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特開2024-67556特許価値評価装置、特許価値評価システム及び特許価値評価方法
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  • 特開-特許価値評価装置、特許価値評価システム及び特許価値評価方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067556
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】特許価値評価装置、特許価値評価システム及び特許価値評価方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240510BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177737
(22)【出願日】2022-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】522177961
【氏名又は名称】株式会社FineMetrics
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100113077
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 省吾
(72)【発明者】
【氏名】本橋 永至
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 誠司
(72)【発明者】
【氏名】村上 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 省吾
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC33
5L050CC33
(57)【要約】
【課題】 マーケットアプローチによる特許の金銭的価値評価を人手によらず、AIを活用して簡便かつ客観的に実現する。
【解決手段】 本発明による特許価値評価装置は、特許侵害訴訟情報から取得した金銭的価値が紐づいた複数の比較用特許情報を格納したデータベース1と、評価対象特許のテキスト情報を取得するテキスト情報取得手段3と、上記評価対象特許のテキスト情報と比較用特許情報とを比較し、評価対象特許に最も類似する比較用特許情報を抽出し、当該抽出された比較用特許情報に紐づいた金銭的価値を参照して評価対象特許の金銭的価値を決定する金銭的価値決定手段2を備えたことを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金銭的価値が紐づいた複数の比較用特許情報を格納したデータベースと、評価対象特許のテキスト情報取得手段と、前記評価対象特許のテキスト情報と前記複数の比較用特許情報とを比較し、前記評価対象特許に最も類似する前記比較用特許情報を抽出し、前記抽出された比較用特許情報に紐づいた金銭的価値を参照して前記評価対象特許の金銭的価値を決定する金銭的価値決定手段と、を備えたことを特徴とする特許価値評価装置。
【請求項2】
前記金銭的価値が紐づいた複数の比較用特許情報は、前記比較用特許情報に関連する侵害訴訟情報から取得したことを特徴とする請求項1に記載の特許価値評価装置。
【請求項3】
前記金銭的価値は、訴訟記録から取得した損害賠償額であることを特徴とする請求項2に記載の特許価値評価装置。
【請求項4】
前記比較用特許情報は、前記侵害訴訟情報から抽出した特許1件毎の前記金銭的価値と前記特許の特許公報に含まれる1又は複数のパラメータ群の対からなることを特徴とする請求項3に記載の特許価値評価装置。
【請求項5】
前記金銭的価値決定手段は、前記評価対象特許に含まれるパラメータと前記比較用特許情報のパラメータとを比較することにより、前記評価対象特許に最も類似する前記比較用特許情報を抽出し、前記抽出された比較用特許情報に対応する金銭的価値を参照して前記評価対象特許の金銭的価値を決定することを特徴とする請求項4に記載の特許価値評価装置。
【請求項6】
前記比較用特許情報のパラメータは、前記比較用特許の技術分類情報と技術キーワードを含むことを特徴とする請求項5に記載の特許価値評価装置。
【請求項7】
請求項1に記載の前記データベース及び前記金銭的価値決定手段はクラウドサーバーに格納され、前記評価対象特許のテキスト情報はインターネット回線を介して外部から取得され、前記評価対象特許の金銭的価値は前記インターネット回線を介して外部に出力されることを特徴とする特許価値評価システム。
