(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067428
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 3/00 20060101AFI20240510BHJP
B43K 7/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B43K3/00 B
B43K7/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177491
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 香寿美
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350KF01
(57)【要約】
【課題】軸筒への筆記部材の着脱が容易であり、かつ軸筒を構成する材料の選択の自由度が高められる筆記具を提供する。
【解決手段】中心軸Cに沿って軸方向に延びる軸筒1と、軸方向に延び、軸筒1の内部に着脱可能に取り付けられる筆記部材2と、を備え、軸筒1は、軸筒1の周壁を径方向に貫通する開口部11を有し、開口部11は、軸筒1の軸方向の全長にわたって延びる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って軸方向に延びる軸筒と、
軸方向に延び、前記軸筒の内部に着脱可能に取り付けられる筆記部材と、を備え、
前記軸筒は、前記軸筒の周壁を径方向に貫通する開口部を有し、
前記開口部は、前記軸筒の軸方向の全長にわたって延びる、
筆記具。
【請求項2】
前記軸筒は、単一の部材により構成される、
請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記軸筒は、軸方向の少なくとも一部に配置され、前記筆記部材に係止される係止部を有し、
前記係止部は、前記中心軸回りの半周以上にわたって前記筆記部材を径方向外側から囲う、
請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記軸筒は、
前記筆記部材の前側への移動を規制する前側規制部と、
前記筆記部材の後側への移動を規制する後側規制部と、を有する、
請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項5】
前記筆記部材は、
前記筆記部材のうち最も外径寸法が小さいペン先と、
前記筆記部材のうち最も外径寸法が大きい本体部と、
軸方向において前記ペン先と前記本体部との間に配置され、後側へ向かうに従い外径寸法が段階的にまたは徐々に大きくなる外径変化部と、を有し、
前記前側規制部は、前記外径変化部に前側から接触する、
請求項4に記載の筆記具。
【請求項6】
前記後側規制部は、前記筆記部材の後端面に後側から接触する、
請求項4に記載の筆記具。
【請求項7】
前記軸筒は、前記軸筒の周壁を貫通する窓部を有し、
前記筆記部材の外周面の一部が、前記窓部を通して外部に露出される、
請求項1または2に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の筆記具として、軸筒の内部に筆記部材が着脱可能に取り付けられる構成が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のシャープペンシル用クリップ筒では、シャープペンシル装脱用横孔部から挿入筒部にシャープペンシルの握り部分を挿入し、シャープペンシルの頭部に、掛合筒部を弾発的に掛合させる。これによりシャープペンシルは、シャープペンシル用クリップ筒に嵌合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、シャープペンシル用クリップ筒(軸筒)の細巾の部分を反らしたり伸ばしたりして弾性変形させつつ、シャープペンシル(筆記部材)を着脱する。この際の弾性変形量が大きいため、軸筒を構成する材料には弾性変形しやすいものを選択する必要がある。軸筒として、例えば硬質の樹脂材料や、金属材料等を用いることはできず、材料の選択の自由度が低かった。
