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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067561
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】水転写式ジグソーパズル作成セット
(51)【国際特許分類】
   B44C 1/175 20060101AFI20240510BHJP
   B41M 3/12 20060101ALI20240510BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240510BHJP
   A63F 9/10 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B44C1/175 F
B41M3/12
B41J2/01 101
A63F9/10 G
A63F9/10 501A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177745
(22)【出願日】2022-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】521158060
【氏名又は名称】株式会社コシバアンドアソシエイツ
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】越場 澄子
【テーマコード(参考)】
2C056
2H113
3B005
【Fターム(参考)】
2C056FD13
2H113AA01
2H113AA06
2H113BA00
2H113BA03
2H113BA05
2H113BA22
2H113BA24
2H113BB02
2H113BB22
2H113DA47
2H113DA49
2H113DA52
2H113DA57
2H113DA62
2H113DA64
3B005FA04
3B005FB23
3B005FB37
3B005FC02Z
3B005FE22
3B005FG10Y
3B005GA24
(57)【要約】
【課題】支持体(s)上に剥離層(r)とインク受容層を含む転写層(i)とを有する水転写紙(T)のインク受容層(i)上に印刷機を用いて画像を印刷し、印刷した画像を切断済みジグソーパズル(P)の表面上に配置し、水転写紙(T)のインク受容層(i)とは反対側の表面上に水を供給し、供給した水を水転写紙(T)の上から切断済みジグソーパズル(P)の表面に向かって押圧、浸透させて、水転写紙(T)のインク受容層を切断済みジグソーパズル(P)の表面上に転写する、切断済みジグソーパズル(P)への後印刷方法の改良。
【解決手段】水転写紙(T)の転写層(i)が易破断材料から成り、手で破断できない連続透明フィルムから成る層および/または連続透明フィルムを形成する層は有しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水性の支持体(s)上に親水性の剥離層(r)を含む転写層(i)を有する水転写紙(T)を用意し、上記転写層(i)上に印刷機を用いてインク画像(g)を印刷し、インク画像(g)を印刷した水転写紙(T)を切断済みジグソーパズル(P)の表面上に配置し、水転写紙(T)の転写層(i)とは反対側の上記支持体(s)の背面上に水を供給し、水転写紙(T)を切断済みジグソーパズル(P)の表面に押圧し、所定時間経過後に切断済みジグソーパズル(P)から剥離層(r)の所で水転写紙(T)を剥離することで印刷したインク画像(g)を切断済みジグソーパズル(P)の表面上に転写する工程を含む切断済みジグソーパズル(P)への後印刷する方法において、
上記転写層(i)が易破断材料から成ることを特徴とする方法。
【請求項2】
水転写紙(T)を切断済みジグソーパズル(P)の表面に押圧する前に、水転写紙(T)上に含水性有孔シート(W)を配置し、この含水性多孔質シート(W)に押圧力を加える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
切断済みジグソーパズル(P)の表面上にインク定着層(m)をさらに有する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
水転写紙(T)が、転写層(i)とは反対側の支持体(s)の裏側表面上にカール防止層(j)をさらに有する請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
1枚の基材を個々のピースの形に切断して得られる切断済みジグソーパズル(P)と、この切断済みジグソーパズル(P)の表面上に画像を転写するための水転写紙(T)とを含むジグソーパズル作成セットにおいて、
上記水転写紙(T)の転写層(i)が易破断材料から成り、水転写紙(T)に水を供給するための含水性有孔シート(W)をさらに含むことを特徴とするジグソーパズル作成セット。
【請求項6】
切断済みジグソーパズル(P)の表面上にインク定着層(m)をさらに有する請求項5に記載のジグソーパズル作成セット。
【請求項7】
水転写紙(T)の転写層(i)とは反対側の支持体(s)の裏側表面上にカール防止層(j)を有する請求項5または6に記載のジグソーパズル作成セット。
【請求項8】
上記の切断済みジグソーパズル(P)を支持するための容器(C)をさらに有する請求項5~7のいずれか一項に記載のジグソーパズル作成セット。
【請求項9】
易破断材料を含む転写層を有し、且つ、手で破断/分離ができない連続フィルムの層および/または手で破断/分離ができない連続フィルムと成る材料を含まない水転写紙(T)の請求項1~4のいずれか一項に記載の方法での使用。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法または請求項5~9のいずれか一項に記載のジグソーパズル作成セットで使用するための、切断済みジグソーパズル(P)と、水転写紙(T)と、この水転写紙(T)に水を供給するための含水性有孔シート(W)との組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用インクジェットプリンターで水転写シート上に印刷した写真等の画像を切断済みジグソーパズル上に転写する操作を誰もが容易に実施できるようにする方法と、その方法で用いるジグソーパズル作成セットとに関するものである。
本発明は特に、「後印刷法」と「水転写法」とを組み合わせた時の課題および欠点を解決して、自分だけのプライベート画像が印刷されたジグソーパズルを家庭用プリンターで簡単に作るための水転写式ジグソーパズル作成方法と、この方法で使用するジグソーパズル作成セットとを提供する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター等の印刷機を用いて写真、絵、デザイン等のカスタム画像を白紙のジグソーパズル基板上に印刷するオンデマンド型のジグソーパズル作成方法は古くから知られている。このオンデマンド型ジグソーパズルの作成方法には「先印刷法」と「後印刷法」の2つの方式がある。これら2つの方式の違いは厚紙等のジグソーパズル基材上に画像を印刷する「印刷」操作と基材をジグソーパズルの各ピースにカッティングする「切断」操作のどちらの操作を先に行うかの順番の違いである。
【0003】
「先印刷法」
「先印刷法」では厚紙等のジグソーパズル基材上への画像印刷操作を先に行ってからカッティング操作を行う。この方法ではジグソーパズル基材上に画像を直接印刷するか、所望品質の紙に画像を印刷し、印刷した紙をジグソーパズル基材に貼付した後に、カッターを用いてジグソーパズル基材をパズル形状にカッティングする。従って、高品質な画像の印刷が可能であり、高品質のジグソーパズルを作ることができる。オンデマンド型ジグソーパズルの多くはこの方法を用いている。しかし、この方法ではカッティング操作にトムソン刃を備えた専用の切断機械、例えば数十トンのプレス機械が必要であるため、家庭用インクジェットプリンターで一般の人が「先印刷法」を採用することは困難である。
【0004】
「後印刷法」
「後印刷法」はカッティング操作が既に終わっているジグソーパズル基材(以下「切断済みジグソーパズル」という)上に画像を印刷する方法で、家庭用インクジェットプリンターを用いることができるため古くから知られ、多くの特許が出されている。
【0005】
[特許文献1](特開平10-137441号公報)には切断済み基材の表面上にインクジェット印刷機を用いて画像を印刷するジグソーパズルの印刷方法が記載されている。しかし、この特許に記載の方法で使用できるインクジェット印刷機では、ジグソーパズル4が載置されたコンベアベルトユニット11を印刷面高さ検知レバー9やギャップ調整駆動モータ14等を用いて上昇させる必要があるが、こうした複雑な機構は家庭用インクジェット印刷機には備えられていない。
【0006】
[特許文献2](特許第5271323号明細書)では、に記載のジグソーパズル印刷機では、多数の切断済み基材を機械の中にストックしておき、顧客の要求に応じて基材を一枚ずつ供給し、各基材の表面上に印刷機、例えばインクジェット印刷機で希望する画像をオンデマンド印刷する。しかし、この方法も特定の専用機械を必要とするため一般の人が採用するのは困難である。
【0007】
家庭用プリンターで印刷できる厚紙の厚さは最大で約0.3mm程度である。一方、切断済みジグソーパズルの厚さは一般に0.5mm~数mmである。そのため、家庭用プリンターで切断済みジグソーパズルを印刷することはできない。また、切断済みジグソーパズルを印刷機械中で反転・曲げ操作することは不可能であり、たとえ基材を平らな状態で送ることができたとしても、移送中に切断済みジグソーパズルがバラバラになって印刷機を破損する危険がある。いずれにせよ、「後印刷法」は厚紙に印刷できる特殊なインクジェット印刷機を必要とするため一般的な家庭用インクジェット印刷機では実施できない。
【0008】
一般の人が家庭で実施できるジグソーパズルの作成方法の多くは「後印刷法」と「接着法」または「転写法」とを組み合わせたものである。「接着法」は接着剤/粘着剤を使用する方法であるが、多数の印刷画像を切断済みジグソーパズルの各ピース上に個別に配置するのは難しい。従って、多くは「後印刷法」と「転写法」とを組合せたものである。
【0009】
「転写法」には湿式および乾式の種々の方法があり、タトー転写、アイロン転写、スライド転写、デカールシート等の名称で広く使用されており、昇華型捺染転写、熱転写、スライド転写、アイロン転写、水圧転写等の方法がある。これらの転写方法の中でアイロン転写は家庭で容易に実施できるが、転写膜が連続層を形成するため、転写後に個々のピースにカットする操作が必要になり、また、アイロンを用意する必要もある。スライド転写は陶器等の分野で広く使われているが、水中に浮かべた転写物を被転写物上にスライドさせる操作が必要なため、紙への転写には適していない。水転写紙(水転写シート)を用いた「後印刷法」は一般の人が家庭で実施するのに適しており、これを採用した方法に関しては下記の特許文献が存在する。
【0010】
