(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067536
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20240510BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240510BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H01L29/78 658H
H01L29/78 652Q
H01L29/78 657D
H01L29/78 655F
H01L29/78 655G
H01L29/78 653A
H01L29/78 655B
H01L29/78 655D
H01L29/78 652J
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177696
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜井 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】内藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】野口 晴司
(72)【発明者】
【氏名】窪内 源宜
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】瀧下 博
(57)【要約】
【課題】半導体装置においては、欠陥領域がトランジスタ部に与える影響を抑制しつつ、小型化が容易な構造を有することが好ましい。
【解決手段】トランジスタ部とダイオード部との間の境界領域が、トランジスタ部に接し、ライフタイム調整領域が設けられていない第1部分と、ダイオード部に接し、ダイオード部のライフタイム調整領域が延伸して設けられた第2部分とを有し、第1方向におけるライフタイムキラーの密度分布は、境界領域の第2部分から第1部分に向かってライフタイムキラーの密度が減少する横スロープを有し、第1方向において、第1部分の幅は第2部分の幅よりも小さく、第1方向において、第1部分の幅は横スロープの幅以上である半導体装置を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有する半導体基板を備える半導体装置であって、
前記半導体基板に設けられたトランジスタ部と、
前記半導体基板に設けられ、第1方向において前記トランジスタ部と並んで配置されたダイオード部と、
前記半導体基板に設けられ、前記トランジスタ部および前記ダイオード部の間に配置された境界領域と
を備え、
前記ダイオード部は、前記半導体基板の上面側に配置され、キャリアのライフタイムを調整するライフタイムキラーを含むライフタイム調整領域を有し、
前記境界領域は、
前記トランジスタ部に接し、前記ライフタイム調整領域が設けられていない第1部分と、
前記ダイオード部に接し、前記ダイオード部の前記ライフタイム調整領域が延伸して設けられた第2部分とを有し、
前記第1方向における前記ライフタイムキラーの密度分布は、前記境界領域の前記第2部分から前記第1部分に向かって前記ライフタイムキラーの密度が減少する横スロープを有し、
前記第1方向において、前記第1部分の幅は前記第2部分の幅よりも小さく、
前記第1方向において、前記第1部分の幅は前記横スロープの幅以上である
半導体装置。
【請求項2】
前記第2部分において、前記半導体基板の深さ方向における前記ライフタイムキラーの前記密度分布は密度ピークを有し、
前記第1部分の前記第1方向の幅は、前記密度ピークの前記深さ方向におけるピーク幅以上である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1部分の前記第1方向の幅は、前記半導体基板の前記上面から前記密度ピークまでの距離以上である
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記トランジスタ部は、前記第1方向において並んで配置された複数のトレンチ部と、
2つの前記トレンチ部に挟まれたメサ部と
を有し、
前記第1部分の前記第1方向の幅は、前記メサ部の前記第1方向の幅の2倍以上である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記トランジスタ部は、
前記第1方向において並んで配置された複数のトレンチ部と、
2つの前記トレンチ部に挟まれたメサ部と
を有し、
前記第1部分の前記第1方向の幅は、前記境界領域における少なくとも1つの前記トレンチ部の幅と当該トレンチ部を挟む2つの前記メサ部の幅とを合わせた幅よりも大きい
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1部分の前記第1方向の幅は、1μm以上である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1部分の前記第1方向の幅は、10μm以上である
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記境界領域の前記第1方向の幅が200μm以下である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1部分の前記第1方向の幅は、前記境界領域の前記第1方向の幅の10%以上である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2部分の前記第1方向の幅は、前記半導体基板の前記上面から前記密度ピークまでの距離以上である
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記半導体基板は第1導電型のドリフト領域を有し、
前記トランジスタ部は、
前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記上面との間に配置され、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高いエミッタ領域と、
前記エミッタ領域と前記ドリフト領域との間に配置された第2導電型のベース領域と、
前記ベース領域と前記ドリフト領域との間に配置され、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い蓄積領域と
を有し、
前記第1部分の少なくとも一部には前記蓄積領域が配置され、
前記第2部分には前記蓄積領域が配置されていない
請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体基板は第1導電型のドリフト領域を有し、
前記トランジスタ部は、
前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記上面との間に配置され、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高いエミッタ領域と、
前記エミッタ領域と前記ドリフト領域との間に配置された第2導電型のベース領域と
を有し、
前記ダイオード部は、
前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記上面との間に配置された第2導電型のアノード領域を有し、
前記ベース領域と前記アノード領域のドーピング濃度が異なる
請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記半導体基板は第1導電型のドリフト領域を有し、
前記トランジスタ部は、
前記第1方向において並んで配置された複数のトレンチ部と、
前記複数のトレンチ部のうち、少なくとも前記境界領域に最も近いトレンチ部の下端に接して設けられた第2導電型の下端領域と
を有し、
前記下端領域が、前記第2部分まで延伸して設けられている
請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記半導体基板は第1導電型のドリフト領域を有し、
前記トランジスタ部は、
前記第1方向において並んで配置された複数のトレンチ部と、
前記複数のトレンチ部のうち、少なくとも前記境界領域に最も近いトレンチ部の下端に接して設けられた第2導電型の下端領域と
を有し、
前記下端領域が、前記第1部分まで延伸して設けられており、且つ、前記第2部分には設けられていない
請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1方向において、前記下端領域と前記第2部分との距離が、前記横スロープの幅以上である
請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記半導体基板の前記上面の上方に配置された上面電極と、
前記上面電極と前記半導体基板の間に配置された層間絶縁膜と
を更に備え、
前記境界領域において前記層間絶縁膜には、前記上面電極と前記半導体基板とを接続し、第2方向に長手を有するコンタクトホールが設けられ、
前記第2方向における前記コンタクトホールの端部を、前記境界領域の前記第2方向における端部とした場合に、上面視における前記第2部分の面積をSkと、前記境界領域の面積をSとが下式を満たす
0.8≦Sk/S<1
請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項17】
上面および下面を有する半導体基板を備える半導体装置であって、
前記半導体基板に設けられたトランジスタ部と、
前記半導体基板に設けられ、第1方向において前記トランジスタ部と並んで配置されたダイオード部と、
前記半導体基板に設けられ、前記トランジスタ部および前記ダイオード部の間に配置された境界領域と、
前記半導体基板の前記上面の上方に配置された上面電極と、
前記上面電極と前記半導体基板の間に配置された層間絶縁膜と
を備え、
前記ダイオード部は、前記半導体基板の上面側に配置され、キャリアのライフタイムを調整するライフタイムキラーを含むライフタイム調整領域を有し、
前記境界領域は、
前記トランジスタ部に接し、前記ライフタイム調整領域が設けられていない第1部分と、
前記ダイオード部に接し、前記ダイオード部の前記ライフタイム調整領域が延伸して設けられた第2部分とを有し、
前記境界領域において前記層間絶縁膜には、前記上面電極と前記半導体基板とを接続し、第2方向に長手を有するコンタクトホールが設けられ、
前記第2方向における前記コンタクトホールの端部を、前記境界領域の前記第2方向における端部とした場合に、上面視における前記第2部分の面積をSkと、前記境界領域の面積をSとが下式を満たす
0.8≦Sk/S<1
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタ部およびダイオード部を有する半導体装置において、ダイオード部に部分的に欠陥領域を形成してキャリアライフタイムを調整する構造が知られている(例えば特許文献1および2参照)。
特許文献1 WO2018/110703号
特許文献2 WO2019/111572号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置においては、欠陥領域がトランジスタ部に与える影響を抑制しつつ、小型化が容易な構造を有することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては上面および下面を有する半導体基板を備える半導体装置を提供する。半導体装置は、前記半導体基板に設けられたトランジスタ部を備えてよい。半導体装置は、前記半導体基板に設けられ、第1方向において前記トランジスタ部と並んで配置されたダイオード部を備えてよい。半導体装置は、前記半導体基板に設けられ、前記トランジスタ部および前記ダイオード部の間に配置された境界領域を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、前記ダイオード部は、前記半導体基板の上面側に配置され、キャリアのライフタイムを調整するライフタイムキラーを含むライフタイム調整領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記境界領域は、前記トランジスタ部に接し、前記ライフタイム調整領域が設けられていない第1部分を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記境界領域は、前記ダイオード部に接し、前記ダイオード部の前記ライフタイム調整領域が延伸して設けられた第2部分を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記第1方向における前記ライフタイムキラーの密度分布は、前記境界領域の前記第2部分から前記第1部分に向かって前記ライフタイムキラーの密度が減少する横スロープを有してよい。上記何れかの半導体装置は、前記第1方向において、前記第1部分の幅は前記第2部分の幅よりも小さくてよい。上記何れかの半導体装置は、前記第1方向において、前記第1部分の幅は前記横スロープの幅以上であってよい。
【0005】
上記何れかの半導体装置は、前記第2部分において、前記半導体基板の深さ方向における前記ライフタイムキラーの密度分布は密度ピークを有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記第1部分の前記第1方向の幅は、前記密度ピークの前記深さ方向におけるピーク幅以上であってよい。
【0006】
上記何れかの半導体装置において、前記第1部分の前記第1方向の幅は、前記半導体基板の前記上面から前記密度ピークまでの距離以上であってよい。
【0007】
上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記第1方向において並んで配置された複数のトレンチ部を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、2つの前記トレンチ部に挟まれたメサ部を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記第1部分の前記第1方向の幅は、前記メサ部の前記第1方向の幅の2倍以上であってよい。
