(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067532
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20240510BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C11/03 100B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177681
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】曽根 直幸
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 進也
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC12
3D131BC19
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB27V
3D131EB32X
3D131EB32Y
3D131EB43X
3D131EB43Y
3D131EB44X
3D131EB44Y
3D131EB46X
3D131EB46Y
3D131EB81V
3D131EB81X
3D131EC01V
3D131EC12X
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ウェットグリップ性能を向上できるタイヤを提供する。
【解決手段】周方向溝31と直進時接地端Eとの間のショルダー陸部5にラグ溝51が設けられており、ラグ溝は、直進時接地端に開口しており、直進時接地ラインAL上においてラグ溝のタイヤ幅方向内端51aのタイヤ幅方向位置に位置する第1点、直進時接地ライン上において直進時接地端に位置する第2点とを結ぶ、第1直線の、タイヤ幅方向に対する鋭角側の第1傾斜角度θ1は、ラグ溝の溝幅中心線におけるタイヤ幅方向内端である第3点と、ラグ溝の溝幅中心線上において直進時接地端に位置する第4点とを結ぶ、第2直線の、タイヤ幅方向に対する鋭角側の第2傾斜角度θ2よりも、大きく、ラグ溝は、少なくともラグ溝のタイヤ幅方向内端から直進時接地端までにわたって、タイヤ幅方向外側に向かうにつれて溝幅が漸増している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤであって、
トレッド部には、タイヤ赤道面に対する少なくとも一方側のタイヤ半部において、
周方向溝と、
前記周方向溝と直進時接地端との間で区画された、ショルダー陸部と、
前記ショルダー陸部に設けられた、ラグ溝と、
が設けられており、
前記ラグ溝は、前記直進時接地端に開口しており、
直進時接地ライン上において前記ラグ溝のタイヤ幅方向内端のタイヤ幅方向位置に位置する第1点と、前記直進時接地ライン上において前記直進時接地端に位置する第2点とを結ぶ、第1直線の、タイヤ幅方向に対する鋭角側の第1傾斜角度θ1は、前記ラグ溝の溝幅中心線におけるタイヤ幅方向内端である第3点と、前記ラグ溝の前記溝幅中心線上において前記直進時接地端に位置する第4点とを結ぶ、第2直線の、タイヤ幅方向に対する鋭角側の第2傾斜角度θ2よりも、大きく、
前記ラグ溝は、少なくとも前記ラグ溝の前記タイヤ幅方向内端から前記直進時接地端までにわたって、タイヤ幅方向外側に向かうにつれて溝幅が一定になることなく漸増している、タイヤ。
【請求項2】
前記ラグ溝は、接地時においてトレッド踏面内で閉塞しないように構成されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ラグ溝は、前記周方向溝に連通している、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ラグ溝と前記周方向溝との連通部において、前記ラグ溝の溝深さは、前記周方向溝の溝深さと同じである、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ラグ溝の前記直進時接地端での溝幅が、前記ラグ溝の前記タイヤ幅方向内端での溝幅の2倍以上である、請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ラグ溝を備えたタイヤがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のタイヤにおいては、ウェットグリップ性能に関し、向上の余地があった。
【0005】
本発明は、ウェットグリップ性能を向上できるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕タイヤであって、
トレッド部には、タイヤ赤道面に対する少なくとも一方側のタイヤ半部において、
周方向溝と、
前記周方向溝と直進時接地端との間で区画された、ショルダー陸部と、
前記ショルダー陸部に設けられた、ラグ溝と、
が設けられており、
前記ラグ溝は、前記直進時接地端に開口しており、
直進時接地ライン上において前記ラグ溝のタイヤ幅方向内端のタイヤ幅方向位置に位置する第1点と、前記直進時接地ライン上において前記直進時接地端に位置する第2点とを結ぶ、第1直線の、タイヤ幅方向に対する鋭角側の第1傾斜角度θ1は、前記ラグ溝の溝幅中心線におけるタイヤ幅方向内端である第3点と、前記ラグ溝の前記溝幅中心線上において前記直進時接地端に位置する第4点とを結ぶ、第2直線の、タイヤ幅方向に対する鋭角側の第2傾斜角度θ2よりも、大きく、
前記ラグ溝は、少なくとも前記ラグ溝の前記タイヤ幅方向内端から前記直進時接地端までにわたって、タイヤ幅方向外側に向かうにつれて溝幅が一定になることなく漸増している、タイヤ。
これにより、ウェットグリップ性能を向上できる。
【0007】
〔2〕前記ラグ溝は、接地時においてトレッド踏面内で閉塞しないように構成されている、〔1〕に記載のタイヤ。
これにより、ウェットグリップ性能をさらに向上できる。
【0008】
〔3〕前記ラグ溝は、前記周方向溝に連通している、〔1〕又は〔2〕に記載のタイヤ。
これにより、ウェットグリップ性能をさらに向上できる。
【0009】
〔4〕前記ラグ溝と前記周方向溝との連通部において、前記ラグ溝の溝深さは、前記周方向溝の溝深さと同じである、〔3〕に記載のタイヤ。
これにより、ウェットグリップ性能をさらに向上できる。
【0010】
〔5〕前記ラグ溝の前記直進時接地端での溝幅が、前記ラグ溝の前記タイヤ幅方向内端での溝幅の2倍以上である、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載のタイヤ。
これにより、ウェットグリップ性能をさらに向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るタイヤのトレッド踏面を、平面上に展開したときの状態で概略的に示す、展開図である。
【
図3】本発明の任意の実施形態に係るタイヤに適用し得るタイヤ内部構造の一例を説明するための図面であり、タイヤ半部をタイヤ幅方向の断面により概略的に示すタイヤ幅方向断面図である。
【
図4】タイヤ転動時の動作を説明するための図面である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るタイヤのトレッド踏面を、平面上に展開したときの状態で概略的に示す、展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るタイヤは、任意の種類の四輪車用タイヤに好適に利用でき、例えば乗用車用タイヤや小型トラック(LT)用タイヤに特に好適に利用できる。また、本発明に係るタイヤは、空気入りタイヤに好適に利用できる。
【0013】
以下、本発明に係るタイヤの実施形態について、図面を参照しつつ例示説明する。
各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係るタイヤT01のトレッド踏面8を、平面上に展開したときの状態で概略的に示す、展開図である。
図2は、
図1の一部拡大図である。
図3は、本発明の任意の実施形態に係るタイヤT01に適用し得るタイヤ内部構造の一例を説明するための図面であり、タイヤT01のタイヤ半部2(タイヤT01のうち、タイヤ赤道面CLに対する一方側の部分)をタイヤ幅方向の断面により概略的に示すタイヤ幅方向断面図である。
図1の実施形態のタイヤT01は、乗用車用空気入りタイヤとして構成されている。ただし、本発明の各実施形態のタイヤT01は、任意の種類の四輪車用タイヤとして好適に構成されることができ、例えば乗用車用タイヤや小型トラック(LT)用タイヤとして特に好適に構成されることができる。また、本発明の各実施形態のタイヤT01は、空気入りタイヤとして好適に構成されることができる。
【0015】