[特許文献3](特開2011-101753号公報)および[特許文献4](特開2018202815号公報)には切断済みジグソーパズル表面上に水転写法で画像を転写する方法が記載されている。この特許ではパズルピース表面に吸水性の支持体、水溶層、透明な薄膜樹脂コート層及び反転絵柄を形成した像担持層を順次有する絵柄貼着紙を貼り付け、絵柄貼着紙の支持体を剥離し、薄膜樹脂コート層に残存する水溶層の水溶性物質を除去し、薄膜樹脂コート層をパズルピース表面に貼り付けた状態で加熱押圧してカット溝凹部にまで入り込ませる。
【0011】
しかし、これらの特許に記載の水転写方法は実際に使用するのが困難である。すなわち、転写シートが切断済みジグソーパズル上に連続膜を形成するため隣接するピースを互いに分離する操作が必要である。事実、これらの特許では転写後に「ナイフで薄膜樹脂コート層と像担持層のみをジグソーパズルのカット溝凹部に沿って切断して絵柄を有する個々の絵柄パズルピースに分離する」必要がある(特許文献4の[0041][図29]参照)。しかし、切断部は不均一なナイフ切断線となり、各ピースをきれいに分離することは困難であり、一般の人がきれいなジグソーパズルを作るのは難しい。実際に、市販の水転写紙の多くは陶器用、OHP用、タトー用転写紙で、転写画像のゆがみ防止や画像の安定性を向上させるために連続膜(フィルム)、例えばPETやPEの層を含んでいる。そのため市販の水転写紙をジグソーパズルに利用する場合には連続膜をナイフで切断する作業が必要になる。
【0012】
[特許文献5](特開201713234号公報)では水転写法は望ましくない方法とされている([0006]参照)。この特許文献5は水転写法における水の使用の「煩わしさ」を無くすために、粘着シートを使用した転写シール用キットを開示している。
【0013】
いずれにせよ、水転写紙を用いた「後印刷法」は実用化されていない。その主たる理由としては下記の(1)~(3)の課題および欠点が挙げられる:
(1)「薄膜樹脂コート層や像担持層が連続薄膜として残るため、薄膜の切断作業が必要になる」という基本的課題がある。
(2)画像をきれいに転写する操作が難しいという欠点がある。すなわち、転写層は極めて薄く、強度がないため、転写膜を被写体から剥がす操作が難しいため、転写膜を被写体から剥がす時に転写画像が歪んだり、転写膜の一部が破断したり、転写膜に気泡が入ったりして均一な転写できない。
(3)印刷時に水転写紙がカールする(反る)ため、印刷機中で印刷トラブルになり易いという欠点がある。水転写紙の転写層は親水性が高いため、保存袋から水転写紙を取出した瞬間に空気中の湿分によって転写紙がカールし、水転写紙を印刷機にセットするのが難しい。また、水転写紙が印刷機に固着して印刷トラブルや故障の原因になる。多くの人はこの印刷段階でギブアップしてしまう。
【0014】
これら(1)~(3)の課題と欠点を解決することができなかったため切断済みジグソーパズルで「後印刷法」と「水転写」を組合せる方法は実用化されなかった。本発明者は上記(1)~(3)の課題および欠点を解決するための実験を繰り返し、本発明を完成させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平10-137441号公報
【特許文献2】特許第5271323号明細書
【特許文献3】特開2011-101753号公報
【特許文献4】特開2018202815号公報
【特許文献5】特開201713234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、従来方法の上記(1)~(3)の課題および欠点を解消して、「後印刷法」で切断済みジグソーパズル上に「水転写法」を使用して誰でも簡単に画像を均一に転写できる方法を提供することにある。
【0017】
本発明が解決しようとする他の課題は、写真、絵、デザイン画等のプライベート画像を水転写紙上に印刷し、得られた印刷画像を水転写法で切断済みジグソーパズル上に転写してプライベートジグソーパズルを製作する操作を、一般の人が家庭用インクジェット印刷機を用いて簡単に行えるようにするためのジグソーパズル作成セットを提供することにある。
【0018】
以下、本明細書では構成要素の後に参照記号をカッコ( )中に記載するが、この参照記号は本発明の理解を容易にするためのもので本発明を特定の構成に限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の対象は、透水性の支持体(s)上に親水性の剥離層(r)を含む転写層(i)を有する水転写紙(T)を用意し、上記転写層(i)上に印刷機を用いてインク画像(g)を印刷し、インク画像(g)を印刷した水転写紙(T)を切断済みジグソーパズル(P)の表面上に配置し、水転写紙(T)の転写層(i)とは反対側の上記支持体(s)の背面上に水を供給し、水転写紙(T)を切断済みジグソーパズル(P)の表面に押圧し、所定時間経過後に切断済みジグソーパズル(P)から剥離層(r)の所で水転写紙(T)を剥離することで印刷したインク画像(g)を切断済みジグソーパズル(P)の表面上に転写する工程を含む切断済みジグソーパズル(P)への後印刷する方法において、上記転写層(i)が易破断材料から成ることを特徴とする方法にある。
【0020】
「転写層(i)が易破断材料から成る」とは、乾燥した後に得られる転写画像膜(画像フィルム層)が手で簡単に破断、分離ができる材料で作られていることを意味する。換言すれば、「転写画像膜が手で簡単に破断、分離ができない連続フィルムの層を有しない」、および/または、「転写操作中または転写操作後に転写画像膜を手で破断、分離ができない連続フィルムと成る材料を含まない、および/または、手で破断、分離ができない連続フィルムを形成しない」ことを意味する。
【0021】
本発明の好ましい実施例では、水転写紙(T)を切断済みジグソーパズル(P)の表面に押圧する前に、水転写紙(T)上に含水性有孔シート(W)を配置し、この含水性多孔質シート(W)に押圧力を加える。
【0022】
本発明の好ましい他の実施例では、切断済みジグソーパズル(P)がその表面上にインク定着層(m)をさらに有する。
【0023】
本発明の好ましい他の実施例では、水転写紙(T)が転写層(i)とは反対側の支持体(s)の裏側表面上にカール防止層(j)を有する。
【0024】
本発明の第2の対象は、1枚の基材を個々のピースの形に切断して得られる切断済みジグソーパズル(P)と、この切断済みジグソーパズル(P)の表面上に画像を転写するための水転写紙(T)とを含むジグソーパズル作成セットにおいて、上記水転写紙(T)の転写層(i)が易破断材料から成り、水転写紙(T)に水を供給するための含水性有孔シート(W)をさらに含むことを特徴とするジグソーパズル作成セットにある。
【0025】
本発明の好ましい他の実施例では、切断済みジグソーパズル(P)はその表面上にインク定着層(m)を有する。
【0026】
本発明の好ましい他の実施例では、水転写紙(T)が転写層(i)とは反対側の支持体(s)の裏側表面上にカール防止層(j)を有する。
【0027】
本発明のジグソーパズル作成セットの好ましい実施例では、上記の切断済みジグソーパズル(P)を支持するための容器(C)をさらに有する。
【0028】
本発明の第3の対象は、易破断材料を含み且つ手で破断、分離ができない連続フィルムの層および/または手で破断、分離ができない連続フィルムに成る材料を含まない転写層を有する水転写紙の上記方法での使用にある。
【0029】
本発明の第4の対象は、上記方法または上記ジグソーパズル作成セットで使用するための、切断済みジグソーパズル(P)と、水転写紙(T)と、この水転写紙(T)に水を供給するための含水性有孔シート(W)との組み合わせにある。
【0030】
従来方法の基本的課題(1)である「薄膜樹脂コート層や像担持層が連続薄膜として残るため、薄膜の切断作業が必要になる」は転写層(i)を易破断材料にすることで解決できる。この解決策を採用することによって「後印刷法」で切断済みジグソーパズル上に「水転写法」で転写した後に画像をカッターで切断しなければならないという従来方法の課題(1)は解決する。
【0031】
しかし、転写層は極めて薄く、強度がないため、転写層(i)を易破断材料にした場合、転写画像が歪んだり、乱れたりして転写画像の安定性が損なわれ易くなる。そのため、転写操作に細心の注意が必要である。従って、転写操作を誰れもが簡単、確実に実行できるようにするためには、上記課題(1)の解決と同時に上記欠点(2)(3)も解決するのが好ましい。
【0032】
上記(2)の欠点である「画像をきれいに転写する操作が難しい」は、本発明の「水転写紙(T)を切断済みジグソーパズル(P)の表面に押圧する前に、水転写紙(T)上に含水性有孔シート(W)を配置し、この含水性多孔質シート(W)に押圧力を加えて水転写紙(T)に水を供給する」ことで解決できる。水転写紙に多量の水を供給することは水中で転写を行うスライド転写等の分野では行われているが、紙のジグソーパズル基板に水中スライド転写方法を適用することはできない。ハガキに水中でスライド転写することも公知であるが、紙の基板を水中に沈めることや、紙基板に多量の水を供給することは紙基板の特性を損うことになるため好ましくない。含水性多孔質シート(W)を用いることで必要十分な量の水を供給することが可能になり、誰でも簡単にジグソーパズルを作成できるようになる。
【0033】
上記(3)の欠点である「転写紙がカールして印刷機で印刷するのが困難である」は水転写紙(T)の転写層(i)とは反対側の支持体(s)の裏側表面上にカール防止層(j)を設けることで解決できる。水転写紙(T)のカールを防止するには水転写紙(T)の支持体(s)の強度、剛性を強くする等でも解決できるが、十分な水を透過できるようにするため等の理由で支持体(s)を厚くすることには限界がある。カール防止のために転写層(i)の変形量に見合う(または変形を打ち消す)層を設ければよいが、そうした層は印刷機、例えば家庭用インクジェットプリンター中の送りローラに付着し、紙送りトラブルの原因になることがある。本発明の好ましい実施例では特定のカール防止層(j)を形成し、必要に応じてさらにバックアップ層(k)を付ける。
上記の基本的課題(1)および実用上の欠点(2)および(3)は本発明によって全て解決できる。
【0034】
以下は本発明の好ましい実施態様である。
1)上記転写層(i)は手で破断、分離ができない連続フィルムの層および/または手で破断、分離ができない連続フィルムと成る材料を含まない。
2)上記転写層(i)は上記剥離層( r) の上にインク受容層を有し、このインク受容層がポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはそのエステル類、塩類およびその共重合物、ポリヒドロキシエチルメタアクリレートおよびその共重合体、ポリ酢酸ビニル共重合体、デンプン類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体の中から選択される水溶性高分子を含む。
3)切断済みジグソーパズル(P)が、発泡体および/または弾性体から成るコア層(10)と、このコア層(10)の少なくとも片面上に接着された紙の表面層(11、12)とを有する軽量積層体からなる。
