(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067539
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20240510BHJP
F16H 57/021 20120101ALI20240510BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/04 N
F16H57/021
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177702
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】横山 和彦
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB12
3J063AC03
3J063BA11
3J063BB41
3J063CA01
3J063XD03
3J063XD17
3J063XD32
3J063XD47
3J063XD72
3J063XF12
3J063XF14
(57)【要約】
【課題】装置を径方向に大型化させないようにする。
【解決手段】第1のケースと、内部にギアを収容する第2のケースと、前記第1のケースと前記ギアとの間に配置されると共に、前記第2のケースに取り付けられた壁部と、前記ギアの中心軸に沿って前記壁部から前記第1のケース側に延出すると共に、前記壁部と前記第1のケースとの間にオイルキャッチ部を形成する延出壁と、を有し、前記ギアの中心軸方向から見て前記オイルキャッチ部は、前記ギアと重なる範囲に形成される、装置。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のケースと、
内部にギアを収容する第2のケースと、
前記第1のケースと前記ギアとの間に配置されると共に、前記第2のケースに取り付けられた壁部と、
前記ギアの中心軸に沿って前記壁部から前記第1のケース側に延出すると共に、前記壁部と前記第1のケースとの間にオイルキャッチ部を形成する延出壁と、を有し、
前記ギアの中心軸方向から見て前記オイルキャッチ部は、前記ギアと重なる範囲に形成される、装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記中心軸方向から見て前記第1のケースには、前記オイルキャッチ部と重なる位置に溝が設けられている、装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記延出壁のうち、前記オイルキャッチ部の底となる領域の上面は、前記第1のケース側のほうが、前記壁部側よりも下側に位置する、装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記オイルキャッチ部の底となる領域の下面は、前記第1のケース側のほうが、前記壁部側よりも上側に位置する傾斜面である、装置。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記第1のケースには、前記中心軸に平行な回転軸回りに回転するリングギアが収容されており、
前記中心軸の径方向から見て、前記オイルキャッチ部は、前記リングギアとオーバーラップする位置に設けられており、
前記オイルキャッチ部の前記中心軸方向の長さは、前記リングギアの前記中心軸方向の長さよりも長い、装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記第1のケースには、前記中心軸回りに回転すると共に、前記リングギアと噛合する伝達ギアがさらに収容されており、
前記伝達ギアは、内部に油路を有しており、
前記溝は、前記オイルキャッチ部と前記油路とを連絡させる、装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記中心軸方向から見て前記第2のケースでは、前記壁部との締結部が前記中心軸回りの周方向に複数設けられており、
前記締結部は、前記ギアが前記中心軸方向から当接する当接壁と、前記中心軸の径方向で重なる範囲を持って設けられている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の装置は、回転体を収容するハウジングを有する。ハウジングには、回転体の回転によって飛散したオイルを捕捉するオイルキャッチ部が設けられている。オイルキャッチ部は、ハウジングを構成する第1ケースと第2ケースの互いの対向部に設けたリブ同士を重ね合わせることで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リブは、回転体との干渉を避けるために回転体よりも外径側に設けられる。そのため、オイルキャッチ部を有する装置は、径方向に大型化しやすい。
そこで、オイルキャッチ部を装置に設けるにあたり、装置の径方向への大型化を抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、
第1のケースと、
内部にギアを収容する第2のケースと、
前記第1のケースと前記ギアとの間に配置されると共に、前記第2のケースに取り付けられた壁部と、
前記ギアの中心軸に沿って前記壁部から前記第1のケース側に延出すると共に、前記壁部と前記第1のケースとの間にオイルキャッチ部を形成する延出壁と、を有し、
前記ギアの中心軸方向から見て前記オイルキャッチ部は、前記ギアと重なる範囲に形成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、オイルキャッチ部を設けるにあたり、装置の径方向への大型化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、動力伝達装置の概略構成を説明するためのスケルトン図である。
【
図2】
図2は、動力伝達装置の断面の模式図である。
【
図3】
図3は、遊星歯車機構周りを説明する図である。
【
図9】
図9は、オイルキャッチ部を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
始めに、本明細書における用語の定義を説明する。
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両前後方向等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0009】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両前後方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0010】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0011】
以下、本発明に係る装置の実施形態を、車両が備える動力伝達装置に適用した場合を例に挙げて説明する。
図1は、動力伝達装置1の概略構成を説明するためのスケルトン図である。
図2は、動力伝達装置1の断面の模式図である。
図2は、車両Vに搭載された動力伝達装置1を、車両Vの前後方向に沿う面で切断した断面であって、上方から見たみたときの断面を模式的に示している。
図3は、遊星歯車機構4周りを説明する図である。
【0012】
図1に示すように、動力伝達装置1は、モータ2と、モータ2の出力回転を駆動輪W、Wに伝達する動力伝達機構3と、を有する。動力伝達機構3は、遊星歯車機構4と、伝達シャフト5と、差動歯車機構6と、ドライブシャフトDA、DBと、を有する。
