(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067629
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】クランプシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 15/04 20060101AFI20240510BHJP
B23Q 3/00 20060101ALI20240510BHJP
B23Q 3/157 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B25J15/04 A
B23Q3/00 Z
B23Q3/157 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177851
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】春名 陽介
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 健太
【テーマコード(参考)】
3C002
3C016
3C707
【Fターム(参考)】
3C002FF07
3C016AA00
3C707EW07
3C707EW20
3C707GS02
3C707GS13
3C707GS19
(57)【要約】
【課題】圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または圧力流体を駆動に必要としてもその量が少なくてすむ部材交換装置、および移動させる力が大きく変化することなく当該部材交換装置を動作させることが可能なストッカを備えるクランプシステムを提供すること。
【解決手段】部材交換装置101は、出力ロッド5を軸方向のうちの先端側方向へ押して移動させる操作部材9と、出力ロッド5を軸方向のうちの基端側方向へ押して移動させる付勢手段10とを備える。ストッカ151が備えるガイド面49は、カムロッド24の端部へ当該ガイド面49からカムロッド24の軸方向へ作用する反力Fが、カムロッド24の軸方向のうちの一方へカムロッド24が移動するにつれて大きくなる曲面形状に形成された曲面部50を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材交換装置(101、102)とストッカ(151、152)とを備えるクランプシステムであって、
前記部材交換装置(101、102)は、
ハウジング(1)と、
前記ハウジング(1)から突設される筒状のプラグ部(4)と、
前記プラグ部(4)のプラグ部筒孔(4a)に当該プラグ部筒孔(4a)の軸方向に移動可能となるように挿入される出力ロッド(5)と、
前記プラグ部(4)の周壁に形成された貫通孔(15)に挿入される係合部材(16)であって、前記出力ロッド(5)が前記軸方向へ移動されることにより前記貫通孔(15)内で移動され、前記プラグ部(4)が挿入可能となるようにクランプ対象物(T)に設けられる装着孔(40)が有する係止部(41)に当接可能となっている係合部材(16)と、
前記ハウジング(1)に形成された筒孔(6、7)であって、前記出力ロッド(5)が前記軸方向に移動可能となるように挿入される筒孔(6、7)と、
前記出力ロッド(5)を前記軸方向のうちの先端側方向へ押して移動させる操作部材(9、52)と、
前記筒孔(6、7)の内部に配置され、または前記筒孔(6、7)の内部に充填され、前記出力ロッド(5)を前記軸方向のうちの基端側方向へ押して移動させる付勢手段(10)と、
前記ハウジング(1)に形成されたガイド孔(23)であって、前記軸方向に対して交差する方向へ延びるガイド孔(23)と、
前記ガイド孔(23)に移動可能に挿入されるカムロッド(24、53)であって、前記操作部材(9、52)が嵌り込むカム溝(25、56)が形成されたカムロッド(24、53)と、
を備え、
前記カム溝(25、56)は、前記カムロッド(24、53)の軸方向のうちの一方へ前記カムロッド(24、53)が移動することで前記操作部材(9、52)を前記先端側方向へ押すカム面(25a、56a)を有し、
前記ストッカ(151、152)は、
前記カムロッド(24、53)を前記カムロッド(24、53)の軸方向のうちの一方へ移動させるためのガイド面(49)を有する受け部材(44)と、
前記受け部材(44)を支持する支持部材(43)と、
を備え、
前記ガイド面(49)は、前記ハウジング(1)から突出する前記カムロッド(24、53)の端部へ当該ガイド面(49)から前記カムロッド(24、53)の軸方向へ作用する反力(F)が、前記カムロッド(24、53)の軸方向のうちの一方へ前記カムロッド(24、53)が移動するにつれて大きくなる曲面形状に形成された曲面部(50)を有する、
クランプシステム。
【請求項2】
請求項1のクランプシステムにおいて、
前記付勢手段(10)はバネ(10)であり、
平面視において前記曲面部(50)が円弧とされている、
クランプシステム。
【請求項3】
請求項2のクランプシステムにおいて、
前記ガイド面(49)の全体が平面視において1つの円弧からなる前記曲面部(50)とされている、
クランプシステム。
【請求項4】
請求項3のクランプシステムにおいて、
前記出力ロッド(5)が前記先端側方向へ移動するときの、増大していく前記バネ(10)の抵抗力に合わせて前記反力(F)も増大するように、前記円弧の半径(R)が決められている、
クランプシステム。
【請求項5】
請求項4のクランプシステムにおいて、
前記出力ロッド(5)が前記先端側方向へ移動するときの、増大していく前記バネ(10)の抵抗力と、前記カム面(25a)が前記操作部材(9)を前記先端側方向へ押す力との差が一定となるように、前記円弧の半径(R)が決められている、
クランプシステム。
【請求項6】
請求項2のクランプシステムにおいて、
前記曲面部(50)は、第1曲面部(50a)と、当該第1曲面部(50a)の円弧の中心とは異なる円弧の中心の第2曲面部(50b)と、を有し、
前記ガイド面(49)は、前記第1曲面部(50a)と、前記第1曲面部(50a)と連なる前記第2曲面部(50b)とからなる、
クランプシステム。
【請求項7】
請求項6のクランプシステムにおいて、
前記部材交換装置(102)は、前記カムロッド(53)の軸方向のうちの他方への前記カムロッド(53)の移動を助勢する倍力機構(60)をさらに備え、
前記出力ロッド(5)が前記先端側方向へ移動するときの、増大していく前記バネ(10)の抵抗力および前記倍力機構(60)の抵抗力に合わせて前記反力(F)も増大するように、前記第1曲面部(50a)の円弧の半径(R1)が決められており、
