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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067537
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20240510BHJP
   A22C 29/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A23L17/00 F
A22C29/00
A23L17/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177700
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】520366101
【氏名又は名称】株式会社水谷精機工作所
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100224661
【弁理士】
【氏名又は名称】牧内 直征
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】水野 貴夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 悠太
(72)【発明者】
【氏名】長野 凌
(72)【発明者】
【氏名】太田 みのり
【テーマコード(参考)】
4B011
4B042
【Fターム(参考)】
4B011MA03
4B042AC09
4B042AD39
4B042AG53
4B042AP21
4B042AP30
4B042AT05
4B042AT10
(57)【要約】
【課題】簡易な構造でありつつ、多数の棘を有する食用可能な動物または植物、特にガンガゼの棘の除去から殻と身の分離までの作業を自動化可能な加工装置を提供する。
【解決手段】加工装置2は、多数の棘を有する食用可能な動物または植物の棘を折る棘折り手段3と、棘折り手段3により棘を折られた動物または植物を搬送する搬送手段4と、搬送手段4により搬送される動物または植物を切断する切断手段5と、切断手段5により切断された動物または植物が投入され、該動物または植物の殻と身を分離する水槽6とを備え、動物または植物が、ガンガゼであり、棘折り手段3は、内筒と、該内筒の外周を取り囲むように設けられた外筒とを有し、内筒は、周壁を径方向に貫通した複数の開口部を有し、棘は、内筒および外筒が同心に設けられ互いに相対回転することにより折損される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の棘を有する食用可能な動物または植物の棘を折る棘折り手段と、該棘折り手段により前記棘を折られた前記動物または植物を搬送する搬送手段と、該搬送手段により搬送される前記動物または植物を切断する切断手段と、該切断手段により切断された前記動物または植物が投入され、該動物または植物の殻と身を分離する水槽とを備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記動物または植物が、ガンガゼであることを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
前記棘折り手段は、内筒と、該内筒の外周を取り囲むように設けられた外筒とを有し、
前記内筒は、周壁を径方向に貫通した複数の開口部を有し、
前記棘は、前記内筒および前記外筒が同心に設けられ互いに相対回転することにより折損されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の加工装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、前記棘を折られた前記動物または植物が搬送されながら前記切断手段へと接近するように整列させる整列部材を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の加工装置。
【請求項5】
前記切断手段は、ウォーターカッターであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の加工装置。
【請求項6】
前記水槽は、正逆方向に交互に繰り返し回転して水流を発生させる水流発生部を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の加工装置。
【請求項7】
前記外筒は、内周側に設けられた複数の凸部を有し、
前記棘折り手段は、上方から下方へと連通し、
