(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067627
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】エレベータの乗降案内装置
(51)【国際特許分類】
B66B 3/00 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B66B3/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177848
(22)【出願日】2022-11-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】濱口 萌子
(72)【発明者】
【氏名】物部 愛
【テーマコード(参考)】
3F303
【Fターム(参考)】
3F303CB24
3F303CB33
3F303DB14
3F303DB16
3F303DC22
(57)【要約】
【課題】かごへの乗車が許容されるか否かを乗客が的確に判断できることで、運行効率を改善したエレベータの乗降案内装置を提供する。
【解決手段】本発明は、乗場に滞在する乗客から視認可能な位置に配置され且つかごの積載量に関する情報を表示可能な表示器を備え、前記表示器は、かごの積載荷重が過積載によりかごへの乗り込みが不可となる第1の閾値よりも第1所定質量だけ小さい第2の閾値以下であるとき、かごに乗車可能であることを案内する第1表示状態を取り、かごの積載荷重が前記第2の閾値よりも大きく、前記第1の閾値よりも小さいとき、かごに乗車すべきでないことを案内する第2表示状態を取り、前記第1所定質量は、一人又は二人の乗客のかごへの乗り込みが許容可能な質量である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場に滞在する乗客から視認可能な位置に配置され且つかごの積載量に関する情報を表示可能な表示器を備え、
前記表示器は、
かごの積載荷重が過積載によりかごへの乗り込みが不可となる第1の閾値よりも第1所定質量だけ小さい第2の閾値以下であるとき、かごに乗車可能であることを案内する第1表示状態を取り、
かごの積載荷重が前記第2の閾値よりも大きく、前記第1の閾値よりも小さいとき、かごに乗車すべきでないことを案内する第2表示状態を取り、
前記第1所定質量は、一人又は二人の乗客のかごへの乗り込みが許容可能な質量である、エレベータの乗降案内装置。
【請求項2】
前記表示器は、かごの積載荷重が第1の閾値以上であるとき、かごからの降車を案内する第3表示状態を取る、請求項1に記載のエレベータの乗降案内装置。
【請求項3】
前記表示器は、かごの積載荷重が前記第2の閾値よりも大きく前記第1の閾値よりも小さい状態でかごの積載荷重を検出する荷重検出器による検出結果が増加し且つ前記第1の閾値よりも小さい場合でも、前記第3表示状態を取る、請求項2に記載のエレベータの乗降案内装置。
【請求項4】
前記表示器は、
かごの積載荷重が0のとき、かごが無人であることを案内する第4表示状態を取り、
かごの積載荷重が0よりも大きく前記第2の閾値の約半分以下であるとき、かごに乗車すべきでない状態まで余裕があることを案内する第5表示状態を取り、
かごの積載荷重が前記第2の閾値の約半分よりも大きく前記第2の閾値以下であるとき、かごに乗車すべきでない状態に近づいていることを案内する第6表示状態を取る、請求項1又は請求項2に記載のエレベータの乗降案内装置。
【請求項5】
前記表示器は、
かごの積載荷重が0よりも大きく第2所定質量よりも小さい状態でかご呼びが無いとき、前記第4表示状態を取り、
かごの積載荷重が0よりも大きく第2所定質量よりも小さい状態でかご呼びがあるとき、及び、かごの積載荷重が第2所定質量以上であり前記第2の閾値の約半分以下であるとき、前記第5表示状態を取り、
前記第2所定質量は、20kg以上50kg以下である、請求項4に記載のエレベータの乗降案内装置。
【請求項6】
かごドアの戸開側に設けられ、乗客のかごへの乗車を非接触で検出する乗車検出器と、を備え、
前記表示器は、
かごの積載荷重が第3の閾値以上であり前記第2の閾値よりも小さい状態で前記乗車検出器が乗客の乗車を検出したとき、前記第2表示状態を取り、
