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特開2024-67440ドープ電極の製造方法及び蓄電デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067440
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ドープ電極の製造方法及び蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20240510BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20240510BHJP
   H01G 11/50 20130101ALI20240510BHJP
【FI】
H01M4/139
H01G11/86
H01G11/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177506
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】307037543
【氏名又は名称】武蔵エナジーソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩史
(72)【発明者】
【氏名】小島 健治
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】直井 雅也
(72)【発明者】
【氏名】石川 正司
(72)【発明者】
【氏名】中下 恭祐
(72)【発明者】
【氏名】奥田 大輔
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AB06
5E078BA18
5E078BA26
5E078BA44
5E078BA53
5E078BB24
5E078LA03
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA02
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050GA16
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA14
5H050HA17
(57)【要約】
【課題】対極ユニットの表面にアルカリ金属の酸化膜が形成されること等を抑制できるドープ電極の製造方法及び蓄電デバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】活物質層を含む電極と、前記電極に対向する対極ユニットとを、ドープ溶液を介して電気的に接続することで、前記アルカリ金属を前記活物質層にドープする。前記ドープ溶液は、(A)成分、並びに、(B)成分を含む。前記ドープ溶液における前記(A)のモル比MAと、前記ドープ溶液における前記(B)のモル比MBとについて、以下の式(1)が成立する。式(1) 0.10<MA/MB<0.65。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属がドープされた活物質層を含むドープ電極の製造方法であって、
前記活物質層を含む電極と、前記電極に対向する対極ユニットとを、ドープ溶液を介して電気的に接続することで、前記アルカリ金属を前記活物質層にドープし、
前記ドープ溶液は、(A)リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、及びリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミドから選択される1種以上であるリチウムイミド塩、並びに、(B)1、2-ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、及びリン酸トリメチルから選択される1種以上である有機溶媒を含み、
前記ドープ溶液における前記(A)のモル比MAと、前記ドープ溶液における前記(B)のモル比MBとについて、以下の式(1)が成立するドープ電極の製造方法。
式(1) 0.10<MA/MB<0.65
【請求項2】
請求項1に記載のドープ電極の製造方法であって、
前記アルカリ金属を前記活物質層にドープするときの電流密度が20mA/cmより大きく200mA/cm未満であるドープ電極の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドープ電極の製造方法であって、
前記ドープ溶液における前記(A)の濃度が1.0モル/L以上4.0モル/L以下であるドープ電極の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のドープ電極の製造方法であって、
前記アルカリ金属を前記活物質層にドープするとき、前記電極と前記対極ユニットとの間に存在する前記ドープ電極が流動するドープ電極の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のドープ電極の製造方法であって、
前記アルカリ金属を前記活物質層にドープするとき、前記ドープ溶液の温度が30℃以上80℃未満であるドープ電極の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のドープ電極の製造方法であって、
前記ドープ溶液は、(C)エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニルカーボネート、及びフッ化エーテル類から選択される1種以上である有機溶媒をさらに含むドープ電極の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のドープ電極の製造方法であって、
前記活物質層に含まれる活物質のうち、20質量%以上100質量%以下は、層状構造を有する炭素化合物であるドープ電極の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のドープ電極の製造方法であって、
前記活物質層に含まれる活物質のうち、10質量%以上100質量%以下は、ケイ素を含む活物質であり、
前記アルカリ金属を前記活物質層にドープした後、環状カーボネート系化合物、ニトリル系化合物、ホスフェート系化合物、ボレート系化合物、サルフェート系化合物、スルトン系化合物、フッ化ベンゼン系化合物、及びシラン系化合物から選択される1種以上を含み、前記ドープ溶液とは異なる処理液と、前記電極とを接触させるドープ電極の製造方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のドープ電極の製造方法であって、
前記活物質層に含まれる活物質のうち、10質量%以上100質量%以下は、ケイ素を含む活物質であり、
前記アルカリ金属を前記活物質層にドープした後、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニルカーボネート、1、3-プロパンスルトン、及びエチレンサルフェートから選択される1種以上を含み、前記ドープ溶液とは異なる処理液と、前記電極とを接触させるドープ電極の製造方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のドープ電極の製造方法により前記ドープ電極を製造し、
前記ドープ電極と、前記ドープ電極とは異なる電極と、前記ドープ溶液とは異なる組成の電解液とを用いて電極セルを形成する蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドープ電極の製造方法及び蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドープ電極は、アルカリ金属がドープされた活物質層を含む電極である。ドープ電極は、例えば、以下のように製造される。帯状の電極を用意する。電極は、集電体と、活物質層とを備える。活物質層は、集電体の表面に形成されている。活物質層は、活物質を含む層である。電極の活物質層には、未だアルカリ金属がドープされていない。
【0003】
電極は、ロールツーロールの方式により搬送される。搬送される電極は、ドープ槽内を通過する。ドープ槽内には、ドープ溶液と対極ユニットとが収容されている。対極ユニットはアルカリ金属を含む。電極は、ドープ槽内を通過するとき、対極ユニットと対向する。ドープ槽内において、電極と対極ユニットとを、ドープ溶液を介して電気的に接続することで、アルカリ金属が活物質層にドープされる。その結果、電極はドープ電極となる。ドープ電極の製造方法は特許文献1~4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-308212号公報
【特許文献2】特開2008-77963号公報
【特許文献3】特開2012-49543号公報
【特許文献4】特開2012-49544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドープ電極の生産性を向上させるために、電極の搬送速度を高くすることが考えられる。電極の反応速度を高くするほど、電極がドープ槽内に滞留する時間が短くなる。活物質層におけるドープ量を所定値以上に保つためには、電極がドープ槽内に滞留する時間が短いほど、電極と対極ユニットとの間に流れる電流の電流密度を高くする必要がある。
【0006】
電極と対極ユニットとの間に流れる電流の電流密度を高くした場合、対極ユニットの表面にアルカリ金属の酸化膜が形成されたり、ドープ電極の表面にアルカリ金属が析出したりし易い。
【0007】
本開示の1つの局面では、電極と対極ユニットとの間に流れる電流の電流密度を高くした場合でも、対極ユニットの表面にアルカリ金属の酸化膜が形成されたり、ドープ電極の表面にアルカリ金属が析出したりすることを抑制できるドープ電極の製造方法及び蓄電デバイスの製造方法を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの局面は、アルカリ金属がドープされた活物質層を含むドープ電極の製造方法である。ドープ電極の製造方法では、前記活物質層を含む電極と、前記電極に対向する対極ユニットとを、ドープ溶液を介して電気的に接続することで、前記アルカリ金属を前記活物質層にドープする。
【0009】
