(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067517
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】米加工食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20240510BHJP
A23L 3/00 20060101ALI20240510BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20240510BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
A23L3/00 101
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177662
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】513042414
【氏名又は名称】浦松 亮輔
(71)【出願人】
【識別番号】522433557
【氏名又は名称】株式会社WA・ON
(71)【出願人】
【識別番号】522305830
【氏名又は名称】株式会社ワークウィズ
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】浦松 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】飯田 和子
【テーマコード(参考)】
4B021
4B023
4B036
【Fターム(参考)】
4B021LA07
4B021LP01
4B021LP07
4B021LP09
4B021LW09
4B021MC01
4B023LC08
4B023LE30
4B023LP07
4B023LP19
4B023LP20
4B023LQ01
4B023LQ02
4B036LC04
4B036LE05
4B036LF19
4B036LH22
4B036LP05
4B036LP18
4B036LP19
4B036LP21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、容器詰めのゲル状米加工物を、簡便に製造する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ゲル状の米加工物が充填されてなる容器詰め米加工食品の製造方法であって、加水された原料米を粉砕して液状米加工物を調製する液化工程と、前記液状米加工物を容器に充填し、前記容器を密封する充填工程と、前記容器に充填された液状米加工物をレトルト加熱してゲル化する加熱工程と、を備える、容器詰め米加工食品の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル状の米加工物が充填されてなる容器詰め米加工食品の製造方法であって、
加水された原料米を粉砕して液状米加工物を調製する液化工程と、
前記液状米加工物を容器に充填し、前記容器を密封する充填工程と、
前記容器に充填された前記液状米加工物をレトルト加熱してゲル化する加熱工程と、を備える、
容器詰め米加工食品の製造方法。
【請求項2】
前記充填工程が、前記液状米加工物を容器に真空充填する工程である、請求項1に記載の容器詰め米加工食品の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程が、105~130℃でレトルト加熱を行う工程である、請求項1に記載の容器詰め米加工食品の製造方法。
【請求項4】
前記容器が、レトルト食品用容器である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記容器詰め米加工食品が、喫食時に加熱調理を必要としない食品である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の製造方法により製造されてなる、容器詰め米加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状の米加工物が充填されてなる容器詰め米加工食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、米の需要拡大、用途拡大が要望されており、その中の一つとして、米をゲル状に加工した「米ゲル」が提案されている。
特許文献1には、高アミロース米及び/又は中アミロース米に0.8倍量を超える水を添加して加熱処理し、得られる糊化物を機械的撹拌処理して得られる米ゲルを食品添加剤として使用することによって、食品の保水性、保存性、老化等の物性を改善できることが提案されている。
【0003】
特許文献2には、高アミロース米に1.5倍量を超える水を添加して加熱処理し、得られる糊化物を機械的撹拌処理して得られるゲル状物が記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1及び2に記載の米ゲルは、製造した米ゲルの流通性、生産性まで検討されているものではなく、高アミロース米又は中アミロース米と品種が限定されたものであった。また、加工用原料、副原料として用いられるものであり、米ゲルをそのまま喫食するものではなかった。
