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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067473
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
   A63F 7/02 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
A63F7/02 334
A63F7/02 312A
A63F7/02 311C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177584
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】599104196
【氏名又は名称】株式会社サンセイアールアンドディ
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100163315
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健二
(72)【発明者】
【氏名】稲田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 和也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴彬
【テーマコード(参考)】
2C088
【Fターム(参考)】
2C088BC34
(57)【要約】
【課題】遊技機における糸付き球ゴトの実行を困難とする。
【解決手段】発射装置から発射された遊技球を、内レール22bと外レールとの間の誘導通路で遊技領域へと導き、内レールの上端には球戻り防止部材60を設置する。球戻り防止部材は、内レールの上端に固定された固定部61と、遊技盤20の盤面と間隙を設けた状態で遊技盤に略垂直な回動軸で回動可能に固定部によって支持された可動板62とを有しており、この可動板は、発射装置から発射された遊技球に押し倒されることで遊技球の通過を許容すると共に、起き上がった状態に復帰することで遊技領域から誘導通路に遊技球が戻るのを阻止する。そして、固定部と遊技盤の盤面との間には、上方に開放したスリット67を設けることとして、可動板と遊技盤の盤面との間隙よりもスリットの幅を狭くする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技盤に形成された遊技領域に遊技球を発射することによって遊技を行う遊技機において、
前記遊技球を発射する発射装置と、
前記遊技盤の盤面から前方に突出した内レールと外レールとの間に形成され、前記発射装置から発射された前記遊技球を前記遊技領域へと導く誘導通路と、
前記内レールの上端に設置され、前記遊技領域に放出された前記遊技球が前記誘導通路に戻るのを防ぐ球戻り防止部材と
を備え、
前記球戻り防止部材は、前記内レールの上端に固定された固定部と、前記遊技盤の盤面と間隙を設けた状態で該遊技盤に略垂直な回動軸で回動可能に前記固定部によって支持された可動板とを有しており、
前記可動板は、前記発射装置から発射された前記遊技球に押し倒されることで該遊技球の通過を許容すると共に、起き上がった状態に復帰することで前記遊技領域から前記誘導通路に前記遊技球が戻るのを阻止し、
前記固定部と前記遊技盤の盤面との間には、前記間隙よりも幅が狭いスリットが上方に開放して設けられている
ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
請求項1に記載の遊技機において、
前記可動板における前記遊技盤に対向した後面には、前記スリットに向かって下る傾斜が付いている
ことを特徴とする遊技機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の遊技機において、
前記球戻り防止部材における前記遊技盤とは反対側に、上方に開放した切り込みが設けられている
ことを特徴とする遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技盤に形成された遊技領域に向けて遊技球を発射することによって遊技を行う遊技機(パチンコ機)に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技盤に形成された遊技領域に向けて遊技球を発射することで遊技を行う遊技機では、遊技領域に設けられた入球口に遊技球が入球すると、遊技者に利益(賞球)を付与するのが一般的である。また、所定の入球口(始動口)への遊技球の入球に基づいて、識別情報(特別図柄)の変動表示を行い、その識別情報が特定態様で停止表示されると、可変入球口(大入賞口)が入球不能状態から入球可能状態となる特定遊技(大当り遊技)を実行する遊技機が普及している。
【0003】
遊技機に搭載の発射装置から発射された遊技球は、外レールと内レールとの間の誘導通路を通って遊技領域に放出されるようになっており、内レールの上端には、遊技領域に一旦放出された遊技球が誘導通路に戻ってしまうのを防ぐ球戻り防止部材が設置されているのが一般的である。球戻り防止部材としては、内レールの上端に固定された固定部と、遊技盤に略垂直な回動軸で回動可能に固定部によって支持された可動板とを備えた構成が知られている。可動板は、発射装置から発射された遊技球に押し倒されることで遊技球の通過を許容すると共に、起き上がった状態に復帰することで遊技領域から誘導通路に遊技球が戻るのを阻止する。
【0004】
このような遊技機では、釣り糸などを取り付けた遊技球(以下、糸付き球)を用いて、始動口などへの遊技球の入球頻度を不正に高める行為(いわゆる糸付き球ゴト)が行われることがある。糸付き球ゴトでは、まず、不正行為者が糸の一端を持って発射装置に送り込んだ糸付き球を遊技領域に向けて発射し、糸を引っ張るなどして遊技領域内で糸付き球を操る。そして、糸付き球を始動口などに一旦入球させた後、糸付き球を引き戻して繰り返し入球させること(いわゆるリフティング)等が行われる。
【0005】