前記ドープ溶液は、(A)リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、及びリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミドから選択される1種以上であるリチウムイミド塩、並びに、(B)1、2-ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、及びリン酸トリメチルから選択される1種以上である有機溶媒を含む。
【0010】
前記ドープ溶液における前記(A)のモル比MAと、前記ドープ溶液における前記(B)のモル比MBとについて、以下の式(1)が成立する。
式(1) 0.10<MA/MB<0.65
本開示の1つの局面であるドープ電極の製造方法によれば、電極と対極ユニットとの間に流れる電流の電流密度を高くした場合でも、対極ユニットの表面にアルカリ金属の酸化膜が形成されたり、ドープ電極の表面にアルカリ金属が析出したりすることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電極の構成を表す平面図である。
図2図1におけるII-II断面を表す断面図である。
図3】電極製造システムの構成を表す説明図である。
図4】ドープ槽の構成を表す説明図である。
図5】対極ユニットの構成を表す説明図である。
図6】ノズルの構成を表す説明図である。
図7】上方から見たときの、ノズル、電極、及び対極ユニットの配置を表す説明図である。
図8】電極試験体の構成を表す平面図である。
図9】電極ユニットの構成を表す平面図である。
図10】ステンレス板の構成を表す平面図である。
図11】対極ユニットの構成を表す断面図である。
図12】テフロン(登録商標)板の構成を表す平面図である。
図13】スペーサの構成を表す平面図である。
図14】簡易ドープ電極製造装置の構成を表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
1.電極1の構成
図1図2に基づき、電極1の構成を説明する。電極1は帯状の形状を有する。電極1は、集電体3と、活物質層5とを備える。集電体3は帯状の形状を有する。活物質層5は、集電体3の両面にそれぞれ形成されている。
【0013】
電極1の表面には、活物質層形成部6と、活物質層未形成部7とがある。活物質層形成部6は、活物質層5が形成された部分である。活物質層未形成部7は、活物質層5が形成されていない部分である。活物質層未形成部7では、集電体3が露出している。
【0014】
活物質層未形成部7は、電極1の長手方向Lに延びる帯状の形態を有する。活物質層未形成部7は、電極1の幅方向Wにおいて、電極1の端部に位置する。
集電体3として、例えば、銅、ニッケル、ステンレス等の金属箔が好ましい。また、集電体3は、前記金属箔上に炭素材料を主成分とする導電層が形成されたものであってもよい。集電体3の厚みは、例えば、5~50μmである。
【0015】
活物質層5は、例えば、活物質及びバインダー等を含有するスラリーを集電体3上に塗布し、乾燥させることにより作製できる。
前記バインダーとして、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、NBR等のゴム系バインダー;ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、特開2009-246137号公報に開示されているようなフッ素変性(メタ)アクリル系バインダー等が挙げられる。
【0016】
前記スラリーは、活物質及びバインダーに加えて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分として、例えば、導電剤、増粘剤等が挙げられる。導電剤として、例えば、カーボンブラック、黒鉛、気相成長炭素繊維、金属粉末等が挙げられる。増粘剤として、例えば、カルボキシルメチルセルロース、そのNa塩又はアンモニウム塩、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。
【0017】
活物質層5の厚さは特に限定されない。活物質層5の厚さは、例えば、5μm以上、500μm以下、好ましくは10μm以上、200μm以下、特に好ましくは10μm以上、100μm以下である。
【0018】
活物質層5に含まれる活物質は、アルカリ金属イオンの挿入及び脱離を利用する電池又はキャパシタに適用可能な電極活物質であれば特に限定されない。活物質は、負極活物質であってもよいし、正極活物質であってもよい。
【0019】
負極活物質は特に限定されない。負極活物質として、例えば、黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、又は黒鉛粒子をピッチや樹脂の炭化物で被覆した複合炭素材料等の炭素材料;リチウムと合金化が可能なSi、Sn等の金属又は半金属若しくはこれらの酸化物を含む材料等が挙げられる。
【0020】
活物質として、例えば、ケイ素を含む活物質がある。ケイ素を含む活物質は、例えば、負極活物質である。ケイ素を含む活物質として、例えば、SiO、Si等が挙げられる。活物質層5に含まれる活物質のうち、ケイ素を含む活物質の質量比を、以下では、Si活物質比率(質量%)とする。Si活物質比率は、活物質層5に含まれる全ての活物質の質量に対する、ケイ素を含む活物質の質量の比率である。Si活物質比率は、例えば、10質量%以上、100質量%以下である。
【0021】
活物質として、例えば、層状構造を有する炭素化合物がある。層状構造を有する炭素化合物は、例えば、負極活物質である。層状構造を有する炭素化合物として、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛等が挙げられる。活物質層5に含まれる活物質のうち、層状構造を有する炭素化合物の質量比を、以下では、炭素活物質比率(質量%)とする。炭素活物質比率は、活物質層5に含まれる全ての活物質の質量に対する、層状構造を有する炭素化合物の質量の比率である。炭素活物質比率は、例えば、20質量%以上、100質量%以下である。
【0022】
炭素材料の具体例として、特開2013-258392号公報に記載の炭素材料が挙げられる。リチウムと合金化が可能な金属又は半金属若しくはこれらの酸化物を含む材料の具体例として、特開2005-123175号公報、及び特開2006-107795号公報に記載の材料が挙げられる。
【0023】
正極活物質として、例えば、コバルト酸化物、ニッケル酸化物、マンガン酸化物、バナジウム酸化物等の遷移金属酸化物;硫黄単体、金属硫化物等の硫黄系活物質が挙げられる。正極活物質、及び負極活物質のいずれにおいても、単一の物質から成るものであってもよいし、2種以上の物質を混合して成るものであってもよい。
【0024】
活物質層5が含む活物質には、後述する電極製造システム11を用いて、アルカリ金属がプレドープされる。活物質にプレドープするアルカリ金属として、リチウム又はナトリウムが好ましく、特にリチウムが好ましい。電極1をリチウムイオン二次電池の電極の製造に用いる場合、活物質層5の密度は、好ましくは1.30g/cc以上、2.00g/cc以下であり、特に好ましくは1.40g/cc以上、1.90g/cc以下である。また、電極1をリチウムイオンキャパシタの電極の製造に用いる場合、活物質層5の密度は、好ましくは0.50g/cc以上、1.50g/cc以下であり、特に好ましくは0.60g/cc以上、1.20g/cc以下である。
【0025】
2.電極製造システム11の構成
電極製造システム11の構成を、図3図7に基づき説明する。図3に示すように、電極製造システム11は、電解液処理槽15と、ドープ槽17、19、21と、洗浄槽23と、搬送ローラ25、27、29、31、33、35、37、39、40、41、43、45、46、47、49、51、52、53、55、57、58、59、61、63、64、65、67、69、70、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93(以下ではこれらをまとめて搬送ローラ群と呼ぶこともある)と、供給ロール101と、巻取ロール103と、支持台105と、循環濾過ユニット107と、6つの電源109、110、111、112、113、114と、タブクリーナー117と、回収ユニット119と、端部センサ121と、を備える。なお、図3では、後述する流動ユニット201の記載は便宜上省略している。
【0026】
電解液処理槽15は、上方が開口した角型の槽である。電解液処理槽15の底面は、略U字型の断面形状を有する。電解液処理槽15は、仕切り板123を備える。仕切り板123は、その上端を貫く支持棒125により支持されている。支持棒125は図示しない壁等に固定されている。仕切り板123は上下方向に延び、電解液処理槽15の内部を2つの空間に分割している。
【0027】
電解液処理槽15は、電極1がドープ槽17、19、21に至る前に、電極1を電解液に含侵させる。そのため、電極1は一層ドープされ易くなる。その結果、所望のドープ電極を得ることが一層容易になる。
【0028】
仕切り板123の下端に、搬送ローラ33が取り付けられている。仕切り板123と搬送ローラ33とは、それらを貫く支持棒127により支持されている。なお、仕切り板123の下端付近は、搬送ローラ33と接触しないように切り欠かれている。搬送ローラ33と、電解液処理槽15の底面との間には空間が存在する。
ドープ槽17の構成を図4に基づき説明する。ドープ槽17は、上流槽131と下流槽133とから構成される。上流槽131は供給ロール101の側(以下では上流側とする)に配置され、下流槽133は巻取ロール103の側(以下では下流側とする)に配置されている。
【0029】
まず、上流槽131の構成を説明する。上流槽131は上方が開口した角型の槽である。上流槽131の底面は、略U字型の断面形状を有する。上流槽131は、仕切り板135と、4個の対極ユニット137、139、141、143と、を備える。
【0030】
仕切り板135は、その上端を貫く支持棒145により支持されている。支持棒145は図示しない壁等に固定されている。仕切り板135は上下方向に延び、上流槽131の内部を2つの空間に分割している。仕切り板135の下端に、搬送ローラ40が取り付けられている。仕切り板135と搬送ローラ40とは、それらを貫く支持棒147により支持されている。なお、仕切り板135の下端付近は、搬送ローラ40と接触しないように切り欠かれている。搬送ローラ40と、上流槽131の底面との間には空間が存在する。
対極ユニット137は、上流槽131のうち、上流側に配置されている。対極ユニット139、141は、仕切り板135を両側から挟むように配置されている。対極ユニット143は、上流槽131のうち、下流側に配置されている。
【0031】