前記出力ロッド(5)が前記先端側方向へ移動するときの、増大していく前記バネ(10)の抵抗力に合わせて前記反力(F)も増大するように、前記第2曲面部(50b)の円弧の半径(R2)が決められている、
クランプシステム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかのクランプシステムにおいて、
前記出力ロッド(5)の基端側端面に凹部(8)が形成されており、
前記操作部材(9)は、前記凹部(8)に回転可能な状態で収容されている、
クランプシステム。
【請求項9】
請求項8のクランプシステムにおいて、
前記カム溝(25)は、前記カムロッド(24)の外周面に形成されており、
前記出力ロッド(5)の基端部が入り込むロッド逃がし溝(27)が前記カム溝(25)と重なるように前記外周面に形成されている、
クランプシステム。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかのクランプシステムにおいて、
前記ハウジング(1)の側面側に、前記カムロッド(24)がリリース位置にあることを検出するリリースセンサ(30)が配置されている、
クランプシステム。
【請求項11】
請求項1から7のいずれかのクランプシステムにおいて、
前記ハウジング(1)の側面側に、前記カムロッド(24)がロック位置にあることを検出するロックセンサ(34)が配置されている、
クランプシステム。
【請求項12】
請求項1から7のいずれかのクランプシステムにおいて、
前記操作部材(9)は球体である、
クランプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具、治具、機械加工対象物などの部材を、ロボットアームの先端などに着脱可能に固定するのに好適なクランプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記クランプシステムを構成する部材交換装置は、部材を着脱可能に固定するためのものであるため、機能の点でいわゆるクランプ装置に類似する。クランプ装置として、下記の特許文献1に記載されたものがある。従来技術に係るそのクランプ装置は、次のように構成されている。
【0003】
クランプ装置は、ハウジングから突設される筒状のプラグ部、出力ロッド、係合用のボール、およびピストンなどから構成される。クランプ装置を構成するハウジングには、圧力流体が給排されるクランプ室およびアンクランプ室が設けられている。クランプ装置の駆動、すなわちピストンおよび出力ロッドの駆動には、例えば圧縮エアが用いられ、駆動のたびに、クランプ室およびアンクランプ室に圧縮エアが給排される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/177385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなクランプ装置が多数設置されると、圧縮エアの供給設備として、規模が大きな設備が必要となる。また、圧縮エアを給排する配管設備は、数量が多く且つ複雑なものとなる。これらは、省エネルギーおよび環境対策の点から好ましいとは言えない側面がある。そのため、駆動源として圧縮エアは不要である、または必要であるとしても最小限であることが望ましい。
【0006】
また、ロボットアームの先端などにクランプ装置を取り付け、ロボットアームを動かすことでクランプ装置を移動させて動作させるとき、ロボットアームを動かす力をできるだけ一定に維持できたほうがよい。
【0007】
本発明の目的は、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または圧力流体を駆動に必要としてもその量が少なくてすむ部材交換装置、および移動させる力が大きく変化することなく当該部材交換装置を動作させることが可能なストッカを備えるクランプシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係るクランプシステムは、例えば、
図1から
図12に示すように、次のように構成される。
【0009】
(1)本願で開示するクランプシステムは、部材交換装置101、102とストッカ151、152とを備える。部材交換装置101、102は、ハウジング1と、前記ハウジング1から突設される筒状のプラグ部4と、前記プラグ部4のプラグ部筒孔4aに当該プラグ部筒孔4aの軸方向に移動可能となるように挿入される出力ロッド5と、前記プラグ部4の周壁に形成された貫通孔15に挿入される係合部材16であって、前記出力ロッド5が前記軸方向へ移動されることにより前記貫通孔15内で移動され、前記プラグ部4が挿入可能となるようにクランプ対象物Tに設けられる装着孔40が有する係止部41に当接可能となっている係合部材16と、前記ハウジング1に形成された筒孔6、7であって、前記出力ロッド5が前記軸方向に移動可能となるように挿入される筒孔6、7と、前記出力ロッド5を前記軸方向のうちの先端側方向へ押して移動させる操作部材9、52と、前記筒孔6、7の内部に配置され、または前記筒孔6、7の内部に充填され、前記出力ロッド5を前記軸方向のうちの基端側方向へ押して移動させる付勢手段10と、前記ハウジング1に形成されたガイド孔23であって、前記軸方向に対して交差する方向へ延びるガイド孔23と、前記ガイド孔23に移動可能に挿入されるカムロッド24、53であって、前記操作部材9、52が嵌り込むカム溝25、56が形成されたカムロッド24、53と、を備える。前記カム溝25、56は、前記カムロッド24、53の軸方向のうちの一方へ前記カムロッド24、53が移動することで前記操作部材9、52を前記先端側方向へ押すカム面25a、56aを有する。付勢手段10は、例えばバネまたは圧縮ガス(圧力ガス)である。ストッカ151、152は、前記カムロッド24、53を前記カムロッド24、53の軸方向のうちの一方へ移動させるためのガイド面49を有する受け部材44と、前記受け部材44を支持する支持部材43と、を備える。前記ガイド面49は、前記ハウジング1から突出する前記カムロッド24、53の端部へ当該ガイド面49から前記カムロッド24、53の軸方向へ作用する反力Fが、前記カムロッド24、53の軸方向のうちの一方へ前記カムロッド24、53が移動するにつれて大きくなる曲面形状に形成された曲面部50を有する。
【0010】
本願で開示するクランプシステムは次の作用効果を奏する。
【0011】