【0008】
上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記第1方向において並んで配置された複数のトレンチ部を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、2つの前記トレンチ部に挟まれたメサ部を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記第1部分の前記第1方向の幅は、前記境界領域における少なくとも1つの前記トレンチ部の幅と当該トレンチ部を挟む2つの前記メサ部の幅とを合わせた幅よりも大きくてよい。
【0009】
上記何れかの半導体装置において、前記第1部分の前記第1方向の幅は、1μm以上であってよい。
【0010】
上記何れかの半導体装置において、前記第1部分の前記第1方向の幅は、10μm以上であってよい。
【0011】
上記何れかの半導体装置において、前記境界領域の前記第1方向の幅が200μm以下であってよい。
【0012】
上記何れかの半導体装置において、前記第1部分の前記第1方向の幅は、前記境界領域の前記第1方向の幅の10%以上であってよい。
【0013】
上記何れかの半導体装置において、前記第2部分の前記第1方向の幅は、前記半導体基板の前記上面から前記密度ピークまでの距離以上であってよい。
【0014】
上記何れかの半導体装置において、前記半導体基板は第1導電型のドリフト領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記上面との間に配置され、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高いエミッタ領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記エミッタ領域と前記ドリフト領域との間に配置された第2導電型のベース領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記ベース領域と前記ドリフト領域との間に配置され、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い蓄積領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記第1部分の少なくとも一部には前記蓄積領域が配置されてよい。上記何れかの半導体装置において、前記第2部分には前記蓄積領域が配置されていなくてよい。
【0015】
上記何れかの半導体装置において、前記半導体基板は第1導電型のドリフト領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記上面との間に配置され、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高いエミッタ領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記エミッタ領域と前記ドリフト領域との間に配置された第2導電型のベース領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記ダイオード部は、前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記上面との間に配置された第2導電型のアノード領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記ベース領域と前記アノード領域のドーピング濃度が異なっていてよい。
【0016】
上記何れかの半導体装置において、前記半導体基板は第1導電型のドリフト領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記第1方向において並んで配置された複数のトレンチ部を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記複数のトレンチ部のうち、少なくとも前記境界領域に最も近いトレンチ部の下端に接して設けられた第2導電型の下端領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記下端領域が、前記第2部分まで延伸して設けられていてよい。
【0017】
上記何れかの半導体装置において、前記半導体基板は第1導電型のドリフト領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記第1方向において並んで配置された複数のトレンチ部を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部は、前記複数のトレンチ部のうち、少なくとも前記境界領域に最も近いトレンチ部の下端に接して設けられた第2導電型の下端領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記下端領域が、前記第1部分まで延伸して設けられており、且つ、前記第2部分には設けられていなくてよい。
【0018】
上記何れかの半導体装置は、前記第1方向において、前記下端領域と前記第2部分との距離が、前記横スロープの幅以上であってよい。
【0019】
上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板の前記上面の上方に配置された上面電極を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、前記上面電極と前記半導体基板の間に配置された層間絶縁膜を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、前記境界領域において前記層間絶縁膜には、前記上面電極と前記半導体基板とを接続し、第2方向に長手を有するコンタクトホールが設けられてよい。上記何れかの半導体装置において、前記第2方向における前記コンタクトホールの端部を、前記境界領域の前記第2方向における端部とした場合に、上面視における前記第2部分の面積をSkと、前記境界領域の面積をSとが下式を満たしてよい。
0.8≦Sk/S<1
【0020】
本発明の第2の態様においては、上面および下面を有する半導体基板を備える半導体装置を提供する。半導体装置は、前記半導体基板に設けられたトランジスタ部を備えてよい。半導体装置は、前記半導体基板に設けられ、第1方向において前記トランジスタ部と並んで配置されたダイオード部を備えてよい。半導体装置は、前記半導体基板に設けられ、前記トランジスタ部および前記ダイオード部の間に配置された境界領域を備えてよい。半導体装置は、前記半導体基板の前記上面の上方に配置された上面電極を備えてよい。半導体装置は、前記上面電極と前記半導体基板の間に配置された層間絶縁膜を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、前記ダイオード部は、前記半導体基板の上面側に配置され、キャリアのライフタイムを調整するライフタイムキラーを含むライフタイム調整領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記境界領域は、前記トランジスタ部に接し、前記ライフタイム調整領域が設けられていない第1部分を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記境界領域は、前記ダイオード部に接し、前記ダイオード部の前記ライフタイム調整領域が延伸して設けられた第2部分を有してよい。上記何れかの半導体装置は、前記境界領域において前記層間絶縁膜には、前記上面電極と前記半導体基板とを接続し、第2方向に長手を有するコンタクトホールが設けられてよい。上記何れかの半導体装置において、前記第2方向における前記コンタクトホールの端部を、前記境界領域の前記第2方向における端部とした場合に、上面視における前記第2部分の面積をSkと、前記境界領域の面積をSとが下式を満たしてよい。
0.8≦Sk/S<1
【0021】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。
【
図3】
図2におけるe-e断面の一例を示す図である。
【
図4】
図3のa-a'線における、ライフタイムキラーの密度分布210の一例を示している。
【
図5】
図3のb-b'線における、ライフタイムキラーの密度分布220の一例を示している。
【
図6】境界領域200の他の構成例を示す図である。
【
図12】上面視における第1部分201と第2部分202の配置例を示す図である。
【
図13】面積比Sk/Sと、ダイオード部80の逆回復損失Errとの関係を示す図である。
【
図14】ライフタイム調整領域206におけるライフタイムキラー密度、キャリアライフタイムおよび荷電粒子濃度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0024】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0025】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0026】
本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0027】
半導体基板の深さ方向における中心から、半導体基板の上面までの領域を、上面側と称する場合がある。同様に、半導体基板の深さ方向における中心から、半導体基板の下面までの領域を、下面側と称する場合がある。
【0028】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0029】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。本明細書においては、不純物とは、特にN型のドナーまたはP型のアクセプタのいずれかを意味する場合があり、ドーパントと記載する場合がある。本明細書においては、ドーピングとは、半導体基板にドナーまたはアクセプタを導入し、N型の導電型を示す半導体またはP型の導電型を示す半導体とすることを意味する。
【0030】
本明細書においては、ドーピング濃度とは、熱平衡状態におけるドナーの濃度またはアクセプタの濃度を意味する。本明細書においては、ネット・ドーピング濃度とは、ドナー濃度を正イオンの濃度とし、アクセプタ濃度を負イオンの濃度として、電荷の極性を含めて足し合わせた正味の濃度を意味する。一例として、ドナー濃度をND、アクセプタ濃度をNAとすると、任意の位置における正味のネット・ドーピング濃度はND-NAとなる。本明細書では、ネット・ドーピング濃度を単にドーピング濃度と記載する場合がある。
【0031】
ドナーは、半導体に電子を供給する機能を有している。アクセプタは、半導体から電子を受け取る機能を有している。ドナーおよびアクセプタは、不純物自体には限定されない。例えば、半導体中に存在する空孔(V)、酸素(O)および水素(H)が結合したVOH欠陥は、電子を供給するドナーとして機能する。水素ドナーは、少なくとも空孔(V)および水素(H)が結合したドナーであってもよい。あるいは、シリコン半導体中の格子間シリコン(Si-i)と水素とが結合した格子間Si-Hも、電子を供給するドナーとして機能する。本明細書では、VOH欠陥または格子間Si-Hを水素ドナーと称する場合がある。
【0032】
本明細書において半導体基板は、N型のバルク・ドナーが全体に分布している。バルク・ドナーは、半導体基板の元となるインゴットの製造時に、インゴット内に略一様に含まれたドーパントによるドナーである。本例のバルク・ドナーは、水素以外の元素である。バルク・ドナーのドーパントは、例えばリン、アンチモン、ヒ素、セレンまたは硫黄であるが、これに限定されない。本例のバルク・ドナーは、リンである。バルク・ドナーは、P型の領域にも含まれている。半導体基板は、半導体のインゴットから切り出したウエハであってよく、ウエハを個片化したチップであってもよい。半導体のインゴットは、チョクラルスキー法(CZ法)、磁場印加型チョクラルスキー法(MCZ法)、フロートゾーン法(FZ法)のいずれかで製造されよい。本例におけるインゴットは、MCZ法で製造されている。MCZ法で製造された基板に含まれる酸素濃度は1×1017~7×1017/cm3である。FZ法で製造された基板に含まれる酸素濃度は1×1015~5×1016/cm3である。酸素濃度が高い方が水素ドナーを生成しやすい傾向がある。バルク・ドナー濃度は、半導体基板の全体に分布しているバルク・ドナーの化学濃度を用いてよく、当該化学濃度の90%から100%の間の値であってもよい。また、半導体基板は、リン等のドーパントを含まないノンドープ基板を用いてもよい。その場合、ノンドーピング基板のバルク・ドナー濃度(D0)は例えば1×1010/cm3以上、5×1012/cm3以下である。ノンドーピング基板のバルク・ドナー濃度(D0)は、好ましくは1×1011/cm3以上である。ノンドーピング基板のバルク・ドナー濃度(D0)は、好ましくは5×1012/cm3以下である。尚、本発明における各濃度は、室温における値でよい。室温における値は、一例として300K(ケルビン)(約26.9℃)のときの値を用いてよい。
【0033】
本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。また、本明細書においてP++型またはN++型と記載した場合には、P+型またはN+型よりもドーピング濃度が高いことを意味する。本明細書の単位系は、特に断りがなければSI単位系である。長さの単位をcmで表示することがあるが、諸計算はメートル(m)に換算してから行ってよい。
【0034】
