(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067503
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】橋梁
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20240510BHJP
E01D 2/02 20060101ALI20240510BHJP
E01D 18/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D2/02
E01D18/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177638
(22)【出願日】2022-11-04
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000133294
【氏名又は名称】株式会社ダイクレ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓之
(72)【発明者】
【氏名】赤城 寿哉
(72)【発明者】
【氏名】長谷 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】波多野 改都
(72)【発明者】
【氏名】旗見 栄明
(72)【発明者】
【氏名】土岡 秀和
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA07
2D059AA13
2D059BB01
2D059BB03
(57)【要約】
【課題】洪水に強く、歩行し易い橋梁を提供する。
【解決手段】橋梁10は、橋梁の長手方向に延びる主桁11と、主桁11上に載置されるグレーチング部材21と、グレーチング部材21を上方から覆う床板31とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の長手方向に延びる主桁と、
前記主桁上に載置されるグレーチング部材と、
前記グレーチング部材を上方から覆う床板とを備える、橋梁。
【請求項2】
前記床板は前記グレーチング部材から所定の間隔を空けて配置される、請求項1に記載の橋梁。
【請求項3】
前記グレーチング部材と前記床板の間に介在し、橋梁の幅方向および/または長手方向に間隔を空けて配列される複数本のスペーサをさらに備える、請求項2に記載の橋梁。
【請求項4】
前記スペーサは、井桁状に配列される角材である、請求項3に記載の橋梁。
【請求項5】
橋梁の幅方向端に設けられ、上端側を前記床板に接続され、下端側に向かうほど橋梁の幅方向外側へ突出するよう傾斜する傾斜部材をさらに備える、請求項1~4のいずれかに記載の橋梁。
【請求項6】
前記傾斜部材は、橋梁の幅方向外側から前記主桁を覆う板材である、請求項5に記載の橋梁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水面上に架橋される橋梁に関する。
【背景技術】
【0002】
河川等の水面上に架橋される橋梁として従来、例えば特開2013-096096号公報(特許文献1)に記載のものが知られている。特許文献1記載の構造では、逆U字断面を有する形鋼を、隙間を伴って敷き並べて、橋梁の床版とする。津波襲来時には水が隙間を抜けるので、橋梁の流失を阻止することができるというものである。
【0003】
またオープングレーチング床版とも称される鋼製格子状床版として従来、例えば特開2005-248664号公報(特許文献2)に記載のものが知られている。特許文献2記載の構造では、橋梁の桁に相当するH形鋼製の梁(高さ300mm)の上に、下層オープングレーチング床版(高さ150mm)を敷設する。さらに下層オープングレーチング床版の上に、上層オープングレーチング床版(高さ44mm)を敷設する。下層オープングレーチング床版は、I形鋼の主部材と、主部材のウェブに空けられた円形孔に通される鋼管を有する。特許文献2記載の構造によれば、鋼管の外周に沿って1パスで回し溶接することで、鋼管をI形鋼の主部材に溶接することができ、製造効率およびコスト上有利であるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-096096号公報
