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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067528
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】解析システム及び解析方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240510BHJP
【FI】
G06T7/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177677
(22)【出願日】2022-11-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.陳 宇超、新妻 実保子らが、2022年9月5日付で、第40回 日本ロボット学会学術講演会において公開。 2.陳 宇超、新妻 実保子らが、2022年9月4日付で、第40回 日本ロボット学会学術講演会の予稿集において公開。
(71)【出願人】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】新妻 実保子
(72)【発明者】
【氏名】陳 宇超
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA09
5L096CA04
5L096DA01
5L096EA03
5L096EA39
5L096FA32
5L096FA59
5L096FA60
5L096FA66
5L096FA67
5L096GA51
5L096HA02
5L096HA04
5L096HA08
5L096JA03
5L096JA11
5L096MA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】時間帯毎の所定空間の使われ方の違いを把握することが容易になる、解析システム及び解析方法を提供する。
【解決手段】解析システム1は、所定測定時間間隔毎の各測定時刻に所定空間内における物体までの距離を測定して点群データを出力する測域センサ2と、解析装置3と、を備える。解析装置の処理部31は、所定観察期間中において各測定時刻に測域センサから出力される点群データに基づいて、所定観察期間が等分化されてなる複数の単位観察時間帯を、それぞれ非活性時間帯又は活性時間帯に分類する。非活性時間帯グループ期間中において、点群データに基づいて非活性環境地図を作成する。活性時間帯グループ期間のそれぞれに対し、点群データに基づいて活性環境地図を作成する。各非活性環境地図及び各活性環境地図どうしの類似度に応じてすべての非活性環境地図及び各活性環境地図どうしをクラスタリングする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定測定時間間隔毎の各測定時刻に所定空間内における物体までの距離を測定して点群データを出力する、測域センサと、
処理部と、
を備えた、解析システムであって、
前記処理部は、
所定観察期間中において各前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、前記所定観察期間が等分化されてなる複数の単位観察時間帯を、それぞれ、非活性時間帯、又は、前記非活性時間帯よりも前記所定空間の活性が高い活性時間帯に、分類する、時間帯分類処理と、
それぞれ互いに連続する1つ又は複数の前記非活性時間帯からなる1つ又は複数の非活性時間帯グループ期間のそれぞれに対し、前記非活性時間帯グループ期間中において各前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、非活性環境地図を作成するとともに、それぞれ互いに連続する1つ又は複数の前記活性時間帯からなる1つ又は複数の活性時間帯グループ期間のそれぞれに対し、前記活性時間帯グループ期間中において各前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、活性環境地図を作成する、環境地図作成処理と、
各前記非活性環境地図及び各前記活性環境地図どうしの類似度に応じてすべての前記非活性環境地図及び前記活性環境地図どうしをクラスタリングする、環境地図クラスタリング処理と、
を行うように構成されている、解析システム。
【請求項2】
前記処理部は、前記時間帯分類処理において、
(a)前記単位観察時間帯における前記所定空間内の平均人数が所定平均人数閾値未満であり、(b)前記単位観察時間帯における前記所定空間内の人の平均速度が所定平均速度閾値未満であり、かつ、(c)前記単位観察時間帯における前記所定空間内の人の利用面積が所定利用面積閾値未満である場合に、前記単位観察時間帯を前記非活性時間帯に分類し、
それ以外の場合に、前記単位観察時間帯を前記活性時間帯に分類する、請求項1に記載の解析システム。
【請求項3】
各前記非活性環境地図は、前記所定空間を俯瞰視し格子状に細分化することにより定義されるセル配列を有し、それぞれ対応する前記非活性時間帯グループ期間中における前記セル配列の各セルの活動度合いを表しており、
各前記活性環境地図は、前記セル配列を有し、それぞれ対応する前記活性時間帯グループ期間中における前記各セルの活動度合いを表している、請求項1に記載の解析システム。
【請求項4】
前記処理部は、前記環境地図クラスタリング処理において、
各前記非活性環境地図及び各前記活性環境地図をそれぞれ文字列に変換し、各前記文字列どうしの類似度に応じてすべての前記非活性環境地図及び前記活性環境地図どうしをクラスタリングする、請求項3に記載の解析システム。
【請求項5】
所定測定時間間隔毎の各測定時刻に所定空間内における物体までの距離を測定して点群データを出力する、測域センサと、
処理部と、
を備えた、解析システムを用いた、解析方法であって、
前記処理部が、所定観察期間中において各前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、前記所定観察期間が等分化されてなる複数の単位観察時間帯を、それぞれ、非活性時間帯、又は、前記非活性時間帯よりも前記所定空間の活性が高い活性時間帯に、分類する、時間帯分類ステップと、
前記処理部が、それぞれ互いに連続する1つ又は複数の前記非活性時間帯からなる1つ又は複数の非活性時間帯グループ期間のそれぞれに対し、前記非活性時間帯グループ期間中において各前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、非活性環境地図を作成するとともに、それぞれ互いに連続する1つ又は複数の前記活性時間帯からなる1つ又は複数の活性時間帯グループ期間のそれぞれに対し、前記活性時間帯グループ期間中において各前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、活性環境地図を作成する、環境地図作成ステップと、
前記処理部が、各前記非活性環境地図及び各前記活性環境地図どうしの類似度に応じてすべての前記非活性環境地図及び前記活性環境地図どうしをクラスタリングする、環境地図クラスタリングステップと、
を含む、解析方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析システム及び解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測域センサからの測定データに基づいて環境地図を作成する技術がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-139764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術においては、時間帯によって測定対象の空間の使われ方が異なる場合において、時間帯毎の当該空間の使われ方の違いを把握することが難しかった。
【0005】
本発明は、時間帯毎の所定空間の使われ方の違いを把握することが容易になる、解析システム及び解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕所定測定時間間隔毎の各測定時刻に所定空間内における物体までの距離を測定して点群データを出力する、測域センサと、