図3に示すように、本発明の各実施形態のタイヤT01は、トレッド部T01tと、このトレッド部T01tのタイヤ幅方向の両端部からタイヤ径方向内側に延びる一対のサイドウォール部T01wと、各サイドウォール部T01wのタイヤ径方向内側の端部に設けられた一対のビード部T01bと、を備えている。ビード部T01bは、タイヤT01をリムに装着したときに、タイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向外側においてリムに接するように構成される。
トレッド部T01tのタイヤ径方向外側の面は、トレッド踏面8を構成している。
図1に示すように、トレッド踏面8には、トレッドパターンが形成されている。
【0016】
本明細書において、「トレッド踏面8」とは、タイヤT01をWGI測定条件のリムに組み付けてWGI測定条件の荷重(負荷)及び内圧で直進させた際に、路面と接触することになる、タイヤT01の全周に亘る外周面を意味する。
ここで、「WGI測定条件」とは、UN-R117-02-S08の「附則5 ウェットグリップを測定するための試験手順」において規定される、WGI(Wet Grip Index:ウェットグリップ指数)を測定するための試験条件を指す。WGI測定条件のリム、荷重(負荷)、内圧は、UN-R117-02-S08の「附則5 ウェットグリップを測定するための試験手順」の「4.1.4.タイヤ及びリム」に記載されている。
なお、本明細書において、「直進時接地端E」(
図1)とは、(タイヤT01をWGI測定条件のリムに組み付けてWGI測定条件の荷重(負荷)及び内圧で直進させたときの)トレッド踏面8のタイヤ幅方向端を意味する。
また、本明細書において、「直進時接地面外縁A」(
図1)とは、タイヤT01をWGI測定条件のリムに組み付けてWGI測定条件の荷重(負荷)及び内圧で直進させたときの、接地面(タイヤT01の外周面のうち路面と接触する部分)の外縁を意味する。
図1に概略的に示すように、直進時接地面外縁Aは、タイヤ幅方向両側の一対の直進時接地幅方向外端AWと、タイヤ周方向両側の一対の直進時接地ラインALとを、含んでいる。各直進時接地幅方向外端AWは、直進時接地面外縁Aのうち、対応する直進時接地端E上に位置する部分である。直進時接地ラインALは、直進時接地面外縁Aのうち、一対の直進時接地幅方向外端AWどうしを連結する部分である。一方の直進時接地ラインALは、一対の直進時接地幅方向外端AWのそれぞれのタイヤ周方向一方側の端AP1どうしを連結している。他方の直進時接地ラインALは、一対の直進時接地幅方向外端AWのそれぞれのタイヤ周方向他方側の端AP2どうしを連結している。
【0017】
なお、本明細書では、特に断りのない限り、溝や陸部等の各要素の寸法、形状等は、基準状態で測定されるものとする。
本明細書において、「基準状態」とは、タイヤT01を基準リムに組み付け、基準内圧を充填し、無負荷とした状態を指す。ここで、トレッド踏面8における溝、サイプ、陸部等の各要素の寸法、形状等については、トレッド踏面8の展開図上で測定されるものとする。
ここで、「基準リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO (The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA (The Tire and Rim Association, Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(すなわち、上記の「基準リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTOのSTANDARDS MANUAL 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。
また、「基準内圧」とは、上記のJATMA YEAR BOOK等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
「最大負荷荷重」とは、上記最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
【0018】
本明細書において、「溝」は、上記基準状態において、トレッド踏面8での溝幅が1.0mm以上となるものである。本明細書で言及する溝としては、周方向溝3、ラグ溝51がある。溝の溝幅は、1.5mm以上であると好適である。「溝幅」は、溝の延在方向(溝幅中心線に沿う方向)に垂直に測ったときの、互いに対向する一対の溝壁面どうしの間隔であり、タイヤ径方向に一定でもよいし変化してもよい。「溝」は、タイヤをリムに組み付け、所定の内圧を充填して最大負荷荷重を負荷した際の、荷重直下時に、互いに対向する一対の溝壁面どうしが接触しないように構成されていると好適である。溝の溝深さは、3~20mmであると好適であり、3~11mmであるとより好適である。
本明細書において、「サイプ」とは、上記基準状態において、トレッド踏面でのサイプ幅が1.0mm未満となるものである。本明細書で言及するサイプとしては、センター陸部サイプ61、ショルダー連通サイプ53がある。センター陸部サイプ61のサイプ幅は、0.9mm以下であると好適であり、0.7mm以下であるとより好適である。ショルダー連通サイプ53のサイプ幅は、0.9mm以下であると好適であり、0.9mmに近いほどウェット性能の面で有利であり、0.9mmから小さい側に離れるほど陸部剛性の面で有利である。「サイプ幅」は、サイプの延在方向に垂直に測ったときの、互いに対向する一対のサイプ壁面どうしの間隔である。「サイプ」は、タイヤをリムに組み付け、所定の内圧を充填して最大負荷荷重を負荷した際の、荷重直下時に、互いに対向する一対のサイプ壁面どうしが少なくとも一部分で接触するように構成されていると好適である。サイプのサイプ深さは、3~20mmであると好適であり、3~11mmであるとより好適である。
一部の図面では、理解しやすさのため、タイヤ幅方向内側(タイヤ赤道面CLに近い側)を矢印WIで示し、タイヤ幅方向外側(タイヤ赤道面CLから遠い側)を矢印WOで示している。
【0019】
以下、
図1~
図2を主に参照しつつ、第1実施形態のタイヤT01のトレッド部T01tの構成について説明する。
なお、本実施形態のタイヤT01のトレッド部T01tは、タイヤ赤道面CLに対する両側のタイヤ半部2のそれぞれの構成が基本的に同様である。ただし、一対のタイヤ半部2どうしは、互いに構成が異なっていてもよい。以下の説明において、タイヤ半部2の構成について説明する場合には、タイヤT01のトレッド部T01tは、一対のタイヤ半部2のそれぞれにおいて当該構成を満たしていてもよいし、いずれか一方のタイヤ半部2のみにおいて当該構成を満たしていてもよい。
図1に示すように、トレッド部T01tには、少なくとも一方側(本実施形態では、両側)のタイヤ半部2において、タイヤ周方向に延在する周方向溝3であるショルダー周方向溝31と、ショルダー周方向溝31と直進時接地端Eとの間で区画されたショルダー陸部5と、ショルダー陸部5に設けられた複数のラグ溝51と、が設けられている。
ショルダー周方向溝31は、トレッド踏面8内に位置しており、直進時接地端Eよりもタイヤ幅方向内側に位置している。
複数のラグ溝51は、タイヤ周方向に沿って互いから間隔を空けて配列されている。ラグ溝51どうしの間には、ショルダーブロック52が区画されている。
本明細書においてラグ溝51に関して説明する構成は、これら複数のラグ溝51のそれぞれが満たしていると好適であるが、これら複数のラグ溝51のうちの一部のラグ溝51のみが満たしていてもよい。
【0020】
ラグ溝51は、略タイヤ幅方向に沿って延在している。ラグ溝51は、直進時接地端Eよりもタイヤ幅方向内側の位置からタイヤ幅方向外側へ延在しており、直進時接地端Eに開口している(すなわち、直進時接地端E上に位置している)。本実施形態において、ラグ溝51は、直進時接地端Eよりもタイヤ幅方向外側の位置にまで延在している。ただし、ラグ溝51は、直進時接地端E上で終端していてもよい。
【0021】
図2に示すように、ラグ溝51は、少なくともラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eまでにわたって(本実施形態では、ラグ溝51におけるタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eよりもタイヤ幅方向外側に位置する部分までにわたって)、タイヤ幅方向外側に向かうにつれて溝幅が一定になることなく漸増している。このように、ラグ溝51は、タイヤ幅方向外側に向かって広がるようなテーパー状をなしている。
なお、ラグ溝51は、本実施形態のように、少なくともラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eまでにわたって(本実施形態では、ラグ溝51におけるタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eよりもタイヤ幅方向外側に位置する部分までにわたって)、タイヤ幅方向外側に向かうにつれて、溝幅が、段階的に増えることなく、常に滑らかに漸増していると、好適である。
