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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067445
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】インフラ維持管理支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20240510BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240510BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G06Q50/26
G08G1/00 J
G01C21/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177520
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100216677
【弁理士】
【氏名又は名称】坂次 哲也
(72)【発明者】
【氏名】矢野 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】野口 智彦
(72)【発明者】
【氏名】大川内 幸雄
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129AA11
2F129BB70
2F129DD15
2F129DD17
2F129DD19
2F129DD20
2F129DD30
2F129EE02
2F129EE29
2F129EE52
2F129EE62
2F129EE79
2F129EE81
2F129FF12
2F129FF14
2F129FF15
2F129FF17
2F129FF20
2F129FF52
2F129FF62
2F129FF71
2F129FF74
2F129HH12
2F129HH19
2F129HH20
2F129HH22
2F129HH33
5H181AA01
5H181AA26
5H181BB04
5H181BB12
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC04
5H181CC27
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181MC02
5H181MC16
5H181MC19
5H181MC27
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】インフラの状態を高頻度・広範囲・低コストでセンシングしてモニタリングするとともに、蓄積されたデータに基づいて予防保全型の維持管理の実現を支援する。
【解決手段】地図データ11とセンシングデータ13と補修実績データ14とを含むデータを取得して保持するデータ管理部10と、地図画像にセンシングデータ13に基づいて判断したインフラの状態に係る情報を重畳的に表示する地図表示部20と、センシングデータ13を含むデータに基づいて各インフラの将来の劣化程度を予測し、当該予測を含む情報に基づいて補修対象のインフラの候補を提示する補修支援部40と、センシングデータ13および維持管理関連データ15を集計した結果をダッシュボード表示する運営・管理部50とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフラの維持管理を支援するインフラ維持管理支援システムであって、
地図データと、インフラの状態をセンシングして得られたセンシングデータと、インフラの補修実績データと、を含むデータを取得して保持するデータ管理部と、
前記地図データに基づく地図画像に、前記センシングデータに基づいて判断したインフラの状態に係る情報を重畳的に表示する地図表示部と、
前記センシングデータを含むデータに基づいて各インフラの将来の劣化程度を予測し、当該予測を含む情報に基づいて補修対象のインフラの候補を提示する補修支援部と、
前記センシングデータ、およびインフラの維持管理に関連するデータを集計した結果を前記地図画像に加えてダッシュボード表示する運営・管理部と、
を有する、インフラ維持管理支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載のインフラ維持管理支援システムにおいて、
さらに、インフラ毎に点検の周期を設定し、当該周期に基づいて点検対象となった1つ以上のインフラについて点検ルートを提案する点検支援部と、
を有する、インフラ維持管理支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載のインフラ維持管理支援システムにおいて、
前記点検支援部は、点検によって得られた上記センシングデータに基づいてインフラの健全度を判定する、インフラ維持管理支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載のインフラ維持管理支援システムにおいて、
前記補修支援部は、前記候補のインフラの補修に採用する工法をAIにより選択して提示する、インフラ維持管理支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載のインフラ維持管理支援システムにおいて、
前記補修支援部は、前記候補のインフラに補修を行ったときのライフサイクルコストのシミュレーションを行い、結果を提示する、インフラ維持管理支援システム。