対極ユニット137と対極ユニット139との間には空間149が存在する。対極ユニット141と対極ユニット143との間には空間151が存在する。対極ユニット137、139、141、143は、電源109の一方の極に接続される。対極ユニット137、139、141、143は同様の構成を有する。ここでは、図5に基づき、対極ユニット137、139の構成を説明する。
【0032】
対極ユニット137、139は、導電性基材153と、アルカリ金属含有板155と、多孔質絶縁部材157とを積層した構成を有する。導電性基材153の材質として、例えば、銅、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。アルカリ金属含有板155の形態は特に限定されず、例えば、アルカリ金属板、アルカリ金属の合金板等が挙げられる。アルカリ金属含有板155に含まれるアルカリ金属として、例えば、リチウム、ナトリウム等が挙げられる。アルカリ金属含有板155の厚さは、例えば、0.03~6mmである。
【0033】
多孔質絶縁部材157は、板状の形状を有する。多孔質絶縁部材157は、アルカリ金属含有板155の上に積層されている。多孔質絶縁部材157が有する板状の形状とは、多孔質絶縁部材157がアルカリ金属含有板155の上に積層されている際の形状である。多孔質絶縁部材157は、それ自体で一定の形状を保つ部材であってもよいし、例えばネット等のように、容易に変形可能な部材であってもよい。
【0034】
多孔質絶縁部材157は多孔質である。そのため、後述するドープ溶液は、多孔質絶縁部材157を通過することができる。そのことにより、アルカリ金属含有板155は、ドープ溶液に接触することができる。
【0035】
多孔質絶縁部材157として、例えば、樹脂製のメッシュ等が挙げられる。樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。メッシュの目開きは適宜設定できる。メッシュの目開きは、例えば、0.1μm~10mmであり、0.1~5mmであることが好ましい。メッシュの厚みは適宜設定できる。
【0036】
メッシュの厚みは、例えば、1μm~10mmであり、30μm~1mmであることが好ましい。メッシュの目開き率は適宜設定できる。メッシュの目開き率は、例えば、5~98%であり、5~95%であることが好ましく、50~95%であることがさらに好ましい。
【0037】
多孔質絶縁部材157は、その全体が絶縁性の材料から成っていてもよいし、その一部に絶縁性の層を備えていてもよい。
下流槽133は、基本的には上流槽131とは同様の構成を有する。ただし、下流槽133の内部には、搬送ローラ40ではなく、搬送ローラ46が存在する。また、下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143は、電源110の一方の極に接続される。
【0038】
ドープ槽19は、基本的にはドープ槽17と同様の構成を備える。ただし、ドープ槽19の内部には、搬送ローラ40、46ではなく、搬送ローラ52、58が存在する。また、ドープ槽19の上流槽131が備える対極ユニット137、139、141、143は、電源111の一方の極に接続される。また、ドープ槽19の下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143は、電源112の一方の極に接続される。
【0039】
ドープ槽21は、基本的にはドープ槽17と同様の構成を備える。ただし、ドープ槽21の内部には、搬送ローラ40、46ではなく、搬送ローラ64、70が存在する。また、ドープ槽21の上流槽131が備える対極ユニット137、139、141、143は、電源113の一方の極に接続される。また、ドープ槽21の下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143は、電源114の一方の極に接続される。
【0040】
洗浄槽23は、基本的には電解液処理槽15と同様の構成を有する。ただし、洗浄槽23の内部には、搬送ローラ33ではなく、搬送ローラ75が存在する。ドープ槽21を通過した電極1には、ドープ槽21から持ち出した電解液が付着している。洗浄槽23において、電極1に付着している電解液は効率的に除去される。そのため、次工程での電極1の取り扱いが容易になる。
搬送ローラ群のうち、搬送ローラ37、39、43、45、49、51、55、57、61、63、67、69は、導電性の材料から成る。搬送ローラ群のうち、その他の搬送ローラは、軸受部分を除き、エラストマーから成る。搬送ローラ群は、電極1を一定の経路に沿って搬送する。搬送ローラ群が電極1を搬送する経路は、供給ロール101から、電解液処理槽15の中、ドープ槽17の中、ドープ槽19の中、ドープ槽21の中、洗浄槽23の中、タブクリーナー117の中を順次通り、巻取ロール103に至る経路である。
【0041】
その経路のうち、電解液処理槽15の中を通る部分は、まず、搬送ローラ29、31を経て下方に移動し、次に、搬送ローラ33により移動方向を上向きに変えられるという経路である。
【0042】
また、前記の経路のうち、ドープ槽17の中を通る部分は以下のとおりである。まず、搬送ローラ37により移動方向を下向きに変えられ、上流槽131の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ40により移動方向を上向きに変えられ、上流槽131の空間151を上方に移動する。次に、搬送ローラ41、43により移動方向を下向きに変えられ、下流槽133の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ46により移動方向を上向きに変えられ、下流槽133の空間151を上方に移動する。最後に、搬送ローラ47により移動方向を水平方向に変えられ、ドープ槽19に向かう。
【0043】
また、前記の経路のうち、ドープ槽19の中を通る部分は以下のとおりである。まず、搬送ローラ49により移動方向を下向きに変えられ、上流槽131の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ52により移動方向を上向きに変えられ、上流槽131の空間151を上方に移動する。次に、搬送ローラ53、55により移動方向を下向きに変えられ、下流槽133の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ58により移動方向を上向きに変えられ、下流槽133の空間151を上方に移動する。最後に、搬送ローラ59により移動方向を水平方向に変えられ、ドープ槽21に向かう。
【0044】
また、前記の経路のうち、ドープ槽21の中を通る部分は以下のとおりである。まず、搬送ローラ61により移動方向を下向きに変えられ、上流槽131の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ64により移動方向を上向きに変えられ、上流槽131の空間151を上方に移動する。次に、搬送ローラ65、67により移動方向を下向きに変えられ、下流槽133の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ70により移動方向を上向きに変えられ、下流槽133の空間151を上方に移動する。最後に、搬送ローラ71により移動方向を水平方向に変えられ、洗浄槽23に向かう。
【0045】
また、前記の経路のうち、洗浄槽23の中を通る部分は、まず、搬送ローラ73により移動方向を下向きに変えられて下方に移動し、次に、搬送ローラ75により移動方向を上向きに変えられるという経路である。
【0046】
供給ロール101は、電極1を巻き回している。すなわち、供給ロール101は、巻き取られた状態の電極1を保持している。供給ロール101に保持されている電極1における活物質には、未だアルカリ金属がドープされていない。
【0047】
搬送ローラ群は、供給ロール101に保持された電極1を引き出し、搬送する。巻取ロール103は、搬送ローラ群により搬送されてきた電極1を巻き取り、保管する。なお、巻取ロール103に保管されている電極1は、ドープ槽17、19、21において、プレドープの処理を受けている。そのため、巻取ロール103に保管されている電極1における活物質には、アルカリ金属がドープされている。巻取ロール103に保管されている電極1はドープ電極に対応する。
【0048】
支持台105は、電解液処理槽15、ドープ槽17、19、21、及び洗浄槽23を下方から支持する。支持台105は、その高さを変えることができる。循環濾過ユニット107は、ドープ槽17、19、21にそれぞれ設けられている。循環濾過ユニット107は、フィルタ161と、ポンプ163と、配管165と、を備える。
【0049】
ドープ槽17に設けられた循環濾過ユニット107において、配管165は、ドープ槽17から出て、ポンプ163、及びフィルタ161を順次通り、ドープ槽17に戻る循環配管である。ドープ槽17内ドープ溶液は、ポンプ163の駆動力により、配管165、及びフィルタ161内を循環し、再びドープ槽17に戻る。このとき、ドープ溶液中の異物等は、フィルタ161により濾過される。異物として、ドープ溶液から析出した異物や、電極1から発生する異物等が挙げられる。フィルタ161の材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂である。フィルタ161の孔径は適宜設定できる。フィルタ161の孔径は、例えば、0.2μm以上50μm以下である。
【0050】
ドープ槽19、21に設けられた循環濾過ユニット107も、同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。なお、図3図4において、ドープ溶液の記載は便宜上省略している。
【0051】
電源109の一方の端子は、搬送ローラ37、39と接続する。また、電源109の他方の端子は、ドープ槽17の上流槽131が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極1は搬送ローラ37、39と接触する。電極1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽17の上流槽131において、電極1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0052】
