IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-粘着シート、積層体及び光学デバイス 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067534
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】粘着シート、積層体及び光学デバイス
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240510BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177693
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 真之
(72)【発明者】
【氏名】加嶋 睦之
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004FA01
4J040DF001
4J040DF002
4J040GA05
4J040JA09
4J040JB09
4J040LA01
4J040MA05
4J040MB05
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】リワーク性に優れ、位置調整等のために粘着シートを剥がした後の再貼合性にも優れ、リワーク後は優れた粘着力を発揮することができる粘着シート及び該粘着シートを含む積層体並びに光学デバイスを提供する。
【解決手段】本発明の粘着シートは、光学部材どうしを貼り合わせるための粘着シートであって、少なくとも粘着剤層A及び粘着剤層Bが積層されてなる粘着剤層を備え、所定の物性(1)、物性(2)及び物性(3)を満たす。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材どうしを貼り合わせるための粘着シートであって、
少なくとも粘着剤層A及び粘着剤層Bが積層されてなる粘着剤層を備え、
前記粘着剤層Aは、架橋性(メタ)アクリル系重合体Paの架橋体及び(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)を含有し、
前記架橋性(メタ)アクリル系共重合体Paは、
炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステル単位と、架橋性単量体単位と、メタクリル酸メチル単位を有するマクロモノマー単位とを含む重合体であり、
前記粘着剤層は、下記の物性(1)、物性(2)及び物性(3)
物性(1):
JIS Z 0237に規定される粘着力の測定方法に準じて測定された、貼り合わせ1時間後の粘着剤層Aの対ガラス粘着力をSa(N/25mm)としたとき、
Sa<5である、
物性(2):
粘着シートをガラス板に貼合し、100℃、0.5MPaの条件で30分間加熱処理した後にJIS Z 0237に規定される粘着力の測定方法に準じて測定された、粘着剤層Aの対ガラス粘着力をTa(N/25mm)としたとき、
Ta≧10である、
物性(3):
JIS Z 0237に規定される180°引き剥がし粘着力の測定方法に準じて測定された粘着剤層Bの対ガラス粘着力をUb(N/25mm)としたとき、
Ub>10である、
を満たす、粘着シート。
【請求項2】
前記架橋性(メタ)アクリル系共重合体Paは、
前記(メタ)アクリルエステル単位を50~95質量%、
前記架橋性単量体単位を1~50質量%、
前記マクロモノマー単位を1~15質量%含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層Aの厚みをDa(μm)、前記粘着剤層Bの厚みをDb(μm)としたとき、5≦Da≦25、かつ、15≦Db≦150である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着シートと、該粘着シートの少なくとも片面に光学部材が貼り合わされている、積層体。
【請求項5】
請求項4に記載の積層体を備える、光学デバイス。
【請求項6】
請求項4に記載の積層体を備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、積層体及び光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、タッチパネル、液晶ディスプレイ(LCD)などの各種光学部材を貼り合わせに使用されており、表示装置や入力装置を製造するにあたって欠かすことのできない材料である。このような粘着シートは、例えば、アクリル系重合体を主成分として形成されることが知られている。
【0003】
粘着シートを用いて光学部材どうしを貼り合わせする場合、互いの部材どうしを貼り合わせた後に位置調整をすべく、あるいは意図せず混入した異物を取り除くべく、光学部材を粘着シートから一度剥がして再度貼り合わせする作業(いわゆる、リワーク作業)が行われることがある。斯かる場合に、粘着シートと光学部材が強く密着し過ぎると、粘着シートから光学部材を剥がしたときに、光学部材の一部に粘着シートが剥がれ残りが発生するので、貼り合わせ直後又は一定の時間経過後は剥がしやすい性質を有することが粘着シートには求められる。すなわち、粘着シートには、光学部材どうしの位置調整を容易にすべく、貼り合わせ直後にすぐに剥がすことができる性能、いわゆる、リワーク性に優れることが重要となる。一方で、位置調整を行った後は、光学部材どうしをより強固に接着させる性能、いわゆる粘着力も併せ持つことも重要となる。
【0004】
特許文献1には、リワーク性を改善させた粘着シートが開示されており、具体的には、所定の物性を有する(メタ)アクリル系重合体で構成される粘着剤層を含む粘着シートが開示されている。斯かる粘着シートは、初期の低粘着性と使用時の強粘着性とを併せもちながら、透明性にも優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/092905号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のリワーク性が改善された粘着シートでは、位置調整等のために一度剥離して再度貼り合わせようとする場合、剥離することは容易であったとしても、再度の貼り合わせ性(すなわち、再貼合性)が低下する問題があった。具体的には、位置調整等のために一度剥離すると、剥離した粘着剤層に荒れが発生し、また、浮き剥がれ等の変形も起こり、再貼合が困難になるという課題を有していた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、リワーク性に優れ、位置調整等のために粘着シートを剥がした後の再貼合性にも優れ、リワーク後は優れた粘着力を発揮することができる粘着シート及び該粘着シートを含む積層体並びに光学デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の粘着特性を有し、かつ、少なくとも2層からなる粘着剤層を備えるようにすることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
光学部材どうしを貼り合わせるための粘着シートであって、
少なくとも粘着剤層A及び粘着剤層Bが積層されてなる粘着剤層を備え、
前記粘着剤層Aは、架橋性(メタ)アクリル系重合体Paの架橋体及び(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)を含有し、
前記架橋性(メタ)アクリル系共重合体Paは、
炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステル単位と、架橋性単量体単位と、メタクリル酸メチル単位を有するマクロモノマー単位とを含む重合体であり、
前記粘着剤層は、下記の物性(1)、物性(2)及び物性(3)
物性(1):
JIS Z 0237に規定される粘着力の測定方法に準じて測定された、貼り合わせ1時間後の粘着剤層Aの対ガラス粘着力をSa(N/25mm)としたとき、
Sa<5である、
物性(2):
粘着シートをガラス板に貼合し、100℃、0.5MPaの条件で30分間加熱処理した後にJIS Z 0237に規定される粘着力の測定方法に準じて測定された、粘着剤層Aのガラス粘着力をTa(N/25mm)としたとき、
Ta≧10である、
物性(3):
JIS Z 0237に規定される180°引き剥がし粘着力の測定方法に準じて測定された粘着剤層Bの対ガラス粘着力をUb(N/25mm)としたとき、
Ub>10である、
を満たす、粘着シート。
項2
前記架橋性(メタ)アクリル系共重合体Paは、
前記(メタ)アクリルエステル単位を50~95質量%、
前記架橋性単量体単位を1~50質量%、
前記マクロモノマー単位を1~15質量%含む、項1に記載の粘着シート。
項3
前記粘着剤層Aの厚みをDa(μm)、前記粘着剤層Bの厚みをDb(μm)としたとき、5≦Da≦25、かつ、15≦Db≦150である、項1又は2に記載の粘着シート。
項4
項1~3のいずれか1項に記載の粘着シートと、該粘着シートの少なくとも片面に光学部材が貼り合わされている、積層体。
項5
項4に記載の積層体を備える、光学デバイス。
項6
項4に記載の積層体を備える、画像表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着シートは、リワーク性に優れ、位置調整等のために粘着シートを剥がした後の再貼合性にも優れ、リワーク後は優れた粘着力を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の粘着シートの実施形態の一例であって、粘着シートの層構成を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0013】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。また、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0014】
1.粘着シート
本発明の粘着シートは、光学部材どうしを貼り合わせるための粘着シートであって、少なくとも粘着剤層A及び粘着剤層Bが積層されてなる粘着剤層を備える。とりわけ、本発明の粘着シートにおいて、前記粘着剤層Aは、架橋性(メタ)アクリル系重合体Paの架橋体及び(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)を含有し、前記架橋性(メタ)アクリル系共重合体Paは、炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステル単位と、架橋性単量体単位と、メタクリル酸メチル単位を有するマクロモノマー単位とを含む重合体である。
さらに、本発明の粘着シートにおいて、前記粘着剤層は、下記の物性(1)、物性(2)及び物性(3)を満たす。
物性(1):
JIS Z 0237に規定される粘着力の測定方法に準じて測定された、貼り合わせ1時間後の粘着剤層Aの対ガラス粘着力をSa(N/25mm)としたとき、
Sa<5である。
物性(2):
粘着シートをガラス板に貼合し、100℃、0.5MPaの条件で30分間加熱処理した後にJIS Z 0237に規定される粘着力の測定方法に準じて測定された、粘着剤層Aの対ガラス粘着力をTa(N/25mm)としたとき、
Ta≧10である。
物性(3):
JIS Z 0237に規定される180°引き剥がし粘着力の測定方法に準じて測定された粘着剤層Bの対ガラス粘着力をUb(N/25mm)としたとき、
Ub>10である。
【0015】
本発明の粘着シートは、リワーク性に優れ、位置調整等のために粘着シートを剥がした後の再貼合性にも優れ、リワーク後は優れた粘着力を発揮することができる。従って、本発明の粘着シートは、光学部材どうしを貼り合わせに好適に使用することができ、光学デバイスや画像表示装置を製造するために使用される粘着シートとして特に好適である。
