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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006750
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】フィルム及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240110BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
B32B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107932
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野中 有紀
(72)【発明者】
【氏名】山口 祐貴泰
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
4F071AA15
4F071AA29
4F071AA46
4F071AF20
4F071AH04
4F071AH12
4F071AH19
4F071BB06
4F071BB13
4F071BC01
4F071BC08
4F071BC12
4F100AT00B
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DD04A
4F100DD05A
4F100JB13A
4F100JB14A
4F100JB16A
4F100JK02A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】フィルムの材料に関わらず良好な伸長性を有し、かつ、取扱いやすさの向上として直進カット性も有するフィルム及び積層体を提供する。
【解決手段】表裏面ともに1方向に延在した凹凸形状を有したフィルムは、前記凹凸形状は凸部と凹部が繰り返し配列された形状をしており、前記裏面は前記表面の凹凸形状に追従した凹凸形状を有しており、前記凹部と前記凸部とが配列された方向に引っ張った際の10%引張荷重が4N/15mm以下であり、前記フィルムのカット性は異方性を有し、JIS K 7128-1で測定されるトラウザー試験に従って30mmの引き裂き範囲において測定される、前記凹部と前記凸部とが配列された方向の最大値が、前記凹部と前記凸部とが配列されない方向の最大値の1.5倍よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏面ともに1方向に延在した凹凸形状を有したフィルムであって、前記凹凸形状は凸部と凹部が繰り返し配列された形状をしており、前記裏面は前記表面の凹凸形状に追従した凹凸形状を有しており、
前記凹部と前記凸部とが配列された方向に引っ張った際の10%引張荷重が4N/15mm以下であり、
前記フィルムのカット性は異方性を有し、JIS K 7128-1で測定されるトラウザー試験に従って30mmの引き裂き範囲において測定される、前記凹部と前記凸部とが配列された方向の最大値が、前記凹部と前記凸部とが配列されない方向の最大値の1.5倍よりも大きい、
ことを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記フィルムの平均厚さが10μm以上、100μm以下であり、前記凹部と前記凸部との高低差がフィルムの平均厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルムの材料が熱又はUV光により硬化する硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂から構成されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の前記フィルムを基材として機能層と積層させてなる積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチックフィルムは、軽量である、化学的に安定である、加工がしやすい、柔軟で強度がある、大量生産が可能、などの性質がある。このため、プラスチックフィルムは、様々なものに利用されている。プラスチックフィルムの用途としては、例えば、食料品や医薬品等を包装する包装材や、点滴パック、買い物袋、ポスター、テープ等に利用される基材、液晶テレビ等に利用される光学フィルム、保護フィルム、窓に貼合するウィンドウフィルム、ビニールハウス、建装材等々、多岐にわたる。このような用途に対し、用途に応じて適正なプラスチック材料が選択される。更にプラスチックフィルムを複数種類重ね、積層体とすることもなされている。