【0005】
特許文献3には、米ゲルを製造する米ゲル製造システムであって、米原料を撹拌及び加熱する加熱撹拌部を備えた米ゲル製造システムが記載されている。
特許文献3の米ゲル製造システムは、加熱撹拌部が密閉容器内に配されており、かつ排出された糊化物を大気に触れることなく、破砕部に搬送する密閉式搬送部を備えることで、製造した米ゲルの保存性を担保するものである。また、加熱撹拌部が、密閉容器内で回転して当該密閉容器の内周面の付着物を掻き取りながら前記米原料を攪拌する掻き取り式攪拌翼を備えることで、素材ロスを少なくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-65934号公報
【特許文献2】特開2013-70663号公報
【特許文献3】特開2022―107785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、製造した米ゲルを、非常食、保存食として開けてすぐ食べられる形式で流通させるためには、十分に殺菌がされている必要がある。また、製造した米ゲルをそれぞれ個包装する必要がある。
しかし、米ゲルは、粘弾性が高く、かつ粘着性を有するため、個包装に充填する際の取り扱い性に問題があった。引用文献3に記載の発明は、このような米ゲルの取り扱い性、殺菌の問題を解決するシステムではあるが、そのための特別の装置が必要となり、製造コストがかかるという問題があった。
【0008】
そこで、本願発明は、保存性が担保された容器詰めのゲル状米加工物を、簡便に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決する本発明は、ゲル状の米加工物が充填されてなる容器詰め米加工食品の製造方法であって、加水された原料米を粉砕して液状米加工物を調製する液化工程と、前記液状米加工物を容器に充填し、前記容器を密封する充填工程と、前記容器に充填された前記液状米加工物をレトルト加熱してゲル化する加熱工程と、を備える。
本発明は、加水された原料米を破砕して液状米加工物を調製し、当該液状米加工物を容器に充填する。液状米加工物は、ゲル状米加工物と異なり粘着性がないため、調理容器に付着することがなく、素材ロスを極めて少なくすることができ、素材ロスを改善するための特別な装置、部材が不要であるため、製造コストを抑えることができる。
また、液状米加工物が充填された容器詰め米加工食品をそのままレトルト加熱してゲル化することで、殺菌も行われるため、加熱工程後の容器詰め米加工食品を、そのまま流通させることが可能となる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記充填工程が、前記液状米加工物を容器に真空充填する工程である。液状米加工物を容器に真空充填することで、保存性をより高めることができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記容器がレトルト食品用容器である。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記容器詰め米加工食品が、喫食時に加熱調理を必要としない食品である。
本発明は、災害時等の非常食、保存食に特に有用である。
【0013】
また、前記課題を解決する本発明は、前記製造方法により製造されてなる、容器詰め米加工食品である。
本発明の容器詰め米加工食品は、保存性に優れ、糊化後のでんぷん質の老化が長期間抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、流通性、保存性が担保された容器詰めのゲル状米加工物を、特別な装置、部材等を必要とせず、簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】液状米加工物を容器に充填するまでのフローチャート、及びゲル状米加工物を容器に充填するまでのフローチャートである。
【
図2】製造した容器詰め米加工食品、及びゲル状米加工物の図面代用写真である。
【
図3】餅様のゲル状米加工物にきざみのり、わさびを乗せた応用例を示す図面代用写真である。
【
図4】餅様のゲル状米加工物にきな粉をまぶした応用例を示す図面代用写真である。
【
図5】クリーム様のゲル状米加工物を野菜パウダーと併せてペーストとし、パンに塗った応用例を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の製造方法で用いられる原料米は、特に限定されない。例えば、生米、精白米、胚芽米、玄米、及び発芽玄米、古米、くず米等を使用することができる。また、うるち米、及びもち米の何れも使用することができる。
【0017】
以下、本発明の容器詰め米加工食品の製造方法について詳細に説明を加える。
【0018】
(1)加水工程
本発明の製造方法は、原料米に加水する加水工程を備えてもよい。