本明細書において化学濃度とは、電気的な活性化の状態によらずに測定される不純物の原子密度を指す。化学濃度は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)により計測できる。上述したネット・ドーピング濃度は、電圧-容量測定法(CV法)により測定できる。また、拡がり抵抗測定法(SR法)により計測されるキャリア濃度を、ネット・ドーピング濃度としてよい。CV法またはSR法により計測されるキャリア濃度は、熱平衡状態における値としてよい。また、N型の領域においては、ドナー濃度がアクセプタ濃度よりも十分大きいので、当該領域におけるキャリア濃度を、ドナー濃度としてもよい。同様に、P型の領域においては、当該領域におけるキャリア濃度を、アクセプタ濃度としてもよい。本明細書では、N型領域のドーピング濃度をドナー濃度と称する場合があり、P型領域のドーピング濃度をアクセプタ濃度と称する場合がある。
【0035】
ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度分布がピークを有する場合、当該ピーク値を当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度がほぼ均一な場合等においては、当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度の平均値をドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。本明細書において、単位体積当りの濃度表示にatоms/cm3、または、/cm3を用いる。この単位は、半導体基板内のドナーまたはアクセプタ濃度、または、化学濃度に用いられる。atоms表記は省略してもよい。
【0036】
SR法により計測されるキャリア濃度が、ドナーまたはアクセプタの濃度より低くてもよい。拡がり抵抗を測定する際に電流が流れる範囲において、半導体基板のキャリア移動度が結晶状態の値よりも低い場合がある。キャリア移動度の低下は、格子欠陥等による結晶構造の乱れ(ディスオーダー)により、キャリアが散乱されることで生じる。
【0037】
CV法またはSR法により計測されるキャリア濃度から算出したドナーまたはアクセプタの濃度は、ドナーまたはアクセプタを示す元素の化学濃度よりも低くてよい。一例として、シリコンの半導体においてドナーとなるリンまたはヒ素のドナー濃度、あるいはアクセプタとなるボロン(ホウ素)のアクセプタ濃度は、これらの化学濃度の99%程度である。一方、シリコンの半導体においてドナーとなる水素のドナー濃度は、水素の化学濃度の0.1%から10%程度である。
【0038】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。
図1においては、各部材を半導体基板10の上面に投影した位置を示している。
図1においては、半導体装置100の一部の部材だけを示しており、一部の部材は省略している。
【0039】
半導体装置100は、半導体基板10を備えている。半導体基板10は、半導体材料で形成された基板である。一例として半導体基板10はシリコン基板である。半導体基板10は、上面視において端辺162を有する。本明細書で単に上面視と称した場合、半導体基板10の上面側から見ることを意味している。本例の半導体基板10は、上面視において互いに向かい合う2組の端辺162を有する。
図1においては、X軸およびY軸は、いずれかの端辺162と平行である。またZ軸は、半導体基板10の上面と垂直である。
【0040】
半導体基板10には活性部160が設けられている。活性部160は、半導体装置100が動作した場合に半導体基板10の上面と下面との間で、深さ方向に主電流が流れる領域である。活性部160の上方には、エミッタ電極が設けられているが
図1では省略している。活性部160は、上面視においてエミッタ電極で重なる領域を指してよい。また、上面視において活性部160で挟まれる領域も、活性部160に含めてよい。
【0041】
活性部160には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のトランジスタ素子を含むトランジスタ部70、および、還流ダイオード(FWD)等のダイオード素子を含むダイオード部80が設けられている。
図1の例では、半導体基板10の上面における所定の第1方向(本例ではX軸方向)に沿って、トランジスタ部70およびダイオード部80が交互に配置されている。本例の半導体装置100は逆導通型IGBT(RC-IGBT)である。X軸方向においてトランジスタ部70およびダイオード部80の間には境界領域が配置されるが、
図1では省略している。
【0042】
図1においては、トランジスタ部70が配置される領域には記号「I」を付し、ダイオード部80が配置される領域には記号「F」を付している。本明細書では、上面視において第1方向と異なる方向を第2方向(
図1ではY軸方向)と称する場合がある。第2方向は、第1方向と垂直な方向であってよい。トランジスタ部70およびダイオード部80は、それぞれ第2方向に長手を有してよい。つまり、トランジスタ部70のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。同様に、ダイオード部80のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。トランジスタ部70およびダイオード部80の第2方向と、後述する各トレンチ部の長手方向とは同一であってよい。
【0043】
ダイオード部80は、半導体基板10の下面と接する領域に、N+型のカソード領域を有する。本明細書では、カソード領域が設けられた領域を、ダイオード部80と称する。つまりダイオード部80は、上面視においてカソード領域と重なる領域である。半導体基板10の下面には、カソード領域以外の領域には、P+型のコレクタ領域が設けられてよい。本明細書では、ダイオード部80を、後述するゲート配線までY軸方向に延長した延長領域81も、ダイオード部80に含める場合がある。延長領域81の下面には、コレクタ領域が設けられている。
【0044】
トランジスタ部70は、半導体基板10の下面と接する領域に、P+型のコレクタ領域を有する。また、トランジスタ部70は、半導体基板10の上面側に、N型のエミッタ領域、P型のベース領域、ゲート導電部およびゲート絶縁膜を有するゲート構造が周期的に配置されている。
【0045】
半導体装置100は、半導体基板10の上方に1つ以上のパッドを有してよい。本例の半導体装置100は、ゲートパッド164を有している。半導体装置100は、アノードパッド、カソードパッドおよび電流検出パッド等のパッドを有してもよい。各パッドは、端辺162の近傍に配置されている。端辺162の近傍とは、上面視における端辺162と、エミッタ電極との間の領域を指す。半導体装置100の実装時において、各パッドは、ワイヤ等の配線を介して外部の回路に接続されてよい。
【0046】
ゲートパッド164には、ゲート電位が印加される。ゲートパッド164は、活性部160のゲートトレンチ部の導電部に電気的に接続される。半導体装置100は、ゲートパッド164とゲートトレンチ部とを接続するゲート配線を備える。
図1においては、ゲート配線に斜線のハッチングを付している。
【0047】
本例のゲート配線は、外周ゲート配線130と、活性側ゲート配線131とを有している。外周ゲート配線130は、上面視において活性部160と半導体基板10の端辺162との間に配置されている。本例の外周ゲート配線130は、上面視において活性部160を囲んでいる。上面視において外周ゲート配線130に囲まれた領域を活性部160としてもよい。また、ゲート配線の下方には、ウェル領域が形成されている。ウェル領域とは、後述するベース領域よりも高濃度のP型領域であり、半導体基板10の上面からベース領域よりも深い位置まで形成されている。上面視においてウェル領域で囲まれる領域を活性部160としてもよい。
【0048】
外周ゲート配線130は、ゲートパッド164と接続されている。外周ゲート配線130は、半導体基板10の上方に配置されている。外周ゲート配線130は、アルミニウム等を含む金属配線であってよい。
【0049】
活性側ゲート配線131は、活性部160に設けられている。活性部160に活性側ゲート配線131を設けることで、半導体基板10の各領域について、ゲートパッド164からの配線長のバラツキを低減できる。
【0050】
外周ゲート配線130および活性側ゲート配線131は、活性部160のゲートトレンチ部と接続される。外周ゲート配線130および活性側ゲート配線131は、半導体基板10の上方に配置されている。外周ゲート配線130および活性側ゲート配線131は、不純物がドープされたポリシリコン等の半導体で形成された配線であってよい。
【0051】
活性側ゲート配線131は、外周ゲート配線130と接続されてよい。本例の活性側ゲート配線131は、活性部160を挟む一方の外周ゲート配線130から他方の外周ゲート配線130まで、活性部160をY軸方向の略中央で横切るように、X軸方向に延伸して設けられている。活性側ゲート配線131により活性部160が分割されている場合、それぞれの分割領域において、トランジスタ部70およびダイオード部80がX軸方向に交互に配置されてよい。
【0052】
半導体装置100は、ポリシリコン等で形成されたPN接合ダイオードである不図示の温度センス部や、活性部160に設けられたトランジスタ部の動作を模擬する不図示の電流検出部を備えてもよい。
【0053】
本例の半導体装置100は、上面視において、活性部160と端辺162との間に、エッジ終端構造部90を備える。本例のエッジ終端構造部90は、外周ゲート配線130と端辺162との間に配置されている。エッジ終端構造部90は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部90は、活性部160を囲んで環状に設けられたガードリング、フィールドプレートおよびリサーフのうちの少なくとも一つを備えていてよい。
【0054】
図2は、
図1における領域Dの拡大図である。領域Dは、トランジスタ部70、ダイオード部80、および、活性側ゲート配線131を含む領域である。
図1では省略していたが、X軸方向においてトランジスタ部70およびダイオード部80の間には、境界領域200が配置されている。本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面側の内部に設けられたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、それぞれがトレンチ部の一例である。また、本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面の上方に設けられたエミッタ電極52および活性側ゲート配線131を備える。エミッタ電極52は、上面電極の一例である。エミッタ電極52および活性側ゲート配線131は互いに分離して設けられる。
【0055】
エミッタ電極52および活性側ゲート配線131と、半導体基板10の上面との間には層間絶縁膜が設けられるが、
図2では省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール54が、当該層間絶縁膜を貫通して設けられる。
図2においては、それぞれのコンタクトホール54に斜線のハッチングを付している。
【0056】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に設けられる。エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、半導体基板10の上面におけるエミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14と接触する。また、エミッタ電極52は、層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールを通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52は、Y軸方向におけるダミートレンチ部30の先端において、ダミートレンチ部30のダミー導電部と接続されてよい。ダミートレンチ部30のダミー導電部は、エミッタ電極52およびゲート導電部と接続されなくてよく、エミッタ電極52の電位およびゲート導電部の電位とは異なる電位に制御されてもよい。
【0057】
活性側ゲート配線131は、層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールを通って、ゲートトレンチ部40と接続する。活性側ゲート配線131は、Y軸方向におけるゲートトレンチ部40の先端部41において、ゲートトレンチ部40のゲート導電部と接続されてよい。活性側ゲート配線131は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。
【0058】
エミッタ電極52は、金属を含む材料で形成される。
図2においては、エミッタ電極52が設けられる範囲を示している。例えば、エミッタ電極52の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金、例えばAlSi、AlSiCu等の金属合金で形成される。エミッタ電極52は、アルミニウム等で形成された領域の下層に、チタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。さらにコンタクトホール内において、バリアメタルとアルミニウム等に接するようにタングステン等を埋め込んで形成されたプラグを有してもよい。
【0059】
ウェル領域11は、活性側ゲート配線131と重なって設けられている。ウェル領域11は、活性側ゲート配線131と重ならない範囲にも、所定の幅で延伸して設けられている。本例のウェル領域11は、コンタクトホール54のY軸方向の端から、活性側ゲート配線131側に離れて設けられている。ウェル領域11は、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。本例のベース領域14はP型であり、ウェル領域11はP+型である。
【0060】
トランジスタ部70、ダイオード部80および境界領域200のそれぞれは、第1方向に複数配列されたトレンチ部を有する。本例のトランジスタ部70には、第1方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40と、1以上のダミートレンチ部30とが交互に設けられている。本例のダイオード部80には、複数のダミートレンチ部30が、第1方向に沿って設けられている。本例のダイオード部80には、ゲートトレンチ部40が設けられていない。本例の境界領域200には、複数のダミートレンチ部30が、第1方向に沿って設けられている。本例の境界領域200には、ゲートトレンチ部40が設けられていない。