【0003】
テープとしては、マスキングテープ、クラフトテープ、セロハンテープ、養生テープ、ビニールテープなど様々な用途で使用される。その基材として求められる性能としては、耐水性、耐溶剤性、耐久性、耐候性、耐熱性、耐寒性、難燃性、防食性など多岐にわたる。さらには、易カット性や対象物への追従性など、使いやすさの面でも要求される特性が多く、特許文献1や特許文献2をはじめとして、種々の素材を用いたテープにおいて相反する性能と特性を両立させるために様々な検討がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5511042号号公報
【特許文献2】特開2020-29626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、紙だけを基材にした場合、長時間の貼り置きなどにより水分を含み被着体の腐食が発生する問題がある。そこで、紙基材に樹脂を熱溶着させるなどの工夫がされているが、それにより作製工程が煩雑化するという課題が残る。また、耐久性などの面から基材フィルムの材料として塩化ビニル樹脂が使用されることが多いが、環境対応として脱塩素が求められており代替品を使用することが求められている。さらに、これらのテープ基材に用いられるフィルムは、全方向に高伸縮性を有するがゆえに直進カットのような易カット性がないため、ハサミ等の補助器具も同時に使用する必要があり、簡便な取り扱いが困難であるなどの課題が残る。
【0006】
本発明は、フィルムの材料にかかわらず良好な伸長性を有し、かつ、取扱いやすさを向上させる直進カット性も有するフィルム及び積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、代表的な本発明のフィルムの一つは、
表裏面ともに1方向に延在した凹凸形状を有したフィルムであって、前記凹凸形状は凸部と凹部が繰り返し配列された形状をしており、前記裏面は前記表面の凹凸形状に追従した凹凸形状を有しており、
前記凹部と前記凸部とが配列された方向に引っ張った際の10%引張荷重が4N/15mm以下であり、
前記フィルムのカット性は異方性を有し、JIS K 7128-1で測定されるトラウザー試験に従って30mmの引き裂き範囲において測定される、前記凹部と前記凸部とが配列された方向の最大値が、前記凹部と前記凸部とが配列されない方向の最大値の1.5倍よりも大きいことにより達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィルムの材料に関わらず、良好な伸長性を有し、かつ、取扱いやすさを向上させる直進カット性も有するフィルム及び積層体を提供することができる。すなわち本発明によれば、凹凸形状によって良好な伸長性が付与され、さらにはフィルムのカット性の異方性を発現することで1方向への易カット性を向上することが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態のフィルムにおける一例を示す断面模式図である。
図3図3は、本実施形態のフィルムにおける断面形状を変更した一例を示す断面模式図である。
図4図4は、本実施形態のフィルムにおける断面形状を変更した一例を示す断面模式図である。
図5図5は、本実施形態のフィルムにおける断面形状を変更した一例を示す断面模式図である。
図6図6は、本実施形態のフィルムにおける断面形状を変更した一例を示す断面模式図である。
図7図7は、本実施形態のフィルムにおける断面形状を変更した一例を示す断面模式図である。
図8図8は、本実施形態のフィルムにおける断面形状を変更した一例を示す断面模式図である。
図9図9は、本実施形態のフィルムにおける断面形状を変更した一例を示す断面模式図である。
図10図10は、本実施形態のフィルムにおける一区画内での1方向に延在した凹凸形状例を示した俯瞰模式図である。
図11図11は、本実施形態のフィルムにおける一区画内での別の1方向に延在した凹凸形状例を示した俯瞰模式図である。