【0016】
本発明の粘着シートにおいて、粘着剤層は、粘着シートに粘着機能を発揮させるための層である。粘着剤層は、少なくとも2以上の層で形成される層であって、前記粘着剤層A及び前記粘着剤層Bを備えるものである。前述のように、粘着剤層は、粘着剤層A及び粘着剤層Bが積層される。粘着剤層A及び粘着剤層B互いに直接貼り合わされて積層されていることが好ましい。
【0017】
(粘着剤層A)
粘着剤層Aは、架橋性(メタ)アクリル系重合体Paの架橋体及び(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)を含有する。
【0018】
粘着剤層Aは、架橋性(メタ)アクリル系重合体Paの架橋体及び(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)を含有することで、粘着剤層Aが粘着性能を発揮することができ、とりわけ、粘着シートはリワーク性に優れると共に再貼合性を有することができ、その上、リワーク後はより高い粘着力を発揮することができる。
【0019】
<架橋性(メタ)アクリル系重合体Pa>
架橋性(メタ)アクリル系重合体Paは、炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステル単位と、架橋性単量体単位と、メタクリル酸メチル単位を有するマクロモノマー単位とを含む重合体であって、後記する架橋剤により架橋体を形成することができる重合体である。以下、架橋性(メタ)アクリル系重合体Paにおいて、炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステル単位を「単量体単位p1」、架橋性単量体単位を「単量体単位p2」、メタクリル酸メチル単位を有するマクロモノマー単位と「マクロモノマー単位p3」と表記する。
【0020】
なお、単量体単位とは、単量体が重合して形成されるポリマー中の一つの構造単位を意味する。従って、例えば、(メタ)アクリルエステル単位は、(メタ)アクリルエステルが重合して形成される構造単位を意味する。また、マクロモノマー単位とは、マクロモノマーが重合して形成されるマクロモノマー一つの構造単位を意味する。
【0021】
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル」を、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」または「メタクリレート」を、「(メタ)アリル」とは「アリル」または「メタリル」を意味する。
【0022】
単量体単位p1を形成するための炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステルは、例えば、公知の(メタ)アクリルエステル化合物を広く挙げることができ、具体的には、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル等が挙げられる。炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステル化合物は、ヒドロキシル基及びカルボキシ基を有していないことが好ましい。
【0023】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Paにおいて、炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステルは、アルキル基の炭素数が4~8であることが好ましく、4~6であることがより好ましい。
【0024】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Paに含まれる単量体単位p1は、1種のみであってもよいし、2種類以上を含むこともできる。
【0025】
単量体単位p2を形成するための架橋性単量体は、例えば、カルボキシ基及び/又はヒドロキシル基を有する単量体が挙げられる。カルボキシ基を有する単量体は、例えば、公知のカルボキシ基含有重合性単量体を広く挙げることができ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0026】
ヒドロキシル基を有する単量体は、例えば、公知のヒドロキシル基含有重合性単量体を広く挙げることができ、具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Paに含まれる単量体単位p2は、1種のみであってもよいし、2種類以上を含むこともできる。
【0028】
マクロモノマー単位p3を形成するためのマクロモノマーは、例えば、複数のメタクリル酸メチル単位で構成され、重合可能な反応性基を末端等に有するオリゴマーもしくはポリマーである。斯かるマクロモノマーとしては、公知のメタクリル酸メチル系マクロモノマーを広く挙げることができ、例えば、メチルメタクリレートを3~500個重合したオリゴマーもしくはポリマーが挙げられる。メタクリル酸メチル系マクロモノマーに導入された重合可能な反応性基としては、アクリロイル基やメタクリロイル基等を挙げることができる。重合可能な反応性基は、メタクリル酸メチル系マクロモノマー末端に導入されていることが好ましい。
【0029】
マクロモノマー単位p3の数平均分子量は、5000~10000であることが好ましい。つまり、メタクリル酸メチル系マクロモノマーの数平均分子量は、5000~10000であることが好ましい。この場合、粘着シートのリワーク性及び再貼合性が向上しやすく、ヘーズもより低く抑えることができる。メタクリル酸メチル系マクロモノマーの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。ただし、市販品のメタクリル酸メチル系マクロモノマーを用いる場合において、数平均分子量のメーカー保証値又は測定値が判明している場合は、その値をメタクリル酸メチル系マクロモノマーの数平均分子量とする。
【0030】
メタクリル酸メチル系マクロモノマーは、例えば、公知の製造方法で製造することができ、あるいは、市販品等から入手することができる。市販品のメタクリル酸メチル系マクロモノマーとしては、例えば、東亞合成社製のAA-6が挙げられる。
【0031】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Paにおいて、単量体単位p1、単量体単位p2、お及びマクロモノマー単位p3の含有量は特に限定されない。本発明の粘着シートが、所望のリワーク性及び再貼合性を有することができ、リワーク後は優れた粘着力を発揮しやすい点で、前記架橋性(メタ)アクリル系共重合体Paは、単量体単位p1((メタ)アクリルエステル単位)を50~95質量%、単量体単位p2(架橋性単量体単位)を1~50質量%、マクロモノマー単位p3を1~15質量%含むことが好ましい。
【0032】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Paにおいて、単量体単位p1の含有割合は、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは94質量%以下、より好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは92質量%以下、特に好ましくは90質量%以下である。
【0033】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Paにおいて、単量体単位p2の含有割合は、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは2.5質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0034】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Paにおいて、マクロモノマー単位p3の含有割合は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは14質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。
【0035】
なお、本発明において、重合体中の各構成単位の含有量は、斯かる重合体を製造するときに使用する当該構成単位に対応する重合性単量体の使用量に一致するものとみなすことができる。
【0036】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Paは、単量体単位p1、単量体単位p2及びマクロモノマー単位p3以外の他の単量体単位を含むこともでき、あるいは、架橋性(メタ)アクリル系重合体Paは、単量体単位p1、単量体単位p2及びマクロモノマー単位p3のみでからなるものであってもよい。架橋性(メタ)アクリル系重合体Paが上記他の構成単位を含む場合、その含有割合は、架橋性(メタ)アクリル系重合体Paの全質量に対して15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0037】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Paの重量平均分子量は特に限定されず、例えば、粘着シートにおいて粘着力の低下が起こりにくいという観点から、10万~200万とすることができ、20万~150万とすることがより好ましい。
【0038】
なお、本発明でいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定したポリスチレン換算重量平均分子量のことである。GPC法に使用されるGPC装置には特に制限はなく、市販のGPC測定機、例えば、日本分光株式会社製、LC-2000Plusシリーズ、検出機としてRI-2031Plus、UV-2075Plus等を使用できる。この場合、例えば、昭和電工株式会社製「Shodex KF801」、「Shodex KF803L」、「Shodex KF800L」及び「Shodex KF800D」の4本を接続してなるGPCカラムが用いられる。カラム温度を40℃とすることができる。溶離液としてテトラヒドロフランが用いられ、流速1.0ml/分にて測定される。通常、標準ポリスチレンを用いて検量線を作製し、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を得ることができる。
【0039】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Paは、公知の方法で製造することができる。例えば、各構成単位を形成するためのモノマー混合物を公知の重合方法によって重合することで、架橋性(メタ)アクリル系重合体Paをそれぞれ製造することができる。重合方法としては、例えば、溶液重合、バルク重合、懸濁重合、乳化重合等を採用できる。なお重合で得られるポリマー中の各構成単位の比率は、重合時に使用する各モノマーの使用比率に対応するものとみなすことができる。架橋性(メタ)アクリル系重合体Paは、市販品等から入手することも可能である。
【0040】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Paにおいて、各構成単位の配列順序は特に限定されず、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等を形成することができる。特に、架橋性(メタ)アクリル系重合体Paは、マクロモノマー単位p3を有することから、マクロモノマー単位に起因するブロック部位を有し、例えば、このブロック部位は、架橋性(メタ)アクリル系重合体Paにおいて分岐鎖となり得る。斯かる分岐鎖が存在することで、ポリマー内でブロック部位がミクロ相分離構造をとりやすくなるため、リワーク性が向上しやすく、また、リワークが不要になった後の粘着力が向上しやすい。