【0061】
本例のゲートトレンチ部40は、第1方向と垂直な第2方向に沿って延伸する2つの直線部分39(第2方向に沿って直線状であるトレンチの部分)と、2つの直線部分39を接続する先端部41を有してよい。
図2における第2方向はY軸方向である。
【0062】
先端部41の少なくとも一部は、上面視において曲線状に設けられることが好ましい。2つの直線部分39のY軸方向における端部どうしを先端部41が接続することで、直線部分39の端部における電界集中を緩和できる。
【0063】
トランジスタ部70において、ダミートレンチ部30はゲートトレンチ部40のそれぞれの直線部分39の間に設けられる。それぞれの直線部分39の間には、1本のダミートレンチ部30が設けられてよく、複数本のダミートレンチ部30が設けられていてもよい。ダミートレンチ部30は、第2方向に延伸する直線形状を有してよく、ゲートトレンチ部40と同様に、直線部分29と先端部31とを有していてもよい。
図2に示した半導体装置100は、先端部31を有さない直線形状のダミートレンチ部30と、先端部31を有するダミートレンチ部30の両方を含んでいる。
【0064】
ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30のY軸方向の端部は、上面視においてウェル領域11に設けられる。つまり、各トレンチ部のY軸方向の端部において、各トレンチ部の深さ方向の底部は、ウェル領域11に覆われている。これにより、各トレンチ部の当該底部における電界集中を緩和できる。
【0065】
第1方向において各トレンチ部の間には、メサ部が設けられている。メサ部は、半導体基板10の内部において、トレンチ部に挟まれた領域を指す。一例としてメサ部の上端は半導体基板10の上面である。メサ部の下端の深さ位置は、トレンチ部の下端の深さ位置と同一である。本例のメサ部は、半導体基板10の上面において、トレンチに沿って第2方向(Y軸方向)に延伸して設けられている。本例では、トランジスタ部70にはメサ部60が設けられ、ダイオード部80および境界領域200にはメサ部61が設けられている。本明細書において単にメサ部と称した場合、メサ部60およびメサ部61のそれぞれを指している。
【0066】
それぞれのメサ部には、ベース領域14が設けられる。メサ部において半導体基板10の上面に露出したベース領域14のうち、活性側ゲート配線131に最も近く配置された領域をベース領域14-eとする。
図2においては、それぞれのメサ部の第2方向における一方の端部に配置されたベース領域14-eを示しているが、それぞれのメサ部の他方の端部にもベース領域14-eが配置されている。それぞれのメサ部には、上面視においてベース領域14-eに挟まれた領域に、第1導電型のエミッタ領域12および第2導電型のコンタクト領域15の少なくとも一方が設けられてよい。本例のエミッタ領域12はN+型であり、コンタクト領域15はP+型である。エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、深さ方向において、ベース領域14と半導体基板10の上面との間に設けられてよい。
【0067】
トランジスタ部70のメサ部60は、半導体基板10の上面に露出したエミッタ領域12を有する。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40に接して設けられている。ゲートトレンチ部40に接するメサ部60は、半導体基板10の上面に露出したコンタクト領域15が設けられていてよい。
【0068】
メサ部60におけるコンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、X軸方向における一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで設けられる。一例として、メサ部60のコンタクト領域15およびエミッタ領域12は、トレンチ部の第2方向(Y軸方向)に沿って交互に配置されている。
【0069】
他の例においては、メサ部60のコンタクト領域15およびエミッタ領域12は、トレンチ部の第2方向(Y軸方向)に沿ってストライプ状に設けられていてもよい。例えばトレンチ部に接する領域にエミッタ領域12が設けられ、エミッタ領域12に挟まれた領域にコンタクト領域15が設けられる。
【0070】
ダイオード部80および境界領域200のメサ部61には、エミッタ領域12が設けられていない。メサ部61の上面には、ベース領域14およびコンタクト領域15が設けられてよい。メサ部61の上面においてベース領域14-eに挟まれた領域には、それぞれのベース領域14-eに接してコンタクト領域15が設けられてよい。メサ部61の上面においてコンタクト領域15に挟まれた領域には、ベース領域14が設けられてよい。ベース領域14は、コンタクト領域15に挟まれた領域全体に配置されてよい。
【0071】
それぞれのメサ部の上方には、コンタクトホール54が設けられている。コンタクトホール54は、ベース領域14-eに挟まれた領域に配置されている。本例のコンタクトホール54は、コンタクト領域15、ベース領域14およびエミッタ領域12の各領域の上方に設けられる。コンタクトホール54は、ベース領域14-eおよびウェル領域11に対応する領域には設けられない。コンタクトホール54は、メサ部60の第1方向(X軸方向)における中央に配置されてよい。
【0072】
ダイオード部80において、半導体基板10の下面と隣接する領域には、N+型のカソード領域82が設けられる。半導体基板10の下面において、カソード領域82が設けられていない領域には、P+型のコレクタ領域22が設けられてよい。カソード領域82およびコレクタ領域22は、半導体基板10の下面23と、バッファ領域20との間に設けられている。
図2においては、カソード領域82およびコレクタ領域22の境界を点線で示している。
【0073】
カソード領域82は、Y軸方向においてウェル領域11から離れて配置されている。これにより、比較的にドーピング濃度が高く、且つ、深い位置まで形成されているP型の領域(ウェル領域11)と、カソード領域82との距離を確保して、耐圧を向上できる。本例のカソード領域82のY軸方向における端部は、コンタクトホール54のY軸方向における端部よりも、ウェル領域11から離れて配置されている。他の例では、カソード領域82のY軸方向における端部は、ウェル領域11とコンタクトホール54との間に配置されていてもよい。
【0074】
図3は、
図2におけるe-e断面の一例を示す図である。e-e断面は、エミッタ領域12およびカソード領域82を通過するXZ面である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。
【0075】
層間絶縁膜38は、半導体基板10の上面に設けられている。層間絶縁膜38は、ホウ素またはリン等の不純物が添加されたシリケートガラス等の絶縁膜、熱酸化膜、および、その他の絶縁膜の少なくとも一層を含む膜である。層間絶縁膜38には、
図2において説明したコンタクトホール54が設けられている。
【0076】
エミッタ電極52は、層間絶縁膜38の上方に設けられる。エミッタ電極52は、層間絶縁膜38のコンタクトホール54を通って、半導体基板10の上面21と接触している。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、アルミニウム等の金属材料で形成されている。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向(Z軸方向)を深さ方向と称する。
【0077】
半導体基板10は、N型またはN-型のドリフト領域18を有する。ドリフト領域18は、トランジスタ部70、ダイオード部80および境界領域200のそれぞれに設けられている。
【0078】
トランジスタ部70のメサ部60には、N+型のエミッタ領域12およびP型のベース領域14が、半導体基板10の上面21側から順番に設けられている。ベース領域14の下方にはドリフト領域18が設けられている。メサ部60には、N+型の蓄積領域16が設けられてもよい。蓄積領域16は、ベース領域14とドリフト領域18との間に配置される。
【0079】
エミッタ領域12は半導体基板10の上面21に露出しており、且つ、ゲートトレンチ部40と接して設けられている。エミッタ領域12は、メサ部60の両側のトレンチ部と接していてよい。エミッタ領域12は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高い。
【0080】
ベース領域14は、エミッタ領域12の下方に設けられている。本例のベース領域14は、エミッタ領域12と接して設けられている。ベース領域14は、メサ部60の両側のトレンチ部と接していてよい。
【0081】
蓄積領域16は、ベース領域14の下方に設けられている。蓄積領域16は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高いN+型の領域である。すなわち蓄積領域16は、ドナー濃度がドリフト領域18よりも高い。ドリフト領域18とベース領域14との間に高濃度の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減できる。蓄積領域16は、各メサ部60におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。
【0082】
ダイオード部80および境界領域200のメサ部61には、半導体基板10の上面21に接して、P型のベース領域14が設けられている。ベース領域14の下方には、ドリフト領域18が設けられている。メサ部61において、ベース領域14の下方に蓄積領域16が設けられていてもよい。
【0083】
トランジスタ部70、ダイオード部80および境界領域200のそれぞれにおいて、ドリフト領域18の下にはN+型のバッファ領域20が設けられてよい。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い濃度ピークを有してよい。濃度ピークのドーピング濃度とは、濃度ピークの頂点におけるドーピング濃度を指す。また、ドリフト領域18のドーピング濃度は、ドーピング濃度分布がほぼ平坦な領域におけるドーピング濃度の平均値を用いてよい。
【0084】
バッファ領域20は、半導体基板10の深さ方向(Z軸方向)において、2つ以上の濃度ピークを有してよい。バッファ領域20の濃度ピークは、例えば水素(プロトン)またはリンの化学濃度ピークと同一の深さ位置に設けられていてよい。バッファ領域20は、ベース領域14の下端から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0085】
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下には、P+型のコレクタ領域22が設けられる。コレクタ領域22のアクセプタ濃度は、ベース領域14のアクセプタ濃度より高い。コレクタ領域22は、ベース領域14と同一のアクセプタを含んでよく、異なるアクセプタを含んでもよい。コレクタ領域22のアクセプタは、例えばボロンである。
【0086】
ダイオード部80において、バッファ領域20の下には、N+型のカソード領域82が設けられる。カソード領域82のドナー濃度は、ドリフト領域18のドナー濃度より高い。カソード領域82のドナーは、例えば水素またはリンである。なお、各領域のドナーおよびアクセプタとなる元素は、上述した例に限定されない。
【0087】
境界領域200において、バッファ領域20の下には、P+型のコレクタ領域22が設けられる。境界領域200のコレクタ領域22は、トランジスタ部70の境界領域200と同一のドーピング濃度を有してよい。カソード領域82とコレクタ領域22とのX軸方向における境界位置を、ダイオード部80と境界領域200とのX軸方向における境界位置とする。また、エミッタ領域12と接するゲートトレンチ部40のうち、X軸方向においてダイオード部80に最も近くに配置されたゲートトレンチ部40を、トランジスタ部70と境界領域200とのX軸方向における境界位置とする。当該ゲートトレンチ部40のX軸方向における中央位置を、トランジスタ部70と境界領域200とのX軸方向における境界位置としてよい。X軸方向においてダイオード部80に最も近くに配置されたエミッタ領域12に接する2つのトレンチ部のうち、ダイオード部80側のトレンチ部がダミートレンチ部30であってよい。この場合のダミートレンチ部30を、トランジスタ部70と境界領域200とのX軸方向における境界位置としてもよい。例えば境界領域200は、半導体基板10の上面21側に配置されたメサ部61の構造がダイオード部80と同一であり、下面23側の構造(本例ではコレクタ領域22およびバッファ領域20)がトランジスタ部70と同一である。
【0088】
境界領域200には、エミッタ領域12が設けられてもよい。ただしその場合には、境界領域200にはゲートトレンチ部40は設けられない。また、トランジスタ部70と境界領域200との境界位置におけるトレンチ部は、ダミートレンチ部30である。すなわち、境界領域200ではトランジスタ動作は生じない。境界領域200には、ゲートトレンチ部40が設けられていてもよい。ただしその場合には、境界領域200にエミッタ領域12は設けられない。すなわち、境界領域200ではトランジスタ動作は生じない。
【0089】
コレクタ領域22およびカソード領域82は、半導体基板10の下面23に露出しており、コレクタ電極24と接続している。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23全体と接触してよい。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、アルミニウム等の金属材料で形成される。
【0090】