また、軸筒に筆記部材を着脱する際の作業性を、より向上させる点に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、軸筒への筆記部材の着脱が容易であり、かつ軸筒を構成する材料の選択の自由度が高められる筆記具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0007】
〔本発明の態様1〕
中心軸に沿って軸方向に延びる軸筒と、軸方向に延び、前記軸筒の内部に着脱可能に取り付けられる筆記部材と、を備え、前記軸筒は、前記軸筒の周壁を径方向に貫通する開口部を有し、前記開口部は、前記軸筒の軸方向の全長にわたって延びる、筆記具。
【0008】
この筆記具では、筆記具の使用者が、指先や指間で軸筒を保持し、筆記を行う。使用者は、筆記部材が収容される軸筒を把持することにより、スムーズに安定して筆記することができる。
【0009】
そして本発明では、軸筒が、軸筒の軸方向の全長にわたって配置される開口部を有する。すなわち、開口部は、軸筒の軸方向のいずれの位置の断面(中心軸と垂直な断面)においても、軸筒の周壁を径方向に貫通している。言い換えると、軸筒はその全長にわたって、中心軸と垂直な断面において環状をなす部分を有さない。軸筒は、軸方向の全長にわたって、半割り筒状等に形成されている。
【0010】
このため、軸筒の内部に筆記部材を取り付ける際、従来のように軸筒を反らしたり伸ばしたりしなくても、つまり大きく弾性変形させなくても、本発明では開口部を通して、軸筒の内部に筆記部材をスムーズに挿入することができる。また、軸筒の内部から筆記部材を取り外す際、この開口部を通して筆記部材をスムーズに取り出すことができる。このため、軸筒への筆記部材の着脱作業が容易である。
【0011】
また、筆記部材の着脱にあたり軸筒を大きく弾性変形させる必要がないため、軸筒を、例えば硬質の樹脂材料や、金属材料等により構成することが可能となる。このため、軸筒を構成する材料の選択の自由度が高められる。また、材料の選択肢が広がることにより、筆記具の触り心地や使用感、外観のデザイン性などを高めることが可能となる。
【0012】
以上より本発明によれば、軸筒への筆記部材の着脱が容易であり、かつ軸筒を構成する材料の選択の自由度が高められる。
また本発明では、開口部が、軸筒の周壁に軸方向の全長にわたって開口していることで、軸筒の材料使用量を削減することができる。例えば、軸筒をプラスチック材料により構成した場合には、プラスチック材料の使用量を減らすことができ、地球環境等への配慮がなされた筆記具を提供することができる。
【0013】
〔本発明の態様2〕
前記軸筒は、単一の部材により構成される、態様1に記載の筆記具。
【0014】
この場合、軸筒が単一の部材により形成されているため、部品点数が削減され、構造がシンプルになり、筆記具の製造が容易となる。
【0015】
〔本発明の態様3〕
前記軸筒は、軸方向の少なくとも一部に配置され、前記筆記部材に係止される係止部を有し、前記係止部は、前記中心軸回りの半周以上にわたって前記筆記部材を径方向外側から囲う、態様1または2に記載の筆記具。
【0016】
この場合、筆記部材が、軸筒の係止部により安定して軸筒内に保持される。筆記部材が、開口部を通して意図せず軸筒の内部から外部へ抜け出すようなことが抑えられる。
【0017】
〔本発明の態様4〕
前記軸筒は、前記筆記部材の前側への移動を規制する前側規制部と、前記筆記部材の後側への移動を規制する後側規制部と、を有する、態様1から3のいずれか1つに記載の筆記具。
【0018】
この場合、筆記部材が軸筒の内部に取り付けられた状態で、前側規制部によって筆記部材の前側への移動が規制され、後側規制部によって筆記部材の後側への移動が規制される。すなわち、軸筒に対する筆記部材の前後移動が抑えられるため、例えば、使用者の筆記時の筆圧の大きさ等に関わらず、この筆記具によってスムーズに安定して筆記を行うことができる。
【0019】
〔本発明の態様5〕
前記筆記部材は、前記筆記部材のうち最も外径寸法が小さいペン先と、前記筆記部材のうち最も外径寸法が大きい本体部と、軸方向において前記ペン先と前記本体部との間に配置され、後側へ向かうに従い外径寸法が段階的にまたは徐々に大きくなる外径変化部と、を有し、前記前側規制部は、前記外径変化部に前側から接触する、態様4に記載の筆記具。
【0020】
