(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067624
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177843
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 壯太郎
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE10
4C601HH13
4C601HH17
4C601KK12
(57)【要約】
【課題】超音波診断装置で生成されたフレーム列の全部を外部装置へ転送する。
【解決手段】演算器44は、通信部によるフレーム列の実転送レートR2を演算する。判定器46は、実転送レートR2がフレームレートR1よりも低い場合にフレーム渋滞を判定する。フレームレート制御器50は、フレームレートR1を実転送レートR2に合わせる。これによりフレーム渋滞が解消される。処理部の負荷を下げることにより、フレーム渋滞が解消されてもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム列を出力する送受信部と、
前記送受信部から出力されたフレーム列を処理する処理部と、
前記処理部の後段に設けられ、前記処理部により処理されたフレーム列を外部装置へ転送する通信部と、
前記通信部によるフレーム列の転送を監視することにより、超音波診断装置内でのフレーム渋滞の発生を判定する監視部と、
前記フレーム渋滞の発生が判定された場合に、前記送受信部における送受信条件及び前記処理部における処理条件の内の少なくとも一方を変更することにより、前記外部装置へ送出されるフレーム列のデータ量を低減する制御部と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記監視部は、
前記通信部により転送されるフレーム列についての実転送レートを演算する演算器と、
前記実転送レートが前記送受信部におけるフレームレートよりも低い場合に前記フレーム渋滞を判定する判定器と、
を含む、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、前記フレーム渋滞が解消されるように、前記通信部により転送されるフレーム列のデータ量を低減する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記送受信部における送受信条件はフレームレートであり、
前記制御部は、前記フレーム渋滞の発生が判定された場合に、前記送受信部におけるフレームレートを低減する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、前記フレーム渋滞の発生が判定された場合に、前記処理部における処理条件を変更することにより、前記通信部により転送されるフレーム列を構成する各フレームのデータ量を低減する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、前記フレーム列のデータ量の低減後において、前記フレーム列のデータ量の回復を試みる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項6記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、所定の試行条件が満たされた場合に、前記フレーム列のデータ量の回復を試みる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波診断装置に関し、特に、外部装置へのフレーム列の転送に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置の送受信部において、フレームレートに従ってフレーム列(フレームデータ列)が生成される。生成されたフレーム列に対して様々な処理が適用された上で、処理後のフレーム列が動画像として表示される。
【0003】
必要に応じて、超音波診断装置から外部装置へフレーム列が転送される。例えば、手術室内において、超音波診断装置から情報処理装置(他の医療装置を含む)へフレーム列が転送され、検査室内の超音波診断装置から読影室内の情報処理装置へフレーム列が転送され、あるいは、ある病院内の超音波診断装置から他の病院内の情報処理装置へフレーム列が転送される。
【0004】
転送先の情報処理装置は、フレーム列を解析する解析部、フレーム列を処理する処理部、等を有する。転送先の情報処理装置において、超音波診断装置で生成されたフレーム列の全部を漏れなくリアルタイムで取得することが求められることがある。以下、そのような要求を場合により「全取得要求」と称する。
【0005】
超音波診断装置と外部装置の間の通信状況が悪化すると、超音波診断装置から外部装置に向けてフレーム列の全部をリアルタイムで送り出せなくなる。具体的には、フレーム列の転送時にフレーム渋滞が生じ、それを原因として、転送遅延の累積やフレーム消失が生じる。その場合、上記の全取得要求を満たすことができない。