そこで、こうした糸付き球ゴトを阻止するために、可動板の先端に切り込みを形成しておくことが提案されている(例えば、特許文献1)。遊技領域に放出された糸付き球を不正行為者が糸を引っ張って操ろうとすると、糸が切り込みに挟まって引っ掛かったり切れたりすることで、糸付き球ゴトを妨げることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-005962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した球戻り防止部材の可動板は、円滑な回動を可能とするために、遊技盤の盤面から離しておく必要があり、糸付き球の糸が可動板と遊技盤の盤面との間を通り抜けることによって、糸付き球ゴトが可能となってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、糸付き球ゴトの実行を困難とすることが可能な遊技機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の遊技機は次の構成を採用した。すなわち、
遊技盤に形成された遊技領域に遊技球を発射することによって遊技を行う遊技機において、
前記遊技球を発射する発射装置と、
前記遊技盤の盤面から前方に突出した内レールと外レールとの間に形成され、前記発射装置から発射された前記遊技球を前記遊技領域へと導く誘導通路と、
前記内レールの上端に設置され、前記遊技領域に放出された前記遊技球が前記誘導通路に戻るのを防ぐ球戻り防止部材と
を備え、
前記球戻り防止部材は、前記内レールの上端に固定された固定部と、前記遊技盤の盤面と間隙を設けた状態で該遊技盤に略垂直な回動軸で回動可能に前記固定部によって支持された可動板とを有しており、
前記可動板は、前記発射装置から発射された前記遊技球に押し倒されることで該遊技球の通過を許容すると共に、起き上がった状態に復帰することで前記遊技領域から前記誘導通路に前記遊技球が戻るのを阻止し、
前記固定部と前記遊技盤の盤面との間には、前記間隙よりも幅が狭いスリットが上方に開放して設けられている
ことを特徴とする。
【0010】
上述した本発明の遊技機では、
前記可動板における前記遊技盤に対向した後面には、前記スリットに向かって下る傾斜が付いている
こととしてもよい。
【0011】
また、こうした本発明の遊技機では、
前記球戻り防止部材における前記遊技盤とは反対側に、上方に開放した切り込みが設けられている
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遊技機における糸付き球ゴトの実行を困難とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施例のパチンコ機1の正面図である。
図2】本実施例の遊技盤20の盤面構成を示す説明図である。
図3】本実施例のパチンコ機1における制御回路の構成を示すブロック図である。
図4】本実施例の球戻り防止部材60の構成を示した斜視図である。
図5】本実施例の球戻り防止部材60が設置された内レール22bの上端の周辺を拡大して示した正面図である。
図6】糸付き球ゴトが行われる様子を示した説明図である。
図7】本実施例の球戻り防止部材60における遊技盤20と対向する後面の構成を示した説明図である。
図8】変形例の球戻り防止部材60の固定部61と遊技盤20の盤面との間に形成されるスリット67を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述した本発明の内容を明確にするために、本発明を「セブン機」や「デジパチ」と呼ばれるタイプのパチンコ機(遊技機)に適用した実施例について説明する。尚、実施例において、「前」および「表」は「遊技機を基準とする前方」、つまり「遊技者に近接する方向(遊技者から見て手前側)」を示し、「後」および「裏」は「遊技機を基準とする後方」、つまり「遊技者から離間する方向(遊技者から見て奥側)」を示す。また、「上」とは遊技者から見て「上」であることを示し、「下」とは遊技者から見て「下」であることを示し、「左」とは遊技者から見て「左」であることを示し、「右」とは遊技者から見て「右」であることを示す。
【0015】
A.パチンコ機の装置構成 :
A-1.装置前面側の構成 :
図1は、本実施例のパチンコ機1の正面図である。図1に示すように、パチンコ機1の前面部には、前面枠4が設けられている。前面枠4は、一端(図1における左側)が中枠3に対して回動可能に軸支されている。中枠3の前面側には遊技盤20(図2参照)が着脱可能に取り付けられており、前面枠4が中枠3に対してパチンコ機1の前方側に回動(開放)されると、遊技盤20が露出した状態となる。中枠3は、一端(図1における左側)が本体枠2に対して回動可能に軸支されている。本体枠2は、木製の板状部材を組み立てて構成された略長方形の枠体であり、パチンコ機1の外枠を形成している。
【0016】
前面枠4の略中央部には窓部4aが形成されており、この窓部4aにはガラス板等の透明板4bが嵌め込まれている。遊技者は、窓部4a(透明板4b)を通して奥側に配置された遊技盤20の後述する遊技領域を視認可能である。また、前面枠4における窓部4aの右下方には、小窓部4cが形成されており、この小窓部4cには合成樹脂板等の透明板4dが嵌め込まれている。遊技者は、小窓部4c(透明板4d)を通して奥側に配置された遊技盤20の後述するセグメント表示部を視認可能である。
【0017】
前面枠4における窓部4aの上方には上部ランプ5aが設けられ、窓部4aの右側の周縁部には右サイドランプ5bが設けられ、窓部4aの左側の周縁部には左サイドランプ5cが設けられている。また、窓部4aの上方の左右には一対の上部スピーカー6aが設けられており、本体枠2の下部の前面側には下部スピーカー6bが設けられている。これらの上部ランプ5a、右サイドランプ5b、左サイドランプ5c、上部スピーカー6a、および下部スピーカー6bは、遊技上の演出効果を高めるために駆動される。
【0018】
前面枠4における窓部4aの下方には、上皿部7が設けられている。上皿部7には、カードユニット242(図3参照)を介して貸し出される遊技球や、パチンコ機1から払い出される遊技球が貯留される。また、上皿部7の下方には下皿部8が設けられており、上皿部7の容量を超えて貸し出された遊技球や、上皿部7の容量を超えて払い出された遊技球が貯留される。
【0019】
前面枠4における下皿部8の右方には、遊技者による回転操作が可能な発射ハンドル9が設けられている。発射ハンドル9の回転軸は、発射ハンドル9の奥側に搭載された発射装置ユニット261(図3参照)に接続されている。この発射装置ユニット261には、上皿部7に貯留された遊技球が供給される。遊技者が発射ハンドル9を回転させると、その回転が発射装置ユニット261に伝達され、発射装置ユニット261に内蔵された発射モーターの作動によって、発射ハンドル9の回転角度に応じた強さで遊技球が発射される。