前記内筒および前記外筒の形状は、略逆円錐台形状であり、前記外筒が固定され、前記内筒が回転する構造であることを特徴とする請求項3記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の棘を有する食用可能な動物または植物、特にガンガゼの加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ムラサキウニ、バフンウニなどのウニの生殖腺は、広く食用に供されている。また、ウニの殻は、紫色の色素を含んでおり、染料の原料としての利用も検討されている。このようなウニの利用をするにあたり、種々の加工装置や方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ウニを切断場所を通じて移送するために設けられたコンベヤーと、コンベヤーに取り付けられたカッターと、カッターを構成するレーザービーム又は帯状鋸刃の切断素子と、コンベヤー上のウニの方向付けを整列させ維持するために配列された整列平面と、整列平面の方向にコンベヤーをバネ負荷させるために設けられたバネ手段とから成るウニの処理装置が記載されている。これにより、生殖腺の引き出しの速度および効率を例えば30%から50%で大きく増加し半自動化できる旨が記載されている
【0004】
また、特許文献2には、ムラサキウニの棘を切り取って精製したのち、クエン酸の水溶液に溶解してその上澄み液をとり、この液を用いて布を染色する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-194347号公報
【特許文献2】特開2010-100791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウニの一種であるガンガゼは、ムラサキウニなどと比べ、長く鋭い棘を有しているため、持つと棘が手に刺さりやすい。ガンガゼの棘の先端には返しがあり、刺さった場合には体内に残りやすく、棘から出る毒により灼熱の痛みを引き起こす危険があることが知られている。そのため、ガンガゼは、一般的なウニなどと異なり、食用目的などで漁を行われることが少ない。
【0007】
大量発生したガンガゼは、藻場を食い漁ることで藻場が消失し、魚の産卵、育成場所や、アワビ、サザエなどの生息場所を減少させてしまう。また、磯焼けを起こし海水温上昇の一因ともなることで、沿岸漁業に大きな被害を与える。
【0008】
上記のように、ガンガゼは、漁や加工の際の危険性が大きかったり、漁業に悪影響を与えたりするため、国や地方自治体が補助金を出してガンガゼの駆除を推奨している。駆除対象であるガンガゼを食用や、肥料などとして有効活用できれば、補助金が不要となるだけでなく、大きな価値を生み出す可能性がある。
【0009】
ガンガゼを活用するためには、ガンガゼ特有の危険な棘の処理が問題となる。上記特許文献では、一般的なウニの棘を鋏などで切断することが記載されているが、ガンガゼの場合、危険な棘を有しているため、人間による手作業での棘の除去は適さない。特に、高齢化が進み労働力が不足している漁村などでは、手作業によって棘の除去から殻と身(生殖腺など)の分離まで行うことは重労働であるため、ガンガゼの活用を推進するには、従来よりも作業負担が軽減されること、装置導入しやすい(装置価格が安い)ことなどが重要である。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構造でありつつ、ガンガゼの棘の除去から殻と身の分離までの作業を自動化可能な加工装置を提供することを目的とする。また、本発明は、ガンガゼのように多数の棘(針状の突起)を有する食用可能な動物または植物について、簡易な構造でありつつ、棘の除去から殻と身の分離までの作業を自動化可能な加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の加工装置は、多数の棘を有する食用可能な動物または植物の棘を折る棘折り手段と、該棘折り手段により上記棘を折られた上記動物または植物を搬送する搬送手段と、該搬送手段により搬送される上記動物または植物を切断する切断手段と、該切断手段により切断された上記動物または植物が投入され、該動物または植物の殻と身を分離する水槽とを備えることを特徴とする。
また、上記動物または植物が、ガンガゼであることを特徴とする。
【0012】
上記棘折り手段は、内筒と、該内筒の外周を取り囲むように設けられた外筒とを有し、上記内筒は、周壁を径方向に貫通した複数の開口部を有し、上記棘は、上記内筒および上記外筒が同心に設けられ互いに相対回転することにより折損されることを特徴とする。
【0013】