電源110の一方の端子は、搬送ローラ43、45と接続する。また、電源110の他方の端子は、ドープ槽17の下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極1は搬送ローラ43、45と接触する。電極1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽17の下流槽133において、電極1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0053】
電源111の一方の端子は、搬送ローラ49、51と接続する。また、電源111の他方の端子は、ドープ槽19の上流槽131が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極1は搬送ローラ49、51と接触する。電極1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽19の上流槽131において、電極1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0054】
電源112の一方の端子は、搬送ローラ55、57と接続する。また、電源112の他方の端子は、ドープ槽19の下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極1は搬送ローラ55、57と接触する。電極1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽19の下流槽133において、電極1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0055】
電源113の一方の端子は、搬送ローラ61、63と接続する。また、電源113の他方の端子は、ドープ槽21の上流槽131が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極1は搬送ローラ61、63と接触する。電極1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽21の上流槽131において、電極1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0056】
電源114の一方の端子は、搬送ローラ67、69と接続する。また、電源114の他方の端子は、ドープ槽21の下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極1は搬送ローラ67、69と接触する。電極1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽21の下流槽133において、電極1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0057】
なお、電極1と対極ユニット137、139、141、143とが電解液を介して電気的に接続した状態でドープを行うことは、活物質層5を含む電極1と、電極1に対向して設けられた対極ユニット137、139、141、143とを、ドープ溶液を介して電気的に接続することで、アルカリ金属を活物質層5にドープすることに対応する。
【0058】
タブクリーナー117は、電極1の活物質層未形成部7を洗浄する。回収ユニット119は、電解液処理槽15、ドープ槽17、19、21、及び洗浄槽23のそれぞれに配置されている。回収ユニット119は、電極1が槽から持ち出す液を回収し、槽に戻す。
【0059】
端部センサ121は、電極1の幅方向Wにおける端部の位置を検出する。電極製造システム11は、端部センサ121の検出結果に基づき、供給ロール101及び巻取ロール103の幅方向Wにおける位置を調整する。
【0060】
電極製造システム11は、ドープ槽17、19、21のそれぞれについて、流動ユニット201を備える。ドープ槽17における流動ユニット201の構成を図4図6図7に示す。ドープ槽19、21における流動ユニット201の構成も同様である。
【0061】
流動ユニット201は、複数のノズル203、205、207、209、211、213、215、217と、2つのポンプ219、221と、複数の配管223、225、227、229と、を備える。
【0062】
図6に示すように、ノズル203は、円筒状の形態を有する。ノズル203は、複数の孔231を備える。複数の孔231は、ノズル203の軸方向に沿って、所定の間隔で並んでいる。複数の孔231の周方向における位置は同一である。なお、複数の孔231の周方向における位置は、ノズル203の軸方向に進むにつれて、周期的に変化してもよい。ノズル205、207、209、211、213、215、217も、ノズル203と同様の構成を有する。
【0063】
図4に示すように、ノズル203は、上流槽131のうち、対極ユニット137の付近に取り付けられている。ノズル205は、上流槽131のうち、対極ユニット139の付近に取り付けられている。ノズル207は、上流槽131のうち、対極ユニット141の付近に取り付けられている。ノズル209は、上流槽131のうち、対極ユニット143の付近に取り付けられている。
【0064】
上方から見たノズル203、205、207、209の配置は図7に示すとおりである。ノズル203、205、207、209は、それぞれ2つ存在する。ノズル203、205、207、209の軸方向は、電極1の長手方向Lと平行である。ノズル203、205、207、209のそれぞれにおいて、孔231は、電極1の側に向いている。
【0065】
電極1の幅方向Wにおいて、2つのノズル203は、それぞれ、電極1の端部付近に位置する。電極1の厚み方向において、2つのノズル203は、それぞれ、対極ユニット137と電極1との間に位置する。
【0066】
電極1の幅方向Wにおいて、2つのノズル205は、それぞれ、電極1の端部付近に位置する。電極1の厚み方向において、2つのノズル205は、それぞれ、対極ユニット139と電極1との間に位置する。
【0067】
電極1の幅方向Wにおいて、2つのノズル207は、それぞれ、電極1の端部付近に位置する。電極1の厚み方向において、2つのノズル207は、それぞれ、対極ユニット141と電極1との間に位置する。
【0068】
電極1の幅方向Wにおいて、2つのノズル209は、それぞれ、電極1の端部付近に位置する。電極1の厚み方向において、2つのノズル209は、それぞれ、対極ユニット143と電極1との間に位置する。
【0069】
ポンプ219は、配管223を用いて、上流槽131からドープ溶液を吸い出す。ポンプ219は、配管227を用いて、吸い出したドープ溶液をノズル203、205、207、209に送り出す。送り出されたドープ溶液は、ノズル203、205、207、209の孔231から吹き出される。吹き出されたドープ溶液は、電極1に向かう方向Fに沿って流動する。なお、ドープ溶液の流動は、電極1が搬送ローラ群にセットされる前に開始してもよいし、電極1が搬送ローラ群にセットされた後に開始してもよい。
【0070】
その結果、上流槽131の対極ユニット137と電極1との間のドープ溶液、上流槽131の対極ユニット139と電極1との間のドープ溶液、上流槽131の対極ユニット141と電極1との間のドープ溶液、及び上流槽131の対極ユニット143と電極1との間のドープ溶液は流動する。ドープ溶液の流動方向は、電極1の表面に対して略平行である。ドープ溶液の流動方向は、電極1の長手方向Lに直交する。
【0071】
ここで、「略平行」の意味は以下のとおりである。孔231の中心の位置を位置Aとする。電極1の表面のうち、位置Aと同一の高さにあり、幅方向Wにおける中央にある位置を位置Bとする。位置A及び位置Bを通過する直線と、電極1の表面とが成す角度が45度以下であれば、「略平行」である。
【0072】
なお、孔231から吹き出されたドープ溶液の流動方向を、板状の治具等を用いて変化させてもよい。例えば、板状の治具等を用いて変化したドープ溶液の流動方向は、電極1の表面に対して略平行である。
【0073】
図4に示すように、ノズル211は、下流槽133のうち、対極ユニット137の付近に取り付けられている。ノズル213は、下流槽133のうち、対極ユニット139の付近に取り付けられている。ノズル215は、下流槽133のうち、対極ユニット141の付近に取り付けられている。ノズル217は、下流槽133のうち、対極ユニット143の付近に取り付けられている。
【0074】
ノズル211、213、215、217の配置や向きは、ノズル203、205、207、209の配置や向きと同様である。ノズル211、213、215、217の軸方向は、電極1の長手方向Lと平行である。ノズル211、213、215、217のそれぞれにおいて、孔231は、電極1の側に向いている。
【0075】
ポンプ221は、配管225を用いて、下流槽133からドープ溶液を吸い出す。ポンプ221は、配管229を用いて、吸い出したドープ溶液をノズル211、213、215、217に送り出す。送り出されたドープ溶液は、ノズル211、213、215、217の孔231から吹き出される。吹き出されたドープ溶液は、電極1に向かう方向Fに沿って流動する。
【0076】
その結果、下流槽133の対極ユニット137と電極1との間のドープ溶液、下流槽133の対極ユニット139と電極1との間のドープ溶液、下流槽133の対極ユニット141と電極1との間のドープ溶液、及び下流槽133の対極ユニット143と電極1との間のドープ溶液は流動する。ドープ溶液の流動方向は、電極1の表面に対して略平行である。ドープ溶液の流動方向は、電極1の長手方向Lに直交する。
【0077】
前記のように、流動ユニット201により、電極1と各対極ユニットとの間のドープ溶液は流動する。各対極ユニットとは、上流槽131の対極ユニット137、139、141、143、及び下流槽133の対極ユニット137、139、141、143である。流動ユニット201により生じるドープ溶液の流動の平均流速をJ(cm/sec)とする。
【0078】
平均流速Jは以下のように定義できる。ドープ溶液の流路に断面を想定する。断面は、ドープ溶液の流動方向に直交する。その断面を通過するドープ溶液の単位時間当たりの平均体積流量をV(cm/sec)とする。その断面の面積をS(cm)とする。平均流速Jは、V/S(cm/sec)である。
【0079】
3.ドープ溶液の組成
電極製造システム11を使用するとき、電解液処理槽15、及びドープ槽17、19、21に、ドープ溶液を収容する。ドープ溶液は、アルカリ金属イオンと、溶媒とを含む。ドープ溶液は電解液である。
【0080】
ドープ溶液に含まれるアルカリ金属イオンは、アルカリ金属塩を構成するイオンである。アルカリ金属塩は、好ましくはリチウム塩又はナトリウム塩であり、さらに好ましくはリチウム塩である。
【0081】