【0022】
ラグ溝51が上述のようなテーパー状をなしていることによる作用効果について、
図4を参照しつつ、説明する。
図4の左側の図面は、本実施形態とは異なり、仮にラグ溝51が、少なくともラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eまでにわたって、溝幅が一定である場合の、直進走行中の動作を、概略的に示している。この場合、直進走行中において、直進時接地ラインALがラグ溝51のタイヤ幅方向内側部分に掛かり始める踏み始めでは、ラグ溝51のタイヤ幅方向内側部分が絞られるように(溝幅が狭まるように)変形するものの、当該部分の溝断面積が大きいため、当該部分内において、水の流れがつきにくく、水が滞留しやすい。その後の踏み途中においては、ラグ溝51は、路面に接触する部分が徐々にタイヤ幅方向外側へ広がるのに伴い、直進時接地ラインALに掛かる部分が順次タイヤ幅方向外側へ向かって水を絞り出すように変形していくので、ラグ溝51におけるタイヤ幅方向内側部分よりもタイヤ幅方向外側の部分において、徐々に水の流れが発生する。さらにその後の踏み直後においては、ラグ溝51内の水が直進時接地端Eよりもタイヤ幅方向外側へ排出される。
図4の右側の図面は、仮に
図4の左側の図面の一定幅のラグ溝51を、直進時接地端Eよりタイヤ幅方向内側におけるラグ溝51の面積(NEG)及び体積(VOL)を変えずに、本実施形態のようにテーパー状に変更した場合の、直進走行中の動作を、概略的に示している。当該テーパー状のラグ溝51は、タイヤ幅方向内側部分の溝幅が、上記一定幅のラグ溝51に比べて小さく、タイヤ幅方向外側部分の溝幅が、上記一定幅のラグ溝51に比べて大きい。この場合、直進走行中において、踏み始めでは、上記一定幅のラグ溝51と同様に、ラグ溝51のタイヤ幅方向内側部分が、絞られるように(溝幅が狭まるように)変形するが、上記一定幅のラグ溝51よりも当該タイヤ幅方向内側部分の断面積が小さいので、当該タイヤ幅方向内側部分内においてタイヤ幅方向外側への水の流速(初速)がつきやすい。また、その後の踏み途中においても、ラグ溝51は、上記一定幅のラグ溝51の場合と同様に変形していくが、ラグ溝51のタイヤ幅方向内側部分で発生した初速やラグ溝51のテーパー形状等に起因して、上記一定幅のラグ溝51の場合よりも、ラグ溝51内の水の流れが大きく促進される。さらにその後の踏み直後においても、上記一定幅のラグ溝51の場合よりも、ラグ溝51の全体にわたってラグ溝51内の水の流れが増加し、直進時接地端Eよりもタイヤ幅方向外側への排水が大きく促進される。
このように、本実施形態によれば、ラグ溝51が、テーパー状をなしており、すなわち、少なくともラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eまでにわたって、タイヤ幅方向外側に向かうにつれて溝幅が一定になることなく漸増しているので、一定幅のラグ溝51とした場合に比べて、直進時接地端Eよりタイヤ幅方向内側におけるラグ溝51の面積(NEG)及び体積(VOL)を変えずに、排水性能を向上でき、ひいては、ウェットグリップ性能を向上することができる。
なお、仮に、一定幅のラグ溝51とした場合に比べて、ラグ溝51の面積(NEG)及び体積(VOL)を変えた場合、ウェットグリップ性能以外の様々なタイヤ性能も変わってしまうおそれがある。その点、本実施形態においては、ラグ溝51の面積(NEG)及び体積(VOL)を変えずに、ラグ溝51の形状だけを変えることで、ウェットグリップ性能を向上しつつ、他のタイヤ性能はほぼ同等に維持することができる。
【0023】
上述の作用効果は、解析においても確認されたので、説明する。
図7及び
図8は、当該解析の結果を示している。
図7において、上側の図面は、ラグ溝51が、ラグ溝51の全長にわたって溝幅が一定である場合の、踏み直後の動作の解析結果を示している。
図7において、下側の図面は、
図7の上側の図面における一定幅のラグ溝51を、直進時接地端Eよりタイヤ幅方向内側におけるラグ溝51の面積(NEG)及び体積(VOL)を変えずに、テーパー状に変更した場合の、踏み直後の動作の解析結果を示している。
図7における矢印は、水の流速ベクトルであり、その長さが長いほど、流速が速いことを表している。
図7から見て取れるように、ラグ溝51のタイヤ幅方向内側部分においては、一定幅のラグ溝51の場合は、水の流れがほとんど発生せず、水が滞留していたのに対し、テーパー状のラグ溝51の場合は、タイヤ幅方向外側への流れが促進されていた(
図7の(i)参照)。また、テーパー状のラグ溝51の場合は、一定幅のラグ溝51の場合に比べて、ラグ溝51内の流れが促進された結果、直進時接地端Eからタイヤ幅方向外側への排水が向上されていた(
図7の(ii)参照)。
図8は、
図7の解析結果における流速成分の絶対値分布を示している。
図8において、波形GSは、上記一定幅のラグ溝51の場合の波形であり、波形GTは、上記テーパー状のラグ溝51の場合の波形である。
図8から見て取れるように、テーパー状のラグ溝51の場合(GT)は、一定幅のラグ溝51の場合(GS)に比べて、滞留している(0m/s近傍の)流速成分が少なかった。また、テーパー状のラグ溝51の場合(GT)は、一定幅のラグ溝51の場合(GS)に比べて、0m/sよりも高い流速成分が多く、タイヤ幅方向外側に向かった流速成分が多かった。なお、テーパー状のラグ溝51の場合(GT)は、一定幅のラグ溝51の場合(GS)に比べて、流速成分の平均値も高かった。
【0024】
図1~
図2に示すように、本実施形態において、ラグ溝51は、ショルダー周方向溝31に連通している。すなわち、ラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aが、ショルダー周方向溝31に開口している。これにより、直進走行中においてショルダー周方向溝31からラグ溝51への水の流れが促進され、ひいては、ラグ溝51内においてタイヤ幅方向外側への水の流れが促進される。これにより、排水性能ひいてはウェットグリップ性能をさらに向上できる。
【0025】
ただし、
図5~
図6に示す第2実施形態のように、ラグ溝51は、ショルダー周方向溝31に連通していなくてもよい。第2実施形態において、ラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aは、ショルダー陸部5内において、ショルダー周方向溝31よりもタイヤ幅方向外側に位置している(
図6)。ラグ溝51とショルダー周方向溝31とは、いかなる溝によっても連通されていない。
この場合、第2実施形態のように、ショルダー陸部5には、ラグ溝51とショルダー周方向溝31とを連通するショルダー連通サイプ53が設けられていてもよい。
あるいは、ラグ溝51とショルダー周方向溝31とは、いかなるサイプによっても連通されていなくてもよい。
第2実施形態のように、ラグ溝51がショルダー周方向溝31に連通していない場合であっても、ラグ溝51が上述のようなテーパー状をなしていることにより、一定幅のラグ溝51の場合に比べて、排水性能ひいてはウェットグリップ性能を向上することができる。
【0026】
本明細書で説明する各例においては、
図2、
図6に示すように、直進時接地ラインAL上においてラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aのタイヤ幅方向位置に位置する第1点Q1と、直進時接地ラインAL上において直進時接地端Eに位置する第2点Q2とを結ぶ、第1直線L1の、タイヤ幅方向に対する鋭角側の第1傾斜角度θ1が、ラグ溝51の溝幅中心線51mにおけるタイヤ幅方向内端である第3点Q3と、ラグ溝51の溝幅中心線51m上において直進時接地端Eに位置する第4点Q4とを結ぶ、第2直線L2の、タイヤ幅方向に対する鋭角側の第2傾斜角度θ2よりも、大きいと、好適である。
これによれば、
図4に概略的に示すように、より確実に、直進走行中において、直進時接地ラインALひいては接地面が、ラグ溝51のタイヤ幅方向内側部分からタイヤ幅方向外側へ向かって、順次、ラグ溝51に掛かるようになる。よって、より確実に、直進走行中において、ラグ溝51が、タイヤ幅方向内側部分からタイヤ幅方向外側へ向かって、順次、絞られるように(溝幅が狭まるように)変形するので、ラグ溝51内のタイヤ幅方向外側への水の流れがさらに促進される。ひいては、排水性能ひいてはウェットグリップ性能をさらに向上することができる。
【0027】
鋭角側の第2傾斜角度θ2は、例えば、3°~10°であると好適である。
【0028】
本明細書で説明する各例においては、ラグ溝51は、ラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eまでにわたって、接地時においてトレッド踏面8内で閉塞しないように構成されていると、好適である。
これにより、ラグ溝51内のタイヤ幅方向外側への水の流れをさらに促進させることができ、ひいては、排水性能ひいてはウェットグリップ性能をさらに向上することができる。