半導体基板10の上面21側には、1以上のゲートトレンチ部40、および、1以上のダミートレンチ部30が設けられる。各トレンチ部は、半導体基板10の上面21から、ベース領域14を貫通して、ベース領域14の下方まで設けられている。エミッタ領域12、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらのドーピング領域も貫通している。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0091】
上述したように、トランジスタ部70には、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30が設けられている。本例のダイオード部80および境界領域200には、ダミートレンチ部30が設けられ、ゲートトレンチ部40が設けられていない。ただし境界領域200とトランジスタ部70との境界には、ゲートトレンチ部40が配置されてよく、ダミートレンチ部30が配置されてもよい。
【0092】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21に設けられたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0093】
ゲート導電部44は、深さ方向において、ベース領域14よりも長く設けられてよい。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44は、ゲート配線に電気的に接続されている。ゲート導電部44に所定のゲート電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチ部40に接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0094】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21に設けられたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー導電部34は、エミッタ電極52に電気的に接続されている。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って設けられる。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に設けられ、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えばダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。
【0095】
本例のゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われている。なお、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40の底部は、下側に凸の曲面状(断面においては曲線状)であってよい。
【0096】
本例の半導体装置100は、キャリアのライフタイムを調整するライフタイムキラーを含むライフタイム調整領域206を備える。本例のライフタイム調整領域206は、電荷キャリアのライフタイムが局所的に小さい領域である。電荷キャリアは、電子または正孔である。電荷キャリアを単にキャリアと称する場合がある。
【0097】
ヘリウム等の荷電粒子を半導体基板10に注入することで、注入位置の近傍に空孔等の格子欠陥204が形成される。格子欠陥204は再結合中心を生成する。格子欠陥204は、単原子空孔(V)、複原子空孔(VV)等の、空孔を主体としてよく、転位であってよく、格子間原子であってよく、遷移金属等であってよい。例えば、空孔に隣接する原子は、ダングリング・ボンドを有する。広義では、格子欠陥204にはドナーやアクセプタも含まれ得るが、本明細書では空孔を主体とする格子欠陥204を空孔型格子欠陥、空孔型欠陥、あるいは単に格子欠陥と称する場合がある。本明細書では格子欠陥204を、キャリアの再結合に寄与する再結合中心として、単に再結合中心、あるいはライフタイムキラーと称する場合がある。ライフタイムキラーは、ヘリウムイオンを半導体基板10に注入することにより形成されてよい。格子欠陥204の密度をヘリウム化学濃度としてよい。なお、ヘリウムを注入したことで形成されたライフタイムキラーは、バッファ領域20に存在する水素により終端される場合があるので、ライフタイムキラーの密度ピークの深さ位置と、ヘリウム化学濃度ピークの深さ位置とは一致しない場合がある。他にも、ライフタイムキラーは、水素イオンを半導体基板10に注入する場合に、飛程よりも注入面側における水素イオンの通過領域に形成されてよい。
【0098】
格子欠陥204はライフタイムキラーの一例である。
図3では荷電粒子の注入位置における格子欠陥204を模式的に×印で示している。格子欠陥204が多く残留している領域では、キャリアが格子欠陥204に捕獲されるので、キャリアのライフタイムが短くなる。キャリアのライフタイムを調整することで、ダイオード部80の逆回復時間、逆回復損失等の特性を調整できる。半導体基板10の深さ方向において、キャリアライフタイムが極小値を示す位置を、ライフタイム調整領域206の深さ位置としてよい。
【0099】
ライフタイム調整領域206は、半導体基板10の上面21側に配置されている。上面21側とは、半導体基板10の深さ方向における中央位置から、半導体基板10の上面21までの領域である。本例のライフタイム調整領域206は、トレンチ部の下端よりも下方に配置されている。
【0100】
ライフタイム調整領域206は、ダイオード部80に設けられる。ライフタイム調整領域206は、X軸方向におけるダイオード部80の全体に設けられてよい。ライフタイム調整領域206は、境界領域200の一部分にも設けられる。境界領域200において、ライフタイム調整領域206が設けられていない領域を第1部分201とし、ライフタイム調整領域206が設けられている領域を第2部分202とする。第1部分201は、ライフタイム調整領域206と同じ深さ位置のキャリアライフタイムが、ダイオード部80のライフタイム調整領域206のキャリアライフタイムよりも短い領域である。第1部分201は、格子欠陥204等のライフタイムキラーを形成するためのヘリウム等の荷電粒子が注入されていない領域であってもよい。第1部分201におけるヘリウム等の荷電粒子の化学濃度(/cm3)は、ドリフト領域18のZ軸方向の中央における当該荷電粒子の化学濃度と同一であってよい。
【0101】
第1部分201は、X軸方向においてトランジスタ部70に接している。X軸方向における第1部分201の幅をW1とする。第2部分202は、X軸方向においてダイオード部80に接している。X軸方向における第2部分202の幅をW2とする。第2部分202のライフタイム調整領域206は、ダイオード部80のライフタイム調整領域206がX軸方向に延伸して設けられた領域である。境界領域200のライフタイム調整領域206は、ダイオード部80のライフタイム調整領域206と同一の深さ位置に設けられてよい。第1部分201および第2部分202は、X軸方向において互いに接している。境界領域200のX軸方向の幅は、W1+W2である。
【0102】
図4は、
図3のa-a'線における、ライフタイムキラーの密度分布210の一例を示している。上述したように、本例のライフタイムキラーは格子欠陥204である。a-a'線は、第1部分201および第2部分202の境界近傍を通過し、深さ位置がライフタイム調整領域206と同一であり、且つ、X軸と平行な直線である。
【0103】
第1部分201におけるライフタイムキラーの密度をk1とする。密度k1は、当該深さにおける第1部分201のライフタイムキラー密度の最小値を用いてよく、平均値を用いてもよい。第2部分202におけるライフタイムキラーの密度をk2とする。密度k2は、当該深さにおける第2部分202のライフタイムキラー密度の最大値を用いてよく、平均値を用いてもよい。密度k2は、密度k1よりも大きい。ライフタイムキラーの密度が、k1およびk2の平均値(すなわち、(k1+k2)/2)となる位置を、第1部分201および第2部分202のX軸方向における境界位置としてよい。密度k1は、ライフタイムキラー密度の最小値が前述のSIMS等による測定の検出下限以下の場合に、当該検出下限濃度としてもよい。
図4の一点破線のように、ライフタイムキラー密度が減少し続けてライフタイムキラー密度の最小値が計測できない場合には、例えば、密度k1を密度k2の1%の値としてよく、密度k2の0.1%の値としてよく、密度k2の0.01%と定義してよい。ライフタイムキラー密度の最小値が前述のSIMS等による測定の検出下限以下の場合も、同様に定義してよい。
【0104】
X軸方向における密度分布210は、第2部分202から第1部分201に向かって、ライフタイムキラーの密度が減少する横スロープ212を有する。横スロープ212は、ライフタイムキラーの密度がk2からk1まで連続的に減少する部分である。つまり横スロープ212は、第2部分202から第1部分201に向かう方向において、ライフタイムキラーの密度が増大する部分を有さない。
【0105】
横スロープ212のX軸方向における幅をW3とする。幅W3は、ライフタイムキラーの密度がβ×k2から、α×k1まで減少する部分の幅であってよい。βは1であってよく、1より小さい値であってもよい。ライフタイムキラーの密度がk2から下がり始める位置が不明瞭な場合、βを1より小さい値(例えば0.9)としてよい。αは1であってよく、1より大きい値であってもよい。ライフタイムキラーの密度がk1に収束する位置が不明瞭な場合、αを1より大きい値(例えば1.1)としてよい。ライフタイムキラーの密度が、k2から、k1およびk2の平均値まで減少する部分の幅W4の2倍を、横スロープ212のX軸方向の幅としてもよい。
【0106】
図2において説明した第1部分201の幅W1は、第2部分202の幅W2よりも小さい。すなわち、W1<W2である。これにより、境界領域200においてライフタイム調整領域206を設ける部分を大きくできる。このため、トランジスタ部70からダイオード部80にキャリアが流れることを抑制し、ダイオード部80の逆回復損失を低減できる。幅W1は、幅W2の半分以下であってよく、1/4以下であってもよい。
【0107】
第1部分201の幅W1は、横スロープ212の幅(例えばW3)以上である。これにより、ライフタイム調整領域206が、トランジスタ部70の閾値電圧等に与える影響を低減できる。格子欠陥204等のライフタイムキラーは、ヘリウム等の荷電粒子を、マスク等を用いて半導体基板10に部分的に照射することで形成できる。これにより、マスクにより覆われていない領域に、ライフタイム調整領域206を形成できる。一方で、マスクの端部近傍においては、マスクの下方にも荷電粒子が回り込むことが考えられる。このため、マスクにより覆われた領域においても、マスクの端部から所定の範囲内には、ライフタイムキラーが形成される。このため、X軸方向におけるライフタイムキラーの密度分布210は、横スロープ212を有する。
【0108】
本例では、第1部分201の幅W1を、横スロープ212の幅以上とすることで、横スロープ212がトランジスタ部70に到達することを防げる。このため、トランジスタ部70にライフタイムキラーが形成されるのを抑制し、閾値電圧の変動等を抑制できる。幅W1は、横スロープ212の幅の2倍以上であってよく、5倍以上であってよく、10倍以上であってもよい。
【0109】
図3に示すように、トランジスタ部70のメサ部60のX軸方向の幅をWmとする。トランジスタ部70のメサ部60の幅は一定であってよい。トランジスタ部70のメサ部60の幅が一定でない場合、境界領域200に最も近いメサ部60の幅を、メサ部60の幅Wmとする。第1部分201の幅W1は、メサ部60の幅Wmより大きくてよい。第1部分201の幅W1は、メサ部60の幅Wmの2倍以上であってよく、3倍以上であってもよい。第1部分201には、1つ以上のメサ部61が含まれてよく、複数のメサ部61が含まれてもよい。
【0110】
図3に示すように、複数のトレンチ部が配列されている配列方向(X軸方向)の幅をWtとする。幅Wtは、ゲートトレンチ部40の幅であってよく、ダミートレンチ部30の幅であってよい。幅Wtは、上面21におけるトレンチ部の幅であってよく、深さ方向(Z軸方向)におけるトレンチ部の深さの半分の深さ位置における幅であってよく、トレンチ部の最も広い幅としてよい。本例では、幅Wtはトレンチ部の最も広い幅とする。第1部分201の幅W1は、境界領域200における少なくとも1つのトレンチ部の幅Wtと、当該トレンチ部を挟む2つのメサ部の幅(2×Wm)とを合わせた幅(Wt+2Wm)よりも大きくてよい。この場合のトレンチ部の幅Wmは、ダミートレンチ部30の幅Wmであってよく、ゲートトレンチ部40の幅Wmであってもよい。トレンチ部の幅Wmは、境界領域200の1つ以上のトレンチ部の幅Wmの最大値であってよく、最小値であってよく、平均値であってもよい。トレンチ部の幅Wmは、第1部分201の1つ以上のトレンチ部の幅Wmの最大値であってよく、最小値であってよく、平均値であってもよい。
【0111】
これにより、ライフタイム調整領域206がトランジスタ部70に与える影響を低減できる。また、第1部分201の幅W1を、メサ部60の幅Wmの2倍以上とすることで、境界領域200に最も近いトランジスタ部70のメサ部60におけるキャリア濃度を維持しやすくなり、境界領域200に向かってキャリア濃度が減少することを抑えられる。これにより、当該メサ部60におけるIGBTのオン電圧の減少を抑えることができる。また、第1部分201の幅W1を、境界領域200における少なくとも1つのトレンチ部の幅Wtと、当該トレンチ部を挟む2つのメサ部の幅(2×Wm)とを合わせた幅(Wt+2Wm)よりも大きくすることで、境界領域200に最も近いトランジスタ部70のメサ部60におけるキャリア濃度を維持しやすくなり、境界領域200に向かってキャリア濃度が減少することを抑えられる。これにより、当該メサ部60におけるIGBTのオン電圧の減少を抑えることができる。
【0112】
図5は、