【特許文献2】特開2005-248664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のような橋梁の床版にあっては、さらなる改善の余地がある。第1に、床版に設けられる隙間が大きかったり、床版表面の凹凸が大きすぎたりすることから、歩行に適さず、歩行者が転倒して怪我をする恐れがある。
【0006】
第2に、特殊な断面形状の形鋼を敷き並べたり、鋼製格子状床版を2重に敷設したりすることから、橋梁の建設に時間を要したり、建設コストが大きくなってしまう。
【0007】
昨今、ゲリラ豪雨や大型台風の来襲頻度が多くなる等、異常気象が年々顕著になっている。これに伴って、長年に亘って使用されてきた橋梁の破損、流出が社会問題になっている。このため、速やかに復旧することができる橋梁が望まれる。
【0008】
本発明は、上述の実情に鑑み、従来よりも簡易に建設することができ、洪水で橋梁全体が流出することがなく、歩行者が歩き易いよう歩行機能に優れ、しかもコスト上有利な橋梁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため本発明による橋梁は、橋梁の長手方向に延びる主桁と、主桁上に載置されるグレーチング部材と、グレーチング部材を上方から覆う床板とを備える。
【0010】
かかる本発明によれば、グレーチング部材を床板で覆うことから、歩行者の足がグレーチング部材に直接触れることがなく、歩き易くなる。また床版がグレーチング部材および床板を含むことから、コスト上有利である。
【0011】
本発明の一局面として、床板はグレーチング部材から所定の間隔を空けて配置される。かかる局面によれば、グレーチング部材が有する網目が床板で塞がれないことから、水がグレーチング部材を透過することができる。したがって橋梁が洪水の巨大な水圧を受けて床板が流失しても、グレーチング部材は流失を免れることができ、洪水被害直後でも最低限の歩行機能が確保される。他の局面として床板は、グレーチング部材の上に直接敷設されてもよい。
【0012】
床板とグレーチング部材の間隔は、様々な手段で確認され、構造を特に限定されない。本発明の好ましい局面として、グレーチング部材と床板の間に介在し、橋梁の幅方向および/または長手方向に間隔を空けて配列される複数本のスペーサをさらに備える。かかる局面によれば、スペーサによって床板とグレーチング部材の所定間隔を確保することができる。
【0013】
スペーサは特に限定されない。スペーサは例えば丸太等の木材である。本発明のさらに好ましい局面としてスペーサは、井桁状に配列される角材である。かかる局面によれば、スペーサの横材および縦材が井桁状に配列されることから、隣り合う横材同士間に空間(スペース)が確保され、隣り合う縦材同士間に空間が確保される。他の局面として、スペーサは横材のみ、あるいは縦材のみ、あるいは、橋幅方向に対して斜めに延びる木材であってもよい。
【0014】
本発明の一局面として、橋梁の幅方向端に設けられ、上端側を床板に接続され、下端側に向かうほど橋梁の幅方向外側へ突出するよう傾斜する傾斜部材をさらに備える。かかる局面によれば、洪水時の河川で流木等の障害物が流されて来ても、障害物は傾斜部材を乗り越えて流下する。したがって障害物が橋梁に引っかかる不都合が解消する。好ましい局面として傾斜部材は、橋梁の幅方向外側から主桁を覆う板材である。かかる局面によれば、グレーチング部材の橋幅方向外側から板材で覆われ、橋梁の美観が向上する。
【発明の効果】
【0015】
このように本発明によれば、簡易に建設することができ、洪水で橋梁全体が流出することがなく、洪水の被害を被っても最低限の歩行機能が確保され、コスト上有利な橋梁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】同実施形態の床板よりも下方の構造を示す平面図である。
【
図6】グレーチング部材とスペーサの連結構造を示す拡大図である。
【
図7】グレーチング部材とスペーサの連結構造を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態になる橋梁を示す全体図である。
図2は、同実施形態を示す平面図である。
図3は、同実施形態を示す横断面図である。
図3を参照して橋梁10は、主桁11と、床版(しょうばん)としてのグレーチング部材21と、床板(ゆかいた)31を備える。主桁11は橋幅方向に間隔を空けて設置され、橋梁の長手方向に延びる。本実施形態の主桁11は1対のH形鋼であり、略水平に広がる1対の上下フランジ11b、11cおよび垂直に広がるウェブ11dを有する。