【0041】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Paの屈折率は特に限定されない。粘着シートの透明性を高めるという点で、架橋性(メタ)アクリル系重合体Paの屈折率は1.45~1.50であることが好ましく、1.46~1.49であることがより好ましい。なお、ここでいう架橋性(メタ)アクリル系重合体Paの屈折率とは、JIS K 7142(2014)「プラスチック-屈折率の求め方」に記載のA法によって測定された値を示す。
【0042】
<(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)>
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)は、(メタ)アクリル系樹脂を主成分として含有する微粒子状の材料である。(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)を形成する(メタ)アクリル系樹脂の種類は特に限定されず、公知の(メタ)アクリル系樹脂を広く例示することができる。(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの重合体が挙げられ、(メタ)アクリル酸エステルの架橋重合体であってもよい。(メタ)アクリル酸エステルは、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピルの他、前述の炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステル化合物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(アルキル炭素数は例えば2~10)、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられ、(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)を形成するための(メタ)アクリル系樹脂は、ホモポリマー)であってもよいし、共重合体であってもよい。(メタ)アクリル系樹脂が共重合体である場合、(メタ)アクリルエステルと、該(メタ)アクリルエステル以外の重合性単量体との共重合体とすることもできる。(メタ)アクリルエステル以外の重合性単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、無水マレイン酸、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等が挙げられる。
【0044】
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)は、(メタ)アクリル酸メチルの非架橋構造体又は架橋構造体で形成された粒子であることが特に好ましい。
【0045】
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の平均粒径は特に限定されない。粘着シートのリワーク性が向上しやすく、ヘーズも低くなりやすいという点で、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の平均粒径は0.1~5μmであることが好ましく、0.2~3μmであることがより好ましい。
【0046】
粘着剤層Aに含まれる(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の平均粒径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)もしくは走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した値を意味する。具体的には、粘着シートのTEM画像又はSEM画像において観察される微粒子を無作為に1個選択し、その最大長(Dmax)及び最大長垂直長(DV-max)を測長して微粒子の相乗平均値(つまり、(Dmax×DV-max)1/2の値)を算出する。同様の方法で計100個の微粒子それぞれの相乗平均値を算出し、その平均値を粘着剤層Aに含まれる(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の平均粒径として決定する。すなわち、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の平均粒径は、個数平均粒子径を意味する。なお、最大長(Dmax)は、粒子画像の輪郭上の2点における最大長さであり、最大長垂直長(DV-max)は最大長に平行な2本の直線で粒子画像を挟んだときの、この2本の直線間の最短長さである。
【0047】
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の屈折率は特に限定されない。粘着シートの透明性を高めるという点で、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の屈折率は1.45~1.51であることが好ましく、1.46~1.50であることがより好ましい。
【0048】
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の屈折率について、より具体的には、架橋性(メタ)アクリル系重合体Paと(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)との屈折率差(絶対値)が0~0.05であることがさらに好ましい。この場合、粘着シートはより優れた透明性を有することができる。
【0049】
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の屈折率の屈折率とは、JIS K 7142(2014)「プラスチック-屈折率の求め方」に記載のB法によって測定された値を示す。また、ここでいう、架橋性(メタ)アクリル系重合体Paの屈折率とは、JIS K 7142(2014)「プラスチック-屈折率の求め方」に記載のA法によって測定された値を示す。
【0050】
粘着剤層Aに含まれる(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)は1種のみとすることができ、あるいは、2種以上とすることができる。(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の方法と同様の方法で、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)を製造することができる。また、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)は、市販品からも入手することが可能である。
【0051】
粘着剤層Aは、本発明の効果が阻害されない限り、架橋性(メタ)アクリル系重合体Pa及び(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)以外に更に他の成分を含むことができる。他の成分としては、例えば、単官能重合性単量体、多官能重合性単量体、光重合開始剤、シランカップリング剤、可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等を挙げることができる。粘着剤層Aが単官能重合性単量体、多官能重合性単量体及び光重合開始剤を含む場合は、粘着シートを貼り合わせした後に、光照射することで、単量体の硬化反応を進行させることができ、これにより、粘着力をさらに高めることが可能となる。
【0052】
(粘着剤層B)
粘着剤層Bは、前記粘着剤層Aよりも粘着力の高い層である。粘着剤層Bは、粘着機能を発揮することができる種々のポリマー成分で形成することができる。粘着剤層Bは、例えば、(メタ)アクリル系重合体を含むことができる。すなわち、粘着剤層Bは、アクリル系粘着剤層とすることができる。粘着力が高まりやすい点で、粘着剤層Bは、架橋性(メタ)アクリル系重合体Pbの架橋体を含むことが好ましい。
【0053】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Pbは、例えば、粘着シートを形成するために用いられる公知の(メタ)アクリル系重合体を広く挙げることができる。
【0054】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Pbは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含むことができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を形成するための(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、あるいは、芳香環を有する(メタ)アクリレートを挙げることができる。(メタ)アクリレートが直鎖、分岐、又は環状のアルキル基を有する場合、その炭素数は、例えば、1~20とすることができ、好ましくは、1~10である。(メタ)アクリレートが芳香環を有する場合、その炭素数は、例えば、5~20とすることができ、好ましくは、6~10である。(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0055】
これらの中でも(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0056】
粘着剤層Bがより高い粘着力を有しやすい点で、(メタ)アクリル酸エステル中のエステル結合に直結するアルキル基の炭素数が2~10である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、炭素数が3~8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、炭素数が3~6である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがさらに好ましい。この観点から、架橋性(メタ)アクリル系重合体Pbは、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート及びイソプロピル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上の単量体単位を含むことが好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレート単位を含むことが特に好ましい。
【0057】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Pbは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の他、他の単量体単位を含むことができる。他の単量体単位を形成するためのモノマーとして、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、水酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、アミド基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、スクシンイミド骨格を有するモノマー、マレイミド類、イタコンイミド類、(メタ)アクリル酸アミノアルキル類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、オレフィン類、芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、複素環含有(メタ)アクリレート、ハロゲン原子含有(メタ)アクリレート、テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0058】