処理部と、
を備えた、解析システムであって、
前記処理部は、
所定観察期間中において各前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、前記所定観察期間が等分化されてなる複数の単位観察時間帯を、それぞれ、非活性時間帯、又は、前記非活性時間帯よりも前記所定空間の活性が高い活性時間帯に、分類する、時間帯分類処理と、
それぞれ互いに連続する1つ又は複数の前記非活性時間帯からなる1つ又は複数の非活性時間帯グループ期間のそれぞれに対し、前記非活性時間帯グループ期間中において各前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、非活性環境地図を作成するとともに、それぞれ互いに連続する1つ又は複数の前記活性時間帯からなる1つ又は複数の活性時間帯グループ期間のそれぞれに対し、前記活性時間帯グループ期間中において各前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、活性環境地図を作成する、環境地図作成処理と、
各前記非活性環境地図及び各前記活性環境地図どうしの類似度に応じてすべての前記非活性環境地図及び前記活性環境地図どうしをクラスタリングする、環境地図クラスタリング処理と、
を行うように構成されている、解析システム。
【0007】
〔2〕前記処理部は、前記時間帯分類処理において、
(a)前記単位観察時間帯における前記所定空間内の平均人数が所定平均人数閾値未満であり、(b)前記単位観察時間帯における前記所定空間内の人の平均速度が所定平均速度閾値未満であり、かつ、(c)前記単位観察時間帯における前記所定空間内の人の利用面積が所定利用面積閾値未満である場合に、前記単位観察時間帯を前記非活性時間帯に分類し、
それ以外の場合に、前記単位観察時間帯を前記活性時間帯に分類する、〔1〕に記載の解析システム。
【0008】
〔3〕各前記非活性環境地図は、前記所定空間を俯瞰視し格子状に細分化することにより定義されるセル配列を有し、それぞれ対応する前記非活性時間帯グループ期間中における前記セル配列の各セルの活動度合いを表しており、
各前記活性環境地図は、前記セル配列を有し、それぞれ対応する前記活性時間帯グループ期間中における前記各セルの活動度合いを表している、〔1〕又は〔2〕に記載の解析システム。
【0009】
〔4〕前記処理部は、前記環境地図クラスタリング処理において、
各前記非活性環境地図及び各前記活性環境地図をそれぞれ文字列に変換し、各前記文字列どうしの類似度に応じてすべての前記非活性環境地図及び前記活性環境地図どうしをクラスタリングする、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の解析システム。
【0010】
〔5〕所定測定時間間隔毎の各測定時刻に所定空間内における物体までの距離を測定して点群データを出力する、測域センサと、
処理部と、
を備えた、解析システムを用いた、解析方法であって、
前記処理部が、所定観察期間中において各前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、前記所定観察期間が等分化されてなる複数の単位観察時間帯を、それぞれ、非活性時間帯、又は、前記非活性時間帯よりも前記所定空間の活性が高い活性時間帯に、分類する、時間帯分類ステップと、
前記処理部が、それぞれ互いに連続する1つ又は複数の前記非活性時間帯からなる1つ又は複数の非活性時間帯グループ期間のそれぞれに対し、前記非活性時間帯グループ期間中において各前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、非活性環境地図を作成するとともに、それぞれ互いに連続する1つ又は複数の前記活性時間帯からなる1つ又は複数の活性時間帯グループ期間のそれぞれに対し、前記活性時間帯グループ期間中において各前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、活性環境地図を作成する、環境地図作成ステップと、
前記処理部が、各前記非活性環境地図及び各前記活性環境地図どうしの類似度に応じてすべての前記非活性環境地図及び前記活性環境地図どうしをクラスタリングする、環境地図クラスタリングステップと、
を含む、解析方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、時間帯毎の所定空間の使われ方の違いを把握することが容易になる、解析システム及び解析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る解析システムを概略的に示す、概略図である。
図2】解析対象の所定空間の一例とセル配列の一例とを説明するための図面である。
図3】本発明の一実施形態に係る解析方法の概略的なフローチャートである。
図4】時間帯分類処理を説明するための図面である。
図5】人の速度を求める手法の一例を説明するための図面である。
図6】時間帯分類処理を説明するための図面である。
図7】環境地図作成処理を説明するための説明図である。
図8】環境地図の一例を示す図面である。
図9】環境地図クラスタリング処理を説明するための図面である。
図10】環境地図クラスタリング処理によって作成されたクラスターの一例を示す図面である。
図11】環境地図クラスタリング処理によって作成されたクラスターの他の例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の解析システム及び解析方法は、例えば、建物(オフィスビル、商業施設、学校等)内のエリアあるいは野外のエリア等の任意の空間の使われ方を解析するために使用されると好適なものである。
以下に、図面を参照しつつ、本発明に係る解析システム及び解析方法の実施形態を例示説明する。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0014】
〔解析システム1〕
まず、図1及び図2を主に参照して、本発明の解析方法を使用し得る、本発明の一実施形態に係る解析システム1を説明する。解析システム1は、所定空間S(図2)の解析をするように構成されている。具体的に、解析システム1は、所定観察期間L中に所定空間Sが人Dによってどのように使われるかを解析するように、構成されている。
解析システム1のユーザは、例えば、所定空間Sの解析者、所有者、又は、使用者等が、挙げられる。
所定観察期間Lは、互いから分離された複数の期間(例えば、ある一週間における毎日の9時~17時)でもよいし、あるいは、一続きの期間(例えば、ある月曜日の9時~つぎの日曜日の17時)でもよい。
解析システム1の解析対象とする所定空間Sとしては、任意でよいが、例えば、建物(オフィスビル、商業施設、学校等)内のエリア、あるいは、野外のエリア等が、挙げられる。
図1は、解析システム1の構成を概略的に示している。図1に示すように、解析システム1は、測域センサ2と、解析装置3と、を備えている。図2は、所定空間Sの一例を俯瞰視した様子を示している。
【0015】
所定空間Sには、それぞれ物体としての人D及び非人物体Eとが存在し得る。非人物体Eとは、人Dではない物体を指す。非人物体Eとしては、例えば、静止物体、可動静止物体が挙げられる。静止物体は、測域センサ2の測定期間中において全く動かない物体を指しており、例えば壁、ドア、机等が挙げられる。可動静止物体は、測域センサ2の測定期間中において人Dとの関わりによって動く物体を指しており、例えば、椅子、机、ホワイトボード、観葉植物、ごみ箱等が挙げられる。
【0016】
所定空間Sには、xyz直交座標系が定義される。図2に示すように、x軸及びy軸は、それぞれ、水平方向に平行である。z軸は、高さ方向に平行である。
解析システム1の解析装置3は、2次元のセル配列Aを用いて所定空間Sを解析する。図8は、解析装置3によって作成される所定空間Sの環境地図Rの一例を示している。セル配列Aは、図2図8に示すように、所定空間Sを俯瞰視し格子状に細分化することにより定義されるものである。図2においては、便宜のため、セル配列Aの一部A’のみを示している。