【0018】
主桁11の端部は、下方から橋台101,101(
図1)に支持される。また橋梁10の全長に応じて、下方から主桁11を支持する橋脚102(
図1)が設置される。
【0019】
グレーチング部材21は、規格化された鋼製の汎用材でよく、厚み方向、つまり上下方向、に透過性を有する。本実施形態のグレーチング部材は、橋幅方向を長辺とし、橋梁の長手方向を短辺とする長方形であって、1対の主桁11上に架け渡される。グレーチング部材21については後で詳しく説明する。ここで附言すると、橋梁10は歩行者専用橋であり、歩行者、自転車、車椅子、二輪車が通行する程度の橋幅寸法で足り、4輪車両が通行に必要な橋幅を必要としない。
【0020】
グレーチング部材21は上方から床板31で覆われる。本実施形態の床板31は、木製である。グレーチング部材21が床板31で完全に覆われることで、歩き易くなる。グレーチング部材21と床板31の間にはスペーサ41が介在する。スペーサ41は、橋梁10の長手方向に延びる縦材42と、橋幅方向に延びる横材43で構成され、グレーチング部材21と床板31の間隔に対応する寸法を有する。
【0021】
これにより床板31は、スペーサ41の上下寸法分、グレーチング部材21から間隔を空けて配置される。そしてグレーチング部材21と床板31の間に空間(スペース)が区画される。
【0022】
図2を参照して床板31は、橋幅方向に延びる多数の短冊状あるいは帯板状の木板32で構成される。木板32は、釘やねじやワイヤ等、後述する金具44よりも弱い連結具でスペーサ41あるいはグレーチング部材21に固定される。木板32は、適度な滑り止め機能を有し、橋梁10に美観を与える。
【0023】
再び
図3を参照して、主桁11にはブラケット12が設けられる。橋梁の長手方向に間隔を空けて配置され、橋幅方向外側へ突出し、傾斜部材13を支持する。傾斜部材13は上端14および下端15を有する。上端14は、床板31の橋幅方向縁部の近傍に配置され、あるいは床板31の橋幅方向縁部と接続する。下端15は上端14よりも橋幅方向外側へ突出する。このように傾斜部材13は、上端から下端へ向かうほど橋幅方向外側へ突出するように傾斜する。
図1を参照して、本実施形態の傾斜部材13は化粧幕板(板材)である。
【0024】
橋梁10の側部には高欄柱51が立設される。高欄柱51の下端は、地覆52に取付固定される。地覆52は、床板31表面に取付固定される。高欄柱51の上端には笠木53が取付固定される。笠木53は橋梁10の一端から他端まで延びる。高欄柱51および地覆52は橋梁10の長手方向に所定間隔を空けて配列される。
【0025】
図3を参照して、高欄柱51は橋幅方向外側から斜材54で支持される。斜材54の上端は橋幅方向内側に配置されて高欄柱51に連結され、斜材54の下端は橋幅方向外側に配置されて腕木55に連結される。腕木55は橋幅方向に傾斜して延び、橋幅方向内側端で地覆52と突合し、橋幅方向外側端で斜材54の下端に連結される。高欄柱51と斜材54と腕木55で構成される三角形の構造によって、高欄柱51は橋幅方向に転倒しないよう剛性を確保される。
【0026】
腕木55は横材43に沿って延び、下方から横材43の端部43bに支持される。なお端部43bは、グレーチング部材21および傾斜部材13を越え、橋幅方向外側へ突出する。
【0027】
次にグレーチング部材21と、スペーサ41と、床板(ゆかいた)31の構造につき詳細に説明する。
【0028】
図4は、グレーチング部材21およびスペーサ41を示す平面図であり、
図3中の床板31を剥がした状態に対応する。
図5は、
図4中の囲みVを示す拡大図であり、1ピースのグレーチング部材21を表す。
図5を参照して、グレーチング部材21は周知の汎用材であり、所定断面寸法I形鋼22,22,22・・が多数平行に配列され、I形鋼22と直交する棒鋼23,23・・・で相互に連結される。グレーチング部材21は橋梁10を通行する歩行者および軽車両を支持する床版の構造材として、1対の主桁11,11上に架設されるよう敷き並べられる。そしてクリップ、ボルト、ナット等の連結具29(
図5)で主桁11の上フランジ11b(
図3)に連結される。I形鋼22は橋幅方向に延在する。上フランジ11bはグレーチング部材21の端部を下方から支持する。
