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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067518
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】汎用エンジン装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/00 20060101AFI20240510BHJP
   F23Q 3/00 20060101ALI20240510BHJP
   B60K 5/06 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
F02D29/00 B
F23Q3/00 101D
B60K5/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177667
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】317019683
【氏名又は名称】株式会社Willbe
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】霜上 純
(72)【発明者】
【氏名】仲出川 大補
(72)【発明者】
【氏名】幾田 兼士
【テーマコード(参考)】
3D235
3G093
【Fターム(参考)】
3D235AA12
3D235BB19
3D235BB23
3D235BB45
3D235CC06
3D235CC33
3G093AA08
3G093BA28
3G093DB22
(57)【要約】
【課題】エンジンの駆動によって発生する熱や振動のバッテリに対する影響、及び製造コストの上昇を抑制しつつ、作業機に搭載された際には良好な作業機の操縦性を実現することができる。
【解決手段】フレームと、フレームから延在するアームと、アームに設けられるハンドルと、を有する作業機に搭載される汎用エンジン装置は、アームの延在方向においてフレームとハンドルとの間に位置するようにアームに取り付けられるバッテリと、フレームに載置され、バッテリから供給される電力によって駆動するモータと、フレームに載置され、モータの駆動力によって回転するクランク軸を含むエンジンと、ハンドルに取り付けられ、バッテリからモータへ電力を供給するか否かを切り換え可能なスタータスイッチと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、前記フレームから延在するアームと、前記アームに設けられるハンドルと、を有する作業機に搭載される汎用エンジン装置であって、
前記アームの延在方向において前記フレームと前記ハンドルとの間に位置するように前記アームに取り付けられるバッテリと、
前記フレームに載置され、前記バッテリから供給される電力によって駆動するモータと、
前記フレームに載置され、前記モータの駆動力によって回転するクランク軸を含むエンジンと、
前記ハンドルに取り付けられ、前記バッテリから前記モータへ電力を供給するか否かを切り換え可能なスタータスイッチと、を備える、
汎用エンジン装置。
【請求項2】
前記バッテリと前記モータとを電気的に接続する高電流電線を覆う金属製の金属管をさらに備える、
請求項1に記載の汎用エンジン装置。
【請求項3】
前記アームは、前記フレームに対して揺動可能に構成されており、
前記金属管は、少なくとも一部に蛇腹形状を有する蛇腹部を含む、
請求項2に記載の汎用エンジン装置。
【請求項4】
前記金属管は、前記バッテリを収容するバッテリボックスから前記モータを収容するモータケーシングまで延び、
前記金属管を前記バッテリボックス及び前記アームのうちの少なくとも一方に固定する一端側固定部をさらに備える、
請求項2又は3に記載の汎用エンジン装置。
【請求項5】
前記金属管は、前記バッテリを収容するバッテリボックスから前記モータを収容するモータケーシングまで延び、
前記金属管を、前記エンジンを収容するエンジンケーシングに固定する他端側固定部をさらに備える、
請求項2又は3に記載の汎用エンジン装置。
【請求項6】
前記アームは、前記延在方向に沿って伸縮自在に構成される伸縮部を含み、
前記バッテリは、前記伸縮部よりも前記延在方向の前記フレーム側に位置している、
請求項1から3の何れか一項に記載の汎用エンジン装置。
【請求項7】
前記エンジンの駆動によって前記バッテリに充電するための電力を発生させる電力発生装置と、
前記エンジンの電源をON又はOFFに切り換え可能な電源スイッチを介して前記電力発生装置と前記バッテリとを接続する充電ラインと、をさらに備える、
請求項1から3の何れか一項に記載の汎用エンジン装置。
【請求項8】
前記アームが前記フレームと接続する始点を前記アームの長さに対する0%の位置とし、前記始点から前記アームが前記ハンドルと接続する終点に向かうにつれて増加し、前記終点を前記アームの長さに対する100%の位置として定義した場合、
