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特開2024-67446ロープ式エレベータの速度監視システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067446
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ロープ式エレベータの速度監視システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/04 20060101AFI20240510BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B66B5/04
B66B5/02 X
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177524
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】522216329
【氏名又は名称】株式会社OMCテクニカ
(71)【出願人】
【識別番号】522216330
【氏名又は名称】大道 俊幸
(71)【出願人】
【識別番号】307043120
【氏名又は名称】サノシーテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516172042
【氏名又は名称】佐野 達広
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】大道 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】佐野 達広
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304CA13
3F304DA22
3F304EA18
3F304EA30
(57)【要約】
【課題】ロープ式エレベータの戸開走行保護装置用の安全制御回路にて、通常の運転制御に影響されずにかごの速度監視が行える速度監視システムの提供。
【解決手段】ロープ式エレベータの速度監視システムであって、運転制御回路が設置されている制御盤とは別体の独立した1モジュールとして、前記制御盤に対して交換装着可能に一枚の基板上に形成されている安全制御回路と、かごの昇降に機械的に連動する回転体の回転軸に装着されてその回転に応じてパルス信号を出力するロータリーエンコーダと、を備え、前記安全制御回路の安全制御用演算処理装置は、速度監視プログラムに従って、速度監視プログラム用データに含まれているロータリーエンコーダの一回転当たりのパルス数と前記回転体の一回転当たりの移動距離とに基づいて前記パルス信号を処理してかごの移動速度を算出すると共に、算出されたかごの移動速度が予め定められた速度以上である際に特定速度検知信号を出力する機能を備えているものとした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常時作動型の電磁式二重ブレーキを備えた巻上機によるかごの昇降と、かご戸及び各階の乗場戸の開閉とが、予め定められた運転制御プログラムに従って運転制御されるロープ式エレベータの速度監視システムであって、
前記予め定められた運転制御プログラムに従った運転制御を行うための運転制御回路が設置されている制御盤とは別体の独立した1モジュールとして、前記制御盤に対して交換装着可能に一枚の基板上に形成されている安全制御回路と、
前記かごの昇降に機械的に連動する回転体の回転軸に装着され、前記回転体の回転に応じてパルス信号を出力するロータリーエンコーダと、を備え、
前記1モジュールには、
外部からの各種信号入力電線が結線される複数の入力用接続部及び外部への各種信号出力電線が結線される複数の出力用接続部と、
予め定められた複数の動作異常判定論理プログラム及び各動作異常判定論理プログラム用データが格納されている安全制御用記憶部と、
前記動作異常判定論理プログラムに従って、前記入力用接続部からその入力部を介して受信した信号を処理して異常判定を行うと共に、該異常判定に基づいて、前記巻上機のモータへの電力供給回路に接続されたモータ用電磁接触器と前記電磁式二重ブレーキへの電力供給回路に接続されたブレーキ用電磁接触器とに電力供給を遮断させるかご制止指令信号を作成し、該かご制止指令信号をその出力部から出力させる機能を備えた安全制御用演算処理装置と、が含まれ、
前記複数の入力用接続部は、前記かご戸及び各乗場戸の開閉状態を示す信号が入力されるために設定された接続部と、前記かごが停止階の着床レベルから上下方向に予め定められた一定距離以上移動したことを感知する特定距離感知装置からの信号が入力されるために設定された接続部と、前記ロータリーエンコーダからの前記パルス信号が入力されるために設定された接続部と、を有し、
前記複数の出力用接続部は、前記モータ用電磁接触器と前記ブレーキ用電磁接触器とへ前記かご制止指令信号が出力されるためにそれぞれ設定された接続部を有し、
前記安全制御用記憶部に格納されている前記動作異常判定論理プログラム及び前記動作異常判定論理プログラム用データには、前記かご戸及び全乗場戸のうちの少なくとも一つが開状態でありながら前記かごが走行する戸開走行を検知して異常判定を行うための戸開走行判定論理プログラム及び戸開走行判定論理プログラム用データが含まれており、
前記安全制御用記憶部は、前記かごの移動速度を監視するための速度監視プログラム及び速度監視プログラム用データが更に格納されており、
前記安全制御用演算処理装置は、前記速度監視プログラムに従って、前記速度監視プログラム用データに含まれている前記ロータリーエンコーダの一回転当たりのパルス数と前記回転体の一回転当たりの移動距離とに基づいて前記パルス信号を処理して前記かごの移動速度を算出すると共に、算出された前記かごの移動速度が予め定められた速度以上である際に特定速度検知信号を出力する機能を更に備えていることを特徴とするロープ式エレベータの速度監視システム。
【請求項2】
前記ロータリーエンコーダが装着される前記回転体は、前記かごの非常止め装置を機械的に作動させる調速機の調速機シーブ、該調速機シーブに対向する下方に位置するテンションプーリ、前記巻上機のシーブ、該巻上機のシーブに直結する回転軸、前記巻上機のシーブに連動する方向転換プーリ、のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のロープ式エレベータの速度監視システム。
【請求項3】
前記速度監視プログラム用データは、前記ロータリーエンコーダの一回転当たりのパルス数と、予め定められた異なる複数種類の前記回転体のそれぞれに対応する各属性データとして、前記回転体の各直径及び各直径に対応する前記回転体の一回転当たりの移動距離と、を有し、
前記入力用接続部は、前記ロータリーエンコーダが装着されている前記回転体の種類毎に異なる識別信号を選択切換可能に発信する信号切換手段を備えており、
前記速度監視プログラムは、前記回転体の異なる種類毎に、前記属性データに基づいて前記かごの移動速度を求める複数種の速度算出モードを備え、前記信号切換手段からの前記識別信号に基づいて対応する前記速度算出モードが選択され実行されるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のロープ式エレベータの速度監視システム。
【請求項4】
前記信号切換手段は、二つ以上のスライドスイッチを有するディップ型スイッチを備え、前記ディップ型スイッチは、前記識別信号のそれぞれに各スライドスイッチのオン・オフの異なる組合せが割り当てられて設定されたものであることを特徴とする請求項3に記載のロープ式エレベータの速度監視システム。
【請求項5】
前記戸開走行判定論理プログラムは、前記安全制御用演算処理装置に対して、前記かご戸及び全乗場戸の開閉状態を示す信号と前記特定距離感知装置からの信号とを処理して戸開走行の異常判定を行わせる第1の戸開走行判定モードと、前記かご戸及び全乗場戸の開閉状態を示す信号と前記特定速度検知信号とを処理して戸開走行の異常判定を行わせる第2の戸開走行判定モードとを、互いに独立して且つ並行実行可能に備えたものであり、
前記第1の戸開走行判定モードは、前記かご戸及び全乗場戸のうちの少なくとも一つが開状態であることが検知されている間に前記かごの一定距離以上の走行が検知された際に、戸開走行異常判定が成されるものであり、
前記第2の戸開走行判定モードは、前記かご戸及び全乗場戸のうちの少なくとも一つが開状態であることが検知されている間に、前記特定速度検知信号が出力された際に、戸開走行異常判定が成されるものであることを特徴とする請求項1に記載のロープ式エレベータの速度監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロープ式エレベータの戸開走行判定のための異常速度の検知も可能な速度監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種建造物や施設の乗用、荷物用エレベータとして広く普及しているロープ式エレベータは、かごとつり合いおもり(カウンターウエイト)を連結するワイヤーロープがつるべ式に綱車(シーブ)にかけられ、ロープとシーブとの間の摩擦力(トラクション)を利用して電動式の巻上機で効率よく昇降させる方式である。このようなロープ式エレベータでは、吊り下げかごが走行時に左右に揺れることがないように、シャフト内の上下方向に延在されるガイドレールに沿って、かごの対応箇所に取り付けられたガイドローラを介して昇降する構成をとっている。また、現在は、モータの加速・減速、停止を供給電力の周波数の可変制御によって行うインバーター制御方式とすることで、省エネルギー効果を図ったものが多くなっている。
【0003】