図3のb-b'線における、ライフタイムキラーの密度分布220の一例を示している。b-b'線は、第2部分202においてライフタイム調整領域206を通過し、且つ、Z軸と平行な直線である。
【0113】
第2部分202において、密度分布220は密度ピーク222を有する。密度ピーク222は、ライフタイムキラーの密度が極大値k2を示す深さ位置Zpを含む部分である。密度ピーク222は、密度分布の形状が山形の部分であってよい。ヘリウム等の荷電粒子を深さ位置Zpに照射すると、深さ位置Zpに多くのライフタイムキラーが形成される。また、荷電粒子の飛程のばらつきにより、密度分布220には、深さ位置Zpに頂点が配置された密度ピーク222が形成される。
図4に示した密度分布210は、深さ位置ZpにおけるX軸方向のライフタイムキラー密度の分布である。
【0114】
ヘリウム等の荷電粒子の注入面を上面21とした場合のライフタイムキラーの密度分布220を実線で示し、注入面を下面23とした場合のライフタイムキラーの密度分布220を一点破線で示す。注入面の違いにより、Z軸方向のライフタイムキラーの密度分布220は、深さ位置Zpを中心に非対称となる場合がある。注入面が上面21の場合には、Z軸方向のライフタイムキラーの密度分布220は、-Z方向(上面21側)にテイル224を引き、+Z方向(下面23側)に急峻に減少する分布を示す。注入面が下面23の場合に、Z軸方向のライフタイムキラーの密度分布220は、+Z方向(下面23側)にテイル224を引き、-Z方向(上面21側)に急峻に減少する分布を示す。密度k1は、本例のように注入面側におけるライフタイムキラー密度分布のテイル224の密度の値と一致してよく、しなくてもよい。
【0115】
密度ピーク222のZ軸方向の幅(ピーク幅)をW5とする。密度ピーク222の半値全幅をピーク幅W5としてよい。他の例では、密度ピーク222において、ライフタイムキラー密度がα×k1以上となる部分の幅W6を、密度ピーク222のピーク幅としてもよい。αは1であってよく、1より大きい値であってもよい。例えばαは1.1である。注入面側におけるライフタイムキラー密度分布のテイル224の密度の値が密度k1よりも大きい場合には、ライフタイムキラー密度α×k1がライフタイムキラー密度分布のテイル224の密度の値よりも大きくなるように設定してよい。ただしこの場合、ライフタイムキラー密度α×k1が密度k2よりも小さくなるように設定する。
【0116】
図2において説明した第1部分201の幅W1は、密度ピーク222のピーク幅(例えばW5)以上であってよい。密度ピーク222のピーク幅が大きいほど、
図4において説明した横スロープ212の幅のばらつきが大きくなる傾向がある。幅W1を密度ピーク222のピーク幅以上とすることで、横スロープ212の幅にばらつきが生じても、横スロープ212がトランジスタ部70に到達することを抑制できる。横スロープ212の幅は、密度ピーク222のピーク幅より小さくてよい。第1部分201の幅W1は、密度ピーク222のピーク幅の2倍以上であってよく、5倍以上であってよく、10倍以上であってもよい。第1部分201の幅W1は、密度ピーク222の幅W6以上であってよい。
【0117】
図6は、境界領域200の他の構成例を示す図である。
図6に示す断面は、第1部分201と、第2部分202の一部分とを含むXZ面である。本例の境界領域200は、
図3に示した境界領域200よりも多くのメサ部61を有している。
図5において説明したように、半導体基板10の上面21から密度ピーク222の頂点までのZ軸方向の距離をZpとする。第1部分201の幅W1は、距離Zp以上であってよい。距離Zpが大きいほど、
図4において説明した横スロープ212の幅のばらつきが大きくなる傾向がある。幅W1を距離Zp以上とすることで、横スロープ212の幅にばらつきが生じても、横スロープ212がトランジスタ部70に到達することを抑制できる。横スロープ212の幅は、距離Zpより小さくてよい。第1部分201の幅W1は、距離Zpの1.5倍以上であってよく、2倍以上であってよく、3倍以上であってもよい。
【0118】
第2部分202の幅W2は、距離Zp以上であってよい。これにより、第2部分202の面積を確保して、トランジスタ部70からダイオード部80にキャリアが流れることを抑制できる。幅W2は、距離Zpの2倍以上であってよく5倍以上であってよく、10倍以上であってよく、15倍以上であってもよい。第1部分201の幅W1は、第2部分202の幅W2より大きくてよい。第1部分201の幅W1は、第2部分202の幅W2の2倍以上であってよく5倍以上であってよく、10倍以上であってよく、15倍以上であってもよい。
【0119】
本明細書で説明する各例において、第1部分201の幅W1は、1μm以上であってよい。幅W1を1μm以上にすることで、トランジスタ部70がオン状態になる閾値電圧の変動を抑制するという効果が得られた。幅W1は、5μm以上であってよく、10μm以上であってよく、20μm以上であってもよい。幅W1を大きくするほど、閾値電圧の変動を抑制しやすくなる。ただし、幅W1を大きくしすぎると、閾値電圧の変動抑制の効果は飽和するが、半導体装置100が大きくなってしまう。幅W1は、200μm以下であってよい。幅W1は150μm以下であってよく、100μm以下であってよく、50μm以下であってよく、30μm以下であってもよい。また、境界領域200の幅W1+W2が、200μm以下であってよい。幅W1+W2は、150μm以下であってよく、100μm以下であってもよい。幅W1+W2は、30μm以上であってよく、50μm以上であってよく、70μm以上であってよく、100μm以上であってもよい。
【0120】
第1部分201の幅W1は、境界領域200の幅W1+W2の10%以上であってよい。幅W1は、幅W1+W2の20%以上であってよく、30%以上であってもよい。幅W1は、幅W1+W2の50%以下であってよく、40%以下であってよく、30%以下であってもよい。これにより、第2部分202の面積を確保でき、トランジスタ部70からダイオード部80にキャリアが流れることを抑制できる。
【0121】
図7は、e-e断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、蓄積領域16の配置が、本明細書で説明する他の例と相違する。半導体装置100の蓄積領域16以外の構造については、本明細書で説明するいずれかの例と同様である。
【0122】
本例の蓄積領域16は、第1部分201の少なくとも一部のメサ部61にも配置されている。第1部分201のメサ部61のうち、トランジスタ部70に最も近い1つ以上のメサ部61に蓄積領域16が配置されてよい。本例では、第2部分202には、蓄積領域16が設けられていない。蓄積領域16と、ライフタイム調整領域206とは、上面視において重なっていない。蓄積領域16とライフタイム調整領域206とは、上面視において接していてよく、離れていてもよい。
【0123】
トランジスタ部70の近傍のメサ部61に蓄積領域16を配置することで、トランジスタ部70の端部近傍に配置されたメサ部60におけるキャリア濃度を高くしやすくなり、IE効果を得やすくなる。第2部分202に蓄積領域16を設けないので、境界領域200に蓄積領域16を設けたことによるダイオード部80への影響、例えば逆回復における電界強度の増大を抑制できる。
【0124】
図8は、e-e断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、メサ部61の構造が、本明細書で説明する他の例と相違する。半導体装置100のメサ部61以外の構造については、本明細書で説明するいずれかの例と同様である。ダイオード部80および境界領域200は、同一の構造のメサ部61を有してよい。
【0125】
本例のメサ部61は、ベース領域14に代えてアノード領域17を有する。アノード領域17以外の構造は、本明細書で説明する他の例におけるメサ部61と同様である。アノード領域17は、ベース領域14とはドーピング濃度が異なるP型の領域である。
図8の例では、アノード領域17は、ベース領域14よりもドーピング濃度が低いP-型の領域である。
【0126】
アノード領域17のドーピング濃度をベース領域14のドーピング濃度よりも小さく調整することで、アノード領域17からのキャリア注入量を比較的に小さく調整できる。アノード領域17のドーピング濃度は、ライフタイム調整領域206におけるライフタイムキラーの密度に応じて調整してよい。例えばライフタイム調整領域206におけるライフタイムキラーの密度を小さくすることで、ライフタイム調整領域206のトランジスタ部70への影響を抑制できる。しかしライフタイムキラーの密度を小さくすると、ダイオード部80におけるキャリアライフタイムを十分低減できない場合がある。この場合、アノード領域17のドーピング濃度を小さくして、アノード領域17からのキャリア注入量を小さくしてよい。
【0127】
図9は、e-e断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、下端領域230を備える点で、本明細書で説明する他の例と相違する。半導体装置100の下端領域230以外の構造については、本明細書で説明するいずれかの例と同様である。
【0128】
下端領域230は、トランジスタ部70の複数のトレンチ部のうち、少なくとも境界領域200に最も近いトレンチ部の下端に接して設けられたP型の領域である。下端領域230は、ベース領域14よりもドーピング濃度が低くてよく、アノード領域17よりもドーピング濃度が低くてもよい。下端領域230は、エミッタ電極52と接していないフローティング領域である。
【0129】
図9の例では、境界領域200に最も近いトレンチ部とは、トランジスタ部70と境界領域200との境界位置に配置されたゲートトレンチ部40である。下端領域230を設けることで、トレンチ部の下端近傍における電界集中を緩和して、半導体装置100の耐圧を向上できる。
【0130】
下端領域230は、トランジスタ部70における複数のトレンチ部にわたって、連続して設けられてよい。
図9の例では、トランジスタ部70の全てのトレンチ部にわたって、下端領域230が連続して設けられている。トランジスタ部70において、下端領域230はベース領域14と離れて配置されている。ベース領域14と下端領域230との間には、N型の領域が配置されている。当該N型の領域は、蓄積領域16およびドリフト領域18の少なくとも一方であってよい。
図9の例では、ベース領域の下方に、蓄積領域16、ドリフト領域18および下端領域230が順番に配置されている。下端領域230と上面21との距離は、ライフタイム調整領域206と上面21との距離よりも小さい。つまり、下端領域230は、ライフタイム調整領域206よりも上方に配置されている。
【0131】
下端領域230は、境界領域200にも配置されてよい。本例の下端領域230は、トランジスタ部70から第2部分202まで、X軸方向に延伸して設けられている。X軸方向において、下端領域230は第2部分202の内部で終端していてよい。つまり、下端領域230は、ダイオード部80には設けられなくてよい。上面視において、下端領域230とライフタイム調整領域206とは、境界領域200において部分的に重なって配置されている。下端領域230を第2部分202まで伸ばすことで、トランジスタ部70のアバランシェ耐量を向上でき、トランジスタ部70でアバランシェ降伏が生じることを抑制できる。
【0132】
図10は、e-e断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、下端領域230の配置が、
図9の例と相違する。半導体装置100の下端領域230以外の構造については、本明細書で説明するいずれかの例と同様である。
【0133】
本例の下端領域230は、トランジスタ部70からダイオード部80まで、X軸方向に延伸して設けられている。X軸方向において、下端領域230はダイオード部80の内部で終端していてよい。つまりダイオード部80は、X軸方向において下端領域230が設けられない領域を有する。X軸方向において、ダイオード部80が下端領域230を有する領域の幅は、ダイオード部80が下端領域230を有さない領域の幅よりも小さくてよい。下端領域230は、ダイオード部80において、X軸方向の端部に配置されたメサ部61だけに配置され、他のメサ部61には配置されていなくてよい。下端領域230をダイオード部80まで伸ばすことで、トランジスタ部70のアバランシェ耐量を向上でき、トランジスタ部70でアバランシェ降伏が生じることを抑制できる。
【0134】
図11は、e-e断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、下端領域230の配置が、
図9および
図10の例と相違する。半導体装置100の下端領域230以外の構造については、本明細書で説明するいずれかの例と同様である。
【0135】
本例の下端領域230は、トランジスタ部70から第1部分201まで、X軸方向に延伸して設けられている。本例では、X軸方向において、下端領域230は第1部分201の内部で終端している。つまり、本例の下端領域230は、第2部分202およびダイオード部80には設けられていない。上面視において、下端領域230とライフタイム調整領域206とは、重なっていない。上面視において、下端領域230とライフタイム調整領域206とは、接していてよく、離れていてもよい。
【0136】
下端領域230を境界領域200まで伸ばすと、トランジスタ部70のドリフト領域18の正孔が、下端領域230を通って境界領域200に抜けやすくなる。このため、トランジスタ部70のIE効果が低減する。下端領域230をX軸方向に伸ばすほど、正孔が境界領域200に抜けやすくなるので、トランジスタ部70のIE効果は低減する。本例では、下端領域230を第1部分201で終端させるので、トランジスタ部70のIE効果を維持しつつ、
図9等において説明したようにトランジスタ部70のアバランシェ耐量を向上させることができる。
【0137】
X軸方向において、下端領域230と第2部分202との距離をW7とする。距離W7は、
図4等において説明した横スロープ212の幅(例えばW3)以上であってよい。距離W7は、横スロープ212の幅の2倍以上であってよく、5倍以上であってよく、10倍以上であってもよい。距離W7は、