前記第3の閾値は、前記第2の閾値よりも第3所定質量だけ小さく、
前記第3所定質量は、30kg以上85kg以下である、請求項1又は請求項2に記載のエレベータの乗降案内装置。
【請求項7】
前記表示器は、かごに設けられたかご表示器、及び、乗場に設けられた乗場表示器の少なくとも一方である、請求項1又は請求項2に記載のエレベータの乗降案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータにおいて乗客のかごへの乗車の可否を示す乗降案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータには、過積載検出手段を備える安全手段が設けられている(特許文献1)。例えば、過積載検出手段が、乗客のかごへの乗り込みの際に、かごの過積載(定格積載の110%以上)を検知すると、安全手段は、ブザー等の警報を発するとともに、かごの戸開状態を維持して戸閉しない。これにより、安全手段は、過積載のかごの走行開始を防いで、過積載のかごの走行によるロープの破断を未然に防止する。
【0003】
ところで、安全手段が、過積載のかごについてブザー等の警告を発すると、警告のきっかけとなった乗客に羞恥を感じさせることがあった。また、上記安全手段は過積載を引き起こす乗客がかごに乗車してから警告を発し、警告の後に乗客がかごから降車するため、不要な乗り降りによって運行効率が低下するといった問題があった。一方、かごが、不要な乗り降りを避けるため、積載量に余裕のある状態で満員通過を行ったとしても、乗客が乗場でかごを待つ時間が長くなるため、運行効率の低下は避けられなかった。このような運行効率の低下を抑えるために、かご内に定格積載に対する積載の比率の表示や(特許文献2)、かご内又は乗場にかごの積載可能残量の表示が行われていた(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-281003号公報
【特許文献2】実開昭59-11866号公報
【特許文献3】実開昭63-142368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記表示は、乗客に乗車の可否を判断させる案内としては十分ではなく、運行効率の改善も十分ではなかった。
【0006】
本発明は、かごへの乗車が許容されるか否かを乗客が的確に判断できることで、運行効率を改善したエレベータの乗降案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエレベータの乗降案内装置は、
乗場に滞在する乗客から視認可能な位置に配置され且つかごの積載量に関する情報を表示可能な表示器を備え、
前記表示器は、
かごの積載荷重が過積載によりかごへの乗り込みが不可となる第1の閾値よりも第1所定質量だけ小さい第2の閾値以下であるとき、かごに乗車可能であることを案内する第1表示状態を取り、
かごの積載荷重が前記第2の閾値よりも大きく、前記第1の閾値よりも小さいとき、かごに乗車すべきでないことを案内する第2表示状態を取り、
前記第1所定質量は、一人又は二人の乗客のかごへの乗り込みが許容可能な質量である。
【0008】
かかる構成によれば、かごに乗り込もうとする乗客は、第1表示状態によりかごに乗車可能であると判断し、第2表示状態によりかごに乗車すべきでないと判断できる。
【0009】
また、前記乗降案内装置では、
前記表示器は、かごの積載荷重が第1の閾値以上であるとき、かごからの降車を案内する第3表示状態を取ってもよい。
【0010】
かかる構成によれば、かごに乗り込もうとする乗客は、第3表示状態によりかごからの降車が必要であると判断できる。
【0011】
また、前記乗降案内装置は、
前記表示器は、かごの積載荷重が前記第2の閾値よりも大きく前記第1の閾値よりも小さい状態でかごの積載荷重を検出する荷重検出器による検出結果が増加し且つ前記第1の閾値よりも小さい場合でも、前記第3表示状態を取ってもよい。
【0012】
かかる構成によれば、第2表示状態でかごに乗客が乗り込んだときに、第3表示状態に切り替えることで、かごに乗り込んだ乗客に、第2表示状態ではかごへの乗車が不可能であることを学習させることができる。
