(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067464
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/362 20210101AFI20240510BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240510BHJP
B22F 10/38 20210101ALI20240510BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240510BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240510BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240510BHJP
B22F 12/90 20210101ALN20240510BHJP
【FI】
B22F10/362
B22F10/28
B22F10/38
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/02
B22F12/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177562
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 正樹
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA06
4K018AA07
4K018AA33
4K018AB10
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA17
4K018BB10
4K018DA18
4K018HA01
(57)【要約】
【解決手段】3次元造形物を製造する製造装置であって、粉末層を積層する粉末積層部と、粉末層の予熱処理において、3次元造形物の空洞に対応する空洞領域を粉末層の他の予熱対象領域よりも低いエネルギーで予熱し、又は、空洞領域を予熱しない予熱制御を行う予熱制御部と、粉末層における、3次元造形物の断面となるべき領域を溶融結合させることにより断面を形成する溶融制御部と、を備える製造装置を提供する。予熱制御部は、粉末層における3次元造形物の空洞領域を、粉末層における3次元造形物の断面となるべき予熱対象領域の予熱よりも低いエネルギーで予熱するように予熱処理を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元造形物を製造する製造装置であって、
粉末層を積層する粉末積層部と、
前記粉末層の予熱処理において、前記3次元造形物の空洞に対応する空洞領域を前記粉末層の他の予熱対象領域よりも低いエネルギーで予熱し、又は、前記空洞領域を予熱しない予熱制御を行う予熱制御部と、
前記粉末層における、前記3次元造形物の断面となるべき領域を溶融結合させることにより断面を形成する溶融制御部と、
を備える製造装置。
【請求項2】
前記予熱制御部は、前記粉末層における前記3次元造形物の前記空洞領域を、前記粉末層における前記3次元造形物の断面となるべき予熱対象領域の予熱よりも低いエネルギーで予熱するように予熱処理を行う
請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記予熱制御部は、前記予熱処理の条件を決定する予熱条件決定部を有し、
前記予熱条件決定部は、前記3次元造形物の空洞に対応するマスクデータを用いて、前記予熱対象領域に対する前記予熱処理の条件を決定する
請求項1に記載の製造装置。
【請求項4】
前記予熱条件決定部は、前記3次元造形物の空洞に対応する3次元のマスクデータを前記3次元造形物の3次元造形データに組み合わせたデータに基づいて、前記予熱処理の条件を決定する
請求項3に記載の製造装置。
【請求項5】
前記予熱制御部は、ビームを用いて前記粉末層の前記予熱処理を行う
請求項1に記載の製造装置。
【請求項6】
前記3次元造形物の空洞は、前記3次元造形物を貫通する貫通孔を含む
請求項1に記載の製造装置。
【請求項7】