【請求項8】
評価対象特許のテキストデータを読み取る工程と、前記評価対象特許のテキストデータから特許情報を抽出する工程と、金銭的価値が紐づいた複数の比較用特許情報をデータベースから読み出す工程と、前記複数の比較用特許情報から前記評価対象特許に最も類似する比較用特許情報を選択する工程と、前記選択された比較用特許情報に紐づけられた金銭的価値を参照して前記評価対象特許の金銭的価値を設定する工程、とを含む特許価値評価方法。
【請求項9】
前記金銭的価値が紐づいた複数の比較用特許情報は、前記比較用特許情報に関連する侵害訴訟情報から取得されたことを特徴とする請求項8に記載の特許価値評価方法。
【請求項10】
前記金銭的価値は、訴訟記録から取得した損害賠償額であることを特徴とする請求項9に記載の特許価値評価方法。
【請求項11】
前記比較用特許情報は、前記侵害訴訟情報から抽出した特許1件毎の前記金銭的価値と前記特許の特許公報に含まれる1又は複数のパラメータ群の対からなることを特徴とする請求項10に記載の特許価値評価方法。
【請求項12】
前記評価対象特許の特許技術分類を決定した後に、前記特許技術分類に対応する複数の比較用特許情報をデータベースから読み出す工程と、をさらに備えたことを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれか1項に記載の特許価値評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許公報から特許の価値を評価する評価装置、評価システム及び評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許価値を評価する装置、システムとして、例えば特許文献1に記載の特許評価装置や特許文献2に記載の評価システムがあった。これらは、特許出願された発明を特許データベースに収録された情報を基礎として評価を行うものであるが、いずれも出願された特許の書誌情報、審査経過、発明の技術分野等を参照して評価を行うものであり、特許の相対的技術的価値は評価できても、金銭的価値までも評価するものではなかった。
【0003】
一方、特許の金銭的価値の評価は、M&A等のデューデリジェンスにおいて企業価値を金銭的に算定する際に必須な事項である。このような場合、会計士や弁理士などの専門家が従来から用いられて来た一般的な資産価値評価手法である、マーケットアプローチ、インカムアプローチ及びコストアプローチのいずれかを用いて人手で行ってきた。
【0004】
これらの評価手法の内、特許価値算定におけるマーケットアプローチは、類似の特許の取引価格を参照して対象特許の価値評価を行うもので、最も精度の高い手法であると考えられてきたが、特許に関しては入手可能な取引情報が不足しており十分な評価ができないとされてきた。このため、通常は将来見込まれる収益をDCF(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー)等の割引手法を駆使して算出するインカムアプローチが主に用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2008/054001号公報
【特許文献2】特開2021-86238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のインカムアプローチによる評価手法は、特許を所有している企業の生産計画が重要な評価要素となるため、人手によるヒアリングが必要になるなど評価手続きが煩雑な上、特許が非製造業等の他機関に移転された場合、全く異なる価値評価となり、過去の評価が役立たないなどの問題があった。一方、マーケットアプローチによる評価手法は前述のとおり、特許価値情報の収集が困難であるという問題があった。さらに、いずれの評価手法も人手による鑑定の形式になるため、評価に長期間と多額の費用を要し、しかも評価者の主観により金額が大幅に異なるなど客観的評価が困難である問題点があった。そこで、本発明はマーケットアプローチによる特許価値の評価を、自動的かつ客観的に行うべくなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による特許価値評価装置は、金銭的価値が紐づいた複数の比較用特許情報を格納したデータベースと、評価対象特許のテキスト情報取得手段と、前記評価対象特許のテキスト情報と前記複数の比較用特許情報とを比較し、前記評価対象特許に最も類似する前記比較用特許情報を抽出し、前記抽出された比較用特許情報に紐づいた金銭的価値を参照して前記評価対象特許の金銭的価値を決定する金銭的価値決定手段とを備えるようにしたものである。
【0008】