【0020】
また、上皿部7の手前側の縁部には、遊技者による押下操作が可能な演出ボタン10aが設けられており、下皿部8の左方には、遊技者による押込操作や回転操作が可能なジョグシャトル10bが設けられている。これらの演出ボタン10aおよびジョグシャトル10bは、何れも遊技者によって操作される演出操作部であり、遊技者は、所定の条件成立時に演出操作部を操作することによって、遊技演出に関与することが可能である。
【0021】
A-2.遊技盤の構成 :
図2は、本実施例の遊技盤20の盤面構成を示す説明図である。前述したように遊技盤20は、中枠3の前面側に着脱可能に取り付けられている。図2に示すように、遊技盤20の中央には略円形状の遊技領域21が形成されている。発射装置ユニット261(図3参照)から発射された遊技球は、遊技盤20に対して略垂直に立設された外レール22aと内レール22bとの間の誘導通路23を通って遊技領域21に放出され、遊技領域21の上方から下方に向かって流下する。遊技領域21は、前面枠4の窓部4a(透明板4b)を通して遊技者に視認されるので、当然ながら、遊技領域21を流下する遊技球の様子も窓部4aを通して遊技者が視認可能である。
【0022】
本実施例の遊技盤20および内レール22bは、ポリカーボネートなどの樹脂材料を用いて形成されている。一方、外レール22aは、ステンレス鋼などの金属薄板を湾曲させて形成されている。また、内レール22bの上端には、遊技領域21に一旦放出された遊技球が誘導通路23に戻ってしまうのを防ぐ球戻り防止部材60が設置されている。尚、球戻り防止部材60については別図を用いて後述する。
【0023】
遊技領域21の略中央には中央装置40が設けられており、中央装置40は、演出表示装置41を備えている。演出表示装置41は、液晶表示器によって構成されており、その表示画面上には、演出用の種々の画像を表示することが可能である。例えば、演出用の図柄として3つの装飾図柄41a,41b,41cを表示可能であり、これらの装飾図柄41a,41b,41cが、複数の数字(例えば「1」~「9」の9つの数字)を順番に次々と切り換えて変動表示を実行する。尚、装飾図柄は、数字以外にも、文字、図形、記号等を意匠化した図柄であってもよく、遊技者が種類を識別できる形態であればよい。
【0024】
遊技領域21における中央装置40(演出表示装置41)の右方には、普通図柄作動ゲート27が設けられている。遊技球が普通図柄作動ゲート27を通過すると、内蔵のゲートセンサー27s(図3参照)によって検知されて、下方へと流下していく。
【0025】
遊技領域21における中央装置40(演出表示装置41)の下方には、第1始動口24が設けられている。第1始動口24は、上方に向かって開口しており、遊技球の入球可能性が不変(一定)であって、遊技球が常時入球可能になっている。第1始動口24に入球した遊技球は、通路を通って遊技盤20の裏面側に導かれて、第1始動口センサー24s(図3参照)によって検知される。
【0026】
遊技領域21における第1始動口24の下方には、遊技球の入球可能性が変化可能な第2始動口25が設けられている。本実施例の第2始動口25は、前方に向かって開口していると共に、下端側を軸に上端側を前方に傾けて回動可能な開閉扉26を備えており、開閉扉26が略直立して遊技球が入球不能(または入球困難)な閉鎖状態と、開閉扉26が前方に回動して遊技球が入球可能(または入球容易)な開放状態とに変化可能である。図2では、第2始動口25が開放状態となっている様子が示されている。第2始動口25に入球した遊技球は、通路を通って遊技盤20の裏面側に導かれて、第2始動口センサー25s(図3参照)によって検知される。
【0027】
遊技領域21における第1始動口24の右方には、前方に向かって略長方形状に大きく開口した大入賞口28が設けられている。大入賞口28は、下端側を軸に上端側を前方に傾けて回動可能な開閉扉29を備えており、開閉扉29が略直立して遊技球が入球不能な閉鎖状態と、開閉扉29が前方に回動して遊技球が入球可能な開放状態とに変化可能である。図2では、大入賞口28が開放状態となっている様子が示されている。大入賞口28に入球した遊技球は、通路を通って遊技盤20の裏面側に導かれて、大入賞口センサー28s(図3参照)によって検知される。
【0028】
遊技領域21における第1始動口24の左方には、その他入賞口30が2つ設けられている。その他入賞口30は、上方に向かって開口しており、遊技球の入球可能性に変化がなく、遊技球が常時入球可能である。その他入賞口30に入球した遊技球は、通路を通って遊技盤20の裏面側に導かれて、その他入賞口センサー30s(図3参照)によって検知される。
【0029】
また、上述した各遊技装置の周辺には、遊技球が流下する経路に影響を与える風車型ホイール31や、多数の遊技釘(図2では図示省略)が設けられている。さらに、遊技領域21の最下部には、アウト口33が設けられており、上述した第1始動口24、第2始動口25、大入賞口28、その他入賞口30の何れにも入球しなかった遊技球は、アウト口33から遊技盤20の裏面側に排出される。
【0030】
本実施例のパチンコ機1において、複数の遊技釘の配置などにより、上述した第1始動口24、その他入賞口30には、中央装置40(演出表示装置41)の左方の領域を流下する遊技球が入球可能である。これに対して、普通図柄作動ゲート27、第2始動口25、大入賞口28には、中央装置40(演出表示装置41)の右方の領域を流下する遊技球が通過または入球可能である。以下では、中央装置40の左方の領域を流下させるように遊技球を発射することを「左打ち」とも表現し、中央装置40の右方の領域を流下させるように遊技球を発射することを「右打ち」とも表現する。尚、本実施例のパチンコ機1では、第1始動口24、その他入賞口30の何れかに遊技球が入球した場合は、賞球として3個の遊技球が払い出され、第2始動口25に遊技球が入球した場合は。賞球として1個の遊技球が払い出され、大入賞口28に遊技球が入球した場合は、賞球として13個の遊技球が払い出される。
【0031】
