(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067626
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】端子金具
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20240510BHJP
H01R 13/03 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H01R13/11 K
H01R13/11 A
H01R13/03 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177845
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 彰久
(57)【要約】
【課題】相手端子金具との接続時における接続作業性を向上させることが可能な端子金具を提供する。
【解決手段】端子金具10は、筒状の接続部11と、接続部11の内側に配置される弾性変形可能な弾性接触部34と、弾性接触部34に設けられる接点部39と、を備える。接続部11の内側には、接続部11の前端の開口を通して相手端子金具90が前後方向に沿って配置される。接点部39は、頂部43と、頂部43から前方に傾斜して延びる前側傾斜部44と、を有している。接触部は、前側傾斜部44に、頂部43に向けて次第に厚みを薄くする徐変薄肉部46が設けられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の接続部と、
前記接続部の内側に配置される弾性変形可能な弾性接触部と、
前記弾性接触部に設けられる接点部と、を備え、
前記接続部の内側には、前記接続部の前端の開口を通して相手端子金具が前後方向に沿って配置され、
前記接点部は、前記相手端子金具に接触する頂部と、前記頂部から前方に傾斜して延びる前側傾斜部と、を有し、前記前側傾斜部に、前記頂部に向けて次第に厚みを薄くする徐変薄肉部が設けられている、端子金具。
【請求項2】
前記接点部における前記相手端子金具に接触する面とは反対側の面は、前記頂部の頂点に向けて湾曲する湾曲面である、請求項1に記載の端子金具。
【請求項3】
前記弾性接触部の表面には、純金属めっき層が形成され、
前記弾性接触部の表面における前記相手端子金具と対向する面において、前記接点部の前記純金属めっき層の厚さは、前記接点部の周囲の前記純金属めっき層の厚さよりも薄くされている、請求項1に記載の端子金具。
【請求項4】
前記接続部は、前記弾性接触部と対向する位置に、前記弾性接触部との間に前記相手端子金具を挟み込むことが可能な受け部を有し、
前記弾性接触部は、帯板状であって、前記接続部の前端側に設けられた基端部から後方に向けて前記受け部に近づくように延びる前側延出部を有し、前記基端部を支点として前記前側延出部の板厚方向に弾性変形可能とされており、
前記前側傾斜部は、前記前側延出部の後端側に配置され、
前記前側延出部における前記前側傾斜部の前端に連なる部分の板厚をftとし、
前記頂部の板厚をttとした場合に、
1/2≦tt/ft≦3/4
の関係式が成立する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の端子金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子金具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は開示された端子金具は、弾性接触部(コンタクト部分)と、弾性接触部に設けられ、相手端子金具(対向端子)に接触する頂部(電気機械的コンタクトドーム)と、を備えている。弾性接触部は、頂部を挟んだ前後両側のうち、前側に「自由な機械的ドーム遷移領域」を有し、後側に「固定の機械的ドーム遷移領域」を有している。この種の端子金具は、特許文献1および特許文献2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-177482号公報(第9図)
【特許文献2】特開2001-210418号公報
【特許文献3】特開2015-103410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された端子金具は、「自由な機械的ドーム遷移領域」および「固定の機械的ドーム遷移領域」のそれぞれ(以下、単に「遷移領域」と称する)において、弾性接触部の板厚を急変させ、頂部全体の板厚を薄くさせていた。このため、弾性接触部が相手端子金具に接触して弾性変形したときに、遷移領域に応力が集中する懸念があり、端子金具と相手端子金具との接続時に、遷移領域で接続抵抗が高まり、作業性が悪化するおそれがあった。