また、前記金銭的価値が紐づいた複数の比較用特許情報は、前記比較用特許情報に関連する侵害訴訟情報から取得するようにしたものである。
【0009】
また、前記金銭的価値は、訴訟記録から取得した損害賠償額であるようにしたものである。
【0010】
また、前記比較用特許情報は、前記侵害訴訟情報から抽出した特許1件毎の前記金銭的価値と前記特許の特許公報に含まれる1又は複数のパラメータ群の対からなるようにしたものである。
【0011】
また、前記金銭的価値決定手段は、前記評価対象特許に含まれるパラメータと前記比較用特許情報のパラメータとを比較することにより、前記評価対象特許に最も類似する前記比較用特許情報を抽出し、前記抽出された比較用特許情報に対応する金銭的価値を参照して前記評価対象特許の金銭的価値を決定するようにしたものである。
【0012】
また、前記比較用特許情報のパラメータは、前記特許の技術分類情報と技術キーワードを含むようにしたものである。
【0013】
また、本発明にかかる特許価値評価システムは、前記データベース及び前記金銭的価値決定手段はクラウドサーバーに格納され、前記評価対象特許のテキスト情報はインターネット回線を介して外部から取得され、前記評価対象特許の金銭的価値は前記インターネット回線を介して外部に出力されるようにしたものである。
【0014】
さらに本発明の特許価値評価方法は、評価対象特許のテキストデータを読み取る工程と、前記評価対象特許のテキストデータから特許情報を抽出する工程と、金銭的価値が紐づいた複数の比較用特許情報をデータベースから読み出す工程と、前記複数の比較用特許情報から前記評価対象特許に最も類似する比較用特許情報を選択する工程と、前記選択された比較用情報に紐づけられた金銭的価値を参照して前記評価対象特許の金銭的価値を設定する工程とを含むようにしたものである。
【0015】
また、金銭的価値が紐づいた複数の比較用特許情報は、前記比較用特許情報に関連する侵害訴訟情報から取得されるようにしたものである。
【0016】
また、前記金銭的価値は、訴訟記録から取得した損害賠償額であるようにしたものである。
【0017】
また、前記比較用特許情報は、前記侵害訴訟情報から抽出した特許1件毎の前記金銭的価値と前記特許の特許公報に含まれる1又は複数のパラメータ群の対からなるようにしたものである。
【0018】
また、前記評価対象特許の特許技術分類を決定した後に、前記特許技術分類に対応する複数の比較用特許情報をデータベースから読み出す工程をさらに備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の特許価値評価装置、特許価値評価システム及び特許価値評価方法によれば、評価対象特許の金銭的価値を自動的かつ客観的基準により迅速に評価できるため、M&Aや金融機関の与信調査で実施されるデューデリジェンス等で、企業等の所有する無形資産価値を正確に把握できる効果があり、また特許の棚卸時の判断材料となる等、企業活動の活性化に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1はこの発明の特許価値評価装置を含む特許価値評価システムの全体構成を示すブロック図である。
図2図2はこの発明の特許価値評価装置に含まれる金銭的価値決定手段の内部構成を示すブロック図である。
図3図3はこの発明の金銭的価値決定手段において実行される動作工程を示すフローチャートである。
図4図4はこの発明の金銭的価値決定手段において実行される類似度の判定を模式的に示した図である。
図5図5はこの発明の金銭的価値決定手段において比較用類型を用いて実行される類似度の判定を模式的に示した図である。
図6図6はこの発明の金銭的価値決定手段にて実行される動作工程を示す他のフローチャートである。
図7図7は金銭的価値に紐づいた特許情報の一例である比較用特許情報の一覧表を示す図である。
図8図8は比較用特許情報である特許公報からセマンティック検索により抽出した発明のコンセプトを含む一覧表の一例である。
図9図9は比較用特許情報から導出される技術分野と当該分野に含まれる特許の金銭的価値の平均値との関係を示す図である。
図10図10は較用特許情報から導出される技術分野毎の特許の金銭的価値の平均値と度数を示す図である。
図11図11はこの発明の金銭的価値決定に用いられる損害額を分類するための金額の階級(ランク)を示す一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態1