この場合、外径変化部には、前側を向く段部や、前側へ向かうに従い縮径するテーパ筒部などが設けられる。このような外径変化部に対して、前側規制部が前側から接触するので、前側規制部によって、より安定して筆記部材の前側への移動を抑えることができる。
【0021】
〔本発明の態様6〕
前記後側規制部は、前記筆記部材の後端面に後側から接触する、態様4または5に記載の筆記具。
【0022】
上記構成によれば、筆記部材に特別な構造や複雑な構造を用いることなく、例えば従来品(規格に準じた筆記部材、すなわち流通品)の筆記部材を用いた場合であっても、筆記部材の後側への移動を、後側規制部によって安定して抑えることができる。
【0023】
〔本発明の態様7〕
前記軸筒は、前記軸筒の周壁を貫通する窓部を有し、前記筆記部材の外周面の一部が、前記窓部を通して外部に露出される、態様1から6のいずれか1つに記載の筆記具。
【0024】
この場合、筆記部材の外周面の一部が、軸筒の窓部から外部に露出される。例えば、筆記部材の外周面の色と軸筒の周壁の色とを適宜組み合わせたり、窓部の内周縁(枠)の形状を適宜設定したりすることで、筆記具の外観のデザイン性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の前記態様の筆記具によれば、軸筒への筆記部材の着脱が容易であり、かつ軸筒を構成する材料の選択の自由度が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本実施形態の筆記具を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の筆記具を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、筆記具を示す断面図(縦断面図)である。
【
図5】
図5は、
図4のV-V断面を示す断面図(横断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施形態の筆記具10について、
図1~
図5を参照して説明する。本実施形態の筆記具10は、例えばボールペン等である。
【0028】
図1に示すように、筆記具10は、中心軸Cを中心とする概略円柱状をなしている。筆記具10は、中心軸Cに沿って延びる軸筒1と、軸筒1の内部に着脱可能に取り付けられる筆記部材2と、を備える。軸筒1及び筆記部材2は、中心軸Cを共通軸として互いに同軸に配置されている。
【0029】
本実施形態で用いる方向の定義について、説明する。
本実施形態では、筆記具10の中心軸Cが延びる方向、つまり中心軸Cに沿う方向を、軸方向と呼ぶ。ここで、筆記具10の軸方向の両端部のうち、一方を第1端部、他方を第2端部とする。筆記部材2のペン先を構成するチップ21は、筆記具10の軸方向の両端部のうち、第1端部に配置される。軸方向のうち、チップ21が配置される第1端部から第2端部へ向かう方向を後側と呼び、第2端部から第1端部へ向かう方向を前側と呼ぶ。このため、軸方向は前後方向と言い換えてもよい。各図において軸方向(前後方向)は、Y軸方向に相当する。前側は-Y側に相当し、後側は+Y側に相当する。
【0030】
中心軸Cと直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Cに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Cから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
また、中心軸C回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。
【0031】
図2及び
図5に示すように、軸筒1は、軸筒1の周壁を径方向に貫通する開口部11を有する。開口部11は、中心軸Cを中心とする放射方向のうち、所定の径方向に向けて開口する。
本実施形態では、
図5に示すように中心軸Cと垂直な断面(横断面)において、開口部11の周方向の中心と、中心軸Cとを結ぶ方向(
図5に符号Vの直線で示す方向)を、上下方向と呼ぶ。上下方向のうち、開口部11の周方向の中心から中心軸Cへ向かう方向を上側と呼び、中心軸Cから開口部11の周方向の中心へ向かう方向を下側と呼ぶ。各図において上下方向は、Z軸方向に相当する。上側は+Z側に相当し、下側は-Z側に相当する。