4)上記コア層(10)の発泡体がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、EVA、PET、ポリ塩化ビニルまたはEPDMの非弾性または弾性の発泡体である。
5)容器(C)がブリスターパックから成る。
6)容器(C)が切断済みジグソーパズル(P)を挟持する少なくとも一方が透明材料である二枚のシート(1、2)から成る。
7)容器(C)が切断済みジグソーパズル(P)とそれを支持する容器(C)とから成るパズルユニット(J)を収容する透明ケース(TC)から成る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明方法の説明図で、(I)は本発明方法で使用する水転写紙(T)と切断済みジグソーパズル(P)との組合せを示し、(i)はその斜視図、(ii)はその概念的断面図、(II)は本発明方法を実施する時の工程(1)~(5)の説明図。
図2】「水転写法」を「後印刷法」と組合せた時の課題と欠点の説明図で、(I)は転写膜の転写時の状態を示す概念的断名図で、(1)は全体が完全に転写できた時を示し、(2)は転写膜の一部(60)が残ることを示す図、(II)は写真のインク画像が完全に転写された時の写真、(2)は転写画像一部(61)が剥がれた時の写真、(III)はピース部分の拡大写真で、(1)はトレスが加わるピース勘合部分でも剥がれがない時の写真、(2)はピース分離時に転写層(i)一部(62)が剥がれた時の写真、(IV)は転写紙がカールすることを示す図で、(a)はカールした転写紙の概念図、(b)はその断面。
図3】本発明が解決すべき課題と欠点の解決手段を説明する手段の明図で、(I)は含水性多孔質シート(W)を用いて必要十分な量の水を転写層(i)へ供給することを示す図、(II)は切断済みジグソーパズル(P)がンク定着層(m)を有することを示し、この図では切断済みジグソーパズル(P)は本発明の好ましい実施例の軽量積層体から成り、(III)は水転写紙(T)が支持体(s)の裏側表面上にカール防止層(j)を有することを示す図。
図4】本発明の好ましい一つの実施例で使用される軽量積層体から成る切断済みジグソーパズル(P)を示し、(a)はその概念的断面図、(b)はその概念的斜視図、(c)は(a)の○で囲んだ部分の拡大部分断面図。
図5】本発明のジグソーパズル作成セットを示す図で、(i)はその斜視図、(ii)はその概念的断面図、(II)は本発明のジグソーパズル作成セットを用いてジグソーパズルを作成する時の各工程(1)~(6)を示す概念図。
図6】ブリスターパックから成る容器(C)を示す図で、(I)はその容器(C)中にジグソーパズルを収容し、スタンド(S)を用いて立て掛けた状態を示す概念的斜視図、(II)は(I)のA-A戦による断面図、(III)はスタンド(S)の作成方法を示す概念図で、左側は折り曲げる前のスタンド(S)の平面図、右側は折り曲げた後の概念的斜視図、(IV)はブリスターパックから成る容器(C)を利用して本発明のジグソーパズル作成セットを使用する時の説明図。
図7】ヒンジ構造(3)で互いに連結された2枚のプラスチック板(1、2)から成る容器(C)示す図で、(I)はその概念的斜視図、(II)は2枚のプラスチック板(1、2)を閉じた状態でスタンド(S)に立て掛けた状態を示す概念的斜視図、(III)は(II)のA-A線による概念的断面図、(IV)はヒンジ構造(3)を形成する2つの方法を示す概念的断面図、(V)と(VI)は2枚のプラスチック板(1、2)から成る容器(C)を利用して本発明のジグソーパズル作成セットを使用する時の説明図。
図8】本発明で好ましく使用されるパズルユニット(J)の説明図で、(I)は切断済みジグソーパズル(P)を示し、(II)は支持シート(2)上に固定されたフレーム(F)を示し、(III)は上記フレーム(F)中に切断済みジグソーパズル(P)を収容した状態を示し、(IV)は透明ケース(TC)([図9]参照)を示し、(V)は(III)と(IV)を組み合わせた状態を示す図。
図9】本発明で好ましく使用される透明ケース(TC)の作成方法を示す図で、(I)と(III)は透明シート(30)から透明ケース(TC)を作成する工程を示す図、(II)と(IV)はシート素材(S‘)からスタンド(S)を作成する工程を示す図、(V)は(I)~(IV)で作られた透明ケース(TC)とスタンド(S)とを互いに組合せた時の図、(VI)は(V)で組み立てた透明ケース(TC)中にパズルユニット(J)を挿入して展示した時の概念的斜視図、(VII)はその側部の概念的断面線図、(VIII)はその概念的底面図。
図10】本発明ジグソーパズル作成セットの展示販売時の説明図で、(I)はパズルユニット(J)、水転写紙(T)、オプションのスタンド(S)および含水性有孔シート(W)を含む本発明ジグソーパズル作成セットの概念的斜視図、(II)は本発明ジグソーパズル作成セットを展示販売用容器(N)中に収容し、展示シェルのピンに吊り下げた状態を示す概念的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面を参照して本発明を説明する。なお、各図で部材の寸法は説明のために拡大、縮小してあり、相対寸法は実際のものとは相違する。
図1]は本発明方法で使用する水転写紙(T)と切断済みジグソーパズル(P)とを示し、[図1]の(I)の(i)はその概念的斜視図、(ii)その断面図である。水転写紙(T)は透水性の支持体(s)上に親水性の剥離層(r)を含む転写層(i)を有する。この図は転写層(i)上にインク画像(g)が既に印刷された状態を示している。本発明方法の特徴は転写層(i)が易破断材料から成る点にある。
【0037】
本発明方法は[図1]の(II)に示した工程(1)~(5)で実施される。
図1]の(II)の(1)は最初の印刷工程で、印刷機(Q)を用いて水転写紙(T)上にインク画像(g)が印刷する。印刷機(Q)は例えば家庭用インクジェットプリンターにすることができる。他の印刷装置、例えばゼログラフィ装置、レーザープリント装置、グラビア印刷装置、オフセット印刷機等を用いても本発明の範囲を逸脱するものではない。印刷するインクは顔料系でも染料系でもよく、紫外線硬化性のインクでもよい。インク画像(g)は例えば写真を左右反転して水転写紙(T)上に印刷することで形成できる。水転写紙(T)は透水性の支持体(s)上に親水性の剥離層(r)を含む転写層(i)を有し、本発明では転写層(i)が易破断材料から成ることが必要である。
【0038】
図1]の(II)の(2)は転写操作を示し、ここではティシュペーパー(16)等に水を吸収させ、それを手(17)を用いて水転写紙(T)上に押し当てて水を転写層(i)に供給する。水が供給されると剥離層(r)の所で転写層(i)が支持体(s)から分離し、転写層(i)は切断済みジグソーパズル(P)上に転写される。この水転写操作では水の供給量と押圧力を調節することが要求される。
【0039】
図1]の(II)の(3)は水転写操作後に水転写紙(T)をゆっくりと剥がす工程である。この工程では転写層(i)が切断済みジグソーパズル(P)側に完全に転写(接着)された後に、水転写紙(T)の端縁部を指で摘まみ、水転写紙(T)をゆっくりと剥がす。それによってインク画像(g)を有する転写層(i)を剥離層(r)の所で水転写紙(T)の支持体(s)から分離し、切断済みジグソーパズル(P)の表面上に移すことができる。この工程の操作は転写層(i)が破れないように慎重に行う。この操作のやり易さは(2)の水転写操作の結果に依存する。
【0040】
図1]の(II)の(4)は完成品の断面図で、切断済みジグソーパズル(P)の表面上にインク画像(g)を有する転写層(i)が転写された状態を示している。一般には転写層(i)が乾燥するまでこの状態を維持する。
【0041】
図1]の(II)の(5)は(4)で得られた完成品を各ピースに分割する操作の概念図で、この工程は互いに隣接するピース(p1、p2)を上下方向に移動させることで行うことができる。この工程(5)は一般に転写層(i)が乾燥してから行うが、完全に乾燥するのを待たずに、乾燥前、乾燥中に行うこともできる。通常は、剥離操作後に転写層(i)がほぼ乾燥してから(5)の工程で完成品を各ピースに分割する。実際には、切断線(13)に沿って隣接するピース(p1、p2)を折り曲げることで転写層(i)を破断でき、破断後に簡単に上下方向に相対移動させることができる。転写層(i)の厚さは通常1~15μm程度であるので、分離操作中に隣接するピース間で自然に破断されるか、各ピースを指で軽く曲げることで簡単に破断でき、破断面が目立つこともない。これは転写層(i)が易破断材料から成ることを特徴とする本発明方法で可能になったことである。これに対して、[特許文献3]および[特許文献4]に記載の従来方法ではナイフを用いて転写層(i)を切断して絵柄を有する個々の絵柄パズルピースに分離する」必要がある。
【0042】
図2]は「水転写法」を「後印刷法」と組合せた時に問題となる欠点を説明するための説明図である。
図2]の(I)の(1)は転写層(i)が完全転写された状態を示す概念的断面図である。それに対して(2)は転写層(i)の一部(60)が残っている状態を示す概念的断面図である。
図2]の(II)の(1)は写真画像が完全転写されたピース部分の写真である。それに対して(2)は同じ写真画像の一部(61)が剥がれているピース部分の写真である。
図2]の(III)の(1)は隣接ピースの切断線(13)の所でも転写膜の剥がれがないことを示す写真である。それに対して(2)の写真では転写画像一部(62)が剥がれている。
図2]の(IV)(a)は吸湿性の高い水転写紙(T)が空気中の湿気によってカールする(反る)ことを示す概念的斜視図、(b)はその断面図である。
【0043】
図3]は[図2]に示した欠点を解決する手段をまとめて示してある。
図3]の(I)は[図2]の(I)と(II)の欠点を解決するために、本発明のジグソーパズル作成セットに含まれる含水性有孔シート(W)を使用する時の説明図である。すなわち、転写時には含水性有孔シート(W)に必要十分な量の水を吸収させ、水を吸収した含水性有孔シート(W)を水転写紙(T)に配置し(左の図)、次いで、含水性有孔シート(W)に圧力(矢印)を加える(右の図)。それによって含水性有孔シート(W)が圧縮され、水転写紙(T)に必要十分な量の水が供給される。押圧状態を一定時間、例えば1分間、維持するのが好ましい。含水性有孔シート(W)から押し出される余分な水(d)の量は吸水紙等で除去するか、容器(C)中に蓄えるのが好ましい。
図3]の(II)は[図2]の(III)の欠点を解決するために使用されるインク定着層(m)を示している。インク定着層(m)の使用で[図2]の(III)の欠点は大幅に少なくでき、無くすこともできる。
図3]の(III)は[図2]の(IV)の欠点を解決するために使用されるカール防止層(j)を示している。カール防止層(j)の上には透水性バックアップ層(k)を設けるのが好ましい。
上記の含水性有孔シート(W)、インク定着層(m)およびカール防止層(j)については後で詳細に説明する。
【0044】