【0029】
スペーサ41の横材43は、各グレーチング部材21の上に載置される。スペーサ41の縦材42は、隣り合う横材43,43間に複数配列される。本実施形態の縦材42および横材43は、木材等、矩形断面の角材である。
図4を参照して、縦材42および横材43は、敷き並べられたグレーチング部材21上に井桁状に整然と配列される。隣り合う縦材42、42同士は間隔を空けてあり、横材43も同様である。
【0030】
次に、縦材42をグレーチング部材21に固定する構造につき説明する。
【0031】
図4を参照して、各縦材42の一端部は、1の金具44を介して、一方のグレーチング部材21に固定され、各縦材42の他端部は、他の金具44を介して、他方のグレーチング部材21に固定される。一方の金具44は、縦材42の一側面に沿って配置される。他方の金具44は、縦材42の他側面に沿って配置される。
【0032】
図6は、金具44を示す拡大平面図であって、
図5中の囲みVIに対応する。
図7は、金具44を一部断面で示す正面図であって、
図6中、VII―VIIで金具44を切断し、切断面を矢の方向(橋幅方向)にみた状態を表す。金具44はL字状に形成された鋼材であり、水平部44fおよび垂直部44gを有する。水平部44fはグレーチング部材21の上面に載置され、垂直部44gは縦材42の側面に突き当てられる。
【0033】
図7を参照して、垂直部44gには長孔44hが貫通形成され、水平部44fには同形同大の長孔44jが貫通形成される。水平部44fの直下になるグレーチング部材21の下面には受け金具48が配置される。受け金具48は隣り合う2本のI形鋼22,22に跨るように係合する。受け金具48の下方からボルト46の軸部が、受け金具48に形成される貫通孔48hと、I形鋼22,22間と、長孔44jとを順次通される。水平部44fから上方へ突出するボルト46の先端部には、ナット50が締結される。これにより金具44はグレーチング部材21に連結固定される。
【0034】
図6を参照して、縦材42には貫通孔42hが穿設される。長孔44hと、貫通孔42hと、ワッシャ49には、ボルト45の軸部が順次通される。ボルト45の先端部は、縦材42からみて金具44とは反対側の側面から突出し、ナット47が締結される。これにより縦材42は金具44に連結固定される。かくして縦材42はグレーチング部材21に連結固定される。
【0035】
なお図示はしなかったが、横材43も同様の金具によってグレーチング部材21に固定される。
【0036】
次に本実施形態の作用につき説明する。
【0037】
図1に示すように河川の水面Wは通常、橋台101の下部に位置する。
図2に示すように橋梁10の床版は帯板状の床板31で隙間無く覆われている。このため歩行者は床板31の上を歩いて橋梁10を容易に渡ることができる。
【0038】
洪水が襲来すると水面Wが上昇し、傾斜部材13の高さに達するか、あるいは床版31を越流すると、水面Wに浮遊する流木等の漂流物が、傾斜部材13を乗り越えて橋梁10を越流することができる。本実施形態によれば、漂流物が橋梁10にひっかかり難くされる。
【0039】
洪水の規模が特に大きい場合、床板31とグレーチング部材21の間にスペースが形成されることから、かかるスペースを洪水が流れてグレーチング部材21を透過することができる。高欄柱51や高欄柱51に連結される地覆52、笠木53、斜材54、腕木55、56が流出してしまったり、傾斜部材13が流出してしまったり、床板31が流出してしまったりしても、グレーチング部材21は流出を免れる。したがって本実施形態の橋梁10によれば、洪水の被害を受けた後であっても最低限の歩行機能が確保され、洪水直後であってもインフラを守ることができる。
【0040】
また災害復旧には床板31および笠木53等の手摺を既設のグレーチング部材21上に設ければ足り、従来のように本格的な教梁を初めから建設する手間が省かれる。本実施形態によれば、従来よりも簡単な作業で速やかな復旧が可能になるばかりでなく、コスト上有利である。
【0041】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、河川や海岸の構造物において有利に利用される。
【符号の説明】
【0043】
10 橋梁、 11 主桁、 13 傾斜部材、
21 グレーチング部材、 31 床板、 41 スペーサ、
42 縦材、 43 横材。