(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067513
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/18 20060101AFI20240510BHJP
H05K 3/10 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H05K3/18 A
H05K3/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177656
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 博靖
(72)【発明者】
【氏名】黒田 展久
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA02
5E343AA17
5E343AA18
5E343BB24
5E343CC48
5E343DD33
5E343DD43
5E343DD76
5E343EE36
5E343EE37
5E343GG02
(57)【要約】
【課題】無機粒子を含み、ビア孔を有する絶縁層のハローイングが抑制される配線基板及び配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】配線基板10は、第一絶縁層15Aと、前記第一絶縁層上の一部に配置されている第一導体層16Aと、前記第一導体層上及び前記第一絶縁層上に配置されており、前記第一導体層上の一部において厚さ方向に貫通するビア孔20を有し、樹脂成分及び無機粒子を含む無機粒子含有樹脂組成物により形成されている第二絶縁層15Bと、前記ビア孔内に充填されており、前記第一導体層に接触するビア導体18と、前記第二絶縁層と前記第一導体層との間に介在して前記第二絶縁層と前記第一導体層とを接着し、前記樹脂成分を含み、無機粒子を含まない樹脂組成物により形成されている接着層19と、を含む。絶縁性積層シートを用いて第二絶縁層と接着層とを形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一絶縁層と、
前記第一絶縁層上の一部に配置されている第一導体層と、
前記第一導体層上及び前記第一絶縁層上に配置されており、前記第一導体層上の一部において厚さ方向に貫通するビア孔を有し、樹脂成分及び無機粒子を含む無機粒子含有樹脂組成物により形成されている第二絶縁層と、
前記ビア孔内に充填されており、前記第一導体層に接触するビア導体と、
前記第二絶縁層と前記第一導体層との間に介在して前記第二絶縁層と前記第一導体層とを接着し、前記樹脂成分を含み、無機粒子を含まない樹脂組成物により形成されている接着層と、
を含む配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板であって、前記第一導体層の算術平均粗さRaが、0.2μm以下である。
【請求項3】
請求項1に記載の配線基板であって、前記接着層が前記第二絶縁層の両面に配置されている。
【請求項4】
請求項1に記載の配線基板であって、前記接着層の厚さが1~10μmである。
【請求項5】
第一絶縁層上の一部に第一導体層を配置することと、
前記第一絶縁層上及び前記第一導体層上に、樹脂成分及び無機粒子を含む第二絶縁層を形成するための第二絶縁層形成用組成物層と、前記樹脂成分を含み、無機粒子を含まない接着層を形成するための接着層形成用組成物層とが積層されている絶縁性積層シートを、前記接着層形成用組成物層が前記第一導体層及び前記第一絶縁層と接触するように貼り付けることと、
前記絶縁性積層シートの厚さ方向に貫通し、前記第一導体層の一部が露出するビア孔を形成することと、
前記ビア孔内に、前記第一導体層に接触するビア導体を形成することと、
を含む配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の配線基板の製造方法であって、前記絶縁性積層シートが、前記接着層形成用組成物層の両面にそれぞれ前記接着層形成用組成物層が積層されている層構成を有する。
