また、ステップS312では、第1制御器160は、RTC130のソークタイマが故障している旨の診断情報を送信するが、設定時間Tset1に関する情報を送信しなくてもよい。
【0093】
第1制御器160は、ステップS312を実行した後、ステップS313において、第2のECU200から車載通信ネットワーク40及び通信制御回路140を介して、IGNSW45をオフ操作したときの時刻(以下、「オフ時刻」という)toffの情報を受信する。オフ時刻toffの情報は、第1制御器160の書き込み可能な不揮発性メモリに記憶される。オフ時刻toffの情報を第2のECU200から受信するのは、故障したRTC130の計時機能を用いて取得される時刻情報に信頼性がないためである。
【0094】
ステップS309又はステップS313の実行後、第1制御器160は、
図5のステップS110と同様のステップS310、及び、
図5のステップS111と同様のステップS311を順次実行する。これにより、リーク診断処理のうち第1事前処理が終了する。上記のステップS301~ステップS313がリーク診断処理のうち第1事前処理に該当する。
【0095】
次に
図9を参照すると、ステップS314においてアラーム信号ALM1がHレベルである場合には(YES)、第1制御器160は、アラーム信号ALM1に基づいて起動したと判断して、処理をステップS315へ進める。そして、第1制御器160は、ステップS315において、
図6のステップS113と同様にリーク診断を行い、続くステップS316において、
図6のステップS115と同様にRTC130へリセット要求信号を送信する。これにより、リーク診断処理のうち基本処理が終了する。一方、ステップS314においてアラーム信号ALM1がLレベルである場合には(NO)、第1制御器160は、第2のECU200からの起動要求信号の受信により起動したと判断して、処理をステップS317へ進める。
【0096】
ステップS317では、第1制御器160は、第2のECU200から車載通信ネットワーク40及び通信制御回路140を介して、起動時刻tonの情報を受信する。起動時刻tonは、後述のように、第2のECU200がアラーム信号ALM2に基づいて起動した時刻であり、第1制御器160の揮発性メモリに一時的に記憶される。
【0097】
ステップS318では、第1制御器160は、
図8のステップS313で記憶したオフ時刻t
offからステップS317で記憶した起動時刻t
onまでの時間を、IGNSW45のオフ操作から第1制御器160の起動までの停止時間ΔTdownとして計算する。
【0098】
ステップS319では、第1制御器160は、ステップS318で算出した停止時間ΔTdownが、設定時間Tset1を含む所定範囲内(Tset1-α≦ΔTdown≦Tset1+β)であるか否かを判定する。ここで、α,βは正の定数であり、定数α,βで規定される所定範囲は、IGNSW45のオフ操作から所定範囲内の停止時間ΔTdownが経過したときの燃料状態に基づいてリーク診断を行ったときに、その診断結果のばらつきを無視できる範囲である。
【0099】
ステップS319において、第1制御器160は、停止時間ΔTdownが所定範囲内であると判定した場合には(YES)、処理をステップS320へ進めてリーク診断を行う。一方、ステップS319において、第1制御器160は、停止時間ΔTdownが所定範囲から外れていると判定した場合には(NO)、ステップS320のリーク診断を省略して、処理をステップS321へ進める。ステップS321では、第1制御器160は、
図6のステップS116と同様に、第2のECU200へ基本処理が終了した旨の終了通知を送信する。これにより、リーク診断処理のうち基本処理が終了する。上記のステップS301及びステップS314~ステップS321がリーク診断処理のうち基本処理に該当する。
【0100】
図10は、第2実施形態に係る車両用電子制御システムにおいて、第2制御器260が、電源電圧V
REG2の供給を受けて起動するたびに1回実行する計時機能補償処理の一例を示す。
【0101】
ステップS401では、第2制御器260は、
図7のステップS201と同様の処理を行う。そして、第2制御器260は、IGNSW45のオン操作により起動したと判定した場合には(YES)、処理をステップS402へ進める一方、IGNSW45のオン操作により起動していないと判定した場合には(NO)、処理をステップS410へ進める。