【0005】
そこで、本開示は、相手端子金具との接続時における作業性を向上させることが可能な端子金具を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の端子金具は、筒状の接続部と、前記接続部の内側に配置される弾性変形可能な弾性接触部と、前記弾性接触部に設けられる接点部と、を備え、前記接続部の内側には、前記接続部の前端の開口を通して相手端子金具が前後方向に沿って配置され、前記接点部は、前記相手端子金具に接触する頂部と、前記頂部から前方に傾斜して延びる前側傾斜部と、を有し、前記前側傾斜部に、前記頂部に向けて次第に厚みを薄くする徐変薄肉部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、相手端子金具との接続時における接続作業性を向上させることが可能な端子金具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係る端子金具の斜視図である。
【
図2】
図2は、端子金具を
図1とは異なる方向から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、接続部の内側に相手端子金具が挿入された状態を示す側断面図である。
【
図7】
図7は、接続部の接点部を拡大して示す側断面図である。
【
図8】
図8は、接続部の内側に挿入された相手端子金具の挿入力とストロークとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の端子金具は、
(1)筒状の接続部と、前記接続部の内側に配置される弾性変形可能な弾性接触部と、前記弾性接触部に設けられる接点部と、を備え、前記接続部の内側には、前記接続部の前端の開口を通して相手端子金具が前後方向に沿って配置され、前記接点部は、前記相手端子金具に接触する頂部と、前記頂部から前方に傾斜して延びる前側傾斜部と、を有し、前記前側傾斜部に、前記頂部に向けて次第に厚みを薄くする徐変薄肉部が設けられている。
【0010】
上記構成の接点部は、徐変薄肉部を有している分、前後方向に一定の厚みで連続する接点部よりも表面積を広くできる。よって、上記構成によれば、弾性接触部が相手端子金具と接触するときに、接点部に作用する応力を徐変薄肉部に広く分散させることができるので、端子金具と相手端子金具との接続時における挿入作業性等の作業性を向上させることができる。
【0011】
(2)前記接点部における前記相手端子金具に接触する面とは反対側の面は、前記頂部の頂点に向けて湾曲する湾曲面であることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、弾性接触部と相手端子金具との接触時に接点部に作用する応力を湾曲面全体に広く分散させることができる。また、プレス加工のパンチで叩くことによって湾曲面を簡単に形成することができる。
【0013】
(3)前記弾性接触部の表面には、純金属めっき層が形成され、前記弾性接触部の表面における前記相手端子金具と対向する面において、前記接点部の前記純金属めっき層の厚さは、前記接点部の周囲の前記純金属めっき層の厚さよりも薄くされていると良い。
【0014】
上記構成の相手端子金具は、接点部の頂部における薄肉の純金属めっき層に接触することができる。このため、相手端子金具が接続部の内側に挿入される過程で、純金属めっき層のめっき削れ量を減らすことができ、相手端子金具の挿入時に接点部に発生する応力を低下させることができる。
【0015】
(4)前記接続部は、前記弾性接触部と対向する位置に、前記弾性接触部との間に前記相手端子金具を挟み込むことが可能な受け部を有し、前記弾性接触部は、帯板状であって、前記接続部の前端側に設けられた基端部から後方に向けて前記受け部に近づくように延びる前側延出部を有し、前記基端部を支点として前記前側延出部の板厚方向に弾性変形可能とされており、前記前側傾斜部は、前記前側延出部の後端側に配置され、前記前側延出部における前記前側傾斜部の前端に連なる部分の板厚をftとし、前記頂部の板厚をttとした場合に、1/2≦tt/ft≦3/4の関係式が成立すると良い。
【0016】