前記予熱対象領域は、前記粉末層における前記3次元造形物の断面となるべき領域を囲む領域である
請求項1に記載の製造装置。
【請求項8】
前記予熱制御部は、前記粉末層の予熱処理において、前記空洞領域の大きさ、前記3次元造形物の前記空洞の深さ、及び前記空洞の形状の少なくとも1つに応じて、前記空洞領域の予熱のエネルギーを変更する
請求項1に記載の製造装置。
【請求項9】
3次元造形物を製造する製造方法であって、
粉末層を積層する段階と、
前記粉末層の予熱処理において、前記3次元造形物の空洞に対応する空洞領域を前記粉末層の他の予熱対象領域よりも低いエネルギーで予熱し、又は、前記空洞領域を予熱しない予熱制御を行う段階と、
前記粉末層における、前記3次元造形物の断面となるべき領域を溶融結合させることにより断面を形成する段階と、
を備える製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「予熱ステップによって、後続の凝固ステップにおいて融解金属と粉末との間の界面に過度の温度勾配を持つことを避けるように、粉末層が均一に加熱される」と記載されている。特許文献2,3には、3次元造形物の製造方法が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
特許文献1 特許第5108884号
特許文献2 米国特許第10792861号明細書
特許文献3 米国特許第11059100号明細書
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、3次元造形物を製造する製造装置を提供する。前記製造装置は、粉末層を積層する粉末積層部と、前記粉末層の予熱処理において、前記3次元造形物の空洞に対応する空洞領域を前記粉末層の他の予熱対象領域よりも低いエネルギーで予熱し、又は、前記空洞領域を予熱しない予熱制御を行う予熱制御部と、前記粉末層における、前記3次元造形物の断面となるべき領域を溶融結合させることにより断面を形成する溶融制御部と、を備える。
【0004】
前記製造装置において、前記予熱制御部は、前記粉末層における前記3次元造形物の前記空洞領域を、前記粉末層における前記3次元造形物の断面となるべき予熱対象領域の予熱よりも低いエネルギーで予熱するように予熱処理を行ってよい。
【0005】
前記製造装置のいずれかにおいて、前記予熱制御部は、前記予熱処理の条件を決定する予熱条件決定部を有し、前記予熱条件決定部は、前記3次元造形物の空洞に対応するマスクデータを用いて、前記予熱対象領域に対する前記予熱処理の条件を決定してよい。
【0006】
前記製造装置のいずれかにおいて、前記予熱条件決定部は、前記3次元造形物の空洞に対応する3次元のマスクデータを前記3次元造形物の3次元造形データに組み合わせたデータに基づいて、前記予熱処理の条件を決定してよい。
【0007】
前記製造装置のいずれかにおいて、予熱制御部は、ビームを用いて前記粉末層の前記予熱処理を行ってよい。
【0008】
前記製造装置のいずれかにおいて、前記3次元造形物の空洞は、前記3次元造形物を貫通する貫通孔を含んでよい。
【0009】
前記製造装置のいずれかにおいて、前記予熱対象領域は、前記粉末層における前記3次元造形物の断面となるべき領域を囲む領域であってよい。
【0010】
前記製造装置のいずれかにおいて、前記予熱制御部は、前記粉末層の予熱処理において、前記空洞領域の大きさ、前記3次元造形物の前記空洞の深さ、及び前記空洞の形状の少なくとも1つに応じて、前記空洞領域に対する予熱のエネルギーを変更してよい。
【0011】
本発明の第2の態様においては、3次元造形物を製造する製造方法を提供する。前記製造方法は、粉末層を積層する段階と、前記粉末層の予熱処理において、前記3次元造形物の空洞に対応する空洞領域を前記粉末層の他の予熱対象領域よりも低いエネルギーで予熱し、又は、前記空洞領域を予熱しない予熱制御を行う段階と、前記粉末層における、前記3次元造形物の断面となるべき領域を溶融結合させることにより断面を形成する段階と、を備える。
【0012】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態による製造装置10の模式図である。
【