【請求項6】
請求項1に記載のインフラ維持管理支援システムにおいて、
さらに、前記候補から選択されたインフラについて、工法、工事スケジュール、および予算を含む補修計画を作成して補修計画データとして記録する計画管理部と、
前記補修計画に基づいて行われる補修工事に係るプロジェクト管理を行う工事管理部と、
を有する、インフラ維持管理支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフラの維持管理の技術に関し、特に、国や自治体が管理する道路や橋梁などのインフラを対象としたインフラ維持管理支援システムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国や自治体が管理する道路や橋梁、トンネルなどのインフラ設備は、2030年には整備から50年以上経過するものが過半数になるとも言われており、定期的な点検や補修が必須である。
【0003】
このようなインフラの維持管理に係る技術として、例えば、特開2015-7341号公報(特許文献1)には、車両による走行時に検出される路面状態ごとの補修工費を格納する工費テーブルと、路面状態が基準状態を超える路面に補修工費を割り当てて、所定区間における路面の補修工費の合計を計算する計算部と、基準状態を変更し、変更した基準状態に基づいて補修工費の合計を計算するシミュレーション部とを設けて路面補修工費の割当てを行う仕組みが記載されている。
【0004】
また、例えば、特開2022-646号公報(特許文献2)には、複数の画像と位置情報に基づいて、橋梁やトンネル等の構造物の表面を示す合成画像を生成する合成画像生成部と、合成画像または合成前の画像を解析して構造物の表面のひび割れを検出するひび割れ検出部と、検出されたひび割れに対応するひび割れ画像とひび割れの特徴量とを示すひび割れ情報を生成するひび割れ情報生成部とを備え、ひび割れ箇所の画像を解析して合成画像と画像解析結果をユーザに提示する仕組みが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-7341号公報
【特許文献2】特開2022-646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような従来技術によれば、インフラの点検結果を画像によりユーザが確認しやすくするとともに、複数箇所の補修工事において工費が予算内に収まるようユーザが調整しやすくするという仕組みを実現することも可能であるといえる。
【0007】
一方で、従来は5年など数年の周期で定期的に主要なインフラを対象として行うという形で運用されることが一般的であったインフラの点検・補修の対応を、老朽化するインフラが増加する状況下ではより短い周期で広範囲のインフラを対象に繰り返し点検を行い、補修が必要な箇所を検出したら随時補修工事、予防工事を行うようなCBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)による維持管理を実現できるよう支援する仕組みが要望される。
【0008】
そこで本発明の目的は、道路や橋梁などのインフラの状態を高頻度・広範囲・低コストでセンシングして最新状態をモニタリングするとともに、蓄積されたデータに基づいてCBMによる予防保全型の維持管理の実現を支援するインフラ維持管理支援システムを提供することにある。
【0009】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記載および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0011】
本発明の代表的な実施の形態であるインフラ維持管理支援システムは、インフラの維持管理を支援するインフラ維持管理支援システムであって、地図データと、インフラの状態をセンシングして得られたセンシングデータと、インフラの補修実績データと、を含むデータを取得して保持するデータ管理部と、前記地図データに基づく地図画像に、前記センシングデータに基づいて判断したインフラの状態に係る情報を重畳的に表示する地図表示部と、前記センシングデータを含むデータに基づいて各インフラの将来の劣化程度を予測し、当該予測を含む情報に基づいて補修対象のインフラの候補を提示する補修支援部と、前記センシングデータ、およびインフラの維持管理に関連するデータを集計した結果を前記地図画像に加えてダッシュボード表示する運営・管理部と、を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0013】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、インフラの状態を高頻度・広範囲・低コストでセンシングして最新状態をモニタリングするとともに、蓄積されたデータに基づいてCBMによる予防保全型の維持管理を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態であるインフラ維持管理支援システムの構成例について概要を示した図である。
図2】本発明の一実施の形態におけるインフラ維持管理の運用の例について概要を示した図である。
図3】本発明の一実施の形態におけるLCMの例について概要を示した図である。
図4】本発明の一実施の形態におけるLCMの処理の流れの例について概要を示した図である。
図5】本発明の一実施の形態における画面表示の例について概要を示した図である。