通常のエレベータの運転制御は、運転制御回路が、乗場戸横の操作ボタン及びかご内の壁面操作盤でのボタン操作で発生した信号に応じて、巻上機の駆動部への制御指令を発信することによって行われる。即ち、運転制御回路は、予め定められた各箇所でのセンサからの検出出力、例えば、かごの位置検出、かご戸と乗場戸各々の開閉状態の検出結果に基づいて、かごの上昇・下降移動、指定階でのかご停止、及びかご戸・乗場戸の開閉、を適切に制御するものである。
【0004】
具体的には、通常運転においては、例えばかご位置センサからの信号に基づいて、かごが停止階の着床レベルから上下方向に一定の距離範囲以内、いわゆるドアゾーン内にあると判断されている間だけ、かご戸及び乗場戸の開閉装置が作動するように設定されており、それ以外の位置ではかご戸及び乗場戸の開閉装置が作動しないよう制御される。従って、通常の運転制御回路においては、予め定められた運転制御プログラムに従って、このかご位置とかご戸及び乗場戸の開閉状態とに基づいて、乗り降りのためのかご戸及び乗場戸の開閉やかご昇降移動が駆動制御される。
【0005】
また、エレベータには、各種安全装置の設置が義務づけられている。そのうちの一つに、かごの落下事故を防止するために非常停止を行う制動装置がある。この落下防止用の制動装置は、主に、エレベータの昇降速度を監視する調速機(ガバナ)と非常止め装置とで構成され、調速機が、かごの落下に相当する異常速度を検知した際に、非常止め装置を機械的に作動させてかごを非常停止させるものである。
【0006】
調速機は、かごに連結している調速機ロープが巻き掛けられた調速機シーブを昇降路の上方に備え、かごの移動運動がこの調速機ロープを介して伝達されて調速機シーブが回転する。なお、調速機シーブに対向する昇降路下方に設置されたテンションウエイト付きのテンションプーリによって調速機ロープに張力が付与されている。そして、調速機シーブには、調速機シーブの回転による遠心力に応じて変移する駆動機構が備えられており、かごの移動速度が設定された異常速度に達した際の該駆動機構の変移によって非常止め装置が作動される構成となっている。この駆動機構としては、例えば、調速機ロープを調速機シーブに押し付けてロープ移動を停止させるための制御部に連結するラチェットと、前記遠心力によって該ラチェットに係合する爪部とから構成されたものがある。この機構では、前記異常速度による変移で爪部がラチェットに係合すると、調速機シーブの回転力がラチェットを介して制御部に伝達され、調速機ロープを調速機シーブに押し付けて把持する付勢力が発生するものである。
【0007】
非常止め装置は、かごの下部のガイドレール近傍に設置された非常止めブロックと、ガイドレールと非常止めブロックとの間を上下動するくさび状の非常止め制動片とを備えている。この非常止め制動片は、連結されている非常止めリンクが引き上げられることによってガイドレールを非常止めブロックとの間で挟み込むものであり、この両者間の摩擦力によってかごが減速停止される。上記のように調速機側で把持された調速機ロープによって非常止めレバーが引き上げられ、該非常止めレバーを介して非常止めリンクが引き上げられる構成となっている。なお、調速機には、非常止め装置に対する作動機構だけでなく、遠心力で振り角が大きくなった振り子によって駆動される電磁ブレーキを作動させるためのスイッチ機構も備えたものが一般的である。
【0008】
上記の安全装置では、異常速度が調速機によって検知されるが、ロープ式エレベータでは、その他の手段によってもかごの移動速度が常に監視されているのが一般的である。例えば、通常運転における効率的なかご走行のためには、全戸が閉状態にてかごが次の停止階への昇降を開始すると、かごはドアゾーンを超えると比較的早い走行用の速度へ移行する必要があり、また停止階近くになると速度が抑えられる。そこで、速度監視によって、かごの停止階における人の乗降及び荷物の載せ下ろしに伴うかごの上下動、あるいは停止位置付近での動き始めや停止直前での徐行減速という低速と各階間の移動速度とを区別して、効率的な速度制御に反映させるシステムがある。なお、このような速度監視には、多くの場合、モータ回転速度を制御するインバータの速度出力信号が利用されている。
【0009】
なお、別の安全装置として、近年では新設のエレベーターに関して戸開走行保護装置(UCMP:Unintended Car Movement Protection)の設置が義務化されている。この戸開走行保護装置(以降、UCMPとも記す)とは、エレベータの駆動部や制御部の故障によってかご戸及び乗場戸が全て閉じる前にかごが動いてしまうことを回避して事故発生を防止するための安全装置である。その構成は、2つの機械的に独立したブレーキ(二重ブレーキ)と通常運転用とは別の独立した安全制御回路を備え、少なくともいずれかの戸が開いた状態でかごが単なる乗降や荷物の載せ下ろしに伴う上下動ではなく完全に走行状態となってしまった際に、直ちにブレーキを作動させると共に巻上機のモータを制止させる機構である。
【0010】
この機構においては、2つのブレーキの一方のブレーキが何らかの原因で制動力が無くなってしまった場合でも、もう1つのブレーキでかごを保持できると共に、通常の運転制御プログラムが故障してしまった場合でも、UCMP用の制御回路で安全にかごを制止させることができる。即ち、戸開走行保護装置は、ブレーキと制御に対して二重の安全を備えた装置である。ロープ式エレベータでは、常時作動型二重ブレーキとして、ディスク式又はドラム式のダブルブレーキが採用されている。
【0011】
従来の戸開走行保護装置では、安全制御回路において、特定距離感知装置からの検出信号とかご戸又は乗場戸の開状態の検出信号とから、かご戸や乗場戸のいずれかでも開いた状態でかごが乗場位置(床レベル)からドアゾーン外へ一定距離以上移動したことが検知されると、戸開走行の異常判定がなされ、この戸開走行異常判定に基づいて予め定められた処理が実行される(例えば、引用文献1、引用文献2を参照)。
【0012】
特定距離感知装置は、かごがその一定の距離範囲内にあるかどうかを検出するものであり、かごに固定された光検出器と、各階の所定位置に設置された遮蔽部材とで構成される光電式のものが一般的である。このような光電式の特定距離感知装置では、遮蔽部材の上下幅が前記ドアゾーンに相当し、この遮蔽部材に対する光検出器の相対位置関係に応じて信号が出力される。従って、安全制御回路において、特定距離感知装置からの信号が処理され、かごがドアゾーン外へ出たことが検知されると、かごが走行状態であると判断される。通常、特定距離感知装置の遮蔽部材は、各階で二組設置され、一方に障害が生じた場合、その感知信号に基づいて、安全にかごを制止させる処理が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2012-126558号公報
【特許文献2】特許第5741746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、戸開走行保護装置(UCMP)は、国土交通大臣認定の対象であり、大臣認定を取得しなければ実際にエレベータに実装できない。この大臣認定は、UCMPの各構成要素の全てにおいて適正評価を得る必要がある。例えば、ブレーキや特定距離感知装置の各構成部品の仕様はもちろん、制御盤、さらには各検出プログラムについても同様である。一般的に、エレベータの制御回路は、制御ボックス内に制御盤として配置されており、UCMP用の安全制御回路も、通常の運転制御回路と共に同じ制御盤に設けられており、制御盤自体が一体的な製品形態として扱われている。従って、エレベータメーカーがUCMP回路内蔵型制御盤を対象とした大臣認定の取得を行っていることが多い。
【0015】
このため、このような制御盤に設けられているいずれかの部品を変更する場合、それが本体側の性能に影響するものであったり、例えばインバータやPLCの交換など、認定取得時の型番と相違するものである場合には、改めて制御盤単位で大臣認定を再取得する必要があった。これは、非常に手間やコストがかかる面倒な方式であるため、部品のカスタマイズや部分的な改良開発を行うことが困難であった。特に、インバータの速度信号出力を利用している速度監視システムにおいては影響が大きかった。
【0016】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、ロープ式エレベータの制御系における部品の交換やカスタマイズの自由度を高めることに寄与し、国土交通大臣認定の取得及び再取得が従来より容易に行える戸開走行保護装置用の安全制御回路にて、通常の運転制御に影響されずにかごの速度監視が行える速度監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載の発明に係るロープ式エレベータの速度監視システムは、常時作動型の電磁式二重ブレーキを備えた巻上機によるかごの昇降と、かご戸及び各階の乗場戸の開閉とが、予め定められた運転制御プログラムに従って運転制御されるロープ式エレベータの速度監視システムであって、
前記予め定められた運転制御プログラムに従った運転制御を行うための運転制御回路が設置されている制御盤とは別体の独立した1モジュールとして、前記制御盤に対して交換装着可能に一枚の基板上に形成されている安全制御回路と、
前記かごの昇降に機械的に連動する回転体の回転軸に装着され、前記回転体の回転に応じてパルス信号を出力するロータリーエンコーダと、を備え、
前記1モジュールには、
外部からの各種信号入力電線が結線される複数の入力用接続部及び外部への各種信号出力電線が結線される複数の出力用接続部と、
予め定められた複数の動作異常判定論理プログラム及び各動作異常判定論理プログラム用データが格納されている安全制御用記憶部と、