加水工程は、原料米が吸水することができる態様であれば特に限定されないが、水に原料米を浸漬させる浸漬工程であることが好ましい。また、噴霧ノズルやシャワーノズル等を用いて、原料米表明に微細な水滴を付着させる方法であってもよい。
【0019】
浸漬工程における浸漬時間は、特に限定されず、例えば、10~120分、10~90分、30~90分とすることができる。米質、水温等に応じて適宜調節することができる。
浸漬工程における水温は、例えば、0~30℃、5~30℃、10~30℃、15~30℃の場合には、浸漬時間は10分~2時間程度とすることができる。
【0020】
浸漬工程における水の容量は、特に限定されないが、原料米の容量に対して1~1.5倍であることが好ましく、1~1.3倍がより好ましく、1.1~1.3倍がさらに好ましく、1.1~1.2倍が特に好ましい。
【0021】
加水工程は、好ましくは加水後の原料米の重量が、加水前の原料米の重量の1.2倍~1.5倍となるよう原料米に加水する工程であり、より好ましくは加水後の原料米の重量が、加水前の原料米の重量の1.3倍~1.4倍となるよう原料米に加水する工程である。
【0022】
なお、原料米に加水を行う前に、常法に従い、米を洗浄する洗米する工程を備えていてもよい。
【0023】
(2)液化工程
本発明の製造方法は、加水された原料米を破砕して液状米加工物を調製する液化工程を備える。
液化工程は、水に浸漬した状態の原料米を粉砕する工程であることが好ましい。
【0024】
液化工程における水は、加水工程において使用した水をそのまま用いてもよく、加水工程において使用した水を水切りした後、新たな水を加えてもよい。
【0025】
液化工程における水の重量(g)は、特に限定されないが、原料米の重量(g)に対して1~7倍であることが好ましく、2~6倍であることがより好ましく、2.5~5.5倍であることがさらに好ましく、3~5倍が特に好ましい。
また、液化工程における水の量を調整することで、米ゲルの硬さを制御することが可能である。例えば、原料米の重量に対して水の重量を3倍とすることで、餅様の米ゲルを製造することができる。また、原料米の重量に対して水の重量を5倍とすることで、クリーム様の米ゲルを製造することができる。
【0026】
液化工程において、原料米の破砕に用いる装置としては、フードプロセッサー、ホモジナイザー、ミキサー、ニーダー、混錬機、及び業務用の穀物粉砕機等を用いることができる。
【0027】
本発明の液化工程において調製される液状米加工物は、さらさらとした液体状であり、粘性は少ないか、ほとんどない。
本発明の容器詰め食品の製造方法は、前記液状米加工物に味付けを行う味付け工程を備えてもよい。味付け工程は、充填工程前に行うことが好ましい。
液状米加工物に味付けを行うことで、後述するゲル状米加工物に味付けを行う際と比して、ダマが無く均一に味付けを行うことができる。
味付けは、常法により行うことができ、例えば、塩、醤油、砂糖等の調味料の添加が例示できる。
【0028】
(3)充填工程
本発明の容器詰め米加工食品の製造方法は、前記液状米加工物を容器に充填し、前記容器を密封する充填工程を備える。
本発明の製造方法によれば、液状米加工物を容器に充填するため、ゲル状米加工物を容器に充填する場合に生じ得る、製造機械及び製造用具への米加工物の付着がほとんどなく、素材ロスを低減することができる。また、素材ロスを低減させるために、人力によりゲル状の米加工物をかき取る手間や、そのための製造機械が必要ないため、製造コストを削減することができる。
【0029】
本発明において使用する容器は、液状米加工物の充填後、密封可能な容器が好ましく、ヒートシール可能な容器であることがより好ましい。また、本発明における充填工程は、液状米加工物を容器へ充填後、容器をヒートシールすることが好ましい。このような容器として、レトルト食品用容器が例示することができる。具体的には、レトルトパウチを用いることができる。
密封可能な容器、特にヒートシール可能な容器を用いることで、後述の加熱工程において液状米加工物のゲル化と、加熱殺菌(レトルト加熱)を両立することができる。そして、加熱後の容器詰め米加工食品は、冷却後、それ以上の処理を要することなく流通段階に載せることができる。
【0030】
液状米加工物の充填は、常法により行うことができ、小規模な生産の場合、人の手で充填してもよく、中規模、大規模な生産の場合には、一般的な液体充填機を用いることができる。
【0031】
充填工程は、液状米加工物を真空充填する工程であることが好ましい。
真空充填することで、米加工物の劣化を抑制することができる。
【0032】
真空充填は、常法により行うことができ、例えば液状米加工物を容器に充填した後、真空包装機等を用いて減圧し、容器の開放部をシールして密閉する方法が挙げられる。また、真空充填機を用いて、容器内を真空状態とした後に液状加工物を充填し、容器の開放部をシールする方法であってもよい。
【0033】
(4)加熱工程
本発明の容器詰め米加工食品の製造方法は、前記容器に充填された液状加工物をレトルト加熱してゲル化する加熱工程を備える。
言いかえれば、本発明の製造方法は、密封容器に充填された液状米加工物を加熱することで、ゲル状米加工物を調製する。