上記のうち、カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。また、上記のうち、水酸基含有モノマーとしては、分子中に一以上の水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを広く挙げることができ、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの中でも水酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。この場合、粘着剤層Bの粘着力がより高まりやすい。
【0059】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Pbは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を必須とし、カルボキシル基含有モノマー単位及び/又は水酸基含有モノマー単位を含むことが特に好ましい。これにより、粘着剤層Bの粘着力がより高まりやすい。
【0060】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Pbは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことがさらに好ましく、80質量%以上含むことが特に好ましい。架橋性(メタ)アクリル系重合体Pbは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を99質量%以下含むことが好ましく、98質量%以下含むことがより好ましく、95質量%以下含むことがさらに好ましい。これらの場合において、(メタ)アクリル系重合体Pbの残りの単量体単位は、カルボキシル基含有モノマー単位及び/又は水酸基含有モノマー単位であることが好ましい。
【0061】
前述のとおり、架橋性(メタ)アクリル系重合体Pbは、架橋性(メタ)アクリル系重合体であってもよい。従って、粘着剤層Bは、架橋性(メタ)アクリル系重合体Pbの架橋体を含有することができる。斯かる架橋構造は、後記するイソシアネート架橋剤等の架橋剤で形成することができる。
【0062】
架橋性(メタ)アクリル系重合体Pbは、公知の方法で製造することができる。例えば、各構成単位を形成するためのモノマー混合物を公知の重合方法によって重合することで、架橋性(メタ)アクリル系重合体Pbをそれぞれ製造することができる。重合方法としては、例えば、溶液重合、バルク重合、懸濁重合、乳化重合等を採用できる。(メタ)アクリル系重合体Pbは、市販品等から入手することも可能である。
【0063】
粘着剤層Bは、本発明の効果が阻害されない限り、架橋性(メタ)アクリル系重合体Pb以外に更に他の成分を含むことができる。他の成分としては、例えば、単官能重合性単量体、多官能重合性単量体、光重合開始剤、シランカップリング剤、可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等を挙げることができる。粘着剤層Bが単官能重合性単量体、多官能重合性単量体及び光重合開始剤を含む場合は、粘着シートを貼り合わせした後に、光照射することで、単量体の硬化反応を進行させることができ、これにより、粘着力をさらに高めることが可能となる。
【0064】
(粘着剤層)
本発明の粘着シートにおいて、粘着剤層は、粘着剤層A及び粘着剤層Bが積層されてなる限り、他の層を有することができ、あるいは、粘着剤層は、粘着剤層A及び粘着剤層Bのみからなるものであってもよい。粘着剤層において、粘着剤層A及び粘着剤層Bは直接貼り合わされて積層されていることが好ましい。粘着剤層は、粘着剤層A及び粘着剤層Bが積層されてなるものであるから、本発明の粘着シートは、両面粘着シートである。
【0065】
本発明の粘着シートでは、粘着剤層の粘着剤層A側を用いて、リワークすることができる。すなわち、粘着シートを被着体に貼合してからリワーク(位置調整等)をする場合は、粘着剤層A側を被着体から剥がしてから、再度、粘着剤層A側を被着体に貼合することで位置調整することができる。
【0066】
前述のように粘着剤層は、前述の物性(1)、物性(2)及び物性(3)を満たす。
【0067】
(物性(1))
粘着剤層は、JIS Z 0237に規定される粘着力の測定方法に準じて測定された、貼り合わせ1時間後の粘着剤層Aの対ガラス粘着力をSa(N/25mm)としたとき、Sa<5である(物性(1))。
【0068】
Sa(N/25mm)は、粘着剤層Aの対ガラス粘着力(貼り合わせ1時間後)である。Saが5以上になると、粘着剤層Aの初期の粘着力が高すぎるので、粘着剤層Aを被着体に貼合した後、剥離が難しくなり、所望のリワーク性を有することができない。Sa(N/25mm)は、3以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましく、0.8以下であることがさらに好ましく、0.5以下であることが特に好ましい。Sa(N/25mm)の下限は特に限定されず、例えば、0.01以上とすることができ、0.05以上であることがより好ましい。
【0069】
Saの調節方法は特に限定されず、例えば、公知の粘着力を調節する方法を広く採用することができる。とりわけ、粘着剤層Aを架橋性(メタ)アクリル系重合体Paの架橋体及び(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)を用いて形成することでSaを所望の範囲に調節することが容易になりやすい。その他、粘着剤層Aの厚みを調節することによっても、Saを所望の範囲に調節することが容易になる。
【0070】
(物性(2))
粘着シートをガラス板に貼合し、100℃、0.5MPaの条件で30分間加熱処理した後にJIS Z 0237に規定される粘着力の測定方法に準じて測定された、粘着剤層Aの対ガラス粘着力をTa(N/25mm)としたとき、Ta≧10である(物性(2))。
【0071】
すなわち、Ta(N/25mm)は、粘着シートの粘着剤層A側の面をガラス板に貼合し、100℃、0.5MPaの条件で30分間加熱処理した後にJIS Z 0237に規定される粘着力の測定方法に準じて測定された対ガラス粘着力である。
【0072】
Ta(N/25mm)は、10未満になるとリワーク作業が必要でなくなった後の粘着剤層と被着体との粘着力が小さすぎるので、粘着シートを含む積層体において浮きや剥がれ等が発生し、耐久性が低下しやすい。Ta(N/25mm)は、12以上であることが好ましく、15以上であることがさらに好ましく、20以上であることが特に好ましい。Ta(N/25mm)の上限は特に限定されず、例えば、50以下であることが好ましく、45以下であることがより好ましい。
【0073】
Taの調節方法は特に限定されず、例えば、公知の粘着力を調節する方法を広く採用することができる。とりわけ、粘着剤層Aを架橋性(メタ)アクリル系重合体Paの架橋体及び(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)を用いて形成することでTaを所望の範囲に調節することが容易になりやすい。その他、粘着剤層A及びBの厚みを調節することによっても、Taを所望の範囲に調節することが容易になる。
【0074】
(物性(3))
粘着剤層は、JIS Z 0237に規定される180°引き剥がし粘着力の測定方法に準じて測定された粘着剤層Bの対ガラス粘着力をUb(N/25mm)としたとき、Ub>10である(物性(3))。
【0075】
Ub(N/25mm)は10以下になると、粘着剤層Bの粘着力が低すぎるので、粘着剤層Bと該粘着剤層Bに貼合される被着体との粘着力が低くなる。Ub(N/25mm)は、11以上とすることが好ましく、15以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましく、25以上であることが特に好ましい。Ub(N/25mm)の上限は特に限定されず、例えば、55以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。
【0076】
粘着剤層は、Sa<Ubであることが好ましい。これにより粘着剤層Aと粘着剤層Aに貼り合わされた被着体の位置調整が必要となった時に粘着剤層Aと被着体との界面でより確実に剥がすことが可能となる。
【0077】
Ubの調節方法は特に限定されず、例えば、公知の粘着力を調節する方法を広く採用することができる。とりわけ、粘着剤層Bを架橋性(メタ)アクリル系重合体Pbの架橋体を用いて形成することでUbを所望の範囲に調節することが容易になりやすい。その他、粘着剤層Bの厚みを調節することによっても、Ubを所望の範囲に調節することが容易になる。
【0078】
粘着剤層が物性(1)、物性(2)及び物性(3)をすべて満たすことで、本発明の粘着シートは、リワーク性に優れ、光学部材等の被着体を粘着シートで貼り合わせた後に被着体の位置調整等が必要となった場合に、その調整等が容易になる。しかも、位置調整等のために粘着シートを剥がした後の再貼合性にも優れる。また、本発明の粘着シートは、リワーク後は優れた粘着力を発揮することができ、粘着シートと被着体との粘着力が強固であるので、粘着シートと被着体とを含む積層体は耐久性に優れる。
【0079】
粘着剤層は、更に下記物性(4)を満たすことも好ましい。
【0080】
物性(4);
粘着剤層は、JIS Z 0237に規定される粘着力の測定方法に準じて測定された、貼り合わせ1日後の粘着剤層Aの対ガラス粘着力をVa(N/25mm)としたとき、
Va<5である(物性(4))。
【0081】
物性(4)において、Va<5であることで、最初の貼り合わせから1日経過した後であっても、優れたリワーク性を有することができる。Va(N/25mm)は、4.5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましく、1.5以下であることが特に好ましい。Va(N/25mm)の下限は特に限定されず、例えば、0.01以上とすることができ、0.05以上であることがより好ましい。
【0082】
Vaの調節方法は特に限定されず、例えば、公知の粘着力を調節する方法を広く採用することができる。とりわけ、粘着剤層Aを架橋性(メタ)アクリル系重合体Paの架橋体及び(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)を用いて形成することで、Vaを所望の範囲に調節することが容易になりやすい。その他、粘着剤層Aの厚みを調節することによっても、Vaを所望の範囲に調節することが容易になる。
【0083】
(粘着剤層の厚み)
粘着剤層において、粘着剤層A及び粘着剤層Bの厚みは特に限定されず、例えば、目的の用途に応じて適宜の範囲に設定することができる。例えば、前記粘着剤層Aの厚みをDa(μm)、前記粘着剤層Bの厚みをDb(μm)としたとき、例えば、5≦Da≦30、かつ、5≦Db≦150とすることができる。中でも、5≦Da≦25、かつ、15≦Db≦150であることが好ましい。この場合、前述の物性(1)、物性(2)、物性(3)及び物性(4)を上記範囲に調節しやすくなり、本発明の粘着シートは、より優れたリワーク性、再貼合性を有することができると共に、リワーク後の粘着力もより高まりやすい。
【0084】
粘着剤層Aの厚みDaは、リワーク可能期間が長くなりやすい点(例えば、貼り合わせ後1日後でもリワーク性能が優れやすい点)で、6μm以上であることがより好ましく、7μm以上であることがさらに好ましく、また、24μm以下であることがより好ましく、22μm以下であることがさらに好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。
【0085】
粘着剤層Bの厚みDbは、18μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましく、22μm以上であることが特に好ましく、また、100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることがさらに好ましく、60μm以下であることが特に好ましい。