【0013】
また、前記乗降案内装置では、
前記表示器は、
かごの積載荷重が0のとき、かごが無人であることを案内する第4表示状態を取り、
かごの積載荷重が0よりも大きく前記第2の閾値の約半分以下であるとき、かごに乗車すべきでない状態まで余裕があることを案内する第5表示状態を取り、
かごの積載荷重が前記第2の閾値の約半分よりも大きく前記第2の閾値以下であるとき、かごに乗車すべきでない状態に近づいていることを案内する第6表示状態を取ってもよい。
【0014】
かかる構成によれば、かごの積載荷重が第2の閾値に到達するまでに、かごに乗車すべきでない状態に近づいていることを案内する第6表示状態を取ることにより、かごに乗車すべきでない状態に近づいていることを前もって乗客に伝えることができる。
【0015】
また、前記乗降案内装置では、
前記表示器は、
かごの積載荷重が0よりも大きく第2所定質量よりも小さい状態でかご呼びが無いとき、前記第4表示状態を取り、
かごの積載荷重が0よりも大きく第2所定質量よりも小さい状態でかご呼びがあるとき、及び、かごの積載荷重が第2所定質量以上であり前記第2の閾値の約半分以下であるとき、前記第5表示状態を取り、
前記第2所定質量は、20kg以上50kg以下であってもよい。
【0016】
かかる構成によれば、かごに誰も乗車していない場合に、荷重検出器の誤検出が生じたときに、第5表示状態となることを防ぐことができる。
【0017】
また、前記乗降案内装置は、
かごドアの戸開側に設けられ、乗客のかごへの乗車を非接触で検出する乗車検出器と、を備え、
前記表示器は、
かごの積載荷重が第3の閾値以上であり前記第2の閾値よりも小さい状態で前記乗車検出器が乗客の乗車を検出したとき、前記第2表示状態を取り、
前記第3の閾値は、前記第2の閾値よりも第3所定質量だけ小さく、
前記第3所定質量は、30kg以上85kg以下であってもよい。
【0018】
かかる構成によれば、かごに乗車すべきでない状態に一人の乗客の乗り込みが不可能な程度まで近づいた状態で、さらにかごに乗客が乗り込んだとき、例えば、ロードセルの検出結果を待たずに第2表示状態を取ることで、乗客に対してより迅速に状態を伝え、運行効率を改善することができる。
【0019】
また、前記乗降案内装置では、
前記表示器は、かごに設けられたかご表示器、及び、乗場に設けられた乗場表示器の少なくとも一方であってもよい。
【0020】
かかる構成によれば、かご表示器や乗場表示器の表示により、乗客がかごへの乗車が可能であるか否かを判断できる。
【発明の効果】
【0021】
以上より、本発明によれば、かごへの乗車が許容されるか否かを乗客が的確に判断できることで、運行効率を改善したエレベータの乗降案内装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の第一の実施形態に係る乗降案内装置を備えたエレベータの模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、前記乗降案内装置の表示器が取る表示状態の変化を説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、前記表示器の表示状態を説明するための模式図であり、(a)は第4表示状態を示し、(b)は第5表示状態を示し、(c)は第6表示状態を示し、(d)は第2表示状態を示し、(e)は第3表示状態を示す。
【
図4】
図4は、本発明の第二の実施形態に係る乗降案内装置の表示器が取る表示状態の変化を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の第三の実施形態に係る乗降案内装置の表示器が取る表示状態の変化を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の第四の実施形態に係る乗降案内装置の表示器が取る表示状態の変化を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の第五の実施形態に係る乗降案内装置の表示器の表示状態を説明するための模式図であり、(a)は第1表示状態を示し、(b)は第2表示状態を示し、(c)は第3表示状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第一の実施形態について説明する。本実施形態に係る乗降案内装置は、建物内を複数の階床(フロア)に跨って上下方向に延びる昇降路と、昇降路を昇降するかごと、を備えるエレベータに設けられる。このエレベータは、一つのかごを有する。本実施形態では、かごは、定員15人以下(例えば、定員15人)の小さいかごである。なお、このかごは、定員16人以上の大きいかごであってもよい。