図6】本発明の一実施の形態における画面表示の他の例について概要を示した図である。
図7】本発明の一実施の形態における路面性状データの構成例について概要を示した図である。
図8】本発明の一実施の形態における路面下センシングデータの構成例について概要を示した図である。
図9】本発明の一実施の形態におけるトンネル点検データの構成例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0016】
<概要>
図2は、本発明の一実施の形態におけるインフラ維持管理の運用の例について概要を示した図である。図の上段では、従来のインフラ維持管理の運用の例について示しており、下段では本実施の形態において対象とする運用の例について示している。上述したように、従来は、上段の図に示すように5年以上などの長い周期で定期的に主要なインフラを対象として点検と補修をセットで行うという形で運用されることが一般的であった。これに対し、本実施の形態では、下段の図に示すようにより短い周期で広範囲のインフラを対象に低コストで繰り返し点検を行い(循環点検)、補修が必要な箇所(予防的な補修も含む)を検出したら随時補修工事を行うことでCBMを実現する。
【0017】
なお、5年以上などの長い周期で管理対象のインフラ設備全てを対象として点検する以外に、長い周期で部分的な点検を行い、残部については非常に古い点検データを用いて画一的な数式に基づき現在の状態を予測することも行われていたが、実際の状態との乖離が存在するといった課題があった。本実施の形態においても数式やAIを用いて将来予測を行うが、乖離が問題とならない程度の短い周期での点検もしくは全面点検を採用することでこの課題を解決することができる。
【0018】
図3は、本発明の一実施の形態におけるLCM(ライフサイクルマネジメント)の例について概要を示した図である。本実施の形態では、まずインフラの状態の点検・センシングを行ってセンシングデータを取得・蓄積する(図右下)。そして、蓄積したセンシングデータに基づいて状態を地図上にマッピングしたりインフラの3Dモデリングを行ったり等により、インフラの状態を利用者に可視化する(図左下)。
【0019】
そして、補修が必要と考えられる(もしくは推奨される)箇所を抽出して提示し、補修を行うインフラを決定するとともに補修計画の作成を支援する(図左上)。そして、補修計画に基づく補修の実行として、補修業者の調達や、工事の進捗、予算等のマネジメントなどを支援する(図右上)。そして、補修を行ったインフラに対して、補修の実績のデータと合わせて改めて点検・センシングを行ってインフラ状態のデータを得る(図右下)ことで、インフラの点検から維持管理に至るLCMをデジタル化する。
【0020】
本発明の一実施の形態であるインフラ維持管理支援システムは、上述したようなインフラの維持管理を支援する情報処理システムであり、インフラの状態を高頻度で点検(センシング)する「モニタリング」と、蓄積したセンシングデータに基づいてインフラの状態を可視化し、分析を的確かつ容易にする「デジタルツイン」を備えることで、CBMによる予防保全型の最適補修を支援する。すなわち、インフラ状態を高頻度・広範囲・低コストでセンシングすることで最新状態をモニタリングし、収集したセンシングデータと各種のインフラ維持管理関連情報とを一元的に管理するとともに、高頻度のセンシングで蓄積されたデータを活用することでCBMを実現する。
【0021】
例えば、対象インフラが道路の場合、「モニタリング」サービスでは、パトロールカーやドローン等へのセンサー取付けにより高頻度・広範囲・低コストでの点検・センシングを行い、路面に加えて路面下の状態も同時にセンシングすることで、従来の数年に一度の主要道路のみの点検・補修から、高頻度・広範囲・均質精度の自動センシングへの移行を実現可能とする。また、「デジタルツイン」サービスでは、センシング結果および補修実績等のデータを一元的に管理し、道路状態を地図上にマッピングして可視化するとともに、蓄積されたセンシングデータの分析により補修計画や工事の高度化・効率化を支援することで、従来の将来予測のない事後保全型の補修から、将来の劣化予測に基づく予防保全型の補修への移行を実現可能とする。
【0022】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施の形態であるインフラ維持管理支援システムの構成例について概要を示した図である。インフラ維持管理支援システム1は、例えば、サーバ機器やクラウドコンピューティングサービス上に構築された仮想サーバ、PC等により構成され、図示しないCPU(Central Processing Unit)により、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記録装置からメモリ上に展開したOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)、Webサーバプログラム等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアを実行することで、インフラの維持管理に係る各種機能を実現する。
【0023】
なお、インフラ維持管理支援システム1の全部または一部を利用、使用、運用、保守するのは、例えば、システム会社であってもよいし、国や自治体、インフラの維持管理に携わる企業等(建設会社、工事会社、点検会社、システムインテグレーター、警備会社等)であってもよい。
【0024】
