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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006759
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】絶縁監視装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20240110BHJP
   G01R 31/12 20200101ALI20240110BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R31/12 B
H02H3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107947
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】中島 仁
【テーマコード(参考)】
2G014
2G015
5G142
【Fターム(参考)】
2G014AA04
2G014AA19
2G014AA23
2G014AB33
2G014AC15
2G015AA15
2G015AA27
2G015BA04
2G015BA06
2G015CA01
2G015CA20
5G142AA15
5G142AB01
5G142AC06
5G142BC02
5G142DD03
(57)【要約】
【課題】 絶縁劣化の予兆を検知でき、更に絶縁劣化場所の特定をし易い絶縁監視装置を提供する。
【解決手段】 キュービクル7への引き込みケーブル6に取り付けた第1ZCT2aと、引き込みケーブル6の遮蔽部材11のA種接地線12aに取り付けた第2ZCT2bと、キュービクル7の主遮断装置72のA種接地線12bに取り付けた第3ZCT2cと、絶縁劣化の予兆を判断する予兆判断部4と、予兆判断部4の判断結果を通知する通知部5とを有し、予兆判断部4は、第2ZCT2b及び第3ZCT2cのうちの一方と、第1ZCT2aとが同時に一定値以上の異常値を示す零相電流を検知したら絶縁劣化予兆有りと判断し、異常値を検知したZCT2の場所情報を含む予兆検知信号を通知部5に送信する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧受電設備への引き込みケーブルに取り付けた第1零相変流器と、
前記引き込みケーブルの遮蔽部材の接地線に取り付けた第2零相変流器と、
前記高圧受電設備の高圧機器のA種接地線に取り付けた第3零相変流器と、
前記零相変流器が出力する零相電流をデジタル信号に変換する信号変換器と、
絶縁劣化の予兆を判断する予兆判断部と、
前記予兆判断部の判断結果を通知する通知部とを有し、
前記信号変換器は、個々の前記零相変流器に一体に或いは近傍に配置されて、検出した零相電流がデジタル変換されて前記予兆判断部に送信されると共に、
前記予兆判断部は、前記第2零相変流器及び前記第3零相変流器のうちの何れか一方と、前記第1零相変流器とが同時に一定値以上の異常値を示す零相電流を検知したら絶縁劣化予兆有りと判断し、
前記異常値を示した零相変流器の場所情報を含む予兆検知信号を前記通知部に送信することを特徴とする絶縁監視装置。
【請求項2】
前記高圧受電設備は、前記引き込みケーブルが接続されて高電圧が供給される第1キュービクルと、前記第1キュービクルを経由した送りケーブルで高電圧が供給される第2キュービクルとを備え、
前記第1~第3零相変流器は、前記第1キュービクルに対して設置されると共に、前記送りケーブルに取り付けた第4零相変流器と、
前記送りケーブルの遮蔽部材の接地線に取り付けた第5零相変流器と、
前記第2キュービクルに設置されている高圧機器のA種接地線に取り付けた第6零相変流器と、を有し、
これらの零相変流器が検出した零相電流情報は前記予兆判断部に送信され、
前記予兆判断部は、前記第5零相変流器及び前記第6零相変流器のうちの何れか一方と、前記第1零相変流器及び第4零相変流器とが同時に一定値以上の異常値を示す零相電流を検知したら、第2キュービクルの高電圧側で絶縁劣化予兆有りと判断し、
前記異常値を示した零相変流器の場所情報を含む予兆検知信号を前記通知部に送信することを特徴とする請求項1記載の絶縁監視装置。
【請求項3】