上記搬送手段は、上記棘を折られた上記動物または植物が搬送されながら上記切断手段へと接近するように整列させる整列部材を有することを特徴とする。
【0014】
上記切断手段は、ウォーターカッターであることを特徴とする。
【0015】
上記水槽は、正逆方向に交互に繰り返し回転して水流を発生させる水流発生部を有することを特徴とする。
【0016】
上記外筒は、内周側に設けられた複数の凸部を有し、上記棘折り手段は、上方から下方へと連通し、上記内筒および上記外筒の形状は、略逆円錐台形状であり、上記外筒が固定され、上記内筒が回転する構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の加工装置は、多数の棘を有する食用可能な動物または植物の棘を折る棘折り手段と、該棘折り手段により棘を折られた動物または植物を搬送する搬送手段と、該搬送手段により搬送される動物または植物を切断する切断手段と、該切断手段により切断された動物または植物が投入され、該動物または植物の殻と身を分離する水槽とを備えるので、簡易な構造でありつつ、危険と負担が大きかった手作業による多数の棘を有する食用可能な動物または植物の棘の除去から殻と身の分離までの作業を自動化(機械化)できる。
また、本発明の加工装置は、動物または植物が、ガンガゼであるので、簡易な構造でありつつ、長い棘と毒により特に危険と負担が大きかった手作業によるガンガゼの棘の除去から殻と身の分離までの作業を自動化できる。これにより、高齢化の進んだ地方の漁村などへ装置導入しやすく、また、ガンガゼの食用化、肥料化による新たな産業の創出や、沿岸漁業の回復につながる可能性がある。
【0018】
棘折り手段は、内筒と、該内筒の外周を取り囲むように設けられた外筒とを有し、内筒は、周壁を径方向に貫通した複数の開口部を有し、棘は、内筒および外筒が同心に設けられ互いに相対回転することにより折損されるので、少ない部材から構成された簡易な構造でありつつ容易に棘を除去できる。
【0019】
搬送手段は、棘を折られた動物または植物が搬送されながら切断手段へと接近するように整列させる整列部材を有するので、ガンガゼが棘折り手段からランダムな位置に排出された場合でも、手作業により位置修正する必要がなく、作業負担をより軽減できる。
【0020】
切断手段は、ウォーターカッターであるので、切断による熱発生が起こらない。その結果、生殖腺を生の状態で得られ、生食用としての加工に適する。また、ウォーターカッターは、高圧の細い水流で対象物を切断するので、水の接触部以外に力が加わりにくく、人間が手作業で切断する場合に比べて身を潰しにくい。
【0021】
水槽は、正逆方向に交互に繰り返し回転して水流を発生させる水流発生部を有するので、切断されたガンガゼに対して色々な方向から、強さの異なる水圧がかかり、殻と身の分離がより進みやすい。
【0022】
外筒は、内周側に設けられた複数の凸部を有するので、棘がより折損しやすいとともに、折損した棘が外筒の中に溜まりやすい。これにより、折損した棘が加工装置の周囲に飛び散らず、装置のメンテナンス性に優れる。
【0023】
棘折り手段は、上方から下方へと連通し、内筒および外筒の形状は、略逆円錐台形状であるので、種々の大きさのガンガゼを1台の装置で加工できる。
【0024】
棘折り手段は、外筒が固定され、内筒が回転する構造であるので、作業者が装置の外筒に触れても巻き込まれにくく、安全性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】海中におけるガンガゼの生息状態を示す簡易図である。
図2】本発明の加工装置の一例を示す斜視図である。
図3】棘折り手段の一例の軸方向断面図である。
図4】棘折り手段の一例の平面図である。
図5】種々の棘折り手段の概略断面図である。
図6】棘折り手段が棘を折る際の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ガンガゼについて図1に基づいて説明する。図1は、海中におけるガンガゼの生息状態を示す簡易図である。図1に示すように、ガンガゼ1は、長細い棘を多数有しており、岩陰などに生息している。一般的なウニの棘は、手に持っても刺さりにくく、刺さってもほとんど深傷にはならない。しかし、ガンガゼ1の棘は容易に人の皮膚に突き刺さる。皮膚に刺さった場合、毒で筋肉が麻痺したり、呼吸困難になったりすることもある程に危険なため、ガンガゼ1は、専用の道具で叩き砕いて駆除されることが多い。
【0027】