【0024】
乗降案内装置1は、
図1に示すように、乗場3に滞在する乗客から視認可能な位置に配置され且つかご2の積載量に関する情報を表示可能な表示器4を備える。
【0025】
エレベータは、かご2の積載荷重を検出する荷重検出器5を有する。荷重検出器5は、例えば、かご2の質量を検出するロードセルである。このロードセルは、かご2の床下に配置される。
【0026】
本実施形態の表示器4は、3つの表示部41、42、43で構成されている。なお、表示器4は、一つの表示部で構成されてもよいし、二つの表示部乃至四つ以上の複数の表示部で構成されてもよい。表示部41、42、43は、例えば、LEDランプ等のランプであり、点灯時に常時同色の光を出射し、本実施形態では、警告等の先入観を与えない色の光(具体的には、電球色の光)を出射する。
【0027】
なお、表示器4を構成する複数の表示部のうち少なくとも二つが、異なる色の光を出射してもよい。また、各表示部は、異なる色の光を切り替えて出射してもよい。各表示部は、完全に色を変化させることで異なる色の光を切り替えて出射してもよいし、グラデーションにより色を変化させることで異なる色の光に切り替えて出射してもよい。
【0028】
表示器4は、例えば、かご2に設けられたかご表示器である。かご表示器は、かご2の出入口20近辺の部位に設けられ、例えば、トランサム21に設けられる。トランサム21は、かご2の出入口20上方(かごシルと反対側)に配置される幕板である。具体的に、表示部41、42、43は、トランサム21の乗場3と対向する面の水平方向における中央領域に配置され、水平方向において互いに等間隔をあけて配置されている。
【0029】
なお、かご表示器は、トランサム21の底部(下面)や隅部に設けられていてもよく、トランサム21以外に設けられてもよい。かご表示器は、例えば、トランサム21の下方の両側に位置する袖壁(かご2の出入口20の両側方に配置される袖壁)、かごドアに設けられるセーフティシュー、かごドアの戸開側の端部、かご床、及び、かごシル等のうち少なくとも一つに設けられてもよい。表示器4としてかご表示器を用いる場合、各階床に表示器4を設けなくてもよいため、表示器4の設置コストを抑えることができる。
【0030】
表示器4は、
図2に示すように、かご2の積載荷重が第2の閾値以下であるとき、かご2に乗車可能であることを案内する第1表示状態を取る。また、表示器4は、かご2の積載荷重が第2の閾値よりも大きく、第1の閾値よりも小さいとき、かご2に乗車すべきでないことを案内する第2表示状態を取る。本実施形態では、表示器4は、かご2の積載荷重が第1の閾値以上であるとき、かご2からの降車を案内する第3表示状態を取る。また、表示器4は、かご2の積載荷重が0のとき、かご2が無人であることを案内する第4表示状態を取る。なお、
図2では、上段がかご2の積載荷重を示し、下段が表示器4の表示状態を示している。
【0031】
第1の閾値は、過積載によりかご2への乗り込みが不可となる質量である。具体的に、第1の閾値は、かご2の定格積載量(かご2の定員数に乗客一人あたりの体重(例えば、75kg)を乗じた数値)の110%とすることができる。
【0032】
第2の閾値は、過積載によりかご2への乗り込みが不可となる第1の閾値よりも第1所定質量だけ小さい。第1所定質量は、一人又は二人の乗客のかご2への乗り込みが許容可能な質量である。即ち、第1所定質量は、一人の乗客のかご2への乗り込みが許容可能な質量に設定してもよいし、二人の乗客のかご2への乗り込みが許容可能な質量に設定してもよい。具体的に、第1所定質量は乗客一人あたりの最大体重(例えば、98kg)に乗客が着用する衣類(例えば、2kg)及び乗客が所持する荷物(例えば、5kg)を足し合わせた質量(例えば、105kg)である。乗客一人当たりの最大体重は、日本人成人男性の99%以上が、98kg以下であることから求められる。なお、第1所定質量は、日本以外の国や地域においては、105kg以外の値(例えば、70kg~200kgの範囲内の任意の値)とすることができる。
