(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067568
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】舟形容器
(51)【国際特許分類】
B65D 5/24 20060101AFI20240510BHJP
B65D 5/40 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B65D5/24 E
B65D5/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177757
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】506084003
【氏名又は名称】高津紙器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(72)【発明者】
【氏名】長野 香織
【テーマコード(参考)】
3E060
【Fターム(参考)】
3E060AA07
3E060AB15
3E060BC04
3E060DA21
3E060DA30
3E060EA03
3E060EA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】液体が隙間から漏れることを防止し、かつ形状に優れた舟形容器を提供する。
【解決手段】シート状の基材10を折り上げて成る舟形容器であって、長方形状の底面2と、本体前後方向において底面接続する船首部3と、本体左右方向において底面接続する側壁部4と、船首部と側壁部の中間に配置され、船首部と側壁部とを連結する貼着部5と、から成り、船首部及び側壁部は、底面との境界線を折罫として、これを谷折りに折り曲げることによって底面に対して起立し、貼着部は、底面の頂点から貼着部に延出する二本の境界線5b、5cによって三の貼着片51、52、53に区分され、境界線を折罫として貼着片同士をウォータイト貼り方式にて貼り合わせて船首部と側壁部とを結合することによって、容器の四隅を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材を折り上げて成る舟形容器であって、
長方形状の底面部と、
本体前後方向において前記底面部と接続する船首部と、
本体左右方向において前記底面部と接続する側壁部と、
前記船首部と側壁部との中間に配置され、当該船首部と側壁部とを連結する貼着部と、
から成り、
前記船首部及び側壁部は、前記底面部との境界線を折罫として、当該折罫を谷折りに折り曲げることによって当該底面部に対して起立し、
前記貼着部は、前記底面の頂点から当該貼着部上に延出する二本の境界線によって三の貼着片に区分され、前記境界線を折罫として当該貼着片同士をウォータータイト貼り方式にて貼り合わせて前記船首部と側壁部とを結合することによって、容器の四隅を形成する、
ことを特徴とする舟形容器。
【請求項2】
前記貼着部を構成する三の貼着片から隣り合う二の貼着片を選択して二つ折りにし、
前記二つ折りにした貼着片を、さらに前後何れかに折り畳んで、残る一の貼着片または前記船首部もしくは前記側壁部との間で三つ折りにした上で固定する、
ことを特徴とする請求項1記載の舟形容器。
【請求項3】
前記各貼着部を構成する三の貼着片は、当該各貼着片の両側の境界線が交差して成す角が略同角度であることを特徴とする、請求項1又は2記載の舟形容器。
【請求項4】
前記底面部と船首部との境界線は、外向きに湾曲した曲線であって、当該曲線を折罫とすることを特徴とする、請求項1乃至3記載の舟形容器。
【請求項5】
前記側壁部の上辺に接続する側壁折返片を備え、
前記側壁折返片は、前記上辺を折罫として容器の外側に向けて折り返され、前記側壁部の表面に重ね合されている
ことを特徴とする請求項1乃至4記載の舟形容器。
【請求項6】
前記二つ折りにした貼着片が折り畳まれて前記側壁部と三つ折りなったときに、当該二つ折りにした貼着片と前記側壁折返片とが干渉する範囲について、当該側壁折返片に切欠きを設けている、
ことを特徴とする請求項5記載の舟形容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙等を用いた基材を折って舟形を形成する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ファストフードや惣菜等の調理された食品を販売する際に、持ち帰りのための調理物を収容する食品容器であって、かつ、それがそのまま食器皿として使用され、そこから直接調理物を食することも可能なように作られたものがある。このような容器は食品トレーとも呼ばれる。