【請求項7】
請求項5に記載の配線基板の製造方法であって、前記接着層の厚さが1~10μmである。
【請求項8】
請求項5に記載の配線基板の製造方法であって、前記ビア孔を形成した後、前記ビア孔内に前記ビア導体を形成する前に、前記ビア孔内をデスミア処理することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁層の上に所定のパターンで形成された導体層をさらに上部絶縁層で覆う構造の配線基板を製造する場合、上部絶縁層には、導体層に接触するビア導体を設けるためのビア孔が形成される。
【0003】
特許文献1には、金属の表面に、特定のアゾールシラン化合物と特定のアゾール化合物を含有する表面処理液を接触させて、化成皮膜を形成する工程を含むプリント配線板の製造方法が開示されている。具体的には、上記表面処理液を銅配線層の表面に接触させて、その後必要により水洗し、続いて乾燥を行った後、銅配線層表面に絶縁樹脂層を形成する。次いで、上下の配線を導通させる為に、ビア孔を形成する。このプロセスを繰り返すことにより、多層プリント配線板を作製することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビア孔の形成後には、ビア孔内の樹脂残渣を除去するデスミア処理が行われる。しかし、デスミア処理において、ビア孔の底部周辺の絶縁層が導体層から剥離することがある。
【0006】
ビア孔が形成される上部絶縁層は、強度、耐熱性等の物性の向上のため、例えばエポキシ樹脂等の樹脂とシリカ等の無機粒子を含む層間材料を用いて形成される。近年、高密度、低熱膨張などの様々な要求があり、層間材料は無機粒子の配合割合を多くする傾向がある。しかし、層間材料における無機粒子の配合量を多くするほど、デスミア処理による上部絶縁層の剥離(ハローイング)が生じ易くなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る配線基板は、第一絶縁層と、前記第一絶縁層上の一部に配置されている第一導体層と、前記第一導体層上及び前記第一絶縁層上に配置されており、前記第一導体層上の一部において厚さ方向に貫通するビア孔を有し、樹脂成分及び無機粒子を含む無機粒子含有樹脂組成物により形成されている第二絶縁層と、前記ビア孔内に充填されており、前記第一導体層に接触するビア導体と、前記第二絶縁層と前記第一導体層との間に介在して前記第二絶縁層と前記第一導体層とを接着し、前記樹脂成分を含み、無機粒子を含まない樹脂組成物により形成されている接着層と、を含む。
【0008】
本開示に係る配線基板の製造方法は、第一絶縁層上の一部に第一導体層を配置することと、前記第一絶縁層上及び前記第一導体層上に、樹脂成分及び無機粒子を含む第二絶縁層を形成するための第二絶縁層形成用組成物層と、前記樹脂成分を含み、無機粒子を含まない接着層を形成するための接着層形成用組成物層とが積層されている絶縁性積層シートを、前記接着層形成用組成物層が前記第一導体層及び前記第一絶縁層と接触するように貼り付けることと、前記絶縁性積層シートの厚さ方向に貫通し、前記第一導体層の一部が露出するビア孔を形成することと、前記ビア孔内に、前記第一導体層に接触するビア導体を形成することと、を含む。
【0009】
本開示の配線基板及び配線基板の製造方法によれば、無機粒子を含み、ビア孔を有する絶縁層のハローイングが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る配線基板の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図1に示す本開示に係る配線基板の第一実施形態の一部を部分的に拡大して示す概略断面図である。
【
図3】本開示の第一実施形態の配線基板の製造に用いる絶縁性積層シートの一例の層構成を示す概略図である。
【
図4】
図1に示す本開示に係る配線基板の第二実施形態の一部を部分的に拡大して示す概略断面図である。
【