前記予兆判断部は、絶縁劣化の予兆有りと判断する前記零相変流器の組み合わせと、絶縁劣化発生エリアの関連付けを記憶する記憶部を有し、
絶縁劣化予兆有りと判断したら、前記異常値を検知した零相変流器の組み合わせに対応する絶縁劣化発生エリアの情報を、前記記憶部から読み取って前記予兆検知信号に添付して送信することを特徴とする請求項1又は2記載の絶縁監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧受電設備で発生する地絡事故を未然に防止するための絶縁監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧引き込みケーブルの地絡を検知する手段として高圧地絡継電器がある。この高圧地絡継電器は、50msec以上連続で地絡電流が流れたら地絡発生と判断して、高圧受電設備を引き込み線から遮断する制御を実施した。
この場合、高圧地絡継電器は地絡を検知したら遮断操作するため、負荷稼働中であっても予告なく遮断される場合が発生し、負荷設備の故障等予期しない事態が発生する場合があった。
この対策として、例えば特許文献1に開示された技術がある。これは、高圧地絡継電器が地絡と判断する前の予兆現象を捉えて警報を発する技術であり、電流幅が3サイクルに至らない針状波の零相電流が一定期間内に複数回検出されたら予兆現象と捉えて、地絡注意信号を出力させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-19045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術は、地絡発生を受けて高圧地絡継電器が遮断操作する前に、地絡の予兆を検出して地絡注意信号を出力するため、電路が遮断される前に対策を講じることが可能であった。
しかしながら、50msec未満の地絡電流、特に1msec以下のヒゲ状の地絡電流を検知することはできず、絶縁劣化の予兆を検出することはできなかった。また、地絡注意信号を受けて絶縁劣化場所(地絡発生場所)を突き止めて対策を講ずる必要があるが、場所の特定は簡単では無く多くの時間を要する作業であった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、絶縁劣化の予兆を検知でき、更に絶縁劣化場所の特定をし易い絶縁監視装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明に係る絶縁監視装置は、高圧受電設備への引き込みケーブルに取り付けた第1零相変流器と、引き込みケーブルの遮蔽部材の接地線に取り付けた第2零相変流器と、高圧受電設備の高圧機器のA種接地線に取り付けた第3零相変流器と、零相変流器が出力する零相電流をデジタル信号に変換する信号変換器と、
絶縁劣化の予兆を判断する予兆判断部と、予兆判断部の判断結果を通知する通知部とを有し、信号変換器は、個々の零相変流器に一体に或いは近傍に配置されて、検出した零相電流がデジタル変換されて予兆判断部に送信されると共に、予兆判断部は、第2零相変流器及び第3零相変流器のうちの何れか一方と、第1零相変流器とが同時に一定値以上の異常値を示す零相電流を検知したら絶縁劣化予兆有りと判断し、異常値を示した零相変流器の場所情報を含む予兆検知信号を通知部に送信することを特徴とする。
この構成によれば、引き込みケーブルを含む複数ヶ所で、同時に一定値以上の零相電流が検出されたら、即ち引き込みケーブルを含む複数ヶ所で同時に地絡放電が発生したら絶縁劣化予兆有りと判断する。よって、複数ヶ所の地絡放電に基づいて判断することで、絶縁劣化の予兆の誤検知を防止できるし、高圧電路の絶縁劣化を初期段階で検知して地絡事故に至る前に対処することが可能となる。
また、地絡放電検出場所の情報が通知されるため、発生エリアの限定が可能であり、発生場所の特定がし易い。