前記動作異常判定論理プログラムに従って、前記入力用接続部からその入力部を介して受信した信号を処理して異常判定を行うと共に、該異常判定に基づいて、前記巻上機のモータへの電力供給回路に接続されたモータ用電磁接触器と前記電磁式二重ブレーキへの電力供給回路に接続されたブレーキ用電磁接触器とに電力供給を遮断させるかご制止指令信号を作成し、該かご制止指令信号をその出力部から出力させる機能を備えた安全制御用演算処理装置と、が含まれ、
前記複数の入力用接続部は、前記かご戸及び各乗場戸の開閉状態を示す信号が入力されるために設定された接続部と、前記かごが停止階の着床レベルから上下方向に予め定められた一定距離以上移動したことを感知する特定距離感知装置からの信号が入力されるために設定された接続部と、前記ロータリーエンコーダからの前記パルス信号が入力されるために設定された接続部と、を有し、
前記複数の出力用接続部は、前記モータ用電磁接触器と前記ブレーキ用電磁接触器とへ前記かご制止指令信号が出力されるためにそれぞれ設定された接続部を有し、
前記安全制御用記憶部に格納されている前記動作異常判定論理プログラム及び前記動作異常判定論理プログラム用データには、前記かご戸及び全乗場戸のうちの少なくとも一つが開状態でありながら前記かごが走行する戸開走行を検知して異常判定を行うための戸開走行判定論理プログラム及び戸開走行判定論理プログラム用データが含まれており、
前記安全制御用記憶部は、前記かごの移動速度を監視するための速度監視プログラム及び速度監視プログラム用データが更に格納されており、
前記安全制御用演算処理装置は、前記速度監視プログラムに従って、前記速度監視プログラム用データに含まれている前記ロータリーエンコーダの一回転当たりのパルス数と前記回転体の一回転当たりの移動距離とに基づいて前記パルス信号を処理して前記かごの移動速度を算出すると共に、算出された前記かごの移動速度が予め定められた速度以上である際に特定速度検知信号を出力する機能を更に備えていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項2に記載の発明に係るロープ式エレベータの速度監視システムは、請求項1に記載のロープ式エレベータの速度監視システムにおいて、前記ロータリーエンコーダが装着される前記回転体は、前記かごの非常止め装置を機械的に作動させる調速機の調速機シーブ、該調速機シーブに対向する下方に位置するテンションプーリ、前記巻上機のシーブ、該巻上機のシーブに直結する回転軸、前記巻上機のシーブに連動する方向転換プーリ、のうちのいずれかであることを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の発明に係るロープ式エレベータの速度監視システムは、請求項1又は2に記載のロープ式エレベータの速度監視システムにおいて、前記速度監視プログラム用データは、前記ロータリーエンコーダの一回転当たりのパルス数と、予め定められた異なる複数種類の前記回転体のそれぞれに対応する各属性データとして、前記回転体の各直径及び各直径に対応する前記回転体の一回転当たりの移動距離と、を有し、
前記入力用接続部は、前記ロータリーエンコーダが装着されている前記回転体の種類毎に異なる識別信号を選択切換可能に発信する信号切換手段を備えており、
前記速度監視プログラムは、前記回転体の異なる種類毎に、前記属性データに基づいて前記かごの移動速度を求める複数種の速度算出モードを備え、前記信号切換手段からの前記識別信号に基づいて対応する前記速度算出モードが選択され実行されるものであることを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の発明に係るロープ式エレベータの速度監視システムは、請求項3に記載のロープ式エレベータの速度監視システムにおいて、前記信号切換手段は、二つ以上のスライドスイッチを有するディップ型スイッチを備え、前記ディップ型スイッチは、前記識別信号のそれぞれに各スライドスイッチのオン・オフの異なる組合せが割り当てられて設定されたものであることを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の発明に係るロープ式エレベータの速度監視システムは、請求項1に記載のロープ式エレベータの速度監視システムにおいて、前記戸開走行判定論理プログラムは、前記安全制御用演算処理装置に対して、前記かご戸及び全乗場戸の開閉状態を示す信号と前記特定距離感知装置からの信号とを処理して戸開走行の異常判定を行わせる第1の戸開走行判定モードと、前記かご戸及び全乗場戸の開閉状態を示す信号と前記特定速度検知信号とを処理して戸開走行の異常判定を行わせる第2の戸開走行判定モードとを、互いに独立して且つ並行実行可能に備えたものであり、
前記第1の戸開走行判定モードは、前記かご戸及び全乗場戸のうちの少なくとも一つが開状態であることが検知されている間に前記かごの一定距離以上の走行が検知された際に、戸開走行異常判定が成されるものであり、
前記第2の戸開走行判定モードは、前記かご戸及び全乗場戸のうちの少なくとも一つが開状態であることが検知されている間に、前記特定速度検知信号が出力された際に、戸開走行異常判定が成されるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明による速度監視システムにおいては、通常の運転制御回路が設置されている制御盤とは別体の独立した1モジュールとして、該制御盤に対して交換装着可能に一枚の基板上に形成されて各種動作異常判定を行う安全制御回路によって、かごの昇降に機械的に連動する回転体の回転軸に装着されたロータリーエンコーダからのパルス信号に基づいて速度監視を行うものであるため、インバータを含む運転制御回路側からの影響がなく且つ運転制御回路へ影響することもなく、速度監視が実施できるという効果がある。また、本発明の速度監視システムにおいては、その速度監視結果に基づいて当該速度監視システムを構成する安全制御回路による戸開走行異常判定を行うことも可能である。さらに本発明における安全制御回路は、その基板単位で一製品としての形態をとることができ、流通及び交換、また部品の変更やカスタマイズ、さらには大臣認定及び部品変更等に伴う大臣認定の再取得も、運転制御回路に対して互いに独立して容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施例による速度監視システムをエレベータシステムに組み込まれた形で示す概略回路図である。
図2図1の速度監視システムを構成するロータリーエンコーダを調速機に装着された状態で示す構成図であり、(a)は調速機とかごの非常止め装置とからなる安全装置の全体模式図であり、(b)は調速機部分を示す斜視図である。
図3図1のエレベーターシステムにおけるかご戸スイッチと乗場戸スイッチのスイッチ回路図であり、(a)は各かご戸スイッチ・乗場戸スイッチが強制開離構造である場合、(b)は各かご戸スイッチ・乗場戸スイッチが強制開離構造でない場合を各々示す。
図4図1の特定距離感知装置を用いた第1の戸開走行判定モードの動作処理過程を示すフローチャート図である。
図5図1の速度監視システムを用いた第2の戸開走行判定モードの動作処理過程を示すフローチャート図である。
図6図1の安全制御回路における異常判定の種類と異常出力信号の対応を例示する相対表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、常時作動型の電磁式二重ブレーキを備えた巻上機によるかごの昇降と、かご戸及び各階の乗場戸の開閉とが、予め定められた運転制御プログラムに従って運転制御されるロープ式エレベータの速度監視システムであって、前記予め定められた運転制御プログラムに従った運転制御を行うための運転制御回路が設置されている制御盤とは別体の独立した1モジュールとして、前記制御盤に対して交換装着可能に一枚の基板上に形成されている安全制御回路と、前記かごの昇降に機械的に連動する回転体の回転軸に装着され、前記回転体の回転に応じてパルス信号を出力するロータリーエンコーダと、を備えたロープ式エレベータの速度監視システムであって、前記1モジュールには、外部からの各種信号入力電線が結線される複数の入力用接続部及び外部への各種信号出力電線が結線される複数の出力用接続部と、予め定められた複数の動作異常判定論理プログラム及び各動作異常判定論理プログラム用データが格納されている安全制御用記憶部と、前記動作異常判定論理プログラムに従って、前記入力用接続部からその入力部を介して受信した信号を処理して異常判定を行うと共に、該異常判定に基づいて、前記巻上機のモータへの電力供給回路に接続されたモータ用電磁接触器と前記電磁式二重ブレーキへの電力供給回路に接続されたブレーキ用電磁接触器とに電力供給を遮断させるかご制止指令信号を作成し、該かご制止指令信号をその出力部から出力させる機能を備えた安全制御用演算処理装置と、が含まれたものである。そして、前記複数の入力用接続部は、前記かご戸及び各乗場戸の開閉状態を示す信号が入力されるために設定された接続部と、前記かごが停止階の着床レベルから上下方向に予め定められた一定距離以上移動したことを感知する特定距離感知装置からの信号が入力されるために設定された接続部と、前記ロータリーエンコーダからの前記パルス信号が入力されるために設定された接続部と、を有し、前記複数の出力用接続部は、前記モータ用電磁接触器と前記ブレーキ用電磁接触器とへ前記かご制止指令信号が出力されるためにそれぞれ設定された接続部を有している。また、前記安全制御用記憶部に格納されている前記動作異常判定論理プログラム及び前記動作異常判定論理プログラム用データには、前記かご戸及び全乗場戸のうちの少なくとも一つが開状態でありながら前記かごが走行する戸開走行を検知して異常判定を行うための戸開走行判定論理プログラム及び戸開走行判定論理プログラム用データが含まれており、前記安全制御用記憶部は、前記かごの移動速度を監視するための速度監視プログラム及び速度監視プログラム用データが更に格納されており、前記安全制御用演算処理装置は、前記速度監視プログラムに従って、前記速度監視プログラム用データに含まれている前記ロータリーエンコーダの一回転当たりのパルス数と前記回転体の一回転当たりの移動距離とに基づいて前記パルス信号を処理して前記かごの移動速度を算出すると共に、算出された前記かごの移動速度が予め定められた速度以上である際に特定速度検知信号を出力する機能を更に備えているものである。