図1はこの発明の全体構成を示すブロック図である。図1において、1は比較用特許情報を格納したデータベースである。この比較用特許情報は、特許の金銭的価値が紐づいている1件毎の特許公報から抽出した、発明の名称(Title)、要約(Abstract)、請求項(Claims)等の言語情報、技術分類コード(IPC、CPC等)、WIPOの技術分類(IPC AND TECHNOLOGY CONCORDANCE TABLE)及び引用数・被引用数等の数値データさらには特許公報をセマンティック検索により抽出した発明のコンセプト(技術キーワード)等からなり、例えば図7又は図8に示す一覧表の形式に整理される。
【0022】
この比較用特許情報は例えば、特許侵害訴訟の訴訟記録から各特許の金銭的価値が明示されているものを抽出し、該当する特許公報から各種のデータを取得して作成する。一例として、図7に示す一覧表は、Clarivate(登録商標)社の知財判例収集システムDirts-ip(登録商標)を使用して、米国で行われた特許訴訟から損害額が明示されているもの(約1400件)を収集して整理したものである。また、図8に含まれる発明のコンセプト(Concept)はQuestel(登録商標)社のOrbit(登録商標)-intelligenceのセマンティック検索により抽出されたものである。
【0023】
また図1において、2は金銭的価値決定手段であり、例えばユーザー端末であるテキスト情報取得手段3からインターネット回線6を介して取得した記評価対象特許4のテキスト情報とデータベース1から取得した複数の比較用特許情報とを比較し、評価対象特許に最も類似する比較用特許情報を抽出し、当該抽出された比較用特許情報に紐づいた金銭的価値を参照して評価対象特許の金銭的価値を決定する。決定された金銭的価値はインターネット回線6を介してユーザー端末である出力手段5に出力される。
【0024】
なお、本実施の形態では、データベース1及び金銭的価値決定手段2がクラウドサーバー7に格納されている、いわゆるSaaSシステムの構成としたが、すべての構成を単独のコンピュータに格納する、いわゆるスタンドアローンの構成としても本発明の実施は可能である。すなわち、データベース1及び金銭的価値決定手段2は単体の装置に搭載され、また評価対象特許4のテキスト情報の取得及び決定された金銭的価値の出力はインターネット回線6を介することなく、当該特許価値評価装置内にて実施される。
【0025】
図2は、図1で示した金銭的価値決定手段2の内部構成を示すブロック図である。入力されたテキスト形式の評価対象特許情報は入力UI(User Interface)21を介して、評価対象特許用メモリ22に一旦格納される。次いで、評価対象特許情報は演算処理装置24に入力され、比較用特許情報用メモリ23に予め格納されている比較用特許情報と比較を行うことにより、評価対象特許に最も類似する比較用特許情報を抽出し、当該抽出された比較用特許情報に紐づいた金銭的価値を参照して評価対象特許の金銭的価値を決定する。決定された金銭的価値は、出力UI25を介して外部に出力される。
【0026】
図3は、上記金銭的価値決定手段2において実行される処理を示したフローチャートである。すなわち、STEP1において、評価対象特許情報の読み取りを行い、次いでSTEP2において、上記評価対象特許情報から比較作業に必要な特許情報である発明の言語情報や技術コード情報などを抽出し、さらにSTEP3において比較用特許情報をデータベースから読み出す。そして、STEP4において、評価対象特許情報と比較用特許情報の双方を用いて両者の類似度を評価し、評価対象特許に最も類似する比較用特許情報を選択する。次いで、STEP5において選択された比較用特許に紐づいた金額を参照して評価対象特許の金銭的価値(金額)を設定し、その結果を評価対象特許の金銭的価値として出力する。
【0027】
より具体的には、上記の類似度の決定は、図4に示すように、評価対象特許4のテキスト情報から形態素分析によりパラメータとしての特徴量を抽出し、教師データである比較用特許情報11から抽出した金額ごとの特徴量と比較することにより類似度を判定し、最も類似する比較用特許情報に紐づいた金額を参照して、当該評価対象特許の金銭的価値を決定する。なお、上記の特徴量はWIPOの技術分類(Technology domains)、IPC、CPC等の分類コード、製品名、要素技術名、クレーム単語数、課題、実施技術用語、規格・標準名、発明者、原出願人、引用文献数、被引用文献数等があげられるが、これらに止まらず特許公報に記載の単語又は形態素をセマンティック検索により抽出して特徴量とすることができる。例えば、セマンティック検索の一例として、一又は複数の特許明細書に包含される特定の技術用語の記載数と明細書内の記載位置(請求項、要約、実施例等)により、発明の重要コンセプトを抽出し、特徴量とすることができる。
【0028】