【0013】
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、遊星歯車機構4と、伝達シャフト5と、差動歯車機構6と、ドライブシャフトDA、DBと、が設けられている。ドライブシャフトDA、DBは、モータ2の回転軸X1と平行な回転軸X2に沿う向きに設けられている。ドライブシャフトDA、DBの回転軸X2は、回転軸X1よりも車両後方側に位置している。
【0014】
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転が、遊星歯車機構4で減速されたのち、伝達シャフト5を介して差動歯車機構6に入力される。差動歯車機構6に入力された回転は、ドライブシャフトDA、DBを介して、車両の左右の駆動輪W、Wに伝達される。
【0015】
動力伝達装置1は、モータ2と動力伝達機構3を収容するハウジング10を有する。
ハウジング10は、モータカバー11と、ケース12(第2のケース)と、サイドカバー13(第1のケース)と、を有する。
ハウジング10では、モータカバー11とケース12との間に形成される空間(モータ室Sa)内に、モータ2が収容される。
ケース12とサイドカバー13との間に形成される空間(ギア室Sb)のうち、回転軸X1方向から見てモータと重なる領域にある空間(第1ギア室Sb1:
図2参照)に、遊星歯車機構4と、伝達シャフト5が収容される。
ケース12とサイドカバー13との間に形成される空間(ギア室Sb)のうち、回転軸X1方向から見て第1ギア室Sb1の車両後方側にある空間(第2ギア室Sb2:
図2参照)に、差動歯車機構6が収容される。
【0016】
図2に示すように、ケース12は、外径の異なる2つの周壁部120、121を有する。周壁部120、121は、モータ2の回転軸X1に沿って並んでいる。周壁部120は、モータ2を囲む筒状に形成されている。
【0017】
周壁部120と周壁部121との境界部には、隔壁部122が設けられている。隔壁部122は、回転軸X1に直交する向きで設けられている。隔壁部122は、周壁部120と周壁部121との境界部から、内径側(回転軸X1側)に延びている。
隔壁部122は、ケース12内の空間を、モータ室Sa側の空間と、第1ギア室Sb1側の空間とに区画する。
隔壁部122では、回転軸X1と交差する領域に開口122aが設けられている。開口122aは、隔壁部122を厚み方向(回転軸X1方向)に貫通している。
【0018】
隔壁部122では、モータ室Sa側(図中、左側)の面に、円筒状の支持部123が設けられている。第1ギア室Sb1側(図中、右側)の面に、円筒状の支持部124が設けられている。
支持部123と支持部124は、開口122aを所定間隔で囲む内径で形成されている。支持部123の内周では、モータシャフト20の先端20a側の領域の外周が、ベアリングB1を介して、回転可能に支持されている。
支持部124の内周では、遊星歯車機構4側の連結部401が、ベアリングB2を介して、回転可能に支持されている。
【0019】
遊星歯車機構4は、サンギア41と、ピニオンギア42と、リングギア43(ギア)と、キャリア44と、を有するシングルピニオン型の遊星歯車である。遊星歯車機構4は、隔壁部122に近接配置されている。
【0020】
連結部401は、回転軸X1に沿う向きで設けられた筒状部材である。連結部401の一端401a側は、モータシャフト20の外周にスプライン嵌合している。他端401bには、連結部401とサンギア41とを接続する接続部402が設けられている。
接続部402は、連結部401の外周から径方向外側に延出している。サンギア41は、回転軸X1方向から見て、連結部401よりも外径側に位置している。
【0021】
図3に示すように、サンギア41の外周には、ピニオンギア42が噛合している。遊星歯車機構4では、ピニオンギア42が、回転軸X1周りの周方向に間隔を開けて複数設けられている。ピニオンギア42の各々は、ピニオン軸45で回転可能に支持されている。
ピニオン軸45は、長手方向の一端と他端が、キャリア44の側板部441、442で、それぞれ支持されている。
側板部441、442は、回転軸X1方向に間隔を開けて設けられている。側板部441、442は、互いに平行に配置されている。側板部441は、隔壁部122側(図中、左側)に位置している。側板部441の隔壁部122側の面には、円筒状の支持筒443が設けられている。支持筒443の内周には、ベアリングB3が支持されている。ベアリングB3は、接続部402に回転軸X1方向から当接して位置決めされている。ベアリングB3は、サンギア41の連結部401の外周を支持している。
【0022】
側板部442は、サンギア41の側方を外径側から内径側に横切る範囲に設けられている。側板部442の内径側の端部442aは、サンギア41よりも回転軸X1側(内径側)に位置している。側板部442の端部442aには、円筒状の連結部444が設けられている。連結部444は、回転軸X1を囲む筒状の部位であり、サンギア41の内径側を隔壁部122側(図中、左側)に延びている。
回転軸X1の径方向から見て、連結部444は、伝達シャフト5の軸部50の一端50a側の領域とオーバーラップしている。連結部444の内周は、軸部50の一端50a側の領域の外周にスプライン嵌合している。
【0023】
この状態において、軸部50の一端50aは、モータシャフト20の先端20aに、回転軸方向の隙間を空けて対向している。モータシャフト20がスプライン嵌合する連結部401には、当該連結部401の内部と外部とを連通させる連通孔401cが形成されている。連結部401内において連通孔401cは、軸部50の一端50aと、モータシャフト20の先端20aとの間の空間Rxに開口する。連結部401の外周において連通孔401cは、ベアリングB2とベアリングB3との間に開口する。
【0024】
側板部442の外径側には、側板部441側に延びる筒壁部445が設けられている。
筒壁部445は、回転軸X1を所定間隔で囲む筒状に形成されている。筒壁部445の先端部445aは、回転軸X1方向から側板部441に当接している。
筒壁部445では、ピニオンギア42との干渉を避けるための開口部446が設けられている。開口部446は、周方向に所定間隔で、ピニオンギア42と同数設けられている。
【0025】
ピニオンギア42は、外周側の一部が、開口部446から径方向外側に突出している。この状態においてピニオンギア42の各々は、リングギア43の内周に噛合している。
リングギア43は、回転軸X1(ギアの中心軸)を中心として配置されている。
リングギア43は、接続部材8を介して、壁部材7(壁部)に固定されている。接続部材8は、弾性部81と、嵌合部82とを有する。
リングギア43の他端43bには、接続部材8の弾性部81が、相対回転不能に連結されている。
弾性部81は、回転軸X1方向から見てリング状を成している。弾性部81は、外径側が、リングギア43との連結部811、内径側が、嵌合部82との連結部812となっている。弾性部81は、外径側の連結部811と、内径側の連結部812とが、回転軸X1方向でオフセットしている。弾性部81は、回転軸X1方向に弾性変位可能である。
【0026】
嵌合部82は、壁部材7の筒壁部76に相対回転不能に内嵌している。壁部材7は、ボルトBによりケース12に固定されている。そのため、接続部材8を介して壁部材7に接続されたリングギア43は、回転軸X1回りの回転が規制される。