【0025】
以上の構成によって、本発明においては、各種異常判定を行う安全制御回路は、その基板単位で交換可能な一製品形態をとることができ、かごの速度監視と上記異常判定とが、通常の運転制御プログラムに影響されることなく行われる。
【0026】
即ち、本発明における一枚の基板上に形成された安全制御回路は、当該基板を通常運転制御に必要な他の回路等を備えた制御盤に装着するだけで、エレベータの安全制御システムが容易に構築できるものである。したがって、この一枚の基板が、通常運転用の運転制御回路が形成されている制御盤に対して独立した個別の製品形態として取り扱うことが可能となり、実質的に基板単位で一製品形態として流通や交換等が行える。しかも、戸開走行保護装置用の異常判定を含む安全制御に関わる領域について、国土交通大臣認定を通常運転制御回路とは別に独自に取得することになる。このため、制御盤側の運転制御回路におけるの部品交換やカスタマイズによる変更等に影響されることがないため、大臣認定の再取得も独自ですみ、従来より容易となる。例えば、通常の運転制御回路側のインバータを別の型式のものに交換する場合、本発明の戸開走行保護装置用の安全制御回路には何ら影響はなく、大臣認定の再取得の対象とならずに済む。これは、装着対象の制御盤側から見ても同様である。よって本発明の戸開走行保護装置用の安全制御回路が形成された基板が装着される制御盤側の設計に高い自由度が与えられることにもなる。
【0027】
特に、かごの速度監視も、上記のように運転制御回路とは独立して形成された安全制御回路によって、運転制御回路側のインバータの速度出力信号を利用することなく、かごの昇降に機械的に連動する回転体に装着されたロータリーエンコーダからのパルス信号に基づいて行われるものであるため、上記安全制御回路を含む本発明の速度監視システムは、設計上も制御においても通常の運転制御回路及び運転制御プログラムに何ら影響を受けることなく成り立つものである。従って、本発明の速度監視システムにおいては、運転制御回路のインバータに制限されることなく、同時に運転制御回路のインバータを制限することもない。
【0028】
なお、本発明における速度検出のためにロータリーエンコーダが装着される回転体としては、かごの昇降に機械的に連動して回転するものであれば、様々なものが広く採用可能である。例えば、通常ロープ式エレベータに設けられている非常止め装置と安全装置を構成する調速機の調速機シーブ、あるいはこの調速機シーブに対向する下方位置で調速機ロープに張力を付与するテンションプーリが挙げられる。この調速機は、かごに連結されている調速機ロープが巻き掛けられた調速機シーブにその調速機ロープを介してかごの移動運動が伝達されて回転されるものであり、かごの予め定められた以上速度を検知して非常止め装置を機械的に作動させるものである。またその他に、巻上機のシーブ又は該シーブに直結する回転軸、巻上機のシーブに連動する方向転換プーリ(そらせ車)など、巻上機に関連する回転体にロータリーエンコーダを直結させることも可能である。
【0029】
一方、回転軸に装着されたロータリーエンコーダは、その回転体と一体に回転し、一回転毎に特定数のパルス信号を発するため、パルス信号に基づいて単位時間当たりの回転数が計測されれば、回転体の直径によって決定する一回転当たりの移動距離を定数として、前記単位時間当たりの回転数に対する移動距離、即ちかごの速度が算出される。従って、速度監視プログラム用データとして、安全制御用記憶部には、本発明の速度監視ステム実際に組み込まれるエレベータシステムにて、ロータリーエンコーダが装着される対象の回転体の直径に対応する一回転当たりの移動距離としての定数と、当該ロータリーエンコーダの製品型よって設定されている一回転当たりのパルス発信数、または上記定数とパルス発信数に基づいて距離を求める算出式を格納しておけばよい。
【0030】
ただし、回転体によってその直径が異なれば上記定数も異なるため、算出式も異なる。そこで、上記定数や算出式を予め簡単に準備して設定できる回転体にロータリーエンコーダを装着する構成が好ましい。例えば、ロープ式エレベータに通常設置されている調速機の調速機シーブをロータリーエンコーダの装着対象とする場合、一般的に調速機はある数種類の規格が固定された製品として供給されているため、その規格毎に決められた調速機シーブの直径に応じて複数種の上記定数と各定数を用いた計算式は予め用意できる。よってこれらを属性データとして用いるロータリーエンコーダの一回転当たりのパルス数と共に安全制御用記憶部に格納しておけば済む。また、調速機シーブ以外の回転体を対象とする場合も、予め対象の直径は分かるため、その直径に応じた定数と計算式を属性データとして備えることができる。
【0031】
この場合、同時に、速度監視プログラムは、各種直径の調速機シーブ、あるいは他の回転体に対応する定数と計算式を用いた複数の速度算出モードを選択可能に備え、速度監視システムのエレベータシステムへの組込の際に、対象の調速機シーブに対応する速度算出モードが選択され切り換えられるように設定することも可能である。例えば、安全制御回路の入力用接続部に、各速度算出モードに相当する識別信号を選択的に出力できる信号切換手段を設ける構成が簡便である。速度監視プログラムは、信号切換手段からの対象の調速機シーブ用の識別信号に対応する各速度算出モードを選択して実行する設定とする。
【0032】
尚、このような信号切換手段としては、基板に簡単に実装できる小型・薄型のスイッチング素子が望ましい。そこで、この条件に最も適したスイッチング素子として、二つ以上のスライドスイッチを有するディップ(DIP:Dual Inline Package)型スイッチ(以降、ディップスライドスイッチとも記す)が挙げられる。ディップスライドスイッチは、各種設定条件を各スライドスイッチのオン・オフの信号で出力するものであり、各スライドスイッチのオン・オフの組合せを割り当てることで複数の設定モードを互いに変更することが可能である。
【0033】
ここで用いるディップスライドスイッチに二つのスイッチがあれば、それらのオン・オフの組合せで四種の異なるモードが設定できる。そこで、例えばロータリーエンコーダが調速機シーブに装着される場合、調速機としては、調速機シーブの直径が180mm,200mm,240mm,305mmの四種が代表的な製品規格としてあるため、スライドスイッチが少なくとも二つあるディップスライドスイッチを用いれば、これら四種の調速機シーブ直径に応じた四種の設定モードを切換可能に割り当てることができる。また、三つ以上のスイッチを有するディップスライドスイッチを用いることももちろん可能である。
【0034】
多数のスイッチを有するものである場合、以上のような各速度算出モードに割り当てるためのもの以外のスイッチは、そのオン・オフを他の設定モードの切換に使用することができる。例えば、一つのスイッチにオン時にエレベータシステムが手動モードであることを示す設定モードを割り当てたり、またエレベータのかごには、引き戸型や上下戸のようなかごに戸があるタイプだけでなく、自動車専用エレベータのように、かごに戸がないタイプもあるため、他の一つのスイッチにオン時にエレベータがかご戸がないタイプであることを示す設定モードを割り当てることもできる。かご戸がない場合は、安全制御回路では、かご戸の開閉状態を検知する必要がなくなるため、当該スイッチがかご戸なしの設定モードを示すオン状態にされた場合は実行される動作異常判定プログラムも対応したものが適宜選択されるように設定しておけば良い。このようなディップスライドスイッチのオン・オフによる各種設定モードの変更、切換は、操作が簡単で短時間で済むと共に現状設定の確認が目視で容易にできることから好適である。
【0035】
また、本発明による速度監視システムにおいては、かごが予め定められた速度以上であることを検知した際に特定速度検知信号が出力されるものである。この予め定められた速度としては、かごの移動速度が、人の乗降や荷物の載せ下ろしによる上下動や各階停止前後の徐行ではなくほぼ完全に各階間移動のための通常走行状態に達したことを示す基準値とすることによって、その基準速度以上で特定速度検知信号が出力されている間はかごが走行状態であることを示すことになる。この特定速度検知信号は、かごが走行状態にあることを視認するための表示に利用できる。即ち、特定速度検知信号の出力時にLED表示ランプが点灯される構成とすれば、このLED表示ランプの点灯を目視することで、かごが走行状態であるかそれ以下の低速~停止状態であるかが容易に確認できる。
【0036】
さらにまた、この特定速度検知信号に基づいて、戸開走行の異常判定を行うことが可能となる。即ち、かごが走行状態にあることを示す信号としての特定速度検知信号と、かご戸と全乗場戸のうちの何れか一つでも開いた状態であることを示す検知信号とが共に出力された場合には、かごが戸開走行状態であるとの異常判定を行うことができる。
【0037】
従って、この場合、戸開走行判定論理プログラムは、安全制御用演算処理装置に対して、かご戸及び全乗場戸の開閉状態を示す信号と特定距離感知装置からの信号とを処理して戸開走行の異常判定を行わせる従来と同様の第1の戸開走行判定モードと、かご戸及び全乗場戸の開閉状態を示す信号と速度監視システムによる特定速度検知信号とを処理して戸開走行の異常判定を行わせる第2の戸開走行判定モードとを、互いに独立して且つ並行実行可能に備えられる。即ち、第1の戸開走行判定モードは、かご戸及び全乗場戸のうちの少なくとも一つが開状態であることが検知されている間に前記かごの一定距離以上の走行が検知された際に、戸開走行異常判定が成されるものであり、第2の戸開走行判定モードは、かご戸及び全乗場戸のうちの少なくとも一つが開状態であることが検知されている間に、特定速度検知信号が出力された際に、戸開走行異常判定が成されるものである。