加えて、検出された一定値以上の異常値を示す零相電流の情報はデジタル化されて予兆判断部へ送信されるため、ノイズにより予兆判断部が誤動作するのを削減できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、高圧受電設備は、引き込みケーブルが接続されて高電圧が供給される第1キュービクルと、第1キュービクルを経由した送りケーブルで高電圧が供給される第2キュービクルとを備え、第1~第3零相変流器は、第1キュービクルに対して設置されると共に、送りケーブルに取り付けた第4零相変流器と、送りケーブルの遮蔽部材の接地線に取り付けた第5零相変流器と、第2キュービクルに設置されている高圧機器のA種接地線に取り付けた第6零相変流器と、を有し、これらの零相変流器が検出した零相電流情報は予兆判断部に送信され、予兆判断部は、第5零相変流器及び第6零相変流器のうちの何れか一方と、第1零相変流器及び第4零相変流器とが同時に一定値以上の異常値を示す零相電流を検知したら、第2キュービクルの高電圧側で絶縁劣化予兆有りと判断し、異常値を示した零相変流器の場所情報を含む予兆検知信号を通知部に送信することを特徴とする。
この構成によれば、送りケーブルを含む第2キュービクル側の複数ヶ所で、同時に一定値以上の零相電流が検出されたら、即ち送りケーブルを含む第2キュービクル側の複数ヶ所で地絡放電が発生したら第2キュービクル側で絶縁劣化予兆有りと判断する。よって、複数ヶ所の地絡放電に基づいて判断することで、絶縁劣化の予兆の誤検知を防止できるし、第2キュービクル側の高圧電路の絶縁劣化を初期段階で検知して地絡事故に至る前に対処することが可能となる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、予兆判断部は、絶縁劣化の予兆有りと判断する零相変流器の組み合わせと、絶縁劣化発生エリアの関連付けを記憶する記憶部を有し、絶縁劣化予兆有りと判断したら、異常値を検知した零相変流器の組み合わせに対応する絶縁劣化発生エリアの情報を、記憶部から読み取って予兆検知信号に添付して送信することを特徴とする。
この構成によれば、予兆検知信号が送信された通知部では、絶縁劣化の通知に合わせて絶縁劣化が発生したエリア情報を通知できる。よって、キュービクルの管理者は検査エリアを限定でき、利便性が良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、引き込みケーブルを含む複数ヶ所で、同時に一定値以上の零相電流が検出されたら、即ち引き込みケーブルを含む複数ヶ所で同時に地絡放電が発生したら絶縁劣化予兆有りと判断する。よって、複数ヶ所の地絡放電に基づいて判断することで、絶縁劣化の予兆の誤検知を防止できるし、高圧電路の絶縁劣化を初期段階で検知して地絡事故に至る前に対処することが可能となる。
そして、地絡放電検出場所の情報が通知されるため、発生エリアの限定が可能であり、発生場所の特定がし易い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る絶縁監視装置の一例を示す構成図である。
図2】信号変換器の動作原理図である。
図3】信号変換器の入出力波形の説明図である。
図4】信号変換器の入出力波形の他の例の説明図である。
図5】予兆判断部のブロック図である。
図6】絶縁劣化予兆有りと判断する零相変流器の組み合わせ説明図であり、(a)は第1零相変流器の出力に基づく第1信号変換器の出力波形、(b)は第2零相変流器の出力に基づく第2信号変換器の出力波形、(c)は第3零相変流器の出力に基づく第3信号変換器の出力波形を示している。
図7】2つのキュービクルから成る高圧受電設備の絶縁監視装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る絶縁監視装置の一例を示す構成図であり、絶縁監視装置1は、複数の零相変流器(以下、「ZCT」とする。)2、ZCT2が出力するアナログ信号をデジタル変換する信号変換器3、絶縁劣化の予兆発生を判断する予兆判断部4、判断結果を外部に通知する通知部5により構成されている。
図1において、6は電力会社より供給される交流6600V等の高電圧の電力を引き込む引き込みケーブル、7は高圧受電設備としてのキュービクルである。
各ZCT2と信号変換器3とは対を成しており、信号変換器3の出力は信号線L1~L3を介して予兆判断部4に送信される。
【0012】
キュービクル7には、受電した高電圧電力を負荷(図示せず)に供給するために、高電圧を低電圧に変換する変圧器71が収容されており、引き込みケーブル6は、主遮断装置(断路器)72、高圧コンデンサ設備73等を介して降圧する変圧器71に接続されている。変圧器71で降圧された電力は、配電盤8等を介して図示しない負荷に供給される。