さらに、壁部材7をケース12に固定すると、接続部材8の弾性部81が回転軸X1方向に圧縮される。この状態において弾性部81は、リングギア43に環状壁部129側(図中、左側)に向かう付勢力を作用させている。そのため、リングギア43の一端43aは、弾性部81の付勢力で環状壁部129の端面129aに圧接している。リングギア43は、環状壁部129により回転軸X1方向の位置決めがされている。
【0027】
遊星歯車機構4では、モータ2の出力回転が、サンギア41に入力される。サンギア41に入力された回転は、リングギア43の回転が規制されているので、ピニオンギア42を介してキャリア44から出力される。
前記したように、キャリア44の連結部444は、伝達シャフト5の軸部50にスプライン嵌合している。そのため、モータ2の出力回転は、遊星歯車機構4で減速されたのち、伝達シャフト5に伝達される。
【0028】
伝達シャフト5では、中空の軸部50の一端50aに、キャリア44の連結部444が連結されている。軸部50は、回転軸X1に沿って設けられている。軸部50の他端50b側の外周は、ベアリングB4を介して、後記するサイドカバー13の支持部134で回転可能に支持されている。
【0029】
軸部50の内部には、当該軸部50の一端50aから他端50bまで貫通する貫通孔50cが設けられている。
貫通孔50cには、サイドカバー13に支持されたスリーブ9が、他端50b側から内嵌している。スリーブ9は、支持部134の内径側に位置する筒壁部133で支持された筒状部材である。軸部50の他端50b側は、スリーブ9により、回転軸X1に対する傾きが規制された状態で、回転軸X1と同芯に配置されている。
【0030】
スリーブ9の内部には、後記するオイルキャッチ部75で捕捉されたオイルOLが供給される。スリーブ9に供給されたオイルOLは、貫通孔50c内を他端50b側から一端50a側に通流する。
貫通孔50cの一端50aから排出されたオイルOLは、前記した連結部401の連通孔401cから連結部401の外部に排出される。
【0031】
軸部50には、当該軸部50の内部と外部とを連通させる連通孔50dが形成されている。軸部50において連通孔50dは、キャリア44の連結部444がスプライン嵌合した領域と、伝達ギア51との間に開口する。
そのため、貫通孔50c内を通流するオイルOLの一部が、連通孔50dから、軸部50の外径側に排出される。
【0032】
伝達ギア51は、軸部50の他端50b側に設けられている。伝達ギア51は、他端50b側を支持するベアリングB4に隣接している。伝達ギア51は、キャリア44との間に間隔をあけて設けられている。
伝達ギア51の外径R51は、キャリア44の連結部444がスプライン嵌合した領域の外径R50よりも大きい。
【0033】
伝達ギア51の外周には、差動歯車機構6のファイナルギア61(リングギア)が回転伝達可能に噛合している。
図2に示すように、ファイナルギア61は、デフケース60の外周にボルトBで固定されている。伝達シャフト5からファイナルギア61に回転が伝達されると、ファイナルギア61とデフケース60とが、回転軸X2回りに一体回転する。
【0034】
デフケース60は、伝達シャフト5から見て車両後方側に位置している。デフケース60の回転軸X2は、モータ2の回転軸X1に対して平行である。
デフケース60では、回転軸X2方向(図中、車両左右方向)の両側部に、支持筒601、602が設けられている。支持筒601、602は、回転軸X2を所定間隔で囲むと共に、回転軸X2に沿う向きに設けられている。
デフケース60内では、かさ歯車63、63が外挿されたシャフト62が、回転軸X2に直交する向きで設けられている。デフケース60の支持筒601、602は、シャフト62から離れる方向(図中、左右方向)に延びている。
【0035】
支持筒601、602には、ドライブシャフトDA、DBが、回転軸X2方向から挿入されている。デフケース60の内部では、ドライブシャフトDA、DBの先端部の外周に、サイドギア64A、64Bがスプライン嵌合している。
サイドギア64A、64Bは、シャフト62を間に挟んで、対向配置されている。デフケース60内では、サイドギア64A、64Bと、かさ歯車63、63が、互いの歯部を噛合させた状態で組み付けられている。
デフケース60に伝達された回転は、デフケース60と一体に回転するかさ歯車63、63を介して、サイドギア64A、64Bがスプライン嵌合したドライブシャフトDA、DBに伝達される。
【0036】
デフケース60の一方の支持筒601は、サイドカバー13側の支持部136にベアリングB5を介して回転可能に支持されている。他方の支持筒602は、ケース12側の支持部126にベアリングB5を介して回転可能に支持されている。
ケース12とサイドカバー13との間では、回転軸X2と交差する領域にデフケース60が配置される。回転軸X1と交差する領域に、伝達シャフト5と、遊星歯車機構4が、同軸に配置される。
【0037】
図4は、ケース12を説明する図である。
図4では、ケース12をサイドカバー13側から見た状態を模式的に示している。
図5は、ケース12を説明する図である。
図5では、ケース12内に、遊星歯車機構4と伝達シャフト5と壁部材7とを配置した状態を模式的に示している。
図6は、ケース12を説明する図である。
図6では、ケース12内に遊星歯車機構4と伝達シャフト5と壁部材7とデフケース60とファイナルギア61を配置した状態を模式的に示している。
【0038】
なお、
図4から
図6では、接合部121bの位置を判りやすくするために、ケース12におけるサイドカバー13との接合部121bの領域に、交差したハッチングを付して示している。さらに、接合部121bの内側に位置する隔壁部122の領域にも、当該隔壁部122の領域を判りやすくするために、交差したハッチングを付して示している。
【0039】
図4に示すように、ケース12をサイドカバー13側から見ると、略楕円形を成す接合部121bの内側で、隔壁部122とカバー部125とが、回転軸X1を通る水平線HL方向で並んでいる。
隔壁部122は、前記したモータ室Saとの境界壁であり、回転軸X1方向から見ると、回転軸X1を中心とする略円形を成している。
カバー部125は、隔壁部122から見て車両後方側に位置している。カバー部125は、デフケース60およびファイナルギア61の側面を覆う側壁であり、隔壁部122よりも紙面手前側に位置している。
【0040】
カバー部125では、隔壁部122寄りの位置に、貫通孔126aと、この貫通孔126aを囲む支持部126が設けられている。貫通孔126aの中心(回転軸X2)は、回転軸X1を通る水平線HLよりも僅かに下側に位置している。支持部126の紙面手前側には、貫通孔126aよりも大径の段部126bが形成されている。支持部126の段部126bに、ドライブシャフトDBを支持するベアリングB5(
図2)が収容される。
【0041】
図4に示すように、支持部126の回転軸X1側(図中、左側)の領域は、隔壁部122の外周に沿う仮想線Im122を回転軸X1側に越えている。支持部126の回転軸X1側の外周は、環状壁部129の外周側と重なる位置まで及んでいる。
【0042】
環状壁部129は、隔壁部122に設けた開口122aを囲む略筒状に形成されている。環状壁部129の中心は、開口122aの中心を通る回転軸X1に一致する。環状壁部129は、隔壁部122から紙面手前側に突出している。
図3に示すように、環状壁部129の隔壁部122からの高さL129は、支持部126の隔壁部122からの高さL126よりも小さい(L126>L129)。そのため、
図4において環状壁部129は、支持部126よりも紙面奥側に位置している。