【0038】
第1の戸開走行判定モードと第2の戸開走行判定モードとを備えた構成においては、これら2系統の戸開走行判定モードの並行処理によって、戸開走行の二重監視が実現する。なお、第1の戸開走行判定モードと第2の戸開走行判定モードとは、互いに独立しており、一方が他方に影響されることなく実行されるものである。このため、どちらか一方の戸開走行判定モードのみでの戸開走行異常判定も可能である。例えば、戸開走行異常判定のための入力用接続部において速度監視装置からの信号入力がなければ、特定距離感知装置からの信号に基づく第1の戸開走行判定モードのみのが実行され、従来と同様の1系統での戸開走行異常判定が行われる。また、逆に第2の戸開走行判定モードのみの実行も可能である。
【0039】
また、速度監視装置としてのロータリーエンコーダが故障した場合に速度監視装置の異常を判定するための速度監視装置異常判定プログラムを動作異常判定プログラムの一つとしてさらに備えておき、安全制御回路にて、ロータリーエンコーダ自体の監視を行う構成とすることが望ましい。この場合、速度監視装置の異常判定が成されると、戸開走行異常判定時と同様の処理、即ち電磁ブレーキの作動とモータの停止、が実施されるものとすることで、より高い安全性が担保できる。
【実施例0040】
本発明の一実施例としての速度監視システムを、エレベータシステムに組み込まれた形の概略回路図で図1に示す。図中、破線で囲まれた領域100は、本実施例の安全制御回路10による制御が及ぶ関連部分を示すものである。なお、通常の運転制御に関連する部分についての詳細な図示は省いている。また、本実施例は、かご戸及び乗場戸が引き戸式である場合を例示している。
【0041】
本実施例による安全制御回路10が組み込まれたエレベータシステムは、かご1と釣合錘3とがメインロープ2によって連結され、該メインロープ2が、かごの昇降駆動装置としての巻上機7のシーブ8と方向転換プーリ4に巻き掛けられて、昇降路内でかご1と釣合錘3とがつるべ状に吊持されている。巻上機7のシーブ8がモータ25によって回転駆動されることによって、かご1と釣合錘3とが昇降路内で互いに上下逆向きの走行を行う。モータ25は、電源21に接続されたインバータ20を介して通常運転制御用の運転制御回路201によって駆動制御される。
【0042】
運転制御回路201では、通常運転制御用の演算処理装置(CPU)210によって予め定められた運転制御プログラムに従って各種入力信号が処理され、出力された制御信号によって各駆動部の通常運転に関わる制御が実行される。従って、運転制御回路201から出力される制御信号に応じて、インバータ20が、モータ25の起動、回転速度、停止を制御する。
【0043】
また、巻上機7には、モータ25の回転軸と同軸上に、制動装置としての常時作動型二重ブレーキを構成する第1のブレーキ9Aと第2のブレーキ9Bとが互いに機械的に独立して配置されている。これら第1と第2のブレーキ(9A,9B)は、それぞれ電源22に整流器(23A,23B)を介して接続されている。
【0044】
なお、本実施例においては、第1と第2のブレーキ(9A,9B)が、無励磁作動型の電磁式ディスクブレーキである場合を示す。電磁式ディスクブレーキは、モータ回転軸の同軸上に固定された円盤状のブレーキディスクの両面に対してブレーキパッドあるいはライニング等の摩擦材で挟み込んで押圧する制動動作を行うものである。その制動動作及び解除動作は、ばねの付勢力とこれに抗する電磁駆動部の吸引力とを利用して行うものであり、無励磁作動型は、無励磁状態におけるばねの付勢力で制動状態を得るものである。なお、本発明においては、このデイスクブレークに代えてドラム式ブレーキとされる場合もある。このドラム式ブレーキは、モータ回転軸と共に回転するブレーキドラムの側面に一対のブレーキアームを介してブレーキパッド等の摩擦材を押し付けて制動動作を行うものである。
【0045】
そして、第1のブレーキ9Aと電源22との間の電力供給回路及び第2のブレーキ9Bと電源22との間の電力供給回路のそれぞれに、ブレーキ釈放用コンタクタ(BR1,BR2)が配置されており、運転制御回路201による通常運転の間は、各ブレーキ釈放用コンタクタ(BR1,BR2)は通電励磁によりコイル接点は閉じて各ブレーキ(9A,9B)に対して電力が供給された状態、即ちブレーキ釈放状態が維持される。一方、これらブレーキ釈放用コンタクタ(BR1,BR2)への通電が停止されて無励磁にされると、各コイル接点が開かれ、第1と第2のブレーキ(9A,9B)への電力供給が遮断され、第1と第2のブレーキ(9A,9B)は、それぞれ無励磁状態となって制動動作を行う。そしてこの2つのブレーキ釈放用コンタクタ(BR1,BR2)を直列につないだ信号がRUN信号として安全制御回路10へ入力される。
【0046】
また、各階乗場の操作ボタンからの呼び信号及びかご1内の操作ボタンからの呼び信号、乗場戸スイッチHDSからの信号及びかご戸スイッチCDSからの信号、更にかご1の位置センサからの信号等の各種信号が運転制御回路201において、入力側インターフェース回路202を介して通常運転制御用の演算処理装置210へ入力される。この演算処理装置(CPU)210は、運転制御プログラムに従って、各種入力信号を処理し、かご戸5及び乗場戸6の開閉状態と共に、かご1がどの階の乗場に停止しているかしていないを判断しながらモータ駆動制御信号を作成し、出力側インターフェース回路203を介してインバータ20へ出力される。インバータ20は、これらモータ駆動制御信号に応じて、モータ駆動を制御することによって、各呼び信号が指示する階へのかご1の昇降移動と停止が制御され、かご停止状態においてかご戸5及び乗場戸6の開閉が制御される。以上の通常運転制御を行うための運転制御回路201は、制御盤200内に設置されている。
【0047】
一方、本実施例による安全制御回路10は、制御盤200とは別体の独立した1モジュールとして一枚の基板上に形成されたものであり、制御盤200に交換可能に装着されてエレベータシステムに組み込まれ、戸開走行異常判定を始め、各種動作異常判定を行う安全制御回路として機能する。即ち、安全制御回路10には、少なくともかご戸5又は乗場戸6のいずれかでも開いたままかご1が走行する戸開走行が発生した際はもちろん、各種動作異常が発生した際に、それぞれ異常判定を行ってかご1の走行を制止させる信号を出力するのに必要な機構が、運転制御回路201とは独立して搭載されている。
【0048】
即ち、本実施例の安全制御回路10では、各種の動作異常判定論理プログラム及び動作異常判定論理プログラム用データが格納された安全制御用記憶部(ROM)14と、各動作異常判定論理プログラムに従って各信号を処理して各種異常判定を行う安全制御用演算処理装置(CPU)11及び作業用メインメモリとしての安全制御用記憶部(RAM)15が同一基板上に搭載されている。また、基板の上側(図1の安全制御回路10では紙面に向かって左側に相当する)に各種入力信号を受信するために設定された入力用接続部を、基板の下側(図1の安全制御回路10では紙面に向かって右側に相当する)に、安全制御用演算処理装置(CPU)11からの信号を外部へ出力するために設定された出力用接続部がそれぞれ複数設けられている。各接続部に対する各種入力用電線及び出力用電線の結線は、棒端子を用いて各接続部としての基板用スクリューレス端子台にそれぞれワンタッチ式で行う構成とすることで、基板形態での本安全制御回路10のエレベータシステムへの組込が簡便に済む。
【0049】
なお、本実施例の安全制御回路10は、基板の10年での取替えを念頭とし、その起動から10年後の点検・交換の時期を判定するための10年点検用プログラムが安全制御用記憶部(ROM)14に格納されている。そして10年経過を示すための点灯を行う表示ランプ17を備えるものとした。本実施例では、表示ランプ17をLED7セグメント表示器で構成した。従って、安全制御用演算処理装置11は、当該プログラムに従って安全制御回路10の起動時から経過年数を加算計測し、8年経過時点から、9年、10年経過時点で、その年数を点灯表示させる指令信号を出力するものとした。
【0050】
また、本実施例による安全制御回路10において、基板の入力用接続部の一部の接続部にて、各階の2つの第1と第2特定距離感知装置(DZ1,DZ2)からの電線が結線され、第1と第2の特定距離感知装置(DZ1,DZ2)からの信号(DZ1-1,DZ1-2,DZ2-1,DZ2-2)は、基板上の入力側インターフェース回路12を介して、安全制御用演算処理装置(CPU)11へ通常の運転制御回路201とは別に入力される。本実施例では、第1と第2のブレーキ(9A,9B)の各ブレーキ動作感知装置からの信号(BKS1,BKS2)も通常の運転制御回路201の入力部とは別に、専用の入力用接続部から入力側インターフェース回路12を介して安全制御用演算処理装置(CPU)11へ入力される。
【0051】
さらに、本エレベータシステムにおいては、モータ25を駆動制御するインバータ20への電力供給回路に接続されたインバータ電源遮断用コンタクタS1と、インバータ20とモータ25との間の電力供給開路に接続されたモータ電源遮断用コンタクタS2とが備えられ、第1と第2のブレーキ(9A,9B)への電力供給回路の整流器より上流側に接続された第1のブレーキ電源遮断用コンタクタBD1及び第2のブレーキ電源遮断用コンタクタBD2とが直列に設けられている。本実施例では、インバータ電源遮断用コンタクタS1とモータ電源遮断用コンタクタS2及びブレーキ電源遮断用コンタクタ(BD1,BD2)とに対する通電のオン・オフを、それぞれ基板の出力用接続部に設けられたリレー(S1y,S2y,S3y)を介して直接制御する構成とした。