前記バッテリは、前記アームの長さに対する10%以上70%以下の範囲内に位置するように前記アームに取り付けられている、
請求項1から3の何れか一項に記載の汎用エンジン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレームと、フレームから延在するアームと、アームに設けられるハンドルと、を有する作業機に搭載される汎用エンジン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2のそれぞれには、バッテリから供給される電力によってモータを駆動させ、このモータの駆動によってエンジンを始動させる汎用エンジン装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-196720号公報
【特許文献2】特開2014-148966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、バッテリがエンジンと共にフレームに搭載されているため、エンジンの駆動によって発生する熱や振動がバッテリに伝達され、バッテリの製品寿命を短くする虞がある。特許文献2に記載の技術では、バッテリがエンジンから離れたハンドルにスイッチと共に設けられているため、バッテリとモータとを接続する電線が長くなることによる製造コストの上昇を招く虞がある。また、ハンドルにバッテリを設置するとハンドルの重量が増加するので、ハンドルを介した作業機の操縦性の悪化を招く虞がある。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、エンジンの駆動によって発生する熱や振動のバッテリに対する影響、及び製造コストの上昇を抑制しつつ、作業機に搭載された際には良好な作業機の操縦性を実現できる汎用エンジン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る汎用エンジン装置は、フレームと、前記フレームから延在するアームと、前記アームに設けられるハンドルと、を有する作業機に搭載される汎用エンジン装置であって、前記アームの延在方向において前記フレームと前記ハンドルとの間に位置するように前記アームに取り付けられるバッテリと、前記フレームに載置され、前記バッテリから供給される電力によって駆動するモータと、前記フレームに載置され、前記モータの駆動力によって回転するクランク軸を含むエンジンと、前記ハンドルに取り付けられ、前記バッテリから前記モータへ電力を供給するか否かを切り換え可能なスタータスイッチと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の汎用エンジン装置によれば、エンジンの駆動によって発生する熱や振動のバッテリに対する影響、及び製造コストの上昇を抑制しつつ、作業機に搭載された際には良好な作業機の操縦性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る汎用エンジン装置を含む作業機の構成を概略的に示す図である。
図2】一実施形態に係るアームの構成を概略的に示す図である。
図3】一実施形態に係る金属管の構成を説明するための図である。
図4】一実施形態に係る汎用エンジン装置の制御構成を概略的に示す図である。
図5】一実施形態に係る一端側固定部及び他端側固定部の構成を概略的に示す斜視図である。
図6図5に示す一端側固定部を用いて金属管を固定する一例を示す図である。
図7図5に示す他端側固定部を用いて金属管を固定する一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態による汎用エンジン装置について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
本開示に係る汎用エンジン装置は、フレームと、フレームから延在するアームと、アームに設けられるハンドルと、を有する作業機に搭載される。本開示では、作業機が利用者によって携行される草刈機(いわゆる歩行型の草刈機)である場合を例にして説明するが、作業機を歩行型の草刈機に限定するものではない。また、作業機は草刈機に限定されず、茶刈機や刈払機等であってもよく、汎用エンジン装置は茶刈機や刈払機等の動力源として用いられる。
【0011】
<作業機の構成>
図1は、一実施形態に係る汎用エンジン装置1を含む作業機100(草刈機)の構成を概略的に示す図である。図1に示すように、作業機100は、フレーム102と、アーム104と、ハンドル106と、駆動体108(刈刃や車輪)と、汎用エンジン装置1と、を含む。
【0012】
フレーム102は、後述する汎用エンジン装置1のモータ4及びエンジン6の両方が載置可能に構成されているのであれば特に限定されず、例えば、板形状を有する板状部材であってもよいし、パイプをループ状に形成した台であってもよい。