【0043】
図3に示すように、環状壁部129の端面129aは、回転軸X1に直交する平坦面である。環状壁部129の端面129aには、遊星歯車機構4のリングギア43が、回転軸X1方向から当接する。回転軸X1方向から見て環状壁部129の内径側に、遊星歯車機構4の主要部(サンギア41、ピニオンギア42、キャリア44)が配置される。
【0044】
図4に示すように、環状壁部129の外径D129は、隔壁部122の外径D122よりも小さい。そのため、環状壁部129の外側に空間的な余裕がある。本実施形態では、この空間を利用して、ボス部128(128A~128E)が設けられている。ボス部128(128A~128E)は、壁部材7をケース12に固定するために設けられている。
【0045】
回転軸X1方向から見て、ボス部128(128A~128E)は、環状壁部129の外周に設けられている。ボス部128(128A~128E)は、回転軸X1周りの周方向に、略等間隔で設けられている。回転軸X1方向から見て、ボス部128(128A~128E)は、隔壁部122の紙面奥側に位置するモータ2とオーバーラップしている(
図2参照)。
回転軸X1方向から見てボス部128(128A~128E)は、環状壁部129の外周側と重なる範囲を持って形成されている。
本実施形態では、合計5つのボス部128(128A~128E)が設けられている。なお、以下の説明においては、ボス部128(128A~128E)を特に区別しない場合には、単純にボス部128とも標記する。
【0046】
本実施形態では、5つのボス部128(128A~128E)のうち、回転軸X1を通る水平線HLと交差する位置に1つのボス部128Eが設けられている。水平線HLの上側に、2つのボス部128A、128Bが設けられている。水平線HLの下側に、2つのボス部128C、128Dが設けられている。また、ボス部128B、128Cは、回転軸X1を通る鉛直線VLよりも車両後方側に位置している。ボス部128A、128D、128Eは、回転軸X1を通る鉛直線VLよりも車両前方側に位置している。
【0047】
ボス部128(128A~128E)は、隔壁部122から紙面手前側に突出している。
図3に示すように、ボス部128の隔壁部122からの高さL128は、支持部126の隔壁部122からの高さL126よりも大きい(L126<L128)。さらに、高さL128は、環状壁部129の隔壁部122からの高さL129よりも大きい(L129<L128)。
そのため、
図4においてボス部128(128A~128E)は、支持部126よりも紙面手前側に位置している。
ボス部128(128A~128E)の端面128aは、回転軸X1に直交する平坦面である。
図3に示すように、ボス部128の端面128aには、壁部材7が、回転軸X1方向から当接する。
ボス部128の端面128aには、ボルト穴128bが開口している。ボルト穴128bには、壁部材7を貫通したボルトBが螺入する。
【0048】
図7および
図8は、壁部材7を説明する図である。
図7は、壁部材7の正面図である。この
図7では、壁部材7のケース12への設置状態を基準として、壁部材7をサイドカバー13側から見た状態が示されている。
図8は、壁部材7の裏面図である。この
図8では、壁部材7のケース12への設置状態を基準として、壁部材7をモータ2側から見た状態が示されている。
図9は、オイルキャッチ部75を説明する断面図である。
図9では、
図5におけるA-A線に沿ってケース12を切断した断面をサイドカバー13と共に示している。
【0049】
図7に示すように、壁部材7は、板状の基部70を有している。基部70の中央部には、開口71が設けられている。開口71は、基部70を厚み方向(図中、紙面手前奥方向)に貫通している。開口71は、前記した伝達シャフト5(伝達ギア51)を挿通可能、かつ遊星歯車機構4のピニオン軸45の一部を紙面手前側に露出可能とするために設けられている。
【0050】
基部70における外周側には、5つの挿通孔72(72A~72E)が設けられている。挿通孔72(72A~72E)は、開口71の中心C周りの周方向に間隔を開けて設けられている。挿通孔72(72A~72E)は、中心Cを基準とした仮想円Im1上に、挿通孔72(72A~72E)の中心が位置するように設けられている。
【0051】
挿通孔72(72A~72E)は、壁部材7をケース12に組み付けた際に、前記したボス部128(128A~128E)のボルト穴128bと整合する位置に配置される。そして、挿通孔72(72A~72E)を挿通したボルトB(
図3参照)を、ボス部128(128A~128E)に螺入することで、壁部材7がケース12に取り付けられる。なお、以下の説明においては、挿通孔72A~72Eを特に区別しない場合には、挿通孔72とも標記する。
【0052】
基部70では、中心C周りの周方向で隣り合う挿通孔72、72の間の領域が、仮想円Im1よりも中心C側に窪んでいる。この中心C側に窪んだ領域の外周70cは、隣り合う挿通孔72、72の中間点70c1が、最も中心C側に位置するように、弧状に窪んでいる。
基部70は、隣り合う挿通孔72、72の間の領域を5箇所有している。これらのうちの1箇所のみが、外周70c’の形状が、他の4箇所の外周70cの形状と異なる。
挿通孔72Bと挿通孔72Cの間の領域の外周70c’は、挿通孔72Bと挿通孔72Cの間の中間点70c1’が、他の領域の中間点70c1よりも中心C側に位置している。
基部70では、挿通孔72Aと挿通孔72Bとの間の領域に、後記するオイルキャッチ部75が設けられている。
【0053】
図8に示すように、基部70のモータ2側の面70bには、筒壁部76と、5つのボス部73(73A~73E)が設けられている。
ボス部73(73A~73E)は、前記した挿通孔72(72A~72E)を囲む筒状の部位である。基部70から紙面手前側に突出している。
なお、以下の説明においては、ボス部73A~73Eを特に区別しない場合には、ボス部73とも標記する。
【0054】
図8に示すように、基部70におけるモータ2側の面70bでは、開口71を囲む筒壁部76が設けられている。筒壁部76は、基部70から紙面手前側に突出して設けられている。
【0055】
筒壁部76では、直線Lm2と直線Lm3との間に、切欠部765が形成されている。切欠部765は、筒壁部76における直線Lm2と直線Lm3との間の領域を、平行に切り欠いて形成されている。筒壁部76では、切欠部765において、一方の端部76aと、他方の端部76bが、中心C周りの周方向に間隔CL1を空けて対向している。
切欠部765の領域では、基部70における隣り合う挿通孔72、72の中間点70c1’が位置している。
切欠部765は、壁部材7をケース12に取り付けた際に、デフケース60との干渉を避けるために設けられている。
【0056】
筒壁部76の内周側には、複数の凹溝761が設けられている。複数の凹溝761は、中心C周りの周方向に沿って等間隔で設けられている。これら凹溝761には、前記した接続部材8の嵌合部82に設けた突起(図示せず)が係合して、接続部材8と壁部材7との相対回転を規制する。
【0057】
図5に示すように、壁部材7をケース12側のボス部128に取り付けると、壁部材7の紙面奥側に遊星歯車機構4が配置される。さらに、壁部材7の紙面手前側に、伝達シャフト5の伝達ギア51が配置される。回転軸X1方向から見ると、伝達ギア51と、壁部材7と、遊星歯車機構4と、がオーバーラップして配置される。
【0058】
