(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067490
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】パネルの固定構造
(51)【国際特許分類】
B62D 37/02 20060101AFI20240510BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B62D37/02 A
F16B5/06 Q
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177616
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】大澤 道紀
(72)【発明者】
【氏名】西尾 直樹
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GA06
3J001HA02
3J001HA07
3J001JB12
3J001KA19
3J001KB01
(57)【要約】
【課題】正しい向きとは逆向きの連結部材が2枚のパネルに取り付けられることを防止できるパネルの固定構造を提供する。
【解決手段】車両を構成する第一パネルおよび第二パネルと、前記第一パネルと前記第二パネルを固定している連結部材と、を備え、前記連結部材は、前記第一パネルおよび前記第二パネルの互いに重なる領域に設けられた貫通孔に挿通された本体部と、前記本体部の第一端部に前記第一パネルの前記貫通孔の周辺に当接するように設けられたフランジ部と、前記本体部の途中の一面からのみ突出して前記第二パネルの前記貫通孔の周辺に係合するように設けられた係合部と、前記本体部の第二端部に前記係合部が突出する方向と共通する方向に向かって湾曲するように設けられた湾曲部と、を有し、前記フランジ部が前記本体部から最も突出している箇所は、前記係合部が突出する方向と共通するた方向に突出している、パネルの固定構造。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を構成する第一パネルおよび第二パネルと、
前記第一パネルと前記第二パネルを固定している連結部材と、を備え、
前記連結部材は、
前記第一パネルおよび前記第二パネルの互いに重なる領域に設けられた貫通孔に挿通された本体部と、
前記本体部の第一端部に前記第一パネルの前記貫通孔の周辺に当接するように設けられたフランジ部と、
前記本体部の途中の一面からのみ突出して前記第二パネルの前記貫通孔の周辺に係合するように設けられた係合部と、
前記本体部の第二端部に前記係合部が突出する方向と共通する方向に向かって湾曲するように設けられた湾曲部と、を有し、
前記フランジ部が前記本体部から最も突出している箇所は、前記係合部が突出する方向と共通する方向に突出している、
パネルの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパネルが連結部材によって固定されたパネルの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の車両のスポイラー取付構造は、バンパーとスポイラーと連結部材とを備える。バンパーは、車体の前部の下部に設けられている。スポイラーは、バンパーの下部に部分的に重複するように配置されている。連結部材は、パンパーとスポイラーとを固定している。
【0003】
パンバーは、前後に貫通する開口部を有する。スポイラーは、第一取付部と第二取付部とボス部とを有する。第一取付部は、スポイラーの上端から後方に突出するように設けられている。第一取付部は、上記開口部に前方から後方に向かって挿通されている。第一取付部における上記開口部よりも後端には、上下に貫通する組付孔が設けられている。第二取付部は、スポイラーの下端から上方に向かって突出するように設けられている。ボス部は、第二取付部の上端に設けられている。ボス部は、筒状に形成されている。ボス部は、第一取付部と開口部との間に後方から前方に向かって差し込まれている。ボス部の後面は、組付孔よりも前方に位置している。
【0004】