図3等において説明したメサ幅Wm以上であってよく、メサ幅Wmの2倍以上であってもよい。
【0138】
図12は、上面視における第1部分201と第2部分202の配置例を示す図である。
図12においては、各トレンチ部に対する、境界領域200の各部の相対位置を示している。
図12においては、境界領域200が設けられる範囲を矩形の実線で示しており、第2部分202およびライフタイム調整領域206が設けられる範囲を斜線のハッチングで示している。境界領域200において、斜線のハッチングが付されていない領域が、第1部分201である。
【0139】
図12の例では、トランジスタ部70と境界領域200のX軸方向における境界位置をX1、ダイオード部80と境界領域200のX軸方向における境界位置をX2、第1部分201と第2部分202のX軸方向における境界位置をX3とする。それぞれの境界位置は、
図3から
図11において説明した例と同様である。
【0140】
図12の例では、境界領域200のY軸方向の両端位置をY1およびY2とする。
図2等において示したコンタクトホール54は、Y軸方向に長手を有している。本例では、コンタクトホール54のY軸方向の端部位置を、境界領域200のY軸方向の端部位置とする。複数のメサ部61に設けられるコンタクトホール54のY軸方向の端部位置が一定でない場合、最も外側まで延伸しているコンタクトホール54のY軸方向の端部位置を、境界領域200のY軸方向の端部位置としてよい。
【0141】
図12の例では、第2部分202のY軸方向の両端位置をY3およびY4とする。第2部分202の両端位置Y3およびY4は、ライフタイム調整領域206のY軸方向における両端位置である。両端位置Y3およびY4の少なくとも一方は、境界領域200の両端位置Y1およびY2よりも、境界領域200の内側に配置されてよい。
図12の例では、第2部分202は、Y軸方向において第1部分201に挟まれている。第2部分202のY軸方向の両端位置Y3およびY4は、
図2等において説明したカソード領域82のY軸方向の両端位置Y5およびY6よりも外側に配置されてよい。つまりダイオード部80におけるライフタイム調整領域206は、Y軸方向においてカソード領域82よりも広い範囲に設けられてよい。
【0142】
上面視における第2部分202の面積をSkとし、境界領域200の面積をSとする。面積Skおよび面積Sの面積比Sk/Sは、下式を満たしてよい。
0.8≦Sk/S<1
面積比Sk/Sを0.8以上とすることで、ライフタイム調整領域206の面積を確保して、トランジスタ部70からダイオード部80にキャリアが流れることを抑制できる。また第2部分202よりもY軸方向の外側に配置された領域から、ダイオード部80にキャリアが流れることを抑制できる。
【0143】
位置Y1と位置Y3との間の距離、または位置Y2と位置Y4との間の距離は、幅W1よりも大きくてよい。位置Y1と位置Y3との間の距離、または位置Y2と位置Y4との間の距離は、幅W2よりも大きくてよい。位置Y1と位置Y3との間の距離、または位置Y2と位置Y4との間の距離は、それぞれ0.3(L1-L2)以上であってよい。一例として位置Y1と位置Y3との間の距離、または位置Y2と位置Y4との間の距離は、それぞれ0.5(L1-L2)である。これにより、第1部分201から第2部分202を通って、特にY軸方向からダイオード部80へのキャリアの流入を防ぐことができ、例えば逆回復耐量の低下を抑制することができる。
【0144】
図13は、面積比Sk/Sと、ダイオード部80の逆回復損失Errとの関係を示す図である。トランジスタ部70からダイオード部80に流れるキャリアを抑制すれば、ダイオード部80の逆回復時間が短くなり、逆回復損失を低減できる。
図13では、
図3等に示した構造において、ライフタイム調整領域206を設けていない比較例300、ライフタイム調整領域206を設けた実施例301および実施例302を示している。実施例302は、実施例301に比べて、ライフタイム調整領域206におけるライフタイムキラーを形成するために照射した荷電粒子のドーズ量が2倍である。また、境界領域200にライフタイム調整領域206を設けない場合(すなわち面積比Sk/S=0)の逆回復損失Errを丸印で示している。
【0145】
図13に示すように、面積比Sk/Sを80%以上にすると、逆回復損失Errが低減し始める。面積比Sk/Sは90%以上であってもよい。
図13に示すように、面積比Sk/Sを90%以上にすると、逆回復損失Errが大きく低減する。面積比Sk/Sは95%以上であってもよい。
【0146】
面積比Sk/Sが100%に近くなると、逆回復損失Errの低減効果が飽和している。面積比Sk/Sは99.5%以下であってよく、99%以下であってよく、97%以下であってよく、95%以下であってもよい。面積比Sk/Sを小さくすることで、第1部分201の幅W1を確保しやすくなり、トランジスタ部70の閾値電圧の変動を抑制できる。
【0147】
図14は、ライフタイム調整領域206におけるライフタイムキラー密度、キャリアライフタイムおよび荷電粒子濃度の関係を示す図である。荷電粒子は、格子欠陥204等のライフタイムキラーを形成するために照射された不純物である。本例の荷電粒子はヘリウムイオンである。
【0148】
図4および
図5等においては、ライフタイムキラーの密度分布から、横スロープ212の幅(例えばW3)、密度ピーク222のピーク幅(例えばW5)、および、密度ピーク222の深さ位置Zpを決定した。他の例では、キャリアライフタイム(本例では空孔のライフタイム)の分布からこれらの値を決定してよく、荷電粒子(例えばヘリウム)の化学密度分布からこれらの値を決定してもよい。
【0149】
キャリアライフタイムの分布は、ライフタイムキラーの密度分布を縦軸方向に反転させた形状を有してよい。つまり、ライフタイムキラーの密度が高いほどキャリアライフタイムは短くなり、ライフタイムキラーの密度が低いほどキャリアライフタイムは長くなる。ライフタイムキラーの密度が十分低い場合に、キャリアライフタイムは十分高い値に飽和してよい。十分高い値に飽和したキャリアライフタイムを、飽和キャリアライフタイムと称する場合がある。飽和キャリアライフタイムの値は、10μs以上であってよく、30μs以上であってよく、100μs以上であってよく、300μs以上であってよい。飽和キャリアライフタイムの上限値は10000μs以下であってよく、3000μs以下であってよく、1000μs以下であってよい。
【0150】
第1部分201におけるキャリアライフタイムをLT1とする。キャリアライフタイムLT1は、深さ位置Zpにおける第1部分201のキャリアライフタイムの最大値を用いてよく、平均値を用いてもよい。第2部分202におけるキャリアライフタイムをLT2とする。キャリアライフタイムLT2は、当該深さにおける第2部分202のキャリアライフタイムの最小値を用いてよく、平均値を用いてもよい。
【0151】
荷電粒子(例えばヘリウム)の化学濃度分布は、ライフタイムキラーの密度分布と同様の形状を有してよい。つまり、荷電粒子の化学濃度分布が高いほど、ライフタイムキラーの密度は高くなり、荷電粒子の化学濃度分布が低いほど、ライフタイムキラーの密度は低くなる。
【0152】
第1部分201における荷電粒子の化学濃度をHe1とする。化学濃度He1は、深さ位置Zpにおける第1部分201の荷電粒子の化学濃度の最小値を用いてよく、平均値を用いてもよい。第2部分202における化学濃度をHe2とする。化学濃度He2は、当該深さにおける第2部分202の荷電粒子の化学濃度の最大値を用いてよく、平均値を用いてもよい。
【0153】
図4および
図5等において説明した演算において、密度k1をキャリアライフタイムLT2に置き換え、密度k2をキャリアライフタイムLT1に置き換えて、横スロープ212の幅(例えばW3)、密度ピーク222のピーク幅(例えばW5)、および、密度ピーク222の深さ位置Zpを決定してよい。
図4および
図5等において説明した演算において、密度k1を化学濃度He1に置き換え、密度k2を化学濃度He2に置き換えて、横スロープ212の幅(例えばW3)、密度ピーク222のピーク幅(例えばW5)、および、密度ピーク222の深さ位置Zpを決定してよい。
【0154】
図14においては、キャリアライフタイム分布から横スロープ212の幅(例えばW3)を算出する例を説明する。キャリアライフタイムLT1は、キャリアライフタイムLT2よりも大きい。キャリアライフタイムが、LT1およびLT2の平均値(すなわち、(LT1+LT2)/2)となる位置を、第1部分201および第2部分202のX軸方向における境界位置としてよい。
【0155】
X軸方向におけるキャリアライフタイム分布は、第2部分202から第1部分201に向かって、キャリアライフタイムが増大する横スロープ213を有する。横スロープ213は、キャリアライフタイムがLT2からLT1まで連続的に減少する部分である。つまり横スロープ213は、第2部分202から第1部分201に向かう方向において、キャリアライフタイムが減少する部分を有さない。
【0156】
横スロープ213のX軸方向における幅をW3とする。本例では、横スロープ213の幅を、横スロープ212の幅として算出する。幅W3は、キャリアライフタイムがα×LT2から、β×LT1まで増大する部分の幅であってよい。αおよびβは、
図4および
図5の例と同様である。キャリアライフタイムが、LT2から、LT1およびLT2の平均値まで増大する部分の幅W4の2倍を、横スロープ213のX軸方向の幅としてもよい。
【0157】
本明細書で説明した各例におけるライフタイム調整領域206は、半導体基板10の上面21または下面23から、深さ位置Zpにヘリウム等の荷電粒子を照射することで形成できる。荷電粒子がヘリウムイオンの場合、ヘリウムイオンのドーズ量は、1×1010ions/cm2以上、1×1013ions/cm2以下であってよい。ヘリウムイオンのドーズ量は、1×1011ions/cm2以上であってもよい。ヘリウムイオンのドーズ量は、1×1012ions/cm2以下であってもよい。
【0158】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0159】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0160】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、17・・・アノード領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・上面、22・・・コレクタ領域、23・・・下面、24・・・コレクタ電極、29・・・直線部分、30・・・ダミートレンチ部、31・・・先端部、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、39・・・直線部分、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・先端部、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、60、61・・・メサ部、70・・・トランジスタ部、80・・・ダイオード部、81・・・延長領域、82・・・カソード領域、90・・・エッジ終端構造部、100・・・半導体装置、130・・・外周ゲート配線、131・・・活性側ゲート配線、160・・・活性部、162・・・端辺、164・・・ゲートパッド、200・・・境界領域、201・・・第1部分、202・・・第2部分、204・・・格子欠陥、206・・・ライフタイム調整領域、210・・・密度分布、212・・・横スロープ、213・・・横スロープ、220・・・密度分布、222・・・密度ピーク、230・・・下端領域、300・・・比較例、301・・・実施例、302・・・実施例
【手続補正書】
【提出日】2023-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有する半導体基板を備える半導体装置であって、
前記半導体基板に設けられたトランジスタ部と、
前記半導体基板に設けられ、第1方向において前記トランジスタ部と並んで配置されたダイオード部と、
前記半導体基板に設けられ、前記トランジスタ部および前記ダイオード部の間に配置された境界領域と
を備え、
前記ダイオード部は、前記半導体基板の上面側に配置され、キャリアのライフタイムを調整するライフタイムキラーを含むライフタイム調整領域を有し、
前記境界領域は、
前記トランジスタ部に接し、前記ライフタイム調整領域が設けられていない第1部分と、
前記ダイオード部に接し、前記ダイオード部の前記ライフタイム調整領域が延伸して設けられた第2部分とを有し、
前記第1方向における前記ライフタイムキラーの密度分布は、前記境界領域の前記第2部分から前記第1部分に向かって前記ライフタイムキラーの密度が減少する横スロープを有し、
前記第1方向において、前記第1部分の幅は前記第2部分の幅よりも小さく、
前記第1方向において、前記第1部分の幅は前記横スロープの幅以上である
半導体装置。
【請求項2】
前記第2部分において、前記半導体基板の深さ方向における前記ライフタイムキラーの前記密度分布は密度ピークを有し、
前記第1部分の前記第1方向の幅は、前記密度ピークの前記深さ方向におけるピーク幅以上である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1部分の前記第1方向の幅は、前記半導体基板の前記上面から前記密度ピークまでの距離以上である
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記トランジスタ部は、前記第1方向において並んで配置された複数のトレンチ部と、
2つの前記トレンチ部に挟まれたメサ部と
を有し、
前記第1部分の前記第1方向の幅は、前記メサ部の前記第1方向の幅の2倍以上である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記トランジスタ部は、
前記第1方向において並んで配置された複数のトレンチ部と、
2つの前記トレンチ部に挟まれたメサ部と
を有し、