上記構成によれば、弾性接触部と相手端子金具との接続時の挿入作業性等の作業性を向上させるのに適切な板厚で接点部を設けることができる。仮に、tt/ft<1/2であると、頂部の板厚が小さくなり過ぎ、弾性接触部と相手端子金具との接触荷重を得ることが困難になる。tt/ft>3/4であると、徐変薄肉部の応力分散作用を十分に発揮させることが困難になる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
<実施形態1>
本開示の実施形態1に係る端子金具10は、導電性の金属板を曲げ加工等して一体に形成されている。端子金具10は、互いに並列に配置される接続部11とバレル部12,13とを備えている。なお、以下の説明において、前後方向については、接続部11とバレル部12との並び方向を前後方向とし、バレル部12,13に対して接続部11が位置する側を前側とする。上下方向は、
図4および
図8を除く各図の上下方向を基準とする。左右方向は、
図3の左右方向を基準とする。上下方向は、高さ方向と同義であり、左右方向は、幅方向と同義である。
図1および
図2の符号X、Y、Zは、それぞれ前側、左側、上側を示す。これらの方向の基準は、便宜的なものであり、端子金具10を収容した図示しないコネクタが図示しない車両等に搭載された状態における方向とは必ずしも一致しない。
【0019】
(端子金具の構造)
端子金具10は、
図1および
図2に示すように、前後方向に細長い形状に形成されている。端子金具10は、前後方向の全長に亘って延びる帯板状の底板部14を有している。
【0020】
バレル部は、底板部14の後部を含み、ワイヤバレル部12およびインシュレーションバレル部13を有している。ワイヤバレル部12は、インシュレーションバレル部13よりも前方に配置され、底板部14の後部の左右両端側からそれぞれ立ち上がる一対のワイヤバレル片15を有している。ワイヤバレル部12は、被覆電線60の端末部において被覆61の除去によって露出する芯線62に圧着して電気的に接続されている。インシュレーションバレル部13は、底板部14の後部の左右両端側からそれぞれ立ち上がる一対のインシュレーションバレル片16を有し、被覆電線60の端末部における被覆61に圧着されて機械的に接続されている。
【0021】
接続部11は、前後方向に長い角筒形状をなし、前後両側に開放されている。
図3に示すように、接続部11は、底板部14の前部と、底板部14の前部の左右両端側からそれぞれ立ち上がる一対の側板部17,18と、一方側(
図3の左側)の側板部17の上端から他方側(
図3の右側)の側板部18に向けて屈曲され、底板部14と対向して配置される内板部19と、他方側の側板部18の上端から一方側の側板部17に向けて屈曲され、内板部19の上面側(接続部11の外面側)に重なる外板部21と、を有している。
【0022】
底板部14の前部の左右中央部には、
図5に示すように、接続部11の内側に膨出する形状の受け部22が設けられている。受け部22は、前後方向に延びるリブ状をなし、前後中央部を前後両端側から凹ませた湾曲状に構成されている。
【0023】
図1に示すように、外板部21には、板厚方向に貫通する貫通孔23が設けられている。貫通孔23は、外板部21の他方側(他方側の側板部18が位置する側)に偏って配置されている。外板部21の一方側の端部には、第1係止片24および第2係止片25が前後に並んで設けられている。第1係止片24は、貫通孔23と左右に並んで配置され、外板部21の一方側の端部で屈曲され、一方側の側板部17の上端に支持されている。第2係止片25は、第1係止片24よりも後方に配置され、段付き状に屈曲して一方側の側板部17に開口する第2係止孔26に挿入されて係止されている(
図4を参照)。
【0024】
図2に示すように、内板部19の他方側の端部には、貫通孔23よりも前方の位置に、第3係止片27が設けられている。
図4に示すように、第3係止片27は、他方側の側板部18に開口する第3係止孔28に挿入されて係止されている。このように第1係止片24が一方側の側板部17に支持され、第2係止片25が第2係止孔26に挿入係止され、第3係止片27が第3係止孔28に挿入係止されていることで、接続部11の角筒形状が維持されている。
【0025】
また、
図1および
図2に示すように、外板部21の前端側には、上側(接続部11の外側)にU字状に膨出する第1突部29が設けられている。第1突部29の後端は、貫通孔23の前端を構成している。外板部21の後端側にも上側にU字状に膨出する第2突部31が設けられている。第2突部31は、第1突部29よりも大きく膨出している(