図2】本実施形態の製造装置10の制御部50を詳細に示すブロック図である。
【
図3】本実施形態の製造装置10において3次元造形物110を製造する方法を示す説明図である。
【
図5】3次元造形物の空洞を示すマスクデータの例である。
【
図6】マスクデータを組み込んだ3次元造形データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
図1は、本実施形態による製造装置10の模式図である。
図1では、左右方向のX軸と、上下方向のZ軸と、奥行き方向のY軸とが、互いに直交するように示されている。以降では、これらの3軸を用いて説明する場合がある。
【0016】
本実施形態による製造装置10は、粉末100を堆積して粉末層を積層し、粉末層に対して電子ビームEBを照射することによって粉末100を溶融結合させ、粉末層の積層及び粉末100の溶融を交互に繰り返すことにより3次元造形物を製造する。製造装置10は、粉末層に対して、製造される3次元造形物の断面及び3次元造形物の空洞に応じた予熱処理を行う。ここで、粉末100は、例えば、チタン系、クロム系、ニッケル系の合金や、SUSなどの金属材料からなる、導体の粉末材料である。粉末100は、磁性体又は非磁性体であってよい。
【0017】
なお、溶融結合は、加熱により粉末100が溶融され、その後互いに結合して凝固して断面構造になることをいう。また、予熱処理は、溶融結合させるための温度よりも低い温度に粉末層を加熱することをいう。製造装置10は、予熱処理により、粉末100同士をゆるい結合状態(仮焼結)にすることで粉末層の電気抵抗を下げ、溶融結合の際に高強度の電子ビームEBを照射された粉末100がチャージアップにより飛散してしまうことを抑止する。
【0018】
製造装置10は、カラム部20と、造形部30と、測定部40と、制御部50とを備える。造形部30は、粉末100からなる粉末層を積層する粉末積層部の一例である。
【0019】
カラム部20は、造形部30の内部に向けて電子ビームEBを出力する。カラム部20は、粉末層における、製造対象の3次元造形物110の断面となるべき領域を電子ビームEBで加熱して溶融結合させることにより断面を形成する。さらに、カラム部20は、溶融結合前に、粉末層の予熱対象領域を電子ビームEBで加熱することにより、予熱処理を行ってよい。カラム部20は、電子源21と、電子レンズ22と、偏向器23とを有する。
【0020】
電子源21は、熱又は電界の作用によって電子を発生させる。電子源21は、発生させた電子を、予め定められた加速電圧、例えば-60KVで、下方に向かって加速させ、電子ビームEBとして出力する。
【0021】
電子レンズ22は、電子源21から出力された電子ビームEBを、造形部30の内部に積層された粉末層の表面で収束させる。電子レンズ22は、例えば磁界レンズであって、レンズ軸周りに配されたコイル等を含んでよい。
【0022】
偏向器23は、電子源21から出力されて電子レンズ22を通過した電子ビームEBを偏向して、粉末層の表面のX軸方向及びY軸方向における照射位置を調整する。偏向器23は、例えば、電子レンズ22のレンズ軸を挟んで、X軸方向及びY軸方向に対向する2組の偏向コイルを含む。偏向器23は、粉末層の表面の照射対象領域全体に電子ビームEBを走査させてもよく、また、照射対象領域内のエリア毎に電子ビームEBを照射させてもよい。
【0023】
造形部30は、3次元造形物110を造形する。造形部30は、カラム部20の下部に接続され、造形部30の内部空間はカラム部20の内部空間と連通する。造形部30は、粉末供給部31と、ステージ32と、側壁部33と、駆動棒34と、駆動部35と、排気ユニット36と、ヒータ37とを有する。
【0024】
粉末供給部31は、ステージ32上の、ステージ32及び側壁部33によって囲まれる空間内に、粉末100を供給して堆積させ、堆積させた粉末100の表面を擦り切ることで、表面が平坦化された粉末層を形成する。形成された粉末層は、ステージ32及び側壁部33によって形状を保持される。なお、粉末供給部31によって形成される粉末層のうち、電子ビームEBを照射された箇所は溶融して3次元造形物110の断面部分の構造を成し、その他の部分は3次元造形物110の周囲において粉末100の状態で堆積される。なお、電子ビームEBを照射されて溶融した粉末層は、既に積層されている3次元造形物110が下方に隣接して存在する場合、既に積層されている3次元造形物110の上端面と結合して、3次元造形物110を上方に形成していく。