アルカリ金属塩を構成するアニオン部として、例えば、PF 、PF(C 、PF(CF 等のフルオロ基を有するリンアニオン;BF 、BF (CF) 、BF(CF、B(CN) 等のフルオロ基又はシアノ基を有するホウ素アニオン;N(FSO 、N(CFSO 、N(CSO 等のフルオロ基を有するスルホニルイミドアニオン;CFSO 等のフルオロ基を有する有機スルホン酸アニオンが挙げられる。
【0082】
リチウム塩として、例えば、LiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、LiN(FSO、LiN(CSO、LiN(CFSO等が挙げられる。
【0083】
アルカリ金属塩として、例えば、(A)成分が挙げられる。(A)成分は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、及びリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミドから選択される1種以上であるリチウムイミド塩であり、より好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドである。
【0084】
ドープ溶液におけるアルカリ金属塩の濃度は、好ましくは0.1モル/L以上であり、より好ましくは0.5~1.5モル/Lの範囲内である。アルカリ金属塩の濃度がこの範囲内である場合、アルカリ金属のプレドープが効率よく進行する。
【0085】
ドープ溶液における(A)成分の濃度は、1.0モル/L以上4.0モル/L以下であることが好ましい。ドープ溶液における(A)成分の濃度は、さらに好ましくは2.0モル/L以上4.0モル/L以下であり、特に好ましくは2.5モル/L以上3.5モル/L以下である。(A)成分の濃度がこの範囲内である場合、対極ユニットの表面にアルカリ金属の酸化膜が形成されることを抑制する効果、及び、ドープ電極の表面にアルカリ金属が析出することを抑制する効果が一層高い。
【0086】
溶媒は、例えば、(B)成分を含む。(B)成分は、1、2-ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、及びリン酸トリメチルから選択される1種以上である有機溶媒である。(B)成分は、特に好ましくは1、2-ジメトキシエタンである。
【0087】
全ての溶媒の質量に対する(B)成分の質量の比率を、溶媒中の(B)比率とする。溶媒中の(B)比率は、70質量%以上100質量%以下であることが好ましい。溶媒中の(B)比率がこの範囲内である場合、対極ユニットの表面にアルカリ金属の酸化膜が形成されることを抑制する効果、及び、ドープ電極の表面にアルカリ金属が析出することを抑制する効果が一層高い。
【0088】
溶媒は、例えば、(C)成分を含む。(C)成分は、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニルカーボネート、及びフッ化エーテル類から選択される1種以上である有機溶媒である。
【0089】
(C)成分は、保護被膜形成剤として機能する。ドープ溶液が(C)成分を含む場合、活物質における炭素活物質比率が高くても、活物質への溶媒の共挿入を抑制できる。
全ての溶媒の質量に対する(C)成分の質量の比率を、溶媒中の(C)比率とする。溶媒中の(C)比率は、10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。溶媒中の(C)比率がこの範囲内である場合、活物質への溶媒の共挿入を抑制する効果が一層高い。
【0090】
溶媒は、例えば、(D)成分を含む。(D)成分は、(B)成分及び(C)成分のいずれでもない溶媒である。(D)成分として、例えば、ジメチルカーボネート、ハイドロフルオロエーテル等が挙げられる。全ての溶媒の質量に対する(D)成分の質量の比率を、溶媒中の(D)比率とする。溶媒中の(D)比率は、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0091】
ドープ溶液における(A)成分のモル比をMAとする。ドープ溶液における(B)成分のモル比をMBとする。MA、MBは無次元の量である。MAと、MBとについて、以下の式(1)が成立する。MA/MBは、MAをMBで除した値である。
【0092】
式(1) 0.10<MA/MB<0.65
溶媒として、例えば、カーボネート系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、ニトリル系溶剤、含硫黄系溶剤、及びアミド系溶剤から成る群から選択される1種以上が挙げられる。
【0093】
カーボネート系溶剤として、エチレンカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。
【0094】
エステル系溶剤として、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、γ-ブチロラクトン、バレロラクトン、メバロノラクトン、カプロラクトン等が挙げられる。
【0095】
エーテル系溶剤として、エチルエーテル、i-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0096】
炭化水素系溶剤として、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンセン、i-プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン、トリメチルベンゼン等が挙げられる。
【0097】
ケトン系溶剤として、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0098】
ニトリル系溶媒として、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられる。前記含硫黄系溶媒として、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。前記アミド系溶剤として、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0099】
溶媒は、単一の成分から成るものであってもよいし、2種以上の成分の混合溶媒であってもよい。
ドープ溶液は、さらに、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、1-(トリフルオロメチル)エチレンカーボネート、無水コハク酸、無水マレイン酸、プロパンスルトン、ジエチルスルホン等の添加剤を含有することができる。
【0100】
ドープ溶液は、ホスファゼン化合物等の難燃剤をさらに含有することができる。難燃剤の添加量は、アルカリ金属をドープする際の熱暴走反応を効果的に制御する観点から、ドープ溶液100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。また、難燃剤の添加量は、高品質のドープ電極を得る観点から、ドープ溶液100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
【0101】
4.電極製造システム11を使用したドープ電極の製造方法
ドープ電極を製造する製造方法は以下のとおりである。プレドープ前の電極1を供給ロール101に巻き回す。次に、プレドープ前の電極1を供給ロール101から引き出し、上述した経路に沿って巻取ロール103までセッティングする。そして、電解液処理槽15と、ドープ槽17、19、21と、洗浄槽23とを上昇させ、図3に示す定位置へセットする。
【0102】
次に、電解液処理槽15、及びドープ槽17、19、21にドープ溶液を収容する。ドープ溶液は、前記「3.ドープ溶液の組成」で述べたものである。ドープを行うときのドープ溶液の温度は30℃以上80℃未満であることが好ましく、40℃以上80℃未満であることがさらに好ましい。ドープ溶液の温度が30℃以上80℃未満である場合、プレドープにおける電極1の面積当たりの電流密度(以下では電流密度I(mA/cm)とする)を高くすることが容易になる。洗浄槽23に洗浄液を収容する。洗浄液は有機溶剤である。

次に、電解液処理槽15、及びドープ槽17、19、21にドープ溶液を収容する。ドープ溶液は、前記「3.ドープ溶液の組成」で述べたものである。ドープを行うときのドープ溶液の温度は30℃以上80℃未満であることが好ましい。ドープ溶液の温度が30℃以上80℃未満である場合、プレドープにおける電極1の面積当たりの電流密度(以下では電流密度I(mA/cm)とする)を高くすることが容易になる。洗浄槽23に洗浄液を収容する。洗浄液は有機溶剤である。
【0103】
次に、搬送ローラ群により、供給ロール101から巻取ロール103まで、上述した経路に沿って電極1を搬送する。電極1を搬送する経路は、ドープ槽17、19、21内を通過する経路である。電極1の搬送方向は、長手方向Lと平行である。電極1がドープ槽17、19、21内を通過するとき、活物質層5に含まれる活物質にアルカリ金属がプレドープされる。
【0104】
プレドープのとき、ドープ槽17、19、21内のドープ溶液は、流動ユニット201により流動している。さらに詳しくは、ドープ槽17、19、21のそれぞれにおいて、電極1と各対極ユニットとの間のドープ溶液は、例えば、流動ユニット201により流動している。電極1は、流動しているドープ溶液に接触する。なお、ドープ溶液は常に流動している必要はなく、アルカリ金属を電極1にドープするときに流動していることが望ましい。 電極1と各対極ユニットとの間のドープ溶液が流動している場合、ドープを行うときの電流密度Iを高くすることが容易になる。
【0105】
ドープ槽17、19、21のそれぞれにおいて、プレドープは、電極1と各対極ユニットとが電解液を介して電気的に接続した状態で行われる。ドープ槽17、19、21のそれぞれにおいて、ドープ溶液の平均流速をJ(cm/sec)とする。プレドープにおけるドープ溶液の平均流速Jと電流密度Iとは、以下の式(2)の関係を満たすことが好ましい。
【0106】
式(2) 0<I/J≦200
また、I/Jは1以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。I/Jが5以上である場合には、リチウムのドープを電極面内でより均一に行うことができ、I/Jが10以上である場合には、その効果が一層著しい。
【0107】
また、I/Jは150以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、60以下であることがさらに好ましい。I/Jが100以下である場合には、ドープ速度が向上した場合のリチウムの析出を抑制することができ、I/Jが60以下である場合は、その効果が一層著しい。