図6に示すように、ファイナルギア61が取り付けられたデフケース60を、ケース12内に配置すると、ファイナルギア61と伝達ギア51とが回転伝達可能に噛合する。
ここで、ケース12とサイドカバー13との間の空間の下部には、オイルOLが貯留される。動力伝達装置1を搭載した車両Vの走行時には、回転するファイナルギア61で、貯留されたオイルOLが掻き上げられる。掻き上げられたオイルOLは、ケース12内を飛散して、動力伝達機構の構成要素を潤滑、冷却する。
【0059】
図6に示すように、ケース12内の第1ギア室Sb1では、壁部材7より紙面手前側に、伝達シャフト5と一体に形成された伝達ギア51が位置している。壁部材7が位置する第1ギア室Sb1は、モータ2の外径と略整合する大きさで形成されている。そのため、壁部材7よりも紙面手前では、伝達ギア51の周囲に空間的な余裕がある。
【0060】
本実施形態では、伝達ギア51の外径側に、ファイナルギア61が掻き上げたオイルOLを捕捉するためのオイルキャッチ部75を、壁部材7を利用して設けている。
壁部材7は、伝達ギア51よりも紙面奥側に位置しており、壁部材7の紙面手前側であって、伝達ギア51の上側にオイルキャッチ部75を配置している。
【0061】
図7に示すように、壁部材7では、ケース12への取り付け後にサイドカバー13側に配置される面70a(紙面、手前側の面)に、オイルキャッチ部75が設けられている。
基部70においてオイルキャッチ部75は、直線Lm1と直線Lm2との間の領域に設けられている。
ここで、直線Lm1は、壁部材7の中心Cと挿通孔72Aとを結ぶ直線である。直線Lm2は、壁部材7の中心Cと挿通孔72Bとを結ぶ直線である。直線Lm1、Lm2は、円形の開口71の直径線に沿う直線である。
【0062】
オイルキャッチ部75は、開口71の周縁に沿う弧状の底壁部751を有する。中心C周りの周方向における底壁部751の一端と他端には、側壁部752と側壁部753が接続している。
底壁部751は、仮想円Im2に沿う弧状を成している。仮想円Im2は、中心Cを基準とする仮想円である、仮想円Im2は、前記した挿通孔72(72A~72E)を結ぶ仮想円Im1よりも小径である(Im2<Im1)。
【0063】
側壁部752は、直線Lm1に沿って、中心Cから離れる方向に直線状に延びている。側壁部752の先端752aは、挿通孔72Aの近傍に位置している。
【0064】
側壁部753は、仮想円Im3に沿って、中心Cから離れる方向に弧状に延びている。側壁部753は、底壁部751から外径側に向かうにつれて側壁部752から離れるように湾曲している。
側壁部753の先端753aは、基部70の外周70cを外側に越えている。側壁部753の先端753aは、仮想円Im1よりも外径側に位置している。
仮想円Im3は、ケース12内に配置したファイナルギア61の外周に沿う仮想円である(
図6参照)。側壁部753は、ファイナルギア61との干渉を避けるために、弧状に形成されている。
【0065】
側壁部752と底壁部751と側壁部753は、直列に連なった連続壁である。側壁部752と底壁部751と側壁部753は、オイルキャッチ部75を形成する延出壁である。オイルキャッチ部75を構成する各壁部(側壁部752、底壁部751、側壁部753)は、紙面手前側に延出している。
【0066】
図5に示すように、壁部材7をケース12に固定すると、オイルキャッチ部75が、回転軸X1を通る鉛直線VLと交差する位置に配置される。
さらに、
図9に示すように、壁部材7から見てサイドカバー13とは反対側(図中、左側)には、遊星歯車機構4が設けられている。本実施形態では、遊星歯車機構4のリングギア43が、接続部材8を介して、壁部材7に相対回転不能に連結されている。回転軸X1方向から見てリングギア43は、オイルキャッチ部75と環状壁部129に、オーバーラップしている。
【0067】
図6に示すように、オイルキャッチ部75は、伝達ギア51の上側で、鉛直線VLを車両前方側から車両後方側に横切る範囲に配置される。この状態において、側壁部753は、ファイナルギア61の外周に隙間を空けて配置される。側壁部753の先端753aは、ケース12の接合部121bの内周に、隙間Sを開けて対向配置される。
【0068】
動力伝達装置1を搭載した車両Vの前進走行時には、ファイナルギア61は、
図6における反時計回り方向CCWに回転する。回転するファイナルギア61は、ケース12の下部に貯留されたオイルOLを掻き上げる。掻き上げられたオイルOLは、ケース12内の上側の隙間Sを通ってオイルキャッチ部75側に流入して、オイルキャッチ部75に捕捉されるようになっている。
【0069】
図9に示すように、オイルキャッチ部75は、回転軸X1方向における壁部材7とサイドカバー13の底壁部130との間に、オイルOLの捕捉空間Rを形成する。
回転軸X1の径方向から見ると、オイルOLの捕捉空間Rは、ファイナルギア61とオーバーラップしている。
【0070】
図9の拡大領域に示すように、オイルキャッチ部75を構成する各壁部(底壁部751、側壁部752、753)は、基部70からサイドカバー13側に延びている。オイルキャッチ部75を構成する各壁部(底壁部751、側壁部752、753)は、サイドカバー13の底壁部130に、回転軸X1方向から当接している。
オイルキャッチ部75の回転軸X1方向の長さL75は、ファイナルギア61の回転軸X1方向の幅に相当する長さL61よりも長い(L75>L61)。
ファイナルギア61が掻き上げたオイルOLのうち、回転軸X1方向(
図9における左右方向)に飛散したオイルOLも、捕捉空間Rに捕捉できるようにしている。
【0071】
回転軸X1に沿う断面視において底壁部751は、基部70から離れてサイドカバー13側(図中、右側)に向かうにつれて、鉛直線VL方向の厚みW751が薄くなる先細り形状で形成されている。
具体的には、底壁部751の下面751bは、先端部751a側に向かうにつれて、回転軸X1からの距離T2が大きくなる向きに傾斜している。
本実施形態では、壁部材7を鋳造により作製している。オイルキャッチ部75は、基部70と一体に形成されている。底壁部751を、一対の鋳造型の接離方向に沿って形成する場合には、底壁部751の下面751bを傾斜させることで、一対の鋳造型の離間をスムーズに行える。
【0072】
また、底壁部751の上面751cは、先端部751a側に向かうにつれて、回転軸X1からの距離T1が小さくなる向きに傾斜している。そのため、捕捉空間R内のオイルOLは、サイドカバー13側に移動するようになっている。
【0073】
図10は、サイドカバー13を説明する図である。
図10では、サイドカバー13をケース12側から見た状態を模式的に示している。
図11および
図12は、サイドカバー13の要部拡大図である。
なお、
図10および
図11では、サイドカバー13におけるケース12との接合部131bの領域に、交差したハッチングを付して示している。さらに、接合部131bの内側に位置する支持部134と弧状壁138と突出壁部139の領域にも、位置を判りやすくするために、交差したハッチングを付して示している。
なお、
図11では、サイドカバー13をケース12に組み付けた際のオイルキャッチ部75の配置を説明するために、オイルキャッチ部75を仮想線で示している。
図12では、
図11におけるA-A線に沿ってサイドカバー13を切断した断面を、ケース12の断面と共に模式的に示している。
図13は、オイルキャッチ部75を説明する図である。
【0074】
図10に示すように、サイドカバー13をケース12側から見ると、略楕円形を成す周壁部131(接合部131b)の内側に底壁部130が位置している。