【0025】
ステージ32は、XY平面方向に広がる面を有する。ステージ32は、粉末供給部31により供給された粉末100がその上面上に積載され、粉末100が堆積した状態である粉末層を保持する。側壁部33は、ステージ32の周囲に配され、ステージ32上の粉末層の側面を保持する。
【0026】
駆動棒34は、ステージ32の下面に連結され、ステージ32を支持する。駆動部35は、駆動棒34を支持し、駆動棒34がZ軸方向に上下するように駆動棒34を駆動する。駆動部35は、駆動棒34を駆動することによって、ステージ32がZ軸方向に上下するようにステージ32を駆動する。駆動部35は、粉末供給部31によってステージ32上に形成された粉末層に電子ビームEBが照射されて断面構造が形成されると、Z軸方向における次の断面の厚みの分、ステージ32を下方に降下させる。
【0027】
排気ユニット36は、電子ビームEBが通過する製造装置10の内部空間を排気して、当該内部空間が予め定められた真空度となるように調整する。これにより、排気ユニット36は、電子ビームEBが大気中の気体粒子と衝突することによりエネルギーを損失することを抑止する。
【0028】
ヒータ37は、ステージ32の下面及び側壁部33の外周に配され、ステージ32上に形成された粉末層を加熱する。なお、ヒータ37による粉末層の加熱温度は、電子ビームEBによる加熱温度よりも低くてよい。
【0029】
測定部40は、例えば、サーモグラフィカメラ又はパイロメータである。測定部40は、ステージ32上に積層された最上層の粉末層の温度分布を測定する。測定部40は、例えば、最上層の粉末層について、予熱処理の加熱後の温度分布を測定する。測定部40は、予熱処理又は溶融結合の加熱後、粉末層の少なくとも一部の温度分布を測定する。
【0030】
制御部50は、製造装置10の他の各構成に有線又は無線で接続され、各構成を制御する。制御部50は、カラム部20の電子源21、電子レンズ22、及び偏向器23を制御することにより、電子ビームEBの照射時間、照射速度、及び照射位置を制御する。制御部50は更に、造形部30の粉末供給部31、駆動部35、及びヒータ37を制御することにより、ステージ32上での3次元造形物110の造形を制御する。制御部50は更に、測定部40を制御することにより、測定部40から測定結果を受信し、当該測定結果に応じて、カラム部20からの電子ビームEBの照射条件(例えば、電子ビームEBの照射する範囲、エリア毎の照射順番、照射時間、及び照射強度等の少なくとも1つ)を決定してよい。
【0031】
図2は、本実施形態の製造装置10の制御部50を詳細に示すブロック図である。制御部50は、断面形状作成部200と、測定値取得部210と、処理部220と、出力部230とを有する。
【0032】
断面形状作成部200は、処理部220に接続される。断面形状作成部200は、製造装置10に入力された又は格納された3次元造形物110の3次元造形データから、当該3次元造形物110のXY平面Aにおける断面領域を示すデータを生成して、処理部220に出力してよい。断面形状作成部200は、3次元造形物110の空洞120に対応する3次元のマスクデータを3次元造形物110の3次元造形データに組み合わせたデータから、当該3次元造形物110のXY平面における断面領域及び3次元造形物110の空洞120に対応する空洞領域を示すデータを生成して、処理部220に出力してよい。断面形状作成部200は、Z方向における3次元造形データの全ての断面を電子ビームEBの照射前に出力してよく、又は、現在の断面を形成するための電子ビームEBの照射の間に次に形成する断面を出力してもよい。
【0033】
ここで、3次元造形物110の空洞120は、3次元造形物110において中空部分であってよく、一例として、3次元造形物110を貫通する貫通孔を含んでよい。さらに空洞120は、3次元造形物110の貫通しない穴、3次元造形物110の内部で密閉された空洞、及び3次元造形物110の表面の凹み(例えば溝等)の少なくとも1つを含んでよい。マスクデータは、3次元造形物110の空洞120と同じ大きさ、形状、及び位置関係(座標)の3次元データであってよい。