【0033】
本実施形態では、表示器4は、第1表示状態として、かごに乗車すべきでない状態まで余裕があるときには、これを案内する第5表示状態を取り、かごに乗車すべきでない状態に近づいているときには、これを案内する第6表示状態を取る。具体的に、表示器4は、かご2の積載荷重が0よりも大きく第2の閾値の約半分以下であるとき、かごに乗車すべきでない状態まで余裕があることを案内する第5表示状態を取る。また、表示器4は、かご2の積載荷重が第2の閾値の約半分よりも大きく第2の閾値以下であるとき、かごに乗車すべきでない状態に近づいていることを案内する第6表示状態を取る。なお、第2の閾値の約半分とは、例えば、第2の閾値の45%以上55%以下である。
【0034】
以下、表示器4が取り得る各表示状態の態様について、
図3(a)~
図3(e)を用いて説明する。本実施形態では、表示器4は、表示部41、42、43の消灯、点灯、点滅の状態を変化させることにより、各表示状態を示す。この表示器4では、表示部41、42、43は、第4、第5、第6、第2表示状態を、点灯している表示部の数と消灯している表示部の数とを変化させることで示している。具体的に、第4表示状態は、
図3(a)に示すように、表示部41、42、43の全てが消灯した状態である。第5表示状態は、
図3(b)に示すように、表示部41、42、43のうち最も左に位置する表示部41が点灯し、残りの表示部42、43が消灯した状態である。第6表示状態は、
図3(c)に示すように、表示部41、42、43のうち最も左に位置する表示部41と中央に位置する表示部42とが点灯し、残りの表示部43が消灯した状態である。第2表示状態は、
図3(d)に示すように、表示部41、42、43の全てが点灯した状態である。第3表示状態は、
図3(e)に示すように、表示部41、42、43の全てが点滅した状態である。
【0035】
なお、表示器4は、表示部41、42、43の点滅パターンの変化(例えば、1回の点滅にかかる時間の変化)や点灯色の変化により、各表示状態を示してもよい。この場合、かご2の積載荷重が大きいほど、表示部41、42、43は、点灯色の警告感が上がるように変化してもよい。例えば、表示部41、42、43は、第5表示状態で青色点灯、第6表示状態で青色点滅、第2表示状態で黄色点灯、第3表示状態で赤色点滅を行うことができる。なお、表示部41、42、43が点滅パターンの変化や点灯色の変化により各表示状態を示す場合、表示器4は、一つの表示部(LEDランプ)で構成されてもよい。
【0036】
本実施形態では、表示器4は、かご2の停止時及び停止階への停止寸前に各表示状態を取る。これにより、表示器4は、かご2の状態をかご2に乗り込もうとする乗客に伝えることができる。なお、表示器4は、かご2の停止時及び停止階への停止寸前に加えて、かご2の走行時において、各表示状態を取ってもよい。
【0037】
以上の乗降案内装置1によれば、かご2の積載荷重が第2の閾値(かご2への乗り込みが不可となる第1の閾値よりも第1所定質量だけ小さい値以下)以下であるとき、かご2に乗り込もうとする乗客は、かご2に乗車可能であることを案内する第1表示状態によりかご2に乗車可能であると判断し、かご2の積載荷重が第2の閾値より大きいとき、この乗客はかご2に乗車すべきでないことを案内する第2表示状態によりかご2に乗車すべきでないと判断できる。そのため、この乗降案内装置1によれば、「かご2に乗車すべきでないことの案内」を行わない構成と比べて、乗車すべきでない状態(積載荷重が第2の閾値である状態)のかご2への乗車が起こりにくいため、かご2から降車するしかない状態となりにくい。また、この乗降案内装置1によれば、「かご2に乗車可能であることの案内」を行わない構成と比べて、乗車可能なかご2への乗車が促進されて、乗車可能なかご2への乗車の見送りが起こりにくい。従って、運行効率を改善することができる。
【0038】