本発明の加工装置について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の加工装置の一例を示す斜視図である。加工装置2は、ガンガゼを加工する装置である。図2において、加工装置2は、ガンガゼの棘を折る棘折り手段3と、該棘折り手段により棘を折られたガンガゼを搬送する搬送手段4と、該搬送手段により搬送されるガンガゼを切断する切断手段5と、該切断手段により切断されたガンガゼが投入され、該ガンガゼの殻と身を分離する水槽6とを備えている。棘折り手段3は、支持部30により搬送手段4の上方に支持されている。ここで、ガンガゼからの棘の除去の程度は、長く危険性の高い棘が折損され、少なくとも棘の一部が除去されればよい。加工装置2が上記構成であることにより、作業者の負担が大きく軽減され、高齢者や、少ない人数の作業者でもガンガゼの利用を行いやすい。
【0028】
なお、加工装置2は、搬送手段4、切断手段5、水槽6を有さず、棘折り手段3のみであってもよい。また、加工装置2は、搬送手段4を有さず、棘折り手段3と、切断手段5と、水槽6とから構成されてもよい。この場合、装置へ投入後のガンガゼが落下しながら棘折り、切断、殻と身の分離が連続的に行われるように、棘折り手段3と、切断手段5と、水槽6とを上から順に設けてもよい。
【0029】
図2において、加工装置2は、搬送手段4として、ベルトコンベア4を有している。ベルトコンベア4により搬送しながら切断手段5によりガンガゼを切断することで、搬送速度の調整によりガンガゼの切断条件を最適化しやすい。ベルトコンベア4の上部には、搬送の流れ方向(上流側から下流側)へ進むにつれて狭くなる2枚の整列部材41、41が設けられている。整列部材41は、棘折り手段3から落下した後に、ベルトコンベア4により下流側へ搬送されるガンガゼを切断手段5へと接近するように幅寄せして整列させる。
【0030】
加工装置2において、切断手段5はベルトコンベア4の中央部(幅方向の中央部)の直上に設けられ、整列部材41はガンガゼがベルトコンベア4の中央部を通過するように設けられることが好ましい。例えば、2枚の整列部材41の間隔は、ベルトコンベア4の流れ方向の上流側ではベルト幅程度の広さとし、切断手段5の直下よりも下流側ではガンガゼが通過できるとともに切断手段5によりガンガゼの中央部付近が切断される程度の広さとすることが好ましい。これにより、棘折り手段3からランダムな位置に落下してくるガンガゼを手作業により位置修正する必要がなく、ガンガゼを安全かつ確実に切断できる。また、切断手段5によるガンガゼの切断箇所が中央部付近であることにより、切断されたガンガゼの殻が大きく開口し、殻から身を効率よく分離できる。
【0031】
切断手段5としては、例えば、ジェット水流でものを切断するウォーターカッター、レーザーカッター、超音波カッター、ロータリーカッターなどを用いることができる。特に、ガンガゼを食用に加工する場合、生殖腺を生の状態で得る観点から、切断手段5として、切断による熱発生が無く、身を潰しにくいウォーターカッターを用いることが好ましい。切断手段5は、装置のコスト低減の観点から、1個のみ設けられることが好ましい。また、殻と身の分離しやすさの観点から、複数個設けられてもよい。この場合、切断手段5は、ガンガゼを様々な方向から切断できるように配置してもよい。
【0032】
水槽6は、水流を発生させる水流発生部(図示省略)を有することが好ましい。水流発生部としては、例えば、撹拌羽根、表面に凹凸形状を有する円盤状の回転翼(縦型洗濯機などの底部に設けられる回転翼であり、以下、「パルセーター」ともいう。)などを用いることができる。水流発生部は、正逆方向に交互に繰り返し回転して水流を発生させることができるパルセーターなどの回転翼であることが好ましい。生殖腺の形状をできるだけ維持したまま得る観点から、水流発生部として、パルセーターを用いることが好ましい。これにより、回転する水流の中で水圧により殻と身の剥離が進むとともに、重いものは下へ、軽いものは上へと分離されやすく、分離が容易になされる。
【0033】
棘折り手段について、図3を用いて説明する。図3は、棘折り手段の一例の軸方向断面図である。図3に示すように、棘折り手段3は、内筒31と、内筒31の外周を取り囲むように設けられた外筒32とを有する。棘折り手段3は、内筒31および外筒32が同心に設けられ互いに相対回転する二重筒構造である。ここで、図3および後述する図4図6において、内筒31と外筒32とを相対回転させる回転装置については図示を省略している。回転装置は、内筒31および外筒32を相対回転可能となるように、例えば、棘折り手段3の上部に設けることができる。棘折り手段3は、上方から下方へと連通している。棘折り手段3において、ガンガゼは、内筒31の上部の投入口IPから投入され棘を折損された後、下部の排出口EPから排出される。なお、棘折り手段3は、内筒31の下部が閉塞した非連通構造であってもよい。この場合、棘を除去されたガンガゼを取り出して、次のガンガゼを投入する作業を繰返すなどしてもよい。