また、本実施例の中央装置40の左側部には、ワープ通路42が設けられている。ワープ通路42の左端は、中央装置40の左方を流下していく遊技球が入球可能に開口しており、ワープ通路42に入球した遊技球は、ワープ通路42を通って、演出表示装置41の下方に設けられたステージ43へと放出される。このステージ43は、前方に向かって下る傾斜が付けられており、ステージ43の下方に第1始動口24が位置している。ワープ通路42によってステージ43に導かれた遊技球は、ステージ43上を転動して第1始動口24の付近に落下する。このため、ワープ通路42を介する経路は、ワープ通路42を介しない経路よりも遊技球が第1始動口24に入球し易くなっている。
【0032】
さらに、遊技盤20における遊技領域21の右下方には、複数のLEDの組み合わせによって遊技に係る情報を表示するセグメント表示部50が設けられている。セグメント表示部50は、前面枠4に設けられた小窓部4c(図1参照)を通して遊技者が視認可能である。
【0033】
A-3.制御回路の構成 :
次に、本実施例のパチンコ機1における制御回路の構成について説明する。図3は、本実施例のパチンコ機1における制御回路の構成を示したブロック図である。図示されているようにパチンコ機1の制御回路は、多くの制御基板や、各種基板などから構成されている。機能に着目して大別すると、遊技の基本的な進行に係る制御を司る主制御基板200と、遊技の演出に係る制御を司るサブ制御基板220と、サブ制御基板220の制御下で画像の表示や音声の出力に係る制御を司る画像音声制御基板230と、サブ制御基板220の制御下でランプの発光に係る制御を司るランプ制御基板226と、遊技球の貸し出しや払い出しに係る制御を司る払出制御基板240と、遊技球の発射に係る制御を司る発射制御基板260などから構成されている。これら制御基板は、各種論理演算および算出演算を実行するCPU(図3におけるCPU201、221、231等)や、CPUで実行される各種プログラムやデータが記憶されているROM(図3におけるROM202、222、232等)、プログラムの実行に際してCPUが一時的なデータを記憶するRAM(図3におけるRAM203、223、233等)、入出力用回路など、種々の周辺LSIがバスで相互に接続されて構成されている。
【0034】
主制御基板200には、第1始動口24へ入球した遊技球を検知する第1始動口センサー24sや、第2始動口25へ入球した遊技球を検知する第2始動口センサー25s、普通図柄作動ゲート27を通過する遊技球を検知するゲートセンサー27s、大入賞口28へ入球した遊技球を検知する大入賞口センサー28s、その他入賞口30へ入球した遊技球を検知するその他入賞口センサー30sなどが接続されている。主制御基板200のCPU201は、第1始動口センサー24sや、第2始動口センサー25s、ゲートセンサー27s、大入賞口センサー28s、その他入賞口センサー30sなどから遊技球の検知信号の入力があると、その検知信号の入力のあったセンサーに対応したコマンドを、サブ制御基板220や、払出制御基板240などに向けて送信する。
【0035】
また、主制御基板200には、第2始動口25の開放状態と閉鎖状態とを切り換え可能な開閉扉26を駆動する始動口ソレノイド26mや、大入賞口28の開放状態と閉鎖状態とを切り換え可能な開閉扉29を駆動する大入賞口ソレノイド29m、セグメント表示部50などが接続されている。主制御基板200のCPU201は、始動口ソレノイド26m、大入賞口ソレノイド29m、セグメント表示部50に駆動信号を送信することにより、これらの動作の制御を行う。
【0036】
サブ制御基板220には、画像音声制御基板230や、ランプ制御基板226、演出操作基板228などが接続されている。サブ制御基板220のCPU221は、主制御基板200からの各種コマンドを受信すると、コマンドの内容を解析して、その内容に応じた遊技演出を行う。すなわち、画像音声制御基板230に対して、表示画像や出力音声を指定するコマンドを送信したり、ランプ制御基板226に対して、上部ランプ5a、右サイドランプ5b、左サイドランプ5c(以下「各種ランプ5a~5c」ともいう)の発光パターンを指定するコマンドを送信したりすることによって、遊技演出を行う。また、サブ制御基板220のCPU221は、演出操作基板228を介して、演出ボタン10aやジョグシャトル10b(以下「演出操作部10a,10b」ともいう)に対する遊技者の操作を検知すると、その操作を反映して遊技演出を行う。
【0037】
画像音声制御基板230は、CPU231、ROM232、RAM233に加えて、VDP234、画像ROM235、音声ROM236を備えている。画像音声制御基板230のCPU231は、サブ制御基板220からコマンドを受信すると、そのコマンドに対応した画像の表示をVDP234に指示する。VDP234は、指示された画像の表示に利用する画像データ(例えば、スプライトデータや動画データなど)を画像ROM235から読み出して画像を生成し、演出表示装置41の表示画面に出力する。また、画像音声制御基板230のCPU231は、サブ制御基板220からコマンドを受信すると、そのコマンドに対応した音声データを音声ROM236から読み出して、音声データの信号をアンプ基板224に送信することにより、上部スピーカー6aおよび下部スピーカー6b(以下「各種スピーカー6a,6b」ともいう)から音声を出力する。
【0038】
払出制御基板240には、上皿部7に設けられた球貸ボタン241(図1では図示省略)や、パチンコ機1に並設されたカードユニット242、払出モーター243などが接続されている。球貸ボタン241が操作されると、その検知信号は、払出制御基板240を介してカードユニット242に伝達される。カードユニット242は、払出制御基板240とデータを通信しながら、払出モーター243を駆動して遊技球の貸し出しを行う。また、払出制御基板240は、主制御基板200から遊技球の払い出しを指示する払出コマンドを受信すると、払出モーター243を駆動して遊技球の払い出しを行う。
【0039】
また、払出制御基板240には発射制御基板260が接続されており、発射制御基板260には発射装置ユニット261が接続されている。発射装置ユニット261は、遊技球を発射するための発射モーター262や、遊技者が発射ハンドル9に触れていることを検知するタッチスイッチ263などを有している。遊技者が発射ハンドル9に触れていることをタッチスイッチ263で検知すると、発射モーター262の作動が可能となり、発射ハンドル9の回転角度に応じた強さで遊技球を発射する。尚、本実施例の発射装置ユニット261は、本発明の「発射装置」に相当している。
【0040】
B.遊技の概要 :