図4]は本発明の好ましい一つの実施例で使用される「軽量積層体」から成る切断済みジグソーパズル(P)を示し、(a)はその概念的断面図、(b)はその概念的斜視図、(c)は(a)で○で囲んだピース間切断線(13)の部分の拡大部分断面図である。この軽量積層体は発泡材料および/または弾性体から成るコア(10)と、このコア層(10)の少なくとも片面上に接着された少なくとも一枚、好ましくは表裏2枚の表面層(11、12)とを有する。表面層(11、12)上にはインク定着層(m)([図3]参照)を形成するのが好ましい。
【0045】
本発明で使用する切断済みジグソーパズル(P)は軽量積層体をムソン刃で切断して作ることができる。切断操作にカッティングマシンまたはレーザカッティングマシンを用いることもできる。切断済みジグソーパズル(P)の各ピース(p)は切断線(13)によって互いに分離されている。トムソン刃(44)を用いて切断した場合には、[図4]の(c)の拡大部分断面図に示すように、切断線(13)部分のピース間切断部のトムソン刃挿入側には凹部(14)ができ、その反対側は平坦(15)であるか、表面からわずかに突出する(突出エッジとなる)。この突出の度合いはトムソン刃挿入度に依存する。本発明では転写画像は表面層(11、12)のどちらの側に転写してもよい。上記の切断済みジグソーパズル(P)では表裏両面(11、12)上にそれぞれ別の画像を印刷できる。
【0046】
ジグソーパズルを発泡体で作ること自体は古くから知られている。
[特許文献6](実開昭62-1686号公報)には低発泡のポリエチレンを基板とし、その表面上に図柄を印刷したジグソーパズルが記載されている。基板の発泡倍率は1.2~5倍、厚さは0.2~4.0mmである。
【特許文献6】実開昭62-1686号公報
【0047】
この[特許文献6]では図柄は基板表面上に直接印刷するが、ポリエチレン上に直接印刷するのは困難であるため、ポリエチレン基板の表面上に図柄を印刷するのに特殊なインクが必要になる。低発泡樹脂基板の上には図柄を印刷した合成樹脂フィルムを貼り合わせることができると記載されているが、合成樹脂フィルムは剛性があるため、合成樹脂フィルムを貼合せた積層体を各ピースに切断した時や使用時に低発泡ポリエチレン基板から合成樹脂フィルムの端縁が分離し易い。この特許文献16には低発泡樹脂基板に貼り合わせる表面材料として紙を用いることは記載がない。
【0048】
[特許文献7](特表2004507335号公報)には、曲げることができるジグソーパズルが記載されている。このジグソーパズルが曲げることができる理由は発泡体で作られた主要ボディに接着剤層を介して可撓性シートを接着結合した構造にしたことと思われ、特許文献15の実施例では上記の発泡体はポリエチレン発泡体で、可撓性シートは紙(ペーパー)であり、接着剤層は感圧性ホットメルト接着剤である。
【特許文献7】特表2004507335号公報
【0049】
しかし、ポリエチレン発泡体には低発泡体から高発泡体まで種々の発泡倍率の発泡体があり、その全ての場合に曲げることができる訳ではない。また、曲げることはできても、持ち上げて遊ぶことできるとは限らない。特に、主要ボディを高発泡のポリエチレン発泡体で作った場合には、ジグソーパズルを持ち上げた時に隣接ピースがバラバラになってしまう。また、ある程度の曲げは可能な場合でも、[特許文献7]では隣接ピース間を互いに連結する機能を担うのは感圧性ホットメルト接着剤層の粘着性であると思われる。また、特許文献7にはジグソーパズルを実際に作るための材料の開示がないので、ポリエチレン発泡体および感圧性ホットメルト接着剤としてどのような特性の材料を選択すべきか分からない。
【0050】
[特許文献8](特開平2224776号公報)には客の持参した絵柄Dをオンデマンドでジグソーパズルに製造する方法が記載されている。実際には、絵柄D(22)が印刷された紙や合成樹脂フィルムを発泡樹脂シートに接着剤を用いて貼り付ける。しかし、この特許文献8に開示の発泡樹脂シートは発泡ポリスチレン樹脂または発泡ポリエチレン樹脂である。発泡ポリスチレンは一般に高発泡ポリスチレンであり、極めて軽量であるためジグソーパズルを垂直に持ち上げることは困難であり、手に持って遊べるジグソーパズルとすることはできない。
【特許文献8】特開平2224776号公報
【0051】
本発明の好ましい一つの実施例で使用される「軽量積層体」から成る切断済みジグソーパズル(P)のコア層(10)は発泡倍率が1~3程度の低発泡のポリエチレン(PE)の発泡体または弾性体から成る。この発泡体または弾性体は切断後に切断済みジグソーパズル(P)を手で持ち上げることができる。
【0052】
上記の発泡体または弾性体はポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)、EVA、PET、ポリ塩化ビニル(PVC)またはEPDMの発泡体またはシリコンラバーにすることができ、セルロース材料の発泡体でもよい。発泡体は軟質または硬質の発泡体にすすることができ、弾性発泡体でもよい。ポリスチレン(PS)の発泡体コアを有するもの(例えば、いわゆる「スチレンペーパ」)は軽量であるが、隣接ピース間を互いに保持する隣接ピース保持力は無い。これに対して低発泡のポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)の発泡体コアは重量感、隣接ピース保持力に優れている。弾性発泡体の場合、例えばEVAの発泡体は軽量感、隣接ピース保持力に優れている。
【0053】
上記発泡体のコアを例えば発泡セルロース材料にすることで軽量積層体の全ての層(10、11、12)をセルロース等の再生可能材料とすることができ、グリーンなジグソーパズル製品にすることもできる。
発泡体のコア層(10)を使用することでジグソーパズルを大幅に軽量化できる。ジグソーパズルのピースとして一定の重量感やフィット感が要求される場合には発泡体の材質、発泡倍率を調節し、充填材やゴム弾性体等の添加材料を追加するか、これらの材料を含む追加の層をさらに積層するのが好ましい。
【0054】
図5]は本発明の「ジグソーパズル作成セット」の説明図で、[図5]の(I)の(i)はその概念的斜視図、(ii)はその概念的断面図であり、インク画像(g)が印刷された状態で示してある。本発明の「ジグソーパズル作成セット」は切断済みジグソーパズル(P)と、水転写紙(T)と、含水性有孔シート(W)とを含む。[図5]の(II)の(1)~(6)は本発明の「ジグソーパズル作成セット」を用いて水転写紙(T)から切断済みジグソーパズル(P)上にインク画像(g)を転写する各工程を示している。
【0055】
図5]の(II)は[図1]の(II)とほぼ同じであるので、[図1]の(II)と同じ工程の説明は省略する。相違するのは[図5]の(2)の工程で含水性有孔シート(W)を使用する点のみである。
図5]の(2)では、含水性有孔シート(W)に必要十分な量の水を吸収させた後に、それを水転写紙(T)の上に配置する。次に、水転写紙(T)の上に押圧力(矢印)を加えて必要十分な量の水を転写層(i)に供給する(2‘)。含水性有孔シート(W)から押し出される余分な水(d)は吸水紙等で除去するか、容器(C)中に溜めるのが好ましい。所定時間、例えば1分程度、押圧力を維持する。所定時間経過後に含水性有孔シート(W)を除去する(2'')。
図5]の(3)以降の工程は[図1]の場合と同じであるので、[図1]の(II)の説明を参照されたい。
【0056】
ここで、本発明の構成要素に付いてさらに詳細に説明する。
水転写紙(T)
「水転写紙(T)」は基本的に[図1]の(ii)の断面に示す層構成をしており、支持体(s)上に剥離層(r)を介してインク受容層を含む転写層(i)を有している。これらの図には印刷工程で形成されるインク画像(g)も示してある。水転写紙(T)に水が供給され、押圧力が加えられると、剥離層(r)の所でインク受容層を含む転写層(i)が支持体(s)から分離し、切断済みジグソーパズル(P)上に転写される。
【0057】
水転写紙(T)の構成自体は周知であり、その構造、組成については多数の特許が出願されており、例えば下記特許文献が参照できる。
【特許文献9】特開3-227700号公報
【特許文献10】特許第3842835号明細書
【特許文献12】特開平1159092号公報
【特許文献13】特開平1178389号公報
【特許文献14】特許第6074563号明細書
【0058】
水転写紙(T)の構造は本発明の対象ではないので、その詳細な説明は省略する。ここでは、水転写シートは基本的に水透過性の支持体(s)上に剥離層(r)を介してインク受容層を含む転写層(i)を有する構造であることを理解していれば十分である。
【0059】
「転写層(i)」とは、反転印刷された画像を保持し、切断済みジグソーパズル(P)上にその画像を転写するのに使用される層を意味し、一般には剥離層(r)を介して透水性の支持体(s)上に形成される。この転写層(i)は一般にインク受容層を含む複数の層から成る。転写層(i)またはインク受容層の各層の材料を異なる特性(分子量や種類等)の異なる同じ材料にすることもできる。本明細書では転写層、インク受容層という用語を厳密に分けて使用してはいない。以下の説明ではインク受容層を単に「転写層(i)」と記載することがある。
【0060】
水転写紙(T)の「支持体(s)」は透水性材料のシート、例えば紙、セルロースで作ることができる。支持体(s)はその表面上に供給された水分が支持体(s)を通過して裏側の剥離層(r)まで到達できる透水性が必要である。また、吸水状態でも溶解したり崩壊したり破れたりせずに形状を維持する耐水性が必要である。吸水時の寸法安定性が優れたものが好ましい。これらの特性を備えた材料として、目付量50~150g/m 2 の紙が使用できる。ポリイミドエポキシなどの湿潤補強材を配合した紙が有用である。
【0061】
通常のパルプ紙以外にも、同様な機能を有する合成紙や合成樹脂シートを用いることもできる。剥離層(r)の材料および支持体(s)への剥離処理は通常の剥離処理が適用でき、転写層(i)の材料やその特性に合わせて剥離処理に用いる材料を選択するのが好ましい。剥離処理によって支持体(s)の表面に形成される剥離層(r)は透水性であることが必要であり、支持体(s)から剥離処理された面を経て転写層(i)まで水分が浸透できる必要がある。このような特性を備えた剥離層(r)の材料としてはシリコン、ポリプロピレン、ポリエステルなどが挙げられる。支持体(s)の表面への剥離処理は通常の塗工技術が適用できる。
【0062】
剥離処理として液状の剥離材を塗工形成した場合に、液状剥離材が支持体(s)の裏面まで浸透して、支持体(s)の表面が撥水性になり、本来の透水性が発揮できなくなることがある。それを防ぐために紙の支持体(s)の剥離処理を施す面に目止め処理をするのが好ましい。目止め処理をすることで液状剥離材が基材層の内部に浸透し難くなり、支持体(s)の表面に適切な剥離処理を施すことができる。目止め材は支持体(s)の透水性を阻害せずに液状剥離材の透過を阻止する材料が好ましく、炭酸カルシウムやカオリン、クレー等を用いることができる。
【0063】
「剥離層(r)」は水分との接触によって接着力が弱くなる層で、水溶性の接着性材料、例えば澱粉、CMC、水溶性オレフィン樹脂、ポリビニルアルコール、糊、デキストリン、水溶性ウレタン等で形成でき、保水剤等を含むこともできる。塗工量は一般に5~50g/m2(湿潤状態)である。
【0064】