【0108】
電流密度Iは、20mA/cm以上であることが好ましく、25mA/cm以上であることがより好ましく、45mA/cm以上であることがより好ましく、60mA/cm以上であることがさらに好ましい。電流密度Iが20mA/cm以上である場合には、ドープ速度がより向上する。電流密度Iが25mA/cm以上である場合は、前記の効果が一層著しい。電流密度Iが45mA/cm以上である場合は、前記の効果がさらに著しい。電流密度Iが60mA/cm以上である場合は、前記の効果が特に著しい。
【0109】
また、電流密度Iは、200mA/cm以下であることが好ましく、180mA/cm以下であることがさらに好ましく、170mA/cm以下であることが特に好ましい。電流密度Iが200mA/cm以下である場合には、対極ユニットの表面にアルカリ金属の酸化膜が形成されることを抑制する効果、及び、ドープ電極の表面にアルカリ金属が析出することを抑制する効果が一層高い。
【0110】
電流密度Iが180mA/cm以下である場合には、上記の効果が一層高く、電流密度Iが170mA/cm以下である場合には、上記の効果が特に高い。ドープ溶液の平均流速Jは、0.1cm/sec以上であることが好ましく、0.5mA/cm以上であることがより好ましく、1.0cm/sec以上であることがさらに好ましい。ドープ溶液の平均流速Jが0.1cm/sec以上である場合には、ドープ速度がより向上する。ドープ溶液の平均流速Jが0.5cm/sec以上である場合は、ドープ速度が一層向上する。ドープ溶液の平均流速Jが1.0cm/sec以上である場合、ドープ速度が特に向上する。
【0111】
また、ドープ溶液の平均流速Jは、20cm/sec以下であることが好ましく、10cm/sec以下であることがより好ましく、5cm/sec以下であることがさらに好ましい。ドープ溶液の平均流速Jが20cm/sec以下である場合、リチウムの析出を抑制することができる。ドープ溶液の平均流速Jが10cm/sec以下である場合、リチウムの析出を一層抑制することができる。ドープ溶液の平均流速Jが5cm/sec以下である場合、リチウムの析出を特に抑制することができる。
【0112】
プレドープのとき、電極1は、搬送ローラ群により、上述した経路に沿って搬送される。搬送方向は、電極1の長手方向Lに平行である。電極1の搬送方向は所定の方向に対応する。ドープ溶液の流動方向は、電極1の長手方向Lに直交する。よって、プレドープにおいて、ドープ溶液の流動方向は、電極1の搬送方向に直交する。
【0113】
さらに、搬送ローラ群は、電極1を洗浄槽23に搬送する。電極1は、搬送ローラ群により搬送されながら、洗浄槽23で洗浄される。
さらに、搬送ローラ群は、電極1をタブクリーナー117に連続的に搬送する。タブクリーナー117は、電極1のうち、活物質層未形成部7をクリーニングする。
【0114】
電極1は、正極であってもよいし、負極であってもよい。正極を製造する場合、電極製造システム11は、正極活物質にアルカリ金属をドープする。負極を製造する場合、電極製造システム11は、負極活物質にアルカリ金属をドープする。
【0115】
アルカリ金属のドープ量は、リチウムイオンキャパシタの負極活物質にリチウムを吸蔵させる場合、負極活物質の理論容量に対して好ましくは70%以上、95%以下である。アルカリ金属のドープ量は、リチウムイオン二次電池の負極活物質にリチウムを吸蔵させる場合、負極活物質の理論容量に対して好ましくは10%以上、30%以下である。
【0116】
アルカリ金属のドープ量は、0.30mAh/cm以上2.0 mAh/cm以下であることが好ましい。ドープ時間は、30秒以上200秒以下であることが好ましい。
5.ドープ後処理
アルカリ金属を活物質層5にドープした後、ドープ溶液とは異なる処理液と、ドープ電極とを接触させる処理(以下ではドープ後処理とする)を行うことができる。処理液は、例えば、(E)成分を含む。(E)成分は、例えば、環状カーボネート系化合物、ニトリル系化合物、ホスフェート系化合物、ボレート系化合物、サルフェート系化合物、スルトン系化合物、フッ化ベンゼン系化合物、及びシラン系化合物から選択される1種以上である。
【0117】
環状カーボネート系化合物として、例えば、エチレンカーボネートが挙げられる。ニトリル系化合物として、例えば、アセトニトリルが挙げられる。ホスフェート系化合物として、例えば、リチウムジフルオロ( ビスオキサラト) ホスフェートが挙げられる。ボレート系化合物として、例えば、リチウム?ビス(オキサラト)ボレートが挙げられる。サルフェート系化合物として、例えば、エチレンサルフェートが挙げられる。スルトン系化合物として、例えば、1、3-プロパンスルトンが挙げられる。フッ化ベンゼン系化合物として、例えば、フルオロベンゼンが挙げられる。シラン系化合物として、例えば、テトラビニルシランが挙げられる。
【0118】
(E)成分は、例えば、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニルカーボネート、1、3-プロパンスルトン、及びエチレンサルフェートから選択される1種以上である。
【0119】
アルカリ金属を活物質層5にドープした直後は、ドープ電極の活性が上がっている。活性が上がっているドープ電極に対しドープ後処理を行った場合、(E)成分とドープ電極とが化学的に反応し、ドープ電極において被膜形成が進行する。その結果、ドープ電極の保存安定性が向上する。(E)成分は被膜形成剤として機能する。
【0120】
全ての処理液の質量に対する(E)成分の質量の比率を、処理液中の(E)比率とする。処理液中の(E)比率は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。処理液中の(E)比率がこの範囲内である場合、ドープ電極の保存安定性が一層向上する。ドープ後処理では、例えば、ドープ電極を処理液に浸漬する。
【0121】
6.蓄電デバイスの製造方法
蓄電デバイスとして、例えば、電池、キャパシタ等が挙げられる。電池として、例えば、リチウムイオン二次電池等が挙げられる。キャパシタとして、例えば、リチウムイオンキャパシタ等が挙げられる。蓄電デバイスは電極セルを備える。電極セルは、負極と、正極とを積層した構成を有する。
【0122】
前記「4.電極製造システム11を使用したドープ電極の製造方法」により製造したデドープ電極を、負極及び正極のうちの一方とする。そのドープ電極とは異なる電極を、負極及び正極のうちの他方とする。正極、負極、及び電解液を用いて電極セルを形成し、蓄電デバイスを製造する。電解液は、例えば、ドープ溶液とは異なる組成の溶液である。
【0123】
7.ドープ電極の製造方法及び蓄電デバイスの製造方法が奏する効果
本開示のドープ電極の製造方法では、ドープ溶液が、(A)成分、並びに、(B)成分を含む。また、MAとMBとについて、以下の式(1)が成立する。
【0124】
式(1) 0.10<MA/MB<0.65
そのため、電極1と対極ユニットとの間に流れる電流の電流密度Iを高くした場合でも、対極ユニットの表面にアルカリ金属の酸化膜が形成されたり、ドープ電極の表面にアルカリ金属が析出したりすることを抑制できる。
<実施例>
1.実施例1
(1-1)蓄電デバイス用負極の製造
SiO28質量部、人造黒鉛65質量部、アセチレンブラック粉体4質量部、SBRバインダー2質量部、カルボキシメチルセルロース1質量部、及びイオン交換水85質量部から成る組成物を、プラネタリーミキサーを用いて充分混合することにより負極スラリーを得た。アセチレンブラックは導電剤に対応する。
【0125】
SiOは、ケイ素を含む活物質に対応する。人造黒鉛は、活物質に対応し、層状構造を有する炭素化合物に対応する。負極スラリーにおいてSi活物質比率は、約30質量%であった。負極スラリーにおいて炭素活物質比率は、約70質量%であった。Si活物質比率及び炭素活物質比率を表1に示す。なお、活物質層5におけるSi活物質比率及び炭素活物質比率は、負極スラリーにおけるSi活物質比率及び炭素活物質比率と等しい。
【0126】
【表1】
【0127】
集電体3を用意した。実施例1において、集電体3は負極集電体であった。集電体3のサイズは、幅150mm、長さ300mm、厚さ10μmであった。集電体3の表面粗さRaは0.1μmであった。集電体3は銅箔から成っていた。
【0128】
集電体3の両面に、ドクターブレードを用いて負極スラリーを塗布した。その結果、図2に示すように、集電体3の両面に活物質層5が形成された。実施例1において、活物質層5は負極活物質層に対応する。
【0129】
次に、120℃で12時間減圧乾燥した。次に、ロールプレス機を用いて集電体3及び活物質層5をプレスすることにより、電極1を得た。実施例1において、電極1は蓄電デバイス用負極に対応する。
【0130】
電極1の両面に形成された活物質層5の合計の目付量は120g/mであった。また、電極1の両面に形成された活物質層5の合計の厚みは80μmであった。活物質層5は、図1に示すように、集電体3の長手方向に沿って形成されていた。活物質層5は、集電体3の幅方向における中央部に、幅120mmにわたって形成された。集電体3の幅方向の両端における活物質層未形成部7はそれぞれ15mmであった。活物質層未形成部7とは、活物質層5が形成されていない部分である。
【0131】
(1-2)簡易ドープ電極製造装置339の作成
電極1から、図8に示す電極試験体301を切り出した。電極試験体301は、長方形の本体部303と、突出部305とを備えていた。本体部303は、電極1のうち、活物質層形成部6から切り出された部分であった。本体部303の短辺の長さは26mmであった。本体部303の長辺の長さは40mmであった。
【0132】
突出部305は、電極1のうち、活物質層未形成部7から切り出された部分であった。突出部305は、本体部303の短辺に接続していた。突出部305にリード307を貼り付けた。リード307の厚みは0.1mmであった。リード307の幅は3mmであった。リード307の長さは50mmであった。リード307の材質はステンレス鋼SUS316であった。
【0133】
図9に示すテフロン板309を2枚用意した。テフロン板309の基本形態は長方形であった。テフロン板309の短辺の長さは80mmであった。テフロン板309の長辺の長さは90mmであった。テフロン板309の厚みは1mmであった。テフロン板309の材質はポリテトラフルオロエチレンであった。
【0134】