【0034】
内筒31は、周壁31aを径方向に貫通した複数の開口部31bを有している。内筒31および外筒32は、回転軸Oが一致するように設けられている。内筒31に投入されたガンガゼの棘は、開口部31bを通って内筒31の周壁31aと、外筒32の周壁32aとの間に入り込み、支持部30(図2参照)に固定された外筒32に対して内筒31が回転することにより折損される。これにより、本発明の加工装置2は、少ない部材から構成された簡易な構造でありつつ容易に棘を除去できる。
【0035】
棘折り手段3は、内筒31および外筒32が互いに相対回転すればよく、内筒31に対して外筒32が回転してもよい。その場合、内筒31が、支持部に固定される。構造簡易化の観点および安全性の観点からは、外筒が固定され、内筒が回転する構造であることが好ましい。
【0036】
図3に示す棘折り手段3において、内筒31および外筒32の形状は、略逆円錐台形状となっている。1台の装置で種々の大きさのガンガゼの棘を折損する観点から、内筒31の形状は、略逆円錐台形状で、上方から下方へと進むにつれて徐々に縮径する構造であることが好ましい。また、ガンガゼの棘を折損しやすくする観点から、内筒31の周壁31aと、外筒32の周壁32aとは、略一定の距離で離間するように設けられていることが好ましい。なお、内筒31および外筒32の形状は、内径が軸方向で一定の非縮径構造でもよい。
【0037】
棘折り手段を構成する部材について、図4を用いて詳細に説明する。図4は、棘折り手段の一例を上方から見た場合の平面図である。すなわち、紙面手前側に投入口があり、紙面奥側に排出口がある。図4に示すように、外筒32は、周壁32aの内周側に設けられた複数の凸部32cを有している。具体的には、外筒32は、周方向に90°の間隔で、周壁32aの内周面に沿って上下方向に延在した4つの板状部材(凸部)32cが設けられている(図3参照)。板状部材32cの内筒側先端部と内筒31の外周面とは、略一定の距離で離間するように設けられている。
【0038】
凸部32cは、内筒31および外筒32が相対回転することにより棘が折損されれば、周壁32aの内周面に沿って周方向以外の方向へ延在した板状部材32cであってもよい。また、凸部32cは、板状部材32cに限らず、線状部材や、ピン状部材であってもよい。外筒32が周壁32aの内周側に設けられた複数の凸部32cを有している場合、折損した棘が外筒の中に溜まりやすいため、外筒32と内筒31の間に水を流すだけで容易に洗浄でき、装置のメンテナンス性に優れる。なお、外筒32は、凸部32cを有していなくてもよい。ガンガゼの棘は中空であり、特に先端部は折れやすい。そのため、長い棘は外筒に接触した状態で、内筒31および外筒32が互いに相対回転するだけでも折損する。
【0039】
内筒31の開口部31bは、周壁31aのうち内筒31の全長よりも短い領域に複数個形成されている。図4において、開口部31bは、略逆台形状であり、周方向に12個(列)、上下方向に6個(段)、所定の間隔で設けられている。開口部31bの最大内径(図4に示す開口部31bの場合、対角線の長さ)は、周方向に隣接する開口部31b同士では同じ大きさで、上方から下方へ進むにつれて徐々に小さくなっている。
【0040】
周方向に設けられる(同一の段の)開口部31bは、例えば、2~30個に設定でき、6~24個であることが好ましく、10~16個であることがより好ましい。また、上下方向に設けられる(同一の列の)開口部31bは、例えば、1~20個に設定でき、2~12個であることが好ましく、3~9個であることがより好ましい。
【0041】
開口部31bの形状は、略逆台形状に限られず、円形、楕円形状、多角形状であってもよい。開口部31bは、周方向や、上下方向に対して傾斜して配置されてもよい。また、内筒31は、網状の細かい開口部31bを多数有してもよい。開口部31bの最大内径は、例えば、3~200mmに設定でき、開口部31bへの棘の入りやすさの観点から、10~120mmであることが好ましく、30~80mmであることがより好ましい。また、隣接する開口部31b同士の間隔は、例えば、5~100mmに設定でき、内筒31の強度確保の観点から、10~50mmであることが好ましく、10~30mmであることがより好ましい。
【0042】
棘折り手段の異なる形態について、図5を用いて説明する。図5は、種々の棘折り手段の概略断面図である。図5(a)には図3、4に示した棘折り手段を示し、図5(b)には内筒の開口部の列の数と同数の板状部材を有する棘折り手段を示す。また、図5(c)には外筒が開口部を有する棘折り手段を示す。
【0043】