図3を参照)。外板部21の後端側には、第2突部31の前端を区画しつつ幅方向に沿って切り込まれた形状の切欠部32が設けられている。
図1に示すように、切欠部32は、第2係止片25よりも後方に配置されている。
【0026】
端子金具10は、図示はしないが、コネクタハウジングのキャビティに後方から挿入される。キャビティには、ランスが突出して形成されている。端子金具10がキャビティに挿入され、ランスが貫通孔23に臨んで第1突部29の後端に係止可能に対向することにより、端子金具10がコネクタハウジングに後方への抜け出しを規制された状態に保持される。ここで、第2突部31は、キャビティに連通した案内溝に嵌合し、端子金具10の挿入動作をガイドする。
【0027】
図5に示すように、内板部19は、前端側で外板部21の下面に密着する基端部33と、基端部33から後方へ片持ち状に延びる弾性接触部34と、によって構成されている。
図4に示すように、第3係止片27は、基端部33の他方側の端部に張り出し形成されている。
【0028】
弾性接触部34は、基端部33を支点として上下方向(板厚方向)に弾性変形可能とされている。
図5に示すように、弾性接触部34は、基端部33から後方へ行くに従って受け部22に近づくように下側に傾斜して延びる前側延出部35と、後端側を除いて後方へ行くに従って受け部22から離れるように上側に傾斜して延びる後側延出部36と、を有している。後側延出部36の後端側は、下向きに屈曲し、上面を外板部21に対向させている。前側延出部35および後側延出部36は、それぞれ後述する接点部39を除いて一定の上下厚(
図7に示す後述する板厚ft)で構成されている。
【0029】
図4に示すように、前側延出部35は、基端部33から後方に延びる幅広の幅広部37を有している。後側延出部36は、前側延出部35から連続する幅広部37と、幅広部37の後端の左右一側の端部から後方に一定の左右幅で延びる幅狭の幅狭部38と、を有している。幅狭部38は、幅広部37よりも左右幅が小さく、第2係止片25と左右に並んで配置され、第2係止片25との干渉を回避している。
【0030】
図5に示すように、弾性接触部34は、前側延出部35と後側延出部36との境界を含む前後中間部に、下向きにドーム状に膨出する接点部39を有している。接点部39の上面は、弾性接触部34の上面を図示しないプレス加工のパンチで叩くことによって周囲から湾曲状に凹む湾曲面41として構成されている。
図4に示すように、湾曲面41は、平面視において前後方向に長く延び且つ前方へ行くに従って左右幅を小さくする雫形状(Teardrop形状)の外周縁部42を有している。湾曲面41の外周縁部42は、前側延出部35と後側延出部36との境界部分(
図4の点線の部分)における幅広部37の左右中央部において、左右幅を最も大きくしている。
図2に示すように、湾曲面41は、外板部21の貫通孔23を通して視認可能とされている。
【0031】
図7に示すように、接点部39は、頂部43と、頂部43から前方へ行くに従って上側に傾斜する前側傾斜部44と、頂部43から後方へ行くに従って上側に傾斜する後側傾斜部45と、によって構成されている。前側傾斜部44の前後長は、後側傾斜部45の前後長より大きく、後側傾斜部45の前後長の2倍を超えている。前側傾斜部44は、前側延出部35の後端側に配置されている。頂部43は、前側延出部35と後側延出部36との境界部分において、下向きに突出する湾曲形状をなし、下端である弾性接触部34の最下端部に頂点47を有している。
図5に示すように、頂部43は、受け部22の前後中央部よりも上方に受け部22と対向して配置されている。
【0032】
接点部39は、前側傾斜部44、頂部43および後側傾斜部45に亘る全体に、湾曲面41の凹形状と対応するように、湾曲面41の外周縁部42から頂部43にかけて次第に薄肉になる徐変薄肉部46を有している。
【0033】
前側傾斜部44の徐変薄肉部46は、
図7に示すように、接点部39の左右中央部で切断した側断面視において、前側傾斜部44の前端から頂部43の頂点47にかけて次第に上下厚を小さくする形状をなしている。前側傾斜部44の徐変薄肉部46の上面および下面は、頂部43に向けて前後方向に対して一定の傾斜角で傾斜している。前側傾斜部44の徐変薄肉部46の上面は、湾曲面41の前側部分を構成している。前側傾斜部44の徐変薄肉部46の上面は、前側傾斜部44の前端から頂部43の頂点47にかけて次第に徐変薄肉部46の下面に近づくように、徐変薄肉部46の下面よりも傾斜角を大きくしている。
【0034】