【0052】
そして、安全制御回路10の安全制御用演算処理装置(CPU)11から出力側インターフェース回路13を介して出力されたかご制止指令信号に基づいて、インバータ電源遮断コンタクタS1用リレーS1yと、モータ電源遮断コンタクタS2用リレーS2yと、ブレーキ電源遮断コンタクタ(BD1,BD2)用リレーS3yとがオフにされ、各コンタクタ(S1,S2,BD1,BD2)への通電が停止して消磁されることによって、各コンタクタのコイル接点が開いてインバータ20及びモータ25への電力供給が遮断されてモータ25は動力を無くす。同時に、第1と第2のブレーキ(9A,9B)への電力供給も遮断されて、それぞれ無励磁状態となって制動動作状態となり、モータ25の回転軸の回転を止める。結果として、モータ25駆動の停止と第1と第2のブレーキ(9A,9B)の作動との作用によって、かご1の走行は制止される。
【0053】
また、本実施例においては、各コンタクタ(S1,S2,BD1,BD2)は、主接点がオン状態である場合に補助接点がオフしていることが保証されているミラーコンタクト機能を備え、各コンタクタ(S1,S2,BD1,BD2)からのミラーコンタクト常閉接点信号が出力されるものとした。即ち、コンタクタS1用ミラーコンタクト常閉接点信号S1BとコンタクタS2用ミラーコンタクト常閉接点信号S2B、及びコンタクタBD1用ミラーコンタクト常閉接点信号BD1BとコンタクタBD2用ミラーコンタクト常閉接点信号BD2Bとが、それぞれ安全制御回路10の安全制御用演算処理装置(CPU)11へ入力されるものである。従って、通常運転の間は、これらコンタクタ(S1,S2,BD1,BD2)からのミラーコンタクト常閉接点信号(S1B,S2B,BD1B,BD2B)は、各コンタクタの通電励磁による主(コイル)接点のオン状態でオフ信号として入力されるが、各コンタクタの消磁による主(コイル)接点のオフ状態でオン信号として入力される。
【0054】
更に、通常の運転制御回路201によって開閉制御される第1と第2のブレーキ(9A,9B)各々に対するブレーキ釈放用コンタクタ(BR1,BR2)からの直列接続した常開接点信号RUNが別途、安全制御回路10へ入力される構成としたが、この信号RUNのオン信号入力中は、通常の運転制御プログラムに従った運転中であることが示される。また、手動作業中であることを示す手動信号INS及びテスト中であることを示すテスト信号TESTもそれぞれ安全制御回路10へ入力される構成とした。これら手動運転信号INS,テスト信号TESTの入力中は、戸開走行判定動作を行わない設定とする。
【0055】
また本実施例の安全制御回路10には、少なくとも戸開走行判定論理プログラムによる戸開走行判定の論理処理動作が正常に行われているかどうかを監視する監視手段として、WDT(ウォッチドッグタイマー)16を備えられている。これは、予め定められたサイクルタイムで戸開走行判定の論理処理動作が終了した時点毎に出力される終了信号を検知し、一定の時間を経過しても終了信号が検知されない場合に、処理動作異常としてかご制止指令信号に相当するエラー信号を出力する。これにより、安全制御回路10は、戸開走行異常判定時と同じ動作状態となり、電源遮断指令が出力され、インバータ20、モータ25及び第1と第2のブレーキ(9A,9B)への電力供給が遮断され、かご1は制止される。本実施例の安全制御回路10では、WDT16からのエラー信号によって点灯するエラー表示ランプ18を備えている。
【0056】
本実施例におけるエレベータシステムでは、ラチェット式の調速機40と非常止め装置とから成る安全装置が設けられており、調速機40にて落下に相当する異常速度が検知された際に、非常止め装置が機械的に作動され、かご1が非常停止される構成とされている。具体的には、調速機40は、かご1に連結された調速機ロープ52が巻き掛けられてかご1の移動速度が伝達される調速機シーブ41を回転主軸によって回転自在に備えており、この調速機シーブ41に対向する下方位置で回転自在に配置されたテンションプーリ53によって調速機ロープ52に張力が付与されている。調速機シーブ41には、中心軸周りに一対のフライウエイト42が回動自在に設けられており、フライウエイト42は、かご1と共に移動する調速機ロープ52を介して回転される調速機シーブ41の回転速度に応じた遠心力によって回動するものであり、特定の速度に相当する回動角度で所定位置へ達する爪部43を備えている。
【0057】
回転主軸には、ラチェット44が回転自在に取り付けられており、かご1が所定の異常速度、たとえば定格速度の1.4倍近くに達した際に調速機シーブ41に生じる遠心力に応じたフライウエイト42の回動角度で爪部43がラチェット44の歯に係合する設定とされている。さらに、ラチェット44には、制御棒45が連結されており、その制御部45の先端領域はバネ受け部46となっており、その周りにロープ押圧バネ47を備えている。制御棒45には、アーム部48が直交して連結されており、そのアーム部48の先端部が調速機シーブ41の外側で回動自在に調速機フレームに軸支されている。さらにアーム部48には、調速機シーブ41に対して調速機ロープ52を押圧する押圧シュー49が回動自在に設けられている。
【0058】
一方、非常止め装置は、かご1の下部のガイドレール60の近傍に設置された非常止めブロック(不図示)と、ガイドレール60と非常止めブロックとの間を上下動するくさび状の非常止め制動片63とで構成されている。この非常止め制動片63は、連結されている非常止めリンク62が引き上げられることによってガイドレール60を非常止めブロックとの間で挟み込み、両者間の摩擦力によってかご1を減速停止させるものである。非常止めリンク62は、非常止め作動レバー61が調速機ロープ52によって引き上げられることによって連動して引き上げられる構成となっている。
【0059】
従って、かご1が所定の異常速度を超えて爪部43がラチェット44の歯に係合すると、ラチェット44は、フライウエイト42を介して調速機シーブ41と係合状態となり、調速機シーブ41と一体的に回動する。これによってラチェット44の回動方向に制御棒45がバネ受け部46と共に引っ張られ、ロープ押圧バネ47が圧縮し、アーム部48を調速機シーブ41に向けて回動させ、押圧シュー49を調速機シーブ41に押し付けるように付勢する。これにより、押圧シュー49は調速機ロープ52を調速機シーブ41に対して挟み込んで把持し、調速機ロープ52の動きを停止する。この停止した調速機ロープ52は、下降しているかご1に対して相対的に上方へ非常止めレバー61を引き上げるため、非常止め作動リンク62を介して非常止め制動片63がガイドレール60に対してくさび作用を発揮する位置へ引き上げられ、かご1は停止される。
【0060】
なお、本実施例における調速機40は、上記非常止め装置を作動させる異常速度の検知の前段階として、所定速度の検知により第1と第2のブレーキ(9A,9B)を作動させる機構をさらに備えたものである。即ち、調速機シーブ41が所定の回転数に達した際に、その遠心力で外周方向へ開くスイッチカム51をさらにフライトウエイト42に回動自在に設けており、スイッチカム51が所定の開き位置で当接するスイッチを介してブレーキ作動機構50が作動され、インバータ非常停止電源遮断用コンタクタS1R、モータ非常停止電源遮断用コンタクタS2R、及びブレーキ非常停止電源遮断用コンタクタBDRに消磁指令信号を出力するものである。これによって、落下速度には至らないまでも異常に早い速度でかご1が走行した場合に、インバータ20とモータ25及びブレーキ(9A,9B)への電源を遮断してモータ25を停止させると共に無励磁作動式の第1と第2のブレーキ(9A,9B)を作動させてかご1を制止させるものである。
【0061】
本実施例においては、速度監視装置としてのロータリーエンコーダ19が調速機40の回転主軸に装着されており、ロータリーエンコーダ19から出力されるパルス信号に基づいてかご1の移動速度を監視するものである。従って、基板の入力側接続部の一部がロータリーエンコーダ19からの配線の結線用に設定され、パルス信号PA/PBが安全制御回路10へ入力される。なお、ロータリーエンコーダ19は安全制御回路10用とは別の電源に接続されている。
【0062】
本実施例におけるロータリーエンコーダ19は、1回転当たり600パルスを発生するインクリメンタル形のものとした。即ち、放射方向に等角度間隔で所定数のスリットが形成された円盤を発光素子と受光素子のとの間で回転させることによって受光素子で矩形波が形成されてパルス信号として出力されるものである。さらに、透過光に対して更に二つのスリットを介在させることで4分の1周期だけ位相がずれた二つのパルス(A相,B相)を発生させる方式のものとし、正逆の回転方向によって先に立ち上がるパルスが異なることから、これら二つのパルス信号(PA,PB)に基づいて、ロータリーエンコーダ19の回転方向、即ち、調速機シーブ41の回転方向が判定でき、結果としてかご1の上昇または下降の移動方向が判断できるものである。
【0063】
また、本実施例では、安全制御用記憶部(ROM)14に、速度監視プログラム及び速度監視プログラム用データが格納されており、安全制御用演算処理装置11は、速度監視プログラムに従って、ロータリーエンコーダ19からのパルス信号(PA/PB)を処理して、ロータリーエンコーダ19の一回転当たりのパルス数と回転体としての調速機シーブ41の一回転当たりの移動距離とに基づいてかご1の移動速度を算出する。
【0064】