【0006】
その一方、超音波診断装置においては、CPU等のプロセッサが非常に多くの処理を実行している。一般に、送受信部におけるフレームレートが高くなればなるほど、プロセッサの負荷が増大する。プロセッサの負荷が著しく増大した場合、フレーム列の処理の途中でフレーム渋滞が生じる。すなわち、転送遅延の累積やフレーム消失が生じる。その場合にも、上記の全取得要求を満たすことができない。
【0007】
特許文献1では、超音波診断システムを構成する2つの装置間で通信を行う場合に、装置間での通信状況に応じて、転送対象データを切り替えることが記載されている。特許文献2,3には、超音波診断システムを構成する2つの装置間で通信を行う場合、装置間の伝送状態に応じてデータ圧縮率を変更することが記載されている。特許文献1,2,3には、超音波診断装置内において外部装置へのフレーム列の転送を監視する技術は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-106871号公報
【特許文献2】特開2004-267301号公報
【特許文献3】特開2005- 58576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の目的は、超音波診断装置内でのフレーム渋滞の発生を回避しつつ超音波診断装置から外部装置へフレーム列を転送することにある。あるいは、本開示の目的は、超音波診断装置から外部装置へのフレーム列の転送に際して転送遅延の累積やフレーム消失が生じないようにすることにある。あるいは、本開示の目的は、超音波の送受信により生成されたフレーム列の全部を超音波診断装置から外部装置へリアルタイムに転送することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る超音波診断装置は、フレーム列を出力する送受信部と、前記送受信部から出力されたフレーム列を処理する処理部と、前記処理部の後段に設けられ、前記処理部により処理されたフレーム列を外部装置へ転送する通信部と、前記通信部によるフレーム列の転送を監視することにより、超音波診断装置内でのフレーム渋滞の発生を判定する監視部と、前記フレーム渋滞の発生が判定された場合に、前記送受信部における送受信条件及び前記処理部における処理条件の内の少なくとも一方を変更することにより、前記外部装置へ送出されるフレーム列のデータ量を低減する制御部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、超音波診断装置内でのフレーム渋滞の発生を回避しつつ超音波診断装置から外部装置へフレーム列を転送できる。あるいは、本開示によれば、超音波診断装置から外部装置へのフレーム列の転送に際して転送遅延の累積やフレーム消失を解消又は少なくできる。あるいは、本開示によれば、超音波の送受信により生成されたフレーム列の全部を超音波診断装置から外部装置へリアルタイムに転送できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る超音波診断装置は、送受信部、処理部、通信部、監視部、及び、制御部を有する。送受信部は、フレーム列を出力する。処理部は、送受信部から出力されたフレーム列を処理する。通信部は、処理部の後段に設けられ、処理部により処理されたフレーム列を外部装置へ転送する。監視部は、通信部によるフレーム列の転送を監視することにより、超音波診断装置内でのフレーム渋滞の発生を判定する。制御部は、フレーム渋滞の発生が判定された場合に、送受信部における送受信条件及び処理部における処理条件の内の少なくとも一方を変更することにより、外部装置へ送出されるフレーム列のデータ量を低減する。
【0015】
上記構成によれば、超音波診断装置内でのフレーム渋滞の発生が判定されると、外部装置へ送出されるフレーム列のデータ量が低減される。これによりフレーム渋滞が解消又は緩和される。フレーム渋滞が解消された場合、超音波診断装置内で生成されたフレーム列の全部を外部装置へリアルタイムに転送することが可能となる。フレーム渋滞の発生の判定には、フレーム渋滞直前状態の発生の判定が含まれ得る。
【0016】
実施形態においては、通信部から外部装置への個々のフレームの転送に際して、ハンドシェイク(コネクション型プロトコルとも言い得る)が採用されている。すなわち、n番目のフレームの転送の完了が確認された後に、n+1番目のフレームの転送の開始が許容される。ハンドシェイク方式の下、フレーム渋滞の発生が監視部により判定される。
【0017】
実施形態において、監視部は、演算器及び判定器を含む。演算器は、通信部により転送されるフレーム列についての実転送レートを演算する。判定器は、実転送レートが送受信部におけるフレームレートよりも低い場合にフレーム渋滞を判定する。例えば、単位時間当たりの転送フレーム数や1フレームの平均転送時間等に基づいて、実転送レートが演算される。
【0018】