頂部43の徐変薄肉部46の上面は、湾曲面41の底部分であって凹曲面状をなし、前側傾斜部44の徐変薄肉部46の上面に段差なく連続している。頂部43の徐変薄肉部46の下面は、前側傾斜部44の徐変薄肉部46の下面に段差なく連続している。頂部43は、頂点47と対応する位置において、徐変薄肉部46の最も薄肉になる部分を構成している。後側傾斜部45の徐変薄肉部46の上面は、頂部43の徐変薄肉部46の上面から上向きに急傾斜する曲面形状をなしている。後側傾斜部45の徐変薄肉部46の下面は、頂部43の徐変薄肉部46の下面に段差なく連続し、上向きに緩く傾斜している。
【0035】
なお、端子金具10の表面は、錫めっき等のめっき処理が施され、図示はしないが、錫合金等からなる合金めっき層に錫等の純金属からなる純金属めっき層を積層させた構造になっている。
【0036】
(端子金具の作用)
端子金具10を製造する際には、図示はしないが、まず、上記めっき処理が施された金属板の上面をプレス加工のパンチで叩いて凹ませる。パンチの押圧面は、接点部39の湾曲面41に対応する形状で構成されている。これにより、金属板に、下向きに膨出する形状の接点部39が形成される。接点部39の下面側においては、膨出に伴う引っ張り応力によって最表面の金属めっき層が薄く延びる。続いて、金属板が打ち抜かれ、さらに曲げ加工が施されて、角筒形状の接続部11等が形成され、もって端子金具10が製造される。
【0037】
端子金具10は、図示はしないが、被覆電線60の端末部に接続された状態で、コネクタハウジングのキャビティに挿入され、ランスによってコネクタハウジングに抜け止めされる。次に、コネクタハウジングが図示しない相手コネクタハウジングに嵌合されると、接続部11の前端の開口から接続部11の内側に、
図6に示すように、相手端子金具90のタブ91が挿入される。このタブ91は、前後方向に沿って延びる形状をなしている。
【0038】
相手端子金具90のタブ91が接続部11の内側に挿入される過程で、タブ91が接点部39と受け部22との間に前後方向に沿って進入し、前側傾斜部44の下面(詳細には前側傾斜部44の徐変薄肉部46の下面)および受け部22の上面を摺動する。弾性接触部34は、タブ91に押圧され、基端部33を支点として上方に弾性変形させられる。その後、タブ91が頂部43の頂点47に接触する位置に至り、コネクタハウジングおよび相手コネクタハウジングの嵌合が完了する。このとき、
図6に示すように、弾性接触部34は、弾性変形させられた状態で、後側傾斜部45の後端側を外板部21に接触させる。タブ91は、頂部43の下面における頂点47と受け部22の前後両側の端部とに接触した状態で、接点部39と受け部22との間に挟み込まれる。これにより、端子金具10と相手端子金具90とが電気的に接続される。
【0039】
接続部11へのタブ91の挿入過程において、タブ91は、前側傾斜部44に接触して弾性接触部34の弾性反力を受け、次第に挿入力を上昇させる。具体的には、タブ91が前側傾斜部44に当たり始める接触開始位置から頂部43に接触する接触完了位置に至るまでのストローク(接触ストローク)に従ってタブ91の挿入力が次第に上昇する。
【0040】
本実施形態1の場合、接点部39に徐変薄肉部46が設けられているため、タブ91が接点部39の接触開始位置から接触完了位置に移行する間、接点部39に作用する応力が徐変薄肉部46に広範囲に分散される。このため、タブ91の挿入力を低く抑えることができる。その結果、コネクタハウジングと相手コネクタハウジングの嵌合抵抗を低く抑えることも可能となり、コネクタ嵌合時の作業性を向上させることができる。特に、多数の端子金具10がコネクタハウジングに収容される多極コネクタにおいて、接点部39に徐変薄肉部46を設けた上記構成を適用するメリットが大きい。
【0041】
また、本実施形態1の場合、金属板をパンチで叩いて膨出形状の接点部39を形成しているため、前述したように、接点部39の下面に、接点部39の周囲の下面よりも薄い純金属めっき層が存在することになる。純金属めっき層が薄くなることにより、タブ91が接点部39の下面を摺動する際にめっき削れ量が減少し、発生する応力を低下させることができる。よって、本実施形態1の場合、徐変薄肉部46による応力分散作用とともに、純金属めっき層の薄肉化によって、タブ91の挿入力をより低下させることができる。
【0042】
ところで、