図5】本開示の第二実施形態の配線基板の製造に用いる絶縁性積層シートの一例の層構成を示す概略図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る配線基板の製造方法について実施例の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る配線基板及び配線基板の製造方法の実施形態について説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る配線基板の一例を示す概略断面図である。
【0012】
<第一実施形態>
図2は、
図1に示す本開示に係る配線基板の第一実施形態の一部を部分的に拡大して示す概略断面図であり、具体的には、
図1に示す配線基板10の点線Sで示される部分を拡大して示している。なお、
図1では、
図2に示されている接着層19の図示が省略されており、
図2では、
図1に示されるビア導体18の図示が省略されている。
【0013】
以下では便宜的に、配線基板10の厚さ方向の両面のうち、
図1におけるF側を上側、B側を下側として説明することがある。ただし、各図面における配線基板10の向きは、実際の配線基板10の使用状態を制限するものではない。
【0014】
図1に示されるように、配線基板10は、コア基板11と、複数のビルドアップ絶縁層15と、複数のビルドアップ導体層16と、を有している。
【0015】
コア基板11は、配線基板10の厚さ方向の中央部分に配置されている。複数のビルドアップ絶縁層15及び複数のビルドアップ導体層16は、コア基板11の上側及び下側にそれぞれ積層されている。
【0016】
コア基板11は絶縁性基材11Kを含んでいる。絶縁性基材11Kは、例えば、エポキシ樹脂又はBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂とガラスクロスなどの補強材を含んで構成されている。絶縁性基材11Kの上面はコア基板11の第一面11Fであり、絶縁性基材11Kの下面が、コア基板11の第二面11Bである。一例として、コア基板11の厚さは、500μm以上2000μm以下である。
【0017】
コア基板11の第一面11Fと第二面11Bとには、図示しない銅箔がラミネートされている。
【0018】
コア基板11の第一面11F及び第二面11Bには、コア導体層12が形成されている。一例として、コア導体層12の厚さは、20μm以上50μm以下である。
【0019】
絶縁性基材11Kには、複数のスルーホール13Aが形成されている。複数のスルーホール13Aはそれぞれ、絶縁性基材11Kを厚さ方向に貫通している。スルーホール13Aの壁面には、例えば、銅のメッキにより、スルーホール導体13が形成されている。第一面11Fのコア導体層12と第二面11Bのコア導体層12とは、スルーホール導体13によって接続されている。
【0020】
コア基板11の第一面11Fと第二面11Bには、複数のビルドアップ絶縁層15とビルドアップ導体層16とが交互に積層されている。すなわち、配線基板10は、コア基板11の第一面11F及び第二面11Bに、ビルドアップ絶縁層15とビルドアップ導体層16とが交互に積層された多層構造を有する。
【0021】
ビルドアップ絶縁層15は、樹脂と無機粒子を含む無機粒子含有樹脂組成物で構成されている。各ビルドアップ絶縁層15の厚さは、例えば10μm以上30μm以下である。
図2に示されるように、ビルドアップ絶縁層15には厚さ方向に貫通するビア孔20が形成されている。ビア孔20は、底部へ近づくにつれて縮径されるテーパ状に形成されている。
【0022】
ビルドアップ絶縁層15のビア孔20内にはビア導体17,18が充填されている。ビア導体17,18は、金属(例えば、銅)で形成されている。ビア導体18の底部は、下層のビルドアップ導体層16に接触している。
【0023】
ビルドアップ導体層16は、金属(例えば、銅)で形成されている。各ビルドアップ導体層16の厚さは、例えば10μm以上15μm以下である。
【0024】