【0032】
軸方向(前後方向)及び上下方向と直交する方向(
図5に符号Hの直線で示す方向)を、左右方向と呼ぶ。各図において左右方向は、X軸方向に相当する。左側は-X側に相当し、右側は+X側に相当する。
【0033】
なお本実施形態において、前側、後側、上側、下側、左側及び右側とは、各構成要素の相対位置関係等を説明するための便宜的な名称である。このため、筆記具10の使用時などにおける実際の配置関係等は、これらの名称により限定されるものではない。
【0034】
筆記具10の各構成要素について、説明する。
図1及び
図2に示すように、筆記部材2は、軸筒1の内部に収容される。筆記部材2は、軸筒1の内部から取り外し可能である。すなわち、筆記部材2は交換可能である。筆記部材2は、替芯またはレフィル等と言い換えてもよい。
【0035】
図3に示すように、筆記部材2は、中心軸Cを中心とする多段円筒状であり、軸方向に延びる。筆記部材2は、筆記部材2のうち最も外径寸法が小さいチップ(ペン先)21と、筆記部材2のうち最も外径寸法が大きいインク貯留筒(本体部)22と、軸方向においてチップ21とインク貯留筒22との間に配置され、後側へ向かうに従い外径寸法が段階的にまたは徐々に大きくなる外径変化部23と、を有する。
【0036】
チップ21は、筆記部材2の前端部に配置される。チップ21は、中心軸Cを中心とする略円筒状であり、軸方向に延びる。チップ21のうち前端部は、前側へ向かうに従い縮径するテーパ筒状である。チップ21のうち前端部以外の部分は、円筒状である。
【0037】
チップ21は、チップ21の前端部に配置されるボール21aと、ボール21aを保持するホルダー21bと、を有する。
図1及び
図2に示すように、筆記部材2が軸筒1の内部に装着されたときに、チップ21のうち少なくとも前端部は、軸筒1の前端面から前側へ突出する。
【0038】
図3に示すように、インク貯留筒22は、チップ21よりも後側に配置される。インク貯留筒22は、中心軸Cを中心とする円筒状であり、軸方向に延びる。特に図示しないが、インク貯留筒22の内部には、例えばゲルインク等のインクと、インクの後側に配置されてインクの蒸発や逆流(後側への流動)を抑えるグリスと、が収容される。インク貯留筒22は、カートリッジ等と言い換えてもよい。インク貯留筒22の内部とチップ21の内部とは、後述する外径変化部23の内部を通して、互いに連通する。
【0039】
図1及び
図2に示すように、筆記部材2が軸筒1の内部に取り付けられたときに、インク貯留筒22の後端面は、軸筒1の後端面よりも前側に配置される。言い換えると、軸筒1の後端面は、インク貯留筒22の後端面すなわち筆記部材2の後端面よりも、後側に突出している。
【0040】
外径変化部23は、中心軸Cを中心とする略多段円筒状であり、軸方向に延びる。外径変化部23の前端部は、チップ21の後端部と接続される。外径変化部23の後端部は、インク貯留筒22の前端部と接続される。
【0041】
図3に示すように、外径変化部23は、円筒部23aと、テーパ筒部23bと、段部23c,23dと、を有する。
円筒部23aは、中心軸Cを中心とする円筒状である。円筒部23aの外径寸法は、チップ21の外径寸法よりも大きく、インク貯留筒22の外径寸法よりも小さい。
【0042】
テーパ筒部23bは、円筒部23aよりも後側に配置される。テーパ筒部23bは、中心軸Cを中心とするテーパ筒状であり、後側へ向かうに従い徐々に外径寸法が大きくなる(拡径する)。
【0043】
段部23c,23dは、チップ21と円筒部23aとの間、及び、円筒部23aとテーパ筒部23bとの間の少なくとも一方に設けられ、本実施形態では両方に設けられる。すなわち、段部23c,23dは、外径変化部23に軸方向に並んで複数設けられており、本実施形態では一対設けられる。一対の段部23c,23dのうち、一方の段部23cは、チップ21と円筒部23aとの間に配置され、前側を向く。一対の段部23c,23dのうち、他方の段部23dは、円筒部23aとテーパ筒部23bとの間に配置され、前側を向く。
【0044】
軸筒1は、例えば樹脂製や金属製等である。ただしこれに限らず、軸筒1は、例えばエラストマー製やゴム製、木製等であってもよい。本実施形態の軸筒1には、多種多様な材料を適宜選択することができる。