図12図12は、本実施形態のフィルムにおける隣接する二区画内で、それぞれ異なる1方向に延在した凹凸形状例を示した俯瞰模式図である。
図13図13は、本発明に関わる実施形態のフィルムにおける、フィルム厚さ・凹凸形状の高低差・凹凸形状の間隔を説明する断面模式図である。
図14図14は、本発明に関わる別の実施形態のフィルムにおける、フィルム厚さ・凹凸形状の高低差・凹凸形状の間隔を説明する断面模式図である。
図15図15は、本実施形態の積層体の例を示す断面模式図である。
図16】X方向引張荷重とY方向引張荷重とを付与したときのフィルムのひずみと荷重との関係を示すグラフである。
図17図17は、本発明に関わる実施例のフィルムの引裂き挙動(ストロークに対する引張荷重)例を示すグラフである。
図18図18は、比較例1のフィルムの伸び挙動(ストロークに対する引張荷重)例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、各図は模式的に示した図であり、各部の大きさや形状等は理解を容易にするために適宜誇張して示している。また、説明を簡単にするため、各図の対応する部位には同じ符号を付している。
ここで、フィルム1を平面に載置したときに、平面に沿って凹凸が並んだ方向をX方向とし、X方向に直交し平面に沿った方向をY方向とし、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。
【0011】
本実施形態のフィルム1は、図1に示すように、層全体が厚さ方向にうねった形状(側方から見て蛇行した形状)に構成されることで、X方向に沿って凹部2bと凸部2aを繰り返す凹凸形状2を有する。凹凸形状2は図1の奥行き方向(Y方向)に延在しており、裏面は表面の凹凸形状に追従した凹凸形状を有している。凹凸形状2がうねった形状を形成するために、凹部2bと凸部2aとの高低差Hがフィルム1の凸部の厚さt1や底部の厚さt2よりも大きくなるように形成されているのが好ましい(図13,14参照)。このような凹凸形状2を有することで、凹部2bと凸部2aとが配列された方向(X方向)に引っ張ることで構造が歪み変形することが可能になるため、通常は伸びにくい材料であっても伸張性を有するようになる。また、適宜その凹凸形状2の形状を設計することで伸長の度合いを調整することができる。図16に、X方向引張荷重とY方向引張荷重とを付与したときのフィルムのひずみと荷重との関係を示す。
【0012】
本実施形態のフィルム1を凹部2bと凸部2aとが配列された方向(X方向)に引っ張った時の10%引張荷重は、4N/15mm以下となっている。10%引張荷重が4N/15mmを超えると、伸長性が不十分で、凹凸がある面への追従性が発揮されないなどのテープ基材としての装用感が著しく低下したものとなる。なお、10%引張荷重があまりに小さくなりすぎる場合は、意図しない力加減でもフィルム1が伸縮してしまう懸念があることから、10%引張荷重が0.4N/15mm以上、4N/15mm以下の範囲に入るように設計するのが好ましい。本発明における10%引張荷重の測定方法は、JIS K 7127 「プラスチック―引張特性の試験方法」の試験条件に準拠し、サンプル幅は15mm、チャック間距離は50mm、引張速度は100mm/minにおいて、ゼロの状態からフィルムが破断するまで引っ張り力を付与しつつ、フィルム1が10%伸びた際の引張荷重(N)を求めることで実施した。4N/15mm以下とは、このときの引張荷重が4N以下であることを意味する。
【0013】
本実施形態のフィルム1のカット性は異方性を有しており、凹凸形状2の存在によって、凹部2bと凸部2aとが配列された方向(X方向)と、凹部2bと凸部2aとが配列されていない方向(Y方向)とで異なるカット挙動を示す。カット性の異方性とは、フィルムの一方向における引き裂き抵抗(引き裂き荷重の変化)と、一方向に交差する他方向における引き裂き抵抗とが異なることをいう。
【0014】
すなわち、フィルム1を凹部2bと凸部2aとが配列されていない方向(Y方向)に沿ってカットする(スリットを入れたフィルム1の縁を、スリットを挟んで2か所で把持し、フィルムの面法線方向の逆方向に相対的に移動させる)場合、凹凸形状2の断面のうち最も鋭角(または最小角)な角部θ(図13参照)に引き裂き時の応力が集中する。このため、引き裂こうとする方向に角部θが延在していることから、角部θを伝って引き裂かれやすく、安定した荷重で引き裂かれ、かつ直進性のある(横に反れない)カットが可能となる。このため、図17のグラフBに示すように、引き裂き荷重はほぼ一定となる。