コア基板11に最も近いビルドアップ導体層16とコア導体層12とは、ビア導体17によって接続されている。厚さ方向に隣り合うビルドアップ導体層16は、ビア導体18によって接続されている。
【0025】
コア基板11の第一面11F側に積層されるビルドアップ導体層16のうち最も上側に配置されているビルドアップ導体層16Eは、外側導体回路層35を含んでいる。
【0026】
ビルドアップ導体層16Eが配置されているビルドアップ絶縁層15上には、絶縁層34が積層されている。絶縁層34は、ビルドアップ導体層16Eが配置されているビルドアップ絶縁層15上において、ビルドアップ導体層16Eが形成されていない部分を覆っている。
【0027】
絶縁層34は、例えば、ビルドアップ絶縁層15と同じ材料(無機粒子含有樹脂組成物)で構成されている。但し、絶縁層34の材料は、特に限定されず、例えば、弾性率1GPa以上10GPa以下のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミドなどを用いることもできる。
【0028】
絶縁層34の厚さは、一例として7μm以上15μm以下であり、ビルドアップ絶縁層15よりも薄い。
図1に示されるように、絶縁層34は、配線基板10の第一面10Fと、配線基板10の第二面10Bと、を構成している。なお、配線基板10の第二面10B側に絶縁層34が配置されていなくてもよい。
【0029】
図1に示す複数のビルドアップ絶縁層15において、厚さ方向で隣り合う二層の絶縁層のうち相対的にコア基板11側(下層側)に位置するビルドアップ絶縁層を第一絶縁層、外側(上層側)に位置するビルドアップ絶縁層を第二絶縁層とする。同様に、
図1に示す複数のビルドアップ導体層16についても、相対的にコア基板11側(下層側)に位置するビルドアップ導体層を第一導体層とし、外側(上層側)に位置するビルドアップ導体層を第二導体層とする。
【0030】
図2では、説明の便宜上、厚さ方向に隣り合う二層のビルドアップ絶縁層15のうち、コア基板11に近い側から第一絶縁層15A、第二絶縁層15Bとし、第一絶縁層15A上のビルドアップ導体層16を第一導体層16Aとして示している。すなわち、
図2では、
図1においてコア基板11に最も近いビルドアップ絶縁層15を第一絶縁層15A、二番目に近いビルドアップ絶縁層15を第二絶縁層15Bとして示している。
一方、
図1において、例えばコア基板11に対してそれぞれ二番目及び三番目に近い二層のビルドアップ絶縁層の関係では、二番目のビルドアップ絶縁層(
図2では第二絶縁層15B)が第一絶縁層、三番目のビルドアップ絶縁層が第二絶縁層に相当する。ビルドアップ導体層16についても同様である。
【0031】
図2に示されるように、第二絶縁層15Bは、第一導体層16A上及び第一絶縁層15A上に配置されている。第二絶縁層15Bは、第一導体層16Aの表面(第一面)の一部が露出するように第一導体層16A上の一部において厚さ方向に貫通するビア孔20を有する。ビア孔20には、
図2には図示しないビア導体18が充填される。
【0032】
図2に示されるように、ビア孔20(ビア導体18)の底部周辺では、第二絶縁層15Bと第一導体層16Aとの間に接着層19が介在している。第二絶縁層15Bと第一導体層16A(第二面)は接着層19を介して接着している。
【0033】
第二絶縁層15Bは、樹脂成分及び無機粒子21を含む無機粒子含有樹脂組成物(絶縁性材料)により構成されている。
【0034】
第二絶縁層15Bに含まれる樹脂成分は特に限定されない。例えば、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、オレフィン樹脂、フッ素含有樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶樹脂等が挙げられる。2種以上の樹脂を混合した樹脂材料を用いてもよい。
【0035】
第二絶縁層15Bに含まれる無機粒子21も特に限定されない。例えば溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ等の無機粒子が挙げられる。二種以上の無機粒子を併用してもよい。