【0086】
前述の物性(1)、物性(2)、物性(3)及び物性(4)を上記範囲により調節しやすくなる点で、Da<Dbであることがより好ましい。
【0087】
なお、粘着剤層の厚みは、粘着剤層を製造するときに使用する後記粘着剤組成物の塗工後の塗膜の厚みに一致するものとみなすことができる。
【0088】
粘着剤層のヘーズは特に限定されない。粘着シートの透明性が向上しやすい点で、粘着剤層のヘーズは、例えば、0~2%であることが好ましい。粘着剤層のヘーズは、1.9%以下であることがより好ましく、1.8%以下であることがさらに好ましい。ヘーズの値は0%であってもよい。粘着剤層のヘーズはJIS K 7136に準じて測定することができる。
【0089】
(粘着シート)
本発明の粘着シートは、前記粘着剤層A及び前記粘着剤層Bを有する粘着剤層を少なくとも備える。本発明の粘着シートは、粘着剤層以外の層を有することができ、あるいは、粘着剤層のみからなるものであってもよく、また、粘着剤層A及び粘着剤層Bのみからなるものであってもよい。また、本発明の粘着シートには、貼り合わせ前においては、粘着剤層の片面又は両面に剥離シート等の基材を設けることもできる。本発明の粘着シートが剥離シートを備える場合、斯かる粘着シートを「剥離シート付き粘着シート」と表記する。
【0090】
本発明の粘着シートは、貼り合わせ前においては、剥離シート付き粘着シートであることが好ましく、とりわけ、粘着剤層の両面に、互いに剥離性の異なる剥離シートを備える剥離シート付き粘着シートであることが好ましい。この場合において、剥離性が高い方(剥離しやすい方の剥離シート)を「軽剥離側剥離シート」と表記し、剥離性が低い方(剥離しにくい方の剥離シート)を「重剥離側剥離シート」と表記する。剥離シート付き粘着シートが軽剥離側剥離シート及び重剥離側剥離シートを備える場合は、軽剥離側剥離シートだけを重剥離側剥離シートよりも先に剥離することが容易となる。
【0091】
図1は、前記剥離シート付き粘着シートの一例を示す断面であって、粘着剤層A及び粘着剤層Bが積層されてなる粘着剤層10を有する剥離シート付き粘着シートである。粘着剤層10には、軽剥離側剥離シートb及び重剥離側剥離シートaが設けられている。
【0092】
図1に示すように、本発明の粘着シートが剥離シート付き粘着シートである場合、軽剥離側剥離シートbは粘着層Bに貼り合わされていることが好ましく、重剥離側剥離シートaは粘着剤層A側に貼り合わされていることが好ましい。
【0093】
図1に係る粘着シートを用いて1対の被着体を貼り合わせる場合、まず、軽剥離側剥離シートbを剥がして露出した粘着剤層Bと、位置調整を行う必要のない被着体とを貼り合わせる。次いで、重剥離側剥離シートaを剥がし、露出した粘着剤層Aと他の被着体(必要に応じて位置調整が必要な被着体)とを貼り合わせる。特に本発明では、粘着剤層Bは特有の粘着特性を有するので粘着剤層Bと被着体とは十分な粘着強度で接着される。これにより、重剥離側剥離シートaを剥がそうとした時に粘着剤層Bと被着体との界面で剥がれや浮きが生じるなど起こらずに重剥離側剥離シートaは容易に剥がすことができ、重剥離側剥離シートaを剥がす前の加熱処理等は不要となる。
【0094】
剥離シートとしては、例えば、公知の剥離シートを広く適用することができ、例えば、剥離シート用基材の片面に剥離剤層が形成されてなる剥離性積層シートを挙げることができ、その他、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムで形成される低極性基材が挙げられる。前記剥離シート用基材には、例えば、紙類、高分子フィルムが使用される。
【0095】
剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-4527、SD-7220等や、信越化学工業(株)製のKS-3600、KS-774、X62-2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤としては、シリコーン系剥離剤中にSiO単位と、(CHSiO1/2単位あるいはCH=CH(CH)SiO1/2単位とを有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有すことも好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-843、SD-7292、SHR-1404等や、信越化学工業(株)製のKS-3800、X92-183等が挙げられる。
【0096】
剥離シートは、市販品から入手することもでき、例えば、東洋紡(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである重セパレータフィルムや、東洋紡(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである軽セパレータフィルムを挙げることができる。
【0097】
2.粘着シートの製造方法
本発明の粘着シートを製造する方法は特に限定されず、例えば、公知の粘着シートを製造する方法を広く採用することができる。例えば、所定のベースポリマーを含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成することにより、本発明の粘着シートを製造することができる。ベースポリマーとは粘着剤層を形成するための主成分たる重合体である。
【0098】
特に本発明に係る粘着シートが備える粘着剤層は、少なくとも二層(粘着剤層A及びB)を有する多層構造であることから、各層の粘着剤層を形成するための粘着剤組成物をそれぞれ準備して、これらを用いて本発明に係る粘着シートを製造することが好ましい。粘着剤層Aを形成するための粘着剤組成物を「粘着剤組成物A」、粘着剤層Bを形成するための粘着剤組成物を「粘着剤組成物B」とする。
【0099】
粘着剤組成物Aは、少なくとも粘着剤層Aを形成するためのベースポリマー及び前記(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)を含む。ベースポリマーは、架橋性(メタ)アクリル系重合体Paである。粘着剤組成物Aに含まれるベースポリマーは、架橋性(メタ)アクリル系重合体Pa以外の他の重合体を含むこともできる。粘着剤組成物Aに含まれる(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)は、コールターカウンタ法によって計測される体積平均粒子径が0.1~5μmであることが好ましく、0.2~3μmであることがより好ましい。この場合、粘着剤層Aに含まれる(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の前記平均粒径が所望の範囲になりやすい。
【0100】
一方、粘着剤組成物Bは、少なくとも粘着剤層Bを形成するためのベースポリマーを含む。斯かるベースポリマーは、架橋性(メタ)アクリル系重合体Pbを含むことができる。粘着剤組成物Bに含まれるベースポリマーは、架橋性(メタ)アクリル系重合体Pb以外の他の重合体を含むこともできる。
【0101】
粘着剤組成物A及び粘着剤組成物Bはいずれもベースポリマー以外に、例えば、架橋剤、架橋遅延剤、シランカップリング剤、単官能性モノマー、多官能性モノマー、光重合開始剤、溶剤等を含むことができる。
【0102】
架橋剤は、例えば、アクリル系重合体の架橋を進行させることができるための成分を広く挙げることができる。特に、架橋剤は、アクリル系重合体中の水酸基、カルボキシ基、アミノ基等と反応することができる成分を広く挙げることができる。斯かる架橋剤は、例えば、公知の架橋剤を広く挙げることができ、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などの公知の架橋剤の中から選択できる。中でも、架橋剤は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物及び金属キレート化合物から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましい。
【0103】
イソシアネート架橋剤の種類は特に限定されず、公知の化合物を広く使用できる。イソシアネート架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、クロロフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のポリイソシアネート;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;が例示される。イソシアネート架橋剤は、単独又は異なる2種以上を混合して使用することができる。また、上述したジイソシアネートから得られるアダクト体、ヌレート体、ビュレット体等の3官能の誘導体をイソシアネート架橋剤として用いることがより好ましい。
【0104】
エポキシ架橋剤の種類は特に限定されず、公知の化合物を広く使用できる。エポキシ架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサノン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0105】
金属キレート化合物としては、例えば、架橋剤として使用されている公知の金属キレート化合物を挙げることができ、具体的には、アルミキレートA(川研ファインケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0106】
粘着剤組成物A及びBが架橋剤を含む場合、いずれの組成物においても、その含有割合は特に限定されず、例えば、100質量部のベースポリマーに対して、0.01~5質量部使用することができ、0.05~1質量部であることが好ましい。架橋剤は1種類を単独又は2種類以上の併用が可能である。
【0107】
シランカップリング剤は、例えば、公知の化合物を広く使用できる。シランカップリング剤としては、例えば、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジアルコキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリアコキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ-クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルジアルコキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤は、その他、各種アルコキシシロキサンのオリゴマーであってもよい。これらのシランカップリング剤は、いずれも市販品から入手することができる。
【0108】
粘着剤組成物A及びBがシランカップリング剤を含む場合、いずれの組成物においても、シランカップリング剤の含有割合は、100質量部のベースポリマーに対して、0.1~5質量部とすることができる。粘着剤組成物がベースポリマーを含む場合、シランカップリング剤は1種類を単独又は2種類以上の併用が可能である。
【0109】
架橋遅延剤の種類は特に限定されず、例えば、アセチルアセトン等の公知の架橋遅延剤を広く使用することができる。
【0110】
単官能性モノマーの種類は特に限定されず、例えば、アクリル系重合体を構成するモノマー単位と同様のモノマーを挙げることができる。単官能性モノマーは、(メタ)アクリルポリマーを構成するモノマー単位を形成するためのモノマーすべてを含む(通常は混合物である)ことが好ましい。単官能性モノマーは、粘着剤組成物に含まれるアクリル系重合体を構成している各単量体の比率と同じである混合モノマーであることがより好ましい。
【0111】