実施形態において、制御部は、フレーム渋滞が解消されるように、通信部により転送されるフレーム列のデータ量を低減する。実施形態において、送受信部における送受信条件はフレームレートである。制御部は、フレーム渋滞の発生が判定された場合に、送受信部におけるフレームレートを低減する。あるいは、制御部は、フレーム渋滞の発生が判定された場合に、処理部における処理条件を変更することにより、通信部により転送されるフレーム列を構成する各フレームのデータ量を低減する。例えば、各フレームの解像度を下げることにより、各フレームのデータ量が低減される。
【0019】
フレーム渋滞原因として、超音波診断装置と外部装置との間の通信状況の悪化、及び、超音波診断装置内での処理負荷の増大、が挙げられる。フレーム渋滞原因の存在する位置よりも上流側においてデータ量を絞ることが望まれる。例えば、通信状況の悪化に対処するためには、送受信部におけるフレームレートを低減してもよいし、処理部における処理条件を変更して処理部から出力されるデータ量を低減してもよい。処理部の負荷増大がフレーム渋滞原因である場合には、送受信部におけるフレームレートを低減するか、処理部における処理条件を変更してその負荷を低減すればよい。フレーム渋滞原因の存在する位置を特定できない場合、最上流に位置する受信部においてデータ量を低減することが望まれる。すなわち、送受信部におけるフレームレートを低減することが望まれる。
【0020】
なお、受信フレームレートと送信フレームレートは通常、一致するが、送信ビームの1回電子走査当たり複数の受信フレームデータが生成される場合、受信フレームレートと送信フレームレートは不一致となる。データ量の制御に当たっては、受信フレームレートに着目することが望まれる。
【0021】
実施形態において、制御部は、フレーム列のデータ量の低減後において、フレーム列のデータ量の回復を試みる。具体的には、制御部は、所定の試行条件が満たされた場合に、フレーム列のデータ量の回復を試みる。この構成によれば、状況が改善した場合において、単位時間当たりの転送データ量を元に戻せる。
【0022】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る超音波診断装置が示されている。この超音波診断装置は、病院等の医療機関に設置され、被検者の超音波検査において使用される医用装置である。超音波診断装置は、ネットワークを介して、外部装置34に接続されている。外部装置34については後述する。
【0023】
超音波プローブ10は、生体内への超音波の送信及び生体内からの反射波の受信を行うデバイスである。超音波プローブ10は、複数の振動素子からなる振動素子アレイを有している。振動素子アレイにより超音波ビーム12が形成され、超音波ビーム12が電子走査される。これによりビーム走査面14が形成される。送信フレームレートに従って超音波ビーム12の電子走査を繰り返すことにより、ビーム走査面14が繰り返し形成される。
【0024】
超音波ビーム12の電子走査方式として、電子リニア走査方式、電子セクタ走査方式、等が知られている。振動素子アレイとして二次元振動素子アレイを設けてもよい。二次元振動素子アレイにより超音波ビームを二次元走査することにより、生体内の三次元空間からボリュームデータを取得し得る。
【0025】
送信部16は、送信ビームフォーマーとして機能する電子回路であり、送信時において複数の送信信号を振動素子アレイに対して並列的に出力する。これにより、振動素子アレイの作用により送信ビームが形成される。
【0026】
受信部18は、受信ビームフォーマーとして機能する電子回路であり、受信時において振動素子アレイから並列的に出力された複数の受信信号に対して整相加算を適用し、これにより受信ビームデータを生成する。電子走査の繰り返しに伴って、受信部18から複数の受信フレーム(複数の受信フレームデータ)が順次出力される。具体的には、複数の受信フレームがフレームレートR1に従って順次出力される。
【0027】
各受信フレームは、電子走査方向に並ぶ複数の受信ビームデータにより構成される。各受信ビームデータは、深さ方向に並ぶ複数のエコーデータにより構成される。受信部18から出力される複数の受信フレームが受信フレーム列を構成する。送信部16及び受信部18により、送受信部15が構成される。
【0028】
ビームデータ処理部20は、各受信ビームデータに対して複数の処理を適用するモジュールである。複数の処理には、対数変換、フィルタ処理等が含まれ得る。それらの処理がCPUの機能により実現されてもよい。ビームデータ処理部20から出力された受信フレーム列22が画像形成部24へ入力されている。図示の構成例では、ビームデータ処理部20は、処理前又は処理後の受信フレーム列を一時的に格納するバッファメモリ20aを有している。バッファメモリ20aは、例えば、リングバッファ構造を有している。
【0029】
画像形成部24は、デジタルスキャンコンバータ(DSC)及び画像処理部を有している。DSCは、座標変換機能を有する。座標変換機能は、送受信座標系から表示座標系への変換を行う機能である。DSCにより、受信フレーム列から表示フレーム列が生成される。実施形態において、DSCでは、フレームレート変換が実行されていない。但し、それが実行されてもよい。