連結部材は、本体部と爪部と第1頭部と第2頭部とを備える。本体部は、組付孔の内部に配置されている。本体部の前面は、ボス部の後面に接している。爪部は、組付孔から本体部が抜けることを規制する。爪部は、本体部の途中から左右の両方向に突出するように設けられている。爪部は、第一取付部の上面に係合している。第1頭部は、組付孔から本体部が抜けることを規制する。第1頭部は、本体部の下端から後方に向かって突出するように設けられている。第1頭部は、第一取付部の下面に当て止めされている。第2頭部は、第一取付部と開口部との間からボス部が抜けることを規制する。第2頭部は、第1頭部の前端から下方に向かって突出するように設けられている。第2頭部は、ボス部の後面に接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
連結部材の爪部は、例えば第1頭部が突出する方向と同一方向に向かって突出するように設けられている場合がある。例えば作業者のミスによって前後が逆向きの連結部材、即ち第1頭部および爪部が前方に向いた連結部材が組付孔に差し込まれるおそれがある。逆向きの連結部材が組付孔に差し込まれると、バンパーまたはスポイラーを交換する際、連結部材を組付孔から抜くことが難しくなる。前方に突出した爪部はボス部の後面に向かい合う。爪部とボス部の後面との間の隙間が小さいと、爪部を押すための工具を差し込むスペースが無い。よって、爪部と第一取付部との係合状態を解除することが難しくなる。
【0007】
本発明の目的の一つは、正しい向きとは逆向きの連結部材が2枚のパネルに取り付けられることを防止できるパネルの固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るパネルの固定構造は、
車両を構成する第一パネルおよび第二パネルと、
前記第一パネルと前記第二パネルを固定している連結部材と、を備え、
前記連結部材は、
前記第一パネルおよび前記第二パネルの互いに重なる領域に設けられた貫通孔に挿通された本体部と、
前記本体部の第一端部に前記第一パネルの前記貫通孔の周辺に当接するように設けられたフランジ部と、
前記本体部の途中の一面からのみ突出して前記第二パネルの前記貫通孔の周辺に係合するように設けられた係合部と、
前記本体部の第二端部に前記係合部が突出する方向と共通する方向に向かって湾曲するように設けられた湾曲部と、を有し、
前記フランジ部が前記本体部から最も突出している箇所は、前記係合部が突出する方向と共通する方向に突出している。
【発明の効果】
【0009】
上記パネルの固定構造では、第一パネルと第二パネルとを固定している連結部材に備わるフランジ部および係合部は正しい方向である第一方向に向いている。詳しくは後述するものの、上記パネルの固定構造は次のようにして製造される。第一方向にフランジ部が向けられた連結部材を貫通孔の軸線に対して第一方向に向かって所定の角度に傾ける。傾けた連結部材の湾曲部が貫通孔の内部に差し込まれた状態で、傾けた連結部材の本体部が上記軸線に沿うようにフランジ部を第一方向とは逆の第二方向に向かって回動させながら連結部材を上記軸線に沿って移動させる。上記移動によって、湾曲部および係合部を順に貫通孔の内部を通過させる。
【0010】
例えば、作業者のミスによって、第一方向とは逆の第二方向にフランジ部が向けられた連結部材を上記軸線に対して第二方向に向かって傾けて、湾曲部を貫通孔の内部に差し込もうすることが考えられる。しかし、連結部材が上記フランジ部と上記湾曲部とを備えることによって、傾けた連結部材のフランジ部の本体部から最も突出している箇所が第一パネルと第二パネルの互いに重なる領域以外の領域に干渉し、湾曲部が貫通孔の内面に干渉する。そのため、第二方向にフランジ部が向けられた連結部材を上記軸線に対して第二方向に向かって上記所定の角度に傾けることができない。よって、正しい向きとは逆向きの連結部材の湾曲部が貫通孔の内部を通過することを機械的に防止できる。つまり、正しい向きとは逆向きの連結部材が第一パネルおよび第二パネルに取り付けられることを防止できる。
【0011】