本願で開示する部材交換装置は次の作用効果を奏する。当該部材交換装置は、従来のクランプ装置が備えるクランプ室およびアンクランプ室というような駆動のたびに圧力流体が給排される室を備えない。当該部材交換装置では、内蔵された上記のカムロッドが外力によって動かされることで、軸方向のうちの先端側方向へ操作部材を介して出力ロッドは駆動される。軸方向のうちのもう一方の方向である基端側方向へは、上記の付勢手段によって出力ロッドは駆動される。したがって、当該部材交換装置は、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または圧力流体を駆動に必要としてもその量が少なくてすむ。また、ストッカが備える、前記曲面部を有するガイド面からの反力を利用してカムロッドを軸方向へ移動させることで、部材交換装置を移動させる力が大きく変化することなく当該部材交換装置を動作させることができる。
【0012】
(2)(1)のクランプシステムにおいて、前記付勢手段10はバネ10であり、平面視において前記曲面部50が円弧とされてもよい。
【0013】
この構成によると、ストッカが備える、前記曲面部を有するガイド面からの反力を利用してカムロッドを軸方向へ移動させることで、部材交換装置を移動させる力が大きく変化することなく当該部材交換装置を動作させることができる。
【0014】
(3)(2)のクランプシステムにおいて、例えば、
図1から
図6に示すように、前記ガイド面49の全体が平面視において1つの円弧からなる前記曲面部50とされてもよい。
【0015】
この構成によると、ストッカが備える、前記曲面部を有するガイド面からの反力を利用してカムロッドを軸方向へ移動させることで、部材交換装置を移動させる力が大きく変化することなく当該部材交換装置を動作させることができる。
【0016】
(4)(2)または(3)のクランプシステムにおいて、前記出力ロッド5が前記先端側方向へ移動するときの、増大していく前記バネ10の抵抗力に合わせて前記反力Fも増大するように、前記円弧の半径Rが決められてもよい。
【0017】
この構成によると、部材交換装置を動作させるための、部材交換装置を移動させる力を一定に維持し得る。
【0018】
(5)(2)から(4)のいずれかのクランプシステムにおいて、前記出力ロッド5が前記先端側方向へ移動するときの、増大していく前記バネ10の抵抗力と、前記カム面25aが前記操作部材9を前記先端側方向へ押す力との差が一定となるように、前記円弧の半径Rが決められてもよい。
【0019】
この構成によると、部材交換装置を動作させるための、部材交換装置を移動させる力を一定に維持し得る。
【0020】
(6)(2)のクランプシステムにおいて、例えば、
図7から
図12に示すように、前記曲面部50は、第1曲面部50aと、当該第1曲面部50aの円弧の中心とは異なる円弧の中心の第2曲面部50bと、を有し、前記ガイド面49は、前記第1曲面部50aと、前記第1曲面部50aと連なる前記第2曲面部50bとからなってもよい。
【0021】
この構成によると、部材交換装置を移動させる力が大きく変化することなく当該部材交換装置を動作させることができる。
【0022】
(7)(6)のクランプシステムにおいて、前記部材交換装置102は、前記カムロッド53の軸方向のうちの他方への前記カムロッド53の移動を助勢する倍力機構60をさらに備えてもよい。この場合、前記出力ロッド5が前記先端側方向へ移動するときの、増大していく前記バネ10の抵抗力および前記倍力機構60の抵抗力に合わせて前記反力Fも増大するように、前記第1曲面部50aの円弧の半径R1が決められ、前記出力ロッド5が前記先端側方向へ移動するときの、増大していく前記バネ10の抵抗力に合わせて前記反力Fも増大するように、前記第2曲面部50bの円弧の半径R2が決められてもよい。
【0023】
この構成によると、部材交換装置を動作させるための、部材交換装置を移動させる力を一定に維持し得る。
【0024】
(8)(1)から(7)のいずれかのクランプシステムにおいて、前記出力ロッド5の基端側端面に凹部8が形成されており、前記操作部材9は、前記凹部8に回転可能な状態で収容されてもよい。
【0025】
この構成によると、出力ロッドの基端側端面における操作部材の配置が容易となる。
【0026】
(9)(1)から(8)のいずれかのクランプシステムにおいて、前記カム溝25は、前記カムロッド24の外周面に形成されており、前記出力ロッド5の基端部が入り込むロッド逃がし溝27が前記カム溝25と重なるように前記外周面に形成されてもよい。
【0027】
出力ロッドの軸方向の移動距離を十分に確保しようとすると、カム溝の深さをある程度深いものとする必要がある。この場合に、出力ロッドの基端部がカムロッドに衝突することが危惧されるところ、上記の構成によると、出力ロッドがカムロッドに衝突することを防止できる。言い換えれば、上記の構成によると、出力ロッドの軸方向の移動距離を十分に確保できる。
【0028】
(10)(1)から(9)のいずれかのクランプシステムにおいて、前記ハウジング1の側面側に、前記カムロッド24がリリース位置にあることを検出するリリースセンサ30が配置されてもよい。
【0029】
この構成によると、部材交換装置がリリース状態にあることを容易に把握できる。
【0030】
(11)(1)から(10)のいずれかのクランプシステムにおいて、前記ハウジング1の側面側に、前記カムロッド24がロック位置にあることを検出するロックセンサ34が配置されてもよい。
【0031】
この構成によると、部材交換装置がロック状態にあることを容易に把握できる。
【0032】
(12)(1)から(11)のいずれかのクランプシステムにおいて、前記操作部材9は球体とされてよい。
【0033】
この構成によると、先端側方向へ出力ロッドをスムーズに移動させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または圧力流体を駆動に必要としてもその量が少なくてすむ部材交換装置、および移動させる力を大きく変化させることなく当該部材交換装置を動作させることが可能なストッカを備えるクランプシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態を示し、部材交換装置のロック状態における正面視の断面図、およびストッカの正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す部材交換装置のリリース状態における正面視の断面図、およびストッカの正面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態を示し、部材交換装置のロック状態における正面視の断面図、およびストッカの正面図である。
【
図9】
図9は、部材交換装置がロック状態からリリース状態へ切換わる途中の
図7に相当する図である。
【
図11】
図11は、