本実施形態の乗降案内装置1によれば、かご2の積載荷重が第1の閾値以上(本実施形態では、定格積載量の110%以上)となったとき、かご2に乗り込もうとする乗客は、かご2からの降車を案内する第3表示状態によりかご2からの降車が必要であると判断できる。
【0039】
また、本実施形態の乗降案内装置1によれば、かご2の積載荷重が第2の閾値に到達するまでに、かごに乗車すべきでない状態に近づいている第6表示状態を取ることにより、かご2に乗車すべきでない状態に近づいていることを前もって乗客に伝えることができる。
【0040】
なお、本発明の乗降案内装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0041】
また、上記実施形態では、表示器4は、第1表示状態(第5表示状態及び第6表示状態)、第2表示状態、第3表示状態、及び、第4表示状態を取っていたが、少なくとも第1表示状態及び第2表示状態を取ればよく、第3表示状態及び第4表示状態の少なくとも一方を取らなくてもよい。例えば、かご2の積載荷重が第1の閾値以上であるとき、表示器4がかご2からの降車を案内する第3表示状態を取る代わりに、かご2や乗場3に設けられたスピーカーが、かご2からの降車を案内するブザー音や音声アナウンス等を出力してもよい。また、かご2の積載荷重が第2の閾値より大きく第1の閾値より小さいときに加えて、かご2の積載荷重が第1の閾値以上であるときに、表示器4は、かご2に乗車すべきでないことを案内する第2表示状態を取ってもよい。
【0042】
以下、上記実施形態等と別の実施形態に係る表示器4の取り得る各表示状態について、
図4~
図7(c)を用いて説明する。
【0043】
上記実施形態等では、第2表示状態がかご2に乗車すべきでないことを案内しているが、このことを、かご2に乗り込んだ乗客に学習させることが好ましい。本実施形態では、
図4に示すように、表示器4は、かご2の積載荷重が第1の閾値以上であるときに加えて、かご2の積載荷重が第2の閾値よりも大きく第1の閾値よりも小さい状態で、荷重検出器5による検出結果が増加し、且つ、かご2の積載荷重が第1の閾値よりも小さい場合でも、かご2からの降車を案内する第3表示状態を取る。かかる構成によれば、かご2に乗車すべきでないことを案内する第2表示状態で、かご2に乗客が乗り込んだときに、第1の閾値よりも小さい場合であってもかご2からの降車を案内する第3表示状態に切り替わる。これにより、かご2に乗り込んだ乗客に、第2表示状態ではかご2への乗車が不可能であることを学習させることができる。
【0044】
また、荷重検出器5としてのロードセルは、かご2が無人であるにもかかわらずかご2の積載荷重が0より大きいと誤検出をすることがある。これに対して、表示器4は、かご2の積載荷重及びかご呼びの有無に応じて、
図5に示す各表示状態を取ってもよい。本実施形態では、表示器4は、かご2の積載荷重が0よりも大きく第2所定質量よりも小さい状態でかご呼びが無いとき、かご2が無人であることを案内する第4表示状態を取り、かごの積載荷重が0よりも大きく第2所定質量よりも小さい状態でかご呼びがあるとき、及び、かご2の積載荷重が第2所定質量以上であり第2の閾値の約半分以下であるとき、かごに乗車すべきでない状態まで余裕があることを案内する第5表示状態を取る。第2所定質量は、ロードセルの誤検出と推定される値(乗客による検出結果と考えられない価)であり、0kgよりも大きく且つ乗客一人あたりの体重(例えば、75kg)よりも小さい値である。例えば、第2所定質量は、20kg以上50kg以下である。なお、かご呼びとは、かご2に乗り込んだ乗客がかご操作装置を操作する(例えば、かご2内の行先階釦を押す)ことで行われる。かかる構成によれば、かご2に誰も乗車していない場合に、荷重検出器5の誤検出が生じたときに、かご2に乗客が乗っていることを示す状態(第5表示状態)となることを防ぐことができる。
【0045】