粘着剤組成物A及びBが単官能性モノマーを含む場合、いずれの組成物においても、その含有割合は特に限定されず、例えば、前記アクリル系重合体及び単官能性モノマーの総質量100質量部あたり、3~1000質量部とすることができ、5~700質量部であることが好ましく、25~500質量部であることがさらに好ましく、30~400質量部であることが特に好ましい。
【0112】
多官能性モノマーは、例えば、分子内に重合性二重結合を2つ以上有する化合物を挙げることができる。多官能性モノマーは、重合性二重結合の個数が2個以上であり、2個以上5個未満であることが好ましく、2個以上4個未満であることがより好ましい。
【0113】
多官能性モノマーとしては、例えば、2官能モノマー(重合性二重結合の個数が2個である単量体)として、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレンジアクリレート、アルキルジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカノールジアクリレート、フルオレンジアクリレートを挙げることができる。また、多官能性モノマーとしては、3官能以上のモノマーとして、アルコキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、アルコキシ化グリセリントリアクリレート、カプロラクトン変性イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、アルコキシ化ペンタエリルリトールアクリレート、(アルコキシ化)ペンタエリスリトールアクリレート、(アルコキシ化)ジトリメチロールプロパンアクリレート、(アルコキシ化)ジペンタエリスリトールアクリレート、(エトキシ化)ポリグリセリンアクリレート等を挙げることができる。
【0114】
多官能性モノマーは、1分子内にアルキレングリコール基を有する多官能モノマーであることが好ましい。この場合、1分子中におけるアルキレングリコール基の数は1~20であることが好ましい。このような多官能性モノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート等が挙げられる。
【0115】
多官能性モノマーは、例えば、市販品を使用できる。市販品としては、新中村化学製の2官能ポリエチレングリコールアクリレートであるNKエステルシリーズの「A-200」(ポリエチレングリコール♯200ジアクリレート)、「A-400」(ポリエチレングリコール♯400ジアクリレート)、東亞合成社製の三官能モノマーM310(トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート)や三官能モノマーM321(トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート)、東亞合成社製の二官能モノマーM211B(ビスフェノールA EO変性ジアクリレート)等が挙げられる。
【0116】
多官能性モノマーは、1分子内にビスフェノール骨格を有するものであってもよい。1分子内にビスフェノール骨格を有する多官能性モノマーを用いることにより、粘着シートの硬度をより効果的に高めることができ、粘着シートの加工性が向上しやすい。斯かる多官能性モノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクレート、プロポキシ化ビスフェノールAのジアクリレート、ビスフェノールFジグリシジルエーテルのジアクレート等が挙げられる。
【0117】
粘着剤組成物が多官能性モノマーを含む場合、粘着剤組成物をUV照射によって硬化させることで、粘着シートは優れた粘着力を有しやすい。
【0118】
粘着剤組成物A及びBが多官能性モノマーを含む場合、いずれの組成物においても、その含有割合は特に限定されず、例えば、100質量部のベースポリマーに対して、0.01~20質量部使用することができ、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがさらに好ましい。多官能性モノマーは1種類を単独又は2種類以上の併用が可能である。
【0119】
光重合開始剤は、例えば、公知の光重合開始剤を広く使用することができ、中でも、アセトフェノン系光重合開始剤又はアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤であることが好ましい。
【0120】
アセトフェノン系開始剤として具体的には、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニルプロパノン]、2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン、(1-ヒドロキシシクロヘキシルーフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン等が挙げられる。ベンゾインエーテル系開始剤として具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等が挙げられる。
【0121】
アシルフォスフィンオキシド系開始剤として具体的には、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0122】
光重合開始剤としては、その他、ベンゾインエーテル系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アミン系開始剤等も挙げることができる。
【0123】
粘着剤組成物A及びBが光重合開始剤を含む場合、いずれの組成物においても、その含有割合は特に限定されず、例えば、100質量部のベースポリマーに対して、0.05~10質量部使用することができ、0.1~5質量部であることがより好ましい。光重合開始剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0124】
以上のように、粘着剤組成物A及びBは、少なくともベースポリマーを含み(粘着剤組成物Aは更に(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)を含み)、必要に応じて、架橋剤、シランカップリング剤、単官能性モノマー、多官能性モノマー、光重合開始剤、溶剤及びその他の各種添加剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことができる。粘着剤層を形成するにあたって、粘着剤組成物A及びBに含まれる各種添加剤は互いに異なっていてもよい。
【0125】
粘着剤組成物A及びBは溶剤を含むことができる。溶媒の含有量は特に限定されず、例えば、ベースポリマー100質量部に対し、25~500質量部とすることができ、30~400質量部とすることがより好ましい。また、溶剤の含有量は、粘着剤組成物の全質量に対し、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。溶剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよく、2種類以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。なお、粘着剤組成物が溶剤を含む場合、塗工性が良好になる。
【0126】
粘着剤組成物A及びBは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の各種の粘着剤用の添加剤を含むことができる。斯かる添加剤としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等の中から必要に応じて選択できる。また、着色を目的に染料や顔料を添加してもよい。
【0127】
粘着剤組成物の調製方法は特に限定されず、例えば、あらかじめ合成したベースポリマーと、必要に応じて含有される成分を所定の割合で混合することで、粘着剤組成物を調製することができる。
【0128】
上記の粘着剤組成物A及びBを使用することで、本発明の粘着シートを製造することができる。粘着剤組成物A及びBを用いて粘着シートを製造する方法は特に限定されず、例えば、公知の方法で粘着剤組成物A及びBを硬化させることで粘着剤層を形成させ、斯かる粘着剤層を粘着シートとして得ることができる。粘着剤層Aは、粘着剤組成物Aの硬化物であり、粘着剤層Bは、粘着剤組成物Bの硬化物である。
【0129】
より具体的には、粘着剤組成物Aを用いて基材上に形成させた粘着剤層Aと、粘着剤組成物Bを用いて基材上に形成させた粘着剤層Bとをそれぞれ準備し、粘着剤層A側と粘着剤層B側とを互いに貼り合わせることで、基材/粘着剤層A/粘着剤層B/基材の層構造を有する積層体を得ることができ、これを本発明の粘着シートとすることができる。この場合、基材を前述の軽剥離側剥離シート及び重剥離側剥離シートを選定することで、図1に示す構造を有する剥離シート付き粘着シートを得ることもできる。
【0130】
粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。粘着剤組成物を塗工するにあたって、使用する基材は、特に限定されない。例えば、粘着剤組成物は、樹脂製の基材、ガラス製の基材等の各種基材に塗工することができる。前述のように、基材は、剥離シートであってもよい。粘着剤組成物の塗工後の塗膜の厚みも特に制限されず、目的とする粘着剤層A及びBの厚みに応じて適宜設定することができる。粘着剤組成物A及びBの塗工後の塗膜の厚みと、粘着剤層A及びBの厚みとは一致するものとみなすことができる。
【0131】
塗工により形成させた塗膜は加熱処理することができる。加熱処理により、硬化が進行すると共に揮発分が消失して硬化物となる。例えば、粘着剤組成物が前記架橋剤を含む場合は、ベースポリマーと架橋剤との反応も進行し、架橋体が形成される。これにより、粘着剤層の強度が向上し、また、粘着力も向上させることができる。
【0132】
塗膜を加熱処理する工程では、加熱温度を、例えば、50℃以上150℃以下とすることができ、加熱時間は、加熱温度や目標とする粘着剤層の残留溶剤濃度に応じて適宜設定することができ、例えば、1~30分とすることができる。当該加熱処理は、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いることができる。加熱処理の後は、必要に応じて、硬化物を所定の環境下で熟成処理を行うことができる。なお、塗膜が光重合開始剤等を含む場合は、活性エネルギー線を照射することもできる。
【0133】
3.積層体
本発明の粘着シートを用いることで、各種の積層体を形成することができる。例えば、積層体としては、本発明の粘着シートと、該粘着シートの少なくとも片面に光学部材が貼り合わされた積層体を挙げることができる。本発明の粘着シートを含む積層体は、各種光学デバイスや画像表示装置等に適用することができる。光学デバイスや画像表示装置は、前記積層体を備えるので、耐久性に優れるものである。
【0134】
光学部材としては、タッチパネルや画像表示装置等の光学製品における各構成部材を挙げることができる。タッチパネルの構成部材としては、例えば透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルム、ハードコートフィルム、耐指紋性フィルムなどが挙げられる。画像表示装置の構成部材としては、例えば液晶表示装置に用いられる反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。また、本発明の粘着シートは、液晶モジュールとタッチパネルモジュールなどのモジュール同士の貼合に用いられてもよい。光学部材は、例えば、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリイミド、セルロースアシレートなどの材料で形成され得る。
【0135】
前記光学部材としてはタッチパネルを好適に使用することができ、タッチパネルを本発明の粘着シートで貼り合わせた場合、リワーク作業が発生した場合でも容易にリワークすることができる。従って、本発明の粘着シートで光学部材どうしを貼り合わせる場合、前記光学部材の少なくとも一方をタッチパネルとすることができる。