【0013】
ZCT2及び信号変換器3は、この高圧受電設備に対して3台(第1~第3ZCT2a~2c、第1~第3信号変換器3a~3c)設置されている。
具体的に、キュービクル7の高圧側の3ヶ所に設置され、第1ZCT2aは引き込みケーブル6に取り付けられている。引き込みケーブル6は、三相交流が通電される3本のケーブルで構成されており、この三相交流に対して第1ZCT2aが取り付けられている。第2ZCT2bは、引き込みケーブル6の周囲に巻回された銅テープ等から成る遮蔽部材11のA種接地線12aに対して取り付けられている。第3ZCT2cは、キュービクル7内に設置されている主遮断装置72、高圧コンデンサ設備73等の高圧機器の共通のA種接地線12bに対して取り付けられている。
【0014】
信号変換器3は、ZCT2毎に一体に或いは近傍に設置され、サンプル・ホールド回路、コンパレータ回路を具備し、ZCT2が地絡放電を受けて出力する急峻なヒゲ状の零相電流波形のアナログ信号をデジタル信号に変換、即ちA/D変換して出力する。
図2は信号変換器3の原理説明図、図3は信号変換器3の入力と出力の関係を示す波形説明図であり、この図2,3を参照して信号変換器3の動作を説明する。図2において、31は積分用コンデンサ、32は判定回路、33は積分用コンデンサ31を蓄電させる充電接点、34は積分用コンデンサ31を放電させる放電接点である。尚、積分用コンデンサ31は、電流を一時的に蓄積する別の形態であっても良い。
図3は計測周期tを計測対象の電圧周期に連動してオン/オフ動作させた場合を示す説明図であり、図3(a)はZCT2の出力波形、図3(b)は積分波形(積分用コンデンサ31の蓄電電圧)、図3(c)は判定回路32の出力波形である。
【0015】
充電接点33、放電接点34のオン/オフの計測周期tは任意に変更でき、例えば図3に示すように計測対象の電圧周期(正負反転)に連動させても良い。図3では、充電接点33は商用電力の電圧が正の間、或いは負の間オン状態にあり、正負反転時のみオフ動作する。放電接点34は正負反転時のみオン動作する。
この結果、図3(b)に示す積分波形が生成され、図3(a)に示すような地絡放電による急峻なヒゲ状の波形Qが発生したら、予め設定された一定の値(閾値T)を上回る積分波形が生成される。
【0016】
判定回路32は閾値T(図3(b)に示す)を記憶しており、積分用コンデンサ31の蓄電量が閾値Tを超えたら、図3(c)に示すように「1」の信号を出力する。即ち、地絡放電検出信号を出力する。そして、このような信号の生成が、サンプル・ホールド回路及びコンパレータ回路により実施される。地絡放電検出信号は、例えば商用電力の電圧半周期tの幅で出力される。
【0017】
尚、ヒゲ状の波形Qは、1msec以下の短時間で発生する地絡波形であり、このような波形を検知して、その大きさが閾値Tを超えたら、図3(c)に示す地絡放電検出信号を出力する。そのため、計測周期は商用電力の周期より十分短くても良い。
図4は信号変換器3の入出力波形の他の例の説明図であり、計測周期tを図3の計測周期tの略20分の1とした場合を示している。充電接点33は計測周期tに達するとオフ動作し、放電接点は計測周期に達するとオン動作する。この結果、上記図3の計測周期の場合と同様に、図4(b)に示す積分波形が生成され、図4(a)に示すような地絡放電による急峻なヒゲ状の波形Qが発生したら、予め設定された一定の値(閾値T)を上回る積分波形が生成される。尚、計測周期は、50msec未満の任意の値で設定される。
【0018】
図5は予兆判断部4のブロック図を示している。図5に示すように予兆判断部4は、個々の信号変換器3の出力信号を入力する3つの信号入力部41(41a~41c)、信号入力部41から入力された信号を受け付ける入力IF42、予兆検知信号を出力する出力IF43、地絡放電検出信号の組み合わせと絶縁劣化発生エリアの関係を記憶する記憶部44、絶縁劣化予兆有りを判断すると共に予兆判断部4を制御する予兆判断部CPU45等を備えている。
【0019】
記憶部44は、次のような地絡放電検出信号の組み合わせと絶縁劣化発生エリアの関係を記憶している。絶縁劣化発生と判断する組み合わせとして、第1ZCT2aと第2ZCT2bの組み合わせ、及び第1ZCT2aと第3ZCT2cの組み合わせを記憶している。そして、第1ZCT2aと第2ZCT2bの組み合わせを検出した場合は、引き込みケーブル6が絶縁劣化発生エリアとして記憶され、第1ZCT2aと第3ZCT2cの組み合わせを検出した場合は、キュービクル7内が絶縁劣化発生エリアとして記憶されている。