【0034】
測定値取得部210は、測定部40及び処理部220に接続される。測定値取得部210は、各製造工程後に測定部40で測定された測定結果を受信し、当該測定結果を示すデータを処理部220に出力してよい。測定値取得部210は、測定部40により温度測定された粉末層の全表面又は一部表面の温度分布を示すデータを処理部220に出力してよい。
【0035】
処理部220は、出力部230に接続され、電子ビームEBの照射条件を決定するための各種処理を行う。処理部220は、3次元造形物110を製造するためにカラム部20及び造形部30等の製造装置の各構成を制御する制御データを出力する。処理部220は、溶融制御部222と予熱制御部224とを有する。
【0036】
溶融制御部222は、カラム部20及び造形部30の制御を行い、粉末層における、3次元造形物110の断面となるべき領域を溶融結合させることにより断面を形成する。溶融制御部222は、測定値取得部210から受け取った粉末層の温度等に応じて、粉末層おける3次元造形物110の断面となるべき領域のエリア毎に、溶融結合させる電子ビームEBの照射時間及び照射強度の少なくとも1つの溶融結合条件を決定して、当該溶融結合条件を示す制御データを出力部230に出力してよい。
【0037】
予熱制御部224は、溶融結合の前に粉末層の予熱を行うべく、カラム部20及び造形部30を制御する。予熱制御部224は、粉末層の予熱処理において、3次元造形物110の空洞120に対応する空洞領域を粉末層の他の予熱対象領域よりも低いエネルギーで予熱し、又は、空洞領域を予熱しない予熱制御を行う。予熱制御部224は、予熱条件決定部226を有する。なお、エリア(領域又は座標等)における予熱のエネルギーは、当該エリアに対する予熱の予熱温度及び予熱時間の少なくとも1つに応じて決まるエネルギー密度で示されてよい。予熱の予熱温度がより高いほどエネルギーがより高くなり、予熱時間がより長いほどエネルギーがより高くなってよい。一例として、電子ビームEBを用いた1つのエリア(領域又は座標等)における予熱のエネルギーは、当該エリア対する電子ビームEBの加速電圧等の照射強度及び照射時間の少なくとも1つに応じて決まるものであってよい。照射強度がより高いほどエネルギーがより高くなり、照射時間がより長いほどエネルギーがより高くなってよい。
【0038】
予熱条件決定部226は、粉末層の予熱処理において、3次元造形物110の空洞120に対応する空洞領域に応じた予熱処理の条件を決定する。予熱条件決定部226は、測定値取得部210から受け取った粉末層の温度等に応じて、粉末層おける予熱対象領域のエリア毎に、電子ビームEBの照射時間及び照射強度の少なくとも1つの予熱条件を決定して、当該予熱条件を示す制御データを出力部230に出力してよい。予熱条件決定部226は、3次元造形物110の空洞120に対応するマスクデータを用いて、予熱対象領域に対する予熱処理の条件を決定してよい。予熱条件決定部226は、3次元造形物110の空洞120に対応する3次元のマスクデータを3次元造形物110の3次元造形データに組み合わせたデータに基づいて、予熱処理の条件を決定してよい。
【0039】
出力部230は、カラム部20及び造形部30に有線又は無線で接続され、処理部220からの制御データに応じた信号を出力して、3次元造形物110の製造条件を制御してよい。出力部230は、電子ビームEBの照射位置及び照射時間等の照射条件を制御するために、制御データに応じた信号をカラム部20に出力してよい。出力部230は、電子源21に信号を出力して、電子ビームEBの照射強度を制御し、また、偏向器23に信号を出力して、電子ビームEBの照射位置を制御してよい。
【0040】
図3は、本実施形態の製造装置10において3次元造形物110を製造する方法を示す説明図である。ステップS10において、粉末供給部31は、粉末100をステージ32上に供給し、擦り切りにより平坦化することで、ステージ32上に粉末層1000aを形成する。ヒータ37は、粉末層1000aをプリヒーティングする。
【0041】