従って、速度監視プログラム用データは、予め、調速機シーブ41の直径の規格毎の定数および該定数を用いた速度計算式を選択可能に備えるものとした。ここで、規格の調速機シーブ41の直径としては、180mm,200mm,240mm,305mmの四種を設定した。そして速度監視プログラムは、各直径における定数と計算式を用いてそれぞれかごの移動速度を算出する第1~第4の速度算出モードを選択可能に備えている。以下の表1に、調速機シーブ41の各規格毎の直径に対応する定数を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
従って、かご1の速度監視においては、安全制御用演算装置11は速度監視プログラムに従って、表1の定数に基づいて、ロータリーエンコーダ19から入力されたパルス信号(PA/PB)を処理して単位時間当たりのパルス数から、単位時間当たりの移動距離、即ち速度を算出することができる。
【0067】
さらに、本実施例では、かご1の移動速度を適宜算出しながら、その速度が乗降や荷物の載せ下ろしによる上下動や各階停止前後の徐行ではなくほぼ完全に各階間移動のための通常走行状態に達したことを示す基準の速度として10m/分を設定し、速度監視プログラムは、この基準速度以上が検知されると特定速度検知信号10Mを出力するものとした。したがって、特定速度検知信号10Mが出力されている際には、かご1が10m/分以上の走行状態であることを示すことになる。本実施例では、特定速度検知信号10Mの出力によって点灯されるLED表示ランプ(不図示)を別個設け、このLED表示ランプによってかご1が走行状態にあるかどうかを容易に目視できるものとした。
【0068】
そして、本実施例においては、上記のように適宜かご1の移動速度を算出する際に、ロータリーエンコーダ19が装着されている調速機シーブ41の規格直径から予め用いる速度算出モードが選択され実行されるように設定されるものである。具体的には、設定モードを適宜選択するために、各速度算出モードを示す識別信号を受けて、安全制御用演算装置11が速度度監視プログラムの各速度算出モードから識別信号に対応するモードを特定してこれを実行する構成とした。
【0069】
本実施例では、この識別信号を選択的に切換可能に発信する信号切換手段として、5つのスライドスイッチ(DP1,DP2,DP3,DP4,DP5)を有するディプスライドスイッチDPSを基板に実装している。これら5つのスイッチのうち、第2のスライドスイッチDP2と第3のスライドスイッチDP3のオン・オフの各種組合せを、以下の表2に示すように第1~第4の速度算出モードの各識別信号として割り当てた。
【0070】
【表2】
【0071】
従って、実際にエレベータシステムを構築する際に、安全制御回路10の基板を制御盤に実装する時点で、表2に従って、ロータリーエンコーダ19が回転主軸に装着された調速機シーブ41の直径規格に応じてディプスライドスイッチDPSの第2のスライドスイッチDP2と第3のスライドスイッチDP3のオン・オフの切換操作を行えば設定は済む。
【0072】
以上のように、本実施例においては、調速機シーブ41に装着されたロータリーエンコーダ19からのパルス信号に基づいてかご1の速度を検出しており、運転制御回路201による運転制御に対して、特にインバータ20に何ら影響を受けることも影響を与えることもなく、独立してかご1の速度監視を行うものである。
【0073】
また、本実施例では、上記特定速度検知信号10Mの出力を戸開走行異常判定に利用する。即ち、かご戸5又は乗場戸6のいずれかが開いたままでかご1が走行状態となった戸開走行を検知する際に、特定距離感知装置(DZ1,DZ2)による移動距離検知で行う場合と速度監視システムによる速度検知で行う場合との2系統を備えるものとした。
【0074】
したがって、本実施例において、戸開走行判定論理プログラムは、安全制御用演算処理装置11に対して、かご戸5及び全乗場戸6の開閉状態を示す信号と第1と第2の特定距離感知装置(DZ1,DZ2)からの信号(DZ1-1,DZ1-2,DZ2-1,DZ2-2)とを処理して戸開走行の異常判定を行わせる第1の戸開走行判定モードと、かご戸5及び全乗場戸6の開閉状態を示す信号と前記特定速度検知信号10Mとを処理して戸開走行の異常判定を行わせる第2の戸開走行判定モードとの2系統を、互いに独立して且つ並行処理可能に備えることによって、戸開走行の二重監視を可能とした。
【0075】
なお、かご戸スイッチCDS及び乗場戸スイッチHDSからの信号は、専用の入力用接続部から入力側インターフェース回路12を介して安全制御用演算処理装置11へ入力される。本実施例では、かご戸スイッチ1用リレーCDR1及びかご戸スイッチ2用リレーCDR2を介して、それぞれCDR1常開接点信号CD1及びCDR2常開接点信号CD2が入力される。また乗場戸スイッチ1用リレーHDR1及び乗場戸スイッチ2用リレーHDR2を介して、HDR1常開接点信号HD1及びHDR2常開接点信号HD2が入力される。なお、これらのリレー(CDR1,CDR2,HDR1,HDR2)は、基板へのかご戸スイッチCDS及び乗場戸スイッチHDSからの電線の結線の際に、適宜介在させれば良い。
【0076】
本実施例においては、図3(a)に示すように、かご戸スイッチCDSは、かご戸が閉状態でオン信号となり、かご戸スイッチ1用リレーCDR1及びかご戸スイッチ2用リレーCDR2からの出力をオン信号とする。そしてかご戸が開状態においてかご戸スイッチCDSはオフ信号となり、かご戸スイッチ1用リレーCDR1及びかご戸スイッチ2用リレーCDR2からの出力をオフ信号とする。一方、乗場戸スイッチHDSは、各階乗場戸スイッチが全て直列に接続されて成るものであり、全ての乗場戸が閉状態で全乗場戸スイッチがオンの時に乗場戸スイッチHDSとしてオン信号となり、乗場戸スイッチ1用リレーHDR1及び乗場戸スイッチ2用リレーHDR2からの出力をオン信号とする。また乗場戸の一つでも開状態でその乗場戸スイッチがオフであれば、乗場戸スイッチHDSとしてオフ信号となり、乗場戸スイッチ1用リレーHDR1及び乗場戸スイッチ2用リレーHDR2からの出力をオフ信号とする。また、通常、新規エレベータでは、かご戸スイッチ及び各階乗場戸スイッチは、接点に溶着や接触不良を生じないように改良された強制開離構造を採っているが、既存エレベータでは強制開離構造に対応していない場合がある。この場合、図3(b)に示すような二重スイッチ回路として安全を担保する。
【0077】
第1の戸開走行判定モードにおける戸開走行異常判定の動作処理は、図4のフローチャートに示した過程に沿って行われる。本実施例では、例えばかご戸5が閉じている場合、かご戸スイッチCDSからの信号(CD1,CD2)はオン、かご戸5が開いている場合、かご戸スイッチCDSからの信号(CD1,CD2)はオフとなる設定とした。そして、乗場戸6が全て閉じている場合、乗場戸スイッチHDSからの信号(HD1,HD2)はオン、全ての乗場戸6のうち一つでも開いている場合には乗場戸スイッチHDSからの信号(HD1,HD2)はオフとなる設定とした場合を示す。また、第1の特定距離感知装置DZ1からの信号(DZ1-1,DZ1-2)及び第2の特定距離感知装置DZ2からの信号(DZ2-1,DZ2-2)は、かご床面がドアゾーン内にある場合はそれぞれオン信号であり、かご床面がドアゾーン外で基準面から予め定められた一定距離以上離れた場合にオフ信号となる設定とした。
【0078】
図4のフロチャート図に示すように、本実施例による安全制御回路10の安全制御用演算処理装置11において、戸開走行判定論理プログラムに従って戸開走行異常判定の動作処理が開始されると、まず、入力信号に基づいて、かご戸スイッチCDSからの信号(CD1,CD2)及び乗場戸スイッチHDSからの信号(HD1,HD2)のうちいずれかでもオフがあるかどうか、即ちいずれかの戸が開状態であるか否かを判定する(S101)。ここで、オフ信号がなく、全てがオン信号であれば戸開走行異常判定の動作処理は終了となる。
【0079】
しかし少なくともいずれかの信号がオフであり、その信号元のかご戸5又は乗場戸6あるいは両方が開状態あると判定されると、次に、第1の特定距離感知装置DZ1からの信号(DZ1-1,DZ1-2)及び第2の特定距離感知装置DZ2からの信号(DZ2-1,DZ2-2)のいずれかでもオフがあるかどうか、即ち、少なくともどちらかの特定距離感知装置によってかご1が予め定められた一定距離以上移動したことが検知されたか否かを判定する(S102)。
【0080】
ここで双方の特定距離感知装置(DZ1,DZ2)からの信号が共にオンであれば、戸開走行判定の動作処理は終了となる。しかし、少なくともどちらかの信号がオフであり、かご1が一定距離以上移動したことが検知されると、これはかご戸5又は乗場戸6が開いたままの戸開走行であり、戸開走行異常判定が成される(S103)。
【0081】
従って、安全制御用演算処理装置11では、かご制止指令信号が出力され(S104)、これに基づいてリレーS1y及びリレーS2yによってそれぞれインバータ電源遮断用コンタクタS1とモータ電源遮断用コンタクタS2とへの通電が直接オフされ、これらコンタクタ(S1,S2)が消磁されてコイル接点が開かれ、インバータ20とモータ25への電力供給が共に遮断されて(S105)、結果的にモータ駆動が停止状態となる(S106)。同時に、かご制止指令信号に基づいて、リレーS3yによって、第1と第2のブレーキ電源遮断用コンタクタ(BD1,BD2)への通電が直接オフされて両コンタクタ(BD1,BD2)が消磁されてコイル接点が開かれ、第1と第2のブレーキ(9A,9B)への電力供給が遮断されて(S107)、第1と第2のブレーキ(9A,9B)は無励磁作動状態となる(S108)。なお、この第1と第2のブレーキ(9A,9B)の無励磁作動状態においては、各ブレーキの動作感知装置からの信号(BKS1、BKS2)がオン信号として安全制御回路10へ入力される。
【0082】