【0029】
本明細書で説明する各例においては、
図1~
図2に示す第1実施形態のように、ラグ溝51がショルダー周方向溝31に連通している場合、ラグ溝51とショルダー周方向溝31との連通部K(ひいては、ラグ溝51のタイヤ幅方向内端51a)が、接地時においてトレッド踏面8内で閉塞しないように構成されていると、好適である。
これにより、ショルダー周方向溝31からラグ溝51への水の流れをさらに促進させることができ、ひいては、排水性能ひいてはウェットグリップ性能をさらに向上することができる。
【0030】
本明細書で説明する各例においては、
図1~
図2に示す第1実施形態のように、ラグ溝51がショルダー周方向溝31に連通している場合、ラグ溝51とショルダー周方向溝31との連通部Kにおいて、ラグ溝51の溝深さは、ショルダー周方向溝31の溝深さと同じであると、好適である。
これにより、ラグ溝51とショルダー周方向溝31との間に段差が無いので、ショルダー周方向溝31からラグ溝51への水の流れをさらに促進させることができる。また、これにより、一定幅のラグ溝51の場合に比べて、直進時接地端Eよりもタイヤ幅方向内側におけるラグ溝51の体積を変えずに、接地時においてラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aが閉塞するのをさらに抑制でき、ショルダー周方向溝31からラグ溝51への水の流れをさらに促進させることができる。ひいては、排水性能ひいてはウェットグリップ性能をさらに向上することができる。
ただし、本明細書で説明する各例においては、ラグ溝51がショルダー周方向溝31に連通している場合、ラグ溝51とショルダー周方向溝31との連通部Kにおいて、ラグ溝51の溝深さは、ショルダー周方向溝31の溝深さよりも浅くてもよいし、ショルダー周方向溝31の溝深さよりも深くてもよい。
【0031】
本明細書で説明する各例においては、ラグ溝51の直進時接地端Eでの溝幅が、ラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aでの溝幅の2倍以上であると、好適である。
これにより、ラグ溝51内のタイヤ幅方向外側への水の流れをさらに促進させることができ、ひいては、排水性能ひいてはウェットグリップ性能をさらに向上することができる。
【0032】
本明細書で説明する各例においては、
図1、
図5に示す各実施形態のように、トレッド踏面8の内部及び外部のうち少なくとも一方(好適には両方)において、ショルダー周方向溝31よりもタイヤ幅方向外側で、タイヤ周方向に沿って配列された複数のラグ溝51どうしが、他のいかなる溝によっても連通されていないと、好適である。
これにより、ラグ溝51内のタイヤ幅方向外側への水の流れをさらに促進させることができ、ひいては、排水性能ひいてはウェットグリップ性能をさらに向上することができる。
仮に複数のラグ溝51どうしが他の溝によって連通されている場合、ラグ溝51内の水の流れが乱れるおそれがあり、ラグ溝51内のタイヤ幅方向外側への水の流れがさほど促進されないおそれがある。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、
図1、
図5に示す各実施形態のように、トレッド踏面8の内部及び外部のうち少なくとも一方(好適には両方)において、タイヤ周方向に沿って配列された複数のラグ溝51どうしが、いかなるサイプによっても連通されていないと、好適である。
【0033】
本明細書で説明する各例においては、
図1~
図2、
図5~
図6に示す各実施形態のように、ウェットグリップ性能の向上の観点から、少なくともラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eまでにわたって(
図1~
図2、
図5~
図6に示す各実施形態では、ラグ溝51におけるタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eよりもタイヤ幅方向外側に位置する部分までにわたって)、ラグ溝51の溝幅中心線51m(
図2、
図6)が、湾曲線形状をなしていると、好適である。
あるいは、本明細書で説明する各例においては、図示は省略するが、ウェットグリップ性能の向上の観点から、少なくともラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eまでにわたって(好適には、ラグ溝51におけるタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eよりもタイヤ幅方向外側に位置する部分までにわたって)、ラグ溝51の溝幅中心線51mが、直線形状をなしている場合も、好適である。
【0034】
本明細書で説明する各例においては、
図1~
図2、
図5~
図6に示す各実施形態のように、ウェットグリップ性能の向上の観点から、少なくともラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eまでにわたって(
図1~
図2、
図5~
図6に示す各実施形態では、ラグ溝51におけるタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eよりもタイヤ幅方向外側に位置する部分までにわたって)、ラグ溝51の溝幅中心線51m(
図2、
図6)の、タイヤ幅方向に対する鋭角側の傾斜角度が、タイヤ幅方向外側に向かうにつれて漸減していると、好適である。
あるいは、本明細書で説明する各例においては、図示は省略するが、ウェットグリップ性能の向上の観点から、少なくともラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eまでにわたって(好適には、ラグ溝51におけるタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eよりもタイヤ幅方向外側に位置する部分までにわたって)、ラグ溝51の溝幅中心線51mの、タイヤ幅方向に対する鋭角側の傾斜角度が、一定である場合も、好適である。
なお、あるタイヤ幅方向位置における、「ラグ溝51の溝幅中心線51mの、タイヤ幅方向に対する鋭角側の傾斜角度」とは、当該タイヤ幅方向位置における溝幅中心線51m上の点での溝幅中心線51mに対する接線の、タイヤ幅方向に対する鋭角側の傾斜角度を指す。
【0035】
本明細書で説明する各例においては、
図1~
図2に示す第1実施形態のように、ラグ溝51がショルダー周方向溝31に連通している場合、トレッド踏面8内のラグ溝51のテーパー角度θ3(
図2)は、1.0°以上であると好適であり、1.3°以上であるとより好適であり、1.6°以上であるとさらに好適である。これにより、
図4を参照しつつ上述したように、ラグ溝51のテーパー形状によって、ウェットグリップ性能を向上できる。
本明細書で説明する各例においては、
図1~
図2に示す第1実施形態のように、ラグ溝51がショルダー周方向溝31に連通している場合、トレッド踏面8内のラグ溝51のテーパー角度θ3は、6.5°以下であると好適であり、6.2°以下であるとより好適であり、4.0°以下であるとさらに好適であり、3.1°以下であるとよりさらに好適である。トレッド踏面8内のラグ溝51のテーパー角度θ3が大きくなると、接地時にラグ溝51とショルダー周方向溝31との連通部Kが閉塞しやすくなる傾向がある。上記の角度範囲とすることにより、接地時において、ラグ溝51とショルダー周方向溝31との連通部Kが閉塞するのを抑制し、ショルダー周方向溝31からラグ溝51への水の流れを促進し、ひいては、ウェットグリップ性能を向上できる。
なお、「トレッド踏面8内のラグ溝51のテーパー角度θ3」(
図2、
図6)は、トレッド踏面8において、ラグ溝51の互いに対向する一対の溝壁面51wのうちの一方の溝壁面51wのタイヤ幅方向内端である第5点Q5と、当該一方の溝壁面51w上において直進時接地端Eに位置する第6点Q6と、を通る直線を、第3直線L3とし、ラグ溝51の互いに対向する一対の溝壁面51wのうちの他方の溝壁面51wのタイヤ幅方向内端である第7点Q7と、当該他方の溝壁面51w上において直進時接地端Eに位置する第8点Q8と、を通る直線を、第4直線L4としたとき、第3直線L3と第4直線L4とがなす鋭角側の角度を指す。
【0036】
本明細書で説明する各例においては、
図5~
図6に示す第2実施形態のように、ラグ溝51がショルダー周方向溝31に連通していない場合、トレッド踏面8内のラグ溝51のテーパー角度θ3(
図6)は、1.0°以上であると好適であり、4.2°以上であるとより好適であり、5.0°以上であるとさらに好適である。これにより、
図4を参照しつつ上述したように、ラグ溝51のテーパー形状によって、ウェットグリップ性能を向上できる。
【0037】
トレッド踏面8内におけるラグ溝51の溝深さは、例えば、3~20mmであると好適であり、4~10mmであるとより好適である。
なお、ラグ溝51の溝深さは、タイヤ幅方向に沿って、一定でもよいし、変化してもよい。
ラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aでの溝幅は、例えば、1~4mmであると好適であり、1~2mmであるとより好適である。
ラグ溝51の直進時接地端Eでの溝幅は、例えば、3~7mmであると好適であり、44~6mmであるとより好適である。
【0038】
ショルダー周方向溝31の溝深さは、例えば、3~20mmであると好適であり、4~10mmであるとより好適である。
ショルダー周方向溝31の溝幅は、例えば、7~16mmであると好適であり、9~14mmであるとより好適である。
【0039】
本明細書で説明する各例においては、ショルダー陸部5に、ラグ溝51やショルダー連通サイプ53に加えて、他の任意の構成を有してもよい。
【0040】
本明細書で説明する各例においては、トレッド踏面8におけるショルダー周方向溝31よりもタイヤ幅方向内側の部分については、任意の構成を有してよい。
図1、
図5に示す各実施形態において、タイヤT01のトレッド部T01tには、ショルダー周方向溝31よりもタイヤ幅方向内側において、タイヤ周方向に延在する周方向溝3であるセンター周方向溝32が設けられている。センター周方向溝32は、タイヤ赤道面CL上に位置している。センター周方向溝32とショルダー周方向溝31との間には、センター陸部6が区画されている。センター陸部6には、タイヤ周方向に沿って互いから間隔を空けて配列された複数のセンター陸部サイプ61が設けられている。各センター陸部サイプ61は、センター周方向溝32とショルダー周方向溝31とに開口している。各センター陸部サイプ61は、トレッド踏面8内において、タイヤ幅方向に対して鋭角で傾斜しており、直線状に延在している。センター陸部6には、いかなる溝も設けられていない。
ただし、本明細書で説明する各例においては、トレッド踏面8には、任意の数の周方向溝3が設けられてよい。
【0041】
本明細書で説明する各例においては、タイヤT01は、任意の内部構造を備えていてよい。以下、
図3を参照しつつ、タイヤT01の内部構造の一例について説明する。
図3の例の内部構造は、乗用車用タイヤに適用されると、特に好適なものである。
【0042】
図3に示す例において、タイヤT01は、一対のビードコアT02と、一対のビードフィラーT03と、カーカスT05と、ベルトT06と、トレッドゴムT07と、サイドゴムT08と、インナーライナーT09と、を備えている。
【0043】
各ビードコアT02は、それぞれ、対応するビード部T01bに埋設されている。ビードコアT02は、周囲をゴムにより被覆されている複数のビードワイヤを備えている。ビードワイヤは、金属(例えばスチール)から構成されてもよいし、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されてもよい。ビードワイヤは、例えば、モノフィラメント又は撚り線からなるものとすることができる。
【0044】
各ビードフィラーT03は、それぞれ、対応するビードコアT02に対してタイヤ径方向外側に位置する。ビードフィラーT03は、タイヤ径方向外側に向かって先細状に延びている。ビードフィラーT03は、ゴムから構成される。
一般的に、ビードフィラーは、「スティフナー」と呼ばれることがある。
【0045】
カーカスT05は、一対のビードコアT02間に跨っており、トロイダル状に延在している。カーカスT05は、1枚以上(
図1の例では、1枚)のカーカスプライT05pから構成されている。各カーカスプライT05pは、1本又は複数本のカーカスコードと、カーカスコードを被覆する被覆ゴムと、を含んでいる。カーカスコードは、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。
カーカスコードは、金属(例えばスチール)から構成されてもよいし、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されてもよい。
カーカスT05は、ラジアル構造であると好適であるが、バイアス構造でもよい。
【0046】
ベルトT06は、カーカスT05のクラウン部に対してタイヤ径方向外側に配置されている。ベルトT06は、1層以上(
図1の例では、2層)のベルトプライT06pを備えている。各ベルトプライT06pは、1本又は複数本のベルトコードと、ベルトコードを被覆する被覆ゴムと、を含んでいる。ベルトコードは、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。ベルトコードは、金属(例えばスチール)から構成されてもよいし、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されてもよい。
【0047】
トレッドゴムT07は、トレッド部T01tにおいて、ベルトT06のタイヤ径方向外側に位置している。トレッドゴムT07は、トレッド部T01tのタイヤ径方向外側の面であるトレッド踏面8を構成している。トレッド踏面8には、トレッドパターンが形成されている。
【0048】
サイドゴムT08は、サイドウォール部T01wに位置している。サイドゴムT08は、サイドウォール部T01wのタイヤ幅方向外側の外表面を構成している。サイドゴムT08は、カーカスT05よりもタイヤ幅方向外側に位置している。サイドゴムT08は、ビードフィラーT03よりもタイヤ幅方向外側に位置している。サイドゴムT08は、トレッドゴムT07と一体で形成されている。
【0049】
インナーライナーT09は、カーカスT05のタイヤ内側に配置され、例えば、カーカスT05のタイヤ内側に積層されてもよい。インナーライナーT09は、例えば、空気透過性の低いブチル系ゴムで構成される。ブチル系ゴムには、例えばブチルゴム、及びその誘導体であるハロゲン化ブチルゴムが含まれる。インナーライナーT09は、ブチル系ゴムに限られず、他のゴム組成物、樹脂、又はエラストマーで構成することができる。
【0050】
図示は省略するが、タイヤT01は、タイヤ径方向におけるカーカスT05とトレッドゴムT07との間に、クッションゴムを備えていてもよい。クッションゴムは、ベルトT06のタイヤ幅方向端部の近傍に位置していてもよい。
【0051】
図3に示すように、タイヤT01は、各ビード部T01bにおける、リムと接触するように構成された部分において、ゴムチェーファーT11を備えていてもよい。
【0052】
図3に示すように、タイヤT01は、各ビードコアT02の周りに、1枚又は複数枚(
図3の例では、1枚)のワイヤーチェーファーT14を備えていてもよい。ワイヤーチェーファーT14は、
図3の例のように、カーカスT05に対してビードコアT02とは反対側に配置されていてもよい。ワイヤーチェーファーT14は、金属(例えばスチール)から構成される。
図示は省略するが、タイヤT01は、各ビードコアT02の周りに、1枚又は複数のナイロンチェーファーを備えていてもよい。ナイロンチェーファーは、
図1の例のように、カーカスT05に対してビードコアT02とは反対側に配置されていてもよい。ナイロンチェーファーは、ナイロンから構成される。
【0053】
図示は省略するが、タイヤT01は、各タイヤ半部において、タイヤ幅方向におけるビードフィラーT03とサイドゴムT08との間に、ハットゴムを備えていてもよい。
【0054】
図3に示すように、タイヤT01は、通信装置としてのRFタグ10を備えてよい。RFタグ10は、ICチップとアンテナとを備える。RFタグ10は、例えば、タイヤT01を構成する同種又は異種の複数の部材の間の位置に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、タイヤT01生産時にRFタグ10を取り付け易く、RFタグ10を備えるタイヤT01の生産性を向上させることができる。
図3の例のように、RFタグ10は、例えば、ビードフィラーT03と、ビードフィラーT03に隣接するその他の部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。
RFタグ10は、タイヤT01を構成するいずれかの部材内に埋設されていてもよい。このようにすることで、タイヤT01を構成する複数の部材の間の位置に挟み込まれて配置される場合と比較して、RFタグ10に加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグ10の耐久性を向上させることができる。本例では、RFタグ10は、例えば、トレッドゴムT07、サイドゴムT08等のゴム部材内に埋設されてよい。
RFタグ10は、タイヤ幅方向断面視でのタイヤ外面に沿う方向であるペリフェリ長さ方向において、剛性の異なる部材の境界となる位置に、配置されないことが好ましい。このようにすることで、RFタグ10は、剛性段差に基づき歪みが集中し易い位置に、配置されない。そのため、RFタグ10に加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグ10の耐久性を向上させることができる。本例では、RFタグ10は、例えば、タイヤ幅方向断面視でカーカスT05の端部と、このカーカスT05の端部に隣接する部材(例えばサイドゴムT08等)と、の境界となる位置に配置されないことが好ましい。