一般に係る容器は、食器皿と異なり、上から見ると長方形、若しくはこれに近い形状をしており、かつ、食器皿より深くなっている。このため、蓋をすれば調理物を収容して持ち運ぶことに支障がない構造となっている。
また、同容器は一般に、収納用の容器に比べると浅く作られており、また側壁がテーパ状に形成されているので、直接そこから調理物を取って食べやすい構造ともなっている。
【0003】
そのような容器の中でも特にたこ焼きや唐揚げ等に用いられるものとして、舟の形状を模した舟形容器がある。舟形容器は食品容器として前述のような効果を備えるだけでなく、調理品をそこに収容した際に、その形状によってちょうど舟盛りのように、それが料理の盛付けとして見栄えがするという効果がある。
【0004】
舟形容器には型押しによって成形される樹脂製のものもあるが、近年は環境問題への配慮から紙製のものの需要が増加してきている。紙製の舟形容器の大部分は、ブランクと呼ばれるシート状の基材を折り曲げて作られる方式のものである。
【0005】
紙製の舟形容器の例として特許文献1が挙げられる。同文献の舟形容器は、基材に対して、前後の船首となる部分と左右の側壁となる部分との境界に切れ込み分離させている。その上で両部分を折り曲げて起立させ、互いに重なり合った部分を貼り合わせることによって容器の四隅を形成している。さらに、前後の側壁に折罫を入れ、前記貼り合わせを調整することによって、実際の舟の船首の先細りの形状、すなわち先に向かうほど幅が狭くなる形状を呈している。
【0006】
なお、実際の船舶においては、前方の先の尖った部分を船首、後方の比較的丸まった部分を船尾と表現するが、ここで挙げられる舟形容器については、長軸方向の末端部分は双方とも先が尖った船首の形状をしており、前後の区別がないため、何れも船首部と表現している。以下、先行例および本発明に係る舟形容器についても同様とする。
【0007】
前述のような容器の四隅の構造は、貼合わせ部分(以下、貼着部)に微小な隙間を生じることが多く、調理物を収容した際にソース等の液体状のものがそこから漏れ出てしまう問題がある。
【0008】
特許文献2の舟形容器は、基材に切れ込みを入れることなく、船首となる部分と側壁となる部分との間を折り畳んで貼り合わせるウォータータイト貼りと呼ばれる手法を用いている。これによって、貼り合わせ部分に隙間が生じることはなくなるため、液体状のものがそこから漏れ出す問題は生じない。
【0009】
しかしながら、この種の容器は、皿として使用する便宜上、各側壁が外側に傾斜したテーパ状に形成しなければならない制約があり、本文献の例のようにウォータータイト貼りを用いると各側壁が上に拡がった形状を採らざるを得なくなる。従って、特許文献1の例のような船首の先細りの形状を的確に再現することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2014-237469号公報
【特許文献2】実用新案登録第3042384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のような問題を鑑み、本発明が解決しようとする課題は、貼着部に隙間が生じないようウォータータイト貼りの手法によって同部を形成し、かつ、舟形により近く、見栄えのよい形状をもたせることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前期課題を解決するために、本発明にかかる舟形容器は、シート状の基材を折り上げて成る舟形容器であって、長方形状の底面部と、本体前後方向において前記底面部と接続する船首部と、本体左右方向において前記底面部と接続する側壁部と、前記船首部と側壁部との中間に配置され、当該船首部と側壁部とを連結する貼着部と、から成り、前記船首部及び側壁部は、前記底面部との境界線を折罫として、当該折罫を谷折りに折り曲げることによって当該底面部に対して起立し、前記貼着部は、前記底面の頂点から当該貼着部上に延出する二本の境界線によって三の貼着片に区分され、前記境界線を折罫として当該貼着片同士をウォータイト貼り方式にて貼り合わせて前記船首部と側壁部とを結合することによって、容器の四隅を形成することを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる舟形容器は、前記貼着部を構成する三の貼着片から隣り合う二の貼着片を選択して二つ折りにし、前記二つ折りにした貼着片を、さらに前後何れかに折り畳んで、残る一の貼着片または前記船首部もしくは前記側壁部との間で三つ折りにした上で固定することを特徴とする。
【0014】