このような構成とすることにより、上述したゲル状米加工物の粘性に起因する素材ロスを低減させることができる。また、素材ロスを低減させるための手間、そのための装置が不要となり、製造コストも低減することができる。
【0034】
さらに、本発明の加熱工程は、液状米加工物のゲル化のみならず、容器詰め米加工食品の加熱殺菌の役割も担う。すなわち、本発明の加熱工程は、液状米加工物のゲル化工程であり、かつ容器詰め米加工食品の加熱殺菌工程であると理解することができる。
【0035】
特許文献1及び特許文献2のゲル状米加工物は、その後の保存性や流通性までも検討されているものではないが、これらのゲル状米加工物を、保存性が担保された状態で流通に乗せるためには、製造したゲル状米加工物を容器に詰め、さらに加熱殺菌を行う必要がある。
しかし、ゲル化した米加工物を容器に詰めるには、上述の通り素材ロスや素材ロスを低減するための手間、製造コストがかかるものであった。また、ゲル化した米加工物を再加熱することによる品質、物性の変化等の懸念がある。
【0036】
さらに、特許文献3に記載の方法は、加熱撹拌部が密閉容器内に配されており、かつ排出された糊化物を大気に触れることなく、破砕部に搬送する密閉式搬送部を備えることで、製造した米ゲルの保存性を担保するものである。本発明は、このような特別な装置を要することなく、従来の破砕機、従来の加熱装置等を用いてゲル状の米加工物が充填された容器詰め米加工食品を製造することができるため、製造コストを抑えることができる。
【0037】
また、米等の穀物類は、加熱により糊化した後、でんぷん質の老化がはじまり、味、におい、粘性等が劣化し始める。従来のゲル状米加工物を製造した後に容器に詰める方法では、容器に詰めるまでの作業時間において老化が進み、その後の品質保持に少なからず影響を及ぼすと推測される。一方、本願発明の製造方法によれば、加熱工程により液状米加工物がゲル化された後(すなわち、糊化後)、喫食時に開封するまでゲル状米加工物が空気に接触することはないから、老化することなく品質の保持をすることが可能となる。
【0038】
レトルト加熱における加熱処理条件は、食品衛生法で定められた基準であればよく、食品中心部の温度を120℃とした状態で4分間相当以上の加熱を行うか、これと同等以上の効力を有する条件、例えば、食品中心部の温度を115℃した状態で35分程度の加熱処理をすればよい。前述の条件を満たすものであれば、レトルト加熱を行う工程は、セミレトルト加熱(105~115℃)を行う工程であってもよく、セミレトルト加熱(116~120℃)を行う工程であってもよく、ハイレトルト加熱(121℃以上)を行う工程であってもよい。加熱温度は、好ましくは105~130℃であり、より好ましくは110~130℃であり、さらに好ましくは110℃~125℃であり、特に好ましくは110~120℃である。
【0039】
特許文献3の技術は、原料米の糊化物(ゲル)を空気に触れさせないことで、加熱殺菌を省略する技術であるが、その製造過程にて達する温度は、100℃(特許文献3の0016、0024)である。
この温度では、黄色ブドウ球菌等の菌は死滅させることができることが、セレウス菌等の芽胞菌を死滅させるには不適であり、セレウス菌は、100℃、30分の加熱でも死滅しないことが知られている。
セレウス菌は土壌細菌であり、米、小麦、大麦等の農作物が広く汚染されている可能性がある。長期間常温で保存可能な食品、特に、喫食時に加熱調理を必要としない食品として市場に流通させるためには、レトルト加熱により、105℃~130℃の温度条件で、所定時間加熱殺菌を行うことが重要である。
【0040】
また、加熱工程は、10分以内に米加工物の中心温度を105℃~130℃に上昇させる工程であることが好ましい。すなわち、加熱工程は、目的の加熱殺菌温度に達するまでの時間を急速とすることが好ましい。
加熱殺菌温度は、より好ましくは110~130℃であり、さらに好ましくは110℃~125℃であり、特に好ましくは110~120℃である。
上記加熱殺菌温度に達するまでの時間は、より好ましくは4分以内であり、さらに好ましくは3分以内であり、特に好ましくは2分以内である。
このような急速加熱を行うことで、ゲル状米加工物の劣化をより抑制することができる。
【0041】
加熱工程後、常法により容器詰め米加工食品を冷却することで、ゲル状の米加工物を含む市場にそのまま流通可能な容器詰め米加工食品を得ることができる。
【0042】
(5)容器詰め米加工食品
本発明は、上述した製造方法により製造された容器詰め米加工食品に関する。本発明の容器詰め米加工食品は、ゲル状の米加工物が、密封容器に充填された食品である。本発明の容器詰め米加工食品は、好ましくはレトルト食品である。
容器詰め米加工食品におけるゲル状米加工物は、餅様のゲル状米加工物であってもよく、クリーム様のゲル状米加工物であってもよい。
【0043】
容器詰め米加工食品は、喫食時に加熱調理を必要としない食品であることが好ましい。
本発明の容器詰め米加工食品は、上述の通り十分に殺菌がされており、品質の劣化も極力抑えられているため、喫食時に加熱を行わなくとも、容器を開封して、そのまま喫食することができる。なお、上記特徴は喫食時に加熱処理を行うことを制限するものではない。