【0015】
一方、凹部2bと凸部2aとが配列された方向(X方向)に沿ってカットする場合、応力が集中しやすい箇所が存在せず、さらには所々で凹凸形状の変形が発生することから、トラウザー試験にて均一な値にならず、図17のグラフAに示すように、引き裂き荷重は周期的に変化し、カットに直進性を有さない。なお、このような特性を有すると、カット抵抗が周期的に変化するため、カットが所望の位置を通り過ぎることが抑制される。
【0016】
ちなみに、凹凸形状を有しない均厚な平板状のフィルムである比較例1(後述)においては、面に沿った任意の方向をX方向とし、面に沿ってX方向に直交する方向をY方向としたときに、図18に示すように、X方向に引き裂いたときの荷重と、Y方向に引き裂いたときの荷重とがほぼ等しくなる。すなわちカット性は等方性を有する。
【0017】
フィルム1は、JIS K 7128-1で測定されるトラウザー試験に従って30mmの引き裂き範囲において、凹部2bと凸部2aとが配列された方向(X方向)の最大値が、凹部2bと凸部2aとが配列されていない方向(Y方向)の最大値に対し、1.5倍よりも大きいことを特徴としている。
【0018】
カットする方向をX方向とY方向とで変えたときに、引き裂き強度の最大値が1.5倍より大きい差を有していることによって、凹部2bと凸部2aとが配列されていない方向(Y方向)に引き裂いている最中に、凹部2bと凸部2aとが配列された方向(X方向)に引き裂きの向きが変わろうとする力が働いた際に、凹部2bと凸部2aとが配列された方向(X方向)の引き裂き強度が大きいことがエネルギー的な壁となり、凹部2bと凸部2aとが配列された方向(X方向)に引き裂きの向きがずれることを抑制できる。
【0019】
なお、凹部2bと凸部2aとが配列された方向(X方向)の最大値が、凹部2bと凸部2aとが配列されていない方向(Y方向)の最大値の1.5倍以下となる場合、フィルムの仕様によっては引き裂き方向の向きがずれそうになったときに、エネルギー的な壁が低いため、引き裂き方向の向きがずれやすく、良好な直進カット性を発揮できないおそれがある。このため、凹部2bと凸部2aとが配列された方向(X方向)の最大値が、凹部2bと凸部2aとが配列されていない方向(Y方向)の最大値の1.5倍より大きいことが望ましい。
【0020】
(フィルム1の凹凸形状)
本実施形態のフィルム1の凹凸形状は、図2~9に示すように厚さ方向の断面図において、直線や曲線を種々組み合わせた形状であり、本実施形態のフィルム全面で同一パターンでも良いし、異なるパターンを組み合わせても良い。なお、図2図9の形状パターンは例であり、これらの形状に限定するものではない。
【0021】
図2図6は、凸部2aの頂部および凹部2bの底部が共に断面平坦形状である場合を例示している。
【0022】
図3図7は、凸部2aの頂部が断面平坦形状であり、凹部2bの底部が断面V字形状である場合を例示している。
【0023】
図4図8は、凸部2aの頂部が断面V字状に尖った形状であり、凹部2bの底部が断面平坦形状断面である場合を例示している。
【0024】
また、凹凸形状2は、図5図9に示すように、凸部2aの頂部および凹部2bの底部が、それぞれ層厚方向に断面V字形状に尖った形状となっており、例えば、凹凸形状2が断面鋸刃状に形成されていても良い。
【0025】
図6図9は、断面において面の向きが変更される境界である稜線部(断面V字形状の部分を除く)の角を丸めた形状とした例である。
【0026】
なお、角部への応力集中が直進カット性を発揮する要因となっていることから、角部θは尖っている形状の方が好ましい。また、角部θの角度は鋭角に近いほど好ましい。
【0027】
図10、11に示すように、フィルムは、一区画内で1方向に延在した凹凸形状を有していてもよいし、図12に示すように、隣接する二区画内で、それぞれ異なる1方向に延在した凹凸形状を有していてもよい。なお、図中、符号2aは、凸部の頂部を代表して示している。
【0028】
(フィルム1の厚さ及び凹凸部の高さ等)
フィルム1の厚さは、10μm以上、50μm以下であると好ましい。