このインフラ維持管理支援システム1は、例えば、ソフトウェアとして実装されたデータ管理部10、地図表示部20、点検支援部30、補修支援部40、運営・管理部50、計画管理部60、および工事管理部70などの各部を有する。また、データベースやファイル等として実装された地図データ11、設計・施工データ12、センシングデータ13、補修実績データ14、維持管理関連データ15、補修計画データ61、および工事管理データ71などの各データストアを有する。
【0025】
なお、図1の例では、これら各構成要素(もしくはその一部)が1つのサーバシステム上に実装されるかのように表されているが、論理的な表現であり、実際は、その一部もしくは全部の構成要素がそれぞれ個別のサーバやコンピュータ、システム、サービス等として実装され、図示しないネットワークを介して連携する形で構成されていてもよい。そして、各構成要素の一部もしくはいずれかの構成要素の一部が実装されたコンピュータを、上記の国、自治体、インフラの維持管理に携わる会社等のいずれかが使用することができる構成としてもよい。
【0026】
例えば、点検会社が、インフラの点検を行って得たデータをインフラ維持管理システム1にインポートし、システムインテグレーターが、インポートした点検のデータを用いてインフラ状態の可視化を本システム上で行う。そして、建設会社が、本システムを用いて補修計画を行い、当該補修計画に沿って本システムを用いて発注を行い、工事会社が、受注した工事の進捗を本システム上で管理する。
【0027】
上記の例においても、インフラ維持管理に携わる各会社等が、発注者である国や自治体等と個別に契約を締結するケース(以下では「個別委託モデル」と記載する場合がある)と、インフラ維持管理に携わる複数の会社等またはその集合体が、複数のインフラを対象として包括的に発注者である国や自治体等と契約を締結するケース(以下では「包括委託モデル」と記載する場合がある(「包括管理モデル」、「包括民間委託モデル」とも呼称される場合がある))のいずれであっても、本実施の形態のインフラ維持管理支援システム1を用いることができる。そして、発注者は、インフラ維持管理支援システム1の全部または一部を利用、操作し、情報を閲覧等することができる。
【0028】
個別委託モデルの例示としては、例えば、システムインテグレーターによりインフラ維持管理支援システム1において可視化された対象インフラの状態を発注者が閲覧して確認し、建設会社が本システムを用いて策定した補修計画を発注者が閲覧して承認を行い、補修計画の全部または一部の各工事を本システムを用いて発注者が発注(または発注支援)して工事会社が受注し、工事会社が本システムに入力する工事進捗状況を発注者が確認するというようなケースが挙げられる。
【0029】
一方、包括委託モデルの例示としては、例えば、システムインテグレーターによりインフラ維持管理支援システム1において可視化された対象インフラの状態を上記の集合体が閲覧して確認し、建設会社が本システムを用いて策定した補修計画を上記の集合体が閲覧して承認を行い、補修計画の全部または一部の各工事を本システムを用いて上記の集合体が発注(または発注支援)して工事会社が受注し、工事会社が本システムに入力する工事進捗状況を上記の集合体が確認するというようなケースが挙げられる。
【0030】
上記の包括委託モデルの例における発注者側の主な役割として、定期的な包括委託事業のモニタリングがあるが、そのモニタリングを本システムを用いて行い、予め定められている基準以上に委託内容が実行されているかを監督し、基準以下であれば是正指示を本システムを用いて行うことも可能である。また、包括委託モデルと組み合わせて用いられるAP(Availability Payment)(Performance-based contract(性能規定型契約)において用いられる支払い手法の一つで、対象インフラの性能を規定(例えば、対象道路の平均ひび割れ率が所定の値以下となるよう維持する等の性能を規定)して維持管理を委託し、その性能を遵守できていると支払いが行われる)を適用したモデルであってもよい。
【0031】
このモデルは、換言すると、上記の性能規定を満たした維持管理をしてもらい、維持ができていない場合は支払額を減額するモデルであるともいえる。このようなモデルであって本実施の形態のインフラ維持管理支援システム1を用いることが可能である。さらに、上述の説明では、委託内容の実行監督を本システムで行うことを説明したが、本システムにおいて、性能規定以上であれば所定の金額を支払うことを決定し、性能規定未満であれば所定の金額から相応の金額を減額した金額を支払うことを決定するという構成であってもよい。さらに、支払金額の承認と支払いの実行(金融機関への支払依頼)の機能を有していてもよい。
【0032】
図1に戻り、データ管理部10は、インフラの点検・センシングにより得られたデータを含む各種のデータを適宜取得・蓄積して管理する機能を有する。データの取得に際しては、例えば、国や自治体、企業や団体等の外部のシステムやサービスと接続・連携して自動もしくは半自動的に必要なデータを取得するよう構成してもよいし、運用担当者等がデータを入力したりアップロードしたりするよう構成してもよく、データの種別によってこれらの構成を使い分けるようにしてもよい。外部からデータを取得する場合は、適宜フォーマットを変更する等の加工を行ってもよい。
【0033】