本実施例のパチンコ機1では、次のようにして遊技が進行する。上皿部7に遊技球が貯留された状態で遊技者が発射ハンドル9を回転させると、上皿部7に貯留された遊技球が1個ずつ発射装置ユニット261に供給されて、図2を用いて前述した遊技領域21に向けて発射される。遊技球を打ち出す強さは発射ハンドル9の回転角度に対応するので、遊技者は発射ハンドル9の回転角度を変化させることによって、所望の領域に遊技球を流下させることができる。例えば、中央装置40(演出表示装置41)の左方の領域を流下させるように遊技球を発射したり(左打ちを行ったり)、中央装置40の右方の領域を流下させるように遊技球を発射したり(右打ちを行ったり)することができる。
【0041】
前述したように第1始動口24には、左打ちされた遊技球が入球可能である。遊技球が第1始動口24に入球して、第1始動口センサー24sによって検知されると、所定の判定乱数(大当り判定乱数など)を取得し、その判定乱数の値に基づいて大当りか外れかを判定する大当り判定を行う。そして、大当り判定の結果に基づいて、セグメント表示部50にて第1の特別図柄(以下「第1特図」ともいう)を表す複数の第1特図LEDを点滅させて第1特図を変動表示させた後、LEDを所定の組み合わせで点灯させて第1特図を停止表示させる。このとき、大当り判定の結果が大当りであれば、大当り図柄に対応する組み合わせのLEDを点灯させ、外れであれば、外れ図柄に対応する組み合わせのLEDを点灯させる。
【0042】
また、前述したように第2始動口25には、右打ちされた遊技球が入球可能である。遊技球が第2始動口25に入球して、第2始動口センサー25sによって検知されると、判定乱数を取得して大当り判定を行う。そして、大当り判定の結果に基づいて、セグメント表示部50にて第2の特別図柄(以下「第2特図」ともいう)を表す複数の第2特図LEDを点滅させて第2特図を変動表示させた後、第1特図と同様に、大当り判定の結果に応じた組み合わせでLEDを点灯させて第2特図を停止表示させる。
【0043】
尚、第1始動口24または第2始動口25に遊技球が入球しても、第1特図や第2特図の変動表示中などで新たな変動表示の開始条件が満たされていない場合には、第1始動口24への入球で取得した判定乱数の値を第1特図保留として記憶し、第2始動口25への入球で取得した判定乱数の値を第2特図保留として記憶する。その後、特別図柄(第1特図または第2特図)の新たな変動表示の開始条件が満たされると、第1特図保留または第2特図保留に基づいて大当り判定を行い、対応する特別図柄の変動表示を行う。本実施例のパチンコ機1では、このような第1特図保留および第2特図保留を、それぞれ最大4つまで記憶可能である。また、第1特図保留および第2特図保留の両方が記憶されている場合には、第1特図保留よりも優先して第2特図保留に基づく大当り判定が行われる(第2特図保留を優先消化する)。
【0044】
さらに、特別図柄(第1特図および第2特図)の変動表示と連動して、演出表示装置41では装飾図柄41a,41b,41cが複数の数字(例えば「1」~「9」の9つの数字)を順番に次々と切り換えて変動表示する演出(以下「図柄変動演出」ともいう)が行われる。そして、3つの装飾図柄41a,41b,41cは、特別図柄が外れ図柄で停止表示される場合には、同じ数字で揃わない組み合わせ(バラケ目)で停止表示されるのに対し、特別図柄が大当り図柄で停止表示される場合には、同じ数字で揃った組み合わせ(ゾロ目)で停止表示される。このため、3つの装飾図柄のうち2つが停止表示されたときに同じ数字であると、最後に停止表示される装飾図柄も同じ数字で揃うのではないかと、遊技者は装飾図柄の変動表示(図柄変動演出)を注視することになる。このように2つの装飾図柄が同じ図柄で停止表示された状態で最後の装飾図柄を変動表示させながら行われる演出は「リーチ演出」と呼ばれており、リーチ演出を発生させることで遊技興趣を高めることが可能である。
【0045】
第1特図または第2特図が大当り図柄で停止表示されると、大入賞口28が開放状態となる大当り遊技を実行する。大当り遊技では、開放した大入賞口28を、規定個数(例えば9個)の遊技球が入球するか、あるいは所定の開放時間(例えば30秒)が経過したら閉鎖するラウンド遊技が複数回繰り返される。本実施例のパチンコ機1では、複数の大当り図柄が設けられており、停止表示された大当り図柄の種類によって、大当り遊技で行われるラウンド遊技の回数が異なる(例えば、4回、6回、10回)。前述したように大入賞口28には、右打ちされた遊技球が入球可能であり、大入賞口28に遊技球が入球すると、賞球として13個の遊技球が払い出されることから、ラウンド遊技の回数(ラウンド回数)が多い大当り遊技であるほど、遊技者は多量の賞球を獲得することが可能である。
【0046】
また、前述したように、中央装置40(演出表示装置41)の右方には、普通図柄作動ゲート27が設けられており、右打ちされた遊技球が普通図柄作動ゲート27を通過可能である。普通図柄作動ゲート27を通過する遊技球がゲートセンサー27sによって検知されると、所定の判定乱数(普図当り判定乱数など)を取得し、その判定乱数の値に基づいて普図当りか外れかを判定する普図当り判定を行う。続いて、普図当り判定の結果に基づいて、セグメント表示部50にて普通図柄を表す左右2つの普通図柄LEDを点滅させて普通図柄を変動表示させた後、何れかのLEDを点灯させて普通図柄を停止表示させる。このとき、普図当り判定の結果が普図当りであれば、普図当り図柄に対応する左側のLEDを点灯させ、外れであれば、外れ図柄に対応する右側のLEDを点灯させる。そして、普通図柄が普図当り図柄で停止表示されると、第2始動口25が所定時間だけ開放状態となった後に閉鎖状態へと戻る普図当り遊技を実行する。
【0047】
尚、遊技球が普通図柄作動ゲート27を通過しても、普通図柄の変動表示中などで新たな変動表示の開始条件が満たされていない場合には、取得した判定乱数の値を普図保留として最大4つまで記憶することが可能である。その後、普通図柄の新たな変動表示の開始条件が満たされると、普図保留に基づいて普図当り判定や、普通図柄の変動表示を行う。
【0048】
普図当り遊技における第2始動口25の開放時間は、「電サポ状態」であるか「非電サポ状態」であるかで異なる。電サポ状態では、非電サポ状態よりも第2始動口25の開放時間が長く設定される。また、電サポ状態では、非電サポ状態よりも普図当り判定の結果が普図当りとなる確率(普図当り確率)が高く、且つ、普通図柄の変動時間が短く設定される。従って、電サポ状態では、非電サポ状態に比べて第2始動口25に遊技球が入球する可能性(すなわち、第2特図の変動表示が行われる可能性)が高くなる。