【0102】
ステップS402~S403では、第2制御器260が
図7のステップS201~S203と同様の処理を行う。そして、ステップS404では、第2制御器260は、第1のECU100から、車載通信ネットワーク40及び通信制御回路240を介して、RTC130の診断情報を受信し、これを書き込み可能な不揮発性メモリに記憶する。しかし、第2のECU200では、IGNSW45のオフ操作後の経過時間が設定時間Tset1に達したか否かの判定は行わないため、第2制御器260は、第1のECU100から設定時間Tset1に関する情報を受信しない。同様の理由により、
図7のステップS205の処理も省略される。
【0103】
ステップS405では、第2制御器260は
図7のステップS206と同様の処理を行う。そして、第2制御器260は、RTC130のソークタイマが故障していると判定した場合には(YES)、処理をステップS406へ進める。一方、第2制御器260は、RTC130のソークタイマが正常であると判定した場合には(NO)、処理をステップS407へ進めて、ステップS406を省略する。
【0104】
ステップS406では、第2制御器260は、通信制御回路240及び車載通信ネットワーク40を介して、オフ時刻toffの情報を第1のECU100へ送信する。オフ時刻toffは、正確にIGNSW45をオフ操作した時刻に限らず、ステップS402でIGNSW45のオフ操作ありと判定されたときからステップS406を実行するときまでのいずれかの時刻として取得されてもよい。
【0105】
ステップS407では、第2制御器260は、設定時間Tset2に関する情報を計時部230へ送信する。そして、第2制御器260は、ステップS408において、
図7のステップS208と同様の処理を行い、ステップS409において、
図7のステップS209と同様の処理を行う。これにより、計時機能補償処理のうち第2事前処理が終了する。上記のステップS401~S409が計時機能補償処理のうち第2事前処理に該当する。
【0106】
ステップS410では、第2制御器260は、
図7のステップS210と異なり、第1のECU100に限らず、所定の制御処理において起動対象となる他のECUに対しても起動要求信号を送信する。ステップS411では、ステップS405と同様の処理を行う。そして、ステップS411において、第2制御器260は、RTC130のソークタイマが故障していると判定した場合には(YES)、処理をステップS412へ進める。一方、ステップS411において、第2制御器260は、RTC130のソークタイマが正常であると判定した場合には(NO)、RTC130のソークタイマによりカウントが行われるため、処理をステップS413へ進めて、ステップS412を省略する。
【0107】
ステップS412では、第2制御器260は、計時部230の計時データを用いて起動時刻t
onを取得し、通信制御回路240及び車載通信ネットワーク40を介して、取得した起動時刻t
onの情報を第1のECU100へ送信する。起動時刻t
onは、第2制御器260が正確に起動した時刻に限らず、ステップS401でIGNSW45のオフ操作により起動していないと判定されたときからステップS412を実行するときまでのいずれかの時刻として取得されてもよい。そして、第2制御器260は、ステップS413において、
図7のステップS211と同様の処理を行い、さらにステップS414において、
図7のステップS212と同様の処理を行う。これにより、計時機能補償処理のうち起動/停止処理が終了する。上記のステップS401及びステップS410~S414が計時機能補償処理のうち起動/停止処理に該当する。
【0108】
このように第2実施形態に係る車両用電子制御システムでは、第1のECU100は、RTC130が故障したと診断するとその故障情報を第2のECU200へ通知し、第2のECU200からオフ時刻toffの情報を受信している。一方、第2のECU200は、設定時間Tset1に依存せずに、IGNSW45のオフ操作後の経過時間が設定時間Tset2に達したときに起動して、第1のECU100へ起動要求信号を送信している。これにより起動した第1制御器160では、第2のECU200から起動時刻tonの情報を受信し、オフ時刻toff及び起動時刻tonから算出される停止時間ΔTdownが設定時間Tset1を含む所定範囲内にあるか否かを判定している。したがって、RTC130のソークタイマが故障した場合でも、その計時機能を計時部230により補償することができる。これにより、第1のECU100は、IGNSW45のオフ操作後の経過時間が設定時間Tset1に応じた適切なタイミングで、リーク診断を実施することが可能となる。