底壁部130では、回転軸X1を囲む円筒状の支持部134が設けられている。さらに、回転軸X2と交差する領域に回転軸X2を囲む円筒状の支持部136が設けられている。
支持部134と支持部136は、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした水平線HL方向に並んでいる。
車両後方側に位置する支持部136の中心(回転軸X2)は、車両前方側に位置する支持部134の中心(回転軸X1)を通る水平線HLよりも僅かに下側に位置している。
【0075】
支持部134は、回転軸X1を囲むリング状を成している。支持部134は、底壁部130から紙面手前側に突出している。支持部134には、段部134bが形成されている。支持部134の段部134bの内周には、ベアリングB4(
図12参照)が収容される。
図12に示すように、支持部134は、底壁部130の外側面130bと内側面130aから、それぞれ回転軸X1方向に膨出している。支持部134の外側面134cは、底壁部130の外側面130bよりも、外側に位置している。
【0076】
図10に示すように、底壁部130では、支持部134の下側に、弧状壁138が設けられている
弧状壁138は、ファイナルギア61の外周を囲む仮想円Im3に沿う弧状に形成されている。弧状壁138の一端138aは、支持部134の外周に隙間S2をあけて対向している。
弧状壁138の他端138bは、周壁部131(
図9参照)の内周に隙間S3をあけて対向している。
図9に示すように、弧状壁138は、サイドカバー13内でケース12側に突出して設けられている。ケース12とサイドカバー13とを組み付けた状態を回転軸X1の径方向から見ると、弧状壁138の先端138cは、壁部材7の近傍に位置している。この状態において弧状壁138は、ファイナルギア61とオーバーラップしている。
【0077】
図11において仮想線で示すように、サイドカバー13とケース12とを接合すると、オイルキャッチ部75は、支持部134の上側で、回転軸X1を通る鉛直線VLを車両前後方向に横切る範囲に配置される。
本実施形態では、サイドカバー13におけるケース12との対向面に、突出壁部139とガイド溝135が設けられている。
【0078】
突出壁部139は、サイドカバー13の周壁部131と底壁部130とに跨がって設けられている。回転軸X1方向から見て突出壁部139は、周壁部131の内周から、直線Lm1に沿って回転軸X1側に延びている。突出壁部139の長さL139は、ケース12にサイドカバー13を組み付けた際に、前記したオイルキャッチ部75の側壁部752の先端752aに、突出壁部139の先端139aが接触する長さに設定されている。なお、側壁部752の先端752aは、必ずしも、突出壁部139の先端139aに接触している必要はなく、オイルOLの通過を阻害できる程度の隙間があっても良い。
【0079】
ここで、オイルキャッチ部75の側壁部753は、ケース12とサイドカバー13とを組み付けた際に、周壁部131の内周との間に隙間Sを空けて配置される。この隙間Sは、ファイナルギア61が掻き上げたオイルOLの流入口であり、オイルキャッチ部75内の捕捉空間Rには、側壁部753側からオイルOLが流入する。
突出壁部139は、捕捉空間RにおけるオイルOLの流入口とは反対側に位置している。突出壁部139と側壁部752は、捕捉空間Rに流入したオイルOLの移動経路を横切って配置されている。そのため、オイルキャッチ部75に流入したオイルOLが、突出壁部139と側壁部752とに衝突して、捕捉空間R内に貯留されるようになっている。
【0080】
すなわち、突出壁部139は、側壁部752と共に、ファイナルギア61が掻き上げたオイルOLを、オイルキャッチ部75とサイドカバー13との間に形成される捕捉空間Rに捕捉するために設けられている。
【0081】
ガイド溝135は、捕捉空間Rに捕捉されたオイルOLを回転軸X1側(内径側)に誘導するために設けられている。
ガイド溝135は、紙面奥側に窪んだ凹溝である。
図12に示すように、サイドカバー13では、底壁部130におけるガイド溝135が設けられた領域は、底壁部130の外側面130bから回転軸X1方向の外側に膨出している。この外側に膨出した膨出領域135’は、外側面130bからの高さh135が、支持部134の外側面130bからの高さh134よりも低い。すなわち、支持部134の高さh134の範囲内に収まるように、膨出領域135’が形成されている。ハウジングHSにおける既存の突出した領域(支持部134)の高さ範囲内に収めることで、ガイド溝135に起因する膨出領域135’が、ハウジングHSの周囲に位置する車両V側の部品などと干渉しないようにしている。
【0082】
図10に示すように、ガイド溝135は、回転軸X1を通る直線Lpに沿う直線状に設けられている。直線Lpは、車両後方側(図中、左側)に向かうにつれて、水平線HLから離れる向きに傾斜した直線である。
【0083】
図11に示すように、ガイド溝135は、仮想円Im4と交差する位置から、支持部134を径方向に横切って、筒壁部133の内周133aに及ぶ範囲に形成されている。支持部134と筒壁部133におけるガイド溝135と交差する領域は切り欠かれており、紙面手前側に開口している。
ガイド溝135の下端135bは筒壁部133の内周133aに開口している。ガイド溝135の上端135aが位置する仮想円Im4は、突出壁部139の先端139aを通ると共に、回転軸X1を中心とした円である。
【0084】
図11に示すように、本実施形態では、ケース12とサイドカバー13とを組み付けた際に、ガイド溝135の上端135aが、オイルキャッチ部75が形成するオイルOLの捕捉空間R内で、側壁部753に近接配置されるようになっている。
【0085】
図11に示すように、オイルキャッチ部75の底壁部751は、側壁部753との接続部751c2のほうが、側壁部752との接続部751c1よりも下側に位置している。接続部751c2は、接続部751c1よりも、鉛直線VL方向に高さHだけ下側に位置している。
そのため、オイルキャッチ部75の捕捉空間Rからオイルを排出させると、接続部751c2側に最後までオイルOLが留まるようになっている。ガイド溝135の上端135a側を、接続部751c2側の側壁部753に近接配置することで、捕捉空間R内に捕捉されたオイルOLの多くを、ガイド溝135を通じて回転軸X1側に供給できるようになっている。
【0086】
ここで、
図12の拡大領域に示すように、ガイド溝135は、筒壁部133の内周133aに開口している。筒壁部133に内嵌したスリーブ9は、円筒状の基部90の一端90a側に、スリット91が設けられている。スリット91は、基部90の内部と外部とを連通させる切欠きである。スリーブ9は、スリット91と、ガイド溝135の開口との位置を合わせて設けられている。
【0087】
そのため、オイルキャッチ部75の捕捉空間Rに捕捉されたオイルOLは、自重により、ガイド溝135内を回転軸X1側に移動して、最終的にスリーブ9内に流入するようになっている。
【0088】
かかる構成の動力伝達装置1の作用を説明する。
図2に示すように、モータ2の駆動によりモータシャフト20が回転すると、モータシャフト20の出力回転は、遊星歯車機構4のサンギア41に入力される。
遊星歯車機構4のサンギア41に入力された回転は、減速されたのち、キャリア44から伝達シャフト5へ伝達される。
図2に示すように、伝達シャフト5に伝達された回転は、伝達ギア51とファイナルギア61とを介して、差動歯車機構6に伝達されたのち、ドライブシャフトDA、DBを介して左右の駆動輪W、Wに伝達されて、車両Vが走行する。