図7に示す部材交換装置のリリース状態における正面視の断面図、およびストッカの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態の説明では、ロボットアームRAの先端に部材交換装置を取り付けて、クランプ対象物である工具などのツールTを当該部材交換装置によってロボットアームRAに着脱可能に固定するという、部材交換装置の使用例を例示している。このような用途の部材交換装置は、ツールチェンジャーと呼ばれる。部材交換装置と、後述するストッカとでクランプシステムを構成する。
【0037】
図1から
図6に基づいて、本発明の第1実施形態に係るクランプシステムの構成を説明する。まず、部材交換装置101について説明する。
【0038】
ロボットアームRAの先端部に部材交換装置101のハウジング1が固定される。ハウジング1は、基端側(ロボットアームRA側)の第1ハウジング2と、先端側の第2ハウジング3とを備える。第1ハウジング2と第2ハウジング3とは、複数のボルト(図示せず)によって固定される。なお、部材交換装置の組み立てにおいて問題がない場合は、第1ハウジング2と第2ハウジング3とは一体であってもよい。
【0039】
第2ハウジング3から筒状のプラグ部4が先端側方向へ一体に突設される。プラグ部4のプラグ部筒孔4aに出力ロッド5のロッド先端部分5aが上下方向(プラグ部筒孔4aの軸方向)へ移動可能に挿入される。出力ロッド5の軸方向とプラグ部筒孔4aの軸方向とは同じ方向である。
【0040】
第2ハウジング3の基端側に筒孔6が形成され、筒孔6内に出力ロッド5のロッド基端部分5bが上下方向へ移動可能に挿入される。筒孔6は、プラグ部筒孔4aよりも径が大きい孔である。筒孔6とプラグ部筒孔4aとの間に中径筒孔7が形成されている。筒孔6、中径筒孔7、およびプラグ部筒孔4aの各軸方向は同じ方向である。中径筒孔7の径は、筒孔6の径よりも小さく、プラグ部筒孔4aの径よりも大きい。なお、中径筒孔7の径は、筒孔6の径と同じにされてもよい。
【0041】
ロッド基端部分5bの基端側端面に形成された凹部8に、操作部材としてのボール9(球体、回転体)が回転可能な状態で収容される。なお、操作部材としてボール9に代えてローラ(不図示)などの回転体を用いることも可能である。ボール9は凹部8によって支持される。ここで、ロッド基端部分5bの基端側端面に凹部8を設けずに当該基端側端面を平らな面としたまま、ボール9を第1ハウジング2または第2ハウジング3から支持するという構造としてもよい。しかしながら、この構造によると、部材交換装置101の軸方向の長さが大きくなってしまう。すなわち、本実施形態のように、ロッド基端部分5bの基端側端面に凹部8を設け、凹部8にボール9を収容するという構造を採用したことで、部材交換装置101の軸方向の長さを短くすることができ、コンパクトな部材交換装置101となる。さらには、出力ロッド5とボール9(操作部材)とが一体とされてもよい。
【0042】
筒孔6および中径筒孔7の内部に、出力ロッド5を上方(基端側方向)へ押す付勢手段としてのバネ10が配置される。バネ10は圧縮コイルバネである。ロッド基端部分5bの基端部の外周面に、バネ10の一端を受け止めるリング状のバネ受け11が配置される。バネ10の他端は、プラグ部筒孔4aと中径筒孔7との間の段差部で受け止められる。バネ受け11は、リング状のストッパ12(止め輪)によって上方(基端側方向)への移動が規制されている。そのため、バネ受け11は、出力ロッド5と一体的に上方(基端側方向)へ移動する。バネ受け11は、バネ10の一端を受け止める受け部13と、筒孔6内で摺動する筒壁部14とを有する。筒壁部14の軸方向の長さは、受け部13の径方向の幅よりも長い。筒壁部14の軸方向の長さが長いことで、筒壁部14と筒孔6との摺動面積が大きくなり出力ロッド5の軸方向の動きが安定する。
【0043】
なお、出力ロッド5を基端側方向へ押す付勢手段として、圧縮コイルバネに代えて、皿バネなどの他の種類のバネを用いることも可能である。また、部材交換装置101の組み立てにおいて問題がない場合は、出力ロッド5とバネ受け11とは一体であってもよい。
【0044】
プラグ部4の周壁の先端寄り部分に複数の貫通孔15が周方向へ所定間隔をあけて形成される。各貫通孔15に、係合部材としてのボール16(係合ボール)が挿入される。貫通孔15によって、径方向の内方の
図2に示す位置と径方向の外方の
図1に示す位置(外側位置)との間で各ボール16が移動可能に支持される。
【0045】
出力ロッド5のロッド先端部分5aの外周壁には、各ボール16に対応させて、押圧面17と退避溝18とが上下に連ねて形成される。押圧面17は、先端側方向へ向かうにつれて広がるように形成される。押圧面17がボール16に対面する位置に移動することにより、ボール16がプラグ部4の外周面よりも径方向の外方へ突出するように外側位置へ移動される。また、退避溝18がボール16に対面する位置であって、ボール16が挿入可能となる退避位置に移動することにより、ボール16がプラグ部4の外周面よりも径方向の内方へ移動可能となる。本実施形態では、4つのボール16が各貫通孔15にそれぞれ1つずつ挿入されているが、ボール16は4つに限定されない。
【0046】
プラグ部4の周壁の基端部(根本部)に環状のコレット19が外嵌される。コレット19は先端側すぼまりのテーパ外周面19aを備え、上下方向へ延びる1つのスリット19bによって弾性的に縮径されるようになっている。コレット19は止め輪20によってプラグ部4から抜けないようにされている(先端側方向への移動が規制されている)。第2ハウジング3の上面3aに、複数の穴22が周方向へ所定間隔をあけて形成される。穴22に、コレット19を先端側方向へ押す付勢手段としてのバネ21が挿入される。バネ21は圧縮コイルバネである。コレット19はバネ21によって先端側方向へ付勢されている。そのため、止め輪20によって先端側方向への移動が規制されているコレット19は、僅かではあるが、上下方向へ移動可能である。本実施形態では、3本のバネ21が各穴22にそれぞれ1本ずつ挿入されているが、バネ21は3本に限定されない。また、コレット19を先端側方向へ押す付勢手段として、圧縮コイルバネに代えて、皿バネなどの他の種類のバネを用いることも可能である。
【0047】
第1ハウジング2に、出力ロッド5の軸方向に対して交差する方向へ延びるガイド孔23が形成される。なお、本実施形態におけるガイド孔23は、出力ロッド5の軸方向に対して直交する方向へ延びる。ガイド孔23に、カムロッド24が移動可能に挿入される。
【0048】
カムロッド24の外周面に、ボール9が嵌り込むカム溝25が形成される。カム溝25は、ボール9を先端側方向へ押すためのカム面25aを有する。カム面25aは、カムロッド24の軸方向のうちの一方へカムロッド24が移動することでボール9を先端側方向へ押す。カム面25aは、カムロッド24の軸方向に対して傾斜する面である。また、先端側方向へ移動したボール9が嵌り込む凹面26がカム面25aと連なるように形成される。また、カム溝25と重なるようにして、カム溝25よりも浅いロッド逃がし溝27が、カム溝25と同じ側のカムロッド24の外周面に形成される。