第二絶縁層15Bに含まれる無機粒子21の含有量は特に限定されない。無機粒子21の含有量が多いほど低熱膨張性を発現し易いが、無機粒子21の含有量が多いほど絶縁層が脆くなる。これらの観点から、第二絶縁層15Bにおける無機粒子21の含有量は、例えば10~80質量%である。
【0036】
なお、第一絶縁層15Aも第二絶縁層15Bと同じ無機粒子含有樹脂組成物(絶縁性材料)により構成されてもよい。第一絶縁層15Aにおける無機粒子21についても第二絶縁層15Bと同様である。
【0037】
一方、接着層19は、第二絶縁層15Bを構成する無機粒子含有樹脂組成物と同種の樹脂成分を含み、無機粒子含有樹脂組成物と同種の無機粒子に限らず、異種の無機粒子も含まない樹脂組成物(絶縁性材料)により構成されている。第二絶縁層15Bの樹脂成分と接着層19の樹脂成分が同じ成分であるため、樹脂成分の種類に関わらず、第二絶縁層15Bは接着層19と高い接着性を呈する。そのため、接着層19が第二絶縁層15Bと第一導体層16Aとの間に介在することで第二絶縁層15Bと第一導体層16Aとの接着力が高められる。
ただし、接着層19の厚さが薄過ぎると接着力が弱く、ハローイングを抑制する効果が低下する。一方、接着層19の厚さが厚過ぎると、第二絶縁層15Bによる低膨張性が低下する。かかる観点から、接着層19の厚さは、第二絶縁層15Bの厚さよりも薄いことが好ましく、例えば、1μm以上10μm以下である。
【0038】
第二絶縁層15Bは無機粒子21を含むため、第二絶縁層15Bと第一導体層16Aとの間に接着層19が存在しない場合、ビア孔形成後のデスミア処理によりビア孔の周辺における剥離(ハローイング)が発生しやすい。一方、本実施形態に係る配線基板10は、第一導体層16Aと第二絶縁層15Bとの間に、無機粒子を含まないこと以外は第二絶縁層15Bと同じ材料(樹脂組成物)で形成されている接着層19が介在している。そのため、ビア孔形成後のデスミア処理によるハローイングが発生し難い。
また、本実施形態に係る配線基板10は、第一導体層16Aと第二絶縁層15Bとの接着力を高めるために接着層19の構成材料として第二絶縁層15Bに含まれる樹脂とは異なる特殊な樹脂などを用いる必要がない。そのため、本実施形態に係る配線基板10は、材料コストを低く抑え、簡便に製造することも可能である。
【0039】
本実施形態に係る配線基板10は、上述の接着層19が、少なくとも、デスミア処理によるハローイングが発生し易いビア孔20底部周辺における第二絶縁層15Bと第一導体層16Aとの間に介在していればよい。ただし、簡便に製造する観点から、
図2に示されるように、接着層19が、第一導体層16Aと第二絶縁層15Bとの間だけでなく、第一絶縁層15Aと第二絶縁層15Bとの間にも連続的に形成されていてもよい。接着層19層が、第一絶縁層15Aと第二絶縁層15Bにそれぞれ含まれる樹脂成分と同種の樹脂成分を含んで構成され、第一絶縁層15Aと第二絶縁層15Bとの間にも介在していることで、各絶縁層15A,15Bにおける無機粒子含有量が高くても(例えば70質量%以上)、高い密着力が得られる。
【0040】
次に、本実施形態に係る配線基板10の製造方法について説明する。本実施形態に係る配線基板10の製造方法は特に限定されないが、第二絶縁層15Bと接着層19とを同時に形成するための絶縁性積層シートを用いて好適に製造することができる。
【0041】
図1に示す本開示の実施形態に係る配線基板10を製造する場合、まず、前述した構成を有するコア基板11を用意する。
【0042】
(第一絶縁層及び第一導体層の形成)
コア導体層12上にビルドアップ絶縁層15(第一絶縁層15A)が配置され、そのビルドアップ絶縁層15上にビルドアップ導体層16(第一導体層16A)が配置される。具体的には、コア基板11の第一面11F側と第二面11B側とからコア導体層12上に、ビルドアップ絶縁層15としての樹脂成分及び無機粒子を含む絶縁シートが積層された後、加熱プレスされる。
そして、例えば炭酸ガスレーザが照射されて、ビルドアップ絶縁層15を貫通するビア孔が形成される。