【0013】
アーム104は、フレーム102から延在する。図1に例示する形態では、アーム104は、フレーム102に対して揺動可能に構成されており、例えば、ヒンジ109によってフレーム102に結合されている。アーム104は、作業機100の進行方向(前後方向)に沿って揺動してもよいし、作業機100の進行方向とは直交する方向(左右方向)に沿って揺動してもよい。作業機100は、1つのアーム104を含んでいてもよいし、複数のアーム104を含んでいてもよい。
【0014】
図2は、一実施形態に係るアーム104の構成を概略的に示す図である。一実施形態では、図2に例示するように、アーム104は、アーム104が延在する延在方向Dに沿って伸縮自在に構成される伸縮部110を含む。一実施形態では、アーム104は、小筒部112と、大筒部114と、を含む。小筒部112及び大筒部114のそれぞれは四角筒形状又は円筒形状を有しており、大筒部114の内径は小筒部112の外径よりも大きい。大筒部114の延在方向Dのフレーム102側とは反対側の一端は開口している。作業機100の操縦者によって小筒部112が延在方向Dのフレーム102側に向かって押し込まれると、小筒部112の一部112aが大筒部114内に挿入され、伸縮部110が縮む。そして、作業機100の操縦者によって小筒部112が延在方向Dのフレーム102側とは反対側に向かって引っ張られると、伸縮部110が伸びる。図2に例示する形態では、アーム104の小筒部112には、ハンドル106が設けられている。アーム104の大筒部114は、フレーム102に結合されている。尚、図2に例示する形態では、小筒部112は、大筒部114よりも延在方向Dのハンドル106側に位置していたが、本開示はこの形態に限定されない。不図示であるが、幾つかの実施形態では、小筒部112は、大筒部114よりも延在方向Dのハンドル106側とは反対側に位置する。
【0015】
ハンドル106は、アーム104に設けられる。図1に例示するように、ハンドル106は、アーム104の延在方向Dのフレーム102側とは反対側の先端に設けられる。ハンドル106は、作業機100の操縦者が把持可能に構成されている。
【0016】
駆動体108は、後述する汎用エンジン装置1のエンジン6の動力によって駆動する。
【0017】
<汎用エンジン装置>
(構成)
図1に示すように、汎用エンジン装置1は、バッテリ2と、モータ4と、エンジン6と、スタータスイッチ8と、を含む。
【0018】
バッテリ2は、図2に示すように、延在方向Dにおいてフレーム102とハンドル106との間に位置するようにアーム104に取り付けられている。一実施形態では、バッテリ2は、バッテリボックス3に収容されており、バッテリボックス3を介してアーム104に取り付けられている。一実施形態では、バッテリ2がモータ4を含む補機類の電気供給源である。
【0019】
一実施形態では、図2に例示するように、アーム104がフレーム102と接続する始点113をアーム104の長さに対する0%の位置と定義する。そして、始点113からアーム104がハンドル106と接続する終点115に向かうにつれて増加し、終点115をアーム104の長さに対する100%の位置として定義する。始点113は、アーム104の延在方向Dのフレーム102側の一端の位置である。終点115は、アーム104の延在方向Dのフレーム102側とは反対側の他端の位置である。バッテリ2は、アーム104の長さに対する10%以上70%以下の範囲R内に位置するようにアーム104に取り付けられている。一実施形態では、バッテリボックス3は範囲R内に位置している。
【0020】
一実施形態では、バッテリ2は、伸縮部110よりも延在方向Dのフレーム102側に位置している。つまり、アーム104は、バッテリ2よりも延在方向Dのフレーム102側の部分に伸縮部110を含んでいない。
【0021】
モータ4は、図1に示すように、フレーム102に載置されている。一実施形態では、モータ4はモータケーシング5に収容されており、モータケーシング5は後述するエンジンケーシング7に載置されている。作業機100は、バッテリ2とモータ4とを電気的に接続する高電流電線118を含んでいる。モータ4は、バッテリ2から高電流電線118を介して供給される電力によって駆動する。
【0022】
一実施形態では、図1に例示するように、汎用エンジン装置1は、高電流電線118を覆う金属製の金属管10をさらに含む。この金属管10は、バッテリボックス3からモータケーシング5まで延びている。図3は、一実施形態に係る金属管10の構成を説明するための図である。一実施形態では、図3に例示するように、金属管10は、複数の山折り部121及び谷折り部122が交互に形成されることで蛇腹形状を有する蛇腹部120を含んでいる。図3に例示する形態では、金属管10の全部が蛇腹部120を含んでいる。幾つかの実施形態では、金属管10の一部が蛇腹部120を含む。