【0109】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る車両用電子制御システムについて説明する。本実施形態に係る車両用電子制御システムでは、第1及び第2のECU100,200のいずれとも異なる他のECUの計時機能を用いて、第2のECU200の計時部230の計時精度を担保し、計時機能補償の信頼性を向上させるものである。
【0110】
図11は、第3実施形態に係る車両用電子制御システムのうちリーク診断処理に関連する構成の一例を示す。かかる車両用電子制御システムでは、計時部230の計時精度を担保するために計時部230と並行して計時を行うための第3のECU300が含まれる。
【0111】
第3のECU300は、その主要構成要素として、電源回路310、電源リレー320、計時部330、通信制御回路340、OR回路350及び第3制御器360を備え、それぞれ、第2のECU200の主要構成要素に対応している。したがって、第3のECU300の主要構成要素は、第2のECU200の主要構成要素に関する上記説明において、以下のように読み替えることで説明可能である。すなわち、電源ライン200Aは電源ライン300Aと、電源回路210は電源回路310と、電源リレー220は電源リレー320と、計時部230は計時部330と、通信制御回路240は通信制御回路340と、OR回路250はOR回路350と、第2制御器260は第3制御器360と、それぞれ読み替えられる。また、電源電圧VREG2は電源電圧VREG3と、アラーム信号ALM2はアラーム信号ALM3と、自己保持信号SH2は自己保持信号SH3と、それぞれ読み替えられる。
【0112】
ただし、第3制御器360は、第2制御器260が行う計時機能補償処理に代えて、第2のECU200の計時部230と並行して計時部330に計時を行わせる処理(以下、「並行計時処理」という)を行う。また、計時部330は、そのソークタイマによる計時データを第3制御器360へ送信できるように構成されているが、計時データに基づいてアラーム信号を出力しなくてもよい。
【0113】
〔第1例〕
先ず、第3実施形態に係る車両用電子制御システムの第1例について説明する。この第1例は、第1実施形態に係る車両電子制御システムにおいて、並行計時処理を実行する第3のECU300を組み込んだものである。これにより、第1制御器160は
図5及び
図6のリーク診断処理を行うものの、第2制御器260は、
図7の計時機能補償処理と一部異なる処理を行う。
【0114】
図12は、第3実施形態に係る車両用電子制御システムの第1例において、第2制御器260が電源電圧V
REG1の供給を受けて起動するたびに1回実行する計時機能補償処理の一例を示す。
図12は、
図7の計時機能補償処理に対して、ステップS207A,S210A,S210B,210Cが追加されている点で異なる。
【0115】
第2制御器260は、ステップS205で設定時間Tset1≠0と判定され、さらにステップS206でRTC130のソークタイマが故障していると判定された場合には、ステップS207に加えて、ステップS207Aを行う。このステップS207Aでは、第2制御器260は、通信制御回路240及び車載通信ネットワーク40を介して、計時部330にIGNSW45のオフ操作後の経過時間を計測させるように計測開始要求信号を第3のECU300へ送信する。一方、第2制御器260は、ステップS205で設定時間Tset1=0と判定されるか、又は、ステップS206でRTC130のソークタイマが正常であると判定された場合には、ステップS207のみならずステップS207Aも行わないようにする。
【0116】