セル配列Aは、xy平面に平行である。セル配列AのセルCは、x軸及びy軸のそれぞれに沿って配列されている。セル配列Aの各セルCは、正方形をなしている。セルCの一辺の長さは、1つのセルC内に複数の物体の全体が入り込むのを抑制する観点から、13cm以下であると好適である。また、セルCの一辺の長さは、解析装置3の処理量の増大を抑制する観点から、7cm以上であると好適である。セルCの一辺の長さは、例えば10cmであると好適である。
【0017】
(測域センサ2)
測域センサ2は、所定測定時間間隔H(例えば0.1秒)毎の各測定時刻において、所定空間S内における物体までの距離を測定して点群データを出力するように構成されている。測域センサ2は、例えば、レーザによって所定測定時間間隔H毎に所定空間S内における物体までの距離を測定して点群データを出力するように構成された、LiDAR (Laser Imaging Detection and Ranging)又はLRF (Laser Range Finder)から構成されると、好適である。
本実施形態において、測域センサ2は、点群データとして3次元の点群データを出力するように構成されている。3次元の点群データの各点は、xyz座標系によって表される。本実施形態において、測域センサ2は、3次元の点群データを出力するように構成されているので、仮に2次元の点群データを出力するように構成されている場合に比べて、高さ情報を含めることができ、死角が少ないので、より正確に物体の位置、形状、及び個数の解析が可能になる。また、一般的に、3次元の点群データを出力するように構成された測域センサは、2次元の点群データを出力するように構成された測域センサに比べて、測定範囲が広いため、測域センサの数を減らすことができるという利点もある。
ただし、測域センサ2は、点群データとして2次元の点群データを出力するように構成されていてもよい。
測域センサ2の数は、1つであると好適であるが、複数であってもよい。複数の測域センサ2を用いる場合、解析装置3は、これら複数の測域センサ2からの点群データどうしを合同した点群データを使用するとよい。
測域センサ2は、その検出範囲が所定空間Sの全体を含むように、設置される。
測域センサ2は、所定空間S内の人Dよりも少し高い高さに設置されることが好ましい。例えば、測域センサ2は、地面から1.65~1.90mの高さに設置されると好適である。
測域センサ2による点群データは、解析装置3に出力される。例えば、測域センサ2は、点群データを、測定中又は測定後に、解析装置3へ通信(有線通信及び/又は無線通信)により送信することにより、点群データを解析装置3に出力するようにしてもよい。あるいは、測域センサ2が、測定中又は測定後に、点群データを測域センサ2に接続された外部記憶装置(USB、SDカード等)に格納し、その後、当該外部記憶装置を解析装置3に接続することにより、点群データを解析装置3に出力するようにしてもよい。
【0018】
(解析装置3)
解析装置3は、図1に示すように、処理部31と、通信部32と、記憶部33と、入力部34と、表示部35と、を有する。解析装置3は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン、携帯端末、専用装置等、任意のコンピュータから構成されることができる。解析装置3は、1つのコンピュータで構成されてもよいし、複数のコンピュータで構成されてもよい。
【0019】
処理部31は、例えば1つ又は複数のCPUから構成され、記憶部33に記憶された解析プログラム等のプログラムを実行することにより、通信部32、記憶部33、入力部34、及び表示部35を含む、解析装置3の全体を制御しながら、後述する種々の処理を実行する。
処理部31は、測域センサ2から出力される点群データを受け取ると、この点群データを、セル配列Aに格納する。ここで、処理部31は、点群データの各点のx座標及びy座標に基づいて、点群データの各点を、それぞれセル配列Aにおいて対応するセルC内に格納する。
処理部31による処理の詳細については、後に説明する。
【0020】
通信部32は、測域センサ2との間で通信(有線通信及び/又は無線通信)を行うように構成されている。解析装置3は、通信部32を介して、測域センサ2から点群データを受信してもよい。
なお、解析装置3は、通信部32を備えていなくてもよい。
【0021】
記憶部33は、例えば1つ又は複数のROM、1つ又は複数のRAM、及び/又は、外部記憶装置(USB、SDカード等)等から構成され、処理部31が実行するための解析プログラム等のプログラム、測域センサ2からの点群データ、処理部31の算出結果等、様々な情報を記憶する。
【0022】
入力部34は、例えばキーボード、マウス、及び/又は、押しボタン等から構成され、ユーザからの入力を受け付ける。
表示部35は、例えば液晶パネル等から構成され、後述するクラスタリング結果(図10図11)等、様々な情報を表示する。
入力部34及び表示部35は、タッチパネルを構成してもよい。
なお、解析装置3は、入力部34及び/又は表示部35を備えていなくてもよい。
【0023】
〔解析方法〕
つぎに、図3図11を主に参照して、本発明の一実施形態に係る解析方法を説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る解析方法の概略的なフローチャートである。この解析方法は、所定空間S(図2)の解析をするための方法である。具体的に、この解析方法は、所定観察期間L中に所定空間Sが人Dによってどのように使われるかを解析するための方法である。
以下では、上述した図1及び図2の例の解析システム1を用いる場合について説明するが、図1及び図2の例とは異なる解析システム1を用いて、本発明の解析方法を実施することもできる。
本実施形態に係る解析方法は、人抽出ステップS1と、時間帯分類ステップS2と、環境地図作成ステップS3と、環境地図クラスタリングステップS4と、クラスタリング結果表示ステップS5と、を含む。これらのステップS1~S5は、解析装置3の処理部31が、記憶部33に記憶された解析プログラムを実行することにより、行う。なお、クラスタリング結果表示ステップS5は実施しなくてもよい。
なお、解析装置3は、測域センサ2の測定中にリアルタイムでステップS1~S5のうち少なくとも一部を行ってもよいし、あるいは、測域センサ2の測定後にステップS1~S5を行ってもよい。
以下、各ステップについて説明する。
【0024】
-人抽出ステップ(S1)-
まず、人抽出ステップS1において、処理部31は、測域センサ2から出力される少なくとも所定観察期間L中の各測定時刻の点群データに基づいて、所定観察期間L中の各測定時刻における所定空間S内の一人又は複数人の人Dを抽出する、人抽出処理を行う。
【0025】
上述のように、処理部31は、測域センサ2から出力される点群データを受け取ると、この点群データを、セル配列Aに格納する。ここで、処理部31は、点群データの各点の(z座標によらず)x座標及びy座標に基づいて、点群データの各点を、それぞれセル配列Aにおいて対応するセルC内に格納する。すなわち、点群データの各点は、いわばxy平面に投影された状態で、セル配列Aにおいて対応するセルC内に格納される。
【0026】
人抽出ステップS1において、処理部31は、例えば、測域センサ2から出力される点群データに基づいて、クラスタリングにより、互いに隣接する複数の点からなる点群を、1つの点群クラスターひいては物体として抽出すると、好適である。このとき、処理部31は、当該抽出した各物体に個別のIDを割り当てると、好適である。処理部31は、ある測定時刻の点群データに基づいて抽出した物体にIDを割り当てる際、当該物体を構成する各セルCが、その1つ前の測定時刻の点群データに基づいて抽出したいずれか1つの物体を構成する各セルCと、少なくとも部分的に重複している場合は、当該1つ前の測定時刻の点群データに基づいて抽出した当該1つの物体に割り当てたIDを引き継ぐと、好適である。これにより、異なる測定時刻どうしの間での物体のトラッキングが可能になる。なお、「物体を構成する各セルC」とは、物体を構成する点群が存在する各セルCを指す。
【0027】
また、人抽出ステップS1において、処理部31は、抽出した1つ又は複数の物体を、それぞれ、非人物体E又は人Dに分類することにより、人Dを抽出するようにしてもよい。