【0043】
次いで、無電解めっき処理、めっきレジスト処理、及び電解めっき処理が順次行われる。これにより電解めっきがビア孔内に充填されてビア導体17が形成されるとともに、ビルドアップ絶縁層15上に所定パターンのビルドアップ導体層16(第一導体層16A)が形成される。
【0044】
さらに、必要に応じて、エッチング等の粗化処理によって第一導体層16Aの表面を粗化してもよい。第一導体層16Aを粗面化しておくことで、接着層19との接着力を高めることができる。
ただし、粗化処理を行うと、製造コストの上昇、生産性の低下につながるため、粗化処理は簡略化又は省略し、第一導体層16Aの表面の算術平均粗さRaが、0.2μm以下であってもよい。第一導体層16Aの表面の算術平均粗さRaが、0.2μm以下であっても、接着層19を介して第二絶縁層15Bと高い接着力を得ることができる。Raが0.2μm以下であることで、高速信号の伝送損失を抑制することができる。
なお、算術平均粗さRaはJIS B 0601:2013の表面形状に関する規格に規定されており、第一導体層16Aの表面の算術平均粗さRaは、JIS B0651の触針式表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0045】
(接着層及び第二絶縁層の形成)
第一導体層16Aを形成した後、第一導体層16A上及び第一絶縁層15A上(第一絶縁層15A上に第一導体層16Aが形成されていない領域)に接着層19を介して第二絶縁層15Bを形成する。接着層19と第二絶縁層15Bをそれぞれ別々の工程で形成してもよいが、第二絶縁層15Bと接着層19とを一体的に形成するための絶縁性積層シートを用いて接着層19と第二絶縁層15Bを同時に形成することがきできる。
【0046】
例えば、
図3に示されるように、第二絶縁層形成用組成物層15Pと、接着層形成用組成物層19Pとが積層された絶縁性積層シート23を用意する。第二絶縁層形成用組成物層15Pは、未硬化の樹脂成分及び無機粒子21を含む絶縁性組成物により構成されている。接着層形成用組成物層19Pは、第二絶縁層形成用組成物層15Pを構成する絶縁性組成物のうち無機粒子21を含まない未硬化の樹脂組成物により構成されている。
【0047】
絶縁性積層シート23の製造方法は特に限定されない。例えば、樹脂成分、無機粒子、溶剤などを含む第二絶縁層形成用溶液をポリエステルフィルム等の支持体上に塗布し、乾燥させて第二絶縁層形成用組成物層15Pを形成する。続いて、樹脂成分、溶剤などを含む接着層形成用溶液を第二絶縁層形成用組成物層15P上に塗布し、乾燥させて接着層形成用組成物層19Pを形成する。これにより、支持体上に第二絶縁層形成用組成物層15Pと接着層形成用組成物層19Pとが積層した絶縁性積層シートを得ることができる。
【0048】
絶縁性積層シート23を、接着層形成用組成物層19P側を第一導体層16A及び第一絶縁層15Aに向けて、接着層19が第一導体層16A及び第一絶縁層15Aと接着するように貼り付ける。
貼り付け後、各組成物層に共通して含まれる樹脂成分に応じて、絶縁性積層シート23に加熱、光照射などの刺激を加えて硬化させる。これにより、第一導体層16A上及び第一絶縁層15上に、ビア孔20が形成される前の接着層19及び第二絶縁層15Bが形成される。
【0049】
次いで、例えば、炭酸ガスレーザ又は紫外線レーザなどにより、
図2に示されるように、第二絶縁層15B及び接着層19に、厚さ方向に貫通し、第一導体層16Aの一部が露出するビア孔20を形成する。
このように絶縁性積層シート23を用いることで、接着層19と第二絶縁層15Bを同時に形成することができる。
【0050】
(デスミア処理)
次いで、ビア孔20を形成する際に生じた残渣を除去するデスミア処理を施す。デスミア処理には、例えば、アルカリ性過マンガン酸溶液を用いた湿式デスミア処理、又は、プラズマ等の気体を用いた乾式デスミア等の方法を用いることができる。