フィルム1の厚さは、必ずしも均一である必要はない。凹凸形状加工後のフィルムにあっては、凸部2a位置での厚さt1と、凹部2b位置での厚さt2は一致していなくても良い。本実施形態のフィルム1の厚さは、凸部2a位置での厚さt1の5箇所と、凹部2b位置での厚さt2の5箇所の厚さ測定をした平均値(平均厚さ)で表されるものである(図12図13参照)。
【0029】
凹凸形状2の凹部2bと凸部2aの高低差Hは、15μm以上、200μm以下の範囲であると良い。凹部2bと凸部2aの高低差Hが15μm未満の場合には、歪み変形の調整が難しく、また凹部2bと凸部2aとが配列されていない方向への引き裂き時に、何らかの拍子で角部θから引き裂き線が逸れたときに容易に凹凸を乗り越えてしまいやすくなることから直進カット性が低下する懸念がある。一方、200μmを超える場合には、製造上、凹凸形状2をつけることが難しくなるおそれがある。より好ましくは、高低差Hが30μm以上、150μm以下の範囲内であるとより良い。また高低差Hは、フィルム1の凸部の厚さt1や凹部の厚さt2よりも大きいことが好ましい。
【0030】
凹凸形状2は凹部2bと凸部2aが規則的に並んでいる周期的構造であると好ましい。周期的な構造することで、意図した伸び性を得やすいと同時に、凹凸形状2の設計や製作を簡便にすることができる。但し、非周期的な凹凸形状2や部分的に凹凸形状2の幅を変更することは任意である。
【0031】
(フィルム1の層構成)
本実施形態のフィルム1は複数層から構成されて積層体を構成していても良い。フィルム1が複数層から構成される場合、各層が同一の材料から構成されていても良いし、互いに異なる材料から構成されていても良い。
【0032】
本実施形態のフィルム1は必ずしも単層構成である必要はなく複数の層から構成されるほか、図15のように、本実施形態の基材であるフィルム1の一方の面に機能層など何かしらの層3を積層して積層体を構成しても良い。かかる積層体を用いて、テープや貼付剤を形成できる。機能層とは、例えば、ハードコート層、伸縮補助層、導電層、熱伝導層、バリア層、印刷層、粘着層などが挙げられる。
【0033】
(フィルム1の材料)
本実施形態のフィルム1を構成する材料としては、熱やUV光等による硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。硬化性樹脂としては例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、熱可塑性樹脂としては例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、エチレン酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸、環状ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及び、これらの誘導体等が挙げられる。ただし、これらの材料は特に限定されるものではなく、さらにこれらの材料は単独で用いられても良いし、これらのうちの複数の材料が組み合わされて用いられても良い。
【0034】
(フィルム1の製造方法)
本実施形態のフィルム1の製造方法については、例えば、熱プレスによる製造方法や、押出成形による製造方法等、各種の方法を適宜選択して用いることが可能である。
【0035】
熱プレスによる製造方法では、元となる平坦に製膜したフィルムを、表面に凹凸形状を設けた一対の加熱ロール間、又は、一対の加熱した平板状のプレス機に通すことで、凹凸形状を設けたフィルム1を製造することが可能である。この際、一対の加熱ロール間、又は一対の平板が有する上下の凹形状と凸形状との精密な位置合わせを行い、熱プレス後のフィルム1の表面と裏面が、連続的な凹凸形状となっていることが重要となる。
【0036】
さらに、熱プレスによる別の製造方法では、離形性を有する複数のフラットフィルムを重ね、又は、離形性を有する複数の層を保持するフラットフィルムを、凹凸形状を設けた加熱ロール間、又は、加熱した平板状のプレス機に通すことで、凹凸形状を付与することが可能である。この際、プレスの深さやプレス圧を調整することによって、フラットフィルムの表面及び層界面に所望の凹凸形状が付与され、冷却後に凹凸形状を付与した複数の層のフィルムを剥離することにより、フィルム1を製造することが可能である。