RFタグ10の数は特に限定されない。タイヤT01は、1個のみのRFタグ10を備えてもよく、2個以上のRFタグ10を備えてもよい。ここでは、通信装置の一例として、RFタグ10を例示説明しているが、RFタグ10とは異なる通信装置であってもよい。
【0055】
RFタグ10は、例えば、タイヤT01のトレッド部T01tに配置されてよい。このようにすることで、RFタグ10は、タイヤT01のサイドカットにより損傷しない。
RFタグ10は、例えば、タイヤ幅方向において、トレッド中央部に配置されてよい。トレッド中央部は、トレッド部T01tにおいて撓みが集中し難い位置である。このようにすることで、RFタグ10に加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグ10の耐久性を向上させることができる。また、タイヤ幅方向でのタイヤT01の両外側からのRFタグ10との通信性に差が生じることを抑制できる。本例では、RFタグ10は、例えば、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道面CLを中心としてトレッド幅の1/2の範囲内に配置されてよい。
RFタグ10は、例えば、タイヤ幅方向において、トレッド端部に配置されてもよい。RFタグ10と通信するリーダーの位置が予め決まっている場合には、RFタグ10は、例えば、このリーダーに近い一方側のトレッド端部に配置されてよい。本例では、RFタグ10は、例えば、タイヤ幅方向において、トレッド端を外端とする、トレッド幅の1/4の範囲内に配置されてよい。
【0056】
RFタグ10は、例えば、ビード部T01b間に跨る、1枚以上のカーカスプライT05pを含むカーカスT05より、タイヤ内腔側に配置されてよい。このようにすることで、タイヤT01の外部から加わる衝撃や、サイドカットや釘刺さりなどの損傷に対して、RFタグ10が損傷し難くなる。一例として、RFタグ10は、カーカスT05のタイヤ内腔側の面に密着して配置されてよい(
図3の点P31参照。)。別の一例として、カーカスT05よりタイヤ内腔側に別の部材がある場合に、RFタグ10は、例えば、カーカスT05と、このカーカスT05よりタイヤ内腔側に位置する別の部材と、の間に配置されてもよい。カーカスT05よりタイヤ内腔側に位置する別の部材としては、例えば、タイヤ内面を形成するインナーライナーT09が挙げられる。別の一例として、RFタグ10は、タイヤ内腔に面するタイヤ内面に取り付けられていてもよい(
図3の点P32参照。)。RFタグ10が、タイヤ内面に取り付けられる構成とすることで、RFタグ10のタイヤT01への取り付け、及び、RFタグ10の点検・交換が行い易い。つまり、RFタグ10の取り付け性及びメンテナンス性を向上させることができる。また、RFタグ10が、タイヤ内面に取り付けられることで、RFタグ10をタイヤT01内に埋設する構成と比較して、RFタグ10がタイヤ故障の核となることを防ぐことができる。
また、カーカスT05が、複数枚のカーカスプライT05pを備え、複数枚のカーカスプライT05pが重ねられている位置がある場合に、RFタグ10は、重ねられているカーカスプライT05pの間に配置されていてもよい。
【0057】
RFタグ10は、例えば、タイヤT01のトレッド部T01tで、1枚以上のベルトプライT06pを含むベルトT06より、タイヤ径方向の外側に配置されてよい。一例として、RFタグ10は、ベルトT06に対してタイヤ径方向の外側で、当該ベルトT06に密着して配置されてよい(
図3の点P44参照。)。また、別の一例として、ベルト補強層T04を備える場合、当該ベルト補強層T04に対してタイヤ径方向の外側で、当該ベルト補強層T04に密着して配置されてよい(
図3の点P45参照。)。また、別の一例として、RFタグ10は、ベルトT06よりタイヤ径方向の外側で、トレッドゴムT07内に埋設されていてもよい(
図3の点P41参照。)。RFタグ10が、タイヤT01のトレッド部T01tで、ベルトT06よりタイヤ径方向の外側に配置されることで、タイヤ径方向でのタイヤT01の外側からのRFタグ10との通信が、ベルトT06により阻害され難い。そのため、タイヤ径方向でのタイヤT01の外側からのRFタグ10との通信性を向上させることができる。
また、RFタグ10は、例えば、タイヤT01のトレッド部T01tで、ベルトT06よりタイヤ径方向の内側に配置されていてもよい。このようにすることで、RFタグ10のタイヤ径方向の外側がベルトT06に覆われるため、RFタグ10は、トレッド面からの衝撃や釘刺さりなどに対して損傷し難くなる。この一例として、RFタグ10は、タイヤT01のトレッド部T01tで、ベルトT06と、当該ベルトT06よりタイヤ径方向の内側に位置するカーカスT05と、の間に配置されてよい(
図3の点P42参照。)。
また、ベルトT06が、複数枚のベルトプライT06pを備える場合に、RFタグ10は、タイヤT01のトレッド部T01tで、任意の2枚のベルトプライT06pの間に配置されてよい(
図3の点P43参照。)。このようにすることで、RFタグ10のタイヤ径方向の外側が1枚以上のベルトプライT06pに覆われるため、RFタグ10は、トレッド面からの衝撃や釘刺さりなどに対して損傷し難くなる。
【0058】
RFタグ10は、例えば、クッションゴムと、トレッドゴムT07との間やクッションゴムと、サイドゴムT08と、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、RFタグ10への衝撃を、クッションゴにより緩和できる。そのため、RFタグ10の耐久性を向上させることができる。
また、RFタグ10は、例えば、クッションゴム内に埋設されていてもよい。更に、クッションゴは、隣接する同種又は異種の複数のゴム部材から構成されてよい。かかる場合に、RFタグ10は、クッションゴムを構成する複数のゴム部材の間に挟み込まれて配置されてもよい。
この構成は、タイヤT01が重荷重用空気入りタイヤ(例えば、トラック・バス用空気入りタイヤ、オフ・ザ・ロード(建設車両用)空気入りタイヤ等)である場合に、特に好適である。
【0059】
RFタグ10は、例えば、タイヤT01のサイドウォール部T01w又はビード部T01bの位置に配置されてよい。RFタグ10は、例えば、RFタグ10と通信可能なリーダーに対して近い一方側のサイドウォール部T01w又は一方側のビード部T01bに配置されてよい(
図3の点P6、P62参照。)。このようにすることで、RFタグ10とリーダーとの通信性を高めることができる。一例として、RFタグ10は、カーカスT05と、サイドゴムT08と、の間やトレッドゴムT07とサイドゴムT08と、の間に配置されてよい(
図3の点P61参照。)。
RFタグ10は、例えば、タイヤ径方向において、タイヤ最大幅となる位置と、トレッド面の位置と、の間に配置されてよい。このようにすることで、RFタグ10がタイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向の内側に配置される構成と比較して、タイヤ径方向でのタイヤT01の外側からのRFタグ10との通信性を高めることができる。
RFタグ10は、例えば、タイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向の内側に配置されていてもよい。このようにすることで、RFタグ10は、剛性の高いビード部T01b近傍に配置される。そのため、RFタグ10に加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグ10の耐久性を向上させることができる。一例として、RFタグ10は、ビードコアT02とタイヤ径方向又はタイヤ幅方向で隣接する位置に配置されてよい。ビードコアT02近傍は歪みが集中し難い。そのため、RFタグ10に加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグ10の耐久性を向上させることができる。
特に、RFタグ10は、タイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向の内側であって、かつ、ビード部T01bのビードコアT02よりタイヤ径方向の外側の位置に配置されることが好ましい。このようにすることで、RFタグ10の耐久性を向上させることができるとともに、RFタグ10とリーダーとの通信が、ビードコアT02により阻害され難く、RFタグ10の通信性を高めることができる。
また、サイドゴムT08がタイヤ径方向に隣接する同種又は異種の複数のゴム部材から構成されている場合に、RFタグ10は、サイドゴムT08を構成する複数のゴム部材の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
【0060】