ステップS210において、第2制御器260は、アラーム信号ALM2がHレベルである場合には(YES)、処理をステップS210Aへ進める。ステップS210Aでは、第2制御器260は、通信制御回路240及び車載通信ネットワーク40を介して、第3のECU300の起動を要求する起動要求信号を第3のECU300へ送信する。第3のECU300の起動後、ステップS210Bでは、第2制御器260は、通信制御回路240及び車載通信ネットワーク40を介して、後述のステップS508で第3のECU300から送信された経過時間T3の情報を受信する。そして、ステップS210Cでは、第2制御器260は、設定時間Tset1と経過時間T3との差分の絶対値が所定値未満であるか否かを判定する。ステップS210Cにおいて、第2制御器260は、差分の絶対値が所定値未満であると判定した場合には(YES)、計時部230の計時精度が正常であると判断して、処理をステップS211へ進める。一方、ステップS210Cにおいて、第2制御器260は、差分の絶対値が所定値以上であると判定した場合には(NO)、ステップS211~S214を省略して、第1のECU100を起動させることなく、計時機能補償処理を終了させる。
【0117】
図13は、第3実施形態に係る車両用電子制御システムの第1例において、第3制御器360が電源電圧V
REG3の供給を受けて起動するたびに1回実行する並行計時処理の一例を示す。
【0118】
第3制御器360は、ステップS501~S503において、第2制御器260が
図7のステップS201~S203で行う処理に倣って、処理を行う。また、第3制御器360は、ステップS506~S507において、第2制御器260が
図7のステップS208~S209で行う処理に倣って、処理を行う。さらに、第3制御器360は、ステップS510において、第2制御器260が
図7のステップS214で行う処理に倣って、処理を行う。以下において、
図13のうち、ステップS504~S505,S508~S509について説明し、ステップS501~S503,S506~S507,S510については説明を省略する。
【0119】
第3制御器360は、ステップS503によりSSOFF期間に移行すると、ステップS504において、車載通信ネットワーク40及び通信制御回路340を介して、
図12のステップS207Aにより第2のECU200から送信された計測開始要求信号を受信する。そして、第3制御器360は、ステップS505において、ステップS504により受信した計測開始要求信号を計時部330へ送信する。
【0120】
また、第3制御器360は、ステップS501でIGNSW45のオン操作による起動でないと判定した場合には(NO)、処理をステップS508へ進める。ステップS508では、第3制御器360は、計時部330により計測されたIGNSW45のオフ操作後の経過時間T3の情報を計時部330から受信する。そして、ステップS509では、第3制御器360は、通信制御回路340及び車載通信ネットワーク40を介して、ステップS508を介して取得した経過時間T3の情報を第2のECU200へ送信する。
【0121】
このように第3実施形態に係る車両用電子制御システムの第1例では、第1実施形態に係る車両電子制御システムに対して、並行計時処理を実行する第3のECU300を組み込んでいる。これにより、第2のECU200の計時部230の計時精度を担保し、計時機能補償の信頼性を向上させることができる。
【0122】
〔第2例〕
次に、第3実施形態に係る車両用電子制御システムの第2例について説明する。この第2例は、第2実施形態に係る車両電子制御システムにおいて、並行計時処理が行われる第3のECU300を組み込んだものである。第3制御器360が行う並行計時処理は第1例における
図13と同様であるが、第1制御器160は
図9のリーク診断処理(基本処理)と一部異なる処理を行い、第2制御器260は
図10の計時機能補償処理と一部異なる処理を行う。
【0123】
図14は、第2実施形態に係る車両用電子制御システムの第2例において、第1制御器160が、電源電圧V
REG1の供給を受けて起動するたびに1回実行するリーク診断処理のうち基本処理の一例を示す。
図14は、
図9のリーク診断処理(基本処理)に対して、ステップS316Aが追加されている点で異なる。
【0124】
第1制御器160は、ステップS314でアラーム信号ALM1がLレベルであると判定した場合には(NO)、処理をステップS316Aに進める。ステップS316Aでは、第1制御器160は、後述のステップS413Aで第2のECU200から送信される基本処理要求信号を受信したか否かを判定する。そして、第1制御器160は、基本処理要求信号を受信したと判定した場合には(YES)、処理をステップS317へ進める一方、基本処理要求信号を受信していないと判定した場合には(NO)、処理をステップS321へ進めて、ステップS317~S320を省略する。