例えば、地図データ11には、画面表示する際のベースとなる地図データ(2次元/3次元)を保持する。設計・施工データ12には、国や自治体が各インフラを整備した際の設計情報、施工情報を保持する。センシングデータ13には、各種の手段でインフラを点検・センシングして得られたデータ(例えば、道路の場合、路面性状や路面下の構造、空洞等に係るデータ)を保持する。補修実績データ14には、各インフラについての過去の補修時期や工法、補修材料等の実績に係るデータを保持する。維持管理関連データ15には、インフラの維持管理の際に関連する他の情報(例えば、道路の場合、住民通報(苦情)のデータや、交通量データ、天候等)を保持する。なお、このようなデータストアの構成はあくまで一例であり、他の構成としたり上記以外のデータを取得・保持する構成としてもよいことは言うまでもない。
【0034】
なお、センシングデータ13がデータソースのデータ属性を有し、データソースの値によって後述する地図表示部20、点検支援部30および補修支援部40の処理対象とするか否かを決定する構成であってもよい。例えば、インフラ維持管理支援システム1を運用する会社等が直接点検して取得した、本システムに完全に適合するセンシングデータ(以下では「本システム用センシングデータ」と記載する場合がある)のみを用いて地図表示や点検支援、補修支援の処理を行った方が、予め想定できるデータ内容であるため、本システムとの適合性が高い。
【0035】
一方で、短期間で必要な量のセンシングデータが蓄積されることも現実的ではないことから、例えば、インフラ設備管理会社が外部の会社に過去に点検を依頼して取得したセンシングデータや、当該センシングデータを本システムのセンシングデータに準拠するようにデータ変換したセンシングデータ(以下では「外部センシングデータ」と記載する場合がある)を用いる必要が生じる場合もある。
【0036】
そこで、例えば、本実施の形態のインフラ維持管理支援システム1を利用し始めた当初は、本システム用センシングデータに加えて外部センシングデータを含めたものを地図表示や点検支援、補修支援での処理対象としつつ、本システム用センシングデータが十分に蓄積された後は、本システム用センシングデータのみを地図表示や点検支援、補修支援での処理対象とする構成であってもよい。上述したように、センシングデータ13においてデータソースのデータ属性を有するため、所望のデータ属性を有するセンシングデータのみを処理対象とすることで実現することができる。
【0037】
なお、センシングデータ13のデータを教師データとしてAIにより学習している場合に、本システム用センシングデータに加えて外部センシングデータも含めて学習している場合には、本システム用センシングデータのみでの再学習が必要になる場合が生じ得る。ただし、本システム用センシングデータの量が外部センシングデータの量に比して多い場合には、外部センシングデータが学習モデルの重み付けに対して与える影響が軽微であるため、必ずしも再学習が必要とならない場合もある。
【0038】
図1に戻り、地図表示部20は、同一の地図上に各種の維持関連情報をマッピングして表示し、可視化する機能を有する。画面表示に際しては、例えば、図示しないネットワークを介してインフラ維持管理支援システム1に接続する利用者の情報処理端末のディスプレイに表示することができる。図示しない専用のアプリケーションプログラムを稼働させて表示してもよいし、Webブラウザを利用して表示する構成としてもよい。例えば、センシングデータ13のデータに基づいて判断された各道路の状態を色分けするなどして、地図データ11のデータに基づく地図画像上にマッピングして表示するとともに、維持管理関連データ15のデータに基づいて対象の道路に係る住民通報や交通量、天候等の情報を適宜重畳表示することで、同一の地図上で多種多様な維持関連情報を可視化して、他の組織や担当者等と情報を共有することが容易となる。
【0039】
点検支援部30は、インフラの点検・センシングを効率化して支援する機能を有する。例えば、センシングデータ13の過去のデータや、補修実績データ14のデータ等に基づいて、インフラ毎に点検やパトロールの周期や頻度を設定したり、点検やパトロールが必要もしくは予防的に推奨されるインフラやその箇所を抽出して提案したりすることができる。点検やパトロールの最適なルートを選定して提案したりする機能を有していてもよい。点検の周期や頻度としては、例えば、1年に数回、1か月に数回、1週間に数回などとすることができ、個別のインフラの特性(例えば道路の場合、道路毎の交通量や路面の劣化スピード等の相違)によって適切な周期を適宜設定することができる。
【0040】
なお、対象のインフラにおける対象の箇所について、過去に、後述する補修支援部40により将来のある時点における劣化予測を行った結果と、当該時点になって実際に実施した点検によって得た点検値とを比較し、劣化予測値と点検値との差分に基づいて点検の周期を決定する構成であってもよい。例えば、2021年9月に、1年後の将来である2022年9月の時点での道路のA区間についての劣化予測を行う。その後2022年9月になって実際に行った点検結果と、2021年9月に取得していた劣化予測値とを比較して、その差分が所定の閾値以下であれば通常の点検周期とする一方、差分が所定の閾値より大きい場合は通常の点検周期よりも短い点検周期を提示する、ということが可能である。
【0041】
点検やパトロールを行うインフラの箇所や区間については、例えば、センシングデータ13の記録等から点検実施済みの区間を把握した上で、次回の点検対象の区間を特定して、最適なルートともに点検の計画として提案する。点検当日に実際に点検を行った区間の実績が計画を下回った場合は、点検未済となった区間を次回の点検時の対象として追加するようにしてもよい。逆に計画を上回る区間を実際に点検した場合は、次回の点検予定の区間を先取りして点検したものと取り扱い、次回の点検では次々回の点検区間を先取りして点検するようにしてもよい。