【0049】
本実施例のパチンコ機1では、複数設けられた大当り図柄が「通常当り図柄」と「確変当り図柄」とに大別されており、特別図柄が何れの大当り図柄で停止表示された場合でも、大当り遊技の終了後に電サポ状態が設定される。そして、通常当り図柄で停止表示された場合は、大当り遊技の終了後に、大当り判定の結果が大当りとなる確率(大当り確率)が所定の通常確率(低確率)に設定され、特別図柄の変動回数が予め設定された電サポ回数(例えば100回)に達すると非電サポ状態に設定される。一方、確変当り図柄で停止表示された場合は、大当り遊技の終了後に大当り確率が通常確率よりも高い高確率に設定され、電サポ状態と共に次回の大当り遊技まで継続される。以下では、大当り確率が高確率に設定された状態を「確変状態」と称することがある。また、電サポ状態では、非電サポ状態よりも特別図柄の変動時間が短く設定され易いことから、電サポ状態であって、且つ大当り確率が通常確率に設定された状態を「時短状態」と称することがある。
【0050】
以上のようなパチンコ機1では、釣り糸などの丈夫な糸を取り付けた遊技球(以下、糸付き球)を用いて不正に利益を得る行為(いわゆる糸付き球ゴト)が行われることがある。糸付き球ゴトでは、まず、不正行為者が遊技球に取り付けた糸の端を持って上皿部7に糸付き球を投入し、通常の遊技球と同様に遊技領域21に向けて糸付き球を発射する。そして、上皿部7の外側から糸を引っ張るなどして遊技領域21内で糸付き球を操り、第1始動口24やその他入賞口30などに遊技球が入球する頻度を不正に高めている。
【0051】
例えば、ワープ通路42の入口付近に糸付き球を留め置き、後発の遊技球をワープ通路42に誘導することにより、ワープ通路42を介した経路で第1始動口24に遊技球が入球し易くする。あるいは、後発の遊技球を第1始動口24やその他入賞口30に誘導する位置に糸付き球を留め置くことで、第1始動口24やその他入賞口30に遊技球が入球し易くする。また、第1始動口24やその他入賞口30の近辺で遊技釘と糸付き球との間に遊技球を詰まらせて故意に球詰まり(いわゆるブドウ)を発生させ、遊技球の進路を制限することで第1始動口24やその他入賞口30に遊技球が入球し易くする。さらに、糸付き球を第1始動口24やその他入賞口30に一旦入球させた後、糸付き球を引き戻して繰り返し入球させること(いわゆるリフティング)が行われることもある。本実施例のパチンコ機1では、こうした糸付き球ゴトを阻止するために、球戻り防止部材60で以下のような対策を講じている。
【0052】
C.球戻り防止部材の構成 :
図4は、本実施例の球戻り防止部材60の構成を示した斜視図である。前述したように球戻り防止部材60は、内レール22bの上端に設置されるものであり、図では、誘導通路23側から球戻り防止部材60を見た状態を斜視図で表している。まず、図4(a)には、球戻り防止部材60を分解した状態が示されている。図示されるように球戻り防止部材60は、内レール22bの上端に固定される固定部61と、固定部61に回動可能に支持される可動板62とを備えている。本実施例の固定部61および可動板62は、樹脂材料で形成されている。
【0053】
可動板62の下部には、回動軸63が挿通される軸挿通孔62aが形成されている。また、可動板62における軸挿通孔62aの下方には、円柱形状の錘64が挿通される錘挿通孔62bが形成されており、図4(a)では、錘挿通孔62bに錘64が既に挿通されて装着された状態が示されている。軸挿通孔62aおよび錘挿通孔62bは略平行に形成されており、遊技盤20に対して略垂直に配置される。
【0054】
固定部61には、可動板62の下部(軸挿通孔62aおよび錘挿通孔62bが形成された部分)を収容可能な収容凹部61aが、誘導通路23と対向する側面に形成されている。この収容凹部61aの前後の壁には、回動軸63を支える支持部61bが形成されており、前壁の支持部61bは貫通しているのに対して、後壁の支持部61bは貫通しておらず凹みが設けられている。
【0055】
球戻り防止部材60を組み立てる際には、固定部61の収容凹部61aに可動板62の下部を収容した状態で、固定部61の支持部61bと可動板62の軸挿通孔62aとの位置を合わせて回動軸63を前方から後方に挿通する。図4(b)には、球戻り防止部材60を組み立てた状態が示されており、可動板62は、遊技盤20に略垂直な回動軸63を中心に所定の角度範囲で回動可能に軸支されている。
【0056】
また、本実施例の球戻り防止部材60には、糸切プレート65が取り付けられる。図4(a)に示されるように本実施例の糸切プレート65は、ステンレス鋼などの金属薄板を折り曲げて形成されており、固定部61における誘導通路23と対向する側面の収容凹部61aより下方を覆う側面板65aと、固定部61の前面の支持部61bより下方を覆う前面板65bとを有している。
【0057】
そして、糸切プレート65の前面板65bから手前側に切り起こして略矩形の糸切刃65cが形成されている。糸切刃65cは、底辺部が前面板65bと繋がっており、前面板65bと糸切刃65cとの間には、上方に開放した切り込みが設けられている。図4(b)に示されるように糸切プレート65は、前面板65bがビス66を用いて固定部61の前面に締結される。
【0058】
図5は、本実施例の球戻り防止部材60が設置された内レール22bの上端の周辺を拡大して示した正面図である。図示されるように球戻り防止部材60は、固定部61が内レール22bの湾曲に合わせて傾けた状態で遊技盤20に固定されている。前述したように可動板62は、回動軸63を中心に回動可能に軸支されており、可動板62の下部に装着された錘64によって、図5(a)の略直立した状態に付勢されている。この可動板62が略直立した状態で、可動板62の先端(上端)と外レール22aとの間隔は、遊技球の直径よりも狭くなっている。
【0059】
発射装置ユニット261から発射された遊技球は、円弧状の誘導通路23(外レール22aと内レール22bとの間)を通って遊技領域21に向かう際に、遠心力を受けて外レール22aに沿って転動する。そして、可動板62は、外レール22aに沿って転動する遊技球に押し倒されることで回動し、図5(b)に示されるように遊技領域21側(図中の右側)に傾倒した状態となる。このとき、可動板62の先端と外レール22aとの間隔は、遊技球の直径よりも広くなるため、遊技球の通過を許容する。
【0060】