【0125】
図15は、第3実施形態に係る車両用電子制御システムの第2例において、第2制御器260が電源電圧V
REG1の供給を受けて起動するたびに1回実行する計時機能補償処理の一例を示す。
図15は、
図10の計時機能補償処理に対して、ステップS411A,S411Bが追加されるとともに、ステップS413がステップS413Aに置き換えられている点で異なる。
【0126】
第2制御器260は、ステップS411により第1及び第3のECU100,300を含む対象ECUを起動させた後、ステップS411Aを行う。ステップS411Aでは、第2制御器260は、前述のステップS210Bと同様に、車載通信ネットワーク40及び通信制御回路240を介して、計時部330により計測された、IGNSW45のオフ操作後の経過時間T3の情報を第3のECU300から受信する。
【0127】
ステップS411Bでは、第2制御器260は、
図12のステップS210Cと同様に、設定時間Tset2と経過時間T3との差分の絶対値が所定値未満であるか否かを判定する。ステップS411Bにおいて、第2制御器260は、差分の絶対値が所定値未満であると判定した場合には(YES)、計時部230の計時精度が正常であると判断して、処理をステップS412へ進める。一方、ステップS210Cにおいて、第2制御器260は、差分の絶対値が所定値以上であると判定した場合には(NO)、処理をステップS414へ進めて、ステップS412,S413Aを省略する。
【0128】
第2制御器260は、ステップS412でRTC130のソークタイマが故障していると判定した場合には(YES)、処理をステップS413Aへ進める。ステップS413Aでは、第2制御器260は、通信制御回路240及び車載通信ネットワーク40を介して、第1制御器160において基本処理の実行を要求する基本処理要求信号を第1のECU100へ送信した後、起動時刻tonの情報を送信する。
【0129】
このように第3実施形態に係る車両用電子制御システムの第2例では、第2実施形態に係る車両電子制御システムに対して、並行計時処理を実行する第3のECU300を組み込んでいる。これにより、第2のECU200の計時部230の計時精度を担保し、計時機能補償の信頼性を向上させることができる。
【0130】
以上、好ましい実施形態及びその変形例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の技術的思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【0131】
第2実施形態に係る車両用電子制御システム及び第3実施形態に係る車両用電子制御システムの第2例において、IGNSW45のオフ操作後に、第2制御器260が所定の制御処理を複数回行うために、設定時間Tset2は、一定間隔毎に、あるいは、予め定められた時間で複数設定されていてもよい。この場合、複数の設定時間Tset2のうち隣接する設定時間どうしの差分が設定時間Tset1よりも十分に小さいECUを第2のECU200として予め選択しておくと好都合である。これは、第2のECU200の起動要求により第1のECU100が起動するたびに算出する停止時間ΔTdownの増加量が細やかとなり、停止時間ΔTdownが所定範囲内(Tset1-α≦ΔTdown≦Tset1+β)に含まれるか否かの判定精度が向上するからである。このため、車両用電子制御システムにおける複数のECUのうち、IGNSW45のオフ操作後に所定の制御処理を行う間隔が想定される設定時間Tset1よりも十分に小さく設定されているECUを第2のECU200として予め選択しておくことが好ましい。
【0132】
第2実施形態に係る車両用電子制御システム及び第3実施形態に係る車両用電子制御システムの第2例において、第1制御器160は、停止時間ΔTdownが所定範囲内(Tset1-α≦ΔTdown≦Tset1+β)にない場合には、リーク診断を行わないこととしていた。しかし、設定時間Tset1以降の料状態の変化が僅少である場合には、停止時間ΔTdownが設定時間Tset1以上になっていれば、所定範囲内に含まれていなくても、リーク診断を行ってもよい。この場合、1つだけ設定された設定時間Tset2、又は、複数設定された設定時間Tset2のうち少なくとも1つが、設定時間Tset1よりも長くなるようなECUを第2のECU200として予め選択しておく必要がある。