【0049】
出力ロッド5の軸方向の移動距離を十分に確保しようとすると、カム溝25の深さをある程度深いものとする必要がある。この場合に、出力ロッド5の基端部がカムロッド24の外周面に衝突することが危惧されるところ、上記の構成によると、ロッド逃がし溝27によって出力ロッド5がカムロッド24に衝突することを防止できる。言い換えれば、上記の構成によると、出力ロッド5の軸方向の移動距離を十分に確保できる。
【0050】
カムロッド24において、カム溝25およびロッド逃がし溝27が形成された側とは反対側の外周面に、カムロッド24の軸方向に延びるガイド溝28が形成される。ガイド溝28に、回り止め回転体としてのボール29が配置される。ボール29は、前記のガイド孔23に形成された保持穴23aに回転可能な状態で収容される。保持穴23aは、ボール9の中心部(出力ロッド5の軸心部)から出力ロッド5の軸方向のうちの基端側方向へ延ばした仮想の延長線Cと、ガイド孔23とが交差する部分に設けられている。
【0051】
カムロッド24の動きをより滑らかなものとするために、その外周面には周方向に延びる溝24aが形成されている。溝24aは複数形成されている。当該溝24a部分に油だまりが形成されることにより、カムロッド24とガイド孔23との間に働く摩擦力を小さくすることができ、カムロッド24の動きは滑らかなものとなる。カムロッド24は小径部24bを有し、小径部24bの外周にバネ36が装着されている。なお、バネ36の付勢力は、バネ10の付勢力よりもはるかに小さい。ボール9が押し付けられているカムロッド24がバネ36の付勢力で動くというものではない。
【0052】
第1ハウジング2の側面側に、カムロッド24が
図2に示すリリース位置にあることを検出するリリースセンサ30が配置される。第1ハウジング2の側面にセンサ取付部材31が固定される。このセンサ取付部材31の側面にリリースセンサ30が取り付けられる。センサ取付部材31は筒孔31aを有し、筒孔31aにカムロッド24が移動可能に挿入される。リリースセンサ30は磁気センサである。カムロッド24の外周面に、カムロッド24がリリース位置にあることを検出するためのリング状の磁石32が装着される。リリースセンサ30が磁石32を検出することで、カムロッド24がリリース位置にあることを検出できる。
【0053】
センサ取付部材31が固定された側とは反対側の、第1ハウジング2の側面にもう1つのセンサ取付部材33が固定される。このセンサ取付部材33の側面にロックセンサ34が取り付けられる。センサ取付部材33は筒孔33aを有し、筒孔33aにカムロッド24が移動可能に挿入される。ロックセンサ34は磁気センサである。カムロッド24の外周面に、カムロッド24がロック位置にあることを検出するためのリング状の磁石35が装着される。ロックセンサ34が磁石35を検出することで、カムロッド24がロック位置にあることを検出できる。
【0054】
リリースセンサ30が配置されることで、部材交換装置101がリリース状態にあることを容易に把握できる。また、ロックセンサ34が配置されることで、部材交換装置101がロック状態にあることを容易に把握できる。なお、リリースセンサ30およびロックセンサ34は磁気センサに限定されない。センサ取付部材31およびセンサ取付部材33はハウジング1の一部とみなされる。
【0055】
ツールTの基端にツールアダプタ37が固定される。ツールアダプタ37に凹部38が開口される。凹部38にリング部材39が装着され、リング部材39は複数のボルト(図示せず)によってツールアダプタ37に固定される。リング部材39の内周孔によって装着孔40が構成され、装着孔40にプラグ部4が挿入可能になっている。装着孔40は、クランプ対象物であるツールTに設けられた装着孔に相当する。
【0056】
リング部材39の装着孔40に係止部41が凹部38の底方向へ向かうにつれて広がるようにテーパ状に形成される。また、係止部41よりも開口側に近い部分に、コレット19のテーパ外周面19aに係合するテーパ内周面42が形成される。テーパ内周面42は、凹部38の底方向へ向かうにつれて狭まるように形成された面である。
【0057】
なお、本実施形態では、装着孔40をリング部材39に形成するようにしたが、ツールアダプタ37の凹部38の内周孔によって装着孔40を構成するようにしてもよい。すなわち、ツールアダプタ37の凹部38の内周孔自体に、上記係止部41およびテーパ内周面42が形成されてもよい。さらには、ツールT自体に、上記係止部41およびテーパ内周面42を有する装着孔40が設けられてもよい。
【0058】
装着孔40がツールTに設けられるとは、ツールT自体に装着孔40が設けられる形態だけでなく、ツールアダプタ37に装着孔40が設けられたり、本実施形態のようにリング部材39に装着孔40が設けられたりする形態を含む。すなわち、装着孔40がツールTに設けられるとは、ツールT自体に装着孔40が設けられる形態に加えて、ツールTに直接的に(ツールアダプタ37の場合)または間接的に(リング部材39の場合)固定される部材に装着孔40が設けられる形態を含む。
【0059】
次に、ストッカ151について説明する。
図5は、ストッカ151の斜視図である。
【0060】
テーブルの上などに支持部材43が固定される。支持部材43に、平面視でU字形状の受け部材44がボルト45で固定される。受け部材44は、U字形状の受け部材本体部46と、受け部材本体部46の下面にボルト47(
図1等参照)で固定される一対の載置台部48とで構成される。
【0061】
受け部材本体部46の内周面に、カムロッド24をその軸方向のうちの一方(リリース側)へ移動させるためのガイド面49が設けられる。ガイド面49は、センサ取付部材33(第1ハウジング2)から突出するカムロッド24の端部24dへ当該ガイド面49からカムロッド24の軸方向へ作用する反力F(
図3参照)が、カムロッド24の軸方向のうちの一方へカムロッド24が移動するにつれて大きくなる曲面形状に形成された曲面部50を有する。本実施形態において、曲面部50は平面視において円弧とされている。また、ガイド面49の端49aから端49bまで全て円弧、すなわち、ガイド面49の全体が平面視において1つの円弧からなる曲面部50(ガイド面49=曲面部50)とされている。
【0062】
なお、ガイド面49の端49aから端49bまでのうちの一部のみが円弧(曲面部)とされ、残りの部分が直線(直線部)とされてもよい。
【0063】