処理部31は、非人物体Eを構成する各セルCを、背景BGとして登録する(背景BGとして扱う)と、好適である。これにより、環境地図Rを見たときに、ユーザは、人Dの活動と非人物体Eとの関係をより容易に把握することができる。図8に例示される環境地図Rにおいて、背景BGを構成する各セルCは、黒色で示されている。
【0028】
人抽出ステップS1において、抽出した1つ又は複数の物体をそれぞれ非人物体E又は人Dに分類する具体的な方法としては、任意の方法を用いてよい。
例えば、特願2021-175955に記載された方法を用いてもよい。特願2021-175955に記載されているように、処理部31は、所定観察期間Lよりも前の所定初期背景抽出用期間M内において所定測定時間間隔H毎の各測定時刻に測域センサ2から出力される点群データに基づいて、非人物体Eの一種である静止物体の例えば高さや形状等の特徴に着目して、所定空間S内の1つ又は複数の静止物体を抽出してもよい。この場合、処理部31は、さらに、所定観察期間L内において所定測定時間間隔H毎の各測定時刻に測域センサ2から出力される点群データのうち、上記抽出した静止物体を構成する各セルC以外のセルCに格納される点群データに基づいて、非人物体Eの一種である可動静止物体の例えば動きや形状等の特徴に着目して、所定観察期間L中の各測定時刻における所定空間S内の1つ又は複数の可動静止物体を抽出してもよい。この場合、処理部31は、さらに、静止物体でも可動静止物体でもない物体を人Dに分類し、それにより、所定観察期間L中の各測定時刻における所定空間S内の一人又は複数人の人Dを抽出するようにしてもよい。
あるいは、処理部31は、所定観察期間L中において移動しなかった物体を非人物体Eに分類し、それ以外の物体を人Dに分類するようにしてもよい。
【0029】
-時間帯分類ステップ(S2)-
時間帯分類ステップS2において、処理部31は、所定観察期間L中において各測定時刻に測域センサ2から出力される点群データに基づいて、所定観察期間Lが等分化されてなる複数の単位観察時間帯Tを、それぞれ、非活性時間帯IC、又は、非活性時間帯ICよりも所定空間Sの活性(人Dの活動度合い)が高い活性時間帯ACに、分類する、時間帯分類処理を行う(図4)。
上記複数の単位観察時間帯Tは、所定観察期間Lをn個の時間帯に等分化されてなるものである(nは2以上の自然数)。
所定観察期間Lが等分化されてなる複数の単位観察時間帯Tを上述のように分類することにより、仮に所定観察期間L内の各測定時刻を分類する場合に比べて、計算量を軽減できる。
計算量軽減の観点から、各単位観察時間帯Tの長さは、1分以上であると好適である。解析精度向上の観点から、各単位観察時間帯Tの長さは、10分以下であると好適である。各単位観察時間帯Tの長さは、例えば、5分であると好適である。
本実施形態において、処理部31は、時間帯分類ステップS2において、(a)単位観察時間帯Tnにおける所定空間S内の平均人数CTnが所定平均人数閾値Threshold未満であり、(b)当該単位観察時間帯Tにおける所定空間S内の人の平均速度VTnが所定平均速度閾値Threshold未満であり、かつ、(c)当該単位観察時間帯Tにおける所定空間S内の人の利用面積STnが所定利用面積閾値Threshold未満である場合に、当該単位観察時間帯Tnを非活性時間帯ICに分類し、それ以外の場合((a)~(c)のうち少なくとも1つを満たさない場合)に、当該単位観察時間帯Tを活性時間帯ACに分類する。平均人数CTn、平均速度VTn、利用面積STnの3つの特徴量に着目することにより、所定空間S内のすべての人Dの活動度合い、ひいては、所定空間Sの活性を、的確に評価することができる。
【0030】
図4に示すように、本明細書では、互いに連続する1つ又は複数の非活性時間帯ICからなる期間を、非活性時間帯グループ期間ICGといい、互いに連続する1つ又は複数の活性時間帯ACからなる期間を、活性時間帯グループ期間ACGという。時間帯分類ステップS2において所定観察期間Lの各単位観察時間帯Tがそれぞれ非活性時間帯IC又は活性時間帯ACに分類されると、所定観察期間Lは、非活性時間帯グループ期間ICGと活性時間帯グループ期間ACGとが交互に連なるものとして見ることができるようになる。
【0031】
ここで、所定観察期間Lの総時間Ttotalと各単位観察時間帯Tと測域センサ2による測定回数(何回目の測定時刻か)tとの関係は、例えばつぎの式(1)で表すことができる。
【数1】
式(1)において、Iは、単位観察時間帯T中の総測定回数であり、I=(単位観察時間帯Tの時間長さ[秒])÷(所定測定時間間隔H[秒])である。
【0032】
単位観察時間帯Tnにおける所定空間S内の平均人数CTnは、所定空間Sの人々がどの時点で所定空間Sを利用しようとするのか(滞在習慣)を表すといえる。
単位観察時間帯Tnにおける所定空間S内の平均人数CTnは、例えばつぎの式(2)から求めることができる。
【数2】
式(2)において、Ct_kは、t回目の測定時刻における所定空間S内の人Dの人数を表す。Ct_kは、人抽出ステップS1によりt回目の測定時刻の点群データに基づいて抽出された人Dの総数を求めることにより、求めることができる。
【0033】
単位観察時間帯Tnにおける所定空間S内の平均速度VTnは、所定空間S内の人々が座位状態、歩行状態等のどのような状態にあるのか(運動強度)を表すといえる。
単位観察時間帯Tnにおける所定空間S内の平均速度VTnは、例えばつぎの式(3)から求めることができる。
【数3】
式(3)において、vi,t_kは、t回目の測定時刻における所定空間S内の各人Dのうちいずれか一人の人D(当該人DのIDを包括的にiと表す。)の当該測定時刻での速度を表す。速度vi,t_kは、t回目の測定時刻における所定空間S内の人D毎に求められる。
【0034】
ここで、速度vi,t_kを求める手法の一例を、つぎの式(4)及び図5を参照しつつ、説明する。まず、点群データが投影されるxy平面において、直近の5回の測定時刻t~tk-4のそれぞれにおける人D(ID:i)の中心点(中心座標)DO(DOt_k~DOt_k-4)どうしの間の4点の平均点(平均座標)ADOt_k~ADOt_k-3を求め、その後、これら4点の平均点(平均座標)ADOt_k~ADOt_k-3どうしの間のユークリッド距離dt_k~dt_k-2[m]を求める。これらのユークリッド距離dt_k~dt_k-2を用いて、式(4)により、速度vi,t_k[m/秒]を求めることができる。
【数4】

式(4)において、H[秒]は、所定測定時間間隔H(例えば、0.1秒)である。
なお、人Dの中心点DOを特定するにあたって、処理部31は、例えば、人抽出ステップS1において抽出された人Dを構成する点群を1つのかたまりとして観たときにおける重心点又は平均点を、人Dの中心点DOとして特定してもよい。
【0035】
単位観察時間帯Tにおける所定空間S内の人の利用面積STnは、所定空間S内の人々の所定空間Sへの利用効率を表すといえる。
単位観察時間帯Tにおける所定空間S内の人の利用面積STnは、例えばつぎの式(5)から求めることができる。
【数5】
式(5)において、cell(x,y)i,t_kは、t回目の測定時刻において、セル配列Aにおいて人D(ID:i)の中心点DOが位置するセルCを表す。よって、利用面積STnは、単位観察時間帯Tにおいて所定空間S内のすべての人Dのそれぞれの中心点DOが位置するセルCの数である。ここで、複数の人Dの中心点DOが同じセルCに位置した場合、そのセルCの数は1つとしてカウントしている。
【0036】
ここで、所定平均人数閾値Threshold、所定平均速度閾値Threshold、所定利用面積閾値Thresholdのそれぞれの閾値を設定する手法の一例について、説明する。
以下の説明では、便宜のため、平均人数CTn、平均速度VTn、利用面積STnを、包括して「特徴量X」と呼び、所定平均人数閾値Threshold、所定平均速度閾値Threshold、所定利用面積閾値Thresholdを、包括して「閾値Threshold」と呼ぶものとする。
一般的に、同じ所定空間Sにおいても、時によって所定空間Sの活性レベルが大きく異なり得る。そこで、本例では、大津の二値化法を用いて、特徴量Xの閾値Thresholdを設定する。これにより、実際の所定観察期間L内における所定空間Sでの活性レベルに応じて、より適切な閾値Thresholdを設定することができる。