前記第1部分の前記第1方向の幅は、前記境界領域における少なくとも1つの前記トレンチ部の幅と当該トレンチ部を挟む2つの前記メサ部の幅とを合わせた幅よりも大きい
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1部分の前記第1方向の幅は、1μm以上である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1部分の前記第1方向の幅は、10μm以上である
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記境界領域の前記第1方向の幅が200μm以下である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1部分の前記第1方向の幅は、前記境界領域の前記第1方向の幅の10%以上である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2部分の前記第1方向の幅は、前記半導体基板の前記上面から前記密度ピークまでの距離以上である
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記半導体基板は第1導電型のドリフト領域を有し、
前記トランジスタ部は、
前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記上面との間に配置され、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高いエミッタ領域と、
前記エミッタ領域と前記ドリフト領域との間に配置された第2導電型のベース領域と、
前記ベース領域と前記ドリフト領域との間に配置され、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い蓄積領域と
を有し、
前記第1部分の少なくとも一部には前記蓄積領域が配置され、
前記第2部分には前記蓄積領域が配置されていない
請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体基板は第1導電型のドリフト領域を有し、
前記トランジスタ部は、
前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記上面との間に配置され、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高いエミッタ領域と、
前記エミッタ領域と前記ドリフト領域との間に配置された第2導電型のベース領域と
を有し、
前記ダイオード部は、
前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記上面との間に配置された第2導電型のアノード領域を有し、
前記ベース領域と前記アノード領域のドーピング濃度が異なる
請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記半導体基板は第1導電型のドリフト領域を有し、
前記トランジスタ部は、
前記第1方向において並んで配置された複数のトレンチ部と、
前記複数のトレンチ部のうち、少なくとも前記境界領域に最も近いトレンチ部の下端に接して設けられた第2導電型の下端領域と
を有し、
前記下端領域が、前記第2部分まで延伸して設けられている
請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記半導体基板は第1導電型のドリフト領域を有し、
前記トランジスタ部は、
前記第1方向において並んで配置された複数のトレンチ部と、
前記複数のトレンチ部のうち、少なくとも前記境界領域に最も近いトレンチ部の下端に接して設けられた第2導電型の下端領域と
を有し、
前記下端領域が、前記第1部分まで延伸して設けられており、且つ、前記第2部分には設けられていない
請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1方向において、前記下端領域と前記第2部分との距離が、前記横スロープの幅以上である
請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記半導体基板の前記上面の上方に配置された上面電極と、
前記上面電極と前記半導体基板の間に配置された層間絶縁膜と
を更に備え、
前記境界領域において前記層間絶縁膜には、前記上面電極と前記半導体基板とを接続し、第2方向に長手を有するコンタクトホールが設けられ、
前記第2方向における前記コンタクトホールの端部を、前記境界領域の前記第2方向における端部とした場合に、上面視における前記第2部分の面積Skと、前記境界領域の面積Sとが下式を満たす
0.8≦Sk/S<1
請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項17】
上面および下面を有する半導体基板を備える半導体装置であって、
前記半導体基板に設けられたトランジスタ部と、
前記半導体基板に設けられ、第1方向において前記トランジスタ部と並んで配置されたダイオード部と、
前記半導体基板に設けられ、前記トランジスタ部および前記ダイオード部の間に配置された境界領域と、
前記半導体基板の前記上面の上方に配置された上面電極と、
前記上面電極と前記半導体基板の間に配置された層間絶縁膜と
を備え、
前記ダイオード部は、前記半導体基板の上面側に配置され、キャリアのライフタイムを調整するライフタイムキラーを含むライフタイム調整領域を有し、
前記境界領域は、
前記トランジスタ部に接し、前記ライフタイム調整領域が設けられていない第1部分と、
前記ダイオード部に接し、前記ダイオード部の前記ライフタイム調整領域が延伸して設けられた第2部分とを有し、
前記境界領域において前記層間絶縁膜には、前記上面電極と前記半導体基板とを接続し、第2方向に長手を有するコンタクトホールが設けられ、
前記第2方向における前記コンタクトホールの端部を、前記境界領域の前記第2方向における端部とした場合に、上面視における前記第2部分の面積Skと、前記境界領域の面積Sとが下式を満たす
0.8≦Sk/S<1
半導体装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板の前記上面の上方に配置された上面電極を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、前記上面電極と前記半導体基板の間に配置された層間絶縁膜を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、前記境界領域において前記層間絶縁膜には、前記上面電極と前記半導体基板とを接続し、第2方向に長手を有するコンタクトホールが設けられてよい。上記何れかの半導体装置において、前記第2方向における前記コンタクトホールの端部を、前記境界領域の前記第2方向における端部とした場合に、上面視における前記第2部分の面積Skと、前記境界領域の面積Sとが下式を満たしてよい。
0.8≦Sk/S<1
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明の第2の態様においては、上面および下面を有する半導体基板を備える半導体装置を提供する。半導体装置は、前記半導体基板に設けられたトランジスタ部を備えてよい。半導体装置は、前記半導体基板に設けられ、第1方向において前記トランジスタ部と並んで配置されたダイオード部を備えてよい。半導体装置は、前記半導体基板に設けられ、前記トランジスタ部および前記ダイオード部の間に配置された境界領域を備えてよい。半導体装置は、前記半導体基板の前記上面の上方に配置された上面電極を備えてよい。半導体装置は、前記上面電極と前記半導体基板の間に配置された層間絶縁膜を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、前記ダイオード部は、前記半導体基板の上面側に配置され、キャリアのライフタイムを調整するライフタイムキラーを含むライフタイム調整領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記境界領域は、前記トランジスタ部に接し、前記ライフタイム調整領域が設けられていない第1部分を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記境界領域は、前記ダイオード部に接し、前記ダイオード部の前記ライフタイム調整領域が延伸して設けられた第2部分を有してよい。上記何れかの半導体装置は、前記境界領域において前記層間絶縁膜には、前記上面電極と前記半導体基板とを接続し、第2方向に長手を有するコンタクトホールが設けられてよい。上記何れかの半導体装置において、前記第2方向における前記コンタクトホールの端部を、前記境界領域の前記第2方向における端部とした場合に、上面視における前記第2部分の面積Skと、前記境界領域の面積Sとが下式を満たしてよい。
0.8≦Sk/S<1
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
境界領域200において、バッファ領域20の下には、P+型のコレクタ領域22が設けられる。境界領域200のコレクタ領域22は、トランジスタ部70のコレクタ領域22と同一のドーピング濃度を有してよい。カソード領域82とコレクタ領域22とのX軸方向における境界位置を、ダイオード部80と境界領域200とのX軸方向における境界位置とする。また、エミッタ領域12と接するゲートトレンチ部40のうち、X軸方向においてダイオード部80に最も近くに配置されたゲートトレンチ部40を、トランジスタ部70と境界領域200とのX軸方向における境界位置とする。当該ゲートトレンチ部40のX軸方向における中央位置を、トランジスタ部70と境界領域200とのX軸方向における境界位置としてよい。X軸方向においてダイオード部80に最も近くに配置されたエミッタ領域12に接する2つのトレンチ部のうち、ダイオード部80側のトレンチ部がダミートレンチ部30であってよい。この場合のダミートレンチ部30を、トランジスタ部70と境界領域200とのX軸方向における境界位置としてもよい。例えば境界領域200は、半導体基板10の上面21側に配置されたメサ部61の構造がダイオード部80と同一であり、下面23側の構造(本例ではコレクタ領域22およびバッファ領域20)がトランジスタ部70と同一である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0106
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0106】
図3において説明した第1部分201の幅W1は、第2部分202の幅W2よりも小さい。すなわち、W1<W2である。これにより、境界領域200においてライフタイム調整領域206を設ける部分を大きくできる。このため、トランジスタ部70からダイオード部80にキャリアが流れることを抑制し、ダイオード部80の逆回復損失を低減できる。幅W1は、幅W2の半分以下であってよく、1/4以下であってもよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0110
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0110】
図3に示すように、複数のトレンチ部が配列されている配列方向(X軸方向)の幅をWtとする。幅Wtは、ゲートトレンチ部40の幅であってよく、ダミートレンチ部30の幅であってよい。幅Wtは、上面21におけるトレンチ部の幅であってよく、深さ方向(Z軸方向)におけるトレンチ部の深さの半分の深さ位置における幅であってよく、トレンチ部の最も広い幅として
もよい。本例では、幅Wtはトレンチ部の最も広い幅とする。第1部分201の幅W1は、境界領域200における少なくとも1つのトレンチ部の幅Wtと、当該トレンチ部を挟む2つのメサ部の幅(2×Wm)とを合わせた幅(Wt+2Wm)よりも大きくてよい。この場合のトレンチ部の幅Wmは、ダミートレンチ部30の幅Wmであってよく、ゲートトレンチ部40の幅Wmであってもよい。トレンチ部の幅Wmは、境界領域200の1つ以上のトレンチ部の幅Wmの最大値であってよく、最小値であってよく、平均値であってもよい。トレンチ部の幅Wmは、第1部分201の1つ以上のトレンチ部の幅Wmの最大値であってよく、最小値であってよく、平均値であってもよい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0116
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0116】
図
3において説明した第1部分201の幅W1は、密度ピーク222のピーク幅(例えばW5)以上であってよい。密度ピーク222のピーク幅が大きいほど、
図4において説明した横スロープ212の幅のばらつきが大きくなる傾向がある。幅W1を密度ピーク222のピーク幅以上とすることで、横スロープ212の幅にばらつきが生じても、横スロープ212がトランジスタ部70に到達することを抑制できる。横スロープ212の幅は、密度ピーク222のピーク幅より小さくてよい。第1部分201の幅W1は、密度ピーク222のピーク幅の2倍以上であってよく、5倍以上であってよく、10倍以上であってもよい。第1部分201の幅W1は、密度ピーク222の幅W6以上であってよい。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0155
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0155】
X軸方向におけるキャリアライフタイム分布は、第2部分202から第1部分201に向かって、キャリアライフタイムが増大する横スロープ213を有する。横スロープ213は、キャリアライフタイムがLT2からLT1まで連続的に増大する部分である。つまり横スロープ213は、第2部分202から第1部分201に向かう方向において、キャリアライフタイムが減少する部分を有さない。
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】