本発明の好ましい実施例では、支持体(s)は透水性材料のシート、例えば紙、セルロースまたは不織布のシートから成り、上記剥離層(r)は水溶性高分子、例えばポリビニルアルコール、糊、デキストリンまたは水溶性ウレタンから成り、上記インク受容層がポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはそのエステル類、塩類およびその共重合物、ポリヒドロキシエチルメタアクリレートおよびその共重合体、ポリ酢酸ビニル共重合体、デンプン類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体の中から選択される材料である。
【0065】
転写層(i)のインク受容層は表面に印刷画像が形成される層で、形成された印刷インク画像(g)を吸収保持して定着させる機能を備えている。インク受理層は転写後に印刷画像の上を覆うので透明である必要があり、また、インク受容層は水分との接触によって接着力、タック性を生じ、切断済みジグソーパズル(P)上に印刷インク画像(g)を固定させるものでなければならない。しかし、印刷機中に接着力、粘着力が生じると水転写紙が印刷機に付着し、印刷トラブルの原因となるので、インク受容層の材料の選定には注意が必要である。このインク受容層は一般にポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはそのエステル類、塩類およびその共重合物、エチレン-酢酸ビニル共重合物、ポリヒドロキシエチルメタアクリレートおよびその共重合体、デンプン類、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体の中から選択される水溶性高分子を含む。インク受理層の透明性を損なわない限り、微粒子にしたシリカ、酸化アルミニウム、 炭酸カルシウムなどのインク吸着成分を添加することもできる。さらに、にじみ防止、定着性向上、耐ブロッキング性、耐擦過性等のために各種の添加剤を添加できる。上記インク受容層は粘着防止および/または吸湿防止のための薬剤または層を含むことができる。
【0066】
転写層(i)のインク受容層をインク受容粒子とインク受容粒子を固定するバインダーとで構成することもできる。例えば、インク受容粒子をポリオレフィンの粒子とし、バインダーをゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸、水性ポリエステル、水性アクリル樹脂などの水溶性ポリマーにすることができる。
【0067】
転写層(i)またはインク受容層をポリオレフインのエマルジョンを塗布し、乾燥して形成することもできる。エマルジョン中には必要に応じて他の成分、例えばウレタン樹脂、シリコーン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂の樹脂や、シリカ等の充填または処理剤、界面活性剤等の添加剤をさらに含むことができる。
いずれの場合でも、転写層(i)は易破断材料から成る必要がある。
【0068】
転写紙で一般的に使用されている添加剤、例えば、粘着性付与剤、ワックス、可塑剤、充填剤、染料定着剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、浸透剤、酸化防止剤、防腐剤等をインク受容層(i)にさらに添加することもできる。これらの添加剤はインクの印刷性、転写性、剥離性等を考慮して適宜選択できる。インク受容層(i)の厚さは一般に15~100g/m2(湿潤状態)、通常1~15μm、好ましくは3~10μm程度である。剥離層(r)と転写層(i)またはインク受容層を異なる特性を有する同じ材料で作ることもできる。本発明では転写層(i)またはインク受容層は破断が不可能な強固な保護膜を形成する材料を含んではならない。
【0069】
転写層(i)またはインク受容層の組成、構造に関しては多数の特許が出願され、公知であるが、本発明で使用する転写層(i)は易破断材料から成る必要がある。本発明で使用する転写層(i)は手で破断、分離ができない連続フィルムの層を含まず、および/または、手で破断、分離ができない連続フィルムと成る材料を含まない。この要件を満たす水転写紙は市販の製品の中から見い出すことができる。本発明で使用可能な易破断材料から成る転写層(i)を有する水転写紙としては(株)和紙のイシカワ社の「水転写紙」と(株)プラス社の「インクジェット用紙デコレーション用水転写シート」を挙げることができる
【0070】
切断済みジグソーパズル(P)
「切断済みジグソーパズル(P)」とは、1枚の基材を個々のピースの形に切断して得られる1枚のジグソーパズルのシートを意味する。ジグソーパズルの個々のピースは(p)で表す。切断方法としては一般にはトムソン刃を備えたプレス機械、カッティングマシンまたはレーザカッティングマシンが用いられる。一般の紙製のジグソーパズルはトムソン刃を用いてプレス機械で厚紙を各ピースに剪断して作られる。カッティングマシンまたはレーザカッティングマシンはトムソン刃で切断するのが容易でないハート形、星形、円形等のピース形状を簡単かつニーズに応じて迅速に製作できるので、顧客の要望に応じたカスタムジグソーパズルを少量生産するのに適している。
【0071】
「切断済みジグソーパズル(P)」の基材は単層または複数層にすることができ、基材の材料は任意である。例えば、紙(例えば厚紙)、不織布、繊維、木材、ガラス、金属、プラスチックにすることができる。単層のジグソーパズルとして厚紙をトムソン刃で切断したいわゆる「ホワイトジグソーパズル」すなわち無地のジグソーパズルを「切断済みジグソーパズル(P)」として利用できる。
【0072】
切断済みジグソーパズル(P)の表面、特に上記積層体から成る切断済みジグソーパズル(P)の表面層(11、12)は転写能に優れた材料であれば任意の材料が選択できるが、一般には紙、不織布またはプラスチック材料のシートが用いられる。表面層(11、12)は高品質紙、例えば光沢紙、コート紙、グラビア紙等にすることができる。
【0073】
「切断済みジグソーパズル(P)」としては[図4]で説明した軽量積層体を使用するのが好ましい。積層体の表面層(11、12)を紙で作り、コア層(10)を発泡体で作ることで、表面層の紙に供給した水をコアの発泡体が吸収して水転写インキの乾燥が速くなる。また、切断済みジグソーパズル(P)が水を吸って変形するのを防止できる。
【0074】
ジグソーパズルの厚さに制限はないが、一般には0.5mm~50mm程度、一般には0.5~20mmである。ジグソーパズルのピース数および各ピースの寸法は用途に応じて適宜選択できるが、本発明のジグソーパズルセットは家庭用インクジェットプリンタ等で印刷可能な「ハガキ」サイズ、グリーティングカードサイズ、B5版、A4版の大きさにすることができ、それ以上の寸法にすることもできる。本発明方法を利用すればB4版以上の大きなジグソーパズルを作ることもできる。その場合にはB4版以上の大きな一枚の写真等の画像を画像ソフトを用いて複数に分割し、複数の切断済みジグソーパズル(P)を互いに平行に並べ、分割した各単位画像を対応する各切断済みジグソーパズル(P)の上に印刷すればよい。この方法を用いれば無限に大きな寸法のジグソーパズルを作ることができる。互いに隣接する分割画像の端縁部をダブって印刷し、隣接分割画像が連続するように端縁部をカットし、転写時に隣接分割画像が連続するように配置すればよい。画像の大きさには制限がなく、単位画像(B1版、A1版等)の数を増やすことでB1版以上、A1版以上の大きな画像のジグソーパズルを作ることもできる。また、独立した複数の画像(不連続画像)を並べて1枚のジグソーパズルにすることもできる。
【0075】
含水性有孔シート(W)
本発明の好ましい実施例では、インク画像(g)を印刷した水転写紙(T)を切断済みジグソーパズル(P)の表面上に配置した後に、水転写紙(T)の転写層(i)とは反対側の支持体(s)の背面上に水を吸収した含水性有孔シート(W)を配置、それを押圧する。
【0076】
「含水性有孔シート(W)」とは所定量の水を吸収可能な親水性シートを意味し、一般には多孔質体である。この含水性有孔シート(W)は所定量の水を吸収し、押圧力が加えられた時にその水を排出できる任意の材料の中から選択できる。例えば、親水性の多孔質シートは吸水紙、吸水セルロース、吸水スポンジ等で構成できる。この含水性有孔シート(W)は器具や食品等の吸水、脱水のために脱水シート、吸水クロス、吸水マット、乾燥マット、キッチンクロ、セルローススポンジ、吸水スポンジ、水取りスポンジ等の名称で市販されているシートが使用できる。大面積、例えばB4以上の寸法の切断済みジグソーパズル(P)の場合には均一な押圧力を加えるために多孔質弾性体、例えば吸水弾性スポンジを使用するのが好ましい。
【0077】
含水性有孔シート(W)の容積は転写操作に必要な量の水が供給できるように決定される。転写操作に必要な水の量は転写層(i)を完全且つ均一に転写させるのに必要な水の量である。水の量が不足すると完全且つ均一な転写ができない。水の量が過剰になっても転写に悪影響は与えないが、余分な水で作業空間を汚すことになる。従って、実際には、ジグソーパズル作成セットを利用する使用者が含水性有孔シート(W)に水を含ませ、軽く絞った状態で転写操作に必要な水の量となるように、含水性有孔シート(W)の容積を決定するのが好ましい。この容積は実験によって簡単に決定できる。通常は、水を含ませた含水性有孔シート(W)の上端部をつまんで吊り下げた時に水が滴下しない状態にすればよい。
含水性有孔シート(W)の寸法は、転写操作に必要な量の水が水転写紙の全面に均一に供給できる限り、特に限定されないが、一般には切断済みジグソーパズル(P)の寸法とほぼ同じ寸法にするのが好ましく、それより大きくすることもできる。
【0078】
含水性有孔シート(W)から供給された水は切断済みジグソーパズル(P)に向かって上記支持体(s)を通して浸透し、剥離層(r)に達する。この場合、含水性有孔シート(W)の上から切断済みジグソーパズル(P)の表面に向かって水転写紙(T)を押圧するのが好ましい。この押圧力は、所定重量以上の重量物、例えば本や器具類を含水性有孔シート(W)の上に載せることで加えることができる。含水性有孔シート(W)に加える力(押圧力)と時間は実験によって簡単に決定できる。大きな押圧力は切断済みジグソーパズル(P)の寸法に依存し通常、数kg以下の力でよい。剥離層(r)の所に十分な水が供給するのに必要な重量は一般に5kg以下で十分であり、時間は一般に1分~3分程度で十分である。剥離層(r)に供給される水の量が適量で且つ所定の押圧力が加われば、印刷された画像(g)を有する転写層またはインク受容層(i)は剥離層(r)の所で水転写紙(T)から確実に分離し、切断済みジグソーパズル(P)の表面上に移る。
【0079】
実際に本発明方法を実施する時には、切断済みジグソーパズル(P)の下側に吸水シートを敷いて、作業テーブルが使用する水で濡れないようにするのか好ましく、さらに、この吸水シートの下側および/または含水性有孔シート(W)の上側に耐水シート、例えばプラスチックフィルムやシートを配置して、作業テーブルおよび/または押圧力を加えるための重量物が水で濡れないようにするのが好ましい。また、含水性有孔シート(W)からの余分な水(d)を容器(C)中に蓄えることもできる。