具体的には、まず、各単位観察時間帯Tにおける特徴量Xの値、及び、その値が所定観察期間L内に占める時間を用いて、図6に概略的に示すようなヒストグラムを作成する。図6のヒストグラムにおいて、横軸は特徴量Xの値であり、縦軸は特徴量Xの値が所定観察期間L内に占める時間である。ヒストグラムの区間(階級の幅)としては、平均人数CTnの場合は0.05、平均速度VTnの場合は0.01、利用面積STnの場合は10とすると、好適である。
つぎに、すべての単位観察時間帯Tにおいての特徴量Xの最小値Xminを暫定閾値として設定しとき、当該暫定閾値Xminにより分けられた2つのデータクラスに対して、クラス内分散σ とクラス間分散σ とを算出する。そして、このときの分離度σ /σ を算出する。
その後、同様に、暫定閾値を、すべての単位観察時間帯Tにおいての特徴量Xの最大値Xmaxまで徐々に上げていきながら、都度、分離度σ /σ を算出していく。
そして、分離度σ /σ が最大になるときの特徴量Xの値を、閾値Thresholdとして設定する。
ただし、閾値Thresholdは、本例とは異なる手法により設定されてもよい。
【0037】
-環境地図作成ステップ(S3)-
環境地図作成ステップS3において、処理部31は、それぞれ互いに連続する1つ又は複数の非活性時間帯ICからなる1つ又は複数の非活性時間帯グループ期間ICG(図4)のそれぞれに対し、非活性時間帯グループ期間ICG中において各測定時刻に測域センサ2から出力される点群データに基づいて、環境地図R(以下、「非活性環境地図IR」ともいう。)を作成するとともに、それぞれ互いに連続する1つ又は複数の活性時間帯ACからなる1つ又は複数の活性時間帯グループ期間ACG(図4)のそれぞれに対し、活性時間帯グループ期間ACG中において各測定時刻に測域センサ2から出力される点群データに基づいて、環境地図R(以下、「活性環境地図AR」ともいう。)を作成する、環境地図作成処理を行う。
すなわち、環境地図作成ステップS3において、処理部31は、非活性時間帯グループ期間ICG毎に、それぞれの非活性時間帯グループ期間ICG中の各測定時刻の点群データに基づいた環境地図R(非活性環境地図IR)を作成するとともに、活性時間帯グループ期間ACG毎に、それぞれの活性時間帯グループ期間ACG中の各測定時刻の点群データに基づいた環境地図R(活性環境地図AR)を作成する。
【0038】
ここで、環境地図作成ステップS3において、環境地図Rを作成する手法の一例を説明する。本例の手法によって作成される環境地図Rは、相対活動度地図(図8)である。
非活性環境地図IR及び活性環境地図ARは、点群データが出力される期間が非活性時間帯グループ期間ICG又は活性時間帯グループ期間ACGのいずれかという点のみで異なるものであり、互いに同様の手法で作成されることができる。よって、以下の説明では、便宜のため、非活性時間帯グループ期間ICG及び活性時間帯グループ期間ACGを包括して「時間帯グループ期間CG」と呼ぶものとする。
具体的に、環境地図作成ステップS3において、処理部31は、例えば、以下のステップS31~S35を行う。
【0039】
<重み値設定ステップ(S31)>
まず、重み値設定ステップS31において、処理部31は、各時間帯グループ期間CGのそれぞれについて、所定測定時間間隔H毎の各測定時刻での人Dの中心点DO及び速度vに基づいて、各測定時刻のそれぞれにおける、セル配列Aにおける複数のセルCのうち、少なくとも、非人物体Eが位置するセルCを除く各セルCに、当該各セルCにおける活動度重み値をそれぞれ設定する、重み値設定処理を行う(図7)。
各セルCにおける活動度重み値は、それぞれのセルCにおける人Dの活動度合い(使用度合い)を表す値であり、言い換えれば、それぞれのセルCが人Dによってどれだけ使用されているかを表す値である。活動度重み値が高いほど、活動度合いが高いことを意味する。
処理部31は、セル配列Aの各セルCのうち、非人物体Eが位置するセルCには、活動度重み値を設定しないか、あるいは、0の活動度重み値を設定すると、好適である。非人物体Eが位置するセルCは、人抽出ステップS1によって特定される非人物体Eの位置によって特定される。
【0040】
ここで、処理部31が行う重み値設定処理における、活動度重み値の設定方法の一例を、図7を参照しつつ説明する。図7(a)及び図7(b)は、それぞれ、セル配列Aの一部A’の各セルCに、活動度重み値を設定する様子を示している。図7(a)及び図7(b)のそれぞれの右側の図における各セルC内の数値は、それぞれ活動度重み値である。
図7(a)及び図7(b)に示すように、処理部31は、セル配列Aのうち、各人Dの中心点DOを含むセルC及びその周辺のセルCに、それぞれ0超の活動度重み値を設定し、それ以外のセルCに、0の活動度重み値を設定する。人Dは、実際には、中心点DOの1点だけでなく、その周辺にも存在しているため、このように周辺のセルCにも0超の活動度重み値を設定することで、人Dの実際の大きさを考慮して、活動度重み値を設定することができる。
【0041】
処理部31は、所定測定時間間隔H毎の各測定時刻のそれぞれについて、当該測定時刻での速度v(上記速度vi,t_kに相当。)に基づいて、当該測定時刻において人Dが移動中であるか又は停止中であるかを特定し、特定した結果に依って活動度重み値の設定方法を変えると、好適である。移動中であるか又は停止中であるかの特定方法としては、例えば、当該測定時刻での速度vが所定速度(例えば、0.1m/秒)以上の場合は移動中であると判断し、当該測定時刻での速度vが所定速度未満の場合は停止中であると判断するものが、挙げられる。
【0042】
例えば、当該測定時刻において人Dが移動中である場合は、図7(a)に示すように、セル配列Aにおいて人Dの速度ベクトルFに重なる中心線を有する扇形上にある各セルCに、それぞれ0超の活動度重み値を設定すると、好適である。ここで、扇形の「中心線」とは、扇形の中心角にわたる角度範囲のうちの中心角度位置において、扇形の中心点(頂点)から弧まで延在する、線分を指す。速度ベクトルFの方向は、例えば、上述の平均点ADOt_kと平均点ADOt_k-3図5)とを結んだ線の方向として特定することができる。扇形の中心線の長さと人Dの速度ベクトルFの長さとは、同じであってもなくてもよく、ひいては、扇形の中心線と人Dの速度ベクトルFとは、少なくとも一部において重なっていればよい。当該扇形は、厳密な扇形でなくてもよく、扇形に近い形状(略扇形)でもよい。当該扇形の中心点(頂点)は、人Dの中心点DOに位置する。当該扇形の半径は、人の速度v(具体的には、速度の大きさ(速度ベクトルFの絶対値))に依存するように設定すると好適であり、例えば、速度v(速度の大きさ)が大きいほど長く設定すると好適である。当該扇形の中心角は、速度vに依らない所定角度に設定してもよいし、あるいは、速度vに依存する所定角度に設定してもよい。当該扇形上の各セルCには、人Dの中心点DOに近いセルCほど高い活動度重み値が設定されるように、活動度重み値を設定すると、好適である。人Dの中心点DOを含むセルCに設定する活動度重み値は、速度vに依存するように設定すると好適であり、例えば、速度v(速度の大きさ)が小さいほど、高く設定すると、好適である。
上記のことを実現するための具体的な手法としては、例えば、図7(a)の左図に示すように、人Dの中心点DOを回転中心とする所定角度範囲α内における、一定角度毎の各角度位置において、それぞれ、所定数の単位重み点Bを半径方向に沿って一定間隔毎に配列し、各セルC内における単位重み点Bの数を、それぞれのセルCの活動度重み値として設定するものが挙げられる。上記所定角度範囲αは、上述の扇形の中心角に相当する。また、人の中心点DOから、当該中心点DOから半径方向に最も離れた位置にある単位重み点Bまでの距離が、上述の扇形の半径に相当する。各角度位置に配列する単位重み点Bの数、及び/又は、各角度位置に配列する単位重み点Bどうしの間の間隔は、速度v(速度の大きさ)に依存するように設定すると好適である。
【0043】
また、当該測定時刻において人Dが停止中である場合は、図7(b)に示すように、セル配列Aにおいて人Dの中心点DOを中心とする円形上にある各セルCに、それぞれ0超の活動度重み値を設定すると、好適である。