【0045】
図1及び
図2に示すように、軸筒1は、中心軸Cに沿って軸方向に延びる。本実施形態では軸筒1が、単一の部材により一体的に構成されている。軸筒1の外周面のうち前端部は、前側へ向かうに従い縮径するテーパ面状をなしている。
軸筒1は、開口部11と、係止部12と、前側規制部13と、後側規制部14と、窓部15と、を有する。
【0046】
図2及び
図5に示すように、本実施形態では開口部11が、軸筒1の周壁のうち下側(-Z側)部分に配置されている。すなわち開口部11は、下側へ向けて開口される。開口部11は、軸筒1の軸方向の全長にわたって延びている。言い換えると、軸筒1の周壁のうち周方向の一部(本実施形態では下部)は、開口部11が設けられることによって、軸方向の全長にわたって分断されている。すなわち、開口部11は、軸筒1の周壁を、径方向に貫通しかつ軸方向にも貫通していると言える。このため軸筒1は、半割り筒状等の形状を有する。軸筒1の軸方向の各位置における中心軸Cと垂直な断面(横断面)の形状は、いずれも環状ではなく、周方向に延びる湾曲状等をなす。
【0047】
係止部12は、軸筒1のうち軸方向の少なくとも一部に配置され、筆記部材2に係止される。
図5に示すように、係止部12は、中心軸C回りの半周以上にわたって筆記部材2を径方向外側から囲う。すなわち、係止部12は、中心軸Cを中心とする周方向の180°以上の範囲にわたって、筆記部材2の外周面を径方向外側から覆っている。
【0048】
このため、開口部11のうち、軸方向において係止部12と同じ位置に配置される部分の開口寸法Wは、筆記部材2のうち係止部12に係止される部分の外径寸法D以下である。上記開口寸法Wは、上記外径寸法Dよりも小さいことがより好ましい。
上記構成により、係止部12は、筆記部材2が開口部11を通して軸筒1の内部から外部へ抜け出すことを規制する。
【0049】
本実施形態では、係止部12が、軸筒1のうち少なくともテーパ筒部23b(外径変化部23)と対向する部分に配置される。ただしこれに限らず、係止部12は、軸筒1のうち少なくともチップ(ペン先)21と対向する部分に配置されていてもよい。あるいは、係止部12は、軸筒1のうち少なくともインク貯留筒(本体部)22と対向する部分に配置されていてもよい。
【0050】
係止部12は、軸筒1に1つのみ設けられていてもよく、または、軸方向に互いに間隔をあけて複数設けられていてもよい。あるいは、係止部12は、軸筒1の軸方向全長にわたって設けられていてもよい。
なお、軸筒1のうち係止部12以外の部分については、中心軸C回りの半周以上にわたって筆記部材2を囲っていなくてもよい。
【0051】
そして、筆記部材2を軸筒1の内部に挿入する際は、開口部11のうち係止部12に位置する部分の開口寸法Wが、筆記部材2のうち係止部12に対向する部分の外径寸法D以上となるまで、開口部11を押し広げるように軸筒1を僅かに弾性変形させればよい。
【0052】
詳しくは、例えば
図4に示すように、筆記部材2のチップ(ペン先)21を軸筒1の内周面の前端部に接触させた状態(
図4に2点鎖線で示すように、軸筒1に対して筆記部材2を前傾させた姿勢)から、筆記部材2を、チップ21を支点に回動させつつ開口部11内に押し込んでいく。これにより、軸筒1が僅かに弾性変形させられ開口部11の開口寸法Wが広がり、筆記部材2は軸筒1の内部に挿入可能となり、軸筒1内に嵌合する。なお
図4は、筆記具10の中心軸Cに沿う断面(中心軸Cを含む断面)、すなわち縦断面を表している。
【0053】
また、筆記部材2を軸筒1から取り外す際は、例えば筆記部材2の後端面を指先等で押さえ、筆記部材2を、チップ21を支点に上述の回動の向きとは逆向きに回動させる。これにより、開口部11が筆記部材2によって僅かに押し広げられる(軸筒1が僅かに弾性変形させられる)ので、筆記部材2を軸筒1の外部へ取り出すことができる。
【0054】
図2及び
図4に示すように、前側規制部13は、軸筒1の内周面に配置される。本実施形態では前側規制部13が、前側へ向かうに従い内径寸法が小さくなる(縮径する)テーパ面状をなす。前側規制部13は、テーパ筒部23bの外周面に嵌合する。前側規制部13は、テーパ筒部23bに前側から接触することにより、筆記部材2の前側への移動を規制している。すなわち、前側規制部13は、外径変化部23に前側から接触し、筆記部材2の前側への移動を規制する。