ステップS20において、溶融制御部222は、断面形状作成部200から、断面1010aに対応する断面領域のデータを受け取り、測定値取得部210から受け取った測定結果に応じて、電子ビームEBの照射強度等の溶融結合条件を生成し、出力部230を介してカラム部20に出力する。カラム部20は、溶融結合条件に応じて、電子源21から出力した電子ビームEBを粉末層1000aにおける断面領域に照射する。これにより、粉末層1000aのうち、電子ビームEBを照射された箇所は溶融結合して断面1010aを形成し、その他の部分は断面1010aの周囲において粉末100の状態で残る。
【0042】
ステップS30において、粉末供給部31は、粉末100を、形成された断面1010a上に供給し、擦り切りにより平坦化することで、断面1010a上に粉末層1000bを形成する。このように粉末層1000bが形成された後に、測定部40は粉末層1000bの表面温度分布を測定し、測定結果を測定値取得部210に出力する。
【0043】
ステップS40において、予熱制御部224は、予熱制御を行う。予熱制御部224は、断面形状作成部200から断面1010bに対応する断面領域のデータを受け取り、予熱条件を生成し、出力部230を介してカラム部20に出力することにより、予熱制御を行う。
【0044】
断面形状作成部200は、3次元造形物110の空洞120に対応する3次元のマスクデータを当該3次元造形物110の3次元造形データに組み込んで、組み込んだデータから、断面1010bに対応する断面領域のデータを生成してよい。このように、断面形状作成部200は、マスクデータを3次元造形データに組み込んだデータから、断面領域のデータを生成することで、空洞領域がマスクされた断面領域のデータを生成できる。
【0045】
断面形状作成部200は、ユーザが作成した3次元のマスクデータ又はマスクデータが組み込まれた3次元造形データを外部装置から受け取ってよい。また、断面形状作成部200は、3次元造形物110の3次元造形データを外部装置から受け取り、3次元造形物110(又は3次元造形データ)を包含可能な立体のうち最小の包含体(一例として、六面体又は球体等)のデータから、3次元造形データを減算処理することでマスクデータを生成してもよい。この場合、最小の包含体は、一例として、複数の軸方向における3次元造形物110の外表面の複数の端点で外接する複数の平面で覆われる立体であってよい。最小の包含体のデータは、3次元造形データに応じて断面形状作成部200又はユーザが作成したものであってよい。断面形状作成部200は、生成した断面領域のデータを予熱制御部224に出力してよい。
【0046】
予熱制御部224は、断面形状作成部200から受け取った断面1010bに対応する断面領域のデータ及び測定値取得部210から受け取った測定結果から、予熱条件を生成してよい。予熱制御部224は、粉末層における3次元造形物110の断面1010bとなるべき断面領域を囲む領域を予熱対象領域としてよい。この場合、予熱制御部224は、断面領域を含む予め定められた形状(一例として、正方形、円形等)の領域を予熱対象領域としてよい。また、予熱制御部224は、断面領域のエッジから一定距離離れて囲む領域(一例として、断面領域より大きく、断面領域と相似形の領域)を予熱対象領域としてよい。予熱対象領域の決定のための、予め定められた形状又は断面領域のエッジから離れる距離は、製造装置10のユーザからの入力によって設定されてよい。なお、予熱制御部224は、断面領域を予熱対象領域としてもよく、また、断面領域を予熱対象領域としなくてもよい。
【0047】
予熱制御部224は、予熱対象領域において、粉末層(例えば、粉末層の表面近傍)における空洞領域1020(すなわち、マスクされた領域)に与える照射エネルギーが予め定められた第1閾値未満で、空洞領域1020以外の領域に与える照射エネルギーが予め定められた第2閾値(第2閾値≧第1閾値)以上になるように、電子ビームEBの照射条件を決定してよい。これにより、予熱制御部224は、空洞領域1020を、他の予熱対象領域(例えば断面領域等)に直接与えるエネルギーよりも低い照射エネルギーで予熱するように予熱処理を行う。また、予熱制御部224は、空洞領域1020を予熱(加熱)しないように、電子ビームEBの照射条件を決定してよい。予熱制御部224は、予熱によって、予熱対象領域の温度がステップS20における溶融結合させる温度より低い温度(例えば、100~1000℃)になるように電子ビームEBの照射条件を決定してよい。