当該円形は、厳密な円形でなくてもよく、円形に近い形状(略円形)でもよい。当該円形上の各セルには、人Dの中心点DOに近いセルCほど高い活動度重み値が設定されるように、活動度重み値を設定すると、好適である。
上記のことを実現するための具体的な手法としては、例えば、図7(b)の左図に示すように、人Dの中心点DOを回転中心とする全周における、一定角度毎の各角度位置において、それぞれ、所定数の単位重み点Bを半径方向に沿って一定間隔毎に配列し、各セルC内における単位重み点Bの数を、それぞれのセルCの活動度重み値として設定するものが挙げられる。人の中心点DOから、当該中心点DOから半径方向に最も離れた位置にある単位重み点Bまでの距離が、上述の円形の半径に相当する。
【0044】
なお、処理部31は、当該測定時刻において人Dが停止中である場合、さらに、人Dが滞在状態にあるか又は非滞在状態にあるかを判断し、判断した結果に依って、人Dの中心点DOを中心とする上記円形上にある各セルCの活動度重み値を変えると、好適である。滞在状態にあるか又は非滞在状態にあるかの判断方法としては、例えば、人Dが直近の所定時間(例えば5秒)以上にわたって停止している場合は滞在状態にあると判断し、人Dが直近の当該所定時間未満のみにわたって停止している場合は非滞在状態にあると判断するものが、挙げられる。
例えば、処理部31は、人Dが滞在状態にあると判断した場合、上記円形上の各セルCのうち一部又は全部のセルCの活動度重み値を、人Dが非滞在状態にあると判断した場合に比べて、異なるように(例えば小さくなるように)設定すると、好適である。上記円形上の各セルCのうち一部又は全部のセルCの活動度重み値を、人Dが非滞在状態にあると判断した場合に比べて、小さくなるように設定する場合は、当該円形上の各セルCにおける後述の活動度重み積算値W(t,p,q)が、他のセルCに比べて、顕著に高くなるのを抑制でき、それにより、例えば、環境地図Rの一種である後述の相対活動度地図(図8)が見やすい地図となる。
【0045】
<積算値算出ステップ(S32)>
積算値算出ステップS32において、処理部31は、各時間帯グループ期間CGのそれぞれについて、セル配列AのセルC毎に、重み値設定ステップS31で設定した各測定時刻での活動度重み値を、積算することにより、活動度重み積算値W(t,p,q)を得る、積算値算出処理を行う。
なお、重み値設定ステップS31において各測定時刻での活動度重み値を設定した後に、積算値算出ステップS32を行ってもよいし、あるいは、測定時刻毎に重み値設定ステップS31及び積算値算出ステップS32を繰り返すように、重み値設定ステップS31及び積算値算出ステップS32を並行して行ってもよい。
【0046】
積算値算出ステップS32によれば、ある期間について、セル配列AのセルC毎に活動度重み積算値W(t,p,q)を得ることにより、当該期間内において、セル配列A(ひいては所定空間S)内の各セルCが、人Dによってどれだけ使用されたかを把握することが可能になるので、所定空間S内の場所毎の使われ方を把握することが可能になる。
また、積算値算出ステップS32によれば、所定空間S内の人のIDを特定しないため、個人情報に関するセキュリティ上の問題やプライバシー侵害の問題もなく、また、測定期間中において所定空間S内の人の心理的負担によって当該人の行動に影響が出ることも抑制できる。
【0047】
<基準平均値算出ステップ(S33)>
基準平均値算出ステップS33において、処理部31は、各時間帯グループ期間CGのうちのいずれか1つの期間nについて、セル配列Aにおける全部又は一部のセルCの活動度重み積算値W(t,p,q)(W(t,p,q))の平均値を算出することにより、基準平均値W’a,nを得る、基準平均値算出処理を行う。
基準平均値W’a,nは、例えば、つぎの式(6)により表される。
【数6】
式(6)において、iとjはそれぞれ任意のx軸座標であり、i≦jである。kとlはそれぞれ任意のy軸座標であり、k≦lである。
【0048】
<相対活動度算出ステップ(S34)>
相対活動度算出ステップS34において、処理部31は、各時間帯グループ期間CGのそれぞれについて、セルC毎に、活動度重み積算値W(t,p,q)を、基準平均値算出ステップS33で得られた基準平均値W’a,nで割ることにより、相対活動度値ω’(t,p,q)を得る、相対活動度値算出処理を行う。
【0049】
相対活動度算出ステップS34によれば、セルC毎に活動度重み積算値W(t,p,q)を基準平均値W’a,nで割るため、上述した積算値算出ステップS3の効果に加えて、例えば後述の相対活動度地図作成ステップS35において相対活動度地図を作成する場合に、1つの期間におけるセル配列A(ひいては所定空間S)内の各セルCどうしの活動度合い(使用度合い)の違いをより明確に把握することができるようになる。よって、所定空間S内の場所毎の使われ方を、より明確かつ簡単に把握することが可能になる。
また、相対活動度算出ステップS34(相対活動度算出処理)によれば、各時間帯グループ期間CGのそれぞれにおいて、セルC毎に活動度重み積算値W(t,p,q)を共通の基準平均値W’a,nで割るため、各時間帯グループ期間CGの各セルCの相対活動度値ω’(t,p,q)の基準をそろえることができる。それにより、これら複数の時間帯グループ期間CGの各セルCの相対活動度値ω’(t,p,q)どうしを比較することにより、これら複数の時間帯グループ期間CGのそれぞれにおける所定空間Sの使われ方どうしを正確かつより簡単に比較することが可能になり、言い換えれば、期間によって所定空間Sの使われ方がどう違うかを把握することがより簡単になる。
【0050】
<相対活動度地図作成ステップ(S35)>
相対活動度地図作成ステップS35において、処理部31は、各時間帯グループ期間CGのそれぞれについて、セル配列Aの複数のセルCのうち、非人物体Eが位置するセルCを除く各セルCを、相対活動度算出ステップS34で得られた、それぞれのセルCの相対活動度値ω’(t,p,q)に予め関連付けられた色濃さ及び/又は色で表してなる、相対活動度地図を作成する、相対活動度地図作成処理を行う。
ここで、「相対活動度値ω’(t,p,q)に予め関連付けられた色濃さ及び/又は色」とは、相対活動度値ω’(t,p,q)の1点の値毎に異なる色濃さ及び/又は色を予め関連付ける場合だけでなく、相対活動度値ω’(t,p,q)の値の範囲毎に異なる色濃さ及び/又は色を予め関連付ける場合も含む。
相対活動度地図作成ステップS35では、相対活動度地図において、セル配列Aの各セルCのうち、非人物体Eが位置する各セルCを、それぞれ非人物体Eに予め関連付けられた色濃さ及び/又は色で表すと、好適である。この場合、非人物体Eに予め関連付けられた色濃さ及び/又は色は、相対活動度値ω’(t,p,q)に予め関連付けられた色濃さ及び/又は色とは異なると、視覚的に非人物体Eを識別しやすいので、好適である。例えば、非人物体Eに予め関連付けられた色は、黒及び/又はグレーであり、相対活動度値ω’(t,p,q)に予め関連付けられた色は、黒及びグレーとは異なる色であると、好適である。あるいは、相対活動度地図作成ステップS35では、非人物体Eをより見やすくするために、相対活動度地図において、セル配列Aの各セルCのうち、非人物体Eが位置する各セルC又はその近辺に、別途用意された非人物体Eを表す図形又は画像を表示してもよい。
【0051】
図8は、上述のようにして1つの時間帯グループ期間CG中において各測定時刻に測域センサ2から出力される点群データに基づいて作成された所定空間Sの相対活動度地図(環境地図)Rの一例を示している。図8において、各非人物体Eが位置する各セルCは、濃い黒で表されている。図8において、各非人物体Eが位置するセルCを除く、各セルCの相対活動度値ω’(t,p,q)は、値毎に予め対応付けられた、黒及び/又はグレーとは異なる同一色(例えば緑色)の色濃さで表されている。具体的は、相対活動度値ω’(t,p,q)が高いほど、濃くなるように、表されている。
なお、図8の例では、セル配列Aの各セルCのうち、各非人物体Eが位置するセルCを除く各セルCが、全体的にややグレーに見えるが、これは画面の都合でグレーになっているにすぎず、実際には、大部分のセルCにおいてω’(t,p,q)=0(白色)である。
【0052】