【0030】
例えば、表示フレーム列により、動画像としてのBモード断層画像が構成される。表示フレーム列により動画像としてのボリュームデータが構成されてもよい。画像形成部24内の画像処理部は、生成された表示フレーム列に対して必要な画像処理を適用する。
【0031】
画像形成部24は、受信フレーム列又は表示フレーム列を一時的に格納するバッファメモリ24aを有している。バッファメモリ24aは、例えば、リングバッファ構造を有している。画像形成部24から出力された表示フレーム列25が表示処理部26及び通信部30に送られている。ビームデータ処理部20及び画像形成部24により、処理部19が構成される。
【0032】
表示処理部26は、画像合成機能、レンダリング機能、等を有する。表示処理部26には、表示器28が接続されている。表示器28の画面上には、表示フレーム列が表示される。
【0033】
通信部30は、必要に応じて、転送対象となった表示フレーム列(以下、単にフレーム列という。)32を外部装置34へ転送するものである。外部装置34は、例えば、超音波診断装置と共に手術室内に設置されたコンピュータ(又は他の医用装置)であり、同じ病院内の読影室内に設置されたコンピュータであり、あるいは、他の病院内に設置されたコンピュータである。
【0034】
通信部30は、ネットワークを介して、外部装置34に対して接続されている。ネットワークには、無線LAN、有線LAN、等が含まれる。通信部30と外部装置34の通信に際しては、ハンドシェイクが実施されている。つまり、コネクション型プロトコルに従ってデータが授受されている。そのようなプロトコルとして例えばTCP/IPが挙げられる。通信部30において外部装置34に対するn番目のフレームの転送の完了が確認された後に、通信部30から外部装置34へn+1番目のフレームの転送が開始される。このプロセスが繰り返される。R2はフレーム列の実転送レートを示している。通信部30は、転送前のフレーム列を一時的に格納するバッファメモリ30aを有する。バッファメモリ30aはリングバッファ構造を有する。
【0035】
ビームデータ処理部20、画像形成部24、通信部30、及び、表示処理部26は、それぞれ、プロセッサ等により構成され得る。それらの機能が以下に説明するCPUにより実現されてもよい。
【0036】
演算制御部36は、プログラムを実行するCPUにより構成される。演算制御部36により、超音波診断装置内の各構成要素の動作が制御される。
図1には、演算制御部36が有する代表的な2つの機能が2つのブロックにより表現されている。具体的には、演算制御部36は、監視部38及び制御部(データ量制御部)40として機能する。
【0037】
監視部38は、通信部30によるフレーム列の転送を監視するものである。後述するように、監視部38により、実転送レート(単位時間当たりの転送フレーム数)R2が演算される。監視部38は、実転送レートR2に基づいてフレーム渋滞(転送遅延とも言い得る)の発生を判定する。
【0038】
制御部40は、フレーム渋滞の発生が判定された場合に、転送されるフレーム列のデータ量が低減されるように、フレームレートを低減し、及び/又は、処理部の処理条件を変更する。フレーム渋滞が解消されるまで、データ量を低減する制御が継続される。
【0039】
ネットワークの通信状況が悪化した場合、フレーム列32の実転送レートR2が低下し、その結果、バッファメモリ30aに格納されるフレーム数が増大する。一方、処理部19の負荷が増大した場合、処理部19における処理レートが低下し、その結果、バッファメモリ10a又はバッファメモリ24aに格納される受信フレーム数又は表示フレーム数が増大する。その影響を受けて、フレーム列の実転送レートR2も低下する。
【0040】
上記の2つの場合においては、送受信部15において生成されたフレーム列(受信フレーム列)の全部を外部装置34にリアルタイムで送ることができなくなる。すなわち、超音波診断装置内において転送遅延の蓄積又はフレーム消失が生じる。換言すれば、全フレーム転送要求を満たせなくなる。
【0041】
上記実施形態によれば、超音波診断装置内でのフレーム渋滞が解消されるまで、転送されるフレーム列のデータ量が低減される。よって、超音波診断装置において生成されたフレーム列の全部を外部装置へリアルタイムに転送することが可能となる。
【0042】
図2には、監視部38及び制御部40の構成例が示されている。監視部38は、演算器44及び判定器46を有する。演算器44は、単位時間当たりにおいて転送されるフレームの個数を特定することにより、あるいは、1フレームの転送に要する平均時間を特定することにより、実転送レートR2を演算する。例えば、平均時間の逆数を求めることにより、実転送レートR2を演算し得る。
【0043】
判定器46は、実転送レートR2がフレームレートR1よりも小さい場合にフレーム渋滞の発生を判定する。監視部におけるバッファメモリに一次的に記憶されるフレームの個数又はその増大を特定し、これによりフレーム渋滞の発生を判定してもよい。