【0020】
図6は、予兆判断部4が絶縁劣化予兆有りと判断するZCT2の組み合わせ説明図であり、(a)は第1ZCT2aの出力に基づく第1信号変換器3aの出力波形、(b)は第2ZCT2bの出力に基づく第2信号変換器3bの出力波形、(c)は第3ZCT2cの出力に基づく第3信号変換器3cの出力波形を示している。
図6に示すように、何れのZCT2も、単独で地絡放電に相当する零相電流波形を検出して信号変換器3が地絡放電検出信号を出力しても、予兆判断部4は絶縁劣化予兆有りと判断しない。
【0021】
しかし、第1ZCT2aと第2ZCT2bが同時(M1に示す部分)に、或いは第1ZCT2aと第3ZCT2cが同時(M2に示す部分)に所定値(閾値T)を超える零相電流を検出したら、記憶部44が記憶する情報から絶縁劣化予兆有りと判断し、予兆検知信号を出力IF43から出力する。
【0022】
その際、予兆判断部4が出力する予兆検知信号には、異常発生元のZCT2の組み合わせ情報と、記憶部44が記憶している絶縁劣化発生エリアの情報が添付されて送信される。
例えば、第1ZCT2aと第2ZCT2bが同時に地絡放電を検出した場合は、関連付けられている絶縁劣化発生エリアの情報、即ち引き込みケーブル6のどこかで絶縁劣化が発生しているとする情報が通知部5に送信され、通知部5ではそれが通知(表示)される。
【0023】
通知部5は、図示しない表示部、報音部等を有し、予兆判断部4と信号線L10で接続されている。そして、予兆判断部4から予兆検知信号を受信すると、表示部に異常発生元のZCT2の場所情報と、上記絶縁劣化発生エリアの情報が表示される。また、設定により異常発生を通知する警報音を報音する。
【0024】
尚、予兆判断部4と通知部5とは、信号線L10を介して通信する構成となっているが、無線通信としても良いし、通知部5を管理者が携行する携帯電話として、インターネットを利用して通知しても良い。また、3ヶ所全てのZCT2が地絡放電相当の零相電流を検出した場合は、引き込みケーブル6とキュービクル7内の双方で絶縁劣化が発生したとみることができ、そのような情報を表示させると良い。
【0025】
このように、引き込みケーブル6を含む複数ヶ所で、同時に一定値以上の零相電流が検出されたら、即ち引き込みケーブル6を含む複数ヶ所で地絡放電が発生したら絶縁劣化予兆有りと判断して予兆検知信号を出力する。よって、複数ヶ所の地絡放電に基づいて判断することで、絶縁劣化の予兆の誤検知を防止できるし、高圧電路の絶縁劣化を初期段階で検知して地絡事故に至る前に対処することが可能となる。
また、検出された一定値以上の異常値を示す零相電流の情報はデジタル化されて予兆判断部4へ送信されるため、ノイズにより予兆判断部4が誤動作するのを削減できる。
そして、地絡放電検出場所に加えて、検出場所に関連付けられた絶縁劣化発生エリアの情報が通知されるため、キュービクルの管理者は検査エリアを限定でき、利便性が良い。
尚、予兆検知信号に添付する情報に絶縁劣化発生エリアの情報は無くとも良く、地絡放電検知場所の情報だけでも発生エリアの推測は可能である。
【0026】
図7は、絶縁監視装置1の他の例を示している。上記図1では1台のキュービクル7で構成されている高圧受電設備に適用した構成を示しているが、図7では2つのキュービクル(第1キュービクル7a、第2キュービクル7b)で構成された高圧受電設備に適用した構成を示している。尚、双方のキュービクル7a,7bとも、上記図1に示すキュービクルと同様の構成であため説明を省略する。
そして、図7に示すように、第1キュービクル7aへは高電圧の引き込みケーブル6aで商用電力が供給され、第2キュービクル7bへは第1キュービクル7aの高圧側が高圧分岐部74により分岐され、高電圧の送りケーブル6bで供給されている。
また、第1キュービクル7aにおいて降圧された電力が、配電盤8aを介して図示しない負荷に供給されるし、第2キュービクル7bにおいて降圧された電力が、配電盤8bを介して図示しない負荷に供給される。
【0027】