【0023】
エンジン6は、図1に示すように、フレーム102に載置されている。一実施形態では、エンジン6は、エンジンケーシング7に収容されており、エンジンケーシング7を介してフレーム102に載置されている。エンジン6は、モータ4の駆動力によって回転するクランク軸12を含む。
【0024】
エンジン6は、燃料の燃焼によって動力を出力可能に構成されており、例えば、2サイクルのレシプロエンジンである。このようなエンジン6は、不図示であるが、内部に燃料と空気とを含む混合気を燃焼させる燃焼室が形成されているシリンダと、燃焼室内に配置されているピストンと、ピストンとクランク軸12とを接続するコネクティングロッドと、を有している。
【0025】
一実施形態では、図1に例示するように、汎用エンジン装置1は、エンジン6の駆動によってバッテリ2に充電するための電力を発生させるチャージコイル17(電力発生装置)をさらに含んでいる。チャージコイル17は、エンジン6に設けられており、エンジン6の駆動(フライホイールの回転)によって発電する発電用のコイルである。チャージコイル17で発電された電力は、不図示のレギュレータを介してバッテリ2に供給されて充電される。
【0026】
一実施形態では、図1に例示するように、汎用エンジン装置1は、燃焼室内の混合気に点火するように構成された点火装置19をさらに含んでいる。点火装置19は、エンジン6に設けられており、点火コイル21と点火プラグ23とを含んでいる。点火プラグ23は、点火コイル21が増幅させた高圧電流を火花放電することで燃焼室内の混合気を着火燃焼させ、火炎を発生させる。
【0027】
スタータスイッチ8は、図1に示すように、ハンドル106に取り付けられている。このスタータスイッチ8は、バッテリ2からモータ4へ電力を供給するか否かを切り換え可能に構成されている。一実施形態では、図1に例示するように、スタータスイッチ8は、バッテリボックス3とは別体にハンドル106に取り付けられている。作業機100は、バッテリ2とスタータスイッチ8とを電気的に接続する低電流電線119を含んでいる。スタータスイッチ8は、エンジン6を始動するためのスイッチであり、例えば、モメンタリプッシュスイッチで構成されている。作業機100の操縦者がスタータスイッチ8を押下していると、低電流電線119は導通状態になる。低電流電線119が導通状態になると、バッテリ2からモータ4へ電力が供給され、モータ4の駆動力によってクランク軸12を回転させ、エンジン6を始動させる。つまり、本開示に係るモータ4は、セルモータである。一方で、作業機100の操縦者がスタータスイッチ8を解放していると、低電流電線119は非導通状態になり、バッテリ2からモータ4への電力供給が遮断される。
【0028】
一実施形態では、図1に例示するように、作業機100は、エンジン6の電源をON又はOFFに切り換え可能な電源スイッチ124をさらに含んでいる。この電源スイッチ124は、ハンドル106に取り付けられている。電源スイッチ124は、例えば、ロッカースイッチ(シーソースイッチともいう)で構成され、エンジン6を駆動させる際にONにされ、エンジン6を停止する際にOFFにされる。電源スイッチ124は、バッテリボックス3とは別体にハンドル106に取り付けられており、エンジン6をONにする際には充電回路が接続され、エンジン6をOFFにすると該当回路が遮断される。
【0029】
図4は、一実施形態に係る作業機100(草刈機)の制御構成を概略的に示す図(回路図)である。一実施形態では、図4に例示するように、汎用エンジン装置1は、電源スイッチ124を介してチャージコイル17とバッテリ2とを接続する充電ライン30をさらに含んでいる。充電ライン30は、バッテリ2からモータ4に電力が供給(放電)される高電流電線118(放電ライン)とは別体に設けられている。具体的には、充電ライン30は、チャージコイル17と電源スイッチ124とを接続する上流側充電ライン30aと、電源スイッチ124とバッテリ2とを接続する下流側充電ライン30bと、を含む。
【0030】
一実施形態では、図1に例示するように、汎用エンジン装置1は、金属管10をバッテリボックス3に固定する一端側固定部32、及び金属管10をエンジンケーシング7に固定する他端側固定部50をさらに含む。
【0031】
一端側固定部32は、金属管10のバッテリボックス3側の一端部10aをバッテリボックス3に固定する。金属管10の一端部10aは、金属管10の径の大きさをAとした場合に、金属管10のうちバッテリボックス3と当接する金属管10の一端から金属管10の他端に向かって6Aまで延ばした範囲内に位置する(図6参照)。より具体的には、金属管10の径の大きさAが18mmである場合、金属管10の一端部10aは金属管10の一端から他端に向かって12mm以上92mm以下の範囲に位置する。
【0032】