また、図5に示すように教師データとして、比較用特許情報11を金額ランクごとにカテゴライズして作成した比較用類型12を使用してもよい。類似度判別は図4に示した方法と同様であるが、例えば比較用特許情報が数千件以上ある場合、一件の評価対象特許との比較作業を数千回以上行う必要があるところ、予め作成してある比較用類型であれば数十回の比較作業で足り、類似度判別のための計算時間とシステムの計算付加を大幅に削減することが可能になる。
【0029】
実施の形態2
本発明の実施の形態2にかかる発明のフローチャートを図6に示す。図においてSTEP1及びSTEP2は実施の形態1にかかる図3のフローチャートと同様であるが、本実施の形態2にかかる発明では、STEP21において、評価対象特許の技術分類を予め決定する。技術分類の決定は、評価対象特許のIPC等の技術分類コードを参照して行う。また、いわゆるWIPOの技術分類(IPC AND TECHNOLOGY CONCORDANCE TABLE)に基づいて技術分類を決定してもよい。
【0030】
次いで、STEP31において、STEP21で決定した技術分類に対応する比較用特許情報を読み出す。その後の工程は、図3のフローチャートと同様で、STEP4において、評価対象特許情報と比較用特許情報の双方を用いて両者の類似度を評価し、最も類似する比較用特許情報を選択する。次いで、STEP5において選択された比較用特許に紐づいた金額を参照して評価対象特許の金銭的価値(金額)を設定し、その結果を対象特許の金銭的価値として出力する。
【0031】
このように、評価対象特許の技術分類を予め決定して比較用特許情報の範囲を同様の技術分類に絞ってから、他の特徴量を比較することにより、類似度を判定するための処理時間を大幅に削減するとともに、他の特徴類を比較する際にもキーワード等の共通性が高くなるため、判定精度が向上する効果がある。
【0032】
ここで一例として、比較用特許情報として蓄積されている特許(約1400件)のWIPOの技術分類(全35分類)と各特許の侵害訴訟における損害額の平均(度数平均)との関係「技術分野別損害額平均値」を図9に示す。図9からわかるとおり、製薬分野では損害額の平均が$200,000,000(USD)を超える一方、機械や電気等の分野で$50,000,000(USD)を下回るなど、技術分野によって損害額すなわち特許の金銭的価値が著しく異なり、まず技術分類を絞ってからその範囲内で類似度の判定を行うことは合理的であると考えられる。
【0033】
また、図10は、技術分類ごとに、上記比較用特許情報の損害額の平均値(度数平均)とその度数(件数)を示したものである。なお、図10において横軸は損害額(USD)を対数軸で表したもので、各金額の度数は図11に示す10の金額ランク(階級)に分類したものの合計としてカウントされている。
【0034】
図10からわかるとおり、技術分類ごとの損害額は平均値だけでなく度数の合計も大きく相違し、損害額の大きさだけでなく訴訟数も技術分野ごとに大きく異なることが分かる。すなわち、同一の技術分類の範囲内で評価対象特許と比較用特許情報の類似度を判定することは、その特徴量や金銭的価値が同一の技術分類内では近接しているため、効率及び精度の観点で妥当であると考えられる。
【0035】
なお、上記の各実施の形態において、比較用特許情報は米国における特許侵害事件における訴訟記録から該当する特許情報と損害額を抽出したが、他国の訴訟記録から情報を取得することも可能である。また、評価対象特許の記載言語も英語に限らず、あらゆる言語で記載された特許も用いることができる。なお、その際は比較用特許情報または評価対象特許のいずれか又は双方を翻訳する必要があるが、本発明の装置またはシステムに翻訳機能を付加するようにしてもよい。
【0036】
また、類似度を判定する際の特徴量として、特許明細書から抽出できる情報以外の指標、例えば該当技術の市場規模や、市場カバー率などを使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
特許の金銭的価値を簡便かつ客観的に評価することが可能になり、デューデリジェンスやM&Aに際して特許を保有する企業の無形資産価値を正確に把握でき、経済活動の発展に寄与することができる。また、自社の流動資産として特許を売買する際の価値指標となり、企業の収益向上に貢献できる。
【符号の説明】
【0038】
1 比較用特許情報を格納したデータベース
2 金銭的価値決定手段
3 テキスト情報取得手段
4 評価対象特許
5 出力手段
6 インターネット回線
7 クラウドサーバー
11 比較用特許情報
12 比較用類型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11