【0037】
押出成形による製造方法では、樹脂を加熱溶融してTダイから押し出し、フィルム化するための冷却工程において、凹凸形状が設けられた冷却ロール及びニップロールを用いて、ニップ圧力を付加しながら冷却することで、フィルム1の表面と裏面に連続的な凹凸形状を設けることが可能である。押出成形による製造方法においても、冷却ロールとニップロールが有する凹凸形状との精密な位置合わせが必要になる。
【0038】
さらに、押出成形による別の製造方法では、複数の押出機を使用し、複数種類の樹脂を、フィードブロック法、又はマルチマニホールド法により共押出することで、フィルム1を片側表面に配置した、2層以上の多層構成のフィルムを得ることが可能である。この際、フィルム化するための冷却工程において、フィルム1を配置した面に、凹凸形状に対応する凹凸が表面に設けられた冷却ロールを用いて、ニップ圧力を付加しながら冷却することで、凹凸形状を形成することが可能である。この時、冷却ロールと接するフィルム1の厚さに対し、凹凸形状の高低差が大きいときには、フィルム1の冷却ロールと反対面の界面にも同様に凹凸形状が付加されるため、冷却後に凹凸形状を付与したフィルム1を多層フィルムから剥離することにより、断面がうねった形状のフィルム1を得ることが可能である。
【0039】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例0040】
以下に、本発明に基づく実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
フィルム1の材料として、株式会社ベルポリエステルプロダクツ製のポリエチレンテレフタレート(PET)である、EFG70を選択した。また、フィルム1と共押出する樹脂の材料として、日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(LDPE)である、ノバテックLD LC600Aを選択した。そして、選択した二種類の樹脂を用いて、押出成形により共押出を行い、その後、フィルム化するための冷却工程において、凹凸形状が設けられた冷却ロールを用いてニップ圧力を付加しながら冷却した。その後、共押出した低密度ポリエチレン層を剥離することで、フィルムの表面と裏面に連続的な凹凸形状を設けたフィルム1を作製した。
【0042】
作製したフィルム1の平均厚さは15μmとし、凹凸形状2の高低差は60μmの台形凹凸形状とした。また、凹凸形状2の最も鋭角な角部θの角度は120°、角部の丸みR(角部をY方向に見たときの断面を顕微鏡で拡大観察し、その表側(径が大きい側)面を円弧で近似)は10μmとした。
【0043】
(実施例2~5,比較例1~5)
実施例2~5,比較例2~4は、フィルム平均厚さ、凹凸形状の高低差、最も鋭角な角部θの角度、角部の丸みRをそれぞれ、表1、表2のように変更し、それ以外は実施例1と同様とした。比較例1は凹凸形状2を設けていないフラット形状(フィルム厚さは均一)とし、それ以外は実施例1と同様とした。
【0044】
(実施例6~8,比較例6~8)
実施例6~8,比較例5~7は、フィルム1の材料を変更した。実施例6、比較例5はフィルムの材料を三菱ケミカル株式会社製のエチレン-ビニルアルコール共重合(EVOH)樹脂「ソアノールD2908」を用い、実施例7、比較例6はフィルムの材料をポリプラスチックス株式会社製の環状オレフィン・コポリマー(COC)樹脂「8007F-600」を用い、実施例8、比較例7はフィルムの材料を株式会社プライムポリマー製のポリプロピレン(PP)樹脂「プライムポリプロF-300SP」を用いた。また、フィルム厚さ、凹凸形状の高低差、最も鋭角な角部θの角度、角部の丸みRをそれぞれ、表1、表2のように変更し、それ以外は実施例1と同様とした。
【0045】
(形状パラメータの計測方法)
各実施例及び比較例における、フィルム1の凸部の厚t1と凹部の厚さt2、高低差の計測には、オリンパス株式会社製光学顕微鏡(BX51)を用いて実施した。
【0046】
(10%引張荷重評価方法)
各実施例及び比較例における、フィルム1の10%引張荷重を評価するため、フィルム1の凹凸形状2に対して凹部2bと凸部2aとが配列された方向への引張試験評価を実施した。引張試験評価は、JIS K 7127に準拠し、株式会社エー・アンド・デイ製テンシロン万能材料試験機(RTC‐1250A)を用いて実施した。サンプル幅は15mm、チャック間距離は50mm、引張速度は100mm/minにおいて、ゼロの状態からフィルムが破断するまで引っ張り力を付与しつつ、フィルム1が10%伸びた際の引張荷重を求めた。