【0042】
また、点検の結果センシングデータ13に記録されたデータに基づいて、対象インフラの点検結果の健全度を自動的もしくは半自動的に判定する機能を有していてもよい。なお、これらの各機能の実装に際しては、例えば、AIや公知の技術を適宜用いることができる。
【0043】
図1に戻り、補修支援部40は、予防保全型のインフラ補修を実現するために補修の高度化を支援する機能を有する。例えば、設計・施工データ12やセンシングデータ13、補修実績データ14、維持管理関連データ15などのデータに基づいて、各インフラの劣化予測を行い、補修が必要もしくは予防的に補修が推奨されるインフラやその箇所を抽出したり、補修に際しての最適な工法を推奨する機能を有していてもよい。補修が必要なインフラについては、例えば、各道路の交通量や天候などの情報を考慮して優先度を設けるようにしてもよい。さらに、提案に従って補修を行った際の当該インフラのLCC(ライフサイクルコスト)のシミュレーションを行う機能を有して、コスト面を考慮した補修計画案の策定を可能とするようにしてもよい。策定された補修計画案は、例えば、補修計画データ61に登録し、詳細な補修計画の策定に用いるようにしてもよい。
【0044】
運営・管理部50は、利用者がインフラ維持の運営や管理を行うにあたってのユーザインタフェースやその他の機能を有する。例えば、地図表示部20が表示する地図と同じ画面上にいわゆるダッシュボードとしてインフラの状態や各種の維持関連情報をグラフィカルに可視化する機能を有する。また、インフラ維持の運営・管理に必要となる、もしくは参照される各種のマスタデータや、補修を必要とするか否か、するとした場合どの程度の補修を行うか等の判断に係る各種の条件や設定情報等を保持・管理する機能を有する。
【0045】
上述した各部により、インフラに対する点検・センシングを高頻度で行い、結果を自動的もしくは半自動的に診断して、補修の要否や補修内容を提案することができ、データドリブンでの補修業務(CBM)および運営管理の高度化を実現することができる。
【0046】
計画管理部60は、補修の対象とするインフラについて詳細な補修計画の策定を支援する機能を有する。例えば、補修支援部40において特定され、補修計画データ61に登録された補修箇所や工法、コストの情報に加えて、工事のスケジュールや、工事会社の調達に係る情報、詳細な予算計画に係る情報などの入力を受け付けて補修計画データ61に登録できるようにしてもよい。運営・管理部50に設定された条件や設定情報等に基づいて自動的にこれらの内容を設定するように構成することも可能である。
【0047】
工事管理部70は、補修計画データ61等に基づいて行われる補修工事の進捗管理や各種調達・発注業務、予算管理などのプロジェクト管理に係る各種機能を有する。一般に利用可能なプロジェクト管理ツールなどを利用する構成としてもよい。プロジェクト管理に係る情報は、例えば、工事管理データ71に記録することができる。補修が完了した際の実績データは、補修実績データ14に記録するようにしてもよい。
【0048】
例えば、補修計画データ61の内容に基づいて各種の発注をオンラインで行うとともに、工事の進捗やステータスの確認、予算の確認、工事完了時の検収や、その後の定期点検・パトロールの計画・提案などを行う。工事対象の区間について検収のための確認やセンシングを行い、健全度が十分に回復している場合に検収済みとして工事完了としてもよい。なお、健全度が回復している場合でも、その後の定期点検や劣化予測において、少なくとも所定の期間維持すべき最低限の健全度を維持できないような場合には、対象区間を次回の点検において点検すべき対象や、補修を推奨する対象に含めるようにしてもよい。
【0049】
<処理の流れ>
図4は、本発明の一実施の形態におけるLCMの処理の流れの例について概要を示した図である。まず、センシングデータの蓄積がない初期状態では、システム外にて点検の計画を策定して点検を行い、インフラの状態に係るセンシングデータを取得する(S01)。例えば、道路の場合、各種センサーを搭載したパトロールカーで対象の道路を走行しながらセンシングデータを得る。橋梁やトンネルの場合は、カメラやセンサーを搭載したドローンを飛行させてセンシングデータを得てもよい。橋梁などのインフラ設備に直接設置されたセンサーから情報をインターネット経由などで取得する構成とすることも可能である。点検支援部30により最適な点検・パトロールのルートを提案するようにしてもよい。
【0050】
なお、道路、トンネル、橋梁はインフラの一例であり、センシングの対象として、植栽や清掃の状態、公園、除雪の状態、街路灯、反射鏡、道路標識等を対象としてもよい。センシングの方法としては、公知慣用技術を適宜用いて行うことができ、例えば、植栽については、手入れ直後の写真とその後の写真を画像比較したり、木の枝が道路や電線に伸長しているかどうかを画像判定したりすることで正常の状態か否かを判定することができる。
【0051】
また、パトロールカーでセンシングデバイスを用いてセンシングデータを取得する構成の外に、例えば、パトロール担当者が、インフラ維持管理支援システム1に対して、位置情報を付加した上で、パトロール内容として多種多様な事項(例えば、路面性状の追加報告事項や道路陥没、粗大ゴミの放置等)を入力できる構成であってもよい。これにより、本システムを利用してインフラの状態を確認、監督、モニタリングする管理者が、パトロール担当者が入力した上記のような事項を確認することができる。逆に、管理者が入力した内容に沿ってパトロール担当者がパトロールや措置を実行してその結果を本システムに入力する構成とすることもできる。