ところで、荷重検出器5としてのロードセルは、かご2に乗客が乗り込んだ後、検出値が安定するまで待つことで、正確なかご2の積載荷重を検出する。具体的に、ロードセルが、正確なかご2の積載荷重を検出するまでには1秒~3秒程度の時間がかかる。これに対して、乗降案内装置1は、かごドアの戸開側に設けられ、乗客のかご2への乗車を非接触で検出する乗車検出器を備え、この乗車検出器により乗車を迅速に検出してもよい。この乗車検出器は、例えば、発光素子と受光素子とを含むマルチビームセンサである。マルチビームセンサの発光素子は、かごドアの開閉方向に平行線状に延びる複数の検出ビームを、受光素子に向けて放射する。なお、乗車検出器は、赤外線センサやかご2内の乗客を撮像する画像センサであってもよい。
【0046】
本実施形態では、
図6に示すように、表示器4は、かご2の積載荷重が第3の閾値以上であり第2の閾値よりも小さい状態で乗車検出器が乗客の乗車を検出したとき、かご2に乗車すべきでないことを案内する第2表示状態を取る。第3の閾値は、かご2の積載荷重が第1の閾値に到達するまでに、かご2に最大二人の乗客の乗り込みが許容可能な値である。具体的に、第3の閾値は、第2の閾値よりも第3所定質量だけ小さく、第3所定質量は、例えば、30kg以上85kg以下である。なお、この表示器4では、乗車検出器が反応したとき、ロードセルの検出結果が増加しているときに乗車による反応であると判断し、ロードセルの検出結果が減少しているときに降車による反応であると判断する。かかる構成によれば、かご2に乗車すべきでない状態に一人の乗客の乗り込みが不可能な程度まで近づいた状態で、さらにかご2に乗客が乗り込んだとき、荷重検出器5(ロードセル)の検出結果を待たずにかご2に乗車すべきでないことを案内する第2表示状態を取ることで、乗客に対してより迅速に状態を伝え、運行効率を改善することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、第3所定質量は75kgであり、第1所定質量は105kgであるため、第3の閾値は、第1の閾値よりも180kg小さい値である。また、日本人成人男性二人の95%以上で、合計体重が180kg以下である。そのため、表示器4は、かご2の積載荷重が第3の閾値以上であり第2の閾値よりも小さい状態で乗車検出器が乗客の乗車を検出したとき、この乗車の後にかご2に乗客がさらに一人乗り込んだとしても、かご2の積載荷重が第1の閾値以上となる可能性は低い。従って、表示器4は、かご2の積載荷重が第3の閾値以上であり第2の閾値よりも小さい状態で乗車検出器が乗客の乗車を検出したとき、かご2に乗車すべきでないことを案内する第2表示状態を取れば十分である。
【0048】
また、本実施形態では、かご2の積載荷重が第3の閾値以上であり第2の閾値よりも小さい状態で乗車検出器が乗客の乗車を検出し、かご2に乗車すべきでないことを案内する第2表示状態を取った後に、ロードセルの検出結果が安定し、この検出結果(ロードセルが検出したかご2の積載荷重)が第2の閾値よりも小さいとき、表示器4は、第6表示状態に戻してもよいし、第2表示状態を維持してもよい。
【0049】
上記実施形態では、表示器4は、ランプで構成されていたが、液晶ディスプレイ等の表示パネルで構成されてよい。この場合、表示器4は、かご2の状態を案内する文章(例えば、「かごに乗車可能です」といった文章、「かごに乗車できません」といった文章、「かごから降りてください」といった文章等)を切り替えて表示することにより、各表示状態を示してもよい。また、表示器4は、目盛りを表示する目盛板と、かご2の積載荷重に対応して目盛りを指す針とで構成されてもよい。
【0050】
上記実施形態では、表示器4は、かご表示器であったが、乗場に設けられた乗場表示器であってもよい。本実施形態では、例えば、
図7(a)~
図7(c)に示すように、乗場表示器は、ホールランタン30及び乗場呼び釦31の両方で構成されてもよい。この構成によれば、乗場表示器の表示により、乗客がかご2への乗車が可能であるか否かを判断できる。表示器4として乗場表示器を用いる場合、乗場3のかご2から離れた位置からも乗客が各表示状態を確認しやすい。本実施形態では、ホールランタン30及び乗場呼び釦31はともに、
図7(a)に示す第一表示状態では青色光を出射し、
図7(b)に示す第二表示状態では黄色光を出射し、
図7(c)に示す第三表示状態では赤色光を出射する。
【0051】