テフロン板309は、その中央部に、長方形の開口部311を備えていた。開口部311は、テフロン板309を厚み方向に貫通していた。開口部311の短辺の長さは24mmであった。開口部311の長辺の長さは37mmであった。
【0135】
2枚のテフロン板309を、電極試験体301の両側に配置した。図9に示すように、本体部303のうち、外周側の部分は、2枚のテフロン板309により挟まれた。本体部303のうち、外周側を除く部分は、開口部311を通して露出していた。リード307は、2枚のテフロン板309の隙間を通り、2枚のテフロン板309の外周方向に突出していた。電極試験体301と、2枚のテフロン板309と、リード307とにより構成される部材を、電極ユニット312とした。
【0136】
図10図11に示すステンレス板313を用意した。ステンレス板313の基本形態は長方形であった。ステンレス板313の短辺の長さは80mmであった。ステンレス板313の長辺の長さは90mmであった。ステンレス板313の厚みは4mmであった。ステンレス板313の材質はステンレス鋼であった。
【0137】
ステンレス板313は、片面における中央部に凹部315を備えていた。ステンレス板313の厚み方向から見たとき、凹部315の形状は長方形であった。凹部315の短辺の長さは14mmであった。凹部315の長辺の長さは37mmであった。凹部315の深さは0.3mmであった。
【0138】
ステンレス板313は、2箇所のねじ穴317を備えていた。ねじ穴317は、ステンレス板313を厚み方向に貫通していた。ねじ穴317の位置は、凹部315の短辺から、6mmだけ、ステンレス板313の外周方向に移動した位置であった。ねじ穴317の直径は6mmであった。
【0139】
図11に示すように、ねじ穴317にテフロン製のチューブコネクタ319を取り付けた。チューブコネクタ319にフッ素ゴムチューブ321を接続した。フッ素ゴムチューブ321の内径は3mmであった。フッ素ゴムチューブ321は、ステンレス板313から見て、凹部315とは反対側に位置していた。
【0140】
図10図11に示すリチウム金属板323を用意した。リチウム金属板323の形状は長方形であった。リチウム金属板323の短辺の長さは26mmであった。リチウム金属板323の長辺の長さは40mmであった。リチウム金属板323の厚みは0.06mmであった。図10図11に示すように、リチウム金属板323を、凹部315の内部に取り付けた。
【0141】
図12に示すテフロン板325を用意した。テフロン板325の基本形態は長方形であった。テフロン板325の短辺の長さは80mmであった。テフロン板325の長辺の長さは90mmであった。テフロン板325の厚みは1mmであった。テフロン板325の材質はポリテトラフルオロエチレンであった。
【0142】
テフロン板325は、その中央部に開口部327を備えていた。開口部327は、テフロン板325を厚み方向に貫通していた。開口部327は、長方形の本体部329と、切り欠き部331とを有していた。本体部329の短辺の長さは24mmであった。本体部329の長辺の長さは37mmであった。切り欠き部331は、本体部329の短辺から、テフロン板325の外周方向に延びていた。
【0143】
図11に示すように、テフロン板325を、ステンレス板313の表面のうち、凹部315が形成された側の面に重ねた。本体部329は、厚み方向から見て、リチウム金属板323と重なる位置にあった。そのため、リチウム金属板323は、テフロン板325によって覆われることはなかった。切り欠き部331は、厚み方向から見て、ねじ穴317と重なる位置にあった。そのため、ねじ穴317は、テフロン板325によって覆われることはなかった。
【0144】
ステンレス板313、チューブコネクタ319、フッ素ゴムチューブ321、リチウム金属板323、及びテフロン板325により構成される部材を対極ユニット333とした。
【0145】
図13に示すスペーサ335を用意した。スペーサ335の基本形態は長方形であった。スペーサ335の短辺の長さは80mmであった。スペーサ335の長辺の長さは90mmであった。スペーサ335の厚みは4mmであった。スペーサ335の材質はステンレス鋼であった。
【0146】
スペーサ335は、その中央部に、長方形の開口部337を備えていた。開口部337は、スペーサ335を厚み方向に貫通していた。開口部337の短辺の長さは34mmであった。開口部337の長辺の長さは42mmであった。
【0147】
図14に示すように、電極ユニット312と、2つのスペーサ335と、2つの対極ユニット333とを重ね、固定することで、簡易ドープ電極製造装置339を得た。簡易ドープ電極製造装置339において、対極ユニット333は電極ユニット312に対向して設けられていた。
【0148】
(1-3)ドープ電極の製造
下段のフッ素ゴムチューブ321から、簡易ドープ電極製造装置339の内部にドープ溶液を供給し、上段のフッ素ゴムチューブ321から同量のドープ溶液を吸い出すことによって、ドープ溶液を流動させた。ドープ溶液の流量は0.37ml/secであった。簡易ドープ電極製造装置339の内部において、ドープ溶液の平均流速Jは2.0cm/secであった。平均流速Jは、ドープ溶液の流量を、ドープ溶液が流動する箇所の断面積で除した値である。
【0149】
ドープ溶液は、3.0MのLiFSIを含む溶液であった。LiFSIは(A)成分に対応する。ドープ溶液におけるLiFSIのモル比(すなわちMA)は、0.287であった。ドープ溶液の溶媒は、1、2-ジメトキシエタン(DME)であった。1、2-ジメトキシエタンは(B)成分に対応する。ドープ溶液の全溶媒の質量に対する、1、2-ジメトキシエタンの質量の質量比(すなわち、溶媒中の(B)比率)は100質量%であった。ドープ溶液における1、2-ジメトキシエタンのモル比(すなわちMB)は0.713であった。ドープ溶液におけるMA/MBの値は0.403であった。ドープ溶液において、リチウムへ配位可能な溶媒数は2.48分子であった。
【0150】
電極試験体301の活物質層5にリチウムをドープするとき、ドープ溶液の温度は40℃であった。供給されたドープ溶液は、対極ユニット333と電極試験体301との間を流動しながら電極試験体301に接触した。ドープ溶液の流動方向は、電極試験体301の表面に対して略平行であった。
【0151】
次に、電極ユニット312及び対極ユニット333を電流・電圧モニター付き直流電源に接続した。
次に、電流密度Iが60mA/cmとなるように1.2Aの電流を通電し、電極へリチウムのドープを行った。
【0152】
通電時間は、単位面積当たりのリチウムのドープ割合が負極の単位面積当たりの放電容量の20%になる時間とした。ただし、通電時間内で電圧が所定の数値以上となった場合、そこで通電を停止した。また、単位面積当たりのリチウムのドープ割合に相当する放電容量分を目標ドープ量とした。目標ドープ量は1.10mAh/cmであった。目標ドープ時間は66秒間であった。
【0153】
以上の工程により、活物質層5中の負極活物質にリチウムがドープされ、電極試験体301はドープ電極となった。なお、本実施例、後述する実施例2~33及び比較例1~7においてドープ電極はリチウムイオン二次電池用負極である。
【0154】
(1-4)ドープ後処理
ドープ電極の製造後、露点-60℃以下に保ったドライルーム内において簡易ドープ電極製造装置339を解体し、ドープ電極を取り出した。
【0155】
ドープ電極を、50mlの処理液に浸漬し、3分間静置した。洗浄液はエチルメチルケトン(EMC)であった。ドープ電極を処理液に浸漬することは、処理液とドープ電極とを接触させることに対応する。
【0156】
処理液からドープ電極を取り出し、露点-60℃のドライルーム内において3分間風乾させた。次に、アルゴンガスで内部を置換したアルミラミネート袋にドープ電極を封入し、保存した。
【0157】
(1-5)ドープ電極の評価
(i)初回放電効率
ドープ後処理の後、ドープ電極から、長方形の測定用試料を2枚切り出した。測定用試料の短辺の長さは1.5cmであった。測定用試料の長辺の長さは2.0cmであった。測定用試料の面積は3. 0cmであった。
【0158】
初回放電効率の測定では、1枚の測定試料を使用した。測定用試料の対極を用意した。対極の形状は長方形であった。対極の短辺の長さは1.5cmであった。対極の長辺の長さは2.0cmであった。対極の面積は3. 0cmであった。対極の厚みは200μmであった。対極の材質は金属リチウムであった。
【0159】
セパレータを用意した。セパレータの厚みは50μmであった。セパレータの材質はポリエチレン製不織布であった。
測定用試料と、セパレータと、参照極と、電解液とを用いて、負極電極評価用のコイン型セルを作製した。コイン型セルにおいて、対極は、測定用試料の両側に、セパレータを介して配置されていた。参照極は、金属リチウム板であった。電解液は、1.4MのLiPFを含んでいた。電解液の溶媒は、エチレンカーボネートと、1-フルオロエチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートとを、1:2:7の体積比で含む混合液であった。
【0160】
得られたコイン型セルを、充填電流4mAで0Vになるまで充電した。次に、充電電流が0.4mAに絞られるまで0Vで定電流‐定電圧充電を行い、充電容量を算出した。次に、放電電流4mAでセル電圧が3.0Vになるまで定電流放電を行い、放電容量を算出した。算出した放電容量を充電容量で除した値を初回放電効率とした。初回放電効率は97%であった。初回放電効率を表2に示す。初回放電効率は、ドープ電極の表面にアルカリ金属が析出することで悪化する。
【0161】
【表2】
【0162】
平均セル電圧を測定した。平均セル電圧とは、ドープ中の通電容量が、目標ドープ量の10%に到達した時点から、目標ドープ量の100%に到達した時点までのセル電圧の平均値を意味する。平均セル電圧の値を表2に示す。
(ii)保存後放電効率
ドープ電極から切り出したもう1枚の測定試料を用いて、保存後放電効率を測定した。保存後放電効率の評価方法は以下のとおりであった。アルゴンガスで内部を置換したアルミラミネート袋に測定用試料を封入し、14日間保存した。保存後、アルミラミネート袋から測定用試料を取り出した。取り出した測定用試料を用いて、初回放電効率の測定の場合と同様に、負極電極評価用のコイン型セルを作製し、充電容量と放電容量とを算出した。放電容量を充電容量で除した値を保存後放電効率とした。保存後放電効率を表2に示す。
【0163】
(iii)対極Li劣化