【0052】
取得したセンシングデータは、データ管理部10によりセンシングデータ13に記録・蓄積される。点検支援部30により、センシングデータ13に基づいて健全度をAIにより自動的に判定するようにしてもよい。
【0053】
その後、蓄積されたセンシングデータ13や設計・施工データ12等のデータに基づいて、補修支援部40により対象インフラの劣化予測を行う(S02)。劣化予測の手法については特に限定されず、公知の各種手法を適宜採用することができる。そして、対象インフラに関連する各種データを設計・施工データ12や補修実績データ14、維持管理関連データ15等から取得して(S03)、これらを地図表示部20により2次元・3次元の地図にマッピングして表示するとともに、運営・管理部50によりダッシュボード表示する(S04)。
【0054】
利用者は、地図表示やダッシュボードに可視化されたインフラの状態を多種多様な切り口で確認しながら、補修を行う箇所を選定する(S05)。その際、利用者による選定に資するように、補修支援部40により、ステップS02の劣化予測の結果などに基づいて補修が必要もしくは推奨される箇所の候補を提案するようにしてもよい。補修箇所が選定されると、補修支援部40により補修計画を作成して利用者に提案する(S06)。補修計画の作成に際しては、例えば、補修に際しての最適な工法の提案を含み、当該提案に従って補修を行った場合の対象のインフラのLCCのシミュレーション結果なども提示する。
【0055】
補修計画が選定されると、計画管理部60より、当該補修計画(もしくはこれをベースに修正・調整した補修計画)を補修計画データ61に登録するとともに、当該補修計画に基づいて補修工事が行われる。工事管理部70では、工事業者の調達や資材等の発注などをオンラインで行ってもよい。また、補修工事の進捗や予算の管理といったプロジェクト管理に係る処理を行う(S07)。補修が完了した際の実績データは、補修実績データ14に記録する。
【0056】
その後、点検支援部30により、例えば、各インフラについて設計・施行データ12やセンシングデータ13、補修実績データ14、維持管理関連データ15等に基づいて設定された点検の周期やインフラの状態等に基づいて、点検・センシングを行うべきインフラやその箇所を抽出して提案し(S08)、ステップS01に戻って、点検対象のインフラに対して実際に点検・センシングを行ってデータを取得するという一連のサイクルを繰り返す。
【0057】
<画面例>
図5は、本発明の一実施の形態における画面表示の例について概要を示した図である。図5では、インフラとして道路を対象とした場合のデジタルツインによる可視化の例を示している。具体的には、画面右側のフィルターで指定された地域等の道路地図が画面左側に表示され、その道路上にフィルターで指定された道路健全度(Maintenance Control Index:MCI)、路面下空洞等の道路コンディションや住民通報等の情報を、道路の色分けやマークによりマッピングして表示する。また、これらの指標の集計結果を画面右下にダッシュボードとして表示する。このような画面表示により、利用者が補修計画を検討するに際しての情報収集の負荷を低減し、検討の効率化を実現することができる。
【0058】
例えば、地図上に複数種類の点検結果のデータ(例えば、橋梁と橋梁上の道路面等)を重畳表示することで、損傷の程度が悪い箇所の相互の因果関係を推測することも可能である。また、例えば「○○の場所の道路が損傷している」等の住民通報の件数のようにセンシングデータ以外のデータについても表示することで、直近の点検結果(インフラの健全度や劣化予測の内容)と、通報内容やその後行った点検の結果との対比を行って、損傷の程度等についてより的確かつ効率的な判断を支援することができる。
【0059】
図6は、本発明の一実施の形態における画面表示の他の例について概要を示した図である。上述したように、本実施の形態では図5の例のように点検やセンシングの結果を画面表示するだけでなく、蓄積したセンシングデータ13等に基づいてインフラの劣化予測のシミュレーションを行い、予め設定した補修基準値を超える箇所(もしくはAIにより補修が必要と判断された箇所)を自動的に抽出して、図6の例に示すように将来日付における補修箇所の候補として地図上にマッピングして表示する。このように、劣化予測の結果と地図表示、さらに天候や交通量等の関連情報を自在に組み合わせて表示することで、補修箇所の候補の選定を最適に行えるよう支援することができる。
【0060】
<センシングデータ>
以下では、センシングデータ13(設計・施工データ12や補修実績データ14、運営・管理部50にて管理するマスタ情報等を参照して得られるインフラの情報も含む)に蓄積する各種のセンシングデータの具体的な例について示す。図7は、本発明の一実施の形態における路面性状データの構成例について概要を示した図である。路線名の項目は、例えば「国道○号線」などの対象の路線を特定する名称や番号等の情報を保持する。区間(起点~終点)および起点位置情報(緯度・経度)、終点位置情報(緯度・経度)の各項目はそれぞれ、対象路線を区間に区切ったときの当該区間の起点と終点を、対象路線の起点からの距離(○m~□m)と、緯度・経度によって特定した情報を保持する。区間距離の項目は、対象区間の距離(m)の情報を保持する。
【0061】