【0089】
ここで、ケース12とサイドカバー13との間の空間であるギア室Sb(第1ギア室Sb1、第2ギア室Sb2)では、動力伝達機構の潤滑や冷却に用いられるオイルOLが、下部に貯留されている(
図6参照)。
貯留されたオイルOLは、動力伝達装置1を搭載した車両Vの走行時に、デフケース60と一体に回転するファイナルギア61により、掻き上げられる。
【0090】
図6に示すように、第1ギア室Sb1の上部には、ファイナルギア61に隣接する位置に、オイルキャッチ部75が設けられている。
そして、オイルキャッチ部75は、壁部材7とサイドカバー13の底壁部130との間に、オイルOLの捕捉空間Rを形成している(
図9参照)。
そして、
図13に示すように、捕捉空間Rを形成するオイルキャッチ部75では、ファイナルギア61側に位置する側壁部753が、周壁部131との間に隙間Sを空けて配置されている。
そのため、ファイナルギア61により掻き上げられたオイルOLの一部が、隙間Sを通って、捕捉空間Rに流入して、オイルキャッチ部75の上側に貯留される。
【0091】
図13に示すように、捕捉空間R内には、ガイド溝135の上端135aが位置している。サイドカバー13の底壁部130においてガイド溝135は、捕捉空間Rの領域から、鉛直線VL方向の斜め下側に位置する筒壁部133まで直線状に延びている。
そのため、オイルキャッチ部75の捕捉空間Rに捕捉されたオイルOLは、自重により、ガイド溝135内を筒壁部133が位置する回転軸X1側に移動する。
前記したように筒壁部133には、伝達シャフト5の貫通孔50c(
図9参照)に内嵌したスリーブ9が挿入されている。そして、
図12に示すように、ガイド溝135は、スリーブ9に設けたスリット91を介して、スリーブ9の内部と連絡している。
そのため、捕捉空間Rからガイド溝135に流入したオイルOLは、スリット91を通って、伝達シャフト5の貫通孔50c内に供給される。
【0092】
図9に示すように、伝達シャフト5には、軸部50の内部と外部とを連通させる連通孔50dが形成されている。貫通孔50c内に供給されたオイルOLの一部は、貫通孔50cから伝達シャフト5の径方向外側に排出されて、遊星歯車機構4を潤滑する。
さらに、軸部50の一端50aと、モータシャフト20の先端20aとの間の空間Rxに排出されたオイルOLは、連結部401に設けた連通孔401cから、連結部401の外部に排出される。これにより、連結部401の外周を支持するベアリングB2とベアリングB3が潤滑される。
このように、ファイナルギア61が掻き上げたオイルOLを、オイルキャッチ部75で捕捉して、ファイナルギア61から回転軸X1方向に離れた位置にあるベアリングB2、B3や、遊星歯車機構4まで供給するので、これらを適切に潤滑、冷却できる。
【0093】
動力伝達装置1では、ケース12に固定された壁部材7と、サイドカバー13の底壁部130との間に伝達ギア51が位置している。伝達ギア51は、当該伝達ギア51が噛合するファイナルギア61よりも小径である。そのため、壁部材7と底壁部130との間では、伝達ギア51の周囲に空間的な余裕がある。
そこで、壁部材7から底壁部130側に延出する延出壁であるオイルキャッチ部75を、壁部材7と一体に形成して、伝達ギア51の上方で、ファイナルギア61との干渉を避けた位置に配置した。
これにより、ギアなどが配置されていない余剰の空間に、ファイナルギア61が掻き上げたオイルOLを捕捉する捕捉空間Rを、動力伝達装置1を回転軸X1方向に大型化させることなく形成した。よって、動力伝達装置1を回転軸X1方向に拡大させることなく、オイルキャッチ部75が設けられる。
【0094】
さらに、回転軸X1方向から見てオイルキャッチ部75は、伝達ギア51の外径側で、遊星歯車機構4のリングギア43と重なる関係で設けられている。
すなわち、回転軸X1方向から見て、遊星歯車機構4を収容する第1ギア室Sb1の径方向の範囲内に、オイルキャッチ部75を設けている。よって、動力伝達装置1を径方向に拡大させることなく、オイルキャッチ部75が設けられている。
【0095】
また、サイドカバー13の底壁部130においてガイド溝135を、回転軸X1方向から見てオイルキャッチ部75の底壁部751を径方向に横切る範囲に設けている。
オイルキャッチ部75の捕捉空間Rに捕捉されたオイルOLを、捕捉空間Rの外部に誘導できる。例えば、オイルOLの誘導先を、伝達シャフト5内の軸内油路である貫通孔50cとすることで、伝達シャフト5周りに位置する動力伝達機構3の構成部品を、内径側から適切に、冷却または潤滑できる。
【0096】
さらに、ファイナルギア61が掻き上げたオイルOLが、捕捉空間Rに捕捉される。そのため、動力伝達装置1を搭載した車両Vの走行時に、ケース12とサイドカバー13との間のギア室Sb内に貯留されたオイルOLの高さ(オイルレベル)を下げることができる。これにより、例えばデフケース60と一体に回転するファイナルギア61のフリクションを低減できるので、モータ2での電力消費の抑制が期待できる。
【0097】
前記した実施形態では、
図9に示すように、ケース12の内側に収容される壁部材7にオイルキャッチ部75が設けられている。そして、オイルキャッチ部75を構成する各壁部(側壁部752、底壁部751、側壁部753)を、サイドカバー13内に突出させて、サイドカバー13の底壁部130に当接させることで、捕捉空間Rを形成する場合を例示した。
【0098】
ここで、ケース12に固定された基部70に、サイドカバー13側に突出する第1壁部(リブ)を設けると共に、サイドカバー13の底壁部130に、基部70側に突出する第2壁部(リブ)を設けて、第1壁部と第2壁部とを回転軸X1方向で当接させることで、オイルキャッチ部に相当するものを形成することが考えられる。
サイドカバー13や、基部70を持つ壁部材7は、鋳造により作成されるので、第1壁部と第2壁部とを、隙間なく当接させるためには、高い寸法精度が要求される。そのため、作製コストの上昇が懸念される。
これに対して本願では、オイルキャッチ部75を構成する各壁部(側壁部752、底壁部751、側壁部753)を、サイドカバー13の底壁部130に当接させることで、捕捉空間Rを形成している。そして、底壁部130との間に隙間があっても、この隙間から漏れ出すオイルの多くは、底壁部130に沿って、支持部134側の下方に移動するので、伝達シャフト5の軸内油路である貫通孔50cに、少なくとも一部を回収できる。さらに、底壁部130にガイド溝135が開口しているので、底壁部130との間に隙間よりも、ガイド溝135の方に、貯留されたオイルOLの多くを誘導できる。よって、第1壁部と第2壁部とを回転軸X1方向で当接させる場合に対して、十分な優位性を持っている。
【0099】
さらに、
図5に示すように、壁部材7は、回転軸X1周りの周方向に間隔を空けて設けた5か所でボルトBによりケース12に固定されている。そのため、壁部材7はケース12に対して強固に固定されており、壁部材7は振動しにくくなっている。
そのため、
図14に示すように、壁部材7の振動に起因して、オイルキャッチ部75の側壁部753がファイナルギア61に干渉することを防ぐことができる。
【0100】
以下に、本発明のある態様における動力伝達装置1(装置)は、以下の構成を有する。
(1)動力伝達装置1(装置)は、
サイドカバー13(第1のケース)と、
内部に遊星歯車機構4を収容するケース12(第2のケース)と、
サイドカバー13と、遊星歯車機構4のリングギア43(ギア)との間に配置されると共に、ケース12に取り付けられた壁部材7(壁部)と、