ドープ電極の製造後、リチウム金属板323を目視観察し、変色を評価した。変色の評価結果を表2に示す。変色の評価の基準は以下のとおりであった。変色は、対極ユニットの表面にリチウムの酸化膜が形成されることにより生じる。
【0164】
○:金属光沢がある。
△:部分的に黒変している。
×:全面で黒変している。
【0165】
平均セル電圧と、変色とに基づき、対極Liの劣化を判定した。判定結果を表2に示す。判定の基準は以下のとおりであった。
○:対極Liの変色の評価結果が○である。かつ平均セル電圧の絶対値が5V未満である。
△:対極Liの変色の評価結果が△である。もしくは平均セル電圧の絶対値が5V以上である。
×:対極Liの変色の評価結果が×である。もしくは平均セル電圧の絶対値が7V以上である。
2.実施例2~35及び比較例1~7
基本的には実施例1と同様にして、実施例2~35及び比較例1~7のドープ電極を製造した。ただし、Si活物質比率、炭素活物質比率、ドープ溶液温度、ドープ溶液の流動の有無、(A)成分の種類、(A)成分濃度、(B)成分の種類、溶媒中の(B)比率、(C)成分の種類、溶媒中の(C)比率、MA、MB、MA/MB、Liへ配位可能な溶媒数、電流、電流密度I、目標ドープ量、及び目標ドープ時間は、表1~3に示すとおりとした。
【0166】
また、実施例25~35については、ドープ後処理に使用する処理液の組成を表3に示すとおりとした。処理液は、(E)成分と(F)成分とから成る。(F)成分は、処理液のうち、(E)成分以外の成分である。表3における「処理液中の(E)比率」は、処理液の全質量に対する、(E)成分の質量の比率を意味する。「処理液中の(F)比率」は、処理液の全質量に対する、(F)成分の質量の比率を意味する。実施例33の処理液は、(E)成分として、VCとFECとを等量含んでいる。実施例33における「処理液中の(E)比率」は、処理液の全質量に対する、全ての(E)成分の質量の比率を意味する。
【0167】
【表3】
【0168】
表1、表3において、DMSOはジメチルスルホキシドを意味する。ANはアセトニトリルを意味する。DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを意味する。TMPはリン酸トリメチルを意味する。FECはN,N-ジメチルホルムアミドを意味する。VCはビニルカーボネートを意味する。ECはエチレンカーボネートを意味する。PSは1,3-プロパンスルトンを意味する。ESはエチレンサルフェートを意味する。EMCはエチルメチルケトンを意味する。DMCはジメチルカーボネートを意味する。HFEはハイドロフルオロエーテルを意味する。
【0169】
各実施例及び各比較例について、実施例1と同様に、対極Li劣化、初回放電効率、及び保存後放電効率を評価した。評価結果を表2、表3に示す。
各実施例では、対極Li劣化、初回放電効率、及び保存後放電効率の評価結果が良好であった。
【0170】
電流密度Iが60mA/cmである実施例1は、電流密度Iが120~200mA/cmである実施例10~12に比べて、対極Li劣化、初回放電効率、及び保存後放電効率の評価結果が一層良好であった。
【0171】
(A)成分の濃度が3モル/Lである実施例1は、(A)成分の濃度が4モル/Lである実施例14に比べて、対極Li劣化、初回放電効率、及び保存後放電効率の評価結果が一層良好であった。
【0172】
ドープ溶液の流動があった実施例1は、ドープ溶液の流動が無かった実施例15に比べて、対極Li劣化、初回放電効率、及び保存後放電効率の評価結果が一層良好であった。
ドープ溶液の温度が40℃である実施例1は、ドープ溶液の温度が30℃である実施例16、及び、ドープ溶液の温度が80℃である実施例17に比べて、対極Li劣化の評価結果が一層良好であった。
【0173】
実施例26~35は、実施例25に比べて、保存後放電効率が一層高かった。その理由は以下のように推測される。実施例26~35では、処理液に含まれる(E)成分とドープ電極とが化学的に反応し、ドープ電極において被膜形成が進行した。その結果、ドープ電極の保存安定性が向上した。
【0174】
比較例1は、ドープ溶液が(A)成分を含まないため、対極Li劣化、及び初回放電効率の評価結果が不良であった。
比較例2は、ドープ溶液が(B)成分を含まないため、対極Li劣化、及び初回放電効率の評価結果が不良であった。
【0175】
比較例3~5は、MA/MBの値が0.10より小さいか、0.65より大きいため、対極Li劣化、及び初回放電効率の評価結果が不良であった。
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0176】
(1)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0177】
(2)上述したドープ電極の製造方法及び蓄電デバイスの製造方法の他、ドープ電極、蓄電デバイス等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
アルカリ金属がドープされた活物質層を含むドープ電極の製造方法であって、
前記活物質層を含む電極と、前記電極に対向する対極ユニットとを、ドープ溶液を介して電気的に接続することで、前記アルカリ金属を前記活物質層にドープし、
前記ドープ溶液は、(A)リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、及びリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミドから選択される1種以上であるリチウムイミド塩、並びに、(B)1、2-ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、及びリン酸トリメチルから選択される1種以上である有機溶媒を含み、
前記ドープ溶液における前記(A)のモル比MAと、前記ドープ溶液における前記(B)のモル比MBとについて、以下の式(1)が成立するドープ電極の製造方法。
式(1) 0.10<MA/MB<0.65
[項目2]
項目1に記載のドープ電極の製造方法であって、
前記アルカリ金属を前記活物質層にドープするときの電流密度が20mA/cmより大きく200mA/cm未満であるドープ電極の製造方法。
[項目3]
項目1又は2に記載のドープ電極の製造方法であって、
前記ドープ溶液における前記(A)の濃度が1.0モル/L以上4.0モル/L以下であるドープ電極の製造方法。
[項目4]
項目1~3のいずれか1つの項目に記載のドープ電極の製造方法であって、
前記アルカリ金属を前記活物質層にドープするとき、前記電極と前記対極ユニットとの間に存在する前記ドープ電極が流動するドープ電極の製造方法。
[項目5]
項目1~4のいずれか1つの項目に記載のドープ電極の製造方法であって、
前記アルカリ金属を前記活物質層にドープするとき、前記ドープ溶液の温度が30℃以上80℃未満であるドープ電極の製造方法。
[項目6]
項目1~5のいずれか1つの項目に記載のドープ電極の製造方法であって、
前記ドープ溶液は、(C)エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニルカーボネート、及びフッ化エーテル類から選択される1種以上である有機溶媒をさらに含むドープ電極の製造方法。
[項目7]
項目6に記載のドープ電極の製造方法であって、
前記活物質層に含まれる活物質のうち、20質量%以上100質量%以下は、層状構造を有する炭素化合物であるドープ電極の製造方法。
[項目8]
項目1~7のいずれか1つの項目に記載のドープ電極の製造方法であって、
前記活物質層に含まれる活物質のうち、10質量%以上100質量%以下は、ケイ素を含む活物質であり、
前記アルカリ金属を前記活物質層にドープした後、環状カーボネート系化合物、ニトリル系化合物、ホスフェート系化合物、ボレート系化合物、サルフェート系化合物、スルトン系化合物、フッ化ベンゼン系化合物、及びシラン系化合物から選択される1種以上を含み、前記ドープ溶液とは異なる処理液と、前記電極とを接触させるドープ電極の製造方法。
[項目9]
項目1~8のいずれか1つの項目に記載のドープ電極の製造方法であって、
前記活物質層に含まれる活物質のうち、10質量%以上100質量%以下は、ケイ素を含む活物質であり、
前記アルカリ金属を前記活物質層にドープした後、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニルカーボネート、1、3-プロパンスルトン、及びエチレンサルフェートから選択される1種以上を含み、前記ドープ溶液とは異なる処理液と、前記電極とを接触させるドープ電極の製造方法。
[項目10]
項目1~9のいずれか1つの項目に記載のドープ電極の製造方法により前記ドープ電極を製造し、
前記ドープ電極と、前記ドープ電極とは異なる電極と、前記ドープ溶液とは異なる組成の電解液とを用いて電極セルを形成する蓄電デバイスの製造方法。
【符号の説明】
【0178】
1…電極、3…集電体、5…活物質層、6…活物質層形成部、7…活物質層未形成部、11…電極製造システム、15…電解液処理槽、17、19、21…ドープ槽、23…洗浄槽、25、27、29、31、33、35、37、39、40、41、43、45、46、47、49、51、52、53、55、57、58、59、61、63、64、65、67、69、70、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93…搬送ローラ、101…供給ロール、103…巻取ロール、105…支持台、107…循環濾過ユニット、109、110、111、112、113、114…電源、117…タブクリーナー、119…回収ユニット、121…端部センサ、131…上流槽、133…下流槽、137、139、141、143…対極ユニット、149、151…空間、153…導電性基材、155…アルカリ金属含有板、157…多孔質絶縁部材、161…フィルタ、163…ポンプ、165…配管、201…流動ユニット、203、205、207、209、211、213、215、217…ノズル、219、221…ポンプ、223、225、227、229…配管、231…孔、301…電極試験体、303…本体部、305…突出部、307…リード、309…テフロン板、311…開口部、312…電極ユニット、313…ステンレス板、315…凹部、317…ねじ穴、319…チューブコネクタ、321…フッ素ゴムチューブ、323…リチウム金属板、325…テフロン板、327…開口部、329…本体部、331…切り欠き部、333…対極ユニット、335…スペーサ、337…開口部、339…簡易ドープ電極製造装置
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