一般的に、乾式デスミア処理に比べ、湿式デスミア処理を適用した場合にハローイングが生じ易い。しかし、本実施形態に係る配線基板の製造方法では、第一導体層16Aと第二絶縁層15Bとの間に、無機粒子を含まないこと以外は第二絶縁層15Bと同じ材料で構成される接着層19を介在させて接着させるため、湿式デスミア処理を行った場合でもビア孔20の周辺部におけるハローイングの発生が効果的に抑制される。
【0051】
(ビア導体の形成)
次いで、めっきによりビア孔20内に第一導体層16Aと接続するビア導体18を形成する。ビア導体18の形成では、無電解めっき処理、めっきレジスト処理、及び電解めっき処理が行われる。電解めっきがビア孔20内に充填されてビア導体18が形成されるとともに、ビルドアップ絶縁層15(第二絶縁層15B)上に所定パターンのビルドアップ導体層16が形成される。
【0052】
以降、同様にして、ビルドアップ絶縁層15の形成とビルドアップ導体層16の形成を交互に繰り返す。そして、ビルドアップ絶縁層15と接着層19は、上述した絶縁性積層シート23を用いて同時に形成する。これにより、ビルドアップ絶縁層15と接着層19を簡便に形成することができるほか、各ビルドアップ絶縁層15のビア孔20の形成ごとにデスミア処理を行ってもハローイングの発生が抑制される。
【0053】
絶縁層34(ソルダーレジスト層でもよい)を形成した後、絶縁層34上の所定位置に最外の導体層16Eの一部を導体パッド36として露出させる開口を形成する。
【0054】
以上の工程を経て、本開示の第一実施形態に係る配線基板10を製造することができる。
【0055】
[第二実施形態]
図4は、本開示の第二実施形態に係る配線基板の一部を概略的に示している。
図2に示す第一実施形態に係る配線基板の一部と同様、
図4は、
図1に示す本開示の実施形態に係る配線基板の一例においてSで示される部分を拡大して示している。なお、
図4では、ビア孔20に充填されたビア導体18の一部、及びビア導体18と一体的に形成されており、第二絶縁層15B上の一部に配置されている第二導体層16Bの一部も示されている。
【0056】
図4に示されるように、第二実施形態に係る配線基板では、第二絶縁層15Bの両面にそれぞれ接着層19A,19Bが配置されている。すなわち、第一導体層16Aと第二導体層16Bは、無機粒子21を含まず、第二絶縁層15Bに含まれる樹脂成分と同じ組成の樹脂成分を含む接着層19A,19Bを介してそれぞれ第二絶縁層15Bと接着している。そのため、デスミア処理の際、ハローイング(第二絶縁層15Bの剥離)の発生が抑制されるほか、デスミア処理後、めっきによりビア導体18及び第二導体層16Bを形成する際、接着層19Bを介して第二絶縁層15Bに強固に密着した第二導体層16Bが形成される。
【0057】
第二実施形態に係る配線基板を製造する方法も特に限定されないが、第二絶縁層15B及び各接着層19A,19Bを形成するための層構成を有する絶縁性積層シートを用いて好適に製造することができる。
図5は、第二絶縁層15B及び各接着層19A,19Bをを同時に形成するための絶縁性積層シートの層構成を概略的に示している。
図5に示す絶縁性積層シート25は、第二絶縁層15Bを形成するための第二絶縁層形成用組成物層15Pの両面に、接着層19A,19Bを形成するための接着層形成用組成物層19Pがそれぞれ積層された三層構造を有する。絶縁性積層シート25の各層15P,19Pの構成材料及び厚みは、それぞれ前述した第一実施形態に係る配線基板の製造に用いる絶縁性積層シート23と同様である。
【0058】
第一絶縁層15A上の一部に第一導体層16Aを形成した後、絶縁性積層シート25のいずれか一方の面の接着層形成用組成物層19Pを貼り付ける。次いで、各組成物層に共通して含まれる樹脂成分に応じて加熱等の刺激を加えて絶縁性積層シート25を硬化させることにより、ビア孔20が形成される前の接着層19A、第二絶縁層15B、及び接着層19Bが形成される。
【0059】
次いで、所定の位置に炭酸ガスレーザ等を照射して接着層19A、第二絶縁層15B、及び接着層19Bに、厚さ方向に貫通し、第一絶縁層16Aの一部が露出するビア孔20を形成する。