【0136】
本開示に包含される発明を特定するにあたり、本開示の各実施形態で説明した各構成(性質、構造、機能等)は、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各構成のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0137】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0138】
(製造例1a)
アクリル酸n-ブチル(BA)、アクリル酸(AA)及びメチルメタクリレート(MMA)系マクロモノマー(東亞合成社製、AA-6)を質量比で94:3:3となるように配合したモノマーを、重合溶媒である酢酸エチル中、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)の存在下で60℃に加熱して重合させた。これにより、固形分濃度が30質量%で、重量平均分子量が72万である架橋性重合体Pa-1の溶液を得た。
【0139】
(製造例2a)
アクリル酸n-ブチル(BA)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(2HEA)及びメチルメタクリレート(MMA)系マクロモノマー(東亞合成社製、AA-6)を質量比で94:3:3となるように配合したモノマーを、重合溶媒である酢酸エチル中、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)の存在下で60℃に加熱して重合させた。これにより、固形分濃度が30質量%で、重量平均分子量が72万である架橋性重合体Pa-2の溶液を得た。
【0140】
(製造例1A)
製造例1aで得られた架橋性重合体Pa-1の溶液中の固形分(架橋性重合体Pa-1)100質量部に対して、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)としてMX-80H3WT(平均粒径0.8μm、綜研化学社製)を1質量部と、架橋剤としてエポキシ系化合物(TETRAD-X、三菱瓦斯化学社製)及び金属キレート化合物(アルミキレートA 、川研ファインケミカル社製)をそれぞれ0.1質量部及び0.5質量部と、架橋遅延剤としてアセチルアセトン(東京化成工業社製)を5質量部と、シランカップリング剤(KBM403、信越化学工業社製)を0.5質量部と含む原料を準備した。斯かる原料を濃度が30質量%となるように酢酸エチルを加え希釈攪拌することで、粘着剤層Aを形成するための粘着剤組成物A-1を調製した。
【0141】
(製造例2A)
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)をMX-300(平均粒径3μm、綜研化学社製)に変更したこと以外は製造例1Aと同様の方法で粘着剤組成物A-2を調製した。
【0142】
(製造例3A)
架橋性(メタ)アクリル共重合体液a-2の固形分100質量部に対して、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)としてSSX-101(平均粒径1.5μm、積水化成品工業社製)を0.5質量部と、架橋剤としてイソシアネート系化合物(タケネートD-110N、三井化学社製)を0.1質量部と、シランカップリング剤(KBM403、信越化学工業社製)を0.5質量部と含む原料を準備した。斯かる原料を濃度が30質量%となるように酢酸エチルを加え希釈攪拌することで、粘着剤層Aを形成するための粘着剤組成物A-3を調製した。
【0143】
(製造例4A)
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)をXX-5910Z(平均粒径0.3μm、積水化成品工業社製)に変更し、その配合量を1質量部に変更したこと以外は製造例1Aと同様の方法で粘着剤組成物A-4を調製した。
【0144】
(製造例5A)
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)をBMSA-18GN(平均粒径0.8μm、積水化成品工業社製)に変更し、その配合量を2質量部に変更したこと以外は製造例1Aと同様の方法で粘着剤組成物A-5を調製した。
【0145】
(製造例6A)
シロキサン結合を主骨格としビニル基を有するオルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンからなる付加型オルガノポリシロキサン(信越化学工業(株)製、KS-847H)100質量部(固形分換算値;以下同じ)、3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン(シリコーンレジン;東レダウコーニング社製、SD-4584)20質量部、及び、白金触媒(東レダウコーニング社製、SRX-212)1.5質量部を混合した混合液を調製した。この混合液を十分に撹拌して、固形分濃度が34質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈攪拌することで、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物A-6を調製した。
【0146】
(製造例1B)
n-ブチルアクリレート(BA)及び2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)の質量比が75:25となるように配合したモノマーを、重合溶媒である酢酸エチル中、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)の存在下で60℃に加熱して重合させた。これにより、固形分濃度が40質量%の架橋性(メタ)アクリル系重合体Pb-1の溶液を得た。該架橋性(メタ)アクリル系重合体Pb-1の固形分100質量部に対し、架橋剤としてタケネートD-101E(三井化学社製)0.2質量部、シランカップリング剤としてX-41-1810(信越化学社製)を0.3質量部加え、酢酸エチルにて固形分濃度が30質量%の溶液となるように希釈攪拌することで、粘着剤層Bを形成するための粘着剤組成物B-1を調製した。
【0147】
(製造例2B)
n-ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AA)の質量比が90:10となるように配合したモノマーを用いたこと以外は、前記架橋性(メタ)アクリル系重合体Pb-1と同様の方法で、固形分濃度が40質量%の架橋性(メタ)アクリル系重合体Pb-2溶液を得た。該架橋性(メタ)アクリル系重合体Pb-2の固形分100質量部に対し、架橋剤としてTETRAD-X(三菱ガス化学社製)0.3質量部、シランカップリング剤としてKBM-9659(信越化学社製)を0.1質量部加え、酢酸エチルにて固形分濃度が23質量%の溶液となるように希釈攪拌することで、粘着剤層Bを形成するための粘着剤組成物B-2を調製した。
【0148】
(製造例3B)
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、n-ブチルアクリレート(BA)及び2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)の質量比が45:45:10となるように配合したモノマーを用いたこと以外は、前記架橋性(メタ)アクリル系重合体Pb-1と同様の方法で、固形分濃度が40質量%の架橋性(メタ)アクリル系重合体Pb-3溶液を得た。該架橋性(メタ)アクリル系重合体Pb-3の固形分100質量部に対し、架橋剤としてタケネートD-110N(三井化学社製)0.3質量部、シランカップリング剤としてKBM-9659(信越化学社製)を0.1質量部加え、酢酸エチルにて固形分濃度が23質量%の溶液となるように希釈攪拌することで、粘着剤層Bを形成するための粘着剤組成物B-3を調製した。
【0149】
(実施例1)
シリコーン系剥離剤で処理された剥離剤層を備えた厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(重剥離側剥離シート)(王子エフテックス社製、38RL-07(2))の表面に、製造例1Aで得られた粘着剤組成物A-1を乾燥後の塗工厚みが8μmになるようにアプリケーターで均一に塗工して塗膜を形成した。この塗膜を、100℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥することで、重剥離側剥離シートの表面に粘着剤層Aを形成した。次いで、重剥離側剥離シートより剥離しやすい厚さ38μmの第2の剥離シート(軽剥離側剥離シート)(王子エフテックス社製、38RL-07(L))に、製造例1Bで得られた粘着剤組成物B-1を乾燥後の塗工厚みが25μmになるようにアプリケーターで均一に塗工して塗膜を形成した。この塗膜を、100℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥し、軽剥離側剥離シートの表面に粘着剤層Bを形成した。その後、粘着剤層Aと粘着剤層Bとが接するように互いに貼り合わせ、23℃、相対湿度50%の条件で7日間養生することで、図1に示すような、重剥離側剥離シート/粘着剤層A/粘着剤層B/軽剥離側剥離シートの構造を有する剥離シート付き粘着シートを得た。
【0150】
(実施例2)
粘着剤組成物A-1の代わりに製造例2Aで得られた粘着剤組成物A-2を使用したこと以外は実施例1と同様にして剥離シート付き粘着シートを得た。
【0151】
(実施例3)
粘着剤組成物A-1の代わりに製造例3Aで得られた粘着剤組成物A-3を使用して乾燥後の塗工厚みが20μmになるよう塗工して塗膜を形成し、また、粘着剤組成物B-1の代わりに製造例2Bで得られた粘着剤組成物B-2を使用したこと以外は実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0152】
(実施例4)
粘着剤組成物B-2の乾燥後の塗工厚みが100μmになるように塗工して塗膜を形成したこと以外は実施例3と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0153】
(実施例5)
粘着剤組成物A-1の代わりに製造例4Aで得られた粘着剤組成物A-4を使用して乾燥後の塗工厚みが18μmになるよう塗工して塗膜を形成し、また、粘着剤組成物B-2の乾燥後の塗工厚みが22μmになるように塗工して塗膜を形成したこと以外は実施例4と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0154】
(実施例6)
粘着剤組成物A-1の代わりに製造例5Aで得られた粘着剤組成物A-5を使用して乾燥後の塗工厚みが15μmになるよう塗工して塗膜を形成し、また、粘着剤組成物B-2の乾燥後の塗工厚みが25μmになるように塗工して塗膜を形成したこと以外は実施例5と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0155】
(実施例7)
粘着剤組成物B-2の乾燥後の塗工厚みが5μmになるように塗工して塗膜を形成したこと以外は実施例6と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0156】
(実施例8)
粘着剤組成物A-1の乾燥後の塗工厚みが30μmになるよう塗工して塗膜を形成し、また、粘着剤組成物B-1の乾燥後の塗工厚みが20μmになるように塗工して塗膜を形成したこと以外は実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0157】
(比較例1)