さらに、本実施形態では、表示器4の表示が、少なくともかご2が乗場で停止してから利用者の降車及び乗車の後にかごドアの戸閉が完了するまで維持される。これにより、かご2に乗り込もうとする乗客が、乗り込み動作を行う間、各表示状態を確認することができる。本実施形態では、かご2の走行中は、ホールランタン30及び乗場呼び釦31はともに、電球色又は白色の光を出射し、かご2の到着時にかごドアが戸開してから戸閉するまでの間、各表示状態に応じた光を出射する。
【0052】
なお、乗場表示器は、ホールランタン30及び乗場呼び釦31のうち少なくとも一つで構成されてもよい。
図7(a)~
図7(c)では、ホールランタン30は、乗場呼び釦31の上方に配置されていたが、別の場所に配置されていてもよく、例えば、ホールランタン30及び乗場呼び釦31が水平方向に並んで配置されていてもよい。また、乗場表示器は、例えば、三方枠の縦枠等に設けられたLEDランプや表示パネル等であってもよい。さらに、表示器4は、かご表示器、及び、乗場表示器の両方で構成されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…乗降案内装置、2…かご、3…乗場、4…表示器、5…荷重検出器、20…出入口、21…トランサム、30…ホールランタン、31…乗場呼び釦、41、42、43…表示部
【手続補正書】
【提出日】2023-09-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場に滞在する乗客から視認可能な位置に配置され且つかごの積載量に関する情報を表示可能な表示器を備え、
前記表示器は、
かごの積載荷重が過積載によりかごへの乗り込みが不可となる第1の閾値よりも第1所定質量だけ小さい第2の閾値以下であるとき、かごに乗車可能であることを案内する第1表示状態を取り、
かごの積載荷重が前記第2の閾値よりも大きく、前記第1の閾値よりも小さいとき、かごに乗車すべきでないことを案内する第2表示状態を取り、
前記第1所定質量は、一人又は二人の乗客のかごへの乗り込みが許容可能な質量であり、且つ、105kg以上210kg以下である、エレベータの乗降案内装置。
【請求項2】
前記表示器は、かごの積載荷重が第1の閾値以上であるとき、かごからの降車を案内する第3表示状態を取る、請求項1に記載のエレベータの乗降案内装置。
【請求項3】
前記表示器は、かごの積載荷重が前記第2の閾値よりも大きく前記第1の閾値よりも小さい状態でかごの積載荷重を検出する荷重検出器による検出結果が増加し且つ前記第1の閾値よりも小さい場合でも、前記第3表示状態を取る、請求項2に記載のエレベータの乗降案内装置。
【請求項4】
前記表示器は、
かごの積載荷重が0のとき、かごが無人であることを案内する第4表示状態を取り、
かごの積載荷重が0よりも大きく前記第2の閾値の約半分以下であるとき、かごに乗車すべきでない状態まで余裕があることを案内する第5表示状態を取り、
かごの積載荷重が前記第2の閾値の約半分よりも大きく前記第2の閾値以下であるとき、かごに乗車すべきでない状態に近づいていることを案内する第6表示状態を取る、請求項1又は請求項2に記載のエレベータの乗降案内装置。
【請求項5】
前記表示器は、
かごの積載荷重が0よりも大きく第2所定質量よりも小さい状態でかご呼びが無いとき、前記第4表示状態を取り、
かごの積載荷重が0よりも大きく第2所定質量よりも小さい状態でかご呼びがあるとき、及び、かごの積載荷重が第2所定質量以上であり前記第2の閾値の約半分以下であるとき、前記第5表示状態を取り、
前記第2所定質量は、20kg以上50kg以下である、請求項4に記載のエレベータの乗降案内装置。
【請求項6】
かごドアの戸開側に設けられ、乗客のかごへの乗車を非接触で検出する乗車検出器と、を備え、
前記表示器は、
かごの積載荷重が第3の閾値以上であり前記第2の閾値よりも小さい状態で前記乗車検出器が乗客の乗車を検出したとき、かごの積載荷重を検出する荷重検出器による検出結果を待たずに、前記第2表示状態を取り、
前記第3の閾値は、前記第2の閾値よりも第3所定質量だけ小さく、
前記第3所定質量は、30kg以上85kg以下である、請求項1又は請求項2に記載のエレベータの乗降案内装置。
【請求項7】
前記表示器は、かごに設けられたかご表示器、及び、乗場に設けられた乗場表示器の少なくとも一方である、請求項1又は請求項2に記載のエレベータの乗降案内装置。