図7に示す場合、徐変薄肉部46において最も薄肉になる部分の上下厚、つまり頂部43の頂点47を通る垂線に沿った徐変薄肉部46の上下厚(弾性接触部34が弾性変形する方向である上下方向の板厚)をttとし、前側延出部35における前側傾斜部44の前端に連なる部分の上下厚をtfとした場合に、tt/ft=1/2の関係式が成立するようにしてある。つまり徐変薄肉部46の頂部43の板厚ttは、前側延出部35の板厚ftよりも十分に小さくされている。このため、徐変薄肉部46の湾曲面41の面積も大きくなり、応力をより広範囲に分散させることができる。
【0043】
図8は、徐変薄肉部46を除く部分の板厚が0.5mmの端子金具10において、接点部39に徐変薄肉部46が設けられていないtt/ft=1の関係式が成立する基準(図中実線)と、上記の接点部39に徐変薄肉部46が設けられたtt/ft=1/2の関係式が成立するパターンA(図中点線)と、接点部39に徐変薄肉部46が設けられたtt/ft=3/4の関係式が成立するパターンB(図中二点鎖線)と、におけるタブ91のストロークと挿入力との関係を示すグラフである。
【0044】
図8のグラフに示すように、パターンAとパターンBは、いずれも基準に比べ、挿入ピークが有意に減少しており、且つストロークの全域に亘って挿入力を低下させている。よって、1/2≦tt/ft≦3/4の関係式が成立する弾性接触部34を備えた端子金具10は、タブ91の挿入力を減少させることができ、ひいてはコネクタ嵌合時における作業性を向上させることができる。なお、tt/ft<1/2の場合、接点部39が薄くなり過ぎ、弾性接触部34と相手端子金具90との接触荷重を得ることが困難になる。他方、tt/ft>3/4の場合、タブ91の挿入力を基準に対して有意差をもって低下させることができず、徐変薄肉部46による応力分散作用を十分に発揮させることが困難になる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態1によれば、弾性接触部34が相手端子金具90のタブ91と接触したときに、接点部39に作用する応力を徐変薄肉部46に広く分散させることができ、タブ91の挿入力を低下させることができる。よって、本実施形態1によれば、コネクタ嵌合時(端子金具10と相手端子金具90との接続時)における作業性を向上させることが可能な端子金具10を提供することができる。
【0046】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態1はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態1の場合、弾性接触部は、基端部から後方に向けて片持ち状に延び、前後中間部の頂上部分に、徐変薄肉部を設けた接点部を有していた。これに対し、他の実施形態によれば、弾性接触部は、基端部から前方に向けて片持ち状に延び、前端側で下向きに屈曲する部分に、徐変薄肉部を設けた接点部を有していても良い。あるいは、弾性接触部は、接続部の前後両側の端部に設けられた基端部間にアーチ状に架け渡される両持ち状をなし、アーチの頂上部分に、徐変薄肉部を設けた接点部を有していても良い。
上記実施形態1の場合、徐変薄肉部は、接点部の全体に亘って形成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、徐変薄肉部は、接点部の前側傾斜部のみに形成されていても良く、あるいは前側傾斜部および頂部に形成され、後側傾斜部には形成されていなくても良い。
上記実施形態1の場合、徐変薄肉部は、接点部における相手端子金具と接触する側とは反対側に設けられた湾曲面の凹形状によって薄肉に形成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、徐変薄肉部は、接点部における相手端子金具と接触する側に設けられた凹形状によって薄肉に形成されていても良い。
【符号の説明】
【0047】
10…端子金具
11…接続部
12…ワイヤバレル部(バレル部)
13…インシュレーションバレル部(バレル部)
14…底板部
15…ワイヤバレル片
16…インシュレーションバレル片
17…一方側の側板部(側板部)
18…他方側の側板部(側板部)
19…内板部
21…外板部
22…受け部
23…貫通孔
24…第1係止片
25…第2係止片
26…第2係止孔
27…第3係止片
28…第3係止孔
29…第1突部
31…第2突部
32…切欠部
33…基端部
34…弾性接触部
35…前側延出部
36…後側延出部
37…幅広部
38…幅狭部
39…接点部
41…湾曲面
42…外周縁部
43…頂部
44…前側傾斜部
45…後側傾斜部
46…徐変薄肉部
47…頂点
60…被覆電線
61…被覆
62…芯線
90…相手端子金具
91…タブ