【0055】
図4に示すように、後側規制部14は、軸筒1の内周面に配置される。本実施形態では後側規制部14が、前側を向く段差面を有する。ただしこれに限らず、特に図示しないが後側規制部14は、例えば、軸筒1の内周面から径方向内側に突出する突起状等であってもよい。後側規制部14は、筆記部材2の後端面に後側から接触する。これにより後側規制部14は、筆記部材2の後側への移動を規制する。
【0056】
図1及び
図4に示すように、窓部15は、軸筒1の周壁を貫通する。窓部15は、軸筒1の周壁のうち、周方向において開口部11が位置する部分とは異なる部分に配置される。本実施形態では窓部15が、軸筒1の周壁のうち上側(+Z側)部分に配置される。
【0057】
本実施形態では窓部15が、軸方向に延びる長孔状をなす。窓部15は、径方向から見て、筆記部材2の一部と重なって配置される。このため、筆記部材2の外周面の一部は、窓部15を通して筆記具10の外部に露出される。本実施形態では窓部15が、径方向から見て、インク貯留筒22の外周面と重なる。
【0058】
なお、窓部15の形状は、本実施形態の長孔状に限らない。窓部15は、例えば、円孔状、楕円孔状、長円孔状、多角形孔状、スリット状などであってもよい。あるいは、窓部15は、例えば所定の図柄、図形、記号、文字等が表現された孔状であってもよい。また、窓部15は、軸方向または周方向に並んで複数設けられていてもよい。
【0059】
以上説明した本実施形態の筆記具10では、筆記具10の使用者が、指先や指間で軸筒1を保持し、筆記を行う。使用者は、筆記部材2が収容される軸筒1を把持することにより、スムーズに安定して筆記することができる。
【0060】
具体的に、使用者は、例えば軸筒1の周壁のうち開口部11以外の部分、すなわち上側(+Z側)及び左右方向(X軸方向)を向く部分を、人差し指及び親指等で支持し、軸筒1の周壁のうち開口部11周辺の部分、すなわち下側(-Z側)を向く部分を、中指及び指間等で支持する。これにより、筆記具10を安定して保持することができる。なお上記「指間」とは、使用者の手のうち人差し指の付け根と親指の付け根との間に位置する部分を指す。
【0061】
そして本実施形態では、軸筒1が、軸筒1の軸方向の全長にわたって配置される開口部11を有する。すなわち、開口部11は、軸筒1の軸方向のいずれの位置の断面(横断面)においても、軸筒1の周壁を径方向に貫通している。言い換えると、軸筒1はその全長にわたって、横断面において環状をなす部分を有さない。軸筒1は、軸方向の全長にわたって、半割り筒状等に形成されている。
【0062】
このため、軸筒1の内部に筆記部材2を取り付ける際、従来のように軸筒を反らしたり伸ばしたりしなくても、つまり大きく弾性変形させなくても、本実施形態では開口部11を通して、軸筒1の内部に筆記部材2をスムーズに挿入することができる。また、軸筒1の内部から筆記部材2を取り外す際、この開口部11を通して筆記部材2をスムーズに取り出すことができる。このため、軸筒1への筆記部材2の着脱作業が容易である。
【0063】
また、筆記部材2の着脱にあたり軸筒1を大きく弾性変形させる必要がないため、軸筒1を、例えば硬質の樹脂材料や、金属材料等により構成することが可能となる。このため、軸筒1を構成する材料の選択の自由度が高められる。また、材料の選択肢が広がることにより、筆記具10の触り心地や使用感、外観のデザイン性などを高めることが可能となる。
【0064】
以上より本実施形態によれば、軸筒1への筆記部材2の着脱が容易であり、かつ軸筒1を構成する材料の選択の自由度が高められる。また、筆記具10のデザイン性や使用感を高めることもできる。
また本実施形態では、開口部11が、軸筒1の周壁に軸方向の全長にわたって開口していることで、軸筒1の材料使用量を削減することができる。例えば、軸筒1をプラスチック材料により構成した場合には、プラスチック材料の使用量を減らすことができ、地球環境等への配慮がなされた筆記具10を提供することができる。
【0065】
また本実施形態では、軸筒1が単一の部材により一体に形成されているため、部品点数が削減され、構造がシンプルになり、筆記具10の製造が容易となる。
【0066】