このように、相対活動度地図作成ステップS35によれば、上述した相対活動度算出ステップS34の効果に加えて、1つの期間におけるセル配列A(ひいては所定空間S)内の各セルCどうしの活動度合い(使用度合い)の違いを、視覚的に、把握することができるようになる。よって、所定空間S内の場所毎の使われ方を、視覚的に、把握することが可能になる。
また、相対活動度地図作成ステップS35によれば、上述した相対活動度算出ステップS34の効果に加えて、複数の時間帯グループ期間CGのそれぞれにおける所定空間Sの使われ方どうしを、視覚的に、比較することが可能になり、言い換えれば、期間によって所定空間Sの使われ方がどう違うかを、視覚的に、把握することができる。
【0053】
以上の例の手法により作成される環境地図(相対活動度地図)R(非活性環境地図IR/活性環境地図AR)は、セル配列Aを有し、それぞれ対応する時間帯グループ期間CG(非活性時間帯グループ期間ICG/活性時間帯グループ期間ACG)中におけるセル配列Aの各セルCの活動度合いを表すものとなる。
【0054】
なお、上述の例の環境地図Rの作成方法は、あくまで一例にすぎず、異なる任意の方法で環境地図Rが作成されてよい。
例えば、基準平均値算出ステップS33、相対活動度算出ステップS34を行わずに、ステップS35において、処理部31は、各時間帯グループ期間CGのそれぞれについて、セル配列Aの複数のセルCのうち、非人物体Eが位置するセルCを除く各セルCを、それぞれのセルCの活動度重み積算値W(t,p,q)に予め関連付けられた色濃さ及び/又は色で表してなる、環境地図を作成してもよい。この場合も、作成される環境地図R(非活性環境地図IR/活性環境地図AR)は、セル配列Aを有し、それぞれ対応する時間帯グループ期間CG(非活性時間帯グループ期間ICG/活性時間帯グループ期間ACG)中におけるセル配列Aの各セルCの活動度合いを表すものとなる。
【0055】
上述の各例のように、環境地図作成ステップS3において作成される環境地図R(非活性環境地図IR/活性環境地図AR)は、セル配列Aを有し、セル配列Aの複数のセルCのうち、非人物体Eが位置するセルCを除く各セルCを、それぞれ対応する時間帯グループ期間CG(非活性時間帯グループ期間ICG/活性時間帯グループ期間ACG)中におけるそれぞれのセルCの活動度合いを表す活動度合い値に予め関連付けられた色濃さ及び/又は色で表してなるものであると、好適である。活動度合い値としては、例えば相対活動度値ω’(t,p,q)又は活動度重み積算値W(t,p,q)が挙げられるが、その他の値であってもよい。この場合、セル配列Aの各セルCのうち、非人物体Eが位置する各セルCを、それぞれ非人物体Eに予め関連付けられた色濃さ及び/又は色で表すと、好適である。この場合、非人物体Eに予め関連付けられた色濃さ及び/又は色は、活動度合い値に予め関連付けられた色濃さ及び/又は色とは異なると、視覚的に非人物体Eを識別しやすいので、好適である。例えば、非人物体Eに予め関連付けられた色は、黒及び/又はグレーであり、活動度合い値に予め関連付けられた色は、黒及びグレーとは異なる色であると、好適である。また、各非人物体Eが位置するセルCを除く、各セルCの活動度合い値は、値毎に予め対応付けられた、黒及び/又はグレーとは異なる同一色(例えば緑色)の色濃さで表されていると、好適である。その場合、活動度合い値が高いほど、濃くなるように、表されていると、好適である。
【0056】
-環境地図クラスタリングステップ(S4)-
環境地図クラスタリングステップS4において、処理部31は、各環境地図R(各非活性環境地図IR及び各活性環境地図AR)どうしの類似度に応じてすべての環境地図R(すべての非活性環境地図IR及び活性環境地図AR)どうしをクラスタリングする、環境地図クラスタリング処理を行う。
より具体的に、本実施形態において、処理部31は、環境地図クラスタリングステップS4(環境地図クラスタリング処理)において、各環境地図R(各非活性環境地図IR及び各活性環境地図AR)をそれぞれ文字列Gに変換し、各文字列Gどうしの類似度に応じてすべての環境地図Rどうしをクラスタリングする(図9)。
以下に環境地図クラスタリングステップS4の具体例を詳しく説明する。
具体的に、環境地図クラスタリングステップS4において、処理部31は、例えば、以下のステップS41~S46により、2つの環境地図Rどうしを比較して、それらが類似しているか否かを判断する。処理部31は、すべての2つの環境地図Rからなる組合わせのそれぞれについて、これらのステップS41~S46を行う。以下の説明では、比較する2つの環境地図Rを、「環境地図Ri、Rj」と表記する場合がある。これら2つの環境地図Ri、Rjからなる組み合わせは、2つの非活性環境地図IRからなる組み合わせ、2つの活性環境地図ARからなる組み合わせ、あるいは、1つの非活性環境地図IR及び1つの活性環境地図ARからなる組み合わせである。
【0057】
まず、処理部31は、環境地図Ri、Rjをそれぞれグレースケールに変換する(グレースケール変換ステップS41)。これにより、精度を上げることができる。
【0058】
つぎに、処理部31は、環境地図Ri、Rjを、それぞれ、図9の左図に例示するような16画素×17画素サイズに縮小することにより、16画素×17画素サイズの縮小環境地図FIに変換する(縮小ステップS42)。これにより、計算速度を向上できる。
図9の左図の縮小環境地図FIにおいて、符号Qは画素を表している。
以下では、環境地図Ri、Rjから変換された縮小環境地図FIを、それぞれ「縮小環境地図FIi、FIj」と表記する場合がある。
【0059】
つぎに、処理部31は、各縮小環境地図FI(縮小環境地図FIi、FIj)のそれぞれの輝度値の平均値(平均輝度値)apicを算出する(平均輝度値算出ステップS43)。
ここで、処理部31は、各縮小環境地図FIのそれぞれにおいて、活動度合い値を表す表示(色濃さ及び/又は色)が分布している1つ又は複数の画素Qをそれぞれ前景画素とみなし、活動度合い値を表す表示が分布していない1つ又は複数の画素Qをそれぞれ背景画素とみなす。処理部31は、各縮小環境地図FIのそれぞれにおいて、それぞれ前景画素をなす各画素Qにおいて活動度合い値を表す表示を、輝度値とみなす(すなわち、当該表示から輝度値を読み取る)。
【0060】
つぎに、処理部31は、各縮小環境地図FI(縮小環境地図FIi、FIj)を、それぞれ文字列Gに変換する(文字列変換ステップS44)。
図9の右図は、文字列Gの一例を示している。
以下では、縮小環境地図FIi、FIjから変換された文字列Gを、それぞれ「文字列Gi、Gj」と表記する場合がある。
具体的には、例えば、処理部31は、各縮小環境地図FIに対して、所定画素比較順序(本例では、左から右へ、上から下への順序)で、画素Qごとに、当該画素Qの輝度値と当該画素Qの右隣の画素Qの輝度値とを比較し、所定規則に従って当該画素Qに文字ラベルをつけて、文字列Gに所定付加順序(本例では、左から右への順序)で当該文字ラベルを付加していき、それにより、文字列Gを作成する。ただし、縮小環境地図FIの一番右の列の各画素Qについては、さらに右隣に位置する画素Qが無いため、この比較を行わない。このように作成された各文字列G(文字列Gi、Gj)は、それぞれ、256バイトのシーケンスとなる。
上記所定規則は、例えば、以下のとおりである:
(a)判断中の画素Qの輝度値が右隣の画素Qの輝度値より小さい場合、当該判断中の画素Qに第1文字ラベル(本例では、「3」)をつける。
(b)判断中の画素Qの輝度値が、右隣の画素Qの輝度値より大きく、かつ、平均輝度値apicより大きい場合、当該判断中の画素Qに第2文字ラベル(本例では、「2」)をつける。
(c)判断中の画素Qの輝度値が、右隣の画素Qの輝度値より大きく、かつ、平均輝度値apic以下である場合、当該判断中の画素Qに第3文字ラベル(本例では、「1」)をつける。
(d)判断中の画素Qの輝度値が、白色の輝度値(0)と同じである場合、当該判断中の画素Qに第4文字ラベル(本例では、「0」)をつける。
【0061】
つぎに、処理部31は、各文字列G(文字列Gi、Gj)どうしを比較することにより、各縮小環境地図FI(縮小環境地図FIi、FIj)どうしの類似度Similarityijを算出する(類似度算出ステップS45)。
ここで、類似度Similarityijは、例えば、つぎの式(7)によって算出することができる。