遊星歯車機構4の回転軸X1(リングギア43の中心軸)に沿って、壁部材7からサイドカバー13側に延出すると共に、壁部材7とサイドカバー13の底壁部130との間にオイルキャッチ部75を形成する延出壁(底壁部751、側壁部752、753)と、を有する。
回転軸X1方向から見てオイルキャッチ部75は、リングギア43と重なる範囲に形成される。
【0101】
リングギア43は、回転軸X1方向から見たときに、遊星歯車機構4の最外周に位置している。このリングギア43と重なるようにオイルキャッチ部75を設けることで、オイルキャッチ部75をリングギア43の外径側に設ける場合に比べて、動力伝達装置1の径方向への大型化を抑制できる。
【0102】
(2)回転軸X1方向から見てサイドカバー13には、オイルキャッチ部75と重なる位置にガイド溝135が設けられている。
【0103】
例えば、回転軸X1方向から見てガイド溝135が、水平線HLに対して傾斜した直線Lpに沿う向きに設けられており、ガイド溝135の上端135aが、オイルキャッチ部75内に位置し、下端135bは、オイルキャッチ部75外に設けられている場合、オイルキャッチ部75内のオイルOLを、ガイド溝135を利用して、オイルキャッチ部75の外に誘導できる。
オイルOLの誘導先を適宜設定することで、動力伝達装置1内の所望の部位にオイルOLを供給して、潤滑などを行うことができる。
【0104】
(3)延出壁(底壁部751、側壁部752、753)のうち、オイルキャッチ部75の底となる領域(底壁部751)の上面751cは、サイドカバー13側の先端部751aのほうが、壁部材7の基部70側よりも鉛直線VL方向下側に位置する。
【0105】
オイルキャッチ部75を構成する延出壁(底壁部751、側壁部752、753)のうちの底壁部751は、オイルキャッチ部75の底に相当し、鉛直線VL方向の下側に位置している。
上記のように構成すると、底壁部751の上面751cが、サイドカバー13の底壁部130側に向かうにつれて、鉛直線VL方向の高さが低くなる向きに傾斜する傾斜面となる。よって、オイルキャッチ部75に捕捉されたオイルOLは、自重により、底壁部751の上面751cに沿って、ガイド溝135が設けられたサイドカバー13の底壁部130側に移動する。
これにより、オイルキャッチ部75内のオイルOLを、ガイド溝135側に誘導できる。
【0106】
(4)オイルキャッチ部75の底となる領域(底壁部751)の下面751bは、サイドカバー13側の方が、壁部材7側よりも上側に位置する傾斜面である。
【0107】
底壁部751の下面751bは、サイドカバー13側に向かうにつれて、回転軸X1からの距離T2が長くなる向きで傾斜した傾斜面であるので、オイルキャッチ部75の底壁部751には、抜き勾配が形成される。オイルキャッチ部75を備える壁部材7を鋳造により作製するに当たり、底壁部751を、一対の鋳造型の接離方向に沿って形成する場合には、底壁部751の下面751bを傾斜させることで、一対の鋳造型の離間をスムーズに行える。これにより、壁部材7は鋳造し易いものとなる。
【0108】
(5)サイドカバー13には、回転軸X1(中心軸)に平行な回転軸X2回りに回転するファイナルギア61(リングギア)が収容されている。
回転軸X1の径方向から見て、オイルキャッチ部75は、ファイナルギア61とオーバーラップする位置に設けられている。
オイルキャッチ部75の回転軸X1方向の長さL75は、ファイナルギア61の幅方向に沿う回転軸X1方向の長さL61よりも長い。
【0109】
回転軸X2回りに回転するファイナルギア61は、回転軸X2の径方向だけでなく、回転軸X2方向にも、掻き上げたオイルOLを飛散させる。
上記のように構成すると、ファイナルギア61が掻き上げたオイルOLのうち、回転軸X2(回転軸X1)方向に飛散したオイルOLも、捕捉空間Rに捕捉できる。
これにより、オイルキャッチ部75は、ファイナルギア61が掻き上げたオイルOLを効率よく捕捉できる。
【0110】
(6)サイドカバー13には、回転軸X1(中心軸)周りに回転すると共に、ファイナルギア61と噛合する伝達ギア51がさらに収容されている。
伝達ギア51を有する伝達シャフト5(シャフト)は、油路となる貫通孔50cを内部に有している。
ガイド溝135は、オイルキャッチ部75と貫通孔50cとを連絡させる。
【0111】
このように構成すると、オイルキャッチ部75内の捕捉空間Rに捕捉したオイルOLを、伝達シャフト5の軸内油路である貫通孔50cに誘導できる。
伝達シャフト5は、遊星歯車機構4の内径側に及んでいるので、貫通孔50cに誘導したオイルOLを、遊星歯車機構4の潤滑や冷却に用いることができる。
【0112】
(7)回転軸X1(中心軸)方向から見てケース12では、壁部材7との締結部であるボス部128(128A~128E)が、回転軸X1回りの周方向に複数設けられている(
図4参照)。
回転軸X1(中心軸)方向から見て、ボス部128(128A~128E)は、リングギア43(ギア)が回転軸X1方向から当接する環状壁部129(当接壁)と、回転軸X1の径方向で重なる範囲を持って設けられている。
【0113】
このように構成すると、ボス部128(128A~128E)を、環状壁部129から離れて設ける場合に比べて、動力伝達装置1の径方向への大型化を抑制できる。
また、壁部材7のボルトBによる締結点が、回転軸X1回りの周方向に間隔を開けて設けられているので、ケース12における壁部材7の支持安定性が向上する。
そして、ボス部128(128A~128E)と、環状壁部129(壁部)とが一体的に形成されているので、ケース12における壁部材7の支持安定性がいっそう向上する。
これにより、壁部材7の振動や位置ずれをより確実に抑えることができる。壁部材7が振動すると、壁部材7に一体に形成したオイルキャッチ部75の側壁部753が、ファイナルギア61に干渉する可能性が生じる。
ケース12における壁部材7の支持安定性を確保して、壁部材7の振動や位置ずれを抑えることができるので、かかる事態の発生を好適に防止できる。
【0114】
前記した実施形態では、オイルキャッチ部75の底壁部751が、先端部751a側に向かうにつれて、回転軸X1との距離T1が小さくなる向きに傾斜している場合を例示した(
図9参照)。
オイルキャッチ部75の底壁部751は、先端部751a側にオイルOLを移動させることができれば、
図9に例示した態様にのみ限定されない。例えば、基部70から先端部751aに向かうにつれて回転軸X1との距離T1が段階的に小さくなる階段状であっても良い。
【0115】
本実施形態では、本発明のある態様における車両に搭載される動力伝達装置1の例を説明したが、この態様に限定されない。本発明は、車両以外にも適用することができる。
【0116】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 :動力伝達装置(装置)
7 :壁部材(壁部)
12 :ケース(第2のケース)
128(128A~128E) :ボス部(締結部)
129 :環状壁部(当接壁)
13 :サイドカバー(第1のケース)
135 :ガイド溝
44 :リングギア(ギア)
50c :貫通孔(油路)
50e :油孔
51 :伝達ギア
61 :ファイナルギア(リングギア)
75 :オイルキャッチ部
751 :底壁部
751a :先端部
751b :基端部
751c :上面
751d :下面
752 :側壁部
753 :側壁部
B :ボルト(締結部材)
HL :水平線
VL :鉛直線
X1、X2 :回転軸