【0044】
本発明の容器詰め米加工食品は、保存性に優れ、品質を保持しながら、長い賞味期限を確保することができる。したがって、災害時等の保存食として利用することができる。
なお、上記特徴を物の構造又は特性により直接特定することは、不可能であるか、およそ実際的ではない。
保存性を示す指標として、例えば検査項目や検査期間、保存温度等を設定して、理化学試験や、官能試験、微生物試験検査を行うことが考えられる。しかし、レトルト加熱により殺菌された食品は、賞味期限が長く、平均的に1~2年もの賞味期限を有するものであるから、保存性が高いこと、すなわち従来技術と比して長い期間物性や品質が変化しないことを証明するには、製造後1年~2年程度の保存を得たあと、上記試験に供する必要があり、かつ、その中でも従来技術と比して特徴的なパラメータを考察、検討する必要がある。先願主義の下、上記実験と検討を行った後に出願を行うことは、およそ実際的ではない。
【実施例0045】
<米加工物の充填性の確認試験>
ゲル状の米加工物の充填が困難であることを示すために、液状米加工物を容器に充填する場合と、ゲル状の米加工物を容器に充填する場合との比較試験を実施した。
【0046】
まず、原料米(うるち米)100gを常法により洗米した後、原料米の重量に対して1.2倍量の水を加え、25℃で1時間、米を浸水させた。
その後、浸水に使用した水を捨て、加水された原料米を高機能ブレンダー(バイタミックス社製)に投入した。高機能ブレンダーに、原料米の重量に対して3倍量の水を加え、4分間破砕を行い、液状米加工物を得た。
【0047】
得られた液状米加工物の一部を、透明のジッパー付き袋に充填した(液状米加工物充填)。
また、液状米加工物の一部をフライパンに移し、加熱して液状米加工物をゲル化させた。
得られたゲル状米加工物を、ヘラやスプーン等でかき取り、透明のジッパー付き袋に充填した。
これらの過程や充填後の結果について、
図1に示す。
【0048】
図1に示す通り、液状米加工物は、容器に容易に充填することができるのに対し、ゲル状米加工物は、フライパンにこびりつき、回収が容易ではなく、素材ロスが生じ得ることが起こり得ることがわかった。また、ゲル状米加工物は、充填する容器にもこびりつきやすく、綺麗に充填することが困難であった。
【0049】
本試験例では、人の手によってゲル状米加工物を充填する例を示したが、装置を用いた充填であっても、ゲル状米加工物の粘性に由来する同様の問題が生じ得ると理解される。
すなわち、容器への充填前にゲル状米加工物を調製することで、加熱容器や、その後の処理を行う装置、配管等にゲル状米加工物がこびりつくことで、素材ロスが生じる恐れがある。さらに、ゲル状米加工物が配管等に詰まることで、装置の故障の原因にもなる。素材ロスを低減させるため、又は装置の故障を防ぐためには、装置へのこびりつきを抑制するための機構が必要となり、装置が複雑化し、製造コストが増大する。
さらに、ゲル状米加工物を容器に充填するためには、粘性体に適した充填機を用意する必要がある。
【0050】
一方、本願発明の製造方法によれば、液状米加工物のゲル化は、容器の充填後に行われるため、製造装置にゲル状米加工物がこびりつくことがない。また、容器への充填も液状米加工物の状態で行われるため、一般的な液体充填機を用いることができる。さらに、容器の充填後に行われるレトルト加熱により、ゲル化とともに殺菌を行うため、ゲル状米加工物が空気に触れることがなく、保存性に優れる。
【0051】
<製造例>
前述の確認試験と同様の手順により、液状米加工物を調製した。調製した液状米加工物をレトルトパウチに充填した後、真空包装機を用いてレトルトパウチを減圧し、レトルトパウチの開封部をヒートシールした。液状米加工物が充填されたレトルトパウチを、レトルト加熱殺菌装置(東洋製罐社製)を用いてレトルト加熱した。レトルト加熱は、米加工物の中心温度を急速加熱で120℃に昇温した後、8分間の加熱を行った。
図2に、製造された容器詰め米加工食品(
図2上図)と、容器を開封し、紙皿に配置したゲル状米加工物(
図2下図)を示す。
【0052】
図2に示す通り、液状の米加工物をレトルトパウチに充填し、レトルト加熱を行った場合でも、粘性等の物性が従来品と同等のゲル状米加工物を得ることができた。本願発明の容器詰め米加工食品は、レトルト加熱に供されているため、保存性に優れる。
ゲル状米加工物を、加熱調理をせずにそのまま喫食したところ、餅様食感の食品であることを確認した。
【0053】
図3~
図5に、本発明の容器詰め米加工食品の応用例を示す。
図3は、餅様のゲル状米加工物にきざみ海苔とわさびを乗せた例である。
図4は、餅様のゲル状米加工物にきな粉をまぶした例である。
本発明のゲル状米加工物は、餅様食感を有し、長期間常温で保存可能であり、喫食時に加熱調理を必要としない。きな粉等のタンパク質と併せて喫食することで、災害時等の栄養補給に利用することができる。
【0054】
図5は、クリーム様のゲル状米加工物を加熱済の野菜パウダーと併せてペーストとし、パンに塗った例である。
植物性の素材を用いて味を整えることで、ビーガン対応、アレルギー対応の食品を簡便に調製することができる。