上記フランジ部と上記湾曲部とを備えることによって逆向きの連結部材が第一パネルおよび第二パネルに取り付けられることを防止できるため、連結部材の正しい向きを分かり易くするためにフランジ部の突出長さを長くしたりする必要がない。また、例えば湾曲部を備えていない連結部材は、本体部を傾けることなく上記軸線に沿わせた状態で貫通孔の内部に差し込まれる。それに対して、湾曲部を備える連結部材は、上述のように回動させて貫通孔の内部に差し込まれる。そのため、連結部材の本体部に沿った長さが一定であれば、湾曲部を備えていない連結部材に比較して、湾曲部を備える連結部材の方が作業スペースが小さくても差し込み作業が行い易い。作業スペースとは、上記重なる領域において第一パネルが面する空間をいう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態のパネルの固定構造を備える車両の前方斜視図である。
【
図3】
図3は、正しい向きの連結部材が第一貫通孔および第二貫通孔に差し込まれる過程を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、前後が逆向きの連結部材を第一貫通孔および第二貫通孔に差し込むことができないことを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のパネルの固定構造の実施形態を
図1から
図4を参照しつつ以下に説明する。
図2は、
図1のII-II切断線で車両100の第一パネル2と第二パネル3とを切断した状態を示す。
図2では、説明の便宜上、連結部材4の断面ではなく側面を示す。この点は、
図3および
図4でも同様である。図中の同一符号は同一名称物を示す。図中の「UP」は車両100の上方、「LWR」は下方、「FR」は前方、「RR」は後方を示す。以下の説明の「上」、「下」、「前」、および「後」のそれぞれは、車両100の「上方」、「下方」、「前方」、および「後方」のそれぞれに対応している。
【0014】
《実施形態》
〔パネルの固定構造〕
実施形態のパネルの固定構造1は、
図2に示されるように第一パネル2と第二パネル3と連結部材4とを備える。第一パネル2および第二パネル3は、互いに重なる領域に設けられた貫通孔を有する。貫通孔は、第一パネル2に設けられた第一貫通孔25と第二パネル3に設けられた第二貫通孔35とを有する。連結部材4は、上記貫通孔、即ち第一貫通孔25および第二貫通孔35に差し込まれることで、第一パネル2と第二パネル3とを固定している。実施形態のパネルの固定構造1の特徴の一つは、連結部材4が特定のフランジ部42および湾曲部44を有する点にある。
【0015】
[第一パネル]
本実施形態の第一パネル2は、
図1に示されるように車両100のフロントバンパーである。第一パネル2はフロントバンパーに限定されない。第一パネル2は、
図2に示されるように第一領域21と第一突片22とを有する。本実施形態の第一パネル2は、第一領域21と第一突片22とが一体の樹脂成形体である。本実施形態とは異なり、第一パネル2は、第一領域21と第一突片22とが一連の金属板であってもよい。
【0016】
第一領域21は、車両100の前方に配置されている。第一領域21は、ほぼ上下に延びる板状に構成されている。第一領域21は、詳しくは後述するものの、
図4に示される軸線L1と仮想線L2との間の最大角度θmaxが
図3に示される軸線L1と仮想線L2との間の角度θ1未満となる位置に設けられている。
【0017】
第一突片22は、第一領域21に交差するように第一領域21から第一方向に向かって突出している。本実施形態の第一方向は後方である。本実施形態の第一突片22は、第一領域21の下端から後方に向かって突出する板片状に構成されている。第一突片22は、第一突片22の外面のうち後述する第二突片32と向かい合う面である表面と、表面とは反対側の面である裏面とを有する。本実施形態の第一突片22の表面は下面23であり、裏面は上面24である。第一突片22は下面23と上面24とを貫通する第一貫通孔25を有する。本実施形態の第一貫通孔25の輪郭形状は矩形状である。第一貫通孔25の後方に沿った長さは、湾曲部44の後方に沿った長さLcよりも小さい。即ち、後述する仮想線L2が軸線L1に沿ったまま湾曲部44を第一貫通孔25および第二貫通孔35の内部に差し込むことはできない。
【0018】
第一パネル2の第一突片22よりも後方には、詳しくは後述するものの、
図3に示される軸線L1と仮想線L2との間の角度θ1の範囲内に連結部材4を傾けることを阻害する領域が設けられていない。
【0019】
[第二パネル]
本実施形態の第二パネル3は、