【0080】
本発明の「ジグソーパズル作成セット」は上記の切断済みジグソーパズル(P)と、水転写紙(T)と、含水性有孔シート(W)とを含むが、本発明のジグソーパズル作成セットの好ましい実施例では以下をオプションの構成要素として含むことができる。
(1)インク定着層(m)
(2)カール防止層(j)
(3)容器(C)
(4)スタンド(S)
【0081】
インク定着層(m)
転写されたインク画像(g)の転写品質は上記表面層(11、12)の性質に大きく依存する。例えば、水を撥く性質のある表面層(11、12)を有する紙にきれいな画像を転写するのは難しい。また、表面層(11、12)が光沢紙、コート紙、グラビア紙等から成る場合も転写層またはインク受容層(i)を切断済みジグソーパズル(P)の表面上に完全、確実に転写するのは難しい。[図2]の(II)の写真は転写が完全、確実に行われた時の写真であるが、[図2]の(II)の(2)の写真では転写画像の一部(61)が剥がれている。
【0082】
また、転写操作が確実に行われたとしても、転写層またはインク受容層(i)の接着力が弱いと、パズルのピースを嵌め合わせて遊ぶ時に応力が集中する部分で、[図2]の(III)の(2)の写真に示すように、転写層(i)の一部(62)
がパズルから剥がれる危険がある。[図2]の(III)の(1)の写真は剥がれのない場合の写真である。
【0083】
本発明の好ましい実施例では、切断済みジグソーパズル(P)がその表面上に「インク定着層(m)」をさらに有する。そうすることで一般のユーザーがインクジェットプリンター等で印刷した印刷転写層(i)を種々の表面特性を有する紙の表面層(11、12)上に確実に転写することが可能になる。このインク定着層(m)は切断済みジグソーパズル(P)の表面上に転写された画像を正確、確実に固定するための定着剤の層であり、ジグソーパズル(P)上に形成されるオプションの表面処理剤の層である。従って、転写操作のみで転写層またはインク受容層(i)から切断済みジグソーパズル(P)の表面上に転写像が完全、確実に転写できる場合にはこのインク定着層(m)はなくてもよい。
【0084】
インク定着層(m)を切断済みジグソーパズル(P)の表面上に塗布しておくことで、[図2]の(II)の(2)や図2]の(III)の(2)の写真に示すような剥れをなくすことができる。インク定着層(m)は切断済みジグソーパズル(P)の表面層(11、12)の片面または両面に形成できる。
【0085】
インク定着層(m)は、水転写紙(T)を剥離層(r)の所で転写層(i)を確実に分離して切断済みジグソーパズル(P)の表面上に確実に固定させる役目をする。従って、インク定着層(m)は転写層またはインク受容層(i)および画像(g)の材料を受け取り、その位置を固定、定着させる材料にする。そうしたインク定着剤は公知の材料の中から選択できる。本発明では水溶性の接着性材料、例えば澱粉、CMC、水溶性オレフィン樹脂、ポリビニルアルコール、糊、デキストリン、水溶性ウレタンおよびこれらの混合物の中から選択される接着剤をインク定着剤として使用できる。これらは安価に入手できるので好ましい。さらに、インク定着剤に溶剤に溶解させたゴム成分を含ませることもできる。インク定着剤は転写画像の品質に大きな影響を与えるので、その組成、塗装量は慎重に選択する必要がある。インク定着層(m)の塗工量は実験によって当業者が決定できる。
【0086】
本発明の好ましい実施例では上記インク定着層(m)の接着力を剥離層(r)の接着力よりも大きくする。そのためにインク定着層(m)と剥離層(r)の材料を変えるか、同じ材料で組成、性質等を変えることができる。例えば、インク定着層(m)と剥離層(r)とで異なる種類のポリビニルアルコールを使用するか、インク定着層(m)と剥離層(r)の材料を互いに変え、それぞれを澱粉、デキストリン、ポリビニルアルコール等の中から選択することができる。
【0087】
カール防止層(j)
「カール防止層(j)」は印刷時の水転写紙(T)のカール(反り)を防止、減少させるために、水転写紙(T)の転写層(i)とは反対側の支持体(s)の裏側表面上に設けられる層で、オプションの層である。すなわち、印刷時にカール(反り)をしない水転写紙(T)を使用する場合にはこのカール防止層(j)はなくてもよい。
【0088】
図2]の(IV)の(a)は大きくカールした状態の転写紙を示す概念的斜視図、(b)はその概念的断面図である。一般に水転写紙は防湿パウチ中に収容されており、使用時にパウチから取り出して印刷機にセットするが、パウチから取り出してから30秒後には空気中の湿気を吸収して転写紙が大きくカール(反る)ことが多い。カールする理由は水転写法で使用する転写紙の多くは水溶性高分子材料を使用するものが多いためである。さらに、多くの水転写紙(T)は厚さの薄い支持体(s)を使用して、十分な量の水を剥離層(r)へ供給している。そうした厚さの薄い支持体(s)では、水転写紙の転写層は親水性が高いため、保存袋から水転写紙を取り出した時に転写層が空気中の湿分を吸収し、転写紙がカールする。
【0089】
カール(反り)が大きくなると家庭用インクジェット印刷機に転写紙をセットするのが困難になる。特に、ハガキサイズやB5サイズのように小さなサイズの転写紙の場合には転写紙が印刷機中を正しく送られず、紙詰まり等の故障につながる。このカールの問題のために家庭用インクジェット印刷機の取り扱いに慣れていない主婦や子供は水転写法をあきらめることになる。
【0090】
被印刷シートのカール(反り)の問題を解決するための方法も多数特許出願されている。[特許文献15](特開2018202815号公報)には、基材(紙)上に塗布されるコーティング層の組成物を調節することで印刷後のカールを減らす方法が記載されている。[特許文献16](特開2016176170号公報)には印刷用紙の原紙の特性を調節してカールを減らす方法が記載されている。
【特許文献15】特開2018202815号公報
【特許文献16】特開2016176170号公報
【0091】
しかし、従来のカール防止方法の多くは「印刷後」の被印刷シートのカール量を減らすためのものであって、「印刷前」の被印刷シートのカール量を減らす方法は少ない。
【0092】
図3]の(III)に示すように、カール防止層(j)は水転写紙(T)の転写層(i)とは反対側の支持体(s)の裏側表面上に設けられる。カール(反り)の原因は支持体(s)の表面と背面の吸湿能が相違するためであるので、カール防止層(j)はその相違をキャンセルするような層にすればよい。従って、カール防止層(j)は転写層(i)と同じまたは同等な特性、特に表面張力を生じる材料の層にするのが好ましい。一般に、転写層(i)は水溶性高分子を含む材料の層であるので、カール防止層(j)の材料をこれらと同様な材料にすればカール(反り)は防止できる。
【0093】
本発明の好ましい実施例では、カール防止層(j)を水溶性接着剤の層にする。この水溶性接着剤はポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはそのエステル類、塩類およびその共重合物、エチレン-酢酸ビニル共重合物、ポリヒドロキシエチルメタアクリレートおよびその共重合体、デンプン類、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体の中から選択できる。カール防止層(j)は、水転写紙(T)の転写層(i)とは反対側の支持体(s)の裏側表面上に水溶性接着剤の層を塗布し、乾燥することで形成できる。その塗膜の厚さはカール(反り)を防止するのに十分な厚さであり、実験できめることができる。
【0094】
水溶性接着剤から成るカール防止層(j)が乾燥した後のそのままの状態で水転写紙(T)を使用することができる。これは粘着剤が塗布された郵便切手と同じ状態である。しかし、空気中の湿気を吸って粘着性を示し、印刷機中でロール等に付着するトラブルを避けるために、カール防止層(j)の上にバックアップ層(k)を付けておくのが好ましい。このバックアップ層(k)は透水性シート、例えば透水紙にすることができる。
【0095】
バックアップ層(k)は優れた透水性を有する必要があり且つカールを防止できるだけの剛性が必要である。また、カール防止層(j)およびバックアップ層(k)の厚さはそれらを含めた水転写紙(T)全体の厚さが家庭用印刷機の印刷シートの許容厚さである約0.3mmを超えないような厚さにする必要がある。
【0096】
容器(C)
本発明のジグソーパズル作成セットには切断済みジグソーパズル(P)を支持、保持または収容するための容器(C)をさらに含むのが好ましい。容器(C)は任意の容器にすることができ、容器(C)の一部に販売時の包装容器の役目をさせることもできる。以下、図面を用いて本発明の好ましい3つの容器すなわち(1)パズルユニット(J)を収容するブリスターパックから成る容器、(2)パズルユニット(J)を挟持する少なくとも一方が透明材料である2枚のシートから成る容器、(3)パズルユニット(J)を収容する透明ケース(TC)から成る容器を示す。
【0097】
(1)ブリスターパックから成る容器(C)
図6]は容器(C)がパズルユニット(J)を収容するブリスターパックから成る実施例を示している。ブリスターパックを透明にすることでそれをジグソーパズル(P)の展示容器として使用することができる。さらに、ブリスターパックから成るこの容器(C)は本発明方法を実施する時の位置決め具として利用することもできる。[図6]の(IV)に示すように、本発明のジグソーパズル作成セットの使用時にこのブリスターパックから成る容器(C)を利用することができる。ブリスターパックから成る容器(C)を使用することで、含水性有孔シート(W)から押し出される余分な水(d)を容器(C)中に溜めて、周囲を水で濡らさないようにすることができる。
【0098】
図6]の(I)は切断済みジグソーパズル(P)または本発明のパズルユニット(J)または完成品のジグソーパズルを絵はがきのようにスタンド(S)に立てて飾った状態を示し、(2)は(I)のA-A線による概念的な断面図である。スタンド(S)は任意のものを使用できる。
【0099】
スタンド(S)
図6]の(III)はスタンド(S)の一つの実施例を示す図で、左側の図はスタンド(S)の平面図、右側はその斜視図である。この実施例ではスタンド(S)の本体(50)をシート、例えば厚紙またはプラスチックシートから切り出し、折り線(52)をハーフカットする。使用時には折り線(52)の所で左右の翼片を折り曲げ、右側の斜視図に示すスタンド(S)にすることができる。必要に応じて、スタンド(S)を補強する補強片とそれを挿入するスリット(図示せず)を追加したり、左右の翼片から互いに係合する係合片(図示せず)を延ばしてかみ合わせることもできる。
本発明のジグソーパズル作成セットの販売時に、厚紙またはプラスチクシートからカットして作った軽量のスタンド(S)をオプションとして販売容器(N)中に同封するのが好ましい。
【0100】