【0048】
予熱制御部224は、空洞領域1020の大きさ、3次元造形物110の空洞120の深さ、及び空洞120の形状の少なくとも1つに応じて、空洞領域1020に対する予熱のエネルギー(予熱量)を変更するように、電子ビームEBの照射条件を決定してよい。予熱制御部224は、粉末層1000bにおける空洞領域1020の最大幅又は平均幅が小さくなるほど、空洞領域1020の予熱のエネルギーが小さくなるように、照射条件を決定してよい。予熱制御部224は、3次元造形物110の空洞120の深さが大きいほど、空洞領域1020の予熱のエネルギーが小さくなるように、照射条件を決定してよい。予熱制御部224は、3次元造形物110の空洞120の深さをマスクデータから測定してよく、又はユーザから空洞120の深さの入力を受け取ってよい。予熱制御部224は、空洞120の形状がL字形状又は細長い形状等である場合には、他の形状の空洞よりも空洞領域の予熱のエネルギーが小さくなるように、照射条件を決定してよい。予熱制御部224は、空洞120の形状をマスクデータから決定してよく、又はユーザから空洞の形状に関する入力を受け取ってよい。予熱制御部224は、このように電子ビームEBの照射条件により、予熱温度及び予熱時間等に応じた予熱のエネルギーを制御してよい。これにより、3次元造形物110が完成した後に粉末100を除去することがより困難な空洞について、より予熱のエネルギーを低減でき、当該空洞から粉末100を確実に除去することができる。
【0049】
予熱制御部224は、温度と照射条件の関係を規定するテーブル又は関数を用いて、測定値取得部210から受け取った測定結果から電子ビームEBの照射条件を決定してよい。予熱制御部224は、当該テーブル又は関数を予め格納してよい。予熱制御部224は、決定した予熱条件を出力部230を介してカラム部20に出力する。
【0050】
カラム部20は、出力部230からの予熱条件に応じて、電子ビームEBで粉末層1000bの表面を加熱する。これにより、断面1010bの断面領域の周辺の粉末100は所定の温度まで予熱され、一方、空洞領域1020の粉末100の過度な温度上昇を抑制できる。
【0051】
ステップS50において、溶融制御部222は、断面形状作成部200から、断面1010bに対応する断面領域のデータを受け取り、測定値取得部210から受け取った予熱処理後の測定結果に応じて、電子ビームEBの照射強度等の溶融結合条件を生成し、出力部230を介してカラム部20に出力する。カラム部20は、溶融結合条件に応じて、電子源21から出力した電子ビームEBを粉末層1000bの断面領域に照射する。これにより、粉末層1000bのうち、電子ビームEBを照射された箇所は溶融結合して断面1010bを形成し、一方、空洞120を含む他の部分は粉末100の状態で残る。
【0052】
ステップS50の断面1010bの形成後には、ステップS30からステップS50までの工程を順に繰り返すことで、全ての断面を形成して、最終的な3次元造形物110を製造することができる。
【0053】
本実施形態により、3次元造形物110の製造時に、空洞120に対応する領域の粉末100に対して過剰な予熱を抑制し、3次元造形物110に囲まれて熱伝導等によって過剰な高温になりやすい空洞領域の仮焼結を所望の程度に弱くすることができる。これにより、製造後に当該空洞120内に残る粉末100を容易に取り除くことが可能となる。また、空洞120のマスクデータを用いることにより、断面毎に空洞120に対応する空洞領域を明確に特定することができる。
【0054】
図4は、3次元造形物110の3次元造形データ300を示す。3次元造形物110は、立方体に円筒状の貫通孔が6つ形成されている。3次元造形データ300において、3つの貫通孔310は、Z軸方向に並んで、Y軸方向に延び、他の3つの貫通孔320は、Y軸方向に並んで、Z軸方向に延びる。延断面形状作成部200が、このような3次元造形データ300から断面領域のデータを作成した場合、予熱制御部224は、貫通孔320に対応する空洞領域を断面領域以外の領域と区別することが困難となる。このため、本願の予熱を行う場合には、空洞120に対応する空洞領域を断面毎に特定できることが好ましい。