他端側固定部50は、金属管10のモータケーシング5側の他端部10bをエンジンケーシング7に固定する。金属管10の他端部10bは、金属管10のうちモータケーシング5と当接する金属管10の他端から金属管10の一端に向かって5A以上10A以下の範囲内に位置する(図7参照)。より具体的には、金属管10の径の大きさAが18mmである場合、金属管10の他端部10bは金属管10の他端から一端に向かって100mm以上180mm以下の範囲に位置する。
【0033】
一端側固定部32の構成について説明する。図5は、一実施形態に係る一端側固定部32の構成を概略的に示す斜視図である。一実施形態では、図5に例示するように、一端側固定部32は、ボルト34と、ボルト34によって挿通される挿通部36と、挿通部36に接続され、金属管10を挟持可能に構成される挟持部38と、を含んでいる。
【0034】
挿通部36は、板形状を有しており、挿通部36を貫通するボルト孔37が形成されている。ボルト34は、このボルト孔37に挿通される。挟持部38は、円筒形状を有するとともに、金属管10が貫通される貫通孔41が形成されている本体部40と、本体部40と挿通部36とを接続する接続部42と、を含んでいる。図5に例示する形態では、挿通部36と挟持部38とは互いに一体的に構成されている。
【0035】
図6は、図5に示す一端側固定部32を用いて金属管10を固定する一例を示す図である。一実施形態では、図6に例示するように、バッテリボックス3は、バッテリ2が収容されているケース本体部44と、ケース本体部44よりもフレーム102側に延びるフランジ部46と、を含んでいる。フランジ部46は、ケース本体部44とアーム104との間に位置している。ケース本体部44とフランジ部46とは互いに一体的に構成されていてもよい。
【0036】
図6に例示するように、金属管10の一端部10aが挟持部38によって挟持されるとともに、挿通部36及びフランジ部46がボルト34によって互いに締結されている。つまり、一端側固定部32は、金属管10の一端部10aをバッテリボックス3に固定(クランプ)している。不図示であるが、幾つかの実施形態では、一端側固定部32は、金属管10の一端部10aをアーム104に固定している。
【0037】
他端側固定部50の構成について説明する。一実施形態では、他端側固定部50と一端側固定部32とは、互いに同様の構成を有している。このため、本開示では、図5に示す一端側固定部32を他端側固定部50とし、他端側固定部50の構成の説明を省略する。
【0038】
図7は、図5に示す他端側固定部50を用いて金属管10を固定する一例を示す図である。図7に例示するように、金属管10の他端部10bが挟持部38によって挟持されるとともに、挿通部36及びエンジンケーシング7がボルト34によって互いに締結されている。つまり、他端側固定部50は、金属管10の他端部10bをエンジンケーシング7に固定(クランプ)している。
【0039】
(作用・効果)
本開示の一実施形態に係る汎用エンジン装置1の作用・効果について説明する。一実施形態によれば、エンジン6はフレーム102に載置され、バッテリ2はフレーム102とハンドル106との間に位置するようにアーム104に取り付けられているので、バッテリ2とエンジン6とは互いに離間している。このため、エンジン6の駆動によって発生する熱のバッテリ2に対する影響を抑制し、バッテリ2の製品寿命を長くすることができる。また、エンジン6の駆動によって発生する振動のバッテリ2に対する影響が抑制されるので、バッテリ2の防振構造を簡素化(製造コストを削減)することができる。
【0040】
一実施形態によれば、バッテリ2はハンドル106よりもフレーム102側に位置しているので、ハンドル106にバッテリ2を設置する場合と比較して、高電流電線118を短くし、高電流電線118の性能低下、及び製造コストの上昇を抑制することができる。さらに、ハンドル106にバッテリ2を設置する場合と比較して、アーム104に作用する全体重心を駆動体108に近づける事が出来るので、良好な作業機100の操縦性を実現することができる。
【0041】
一実施形態によれば、バッテリ2は、範囲R内に位置するようにアーム104に取り付けられている。つまり、バッテリ2は、アーム104の中央付近に設けられている。このため、ハンドル106にバッテリ2が設けられる場合と比較して、作業機100を重量バランスの取りやすい構造にすることができる。また、ハンドル106にバッテリ2が設けられる場合と比較して脱落時の損傷が小さいため、バッテリボックス3の強度を下げることができる(バッテリボックス3の簡素化を図ることができる)。
【0042】
作業機100によって草刈りをしている際に、ごみ等の障害物が飛散する。特に、障害物は、駆動体108の付近を飛散する。そして、低電流電線119は、この飛散した障害物によって断線する虞がある。一実施形態によれば、低電流電線119がバッテリ2よりもハンドル106側に位置する。つまり、低電流電線119は、アーム104の中央付近よりもハンドル106側に他配線125と共に配線束を形成する。このため、飛散した障害物による低電流電線119への衝突を抑制する。このため、低電流電線119の断線を抑制することができる。尚、他配線125は、スタータスイッチ8とエンジン6とを電気的に接続するものである。