図6]の(IV)はブリスターパックから成る容器(C)を用いて本発明方法を実施する時の説明図である。ブリスターパックから成るこの容器(C)は位置決め用のガイド(または治具)の役目をするので、本発明方法で、切断済みジグソーパズル(P)の表面上に画像を印刷した水転写紙(T)を配置する際に切断済みジグソーパズル(P)の上に水転写紙(T)を正確に位置決めできる。切断済みジグソーパズル(P)と水転写紙(T)の縦横寸法を同一にすることで、両者の相対位置を正確に一致させることができる。また、水転写紙(T)を切断済みジグソーパズル(P)の表面に押圧する際に余分な水が容器(C)中に溜まり、テーブル上に水が広がらない。さらに、含水性有孔シート(W)の縦横寸法を切断済みジグソーパズル(P)および水転写紙(T)の縦横寸法と同一にすることで、含水性有孔シート(W)上に重量物(ウエイト)を置いた時にブリスターパックから成る容器(C)の中で含水性有孔シート(W)を均一に押圧することができる。所定時間経過後に切断済みジグソーパズル(P)から剥離層(r)の所で水転写紙(T)を剥離することで、印刷した画像(g)を切断済みジグソーパズル(P)の表面上に転写することができる。
【0101】
(2)二枚のシート(1、2)から成る容器
図7]は2枚のプラスチックシート(1、2)で構成される容器(C)を示す本発明の好ましい他の実施例を示す図である。この容器(C)では2枚のプラスチックシート(1、2)の少なくとも一枚、特に、ジグソーパズの画像が表示される表面上を覆うプラスチックシート(1)は透明プラスチックシートにするのが好ましい。
【0102】
この2枚のプラスチックシート(1、2)で構成される容器(C)は切断済みジグソーパズル(P)または本発明のパズルユニット(J)または完成品のジグソーパズルを保持、挟持し、絵はがきのようにスタンド(S)に立てて展示するのに使用できる。
【0103】
図7]の(I)はフレーム(F)を付けた一枚のプラスチックシート(2)の中に切断済みジグソーパズル(P)が収容された状態を示している。他方のプラスチックシート(1)はヒンジの所で折り返して開かれている。[図7]の(II)は他方のプラスチックシート(1)をプラスチックシート(2)の上に重ね、全体を[図6]の(III)に示すスタンド(S)に立て掛けて展示した状態を示している。スタンド(S)は任意のものを使用できる。
【0104】
上記プラスチックシート(1、2)は任意の透明なプラスチックシートにすることができ、その厚さは0.3~5mm程度であり、0.5~2mm程度にするのが好ましい。透明なプラスチックシートは透明なポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)およびこれらの共重合体、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂等から任意に選択できる。ABS,ポリアミド、ポリアセタール、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂を使用することもできる。
【0105】
2枚のプラスチックシート(1、2)を別々に使用してもよいが、ヒンジ(3)を介して互いに連結することもできる。例えば、2枚のプラスチックシートを別体のヒンジ、例えば透明粘着テープで互いに連結させることができる。さらに、[図7]の(IV)に示すように、ヒンジ(3)を2枚のプラスチックシート(1、2)と一体成形することもできる。例えば、熱成形で1枚のプラスチックシートの中央部分の肉厚を薄くする(3‘)か、溶断刃で1枚のプラスチックシートの中央部分に複数のノッチ(3‘’)を形成するか、カッターで溝を作ってヒンジとすることもできる。さらに、ヒンジ(3)は2枚のプラスチックシートと一緒に射出成形、異形断面押出成形、加熱加工、切断加工等で作ることもできる。
【0106】
2枚のプラスチックシート(1、2)のヒンジとは反對側の開放端縁に、2枚のプラスチックシート(1、2)が意図せずに開くのを防止するための閉鎖手段(図示せず)を設けることができる。この閉鎖手段は公知の任意の手段にすることができる。例えば、2枚のプラスチックシート(1、2)の開放端縁の少なくとも一部を把持するクリップや、開放端縁全体をカバーする長尺のクリップにすることもできる。この長尺のクリップを外側フレームとして使用することもできる。また、磁性体をプラスチックシート(1、2)に埋込んだり、固定することで2枚のプラスチックシート(1、2)を磁力で閉鎖することもできる。さらには、再剥離が可能な粘着テープを閉鎖手段として使用することもできる。閉鎖手段(クリップ手段)を2枚のプラスチックシート(1、2)の開放端縁に一体成形した係合手段とすることもできる。
【0107】
図7]の(V)は2枚のプラスチックシート(1、2)から成るこの容器(C)を用いて本発明ジグソーパズル作成セット方法を使用する時の説明図である。[図7]の場合には、フレーム(F)中に収容した切断済みジグソーパズル(P)の表面上に画像を印刷した水転写紙(T)を配置し、その上に必要十分な量の水を含ませた含水性有孔シート(W)を配置する。上側のプラスチックシート(1)を他方のプラスチックシート(2)の上に重さね([図7]の(V)の状態)、上側のプラスチックシート(1)をさらに閉じる([図7]の(VI)の状態)と、含水性有孔シート(W)が圧縮され、含水性有孔シート(W)中に蓄えれていた水が水転写紙(T)を通って切断済みジグソーパズル(P)上に供給される。圧縮状態は一定時間維持する。
【0108】
この場合、含水性有孔シート(W)/水転写紙(T)/切断済みジグソーパズル(P)の3つを2枚のプラスチックシート(1、2)の間に挟持した状態で押圧力を加えるための重量物(ウエイト)の存在する場所(例えば、厚い本のページの間)へ移動させることができる。フレーム(F)は水転写紙(T)の位置決め手段の役目をする。また、フレーム(F)の中で含水性有孔シート(W)を均一に押圧することができる。この場合、水転写紙(T)を切断済みジグソーパズル(P)の表面に押圧する際に含水性有孔シート(W)から押し出される余分な水(d)をフレーム(F)で囲まれた下側プラスチックシート(2)の内部空間中に溜めて、テーブル上に水が広がらないようにすることができる。
所定時間経過後に切断済みジグソーパズル(P)から剥離層(r)の所で水転写紙(T)を剥離することで、印刷した画像(g)を切断済みジグソーパズル(P)の表面上に転写することができる。
【0109】
フレーム(F)
上記フレーム(F)は切断済みジグソーパズル(P)の外周を取り囲む寸法にするのが好ましく、また、上記プラスチックシート(1、2)のいずれか一枚に固着するのが好ましい。このフレーム(F)を上記ブリスターパックから成る容器(C)または[図8]、[図9]で説明する透明ケース(TC)から成る容器(C)の表面上および/または背面上に固着させることもできる。ブリスターパックから成る容器(C)の場合にはブリスターパックの外周壁面によってフレーム(F)の内側端縁を構成することがでる。ブリスターパックの湾曲部分に有色または装飾模様を有する粘着テープを貼り付けることで、ブリスターパックの湾曲部分を額縁模様に修飾することもできる。フレーム(F)は水転写紙(T)および含水性有孔シート(W)を設置する時の位置決めジグの役目もする。
【0110】
フレーム(F)は本発明のジグソーパズルの製造時にジグソーパズルと同じ材料でそれと同時に作るか、別体として作ることができる。フレーム(F)を利用することでジグソーパズルの組み立てが容易になる。また、フレーム(F)を彩色したり、装飾テープを貼り付けたりして装飾フレームとすることでジグソーパズルを絵画として鑑賞することができる。
【0111】
パズルユニット(J)
図8]は本発明で好ましく使用されるパズルユニット(J)を説明するため図である。このパズルユニット(J)は切断済みジグソーパズル(P)とそれを保持する容器(C)とからなる。ここでは容器(C)は支持シート(2)とその表面上に固定されたフレーム(F)とから成る。支持シート(2)は一般に透明プラスチック、例えば透明なポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)およびこれらの共重合体、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、ABS,ポリアミド、ポリアセタール、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等で作るのが好ましい。その厚さは0.3~3mm程度であり、0.5~2mm程度にするのが好ましい。支持シート(2)は紙や金属のシートでもよい。フレーム(F)はジグソーパズル(P)の外周を囲むもので、支持シート(2)と同じ材料で作ることができる。本発明の好ましい実施例では支持シート(2)はPP、フレーム(F)は発泡PEで作られる。フレーム(F)に着色したり、装飾シートを貼付けこともできる。
【0112】
図8]の(IV)は[図9]の(III)に示す透明ケース(TC)である。パズルユニット(J)は[図9]の(V)に示すように透明ケース(TC)中に挿入されて展示される。
【0113】
(3)透明ケース(TC)から成る容器(C)
図9]は本発明のさらに他の好ましい容器(C)の実施例である。ここでは容器(C)が透明ケース(TC)から成り、この透明ケース(TC)は支持脚(S)と一緒に「展示スタンド」として利用される。[図9]の(V)に示す状態で使用される。
【0114】
この「展示スタンド」は、透明なプラスチックで作られた透明カバー(T)と、この透明カバー(T)を起立した状態に支持する支持脚(S)とから成る。透明カバー(T)は単一シートを折り曲げて得られる表面部分(30)と、この表面部分の両側端縁部に接続した各側面部分(32)と、各側面部分の上記と反対側の側端縁部に接続した反転部分(31)とを有し、上記側面部分(31)および反転部分(32)は表面部分(30)に対して略平行に延び、上記反転部分(12)は表面部分(30)に向かって表面部分(30)との間の距離が次第に狭くなるように傾斜しており、上記支持脚(S)は支持脚素材(S’)の形をした単一シートから成り、この支持脚素材(S’)は正面起立部分(20)と、この正面起立部分(20)に連結した底面部分(21)と、この底面部分に連結した背面起立部分(22)と、この背面起立部分に連結した裏面支持部分(23)とを有し、支持脚素材(S’)は使用時に曲げ加工して支持脚(S)となり、曲げ加工して得られる支持脚(S)の正面起立部分(20)が透明カバー(T)の下端部を支持し、裏面支持部分(23)が透明カバー(T)の背面を支持する。
【0115】
図9]の(VI)、(VII)、(VIII)は本発明のジグソーパズル作成セットを使って作成した展示物品または上記パズルユニット(J)等を上記スタンドにセットした時のそれぞれ斜視図、側面図および底面図である。この透明ケース(TC)から成る容器(C)は本出願人の特開2022162885号公報に詳細に記載されている。
【0116】
図10]は本発明ジグソーパズル作成セットを展示販売する時の説明図で、パズルユニット(J)と水転写紙(T)を含水性有孔シート(W)とオプションのスタンド(S)と一緒にセットとして販売する場合を示している。[図10]の(I)は販売セットの概念的斜視図、(II)はその販売セットを展示容器(N)中に収容して展示シェルのピンに吊り下げた状態を示す概念的断面図である。この販売セット中には取扱い説明書の他に、作成したカスタムジグソーパズルを知り合いや友達に簡単に送るための郵送用封筒や、転写画像に光沢を与えるためのシリコン光沢剤やクリーム等をさらに同封することができる。