【0133】
第3実施形態に係る車両用電子制御システムの第2例では、第2のECU200がアラーム信号ALM2に基づいて起動したときに、以下のようにしていた。すなわち、第2制御器260は、第3のECU300を起動させて計時部330により計測された経過時間T3の情報を受信し、設定時間Tset2と経過時間T3とに基づいて第1制御器160へ基本処理要求信号を送信するか否かを判定していた。これに代えて、第1のECU100が起動要求信号の受信により起動したときに、以下のようにしてもよい。すなわち、第1制御器160は、第3のECU300を起動させて経過時間T3の情報を受信し、設定時間Tset1と経過時間T3とに基づいて、基本処理を実施するか否かを判定してもよい。
【0134】
第3実施形態に係る車両用電子制御システムの第2例において、第2のECU200がアラーム信号ALM2に基づいて起動したときに、第2制御器260は、第1のECU100を含む対象ECUへ起動要求信号を送信していた。これに代えて、第2のECU200がアラーム信号ALM2に基づいて起動したときに、以下のようにしてもよい。すなわち、第2制御器260は、第1のECU100以外の対象ECU(第3のECU300を含む)を起動させて経過時間T3の情報を受信し、設定時間Tset2と経過時間T3とに基づいて第1のECU100へ起動要求信号を送信するか否かを判定してもよい。
【0135】
第1~第3実施形態において、RTC130の故障診断としての第2の診断方法は、第2のECU200の計時部230の計時精度が担保されたときにのみ採用されてもよい。例えば、第2の診断方法は、第2制御器260の起動時に、特定の時間を第2制御器260の固有の計時手段及び計時部230のソークタイマのそれぞれを用いて計測し、これら2つの計時データが乖離していなければ採用できる。また、第3実施形態では、第2の診断方法は、IGNSW45のオフ操作後の経過時間を計時部230及び計時部330のそれぞれのソークタイマを用いて計測し、これら2つの計時データが乖離してなければ採用できる。上記の2つの計時データは、第1及び第2実施形態では、第1及び第2制御器160,260のいずれか一方で行うことができ、第3実施形態では、第1~第3制御器160,260,360のいずれか1つで行うができる。
【0136】
第1~第3実施形態に係る車両用電子制御システムにおいて、第1制御器160は、SSOFF期間が終了した後、シャットダウン状態ではなく、電源電圧VREG1の供給を許容して一部の機能が有効となるスリープ状態に移行してもよい。ただし、第1制御器160は、スリープ状態でも固有の計時機能を喪失することを前提とする。
【0137】
第1~第3実施形態に係る車両用電子制御システムにおいて、第2制御器260及び第3制御器360は常時電源電圧が供給されるものであってもよい。これにより、第2のECU200は計時部230を備えることなく第2制御器260の固有の計時機能により計時を行い、第3のECU300は計時部330を備えることなく第3制御器360の固有の計時機能により計時を行うようにしてもよい。
【0138】
第1~第3実施形態において、IGNSW45がオフ状態のときにECM14が計時機能を喪失しないように構成されている場合には、第2のECU200に代えてECM14が計時機能補償処理を行ってもよい。
【0139】
また、上記の実施形態で説明した各技術的思想及びこれに基づく変形例は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合せて使用することができる。
【符号の説明】
【0140】
1…内燃機関、7…燃料噴射弁、19…燃料タンク、45…イグニッションスイッチ、100…第1のECU、130…RTC(第1計時手段)、200…第2のECU、230…計時部(第2計時手段)、300…第3のECU、330…計時部(第3計時手段)、toff…オフ時刻、ton…起動時刻、ΔTdown…停止時間、Tset1…設定時間(第1設定時間)、Tset2…設定時間(第2設定時間)、T3…経過時間(第3計時手段により計測された経過時間)