また、フィルム1についてテープ基材を想定した引っ張り感を3人のメンバーで官能評価し、全員引っ張り感が良好と感じたものを「○」、それ以外は「×」判定とした。
【0047】
(異方向カット性評価方法)
各実施例及び比較例における、フィルム1の異方向カット性を評価するため、フィルム1の凹凸形状2に対して凹部2bと凸部2aとが配列された方向とそれを90°回転させた方向について、トラウザー試験評価を実施した。
トラウザー試験評価は、JIS K 7128-1に準拠し、株式会社エー・アンド・デイ製テンシロン万能材料試験機(RTC‐1250A)を用いて実施した。150×50mmの試験片長方向に75mmの切込みを入れたサンプルを、チャック間距離50mm、引裂速200mm/minにおいて、フィルムが完全に引裂かれるまでの引き裂き荷重を測定した。フィルムが完全に引き裂かれるまでの途中30mmの範囲における引き裂き強度の最大値を抽出し、凹部2bと凸部2aとが配列された方向の最大値を、凹部2bと凸部2aとが配列されていない方向の最大値で割った比率を算出した。
【0048】
また、トラウザー試験後のサンプルの引き裂き直進性を確認するために、トラウザー試験前のサンプル切り込みの延長線上に対して、トラウザー試験開始後30mm長さ地点で引き裂き箇所がどの程度逸れているかを定規で測定した。逸れている長さが2mm以下の場合「○」、それ以外を「×」として直進カット性を評価した。
【0049】
各実施例及び比較例における条件、及び評価結果の一覧表を表1、表2に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
(評価結果)
表1~2の実施例、比較例の評価結果から、作製したフィルム1のフィルム厚さ、凹凸形状の高低差、最も鋭角な角部θの角度、角部の丸みRを調整することで10%引張荷重が4N/15mm以下、かつトラウザー試験に従い測定された値の最大値の比率1.5倍よりも大きいサンプルにおいて、適度な引っ張り感と、直進カット性を両立することができていることがわかる。また、この結果はフィルム1の材料が異なっても同様であった。
【0053】
一方で、比較例1のように凹凸形状を有していない場合、及び10%引張荷重やトラウザー試験に従い測定された測定値の最大値の比率が規定範囲に入っていないフィルムでは、引っ張り感と直進カット性を両立することはできていない。
【0054】
本明細書は、以下の発明の開示を含む。
(発明A)
表裏面ともに1方向に延在した凹凸形状を有したフィルムであって、前記凹凸形状は凸部と凹部が繰り返し配列された形状をしており、前記裏面は前記表面の凹凸形状に追従した凹凸形状を有しており、
前記凹部と前記凸部とが配列された方向に引っ張った際の10%引張荷重が4N/15mm以下であり、
前記フィルムのカット性は異方性を有し、JIS K 7128-1で測定されるトラウザー試験に従って30mmの引き裂き範囲において測定される、前記凹部と前記凸部とが配列された方向の最大値が、前記凹部と前記凸部とが配列されない方向の最大値の1.5倍よりも大きい、
ことを特徴とするフィルム。
【0055】
(発明B)
前記フィルムの平均厚さが10μm以上、100μm以下であり、前記凹部と前記凸部との高低差がフィルムの平均厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【0056】
(発明C)
前記フィルムの材料が熱又はUV光により硬化する硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂から構成されることを特徴とする発明A又はBにおけるフィルム。
【0057】
(発明D)
発明A~Cのいずれかにおける前記フィルムを基材として機能層と積層させてなる積層体。
【符号の説明】
【0058】
1 フィルム
2 凹凸形状
2a 凸部
2b 凹部
3 機能層
H 高低差
t1 凸部の厚さ
t2 凹部の厚さ
θ 最も鋭角な角部
図1
図2
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