点検年月の項目は、対象区間について直近の点検を行った年月の情報を保持する。また、ひび割れ、わだち掘れ、縦断凹凸、およびパッチング数の各項目はそれぞれ、対象区間のひび割れが存在する率(%)、わだち掘れの深さ(mm)、縦断凹凸を評価するIRI(International Roughness Index:IRI、国際ラフネス指数)の値(mm/m)およびパッチングの数の情報を保持する。
【0062】
交通量、大型車混入率、および舗装計画交通量の各項目はそれぞれ、対象区間の1日あたりの交通量(台/日)、そのうちの大型車の割合(%)、および舗装計画交通量(舗装の設計の基礎として定める大型自動車の1車線あたりの1日の交通量)の情報を保持する。設計CBRの項目は、対象区間の設計CBR(California Bearing Ratio:路床土支持力比)の情報を保持する。舗装構成(材料、厚さ)の項目は、道路の表層、基層、路盤ごとに使用材料とその厚さ(cm)の情報を保持する。舗装年月の項目は、対象区間の道路が舗装された年月の情報を保持し、補修履歴の項目は、対象区間の補修年月と補修内容の履歴情報を保持する。
【0063】
図8は、本発明の一実施の形態における路面下センシングデータの構成例について概要を示した図である。路線名の項目は、上述した図7の例と同様に対象の路線を特定する名称や番号等の情報を保持する。走行方向の項目は、対象の路線の走行方向(例えば、東行、西行、北行、南行等)の情報を保持する。地先名はセンシングデータを取得した箇所の地先の情報(例えば、○市△区1丁目1番等)を保持する。
【0064】
スコープ調査実施結果の項目は、路面下の空洞と推定された箇所へのスコープ挿入による調査を行ったか否か、行った場合のその結果の情報(空洞であるか否か)を保持する。空洞発生深度、空洞厚さ、空洞縦断長、および空洞横断長の各項目はそれぞれ、空洞の規模を示す発生深度、厚さ、縦横のサイズ(m)の情報を保持する。陥没可能性評価の項目は、点検支援部30等により陥没可能性を例えば5段階評価などで評価した結果を保持する。例えば、所定の基準値と比較して評価してもよいし、AIにより判断するようにしてもよい。備考情報の項目は、対象のセンシングデータ(空洞の情報)に係る備考情報を保持する。例えば、対象の空洞が「下水管近傍の○m付近にある」等の情報を記録しておく。
【0065】
図9は、本発明の一実施の形態におけるトンネル点検データの構成例について概要を示した図である。トンネル名および路線名の各項目は、対象のトンネルおよびその属する路線を特定する名称や番号等の情報を保持する。変状距離の項目は、変状が検出された箇所のトンネル起点からの距離(m)の情報を保持する。また変状部位の項目は、対象の変状のトンネルにおける部位の情報(例えば「左アーチの覆工」等)を保持する。また変状内容の項目は、変状の区分や種類の情報(例えば「外力によるひび割れ」、「導水工からの漏水」、「目地部の材質劣化」等)を保持する。
【0066】
前回点検時状態項目は、対象の箇所に係る前回の点検時の状態や健全性を示す情報を保持する。また、今回点検結果の項目は、今回の点検・センシングの区分(例えば、応急措置前か後か等)、調査や措置の要否などの情報を保持する。例えば、変状の大きさが所定の値より大きい場合は調査や措置を行うよう自動的に設定してもよいし、AIにより調査や措置の要否を判断するようにしてもよい。措置履歴の項目は、対象の箇所について調査や措置が必要であるとされた場合に、その実施の状況(例えば、実施済み、実施継続等)およびその内容(例えば「監視(重点的もしくは日常巡視等)」や「剥落防止工事の実施」等)の情報を保持する。備考情報の項目は、例えば、対象の箇所の変状に対する対応方針や特記事項等の情報を記録しておく。
【0067】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態であるインフラ維持管理支援システム1によれば、インフラの状態を高頻度で点検(センシング)することによる「モニタリング」と、蓄積したセンシングデータに基づいてインフラの状態を可視化し、分析を的確かつ容易にする「デジタルツイン」を備えることで、CBMによる予防保全型の最適補修を支援することが可能となる。すなわち、インフラ状態を高頻度・広範囲・低コストでセンシングすることで最新状態をモニタリングし、収集したセンシングデータと各種のインフラ維持管理関連情報とを一元的に管理するとともに、高頻度のセンシングで蓄積されたデータを活用することでCBMを実現することが可能となる。
【0068】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0069】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0070】
また、上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、国や自治体が管理する道路や橋梁などのインフラを対象としたインフラ維持管理支援システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…インフラ維持管理支援システム、
10…データ管理部、11…地図データ、12…設計・施工データ、13…センシングデータ、14…補修実績データ、15…維持管理関連データ、
20…地図表示部、30…点検支援部、40…補修支援部、50…運営・管理部、
60…計画管理部、61…補修計画データ、
70…工事管理部、71…工事管理データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9