【0043】
一実施形態によれば、高電流電線118が金属管10によって覆われているので、高電流電線118に流れる電気ノイズがエンジン6の点火コイル21に作用することを抑制する。このため、エンジン6の誤作動(点火タイミングのずれなど)を抑制することができる。
【0044】
一実施形態によれば、金属管10の全部が蛇腹部120を含むので、アーム104の揺動に応じて金属管10を変形させ、作業機100の操縦性を向上させることができる。
【0045】
一実施形態によれば、バッテリ2は伸縮部110よりもアーム104のフレーム102側に位置しているので、バッテリ2及び高電流電線118のそれぞれと伸縮部110とが互いに干渉することを防止する。このため、アーム104の伸縮を実現させることができる。
【0046】
一実施形態によれば、図4に例示したように、充電ライン30が電源スイッチ124を介してチャージコイル17とバッテリ2とを接続している。電源スイッチ124によってエンジン6の電源がONに切り換えられると、点火コイル21からの回路がアースEから遮断され、且つ、充電ライン30がアースEと接続される。よって、点火プラグ23は電圧を蓄えられる状態になる。また、充電ライン30はバッテリ2のアースEが接続されるため、充電を開始させることができる。一方で、エンジン6の電源がONの状態の際にスタータスイッチ8が押下されると、バッテリ2からの電流がモータ4を通じてアースEへ流れる。スタータスイッチ8を解放するとモータ4を通じた回路は切断される(バッテリ2が充電される)。電源スイッチ124によってエンジン6の電源がOFFに切り換えられると、点火コイル21はアースEと接続されて、点火プラグ23への送電が停止され、エンジン6が停止する。また、充電ライン30はアースEから切り離されてバッテリ2からアースEへの自然放電を防止する。
【0047】
作業機100を操縦している際に、金属管10の揺れによって金属管10がバッテリボックスに衝突し、金属管10又はバッテリボックス3(特に、金属管10の一端と当接している防水シール)が損傷する虞がある。一実施形態によれば、金属管10の一端部10aが一端側固定部32によってバッテリボックス3に固定されているので、金属管10の一端部10aの揺れが抑制される。このため、作業機100を操縦している際に、バッテリボックス3または金属管10が損傷することを抑制できる。
【0048】
作業機を操縦している際に、金属管10の揺れによって金属管10がモータケーシング5に衝突し、金属管10又はモータケーシング5が損傷する虞がある。一実施形態によれば、金属管10の他端部10bが他端側固定部50によってエンジンケーシング7に固定されているので、金属管10の他端部10bの揺れが抑制される。このため、作業機100を操縦している際に、金属管10又はモータケーシング5が損傷することを抑制できる。
【0049】
一実施形態によれば、スタータスイッチ8及び電源スイッチ124のそれぞれがバッテリボックス3とは別体にハンドル106に取り付けられている。つまり、ハンドル106には、バッテリ2が組み込まれず、スタータスイッチ8及び電源スイッチ124が組み込まれている。このため、ハンドル106のデザインの簡素化や、エンジン6の始動の利便性を向上させることができる。
【0050】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0051】
[1]本開示に係る汎用エンジン装置(1)は、
フレーム(102)と、前記フレームから延在するアーム(104)と、前記アームに設けられるハンドル(106)と、を有する作業機(100)に搭載される汎用エンジン装置(1)であって、
前記アームの延在方向(D)において前記フレームと前記ハンドルとの間に位置するように前記アームに取り付けられるバッテリ(2)と、
前記フレームに載置され、前記バッテリから供給される電力によって駆動するモータ(4)と、
前記フレームに載置され、前記モータの駆動力によって回転するクランク軸(12)を含むエンジン(6)と、
前記ハンドルに取り付けられ、前記バッテリから前記モータへ電力を供給するか否かを切り換え可能なスタータスイッチ(8)と、を備える。
【0052】
上記[1]に記載の構成によれば、エンジンはフレームに載置され、バッテリはフレームとハンドルとの間に位置するようにアームに取り付けられているので、バッテリとエンジンとは互いに離間している。このため、エンジンの駆動によって発生する熱や振動のバッテリへの影響を抑制することができる。また、バッテリはハンドルよりもフレーム側に位置しているので、ハンドルにバッテリを設置する場合と比較して、バッテリとモータとを接続する高電流電線を短くし、製造コストの上昇を抑制することができる。さらに、ハンドルにバッテリを設置する場合と比較して、ハンドルを軽量化することができるので、良好な作業機の操縦性を実現することができる。