以上のように、モータ25への電源遮断によるモータ駆動停止、及びブレーキ側への電源遮断によるモータ25の回転軸へのブレーキ作動によって、かご1は制止され(S109)、第1の戸開走行判定モードにおける戸開走行異常判定の動作処理は終了となる。
【0083】
また、第2の戸開走行判定モードにおける戸開走行異常判定の動作処理は、図5のフローチャートに示した過程に沿って行われるが、第1の戸開走行判定モードとの違いは、かご戸スイッチCDSからの信号(CD1,CD2)及び乗場戸スイッチHDSからの信号(HD1,HD2)のうちいずれかでもオフがあるかどうか、即ちいずれかの戸が開状態であるか否かの判定(S121)において、少なくともいずれかの信号がオフであり、その信号元のかご戸5又は乗場戸6あるいは両方が開状態あると判定された後の、かご1が走行状態にあるかどうかの判定においてのみである。
【0084】
即ち、ここで、かご1の移動速度として10m/分以上であることを示す10M信号がオンであるかどうかの判定(S122)が行われる。10M信号がオフであれば戸開走行判定の動作処理は終了となる。しかし、10M信号がオンであり、かご1が10m/分以上の速度で移動していることが検知されると、これはかご戸5又は乗場戸6が開いたままの戸開走行であり、戸開走行異常判定が成される(S123)。戸開走行異常判定の後はかご制止指令信号が出力され(S124)、第1の戸開走行判定モードと同じ過程で、インバータ20とモータ25への電力供給が遮断されて(S125)モータ駆動が停止状態となる(S126)と共に、第1と第2のブレーキ(9A,9B)への電力供給が遮断されて(S127)、第1と第2のブレーキ(9A,9B)が無励磁作動状態となり(S128)、かご1が制止され(S129)、戸開走行判定の動作処理は終了となる。以上のように、本実施例では、第1の戸開走行判定モードと第2の戸開走行判定モードとの2系統の並行処理による戸開走行異常判定が行われる。
【0085】
なお、本実施例においては、第1の戸開走行判定モードと第2の戸開走行判定モードとは、互いに独立したモードであるため、一方が他方に影響されることなく実行可能である。従って、どちらか一方の戸開走行判定モードのみの実行による戸開走行異常判定も可能である。例えば、戸開走行異常判定のための入力用接続部にて、ロータリーエンコーダ19からの信号入力の設定がないか又は解除されれば、実質的に特定距離感知装置(DZ1,DZ2)からの信号に基づく第1の戸開走行判定モードのみが実行されることになる。これは、従来と同様の1系統での戸開走行異常判定となる。
【0086】
また、速度監視装置としてロータリーエンコーダ19自身の故障異常を定期的に判定する構成とすることが望ましい。この場合、速度監視装置異常判定論理プログラムを更に備えるものとする。この速度監視装置異常判定は、特定速度検知信号が出力される基準速度よりも早い設定速度以上、例えば15m/分以上の速度での通常運転におけるかご1の昇降の際に、特定速度検知信号10Mがオンとなることを確認するものである。この条件において特定速度検知信号10Mが出力されなければ、速度監視装置(エンコーダ)の異常を判定し、戸開走行異常判定と同様の動作処理によりかご1を制止させる設定とすれば、速度監視システムが正常に実行できなくなった時点でエレベータを運転停止にして、より高い安全性の確保が図れる。
【0087】
なお、本実施例においては、第1と第2の戸開判定モードのいずれの場合においても、戸開走行異常判定が成された(S103,S123)際には、安全制御用演算処理装置11によって戸開走行の異常信号が出力される(S110,S130)。この異常信号は、異常信号出力用に設定された出力用接続部から外部へ出力されるものとする。本実施例においては、5つのリレーを介在して異常判定の種類別に異常信号が出力されるものとした。即ち、5つのリレーのオン信号をその数と組合せで作られる複数種の信号に、それぞれに各異常判定の種類を割り当てた。例えば、図6の相対表に示すように、種類別の異常判定(Y1~Y26)に対して、第1~第5のオン信号(X20~X24)の各種組合せを信号の種類を対応させた。
【0088】
具体的には、第1の戸開走行判定モードにおけるかご戸5及び乗場戸6が共に開状態での戸開走行(かご戸スイッチ信号CD1・CD2:オフ,乗場戸スイッチHD1・HD2:オフ,第1と第2の特定距離感知装置信号DZ1-1,2・DZ2-1,2:少なくともどちらかがオフ)を異常判定Y1として、異常信号X20(第1リレー:オン)のみの出力を割り当てた。異常判定Y2は、かご戸5のみが開状態での戸開走行(かご戸スイッチ信号CD1・CD2:オフ,乗場戸スイッチHD1・HD2:オン,第1と第2の特定距離感知装置信号DZ1-1,2・DZ2-1,2:少なくともどちらかがオフ)として異常信号X21(第2リレー:オン)のみの出力を割り当てた。異常判定Y3は、乗場戸6のみが開状態での戸開走行(かご戸スイッチ信号CD1・CD2:オン,乗場戸スイッチHD1・HD2:オフ,第1と第2の特定距離感知装置信号DZ1-1,2・DZ2-1,2:少なくともどちらかがオフ)として異常信号X20とX21(第1・第2リレー:オン)の組合せ出力を割り当てた。
【0089】
一方、第2の戸開走行判定モードにおける戸開走行異常判定は、異常判定Y20として異常信号X22とX24(第3・第5リレー:オン)の組合せ出力を割り当てた。また速度監視装置(エンコーダ)異常を異常判定Y21として異常信号X20とX22とX24(第1・第3・第5リレー:オン)の組合せ出力を割り当てた。
【0090】
また各モータ電源遮断用コンタクタ(S1,S2)のオン故障(コイル接点の融着等により閉じたままオンにならない)にそれぞれ異常判定Y4,Y5を、各ブレーキ電源遮断用コンタクタ(BD1,BD2)のオン故障にそれぞれ異常判定Y7,Y8を設定した。さらに通常運転中であることを示すRUN信号のオン故障に異常判定Y9を、オフ故障に異常判定Y10を設定した。これらの各異常判定には、それぞれ異常信号(X20~X24)の互いに異なる組合せ出力を割り当てることができる。本実施例においては、5つのリレー信号を用いているため、その他にも、各種構成要素の故障等の異常判定を設定して異常信号の異なる組合せ出力を割り当てることができる。
【0091】
以上のように、安全制御回路10においては、速度監視だけでなく、戸開走行異常判定論理プログラムを含む必要な動作異常判定論理プログラムと該論理プログラム用データを有していれば、必要な種々の異常判定が通常の運転制御回路からの影響を受けることなく実行可能である。即ち、各種信号の組合せとその整合性異常を検知することによって、例えば、各コンタクタのオン故障や、各入力部の異常等の異常判定も、安全制御回路において専用に実行することが可能である。
【0092】
なお、上記実施例では、かご戸及び乗場戸が引き戸型であるエレベータシステムの場合を説明したが、本発明の速度監視システムは、上下戸型であっても適用可能であることは言うまでもない。上下戸型の場合は、引き戸型の場合とは開閉状態を示す信号数が異なるため、入力用接続部を適宜設定すれば済む。
【0093】
また、自動車専用に、かごに戸がないエレベータシステムもあるが、この場合は、戸開走行異常判定において、かご戸の開閉状態を示す信号が必要なくなるだけであるため、入力用接続部の設定を適宜対応させると共に、戸開走行異常判定論理プログラムに、第3の戸開走行判定モードとして自動車専用型のものを更に備えれば良い。このとき、第3の戸開走行判定モードが適切に実行されるための設定モードの選択的な切換にも、ディップスライドスイッチDPSを利用できる。例えば、第4のスライドスイッチDP4からオン信号が出力された場合には、安全制御用演算処理装置11は、自動車専用型のためのモードを選択して実行する設定とすればよい。
【0094】
さらに、ディップスライドスイッチDPSに利用可能な別のスライドスイッチがあれば、他の設定モードの選択的な切換に利用できる。例えば、エレベータの定期点検の際など、オン信号によって手動運転モードであることを示すためのスライドスイッチを割り当てることもできる。これにより、安全制御回路10は、手動運転モードに対応する状態に移行できる。
【符号の説明】
【0095】
1,30:かご
2:メインロープ
3:釣合錘
4:方向転換プーリ
5:かご戸
6:乗場戸
CDS:かご戸スイッチ
HDS:乗場戸スイッチ
7:巻上機
8:シーブ
9A:第1のブレーキ
9B:第2のブレーキ
10:安全制御回路(戸開走行保護装置用)
11:安全制御用演算処理装置(CPU)
12:入力側インターフェース回路
13:出力側インターフェース回路
14:安全制御用記憶部(ROM)
15:安全制御用記憶部(RAM)
16:WDT(ウォッチドッグタイマー)
17:表示ランプ
18:エラー表示ランプ
19:ロータリーエンコーダ
20:インバータ
21,22:電源
23A,23B:整流器
25:モータ
S1:インバータ電源遮断用コンタクタ
S2:モータ電源遮断用コンタクタ
BD1,BD2:ブレーキ電源遮断用コンタクタ
DZ1,DZ2:特定距離感知装置
BR1,BR2:ブレーキ釈放用コンタクタ
S1y,S2y,S3y:リレー
DPS:ディップスライドスイッチ
DP1,DP2,DP3,DP4,DP5:スライドスイッチ
40:調速機
41:調速機シーブ
42:フライトウエイト
43:爪部
44:ラチェット
45:制御棒
46:バネ受け部
47:ロープ押圧バネ
48:アーム部
49:押圧シュー
50:ブレーキ作動機構
51:スイッチカム
52:調速機ロープ
53:テンションプーリ
60:ガイドレール
61:非常止め作動レバー
62:非常止め作動リンク
63:非常止め制動片
100:安全制御回路による制御が及ぶ領域
200:制御盤
201:運転制御回路
202:入力側インターフェース回路
203:出力側インターフェース回路
210:通常運転制御用の演算処理装置(CPU)
図1
図2
図3
図4
図5
図6