図1に示されるように車両100のフロントスポイラーである。第二パネル3はフロントスポイラーに限定されない。フロントスポイラーはフロントバンパーの下方に配置されている。第二パネル3は、
図2に示されるように第二領域31と第二突片32とを有する。本実施形態の第二パネル3は、第二領域31と第二突片32とが一体の樹脂成形体である。本実施形態とは異なり、第二パネル3は、第二領域31と第二突片32とが一連の金属板であってもよい。
【0020】
第二領域31は、車両100の前方に配置されている。第二領域31は、第一領域21の下方に配置されている。第二領域31は、ほぼ上下に延びる板状に構成されている。
【0021】
第二突片32は、第二領域31に交差するように第二領域31から後方に向かって突出している。即ち、第二突片32は、第一突片22が突出する方向と同一方向に向かって突出している。本実施形態の第二突片32は、第二領域31の上端から後方に向かって突出する板状に構成されている。第二突片32は、第二突片32の外面のうち第一突片22と向かい合う面である表面と、表面とは反対側の面である裏面とを有する。本実施形態の第二突片32の表面は上面33であり、裏面は下面34である。第二突片32は上面33と下面34とを貫通する第二貫通孔35を有する。本実施形態では第二突片32の上面33と第一突片22の下面23とが接している。第二貫通孔35が第一貫通孔25に臨む位置となるように、第一突片22が第二突片32に重なっている。本実施形態の第二貫通孔35の輪郭形状は、第一貫通孔25と同じ矩形状である。第二貫通孔35の後方に沿った長さは、第一貫通孔25と同じであり、湾曲部44の後方に沿った長さLcよりも小さい。
【0022】
[連結部材]
連結部材4は、本体部41とフランジ部42と係合部43と湾曲部44とを有する。本実施形態の連結部材4は、後述する突起45を更に有している。本実施形態とは異なり、連結部材4は突起45を有していなくてもよい。本実施形態の連結部材4は、本体部41とフランジ部42と係合部43と湾曲部44と突起45とが一体の樹脂成形体である。
【0023】
(本体部)
本体部41は、第一貫通孔25および第二貫通孔35に差し込まれている。本実施形態の本体部41は、矩形状の板片で構成されている。
【0024】
(フランジ部)
フランジ部42は、第一貫通孔25および第二貫通孔35から本体部41が抜けることを規制する。フランジ部42は、連結部材4を第一貫通孔25および第二貫通孔35に差し込む際、連結部材4の向きの目印でもある。フランジ部42は、本体部41の第一端部に第一貫通孔25の周辺に当接されるように設けられている。本実施形態の本体部41の第一端部は上端であり、第一貫通孔25の周辺は上面24である。フランジ部42が上面24に当接されることによって、第一貫通孔25および第二貫通孔35から本体部41が下方に抜けることが規制される。本実施形態のフランジ部42は、板片状に構成されている。
【0025】
フランジ部42は、本体部41の上端から少なくとも後方に向かって突出している箇所を有する。本実施形態のフランジ部42は、本体部41の上端から後方以外の方向である前方、左方、および右方の各々にも突出する箇所を更に有する。フランジ部42における本体部41から最も突出している箇所は、後述する係合部43が突出する方向と共通する方向に突出する箇所である。本実施形態の上記共通する方向は後方である。即ち、フランジ部42における本体部41から後方に突出している箇所の突出方向に沿った長さは、後方以外の方向に突出している箇所の各々の突出方向に沿った長さよりも長い。フランジ部42における本体部41から最も突出している箇所の突出方向が連結部材4の正しい向きである。
【0026】
(係合部)
係合部43は、第一貫通孔25および第二貫通孔35から本体部41が抜けることを規制する。係合部43は、本体部41の途中の一面にのみ設けられている。本実施形態の上記一面は後面である。上記一面にのみ係合部43が設けられていることで、連結部材4を第一貫通孔25および第二貫通孔35に差し込む際、係合部43も連結部材4の向きの目印とすることができる。係合部43は、本体部41の後面からのみ突出している。係合部43は、第二貫通孔35の周辺に係合するように設けられている。本実施形態の第二貫通孔35の周辺は下面34である。