【0044】
制御部40は、フレームレート制御器50及び処理条件制御器52を有し、更に、回復制御器54を有する。実施形態においては、複数の制限モードの中からユーザーが選択した制限モードに従って、フレームレート制御器50及び/又は処理条件制御器52が動作する。
【0045】
フレームレート制御器50は、フレーム渋滞の発生が判定された場合に、フレーム渋滞が解消されるまで、フレームレートを下げる制御を実行する。フレームレート制御器50がフレームレートR1を実転送レートR2に一致させてもよい。処理条件制御器52は、フレーム渋滞が判定された場合に、フレーム渋滞が解消されるまで、処理部における処理条件を変更し、処理部の負荷を低減する制御を実行する。
【0046】
回復制御器54は、所定の試行条件が満たされた場合に、転送されるフレーム列のデータ量を増やす回復制御を試行的に実行する。もっとも、フレーム渋滞の発生が再び生じる場合、回復制御の実行は制限される。
【0047】
図3には、第1制限モード、第2制限モード及び第3制限モードが示されている。第1制限モードが選択された場合、フレーム渋滞の発生が判定された時点で、フレームレート制御器のみが機能し、つまり、フレームレートの低減のみが実行される。第2制限モードが選択された場合、フレーム渋滞の発生が判定された時点で、処理条件制御器のみが機能し、つまり、処理部の処理条件の変更のみが実行される。第3制限モードが選択された場合、フレーム渋滞の発生が判定された時点で、まずフレームレートを低減する制御が優先的に実行され、その制御によってもフレーム渋滞を解消できない場合に、処理条件が変更されて各フレームのデータ量が低減される。具体的には、各フレームの解像度が下げられる。
【0048】
フレーム渋滞原因の場所を特定できない状況においては、第1制限モードの選択が望まれる。最上流に位置する受信部においてフレーム列のデータ量を低減すればフレーム渋滞原因の場所がどこにあっても、フレーム渋滞を解消できる。CPU使用率等の情報からフレーム渋滞原因が処理部に存在することが明らかな場合、第2制限モードの選択が望まれる。
【0049】
図4には、第1試行条件、第2試行条件及び第3試行条件が示されている。各試行条件は、回復制御を起動するための条件である。第1試行条件は、フレーム渋滞の解消後の経過時間が一定時間に到達した場合に満たされる条件である。第2試行条件は、データ処理条件の変更が処理部の負担を軽減するものである場合に満たされる条件である。第3試行条件は、CPU使用率が一定値まで低下した場合に満たされる条件である。ユーザーにより、いずれかの試行条件が選択される。
【0050】
図5には、実施形態に係る超音波診断装置の第1動作例が示されている。S10では、フレーム渋滞を解消させる機能(本機能)についてオン又はオフが判定される。S10においてオンが判定された場合、S12において、フレーム渋滞の発生の有無が判定される。フレーム渋滞が発生している場合、S14において、転送されるフレーム列のデータ量が低減される。その方法は、ユーザーにより選択された制限モードにより決定される。S16では、ユーザー選択された試行条件が満たされたか否かが判定される。試行条件が満たされない場合、S10からの各工程が再び実行される。S16において試行条件が満たされたと判定された場合、S18において、フレーム列のデータ量を所定量だけ増大させる制御が試行的に実施される。その後、S10以降の各工程が再び実行される。データ量の増大後、フレーム渋滞が生じる場合には、S14においてデータ量が低減される。
【0051】
図6には、実施形態に係る超音波診断装置の第2動作例が示されている。第2動作例において、
図5に示した工程と同一の工程には同一のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0052】
第2動作例では、第1制限モード及び第1試行条件が選択されている。S12でフレーム渋滞の発生が判定された場合、S14Aにおいて、フレームレートが実行転送レート以下に変更される。S16において、フレーム渋滞解消後の経過時間が一定時間に達したことが判定された場合、S18Aにおいてフレームレートが所定値だけ引き上げられる。その後、S10以降の各工程が再び実行される。
【0053】
実施形態において、超音波診断装置から外部装置へ複数のボリュームデータが順次転送されてもよい。各ボリュームデータは空間的に並ぶ複数のフレームにより構成される。複数のボリュームデータの転送の実体は、フレーム列の転送である。外部装置は、例えば、画像処理機能又は画像解析機能を備えた情報処理装置である。外部装置が他の医用装置であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
15 送受信部、16 送信部、18 受信部、19 処理部、20 ビームデータ処理部、24 画像形成部、30 通信部、34 外部装置、38 監視部、40 制御部、44 演算器、46 判定器、50 フレームレート制御器、52 処理条件制御器、54 回復制御器。