RFタグ10は、ビードフィラーT03と、このビードフィラーT03に隣接する部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、ビードフィラーT03を配置することにより歪みが集中し難くなった位置に、RFタグ10を配置することができる。そのため、RFタグ10に加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグ10の耐久性を向上させることができる。
RFタグ10は、例えば、ビードフィラーT03と、カーカスT05と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。カーカスT05のうちビードフィラーT03と共にRFタグ10を挟み込む部分は、ビードフィラーT03に対してタイヤ幅方向の外側に位置してもよく、タイヤ幅方向の内側に位置してもよい。カーカスT05のうちビードフィラーT03と共にRFタグ10を挟み込む部分が、ビードフィラーT03に対してタイヤ幅方向の外側に位置する場合には、タイヤ幅方向のタイヤT01の外側からの衝撃や損傷により、RFタグ10に加わる負荷を、より低減できる。これにより、RFタグ10の耐久性を、より向上させることができる。
また、ビードフィラーT03は、サイドゴムT08と隣接して配置されている部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグ10は、ビードフィラーT03と、サイドゴムT08と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
更に、ビードフィラーT03は、ゴムチェーファーT11と隣接して配置されている部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグ10は、ビードフィラーT03と、ゴムチェーファーT11と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
この構成は、タイヤT01が乗用車用空気入りタイヤである場合に、特に好適である。
【0061】
RFタグ10は、スティフナーT03と、このスティフナーT03に隣接する部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、スティフナーT03を配置することにより歪みが集中し難くなった位置に、RFタグ10を配置することができる。そのため、RFタグ10に加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグ10の耐久性を向上させることができる。RFタグ10は、例えば、スティフナーT03と、サイドゴムT08と、の間に挟み込まれて配置されてよい。
また、RFタグ10は、例えば、スティフナーT03と、カーカスT05と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。カーカスT05のうちスティフナーT03と共にRFタグ10を挟み込む部分は、スティフナーT03に対してタイヤ幅方向の外側に位置してもよく、タイヤ幅方向の内側に位置してもよい。カーカスT05のうちスティフナーT03と共にRFタグ10を挟み込む部分が、スティフナーT03に対してタイヤ幅方向の外側に位置する場合には、タイヤ幅方向のタイヤT01の外側からの衝撃や損傷により、RFタグ10に加わる負荷を、より低減できる。これにより、RFタグ10の耐久性を、より向上させることができる。
スティフナーT03は、ゴムチェーファーT11と隣接して配置されている部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグ10は、スティフナーT03と、ゴムチェーファーT11と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
スティフナーT03は、タイヤ幅方向の外側でハットゴムに隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグ10は、スティフナーT03と、ハットゴムと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
スティフナーT03は、硬さの異なる複数のゴム部材から構成されてよい。かかる場合に、RFタグ10は、スティフナーT03を構成する複数のゴム部材の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
RFタグ10は、ハットゴムと、このハットゴに隣接する部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。RFタグ10は、例えば、ハットゴムと、カーカスプライT05pと、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、RFタグ10への衝撃を、ハットゴムにより緩和できる。そのため、RFタグ10の耐久性を向上させることができる。
この構成は、タイヤT01が重荷重用空気入りタイヤ(例えば、トラック・バス用空気入りタイヤ、オフ・ザ・ロード(建設車両用)空気入りタイヤ等)である場合に、特に好適である。
【0062】
RFタグ10は、例えば、ゴムチェーファーT11と、サイドゴムT08と、の間に挟み込まれて配置されてよい(
図3の点P82参照。)。このようにすることで、ゴムチェーファーT11を配置することにより歪みが集中し難くなった位置に、RFタグ10を配置することができる。そのため、RFタグ10に加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグ10の耐久性を向上させることができる。
RFタグ10は、例えば、ゴムチェーファーT11と、カーカスT05と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい(
図3の点P81参照。)。このようにすることで、リムから加わる衝撃や損傷により、RFタグ10に加わる負荷を低減できる。そのため、RFタグ10の耐久性を向上させることができる。
【0063】
RFタグ10は、ナイロンチェーファーと、このナイロンチェーファーのタイヤ幅方向の外側又は内側で隣接する別の部材と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。このようにすることで、タイヤ変形時に、RFタグ10の位置が変動し難くなる。そのため、タイヤ変形時にRFタグ10に加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグ10の耐久性を向上させることができる。
ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向外側で、ゴムチェーファーT11と隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグ10は、ナイロンチェーファーと、ゴムチェーファーT11と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向外側で、サイドゴムT08と隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグ10は、ナイロンチェーファーと、サイドゴムT08と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向内側で、スティフナーT03と隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグ10は、ナイロンチェーファーと、スティフナーT03と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。また、ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向内側で、ハットゴムT12と隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグ10は、ナイロンチェーファーと、ハットゴムT12と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。更に、ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向内側で、カーカスT05と隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグ10は、ナイロンチェーファーと、カーカスT05と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。更に、ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向内側で、ワイヤーチェーファーT14と隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグ10は、ナイロンチェーファーと、ワイヤーチェーファーT14と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