【0055】
図5は、
図4の3次元造形物110の空洞120(貫通孔)を示すマスクデータの例である。マスクデータは、貫通孔310、320の各々と同じ大きさの円柱を含み、各円柱の座標が、各貫通孔310、320と同じであるデータとなる。断面形状作成部200は、3次元造形データ300を同じ大きさの立方体の3次元データから減算処理することにより、
図5のマスクデータを得ることができる。
【0056】
図6は、
図4の3次元造形データ300に
図5の貫通孔310、320のマスクデータを組み込んだデータを示す。断面形状作成部200が、
図6のような、マスクデータを組み込んだ3次元造形データ300から断面のデータを作成することで、予熱制御部224は、各断面において空洞領域を明確に特定可能であり、本願の予熱を効率的に実施できる。
【0057】
図7は、予熱対象領域の例を示す。
図7は、
図6のマスクデータを組み込んだ3次元造形データ300から得られた断面のデータを用いて示す予熱対象領域の例を示す。断面形状作成部200は、
図6のマスクデータを組み込んだ3次元造形データから断面領域のデータを生成し、予熱制御部224は、当該断面領域のデータから予熱対象領域を決定する。
図7において、予熱制御部224は、断面領域のエッジから距離D離れて囲む領域a(斜線のハッチング)、及び空洞領域を予熱対象領域として予熱を行い、断面領域に予熱を行わない。この場合、予熱制御部224は、空洞領域に対する予熱のエネルギーが領域aに対する予熱のエネルギーよりも低くになるように予熱制御を行う。
【0058】
図8は、予熱対象領域の他の例を示す。
図8は、
図6のマスクデータを組み込んだ3次元造形データから得られた断面のデータを用いて示す予熱対象領域の他の例を示す。断面形状作成部200は、
図6のマスクデータを組み込んだ3次元造形データから断面領域のデータを生成し、予熱制御部224は、当該断面領域のデータから予熱対象領域を決定する。
図8において、予熱制御部224は、断面領域のエッジから距離D離れて囲む領域a、及び断面領域を予熱対象領域として予熱を行い、空洞領域に予熱(加熱)を行わない。この場合、予熱制御部224は、領域a及び断面領域の温度が閾値以上になるように予熱制御を行う。
【0059】
なお、予熱制御部224は、
図3のステップS40において、断面毎に、空洞領域(マスクされた領域)を他の予熱対象領域よりも低いエネルギーで予熱するかを決定してよい。この場合、予熱制御部224は、断面における空洞領域の面積又は最大幅が予め定められた閾値未満である場合に、空洞領域を他の予熱対象領域よりも低いエネルギーで予熱すると決定し、空洞領域の面積又は最大幅が予め定められた閾値以上である場合に、空洞領域を他の予熱対象領域と同じ予熱条件で予熱を行うと決定してよい。予め定められた閾値は、ユーザ入力によって設定されてよい。
【0060】
また、予熱制御部224は、ステップS40の予熱処理を、前の溶融結合のステップS20と粉末層形成のステップS30との間に行ってもよい。これにより、予熱処理後に積層された粉末層1000bを下の粉末層1000aにより間接的に予熱することができる。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0062】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0063】
10 製造装置
20 カラム部
21 電子源
22 電子レンズ
23 偏向器
30 造形部
31 粉末供給部
32 ステージ
33 側壁部
34 駆動棒
35 駆動部
36 排気ユニット
37 ヒータ
40 、測定部
50 制御部
100 粉末
110 3次元造形物
120 空洞
110 3次元造形物
200 断面形状作成部
210 測定値取得部
222 溶融制御部
224 予熱制御部
226 予熱条件決定部
230 出力部
300 3次元造形データ
310 貫通孔
320 貫通孔
1000a 粉末層
1000b 粉末層
1010a 断面
1010b 断面
1020 空洞領域