高圧受電設備がこのように2つのキュービクル7a,7bで構成されている場合、ZCT2は、双方のキュービクル7a、7bに対して設置される。第1キュービクル7aに対しては、第1~3ZCT2a~2cが上記図1に示す3ヶ所と同様の場所に設置される。また第2キュービクル7bに対しては、第4~第6ZCT2d~2f)が第2キュービクル7bの高圧側の3ヶ所に設置される。
具体的に、第4ZCT2dは第2キュービクル7bに高圧電力を供給する送りケーブル6bの上流側に取り付けられる。第5ZCT2eは、送りケーブル6bの遮蔽部材11のA種接地線12cに取り付けられる。第6ZCT2fは、第2キュービクル7bの主遮断装置72のA種接地線12dに取り付られる。
尚、図7に示すように、第4ZCT2d、5ZCT2eは送りケーブル6bの上流側となる第1キュービクル内に設置される。
【0028】
そして、それぞれに信号変換器(第1~第6信号変換器3a~3f)が設けられて、アナログ信号がデジタル信号に変換されて送出され、信号線L1~L6を介して予兆判断部4に送信される。
【0029】
一方、予兆判断部4は、ZCT2の数に合わせて6箇の信号入力部41を備えているし記憶部44には、第1~第6ZCT2a~2fの絶縁劣化の予兆を判断する組み合わせと、その組み合わせに対応する絶縁劣化発生エリアの関連付けの情報が記憶されている。
具体的に、第1~第3ZCT2a~2cの組み合わせに基づく絶縁劣化発生エリアの記憶情報は上記形態と同様であるが、第4~第6ZCT2d~2fを加えた絶縁劣化発生エリア情報は以下のように設定され、記憶されている。
第1ZCT2aと第4ZCT2d及び第5ZCT2eが同時に地絡放電を検出した場合は、絶縁劣化発生エリアを送りケーブル6aとする。第1ZCT2aと第4ZCT2d及び第6ZCT2fが同時に地絡放電を検出した場合は、絶縁劣化発生エリアを第2キュービクル7bの高圧側とする。
【0030】
こうして記憶部44に記憶されているZCT2の組み合わせ情報に基づいて、予兆判断部4が絶縁劣化予兆有りと判断する。そして、絶縁劣化予兆ありと判断したら、判断元のZCT2の場所情報、及び関連付けられている絶縁劣化発生エリアの情報が通知部5に通知される。
尚、その他の組み合わせで地絡放電が同時に検出された場合は、複数ヶ所で絶縁劣化が発生したか誤動作発生とみることができるため、そのような情報を表示させると良い。
【0031】
このように、第1キュービクル7aから送りケーブル6bで高圧電力が供給される第2キュービクル7bを備えた構成であっても、送りケーブル6bを含む第2キュービクル7b側の複数ヶ所で、同時に一定値以上の零相電流が検出されたら、即ち送りケーブル6bを含む第2キュービクル7b側の複数ヶ所で地絡放電が発生したら、第2キュービクル7b側で絶縁劣化予兆有りと判断する。よって、複数ヶ所の地絡放電に基づいて判断することで、絶縁劣化の予兆の誤検知を防止できるし、第2キュービクル7b側の高圧電路の絶縁劣化を初期段階で検知して地絡事故に至る前に対処することが可能となる。
【0032】
尚、上記実施形態では、高圧受電設備が1台のキュービクル7で構成されている場合、メイン(第1キュービクル7a)とサブ(第2キュービクル7b)の2台のキュービクルで構成されている場合の2通りを説明したが、本発明の絶縁監視装置はこの2通りに限定されるものでは無い。
高電圧の引き込みケーブル6が接続されるメインのキュービクルに加えて、メインのキュービクルから送りケーブル6bによりサブのキュービクルが複数接続された高圧受電設備であっても、容易に適用できるものである。上述したように、各キュービクルに対応する高電圧側の3ヶ所にZCT2を設置し、地絡放電を検出させることで、同時に検出した場所の組み合わせにより、絶縁劣化初期の発生エリアの特定は可能である。
【符号の説明】
【0033】
1・・絶縁監視装置、2(2a~2f)・・ZCT(零相変流器)、3(3a~3f)・・信号変換器、4・・予兆判断部、5・・通知部、6,6a・・引き込みケーブル、6b・・送りケーブル、7・・キュービクル、7a・・第1キュービクル、7b・・第2キュービクル、11・・遮蔽部材、12(12a,12b)・・A種接地線、32・・判定回路、41・・信号入力部、44・・記憶部、45・・予兆判断部CPU、71・・変圧器、72・・主遮断装置(断路器)、T・・閾値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7