また本実施形態では、軸筒1の係止部12が、径方向外側から周方向の半周以上にわたって筆記部材2を囲う。このため、筆記部材2が、軸筒1の係止部12により安定して軸筒1内に保持される。筆記部材2が、開口部11を通して意図せず軸筒1の内部から外部へ抜け出すようなことが抑えられる。
【0067】
また本実施形態では、軸筒1が、前側規制部13と、後側規制部14と、を有する。
この場合、筆記部材2が軸筒1の内部に取り付けられた状態で、前側規制部13によって筆記部材2の前側への移動が規制され、後側規制部14によって筆記部材2の後側への移動が規制される。すなわち、軸筒1に対する筆記部材2の前後移動が抑えられるため、例えば、使用者の筆記時の筆圧の大きさ等に関わらず、この筆記具10によってスムーズに安定して筆記を行うことができる。
【0068】
また本実施形態では、前側規制部13が、筆記部材2の外径変化部23に前側から接触する。
本実施形態のように外径変化部23には、前側を向く段部23c,23dや、前側へ向かうに従い縮径するテーパ筒部23bなどが設けられる。このような外径変化部23に対して、前側規制部13が前側から接触するので、前側規制部13によって、より安定して筆記部材2の前側への移動を抑えることができる。
【0069】
なお、本実施形態では前側規制部13が、外径変化部23のうちテーパ筒部23bに対して前側から接触するが、これに限らない。前側規制部13は、例えば、外径変化部23のうち複数の段部23c,23dの1つ以上に対して、前側から接触してもよい。
【0070】
また本実施形態では、後側規制部14が、筆記部材2の後端面に後側から接触する。
上記構成によれば、筆記部材2に特別な構造や複雑な構造を用いることなく、例えば従来品(規格に準じた筆記部材、すなわち流通品)の筆記部材を用いた場合であっても、筆記部材2の後側への移動を、後側規制部14によって安定して抑えることができる。
【0071】
また本実施形態では、筆記部材2の外周面の一部が、窓部15から筆記具10の外部に露出される。
この場合、例えば、筆記部材2の外周面の色と軸筒1の周壁の色とを適宜組み合わせたり、窓部15の内周縁(枠)の形状を適宜設定したりすることで、筆記具10の外観のデザイン性をより高めることができる。
【0072】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0073】
前述の実施形態では、軸筒1の前側規制部13及び後側規制部14が、テーパ面状、段差状または突起状をなす例を挙げたが、これに限らない。また、前側規制部13及び後側規制部14の一方または両方が、設けられなくてもよい。この場合、例えば、互いに接触する軸筒1の内周面及び筆記部材2の外周面のうち少なくとも一方に、滑り止め機能を有する表面加工やコーティング等が施されることが好ましい。これにより、軸筒1と筆記部材2との前後方向への相対移動が抑制される。
【0074】
また、特に図示しないが、軸筒1の一部(例えば係止部12など)を、軸筒1の本体部材とは別部材により構成してもよい。これにより、軸筒1の各部の機能をより高めたり安定させたりすることができる。すなわち、軸筒1は、複数の部材を組み合わせて構成されていてもよい。
【0075】
特に図示しないが、軸筒1は、その外周面に滑り止め部を有していてもよい。滑り止め部は、例えば、滑り止め機能を有するローレット加工やシボ加工などの表面加工、またはコーティング等が施されることにより形成される。
【0076】
また前述の実施形態では、筆記具10としてボールペンを例に挙げて説明したが、これに限らない。筆記具10は、ボールペン以外のペン等であってもよい。
【0077】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態及び変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の筆記具によれば、軸筒への筆記部材の着脱が容易であり、かつ軸筒を構成する材料の選択の自由度が高められる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0079】
1…軸筒、2…筆記部材、10…筆記具、11…開口部、12…係止部、13…前側規制部、14…後側規制部、15…窓部、21…チップ(ペン先)、22…インク貯留筒(本体部)、23…外径変化部、C…中心軸、D…外径寸法