このように、RFタグ10は、ナイロンチェーファーと、このナイロンチェーファーのタイヤ幅方向の外側又は内側で隣接する別の部材と、の間に挟み込まれて配置されていてよい。特に、RFタグ10のタイヤ幅方向外側が、ナイロンチェーファーに覆われることで、タイヤ幅方向でのタイヤの外側からの衝撃や損傷により、RFタグ10に加わる負荷を、より低減できる。そのため、RFタグ10の耐久性を、より向上させることができる。
この構成は、タイヤT01が重荷重用空気入りタイヤ(例えば、トラック・バス用空気入りタイヤ、オフ・ザ・ロード(建設車両用)空気入りタイヤ等)である場合に、特に好適である。
【0064】
RFタグ10は、ワイヤーチェーファーT14と、このワイヤーチェーファーT14のタイヤ幅方向の内側又は外側で隣接する別の部材と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。このようにすることで、タイヤ変形時に、RFタグ10の位置が変動し難くなる。そのため、タイヤ変形時にRFタグ10に加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグ10の耐久性を向上させることができる。ワイヤーチェーファーT14がタイヤ幅方向の内側又は外側で隣接する別の部材は、例えば、ゴムチェーファーT11などのゴム部材であってよい(
図3の点P102参照。)。また、ワイヤーチェーファーT14がタイヤ幅方向の内側又は外側で隣接する別の部材は、例えば、カーカスT05であってもよい(
図3の点P101参照。)。
【0065】
ベルトT06の半径方向外側にベルト補強層T04をさらに備えてもよい。例えば、ベルト補強層T04はポリエチレンテレフタレートからなるベルト補強層コードをタイヤ周方向に連続して螺旋状に巻回してなってもよい。ここでベルト補強層コードは、6.9×10-2 N/tex以上の張力をかけて接着剤処理を施してなり、160℃で測定した29.4N荷重時の弾性率が2.5 mN/dtex・%以上であってもよい。さらにベルト補強層T04はベルトT06全体を覆うように配置されていてもベルトT06の両端部のみを覆うように配置されていてもよい。さらにベルト補強層T04の単位幅あたりの巻き回し密度が幅方向位置で異なっていてもよい。このようにすることで、高速耐久性を低下させることなくロードノイズおよびフラットスポットを低減させることができる。
この構成は、タイヤT01が乗用車用空気入りタイヤである場合に、特に好適である。
【実施例0066】
実施例及び比較例に係るタイヤT01を準備し評価したので説明する。
【0067】
〔比較例1、実施例1、2;比較例2、実施例3、4〕
比較例1、実施例1、2、ならびに、比較例2、実施例3、4の各例のタイヤは、それぞれ、タイヤサイズ205/55R16の同一トレッドパターンのタイヤに、グルービングによって各ラグ溝51の形状を調整することにより、準備した。各例のトレッドパターンは、基本的に
図1に示すものと同様であり、各ラグ溝51の形状のみがそれぞれ異なるものだった。各例のラグ溝51の構成の詳細は、表1に示すとおりである。
各実施例は、各ラグ溝51が、直進時接地端Eに開口しており、鋭角側の第1傾斜角度θ1が鋭角側の第2傾斜角度θ2よりも、大きく、また、各ラグ溝51が、少なくともラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eまでにわたって、タイヤ幅方向外側に向かうにつれて溝幅が一定になることなく漸増しているものだった。
各比較例は、各ラグ溝51が、少なくともラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eまでにわたって、溝幅が一定であった。
実施例1、2の各ラグ溝51は、それぞれ、比較例1の各ラグ溝51に比べて、直進時接地端Eよりタイヤ幅方向内側におけるラグ溝51の面積(NEG)及び体積(VOL)が同じであった。実施例3、4の各ラグ溝51は、それぞれ、比較例2の各ラグ溝51に比べて、直進時接地端Eよりタイヤ幅方向内側におけるラグ溝51の面積(NEG)及び体積(VOL)が同じであった。
各例のタイヤについて、WGI(Wet Grip Index:ウェットグリップ指数)を測定した。その結果は表1に示すとおりである。なお、表1では、実施例1、2のWGIを、比較例1のWGIを100としたときの指数値で表しており、実施例3、4のWGIを、比較例2のWGIを100としたときの指数値で表している。表1で示すWGIの指数値は、その値が高いほど、WGIが高く、ひいては、ウェットグリップ性能が高いことを表す。WGIは、UN-R117-02-S08の「附則5 ウェットグリップを測定するための試験手順」に沿って測定した。
【0068】
【0069】
表1からわかるように、各実施例のタイヤは、それぞれ対応する比較例のタイヤよりも、WGIが高く、ひいては、ウェットグリップ性能が高かった。
【0070】
〔比較例3、実施例5;比較例4、実施例6;比較例5、実施例7〕
比較例3、実施例5、ならびに、比較例4、実施例6の各例のタイヤは、それぞれ、同一タイヤサイズの同一トレッドパターンのタイヤに、グルービングによって各ラグ溝51の形状を調整することにより、準備した。比較例3、実施例5のトレッドパターンは、基本的に
図1に示すものと同様であり、各ラグ溝51の形状のみがそれぞれ異なるものだった。比較例4、実施例6のトレッドパターンは、基本的に
図5に示すものと同様であり、各ラグ溝51の形状のみがそれぞれ異なるものだった。
比較例5、実施例7の各例のタイヤは、それぞれ、タイヤサイズが205/55R16であり、モールドを用いて作製した。比較例5、実施例7のトレッドパターンは、基本的に
図5に示すものと同様であり、各ラグ溝51の形状のみがそれぞれ異なるものだった。
各例のラグ溝51の構成の詳細は、表2に示すとおりである。
各実施例は、各ラグ溝51が、直進時接地端Eに開口しており、鋭角側の第1傾斜角度θ1が鋭角側の第2傾斜角度θ2よりも、大きく、また、各ラグ溝51が、少なくともラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eまでにわたって、タイヤ幅方向外側に向かうにつれて溝幅が一定になることなく漸増しているものだった。
各比較例は、各ラグ溝51が、少なくともラグ溝51のタイヤ幅方向内端51aから直進時接地端Eまでにわたって、溝幅が一定であった。
実施例5の各ラグ溝51は、比較例3の各ラグ溝51に比べて、直進時接地端Eよりタイヤ幅方向内側におけるラグ溝51の面積(NEG)及び体積(VOL)が同じであった。実施例6の各ラグ溝51は、比較例4の各ラグ溝51に比べて、直進時接地端Eよりタイヤ幅方向内側におけるラグ溝51の面積(NEG)及び体積(VOL)が同じであった。実施例7の各ラグ溝51は、比較例5の各ラグ溝51に比べて、直進時接地端Eよりタイヤ幅方向内側におけるラグ溝51の面積(NEG)及び体積(VOL)が同じであった。
各例のタイヤについて、WGIを測定した。その結果は表2に示すとおりである。なお、表2では、実施例5のWGIを、比較例3のWGIを100としたときの指数値で表しており、実施例6のWGIを、比較例4のWGIを100としたときの指数値で表しており、実施例7のWGIを、比較例5のWGIを100としたときの指数値で表している。表2で示すWGIの指数値は、その値が高いほど、WGIが高く、ひいては、ウェットグリップ性能が高いことを表す。WGIは、UN-R117-02-S08の「附則5 ウェットグリップを測定するための試験手順」に沿って測定した。
【0071】
【0072】
表2からわかるように、各実施例のタイヤは、それぞれ対応する比較例のタイヤよりも、WGIが高く、ひいては、ウェットグリップ性能が高かった。
また、比較例5、実施例7のそれぞれのタイヤについては、ウェットグリップ性能以外の種々のタイヤ性能(操縦安定性能、耐ノイズ性能、耐偏摩耗性能、ウェットグリップ性能以外のウェット性能(耐ハイドロプレーニング性能等)等)の評価も行った。その結果、実施例7のタイヤは、比較例5に比べて、これらのタイヤ性能に関し、ほぼ同等の性能が得られており、また、特に一部のウェット性能(耐ハイドロプレーニング性能等)に関しては、より高い性能が得られていることを確認した。
【0073】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本発明の一実施形態は「No.12_つくる責任、つかう責任」および「No.13_気候変動に具体的な対策を」などに貢献する技術となり得ると考えられる。
本発明に係るタイヤは、任意の種類の四輪車用タイヤに好適に利用でき、例えば乗用車用タイヤや小型トラック(LT)用タイヤに特に好適に利用できる。また、本発明に係るタイヤは、空気入りタイヤに好適に利用できる。