こうして遊技球が遊技領域21に放出された後は、錘64の付勢によって可動板62が起き上がり、図5(a)の略直立した状態に復帰するため、遊技領域21から誘導通路23に遊技球が戻るのを阻止する。尚、可動板62は、下端が収容凹部61aの内壁に当接することで、図5(a)の略直立した状態よりも誘導通路23側(図中の左側)に倒れないように角度範囲が制限されている。
【0061】
図6は、糸付き球ゴトが行われる様子を示した説明図である。図6では、図5と同様に、球戻り防止部材60が設置された内レール22bの上端の周辺を拡大して表している。前述したように糸付き球ゴトは、不正行為者が遊技球に取り付けた糸の端を持って上皿部7に糸付き球を投入し、通常の遊技球と同様に糸付き球を遊技領域21に向けて発射することで行われる。そして、糸付き球が遊技領域21に放出されると、糸付き球の軌跡に沿って上皿部7から発射装置ユニット261を通って誘導通路23に糸が引き回され、糸付き球が遊技領域21を流下するのに伴い、図6(a)の例では可動板62の先端に糸が掛かっている。
【0062】
本実施例の球戻り防止部材60では、可動板62の先端(上端)が水平ではなく、前方に向かって下方に傾斜している(後述の図7(b)参照)。そのため、遊技領域21に放出された糸付き球を不正行為者が糸を引っ張って操ろうとすると、糸が可動板62の先端の傾斜を下って球戻り防止部材60の前面へと移動する。前述したように球戻り防止部材60の前面には、糸切プレート65の前面板65bと糸切刃65cとの間に、上方に開放した切り込みが設けられており、図6(b)に示されるように糸付き球の糸が切り込みに挟まって引っ掛かることにより、不正行為者が糸を引っ張っても遊技領域21内で糸付き球を操ることができず、強く引っ張り過ぎると糸が切れるので、糸付き球ゴトを妨げることが可能である。
【0063】
但し、球戻り防止部材60の可動板62は、円滑な回動を可能とするために、遊技盤20の表面(盤面)から離しておく必要があり、糸付き球の糸が可動板62と遊技盤20の盤面との間隙を通り抜けることによって、糸付き球ゴトが可能となってしまう。そこで、本実施例の球戻り防止部材60では、糸付き球の糸が可動板62の後方を通った場合でも糸付き球ゴトを阻止するために、以下のような構成を採用している。
【0064】
図7は、本実施例の球戻り防止部材60における遊技盤20と対向する後面の構成を示した説明図である。まず、図7(a)には、遊技盤20に固定される前の球戻り防止部材60を遊技盤20側から見た状態が斜視図で示されている。図示されるように本実施例の球戻り防止部材60における固定部61の後面は、平坦ではなく、遊技盤20に向かって下方に傾斜した切削面61cが上部に形成されている。
【0065】
図7(b)には、遊技盤20に固定された球戻り防止部材60を遊技領域21側の側方から見た状態が示されており、図では、ガラス板などの透明板4bおよび遊技盤20を垂直な平面で手前側から奥側に切断した断面を表している。図示されるように内レール22bの上端に設置された球戻り防止部材60の固定部61は、遊技盤20に対向する後面が遊技盤20の盤面と接した状態で固定されており、上述した切削面61cを有することによって、固定部61と遊技盤20の盤面との間にスリット67が形成されている。
【0066】
部分的に拡大して示したようにスリット67は、上方に開放しており、可動板62と遊技盤20の盤面との間隙よりも幅が狭くなっていると共に、下方に向かって幅が狭くなっている。また、可動板62における遊技盤20に対向した後面は、遊技盤20の盤面と平行ではなく、スリット67に向かって下る傾斜が付けられており、糸付き球の糸が可動板62の後方(図中の右側)を通ると、傾斜に沿って糸がスリット67に誘導される。
【0067】
このような構成によれば、糸付き球の糸が可動板62と遊技盤20の盤面との間隙を通り抜けた場合でも、不正行為者が糸を引っ張って遊技領域21内で糸付き球を操るうちに、糸がスリット67に挟まって引っ掛かることにより、糸を引っ張っても糸付き球を操ることができなくなるか、強く引っ張り過ぎると糸が切れるので、糸付き球ゴトを妨げることが可能となる。
【0068】
また、前述したように可動板62の先端が前方に向かって下方に傾斜していると共に、固定部61の前面に糸切プレート65の前面板65bと糸切刃65cとの間の切り込みが設けられており、糸付き球の糸が可動板62の前方(図中の左側)を通ると、糸が切り込みに挟まって引っ掛かることにより、糸付き球ゴトを妨げることができる。
【0069】
以上に説明したように本実施例のパチンコ機1では、内レール22bの上端に球戻り防止部材60が設置されており、この球戻り防止部材60の固定部61と遊技盤20の盤面との間には、上方に開放してスリット67が設けられ、可動板62と遊技盤20の盤面との間隙よりもスリット67の幅が狭くなっている。このようにすれば、糸付き球の糸が可動板62と遊技盤20の盤面との間隙を通り抜けたとしても、不正行為者が糸を引っ張って糸付き球を操ろうとすると、糸がスリット67に挟まることで引っ掛かったり切れたりするので、糸付き球ゴトの実行を困難にすることが可能となる。
【0070】
また、本実施例のパチンコ機1では、球戻り防止部材60の可動板62における遊技盤20に対向した後面に、スリット67に向かって下る傾斜が付けられている。このようにすれば、糸付き球の糸が可動板62の後面の傾斜に沿ってスリット67に導かれて挟まれ易くなることから、糸付き球ゴトを妨げる効果を高めることができる。
【0071】
さらに、本実施例のパチンコ機1では、球戻り防止部材60の固定部61の前面に、糸切プレート65の前面板65bと糸切刃65cとの間の切り込みが設けられている。これにより、糸付き球の糸が可動板62の後方(遊技盤20側)を通れば、スリット67に挟まり、糸が可動板62の前方(透明板4b側)を通れば、糸切プレート65の切り込み挟まることになるため、糸付き球ゴトの実行を一層困難にすることが可能となる。
【0072】
D.変形例 :
以上、本実施例のパチンコ機1について説明したが、実施態様はこれに限られるわけではなく、次のような変形例の態様で実施することも可能である。尚、変形例の説明にあたっては、上述した実施例と同様の構成部分については、実施例と同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0073】
上述した実施例のパチンコ機1では、固定部61の後面の上部に切削面61cを有することにより、固定部61と遊技盤20の盤面との間にスリット67が形成されるようになっていた。しかし、スリット67を設ける態様は、これに限られず、以下のようにしてもよい。