【0117】
本発明方法を使用することによって、「後印刷法」と「水転写法」とを組み合わせた時の従来法の欠点、特に転写層の切断作業が必要手あるという欠点が解消できる。本発明では転写層が手で破断できない連続フィルムを含まないことが必要であるが、転写後にその破断できない連続フィルムを切断済みジグソーパズル(P)から簡単に除去できる場合を排除するものではない。例えば、破断できない連続フィルムを転写操作の補助のために使用しても、本発明の範囲を逸脱するものではない。水転写層が「破断できない連続フィルムを含まない、または、形成しない」の判断は、水転写紙(T)の転写層をジグソーパズル側に実際に転写した後に、ジグソーパズルの各ピースを手で簡単且つきれいに分離できるか否かで判断する。すなわち、ジグソーパズルの各ピース上に転写した後の転写層をカッター等を使用して分離する必要のある場合には易破断材料から成る層ではないと判断する。
【0118】
本発明のジグソーパズル作成セットを使用することで一般的な家庭用インクジェット印刷機等を用いて写真等のプライベート画像を印刷し、印刷した画像を水転写法で切断済みジグソーパズル(P)上に転写してオンデマンド型のジグソーパズルを主婦や子供が容易かつ簡単に作ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明のジグソーパズルは老人の脳の衰えを防止する手段あるいは認知症の進行を遅らせる手段として特に有用である。昔の思い出の写真、楽しかった時の写真、家族写真や、印象に残っている画像等をジグソーパズルに転写し、ジグソーパズルとして遊ぶことによって脳の記録を呼び起こさせ、手と脳とを活動させることによって認知症の進行を遅らせることが期待できる。
【0120】
本発明のジグソーパズルはペットの記念写真を印刷したジグソーパズル、子供の成長を両親に見せるためのジグソーパズル、家族、友人、グループ間で写真や情報を交換するジグソーパズルとして使用できる。例えば、親子間、恋人同士、サークル仲間等の間でプライペートで写真や情報を送り、それをジグソーパズルとして遊ぶのに使用できる。
【0121】
本発明のジグソーパズルは学童の学習玩具として、または、学生の教育手段として使用できる。親が子供に覚えてほしい画像、例えば「九九計算」「漢字」「英語のスペル」「地図」「周期律表」等を親または学童がジグソーパズルに転写することでジグソーパズルとして遊ぶ時の反復記憶作用を利用して学童の暗記を助けることができる。また、本発明のジグソーパズルは親が幼児に見せたい画像を印刷する知育玩具としても使用できる。
【0122】
本発明のジグソーパズルは脳の反復記憶作用の活性化に有用であるので、反復記憶作用を必要とする他の分野で使用できる。
【0123】
切断済みジグソーパズル(P)は画像が印刷されていない無地のジグソーパズル:「ホワイトパズル」としても使用できる。「ホワイトパズル」として遊んだ後に、本発明のジグソーパズル作成セットを使用してプライベート画像を転写印刷することで、「ホワイトパズル」と「自分パズル」の2回楽しむことができる。また、「ホワイトパズル」のままの状態で相手先に送り、相手先で本発明のジグソーパズル作成セットを使用して相手方が好きな画像を転写印刷することもできる
以下、本発明方法の実施例を説明するが、本発明が下記の具体例に限定されるものではない。
【実施例0124】
実施例1
支持体(s)として通常の転写シートを使用し,その表面上に炭酸カルシウムを用いて目止め処理を行い、さらにシリコン溶液を塗布して剥離層(r)を形成した。この剥離層(r)の表面上にケン化度50モル%、平均重合度1000のポリビニルアルコール(PVA)のインク受理層を約15μmの厚さに塗布して転写層(i)を形成し、乾燥して水転写紙(T)とした。本発明ではPVA層が易破断材料からなる層となる。乾燥した後の転写層(i)の粘着性は郵便切手の裏面と同じ程度で、家庭用インクジェット印刷機に通すのに問題はない。
【0125】
切断済みジグソーパズル(P)は低発泡PE積層板から作った。すなわち、ポリエチレンの低発泡シート(発泡倍率1.5倍、厚さ2.5mm)の両面上に接着剤を用いて上質紙(厚さ0.25mm)を貼り付けた低発泡PE積層板をトムソン刃を有する型を用いてはがきサイズのジグソーパズル(寸法:10×15cm)の各ピースに切断して切断済みジグソーパズル(P)とした。
【0126】
水転写紙(T)の転写層(i)上に、家庭用インクジェット印刷機EPSON 805Aを用いて写真をカラーインク画像(g)で印刷し、インク画像(g)が乾燥するまで1分間放置した。乾燥後のインク画像(g)を含む転写層(i)にも粘着性に問題はない。乾燥後、インク画像(g)を含む転写層(i)上の印刷面を切断済みジグソーパズル(P)の表面上(11、12のどちらの面でもよい)に置き、水を含ませたティシュペーパ(16)を指(17)で強く押圧し、水転写紙(T)の全面が水が均一に含んだ状態になるまで水を水転写紙(T)中に浸透させた。約2分が経過後に、水転写紙(T)の支持体(s)の端縁部を摘まんで水転写紙(T)をゆっくりと剥離すると剥離層(r)の所で転写層(i)が剥離し、インク画像(g)を含む転写層(以下、印刷転写層、i)は切断済みジグソーパズル(P)上に転写された。その後、印刷転写層(i)が乾燥するまで放置する。乾燥後の転写(i)は切断済みジグソーパズル(P)に接着し、セロハンテープ剥離試験でも剥離しなかった。
【0127】
ジグソーパズルの各ピース(p)に分離するために隣接するピースの境界線(13)の所を曲げた。それによって転写層(i)は簡単に破断する。破断後に上下方向に移動させることで隣接するピース(p)を分離できる。この実施例1の印刷転写層(i)は易破断材料のPVA層であり、破断/分離ができない連続フィルムの層および/または手で破断、分離ができない連続フィルムと成る材料を含まないので、指で軽く曲げるだけで、印刷転写層(i)は破断できた。
【0128】
実施例2
水転写紙(T)を(株)和紙のイシカワ社から市販の「水転写紙」(水転写紙2という)に代えた。この転写紙2の転写層(i)は、手で簡単に破断、分離ができない連続フィルムの層および/または手で簡単破断、分離ができない連続フィルムと成る材料を含まないので、易破断材料から成る転写層(i)であるといえる。
実施例1と同じ操作を繰り返した。印刷転写層(i)は指で簡単に破断でき、各ピースの破断部分で印刷転写層(i)の画像が失われることもなかった。
【0129】
比較例1
水転写紙(T)を市販の下記転写紙3~7に代えた:
転写紙3 エーワン社の「転写シール」
転写紙4 サンリユウ社の「転写紙」
転写紙5 ミラクル工業者の「ミラクルシート」
転写紙6 ポリマークケミカル社の「無地転写紙」
転写紙7 SUNNYSCPA社の「Tappoo Paper」
転写紙8 SUNNYSCPA社の「Inkjet Waterslide decal paper」
転写紙9 Transourdream社の「インクジェット用水転写シート」
これらの転写紙3~9を使用し、実施例1と同じ操作を繰り返したが、転写後に得られる印刷転写層は手で破断できなかった。これらの転写紙3~9は連続層を含むため、易破断材料から成る転写層(i)を有していない。
【0130】
実施例3
実施例1と同じ操作を繰り返したが、実施例1のティシュペーパ(16)は使用しないで含水性有孔シート(W)を使用した。すなわち、この実施例3では、水転写紙(T)を切断済みジグソーパズル(P)の表面に押圧する前に、水転写紙(T)上に水を含ませた含水性有孔シート(W)を配置した([図5]の(2)参照)。
使用した含水性多孔質シート(W)は食品用の厚さが5mmの吸水マット(寸法:10×15cm)で、吸収させた水の量は吸水マットを吊り下げた時に水が滴り落ちない量であり、吸水マットを絞った時に約40gの水が吸水マット中に含まれていた。
次いで、含水性多孔質シート(W)の上に底が平らな鍋(重量は約1kg)を載せ、1分間押圧力を加えた([図5]の(2‘)参照)。その後、含水性多孔質シート(W)を取り外した([図5]の(2‘‘)参照)。
図5]の(3)で水転写紙(T)をゆっくりと剥離して印刷転写層(i)を切断済みジグソーパズル(P)上に転写させた。
この実施例では、含水性多孔質シート(W)を使用することで転写操作が圧倒的に容易になり、転写ミスが少なくなった。
【0131】
実施例4
実施例4と同じ操作を繰り返したが、切断済みジグソーパズル(P)として、その表面上にインク定着層(m)を形成させたものを使用した。インク定着層(m)はポリビニルアルコール(PVA)+デキストリン(50:50)の10%水溶液を切断済みジグソーパズル(P)の表面上に塗布し、乾燥させて形成した。
このインク定着層(m)で表面処理した切断済みジグソーパズル(P)を使用することで、切断済みジグソーパズル(P)の転写ミスがほぼ無くなった。
【0132】
実施例5
実施例2と同じ操作を繰り返した。使用した水転写紙は薄いため保存袋から取り出して放置しておくとカールするため、背面にカール防止層(j)を貼付した。カール防止層(j)はケン化度10モル%、平均重合度100のポリビニルアルコール(PVA)の層を塗布して形成した。カール防止層(j)上にはバックアップ層(k)として透水紙を貼付した。水転写紙(T)とこれらカール防止層(j)およびバックアップ層(k)とを含めた全体の厚さは0.2mmであった。
カール防止層(j)およびバックアップ層(k)を貼付することでインクジェットプリンターの給紙トラブルはほぼゼロになった。
【0133】
実施例6
実施例1と同じ操作を繰り返したが、水転写紙(T)を下記の方法で作成した。
片面クレーコート耐水紙(120g/m2)の支持体(s)上にシリコン剥離層を塗布し、この剥離層上にシリカ微粒子をポリビニルアルコール(PVA)で結着した中間層を塗布し(厚み約lμm)、その上に重合度約1000のカチオン変性ポリビニルアルコール90部とエチレングリコール10部を混合したインク受容層(乾燥厚み約10μm)を形成して易破断材料からなる層とした。
転写結果は実施例1と同様で、印刷層はピース間できれいに分断され、各ピースのエッジの部分にギザギザができることはなかった。
【0134】
実施例7
実施例1と同じ操作を繰り返したが、水転写紙(T)を下記の方法で作成した。
支持材料として片面クレーコート耐水紙(120g/m2)を用い、この支持材料にシリコン系剥離層を塗布した。この剥離層上にインク受理層としてのポリビニルアルコー ル(ケン化度50モル%、平均重合度1000)を塗布した(55g/m2
転写結果は実施例1と同様で、印刷層はピース間できれいに分断され、各ピースのエッジの部分にギザギザができることはなかった。
【符号の説明】
【0135】
P 切断済みジグソーパズル
T 水転写紙
W 含水性有孔シート
g インク画像
m インク定着層
s 支持体
r 剥離層
j カール防止層
p ピース
C 容器
F フレーム
J パズルユニット
N 展示容器
S スタンド
TC 透明ケース
図1
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図10