【0053】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記バッテリと前記モータとを電気的に接続する高電流電線(118)を覆う金属製の金属管(10)をさらに備える。
【0054】
上記[2]に記載の構成によれば、高電流電線に流れる電気ノイズがエンジンの構成部材(例えば、点火コイル)に作用してしまうことによるエンジンの誤作動を抑制することができる。
【0055】
[3]幾つかの実施形態では、上記[2]に記載の構成において、
前記アームは、前記フレームに対して揺動可能に構成されており、
前記金属管は、少なくとも一部に蛇腹形状を有する蛇腹部(120)を含む。
【0056】
上記[3]に記載の構成によれば、アームの揺動に応じて金属管の蛇腹部が変形するので、作業機の操縦性を向上させることができる。
【0057】
[4]幾つかの実施形態では、上記[2]又は[3]に記載の構成において、
前記金属管は、前記バッテリを収容するバッテリボックス(3)から前記モータを収容するモータケーシング(5)まで延び、
前記金属管を前記バッテリボックス及び前記アームのうちの少なくとも一方に固定する一端側固定部(32)をさらに備える。
【0058】
上記[4]に記載の構成によれば、作業機を操縦している際に、外力等による金属管の揺れによって発生するバッテリボックスまたは金属管の損傷を抑制することができる。
【0059】
[5]幾つかの実施形態では、上記[2]から[4]の何れか1つに記載の構成において、
前記金属管は、前記バッテリを収容するバッテリボックス(3)から前記モータを収容するモータケーシング(5)まで延び、
前記金属管を、前記エンジンを収容するエンジンケーシング(7)に固定する他端側固定部(34)をさらに備える。
【0060】
上記[5]に記載の構成によれば、作業機を操縦している際に、外力等による金属管の揺れによって発生するバッテリボックスまたは金属管の損傷を抑制することができる。
【0061】
[6]幾つかの実施形態では、上記[1]から[5]の何れか1つに記載の構成において、
前記アームは、前記延在方向に沿って伸縮自在に構成される伸縮部(110)を含み、
前記バッテリは、前記伸縮部よりも前記延在方向の前記フレーム側に位置している。
【0062】
上記[6]に記載の構成によれば、バッテリ及び高電流電線のそれぞれと伸縮部とが互いに干渉することを防止し、アームの延在方向に沿った伸縮を実現させることができる。
【0063】
[7]幾つかの実施形態では、上記[1]から[6]の何れか1つに記載の構成において、
前記エンジンの駆動によって前記バッテリに充電するための電力を発生させる電力発生装置(17)と、
前記エンジンの電源をON又はOFFに切り換え可能な電源スイッチ(124)を介して前記電力発生装置と前記バッテリとを接続する充電ライン(30)と、をさらに備える。
【0064】
上記[7]に記載の構成によれば、エンジンの電源がOFFに切り換えられている際に、充電ラインを介したバッテリの放電を防止することができる。
【0065】
[8]幾つかの実施形態では、上記[1]から[7]の何れか1つに記載の構成において、
前記アームが前記フレームと接続する始点(113)を前記アームの長さに対する0%の位置とし、前記始点から前記アームが前記ハンドルと接続する終点(115)に向かうにつれて増加し、前記終点を前記アームの長さに対する100%の位置として定義した場合、
前記バッテリは、前記アームの長さに対する10%以上70%以下の範囲(R)内に位置するように前記アームに取り付けられている。
【0066】
上記[8]に記載の構成によれば、アームの延在方向におけるアームの中央付近にバッテリが設けられるので、ハンドルにバッテリが設けられる場合と比較して、作業機を重量バランスの取りやすい構造にすることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 汎用エンジン装置
2 バッテリ
3 バッテリボックス
4 モータ
5 モータケーシング
6 エンジン
7 エンジンケーシング
8 スタータスイッチ
10 金属管
12 クランク軸
17 チャージコイル
19 点火装置
21 点火コイル
23 点火プラグ
30 充電ライン
30a 上流側充電ライン
30b 下流側充電ライン
32 一端側固定部
34 他端側固定部
100 作業機
102 フレーム
104 アーム
106 ハンドル
108 駆動体
110 伸縮部
113 始点
115 終点
118 高電流電線
119 低電流電線
120 蛇腹部
124 電源スイッチ
D アームの延在方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7