また、前記各貼着部を構成する三の貼着片は、当該各貼着片の両側の境界線が交差して成す角が略同角度であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる舟形容器は、前記底面部と船首部との境界線は、外向きに湾曲した曲線であって、当該曲線を折罫とすることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる舟形容器は、前記側壁の上辺に接続する側壁折返片を備え、前記側壁折返片は、前記上辺を折罫として容器の外側に向けて折り返され、前記側壁部の表面に重ね合されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる舟形容器は、前記二つ折りにした貼着片が折り畳まれて前記側壁部と三つ折りなったときに、当該二つ折りにした貼着片と前記側壁折返片とが干渉する範囲について、当該側壁折返片に切欠きを設けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、調理物が容器に収容されたときに、ソース等の液体が漏れ出すことがない。同時に、対になった側壁および貼着部がテーパ状を保ちつつ、船首部分は先細りの形状を持つことができる。これによって本舟形容器の形状は視覚的に優れ、調理物は当該形状と相まって盛付けとして見栄えのよいものとなることができる。
【0019】
また、貼着片の両側の境界線が交差して成す角の角度が何れも略同角度に設定されていることにより、当該3つの貼着片の輪郭がほぼ一致して重なり合う。このことによって貼着片同士が重なった部分が目立たなくなり、舟形容器の形状として視覚的に優れたものとなる。
【0020】
また、船首部と底部との境界線の折罫を外向きに湾曲した曲線にすると、それに呼応して船首部自体も外向きに湾曲する。これによって、より実際の舟に近い形状を持たせることができるため、舟形容器の形状として視覚的にさらに優れたものとなる。同時に、船首部の当該形状に伴って底面が凸状に盛り上がるため、容器が置かれた面と底面との間に隙間が生じ、通気性も兼ね備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1にかかる舟形容器の展開図(基材の平面図)である。
【
図5】実施例2にかかる舟形容器の展開図(基材の平面図)である。(実施例2)
【
図8】実施例3にかかる舟形容器の展開図(基材の平面図)、および斜視図である。
【
図9】実施例4にかかる舟形容器の展開図(基材の平面図)、および斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態につき説明する。
【実施例0023】
図1は、本実施例にかかる舟形容器の基材10、すなわち当該容器を展開したものを示す。
図2は基材10を組み立てた容器本体1である。両図において組み立て前後で対応する部分には同じ符号を付している。以下、同様に、組み立て前後において対応する部位については同一の名称および符号を用いる。また、後述する山折り、または谷折りとは基材10を平面視した場合の呼び方である。
【0024】
なお、船首部、側壁部、および、貼着部は、前後および左右で対になって存在するが、その形状は対称であるため、対になって存在する何れか一方にのみに符号を振り、他方は対応する部分で同じ符合が割り当てられるが、表示は省略した。以下に参照する図面においても同様である。
【0025】
基材10の中央には長方形状の底面2が配置されている。底面2の長軸方向の両側には船首部3が配置されている。船首部3は折罫3a、すなわち底面2の短辺を谷折りにして、底面2に対して起立させる。
底面2の短軸方向の両側には側壁部4が配置されている。側壁部4は折罫4a、すなわち底面2の長辺を谷折りにして、底面2に対して起立させる。
【0026】
底面2の外周上の、船首部3と側壁部4とに挟まれた位置に貼着部5が配置されている。貼着部5は底面2の頂点を中心とした扇状の形状を有しており、両端は前記底面2の頂点から外側に向かって伸びる折罫5a、5dを境界線として各々船首部3、側壁部4と接続している。
【0027】
貼着部5は3つの貼着片51、52、および53から構成される。貼着片51、52、および53は、
図1に示す通り、底面2から貼着部5上に延出する折罫5bおよび5cを境界線として、各々に区分される。
【0028】
貼着部5は、前記3貼着片をウォータータイト貼りの手法を用いて貼り合わせることによって、本容器の四隅を形成する。まず、前記3貼着片のうち、隣合う2つを選択し、その2つ間の折罫を山折りまたは谷折りにして二つ折りにし、当該2貼着片の裏同士または表同士を突き合せる。次に二つ折りにした2貼着片を前後何れか残る1つの貼着片がある方に折り畳み、3貼着片を三つ折りの状態にする。最後に貼着片の突き合わされた2組の面の両方または一方を貼り合わせて固定することによって四隅の部分が完成する。