図5(a)の棘折り手段3では、12列の内筒31の開口部31bに対し、4個の板状部材32cが設けられている。また、図5(b)の棘折り手段3では、12列の開口部31bに対し、12個の板状部材32cが設けられている。板状部材32cが少ない場合、凹凸部位が少なく外筒32の構造がより簡易であるため、洗浄などのメンテナンスが行いやすく、作業負担が軽減されやすい。一方、板状部材32cが多い場合、板状部材32cの内筒側先端部と、開口部31bとのすれ違いの頻度が多くなるため、棘が折損されやすく、棘の除去効率に優れる。開口部31bの列数nに対する板状部材32cの個数Nbの比率(Nb/n)は、例えば、0.2~2.0に設定でき、作業負担軽減と棘の除去効率を両立する観点から、0.3~1.5であることが好ましく、0.6~1.2であることがより好ましく、1.0であることが特に好ましい。
【0044】
図5(c)の棘折り手段3において、内筒31には12列の開口部31bが設けられ、外筒32にも12列の開口部32bが設けられている。棘を折損するためには、棘が内筒31および外筒32の両方の開口部31b、32bを通れることが好ましいため、開口部32bの最大内径は、開口部31bの最大内径よりも大きいことが好ましい。外筒32が開口部32bを有する場合、凹凸部位が少なく外筒32の構造がより簡易であるため、棘折り手段3を製造するコストが低減されやすく、装置導入されやすい。内筒31の開口部31bの列数nに対する外筒32の開口部32bの列数Nの比率(N/n)は、例えば、0.5~2.0に設定でき、棘の除去効率の観点から、0.5~1.5であることが好ましく、1.0であることが特に好ましい。
【0045】
棘が折損される際の各部材の動作について、図6を用いて詳細に説明する。図6は、棘折り手段が棘を折損する際の動作を示す図である。図6(a)は、外筒が板状部材を有する図5(a)に示した棘折り手段によって棘が折損される前の状態を示す図であり、図6(b)は棘折り後の状態を示す図である。また、図6(c)は、外筒が開口部を有する図5(c)に示した棘折り手段によって棘が折損される前の状態を示す図であり、図6(d)は棘折り後の状態を示す図である。
【0046】
図6(a)、図6(b)に示すように、外筒32が板状部材32cを有する場合、内筒31の開口部31bを通った棘Sは、板状部材32cの内筒側先端部Tと、開口部31bの周囲の枠部31b’とがすれ違う際にそれぞれが鋏の刃のように機能することにより折損される。内筒側先端部Tと内筒31の外周面との間隔Dは、例えば、1~50mmに設定でき、棘Sをより根元近くから折損するとともに、内筒31と外筒32とを干渉することなくスムーズに回転させる観点から、5~30mmであることが好ましく、5~20mmであることがより好ましい。また、内筒31の外周面と、外筒32の内周面との間隔Dは、例えば、1~20cmに設定でき、装置設置場所の自由度や消費電力低減の観点から、3~15cmであることが好ましく、5~10cmであることがより好ましい。
【0047】
図6(c)、図6(d)に示すように、外筒32が開口部32bを有する場合、内筒31の開口部31bおよび外筒32の開口部32bを通った棘Sは、枠部31b’と、枠部32b’とがすれ違う際にそれぞれが鋏の刃のように機能することにより折損される。外筒32の内周面と内筒31の外周面との間隔Dは、例えば、1~30mmに設定でき、棘Sをより根元近くから折損するとともに、内筒31と外筒32とを干渉することなくスムーズに回転させる観点から、5~20mmであることが好ましく、5~10mmであることがより好ましい。
【0048】
以上、各図などに基づき本発明の加工装置について説明したが、本発明の構成はこれに限定されるものではない。本発明の加工装置は、ガンガゼの棘のように針状の突起を有することで取り扱いに難がある食用可能な動物または植物に対しても適用できる。ガンガゼ以外で針状の突起を有する食用可能な動物または植物としては、例えば、栗、ドリアン、サボテン、ウニなどが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の加工装置は、簡易な構造でありつつ、ガンガゼの棘の除去から殻と身の分離までの作業を自動化可能であるので、労働力不足であるとともに、高価な装置の導入が適さない場面に広く利用されることが期待できる。
【符号の説明】
【0050】
1 ガンガゼ
2 加工装置
3 棘折り手段
30 支持部
31 内筒
31a 周壁
31b 開口部
31b’ 枠部
32 外筒
32a 周壁
32b 開口部
32b’ 枠部
32c 板状部材(凸部)
4 搬送手段(ベルトコンベア)
5 切断手段
6 水槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6