【0027】
本実施形態の係合部43は、押圧されていない非負荷時に本体部41の途中から後方に向かって突出した突出位置と、押圧された負荷時に本体部41の内部に収納された収納位置と、の範囲内で本体部41に対して出没自在な爪状に構成されている。突出位置の係合部43は、第二突片32の下面34に引っ掛かるように設けられている。本実施形態の突出位置の係合部43は、第一貫通孔25および第二貫通孔35から本体部41が上方に抜けることを規制している。収納位置の係合部43は、第一貫通孔25および第二貫通孔35に本体部41を挿通させるように設けられている。
【0028】
本実施形態の係合部43の上端部は本体部41の側面にほぼ直交する平面を備え、下端部は湾曲部44からフランジ部42に向かうほど本体部41からの突出量が大きくなる傾斜面を備える。上記傾斜面を備えることで、係合部43を第一貫通孔25および第二貫通孔35に通し易い。係合部43が第二貫通孔35を通れば、上記平面が第二突片32の下面34に向き合うことで本体部41が上方に抜けることが阻止される。
【0029】
(湾曲部)
湾曲部44は、詳しくは後述するものの、
図4に示されるように正しい向きとは逆向きの連結部材4を第一貫通孔25および第二貫通孔35に差し込むことを不可能にする。湾曲部44は、
図2に示されるように、本体部41の第二端部に設けられている。本実施形態の本体部41の第二端部は下端である。即ち、湾曲部44は、本体部41における係合部43よりも下方に設けられている。湾曲部44は、係合部43が突出する方向と共通する方向、即ち後方に向かって湾曲している。湾曲部44の曲げ半径は、詳しくは後述するものの、
図4に示される軸線L1と仮想線L2との間の最大角度θmaxが
図3に示される軸線L1と仮想線L2との間の角度θ1未満となる長さの範囲で適宜選択できる。
【0030】
本実施形態とは異なり、湾曲部44を備えていない連結部材4は、傾けることなく本体部41を軸線L1に沿わせた状態で第一貫通孔25および第二貫通孔35の内部に差し込まれる。それに対して、本実施形態のように湾曲部44を備える連結部材4は、詳しくは後述するように回動させて第一貫通孔25および第二貫通孔35の内部に差し込まれる。そのため、湾曲部44を備える連結部材4は、湾曲部44を備えていない連結部材4に比較して、連結部材4の本体部41に沿った長さが一定であれば、作業スペースが小さくても第一貫通孔25および第二貫通孔35への差し込み作業が行い易い。作業スペースとは、第一突片22が面する空間、即ち第一突片22の上方の空間をいう。
【0031】
本実施形態では湾曲部44の先端には、湾曲部44の内側に向かって突出するフック部441を有する。フック部441は、
図3に示されるように正しい向きの連結部材4を第一貫通孔25および第二貫通孔35に差し込む際、仮に作業者の手から連結部材4が離れたとしても、第一貫通孔25の内面または第二貫通孔35の内面に引っ掛かることで連結部材4が第一突片22から脱落することを抑制できる。
【0032】
(突起)
突起45は、連結部材4を第一貫通孔25および第二貫通孔35に差し込む際に作業者に掴まれる把手である。突起45は、詳しくは後述するものの、
図4に示されるように逆向きの連結部材4を第一貫通孔25および二貫通孔に差し込む際、連結部材4を第一領域21に干渉させ易くする。突起45は、
図2に示されるように、フランジ部42の後端から上方に突出するように設けられている。前後方向に沿った鉛直面を切断面とする突起45の断面形状はL字状である。突起45の縦片は、フランジ部42の後端から上方に延びている。突起45の横片は、縦片の上端から後方に向かって延びている。
【0033】
[正しい向きの連結部材]
図3を参照して、正しい向きの連結部材4を第一貫通孔25および第二貫通孔35に差し込む過程を説明する。正しい向きとは、本実施形態ではフランジ部42が後方に向くことをいう。
【0034】