【0029】
具体的には、例えば
図3Aに示すように、まず、折罫5bを谷折りにして貼着片51と52とを二つ折りの状態にして、両片の表面同士を突き合せ(以下、突合部A)、次に、この状態で折罫5cを山折りにして貼着片52と53とを二つ折りの状態にして、両片の裏面同士を突き合せる(以下、突合部B)。こうして、3貼着片を三つ折りの状態にし、最後に突き合わされた面同士を貼り合わせる。このとき、突合部Bを貼り合わせれば、突合部Aについては、外側への押圧によって固定されるのでこれを必ずしも貼り合わせる必要はない。
【0030】
貼着部5の貼り合わせ方法については、前述のようにまず隣り合う2貼着片二つ折りにした上で、前述とは異なり、これを残る1つの貼着片があるのと逆の方に折り畳んでもよい。この場合、二つ折りになった2貼着片は、船首部3または側壁部4と折り重なって三つ折りになる。この状態で、前述と同様に突合部を貼り合わせることによって固定する。
【0031】
例えば、
図3Bに示すように、貼着片51と52とを重ね合わせて、前述とは逆に左右側壁4側に折り返す。すなわち、同図に示すように、折罫5aと5bとが、山折りまたは谷折りの何れか互いに逆の向きに折り曲げられ、貼着片51と、52と、および側壁部4とが三つ折りの状態になるようにする。この状態で貼着片51と側壁部4とを貼り合わせて固定する(
図4B)。貼着片51と52とは、前述と同様の理由で必ずしも貼り合わせる必要はない。
以上のようにして貼着部5によって成る四隅を形成し、同時に船首部3および側壁部4を底面2に対して起立させることによって舟形容器1が完成する。
【0032】
図1および
図2に示すように、船首部3は側壁部4より高く設計されている。また前後側壁3は先に向かうほど幅が狭くなる台形状を呈している。これらの特徴によって船首が前に突き出し、かつ、先が細まった舟の形状を再現することができる。
【0033】
貼着部5に採られるような、基材に切込みを入れることなく、扇状に折罫を入れて折り込むだけで容器の側壁を形成するような手法を、前述の通り、ウォータータイト貼りと称するが、通常は本件のような3片ではなく、2片によって構成される。その場合、前述の特許文献2の例にみられるように船首部と側壁部との両方を上方に拡がるようにテーパ状に傾けた場合、船首も先に向かうほど幅が広がる形状を採らざるを得ない。
【0034】
しかし、本発明のように3片を貼り合わせるような構造にして船首部と側壁部との間に独立した貼着部5を設けることによって、容器の周囲を構成する船首部3、側壁4、及び貼着部5の全てが上方に拡がって、かつ、船首の先細りの形状にすることができる。
【0035】
また、折罫5aと5bとがなす角51a、折罫5bと5cとがなす角52a、および、折罫5cと5dとがなす角53aが略同角度に揃えられていることによって、
図4に示すように、容器の外側からみて折罫5bと5cとが、内側からみて折罫5aと5cとが重なり合い、折り畳み部分を目立たなくすることができる。
【0036】
角51a、52a、および、53aの各角度としては、前述の舟の形状を再現しつつ、食器皿の機能を保つことも考慮すると、各々29度、28度、28度に設定することが最適である。3つの角度が正確に一致しないのは、基材の厚みによって、厚みが無いと想定した場合と比較して折目の位置がずれることを考慮して調整したためである。
【0037】
本発明の係る舟形容器の折罫については、種々の手法を採用することができる。特に折目の山側に、紙を完全に貫通してしまわないように切れ込みを入れるハーフカット手法を施すことによって、折目にシャープな形状を持たせることができる。また、切れ込みは紙を貫通することなく、途中で止まっているので、容器内の液体が漏れ出すことはない。
【0038】
さらに、折罫3aには前記ハーフカット手法を施さず、通常の折目加工とすることで、折り曲げ部分の形状を元に戻そうとする反発力が得られる。これによって船首部3が外側に反って開こうとする力が常に働くこととなり、より良く船首の形状が維持される。
【0039】
本実施例において、容器の形状は前後で対称に形成されているが、特にこれに限定されることはなく、船首部3および貼着部5は前後の何れか一方にのみ配置されていてもよい。以下、実施例2乃至4についても同様である。
折罫の加工については、実施例1と同様に折罫3b以外にはハーフカット手法を施しつつ、折罫3bは通常の折目加工とすることで折り曲げ部分の形状を元に戻そうとする反発力が、ハーフカット手法を施した折罫よりも強くなる。これによって船首部3が外側に反って開こうとする力が常に働くこととなり、さらに良く船首の形状が維持される。