Similarityij=Similaritysame÷Similarityforeground ・・・(7)
式(7)において、Similaritysameは、同文字数であり、各文字列G(文字列Gi、Gj)どうしを所定文字比較順序(本例では、左から右への順序)で文字毎に比較したときに、比較している各文字列Gの1文字どうしが互いに同じ文字であるような文字の数(場合の数)を表しており、言い換えれば、各文字列Gにおいて互いに同じ位置にある文字が互いに同じ文字であるような文字の数を表す。
式(7)において、Similarityforegroundは、最大前景画素数であり、各縮小環境地図FI(縮小環境地図FIi、FIj)のそれぞれの前景画素の個数のうち、より大きいほうの個数を表す。
【0062】
つぎに、処理部31は、類似度Similarityijを所定類似度閾値Thresholdsimと比較し、その比較結果に基づいて、2つの環境地図Ri、Rjをクラスタリングする(クラスタリングステップS46)。
より具体的に、処理部31は、クラスタリングステップS46において、類似度Similarityijが所定類似度閾値Thresholdsimより大きい場合には、2つの環境地図Ri、Rjが類似していると判断して、これら2つの環境地図Ri、Rjを同じクラスターに分類し、一方、類似度Similarityijが所定類似度閾値Thresholdsim以下である場合には、2つの環境地図Ri、Rjが類似していないと判断して、これら2つの環境地図Ri、Rjを互いに異なるクラスターに分類する。
なお、ステップS46のクラスタリングは、具体的には、距離に基づいた階層的クラスタリングによって行うと、好適である。当該距離は、類似度Similarityijにより定義し、閾値は、所定類似度閾値Thresholdsimにより定義する。
上述のように、処理部31は、すべての2つの環境地図Rからなる組合わせのそれぞれについて、上述のステップS41~S46を行い、当該2つの環境地図Rどうしが類似しているか否かを判断する。そして、環境地図Rをいずれか1つのクラスターに分類する際には、当該環境地図Rがいずれか1つの既存のクラスター内のいずれか1つの環境地図Rと類似している場合は、当該環境地図Rを当該既存のクラスターに分類し、当該環境地図Rが各既存のクラスター内の各環境地図Rのいずれとも類似していない場合には、新たなクラスターを作成し、当該環境地図Rを当該新たなクラスターに分類する。
これにより、各クラスターには、それぞれ1つ又は複数の環境地図Rが分類されることとなる。そして、クラスター内に複数の環境地図Rが分類された場合には、当該クラスター内の複数の環境地図Rどうしは類似することとなり、より具体的には、当該クラスター内の各環境地図Rは、それぞれ、当該クラスター内の少なくとも1つの他の環境地図Rと類似することとなる。
【0063】
上述のように作成されたクラスターを、図10及び図11にそれぞれ例示する。図10は、2つの活性環境地図ARを含むクラスター(クラスター1)を示しており、図11は、別の2つの活性環境地図ARを含むクラスター(クラスター2)を示している。図10図11から見て取れるように、同じクラスター内の各環境地図Rの活動度合い値(本例では、相対活動度値ω’(t,p,q))の分布どうしは類似し、ひいては、同じクラスター内の各環境地図Rに対応する時間帯(時間帯グループ期間CG)においては、所定空間Sの使われ方が互いに類似する傾向がある。一方、互いに異なるクラスター内の環境地図Rの活動度合い値(本例では、相対活動度値ω’(t,p,q))の分布どうしは大きく異なり、ひいては、互いに異なるクラスター内の各環境地図Rに対応する時間帯(時間帯グループ期間CG)においては、所定空間Sの使われ方が互いに大きく異なる傾向がある。
【0064】
所定類似度閾値Thresholdsimは、0.61~0.65であると好適であり、例えば0.61であると好適である。
なお、本発明の発明者らが所定類似度閾値Thresholdsimの好ましい値について検討したので、説明する。本発明の発明者らは、活動度合い値の分布と特徴が近い画像として、数字の手書き画像であるMNISTデータセット、あるいは、アルファベットの手書き画像であるEMNISTデータセットを用いて、所定類似度閾値Thresholdsimを決定することに思い立った。そして、MNISTデータセット、EMNISTデータセットのそれぞれに対して、上述のステップS41~S46を行い、類似と判定された画像の精度が100%に達するまでの閾値を算出した。その結果としては、MNISTデータセットの場合は閾値が0.61であり、EMNISTデータセットの場合は閾値が0.65であり、両者はほぼ同等であった。これにより、所定類似度閾値Thresholdsimとしては、0.61、0.65のいずれもが好適であることがわかった。より多くの類似する環境地図を抽出する観点からは、0.65がより好適であるといえる。
【0065】
-クラスタリング結果表示ステップ(S5)-
クラスタリング結果表示ステップS5において、処理部31は、環境地図クラスタリングステップS4で得られたクラスタリング結果を、表示部35に表示させる、クラスタリング結果表示処理を行う。
処理部31は、例えば、環境地図クラスタリングステップS4が完了した後に自動的にクラスタリング結果表示ステップS5を行ってもよいし、あるいは、ユーザから入力部34を介して入力される所定の指示に応じて、クラスタリング結果表示ステップS5を行ってもよい。
処理部31は、任意の形式及び手法で、クラスタリング結果を表示部35に表示させてよい。例えば、処理部31は、図10図11に示すように、各クラスターを、それぞれのクラスターに属する各環境地図Rとともに表示してもよい。あるいは、処理部31は、例えば時間等に関連したキーワードが入力部34を介して入力されたことに応じて、当該キーワードに関連したクラスター及びそれに属する各環境地図Rを表示してもよい。
なお、クラスタリング結果表示ステップS5は行わなくてもよい。
【0066】
上述した実施形態においては、時間帯分類ステップS2と、環境地図作成ステップS3と、環境地図クラスタリングステップS4と、を行い、それにより、所定観察期間L中の複数の時間帯グループ期間CGのそれぞれに対して環境地図Rを作成し、類似度に応じてこれらの環境地図Rどうしをクラスタリングするので、時間帯(時間帯グループ期間CG)毎の所定空間Sの使われ方の違いを把握することが容易になる(図10図11参照)。
仮に、所定観察期間Lの全体に対して1つの環境地図Rを作成する場合は、たとえ所定観察期間L中の時間帯毎に所定空間Sの使われ方が異なるとしても、所定観察期間L中の各時間帯の情報が1つの環境地図Rに積算されてしまうため、時間帯毎の違いを区別することができない。
また、上述の実施形態では、環境地図作成ステップS3において、互いに連続する1つ又は複数の非活性時間帯ICからなる非活性時間帯グループ期間ICG毎に、また、互いに連続する1つ又は複数の活性時間帯ACからなる活性時間帯グループ期間ACG毎に、環境地図Rを作成するので、仮に単位観察時間帯Tn毎に環境地図Rを作成する場合に比べて、より適切に、互いに特徴が類似する(所定空間Sの活性度合が似ている)とともに互いに連続する時間帯どうしをひとまとまりに扱うことができ、ひいては、より適切に、時間帯毎の所定空間Sの使われ方を把握することが可能になる。
【0067】
なお、本発明の解析システム及び解析方法は、上述したものに限られず、様々な変形例が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の解析システム及び解析方法は、例えば、建物(オフィスビル、商業施設、学校等)内のエリアあるいは野外のエリア等の任意の空間の使われ方を解析するために使用されると好適なものである。
【符号の説明】
【0069】
1 解析システム
2 測域センサ
3 解析装置
31 処理部
32 通信部
33 記憶部
34 入力部
35 表示部
A セル配列
A’ セル配列の一部
BG 背景
C セル
D 人
DO 人の中心点
E 非人物体
S 所定空間
F 速度ベクトル
R 環境地図
AR 活性環境地図
IR 非活性環境地図
FI 縮小環境地図
Q 画素
G 文字列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11