【0074】
図8は、変形例の球戻り防止部材60の固定部61と遊技盤20の盤面との間に形成されるスリット67を示した説明図である。図では、内レール22bの上端を遊技領域21側の側方から見た状態を表しており、透明板4bの図示を省略している。まず、図8(a)には、変形例の球戻り防止部材60を内レール22bの上端に設置する前の状態が示されている。図示されるように変形例の球戻り防止部材60における固定部61の後面は、平坦になっている。
【0075】
一方、遊技盤20の盤面には、固定部61を固定するための台座70が前方(図中の左側)に突出して設けられている。この台座70は、樹脂製の遊技盤20と一体に形成されていてもよいし、樹脂製の内レール22bと一体に形成されて遊技盤20に取り付けることとしてもよい。そして、台座70における固定部61と対向する前面は、平坦ではなく、固定部61に向かって下方に傾斜した切削面70aが上部に形成されている。
【0076】
図8(b)には、変形例の球戻り防止部材60を内レール22bの上端に設置した状態が示されている。図示されるように固定部61は、後面が台座70の前面に接した状態で固定されており、台座70の前面に切削面70aを有しているため、固定部61の後面と台座70の切削面70aとによってスリット67が形成される。
【0077】
部分的に拡大して示したように変形例のスリット67においても、前述した実施例と同様に、上方に開放しており、可動板62と遊技盤20の盤面との間隙よりも幅が狭くなっていると共に、下方に向かって幅が狭くなっている。このため、糸付き球の糸が可動板62と遊技盤20の盤面との間隙を通り抜けたとしても、糸がスリット67に挟まって引っ掛かることにより、糸付き球ゴトを妨げることができる。
【0078】
以上、本発明の実施例および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
【0079】
例えば、前述した実施例では、球戻り防止部材60の固定部61が遊技盤20とは別体になっていた。しかし、固定部61と遊技盤20とが樹脂材料で一体に形成されていてもよい。この場合は、遊技盤20の盤面から前方に突出した固定部61の付け根に上方から切り込みを入れることによって、スリット67を設けてもよい。
【0080】
また、前述した実施例では、可動板62の先端が前方に向かって下方に傾斜していた。しかし、これとは逆に、可動板62の先端が後方(遊技盤20側)に向かって下方に傾斜していてもよい。この場合、糸付き球の糸が可動板62の先端に掛かった状態(図6(a)参照)で、不正行為者が糸を引っ張って糸付き球を操ろうとすると、糸が可動板62の先端の傾斜を下って可動板62の後方へと移動し、スリット67に糸が挟まって引っ掛かることにより、糸付き球ゴトを妨げることができる。
【0081】
<上述した実施例および変形例から抽出できる遊技機A1~A3>
上述した実施例および変形例のパチンコ機1は、次のような遊技機A1~A3として捉えることができる。
【0082】
<遊技機A1>
遊技盤に形成された遊技領域に遊技球を発射することによって遊技を行う遊技機において、
前記遊技球を発射する発射装置と、
前記遊技盤の盤面から前方に突出した内レールと外レールとの間に形成され、前記発射装置から発射された前記遊技球を前記遊技領域へと導く誘導通路と、
前記内レールの上端に設置され、前記遊技領域に放出された前記遊技球が前記誘導通路に戻るのを防ぐ球戻り防止部材と
を備え、
前記球戻り防止部材は、前記内レールの上端に固定された固定部と、前記遊技盤の盤面と間隙を設けた状態で該遊技盤に略垂直な回動軸で回動可能に前記固定部によって支持された可動板とを有しており、
前記可動板は、前記発射装置から発射された前記遊技球に押し倒されることで該遊技球の通過を許容すると共に、起き上がった状態に復帰することで前記遊技領域から前記誘導通路に前記遊技球が戻るのを阻止し、
前記固定部と前記遊技盤の盤面との間には、前記間隙よりも幅が狭いスリットが上方に開放して設けられている
ことを特徴とする遊技機。
【0083】
このような遊技機A1では、糸付き球の糸が可動板と遊技盤の盤面との間隙を通り抜けたとしても、不正行為者が糸を引っ張って遊技領域内で糸付き球を操ろうとすると、糸がスリットに挟まることで引っ掛かったり切れたりするので、糸付き球ゴトの実行を困難にすることが可能となる。
【0084】
<遊技機A2>
遊技機A1において、
前記可動板における前記遊技盤に対向した後面には、前記スリットに向かって下る傾斜が付いている
ことを特徴とする遊技機。
【0085】
このような遊技機A2では、糸付き球の糸が可動板の後面の傾斜に沿ってスリットに導かれて挟まれ易くなることから、糸付き球ゴトを妨げる効果を高めることができる。
【0086】
<遊技機A3>
遊技機A1または遊技機A2において、
前記球戻り防止部材における前記遊技盤とは反対側に、上方に開放した切り込みが設けられている
ことを特徴とする遊技機。
【0087】
このような遊技機A3では、糸付き球の糸が可動板の後方(遊技盤側)を通れば、スリットに挟まるのに加えて、糸が可動板の前方(遊技盤とは反対側)を通れば、切り込みに挟まることになるため、糸付き球ゴトの実行を一層困難にすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、遊技ホールで用いられる遊技機に利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1…パチンコ機(遊技機)、 4…前面枠、 4a…窓部、
4b…透明板、 7…上皿部、 8…下皿部、
9…発射ハンドル、 20…遊技盤、 21…遊技領域、
22a…外レール、 22b…内レール、 23…誘導通路、
24…第1始動口、 25…第2始動口、 27…普通図柄作動ゲート、
28…大入賞口、 30…その他入賞口、 60…球戻り防止部材、
61…固定部、 61a…収容凹部、 61b…支持部、
61c…切削面、 62…可動板、 62a…軸挿通孔、
62b…錘挿通孔、 63…回動軸、 64…錘、
65…糸切プレート、 65a…側面板、 65b…前面板、
65c…糸切刃、 66…ビス、 67…スリット、
70…台座、 70a…切削面、 261…発射装置ユニット、
262…発射モーター。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8