曲面部50の円弧の半径Rは、出力ロッド5が先端側方向へ移動するときの、増大していくバネ10の抵抗力に合わせて反力Fも増大するように決められる。また、出力ロッド5が先端側方向へ移動するときの、増大していくバネ10の抵抗力と、カムロッド24のカム面25aがボール9を先端側方向へ押す力との差が一定となるように、上記半径Rは決められる。
【0064】
受け部材本体部46の内周面であって、上記ガイド面49と対向する側には、カムロッド24をその軸方向のうちの他方(ロック側)へ移動させるための第2ガイド面51が設けられる。本実施形態において、第2ガイド面51は平面視において直線の傾斜面とされている。
【0065】
上記構成のクランプシステムは次のように動作する。
【0066】
部材交換装置101において
図2に示すリリース状態では、ボール9は、カムロッド24に形成された凹面26に嵌り込んでいるとともに、
図1に示すロック状態のときよりも第2ハウジング3の筒孔6内に押し込まれている。これにより、バネ10の付勢力に抗してボール9が出力ロッド5を先端側方向へ押して下降させた状態となっている。出力ロッド5が下降しているので、プラグ部4のボール16が退避溝18内の退避位置に移動可能となっている。ロボットアームRAを操作して、ツールアダプタ37を介してツールTに固定されたリング部材39の上方に、出力ロッド5などを備える部材交換装置101が取り付けられたロボットアームRAの先端部を位置させる。なお、
図2に示すように、リング部材39は、ストッカ151の載置台部48の載置部48aにひっかけられた態様で載置部48aの上に置かれており、これによりツールTはストッカ151で支持された状態とされている。
図6は、
図2のX-X矢視図である。
図6において部材交換装置101に隠れて見えないが、リング部材39を含むツールTは、ストッカ151(受け部材本体部46)のU字開口部の奥に位置する。
【0067】
ツールTをロボットアームRAに取り付けるときは、まず、ロボットアームRAの先端部を下降させて、リング部材39の装着孔40にプラグ部4が挿入された状態とする。このとき、装着孔40に形成されているテーパ内周面42に、拡径状態のコレット19のテーパ外周面19aが当たり、第2ハウジング3の上面3a(着座面)とリング部材39との間に少しの隙間が形成された状態にある。
【0068】
その後、
図6に矢印で示すように、ストッカ151の受け部材本体部46の開口端へ向けて、ロボットアームRAの先端部を水平移動させる。水平移動させていくと、センサ取付部材31から突出しているカムロッド24の端部24cが、受け部材本体部46の内方へ向かって傾斜する第2ガイド面51に当たる。さらに水平移動させていくと、第2ガイド面51からの反力でカムロッド24の端部24cはガイド孔23内に押し込まれていく。
【0069】
カムロッド24の端部24cがガイド孔23内に押し込まれると、
図1に示すように、カムロッド24に形成された凹面26からボール9は外れる。そしてボール9は、バネ10の付勢力によって押されてカム面25aに沿ってカム溝25に入り込んでいく。また、バネ10がバネ受け11を介して出力ロッド5を基端側方向へ押して移動させるので、出力ロッド5は上昇する。出力ロッド5が上昇すると、出力ロッド5に形成されている退避溝18の一部を構成する押出し部18aがプラグ部4のボール16を径方向の外方の突出位置へ押し出す。そして、出力ロッド5に形成されている押圧面17がボール16を介してツールT(リング部材39)の係止部41を上向きに押圧していく。これにより、コレット19は縮径しツールTとともに少しばかり上昇する。その結果、リング部材39が第2ハウジング3の上面3aに受け止められ、ツールTはロボットアームRAの先端部に部材交換装置101を介して強固に固定される。部材交換装置101は、
図2に示すリリース状態から
図1に示すロック状態へ切換えられる。
【0070】
ツールTをロボットアームRAから外すときは、ロボットアームRAを操作して、ストッカ151(受け部材本体部46)の開口端からその奥へ向かって、ツールTが固定されている部材交換装置101を入れていく(
図3参照)。すると、センサ取付部材33から突出しているカムロッド24の端部24dが、受け部材本体部46に設けられたガイド面49に当たる。そして、ガイド面49からの反力Fでカムロッド24の端部24dはガイド孔23内に押し込まれていく。
【0071】
カムロッド24の端部24dがガイド孔23内に押し込まれると、カムロッド24に形成されたカム面25aがボール9を押し、ボール9はカム面25aに沿って移動して凹面26に乗り上がる。これにより、バネ10の付勢力に抗してボール9が出力ロッド5を先端側方向へ押して、出力ロッド5は下降する。出力ロッド5が下降すると、出力ロッド5に形成されている退避溝18がプラグ部4のボール16に対面する位置となり、ボール16は退避溝18内(出力ロッド5の径方向の内方)へ移動可能となる。その結果、
図2に示すように、ツールT(リング部材39)をロボットアームRAから円滑に取り外すことが可能となる。
【0072】
なお、ボール9が回転することで、ボール9とカム面25aとの間の摩擦力が低減される。このため、ボール9が出力ロッド5を介してバネ受け11の筒壁部14を筒孔6の内周面に押し付ける力が軽減されて、筒壁部14の外周面および筒孔6の内周面に部分的なすべり摩耗や破損が生じることが軽減される。また、プラグ部4のプラグ部筒孔4aの内周面と出力ロッド5の外周面との間に生じる部分的な摩耗や破損も軽減される。その結果、出力ロッド5を先端側方向へスムーズに移動させることができる。
【0073】
本実施形態の部材交換装置101は、従来のクランプ装置が備えるクランプ室およびアンクランプ室というような駆動のたびに圧力流体が給排される室を備えない。当該部材交換装置101では、内蔵されたカムロッド24を介してボール9が外力によって動かされることで、出力ロッド5はボール9で押されて先端側方向へ駆動される。先端側方向とは逆方向である基端側方向へは、バネ10によって出力ロッド5は駆動される。したがって、当該部材交換装置101は、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない。
【0074】