粘着剤組成物A-1の代わりに製造例5Aで得られた粘着剤組成物A-5を使用して乾燥後の塗工厚みが3μmになるよう塗工して塗膜を形成し、また、粘着剤組成物B-2の乾燥後の塗工厚みが10μmになるように塗工して塗膜を形成したこと以外は実施例6と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0158】
(比較例2)
粘着剤組成物B-2の代わりに製造例3Bで得られた粘着剤組成物B-3を使用したこと以外は比較例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0159】
(比較例3)
シリコーン系剥離剤で処理された剥離剤層を備えた厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(重剥離側剥離シート)(王子エフテックス社製、38RL-07(2))の表面に、製造例5Aで得られた粘着剤組成物A-5を乾燥後の塗工厚みが30μmになるようにアプリケーターで均一に塗工して塗膜を形成した。この塗膜を、100℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥することで、重剥離側剥離シートの表面に粘着剤層Aを形成した。その後、粘着剤層Aの露出面に重剥離側剥離シートより剥離力しやすい厚さ38μmの軽剥離側剥離シート(王子エフテックス社製、38RL-07(L))を設けることで、重剥離側剥離シート/粘着剤層A/軽剥離側剥離シートの構造を有する剥離シート付き粘着シートを得た。
【0160】
(比較例4)
軽剥離側剥離シート(王子エフテックス社製、38RL-07(L))に、製造例2Bで得られた粘着剤組成物B-2を乾燥後の塗工厚みが30μmになるようにアプリケーターで均一に塗工して塗膜を形成した。この塗膜を、100℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥し、軽剥離側剥離シートの表面に粘着剤層Bを形成した。その後、粘着剤層Bの露出面に軽剥離側剥離シートより剥離力しにくい厚さ38μmの重剥離側剥離シート(王子エフテックス社製、38RL-07(L))を設けることで、重剥離側剥離シート/粘着剤層B/軽剥離側剥離シートの構造を有する剥離シート付き粘着シートを得た。
【0161】
(比較例5)
シリコーン系剥離剤で処理された剥離剤層を備えた厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(重剥離側剥離シート)(王子エフテックス社製、38RL-07(2))の表面に、製造例6Aで得られた粘着剤組成物A-6を乾燥後の塗工厚みが20μmになるようにアプリケーターで均一に塗工して塗膜を形成した。この塗膜を、100℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥することで、重剥離側剥離シートの表面に粘着剤層aを形成した。次いで、重剥離側剥離シートより剥離しやすい厚さ38μmの第2の剥離シート(軽剥離側剥離シート)(王子エフテックス社製、38RL-07(L))に、製造例2Bで得られた粘着剤組成物B-2を乾燥後の塗工厚みが25μmになるようにアプリケーターで均一に塗工して塗膜を形成した。この塗膜を、100℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥し、軽剥離側剥離シートの表面に粘着剤層Bを形成した。粘着剤層a及び粘着剤層Bの表面それぞれにコロナ放電処理を施した。なおコロナ放電処理は、春日電機製のコロナ表面処理装置を用い、粘着剤層a及び粘着剤層Bの濡れ張力が30mN/m以上となる条件で行った。コロナ放電処理後の粘着剤層aと粘着剤層Bとが接するように互いに貼り合わせ、23℃、相対湿度50%の条件で7日間養生することで、重剥離側剥離シート/粘着剤層a/粘着剤層B/軽剥離側剥離シートの構造を有する剥離シート付き粘着シートを得た。
【0162】
(評価)
<対ガラス粘着力>
物性(1);Sa値
実施例及び比較例の剥離シート付き粘着シートの軽剥離側剥離シートを剥がして露出させた粘着剤層Bに100μmPET(東洋紡社製/品番:コスモシャインA4300)を貼合し、片面にPET基材を有する粘着シートを得た。斯かる粘着シートの重剥離側剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層Aをソーダガラス(平岡特殊硝子制作(株))に貼合して圧着処理を行った。該圧着処理において、圧着面は錫フロートの反対面とした。その後、ソーダガラスを用いた以外はJIS Z 0237に記載の180°引きはがし粘着力の測定方法に準じて、測定用サンプルを作製した。前記圧着処理を経て得られた測定用サンプルを23℃、50%RHの環境下で1時間静置させた後、300mm/分の引き剥がし速度で粘着力を測定し、Sa(N/25mm)の値を得た。
【0163】
物性(2);Ta値
実施例及び比較例の剥離シート付き粘着シートの軽剥離側剥離シートを剥がして露出させた粘着剤層Bに100μmPET(東洋紡社製/品番:コスモシャインA4300)を貼合し、片面にPET基材を有する粘着シートを得た。斯かる粘着シートの重剥離側剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層Aをソーダガラス(平岡特殊硝子制作(株))に貼合して圧着処理を行った。該圧着処理において、圧着面は錫フロートの反対面とした。その後、ソーダガラスを用いた以外はJIS Z 0237に記載の180°引きはがし粘着力の測定方法に準じて、測定用サンプルを作製した。前記圧着処理を経て得られた測定用サンプルを、オートクレーブを用いて100℃、0.5MPaの条件で30分間処理し、その後、23℃、50%RHの環境下で2時間静置させた後、300mm/分の引き剥がし速度で粘着力を測定し、Ta(N/25mm)の値を得た。
【0164】
物性(3);Ub値
実施例及び比較例の剥離シート付き両面粘着シートの軽剥離側剥離シートを剥がして露出させた粘着剤層Bに、重剥離側剥離シートより剥離しにくい第3の剥離シート(王子エフテックス社製、38RL-07(5))を、その離型面側が粘着層に接するように貼合した。これにより、第1の剥離シート(重剥離側剥離シート)/粘着剤層A/粘着剤層B/第3の剥離シートの構成を備える剥離シート付き両面粘着シートを作製した。該シートを、23℃、相対湿度50%の条件で1日間静置した後、重剥離側剥離シートを剥がして露出させた粘着剤層Aに、100μmPET(東洋紡社製/品番:コスモシャインA4300)を貼合し、片面にPET基材を有する粘着シートを得た。斯かる粘着シートの第3の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層Bにソーダガラス(平岡特殊硝子制作(株))を貼合して圧着処理を行った。該圧着処理において、圧着面は錫フロートの反対面とした。その後、ソーダガラスを用いた以外はJIS Z 0237に記載の180°引きはがし粘着力の測定方法に準じて、測定用サンプルを作製した。前記圧着処理を経て得られた測定用サンプルを23℃、50%RHの環境下で1時間静置させた後、300mm/分の引き剥がし速度で粘着力を測定し、Ub(N/25mm)の値を得た。
【0165】
物性(4);Va値
圧着処理を経て得られた測定用サンプルを23℃、50%RHの環境下で1日静置させたこと以外は物性(1)のSa値の測定方法と同様の方法で粘着力を測定し、Va(N/25mm)の値を得た。
【0166】
<位置調性能(リワーク性)>
実施例及び比較例の剥離シート付き粘着シートの軽剥離側剥離シートを剥がして露出させた粘着剤層Bに、100μmPET(東洋紡社製/品番:コスモシャインA4300)を貼合し、片面にPET基材を有する粘着シートを得た。斯かる粘着シートを50mm×60mmの大きさに切り出し、重軽剥離側剥離シートを剥がして露出した粘着剤層Aを、ハンドローラーを用いて30mm×40mm(厚み10mm)のフロート板ガラス(日本板硝子社製)に、粘着シートの中心点が重なるように貼り合わせ、圧着処理を行った。斯かる圧着処理により、積層体1を得た。この積層体1を、23℃相対湿度50%の環境下にて、水平な台の上にPET基材側が下(水平台側に配置されるように)置いた。前記圧着処理1時間後、及び、1日後それぞれにおいて、ガラス板からはみ出た部分の粘着シートを片手で軽く抑えながらもう一方の手でガラス板をつまんで粘着シートからガラス板を上方向に剥離し、このときの剥離性を下記基準にて判断することで、リワーク性を評価した。
◎:1時間後でも1日後でもガラス板は簡単に剥がれ、リワーク性が特に優れるものであった。
〇:1日後は粘着シート側を水平台に対して上に配置するようにして粘着シートを端部から引き上げるように剥離しないと剥がれないものの、1時間後は簡単に剥がれるものであったので、リワーク性に優れるものであった。
×:1時間後でも剥がれない、又は、粘着シート側を水平台に対して上に配置するようにして粘着シートを端部から引き上げるように剥離しないと剥がれないものであり、リワーク性が悪かった。
【0167】
<位置調性能(再貼合性)>
前述の位置調性能(リワーク性)評価において、粘着シートからガラス板を上方向に剥離させた後の粘着シートの粘着面を観察し、下記基準にて判断することで、再貼合性を評価した。
◎:PET基材からの粘着剤層の浮き剥がれや粘着層の変形などがなく、再貼合性に特に優れるものであった。
〇:粘着面にやや荒れが見られる程度で、再貼合性に優れるものであった。
×:PETから粘着層の浮き又は剥がれが確認され(いわゆる泣き別れが発生)、粘着剤層の変形も観られ、再貼合ができないものであった。
【0168】
<リワーク後の粘着性>
位置調整能(リワーク性)の評価方法で作製した積層体1を、80℃(相対湿度10%未満)のオーブン内で30分加熱処理した後、23℃相対湿度50%の環境下に60分静置した。その後、剥離性を位置調整能(リワーク性)の評価方法と同様の基準にて評価し、リワーク後の粘着性を評価した。
◎:粘着シートは剥がれず、リワーク後の粘着性は特に優れていた。
〇:粘着シート側を水平台に対して上にして粘着シートを端部から引き上げるように剥離しないと剥がれないものであり、リワーク後の粘着性は優れていた。
×:簡単に剥がれるものであり、リワーク後の粘着性は悪かった。
【0169】
<ヘーズ>
空気等が混入しないように厚さ1.2mmである一対の透明ガラス板(松浪硝子工業社製、S9112)を粘着シートによって貼合して積層サンプルを作製し、当該積層サンプルを用いて、JIS K7136(2000)に準拠して、ヘーズを測定した。測定には日本電色工業社製ヘイズメーターNDH7000を用いた。積層サンプルは、以下のように作製した。まず、剥離シート付き粘着シートの軽剥離側剥離シートを剥がし、一方の透明ガラス板に貼合した後、重剥離側剥離シートを剥がした面に、他方の透明ガラス板を、空気などが混入しないように貼合した。これをオートクレーブ内にて100℃、0.5MPa(ゲージ圧)の条件で30分間処理した後、23℃相対湿度50%の環境下に2時間静置して、積層サンプルを得た。
【0170】
<屈折率>
架橋性(メタ)アクリル系重合体Paの屈折率はJIS K 7142(2014)「プラスチック-屈折率の求め方」に記載のA法に準じて測定した。また、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の屈折率はJIS K 7142(2014)「プラスチック-屈折率の求め方」に記載のB法に準じて測定した。
【0171】
【表1】
【0172】
【表2】
【0173】
表1は、前述の各実施例の粘着シートの作製条件に加えて、各粘着シートの物性及び評価結果を示している。また、表2は、前述の各比較例の粘着シートの作製条件に加えて、各粘着シートの物性及び評価結果を示している。なお、表1及び表2中、「粘着組成物B」は、架橋性(メタ)アクリル系重合体Pbを意味する。
【0174】
表1及び表2から、実施例で得られた粘着シートは、リワーク性に優れ、位置調整等のために粘着シートを剥がした後の再貼合性にも優れ、リワーク後は優れた粘着力を発揮することができるものであることわかった。
図1