デスミア処理によりビア孔20内の残渣を除去した後、無電解めっき処理、めっきレジスト処理、及び電解めっき処理が順次行われる。これにより電解めっきがビア孔20内に充填されてビア導体18が形成されるとともに、第二絶縁層15B上に接着層19Bを介して第二導体層16Bが形成される。
【0060】
以降、上述した絶縁性積層シート25を用いること以外は、第一実施形態と同様にして、ビルドアップ絶縁層の形成とビルドアップ導体層の形成を交互に繰り返るなどして配線基板10を製造することができる。
【実施例0061】
以下、実施例について説明するが、本開示に係る配線基板及び配線基板の製造方法は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
図6は、本開示の実施形態に係る配線基板の製造方法について実施例の一例を示す概略図である。なお、
図6に示す実施例は、本開示に係る配線基板の製造工程の一例の一部であり、符号は
図2~
図4に示す符号に対応している。
【0062】
(1)第一絶縁層及び第一導体層の形成
樹脂基板(不図示)上に、エポキシ樹脂とシリカ粒子(円相当平均粒径:3μm)を含む層間材料(シリカ粒子の含有量:50質量%)を塗布した後、加熱して、厚さ20μmの第一絶縁層15Aを形成する。
第一絶縁層15A上に無電解銅めっき処理、めっきレジスト処理、及び電解銅めっき処理を順次行い、厚さ12μmの第一導体層16Aを形成する(
図6(A))。
【0063】
(2)接着層及び第二絶縁層の形成
第一絶縁層15Aと同じ組成の層間材料(エポキシ樹脂及びシリカ粒子21)からなる第二絶縁層15P(厚さ:20μm)と未硬化のエポキシ樹脂からなる接着層19P(厚さ:5μm)とが積層された絶縁性積層シート23を準備する(
図6(B))。絶縁性積層シート23の接着層19P側を、第一導体層15A及び第一絶縁層16Aの露出部分に貼り合わせた後、加熱して接着層を硬化させる(
図6(C))。これにより、第一絶縁層15A及び第一導体層16A上に接着層19を介して第二絶縁層15Bが形成される。
【0064】
(3)ビア孔の形成及びデスミア処理
次いで、第二絶縁層15Bに対して炭酸ガスレーザを照射して第一導体層が露出するテーパ状のビア孔20を形成する(
図6(D))。
次いで、アルカリ性過マンガン酸溶液を用いてビア孔20内の残渣除去(デスミア処理)を行う。
【0065】
(4)ビア導体及び第二導体層の形成
デスミア処理後、無電解銅めっき処理、めっきレジスト処理、及び電解銅めっき処理を順次行い、ビア20孔内にビア導体18及び第二導体層16Bを形成する(
図6(E))。
【0066】
以上の工程を含む配線基板の製造方法によれば、第一導体層16Aと第二絶縁層15Bとの間に、無機粒子21を含まないこと以外は第二絶縁層15Bと同じ材料(エポキシ樹脂)で形成されている接着層19が介在しているため、高い密着力が確保される。そのため、第二絶縁層15Bに形成したビア孔20を形成した後、デスミア処理を行う際にハローイングの発生が抑制される。
【0067】
以上、本開示に係る配線基板及び配線基板の製造方法について説明したが、本開示に係る配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。本開示に係る配線基板は任意の積層構造を有し得る。例えば、本開示に係る配線基板はコア基板を含まないコアレス基板であってもよい。本開示に係る配線基板は、任意の数の導体層及び絶縁層を含み得る。本開示に係る配線基板は、絶縁層内に電子部品が内蔵された電子部品内蔵配線基板であってもよい。
【0068】
また、本開示に係る配線基板の製造方法も、各図面を参照して説明された方法に限定されない。例えば、各導体層はフルアディティブ法によって形成されてもよい。
また、各絶縁層及び接着層は、絶縁性積層シートに限らず、任意の形態の樹脂組成物を用いて形成され得る。例えば、各層を形成するため材料を含む塗布液を用いて別々に形成してもよい。
本開示に係る配線基板の製造方法には、前述された各工程以外に任意の工程が追加されてもよく、前述された工程のうちの一部が省略されてもよい。