また、ツールTをロボットアームRAから外すとき、すなわち部材交換装置101がロック状態からリリース状態へ切換わるとき、出力ロッド5が下降することで部材交換装置101内部のバネ10の抵抗力は徐々に増大していく。ここで、ストッカ151が備えるガイド面49は、円弧とされることで、当該ガイド面49からカムロッド24へ作用する反力Fが、カムロッド24がリリース側へ移動するにつれて(=出力ロッド5が下降するにつれて)大きくなるようにされている。そのため、バネ10の抵抗力が増大していくところ、反力Fも増大していくので、ストッカ151が備えるガイド面49からの反力Fを利用してカムロッド24を軸方向へ移動させることで、部材交換装置101を移動させる力(=ロボットアームRAを動かす力)を大きく変化させることなく当該部材交換装置101を動作させることができる。その結果、ロボットアームRAを動かす力を一定に維持し得る。上記の作用・効果を補足説明する。ガイド面49が仮に直線とされた場合に、ロボットアームRAを動かす力が一定であると、反力Fも一定となる。そのため、増大していくバネ10の抵抗力に抗して出力ロッド5を下降させるには、ロボットアームRAを動かす力を大きくすることで反力Fを大きくしなければならない。一方で、ガイド面49が円弧であると、ロボットアームRAを動かす力が一定であっても、反力Fは増大していく。そのため、ロボットアームRAを動かす力を大きく変化させることなく、増大していくバネ10の抵抗力に抗して出力ロッド5を下降させることができる。すなわち、ロボットアームRAを動かす力を大きく変化させることなく、部材交換装置101を動作させることができる。ロボットアームRAが一定の力で動くことで、カムロッド24の端部24dが円弧のガイド面49を押す力(押圧力ベクトル)の大きさは一定であるが、カムロッド24の軸方向に対する上記押圧力ベクトルの傾きは、ロボットアームRAがリリース側に移動するにつれて小さくなっていく。つまり、ガイド面49が円弧であることで、ロボットアームRAがリリース側に移動するにつれて、上記押圧力ベクトルの軸方向(カムロッド24の軸方向)成分は、バネ10の抵抗力の増加に対抗するように大きくなっていく。この軸方向成分の180度反対側方向の成分が反力Fである。
【0075】
上記の部材交換装置101では、筒孔6および中径筒孔7の内部にバネ10を配置し、バネ10が出力ロッド5を基端側方向へ押して移動させるようにしている。これに代えて、筒孔6および中径筒孔7内の空間を圧ガス室とし、当該圧ガス室のガス圧で、出力ロッド5を基端側方向へ押して移動させるようにしてもよい。圧ガス室とは、内部に圧力ガスが充填された室のことである。圧ガス室は、室外部へ圧力ガスが漏れ出ないように室外部に対して封止される。圧ガス室に充填された圧力ガスが、出力ロッド5を基端側方向へ押して移動させる、バネ10に代わる付勢手段となる。圧力ガスは、圧縮空気、圧縮窒素ガスなどである。
【0076】
圧ガス室は、上記のとおり、室外部へ圧力ガスが漏れ出ないように封止されるが、充填された圧力ガスによって出力ロッド5を駆動すると、少量ではあるが、圧ガス室から圧力ガスが漏れ出てしまうことがある。そのため、出力ロッド5を動かすのに必要な圧ガス室のガス圧を維持するために、圧ガス室から漏れ出た量の圧縮空気のみが圧ガス室に充填されるように部材交換装置が構成されるとよい。
【0077】
上記構成によると、圧ガス室には、当該圧ガス室から漏れ出た量の圧力ガスが供給されることとなるが、圧力ガスの使用量は極めて少ない。よって、空気圧縮機などの圧力ガスの供給設備は必要であるものの、その設備規模は極めて小さくてすむ。
【0078】
図7から
図12は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態のクランプシステムを構成する各部材について、第1実施形態のクランプシステムを構成する各部材と同様の部材については、同じ符号を付している。第2実施形態の説明において、第1実施形態と第2実施形態との共通の構成(相互に対応する部材)については適宜その説明を省略する。なお、第2実施形態のクランプシステムを構成する部材交換装置102およびストッカ152は、それぞれ、国際公開第2016/136821号公報に記載の出力装置およびストッカを改良したものであり、基本的な構成は当該出力装置およびストッカに類似する。まず、部材交換装置102について説明する。
【0079】
部材交換装置102のハウジング1は、ハウジング本体57とガイド筒58とガイド筒59とを備える。出力ロッド5を先端側方向へ押して移動させる操作部材としてのピン部材52が出力ロッド5に設けられる。ピン部材52は、出力ロッド5に回転可能に支持されてもよいし、出力ロッド5に固定されてもよい。
【0080】
ガイド孔23に移動可能に挿入されるカムロッド53は、同軸配置されるロック側カムロッド54とリリース側カムロッド55とで構成される。ロック側カムロッド54に、ピン部材52が嵌り込むカム溝56が形成されており、カム溝56は、ロック側カムロッド54の側面に形成されている。カム溝56は、カムロッド53の軸方向のうちの一方へカムロッド53が移動することで、ピン部材52を出力ロッド5の先端側方向へ押すカム面56aを有する。本実施形態では、ロック側カムロッド54におけるカム溝56が形成されている部分は板形状である。
【0081】
部材交換装置102は、カムロッド53の軸方向のうちの他方へカムロッド53が移動することを助勢する倍力機構60をさらに備える。倍力機構60は次のように構成される。
【0082】
ロック側カムロッド54の外周面には、係合部材としての係合ボール61が嵌り込む複数の係合凹部62が、周方向へ所定の間隔をあけて形成される。その係合凹部62のうちのハウジング本体57中心側に形成されたカム面62aは、ロック側カムロッド54の端部へ向かうにつれて軸心に近づくように形成される。また、ガイド筒59の中に係合ボール61を押圧する筒状の押圧部材64が配置される。押圧部材64の内周に形成された倍力面64aは、ロック側カムロッド54の端部へ向かうにつれて広がるように形成されており、その水平方向(軸心方向)に対する傾斜角度は、カム面62aの水平方向(軸心方向)に対する傾斜角度よりも小さい。ガイド筒59の中には、押圧部材64を付勢するバネ63が収容されている。
【0083】
上記構成の倍力機構60は、前記のとおり、カムロッド53の軸方向のうちの他方へカムロッド53が移動することを助勢する機構である。そのため、カムロッド53の軸方向のうちの一方(=他方とは反対方向)へカムロッド53が移動するとき倍力機構60は抵抗となる。
【0084】
ストッカ152について説明する。
【0085】
本実施形態のストッカ152が備える受け部材44は、所定の間隔をあけて配置された一対の第1受け部材65、第2受け部材66で構成される。
【0086】
第1受け部材65の内周面に、カムロッド53をその軸方向のうちの一方(リリース側)へ移動させるためのガイド面49が設けられる。ガイド面49は、ガイド筒58から突出するカムロッド53の端部へ当該ガイド面49からカムロッド53の軸方向へ作用する反力F(
図8参照)が、カムロッド53の軸方向のうちの一方へカムロッド53が移動するにつれて大きくなる曲面形状に形成された曲面部50を有する。
【0087】