連結部材4が湾曲部44を備えるため、湾曲部44の先端を第一貫通孔25内に差し込むことができるように、フランジ部42が後方に向いた連結部材4を第一貫通孔25の軸線L1に対して後方に傾ける。実線で示されるように、本体部41を後方に傾けた状態で、第一突片22の上方から第一貫通孔25の内部および第二貫通孔35の内部に順に湾曲部44を差し込む。種々の要因にもよるが、例えば、後方に傾いた連結部材4の本体部41に沿った仮想線L2と第一貫通孔25の軸線L1との間の角度θ1は、30°以上50°以下、更には35°以上45°以下、特に40°以上45°以下である。上記種々の要因とは、例えば、第一領域21の位置、本体部41の長さ、フランジ部42の突出長さ、突起45の形成箇所、突起45の形状、突起45の突出長さ、および湾曲部44の曲げ半径である。
【0035】
二点鎖線で示されるように、仮想線L2が軸線L1に近づくようにフランジ部42を前方に回動させつつ連結部材4を下方へ移動させることで、湾曲部44の先端が第二貫通孔35から下方に抜ける。フランジ部42の前方への回動および連結部材4の下方への移動によって、係合部43が第一貫通孔25の開口縁に接することで係合部43に開口縁から押圧力が作用すると、図示は省略されているものの、突出位置の係合部43は収納位置に移動する。
【0036】
図示は省略されているものの、仮想線L2が軸線L1に沿うまでフランジ部42を前方へ回動させると共に連結部材4を下方へ移動させる。係合部43は第一貫通孔25の内部および第二貫通孔35の内部の順に移動する。第一貫通孔25および第二貫通孔35の内部では第一貫通孔25の内面からの押圧力および第二貫通孔35の内面からの押圧力が作用するため、係合部43は収納位置に維持されている。
【0037】
係合部43が第二貫通孔35から下方に抜けるまで連結部材4を下方へ移動させる。係合部43が第二貫通孔35から抜けると第二貫通孔35の内面からの押圧力が作用しなくなるため、収納位置の係合部43は突出位置に移動する。
図2に示されるように、フランジ部42と係合部43とによって、第一突片22と第二突片32とが挟まれる。フランジ部42は連結部材4が第一貫通孔25および第二貫通孔35から下方へ抜けることを規制し、係合部43は連結部材4が第一貫通孔25および第二貫通孔35から上方へ抜けることを規制する。連結部材4によって、第一突片22と第二突片32とが固定される。
【0038】
[逆向きの連結部材]
図4を参照して、
図3に示される連結部材4とは前後が逆向きの連結部材4を第一貫通孔25および第二貫通孔35に差し込むことができないことを説明する。前後が逆向きとは、本実施形態ではフランジ部42が前方を向くことをいう。
【0039】
連結部材4が湾曲部44を備えるため、湾曲部44の先端を第一貫通孔25内に差し込むために、フランジ部42が前方に向いた連結部材4を第一貫通孔25の軸線L1に対して前方に傾ける。第一突片22よりも前方には第一領域21が配置されている。そのため、前方に傾けた連結部材4の本体部41に沿った仮想線L2と第一貫通孔25の軸線L1との間の最大角度θmaxは、連結部材4のフランジ部42および突起45の少なくとも一方と第一領域21とが接触する位置における仮想線L2と軸線L1との間の角度である。本実施形態では最大角度θmaxは、上述した角度θ1未満である。最大角度θmaxとなるように前方へ傾けた連結部材4の湾曲部44を第一貫通孔25内に差し込むと、湾曲部44が第一貫通孔25の内面に干渉する。湾曲部44と第一貫通孔25の内面との干渉によって、湾曲部44が第一貫通孔25および第二貫通孔35の内部を通過することができない。したがって、逆向きの連結部材4が第一パネル2および第二パネル3とに取り付けられることが防止される。
【0040】
本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0041】
例えば、パネルの固定構造は、第一パネルと第二パネルの他に1枚以上の別パネルを更に備えていてもよい。別パネルの各々は、第一パネルの第一突片と第二パネルの第二突片との間に配置される突片を備える。上記突片の各々は、第一貫通孔および第二貫通孔に臨む貫通孔を有する。
【符号の説明】
【0042】
1 パネルの固定構造
2 第一パネル
21 第一領域
22 第一突片
23 下面
24 上面
25 第一貫通孔
3 第二パネル
31 第二領域
32 第二突片
33 上面
34 下面
35 第二貫通孔
4 連結部材
41 本体部
42 フランジ部
43 係合部
44 湾曲部
441 フック部
45 突起
100 車両
L1 軸線
L2 仮想線
Lc 長さ
θ1 角度
θmax 最大角度