曲面部50は、第1曲面部50aと第2曲面部50bとで構成される。第1曲面部50aは、第2曲面部50bよりも受け部材44の開口端側に位置する。第1曲面部50aおよび第2曲面部50bは、いずれも、平面視において円弧とされている。第1曲面部50aの円弧の中心は、第2曲面部50bの円弧の中心とは異なり、曲面部50は、2種類の曲線とされている。ガイド面49は、第1曲面部50aと、第1曲面部50aと連なる第2曲面部50bとからなる。
【0088】
第1曲面部50aの円弧の半径R1は、出力ロッド5が先端側方向へ移動するときの、増大していくバネ10の抵抗力および倍力機構60の抵抗力に合わせて反力Fも増大するように決められる。第2曲面部50bの円弧の半径R2は、出力ロッド5が先端側方向へ移動するときの、増大していくバネ10の抵抗力に合わせて反力Fも増大するように決められる。
【0089】
第2受け部材66の内周面には、カムロッド53をその軸方向のうちの他方(ロック側)へ移動させるための、第1実施形態のストッカ151の場合と同様の第2ガイド面51が設けられている。
【0090】
第2実施形態のクランプシステムは次のように動作する。
【0091】
図8に示すように、ツールTをロボットアームRAから外すとき、ロボットアームRAを操作して、ストッカ152(受け部材44)の開口端からその奥へ向かって、ツールTが固定されている部材交換装置102を入れていく。すると、まずガイド筒58から突出しているカムロッド53の端部が、第1受け部材65に設けられたガイド面49の第1曲面部50aに当たる(係合される)。そして、第1曲面部50aからの反力Fでカムロッド53の端部はガイド孔23内に押し込まれていく。
【0092】
このとき、カム溝56およびピン部材52によって出力ロッド5が下降していくことで部材交換装置102内部のバネ10の抵抗力は徐々に増大していく。また、倍力機構60を構成する係合ボール61がカム面62aによって係合凹部62から押し出されていくときに、バネ63の付勢力が押圧部材64と係合ボール61とを介してカムロッド53に右方に向けて抵抗力として作用する(この抵抗力が倍力機構60の抵抗力である。)ここで、第1曲面部50aの円弧の半径R1は、増大していくバネ10の抵抗力および倍力機構60の抵抗力に合わせて反力Fも増大するように決められているため、部材交換装置102を移動させる力(=ロボットアームRAを動かす力)を大きく変化させることなく当該部材交換装置102を動作させることができる。
【0093】
図9に示すように、倍力機構60の係合ボール61が、カム面62aによってカムロッド53の係合凹部62から押し出されて、カムロッド53の外周面に係合される。すると、倍力機構60の抵抗力は、係合ボール61とカムロッド53の外周面との間に生じる摩擦力のみとなり、バネ63の付勢力による抵抗力に比べて無視できる程度に小さくなる。その係合ボール61がカムロッド53の外周面に係合された後に、カムロッド53の端部が、
図10に示すように、ガイド面49の第2曲面部50bに係合される。そして、その後は、第2曲面部50bからの反力Fでカムロッド53の端部はガイド孔23内に押し込まれていく。
【0094】
ここで、倍力機構60の抵抗力は弱まるが、部材交換装置102内部のバネ10の抵抗力は依然として増大していく。第2曲面部50bの円弧の半径R2は、この増大していくバネ10の抵抗力に合わせて反力Fも増大するように決められているため、部材交換装置102を移動させる力(=ロボットアームRAを動かす力)を大きく変化させることなく当該部材交換装置102を動作させることができる。
【0095】
曲面部50が、第1曲面部50a、第2曲面部50bという2種類の曲線とされていることで、倍力機構60をさらに備える部材交換装置102をツールチェンジャーとして用いた場合においても、ツールTをロボットアームRAから外すときに、ロボットアームRAを動かす力を一定に維持し得る。
【0096】
カムロッド53の端部がガイド孔23内に押し込まれることで、カム溝56およびピン部材52によって出力ロッド5は下降する。出力ロッド5が下降すると、出力ロッド5に形成されている退避溝18がプラグ部4のボール16に対面する位置となり、ボール16は退避溝18内(出力ロッド5の径方向の内方)へ移動可能となる。その結果、
図11に示すように、ツールT(リング部材39)をロボットアームRAから円滑に取り外すことが可能となる。
【0097】
ツールTをロボットアームRAに取り付けるときの動き(動作)は第1実施形態の場合と同様であるので、その記載を省略する。
【0098】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記実施形態の要素を適宜組み合わせたり、上記実施形態に種々の変更を加えたりすることが可能である。
【0099】
例えば、上記の実施形態は次のように変更可能である。
【0100】
部材交換装置の姿勢は、例示した上下姿勢に対して、上下逆にされたり、横向きにされたり、さらには斜め向きにされたりしてもよい。
【0101】
クランプ対象物は、治具、機械加工対象物などであってもよい。
【0102】
第1実施形態の部材交換装置101において、リリースセンサ30およびロックセンサ34の両方、またはリリースセンサ30およびロックセンサ34のうちの一方が省略されてもよい。
【0103】
第2実施形態の部材交換装置102において、第1実施形態の部材交換装置101のように、リリースセンサ30およびロックセンサ34が設けられてもよい。
【0104】
第2実施形態の部材交換装置102において、ロック側カムロッド54とリリース側カムロッド55とが一体にされてもよい。
【0105】
第2実施形態の部材交換装置102において、倍力機構60はロック側カムロッド54に設けられているが、ロック側カムロッド54に設けることに代えて、リリース側カムロッド55に倍力機構を設けてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1:ハウジング、4:プラグ部、4a:プラグ部筒孔、5:出力ロッド、6:筒孔、7:中径筒孔(筒孔)、8:凹部、9:ボール(操作部材)、10:バネ(付勢手段)、15:貫通孔、16:ボール(係合部材)、23:ガイド孔、24:カムロッド、25:カム溝、25a:カム面、27:ロッド逃がし溝、30:リリースセンサ、34:ロックセンサ、40:装着孔、41:係止部、43:支持部材、44:受け部材、49:ガイド面、50:曲面部、50a:第1曲面部、50b:第2曲面部、52:ピン部材(操作部材)、53:カムロッド、56:カム溝、56a:カム面、60:倍力機構、101、102:部材交換装置、151、152:ストッカ、F:反力、R、R1、R2:半径、T:ツール(クランプ対象物)