(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067639
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177869
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕之
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707CY36
3C707ES03
3C707ET08
3C707HS15
3C707HT33
(57)【要約】
【課題】ハンド部の位置が不所望に変化することを防止すると共に、小型化を図ることができるロボットハンドを提供する。
【解決手段】ロボットハンド1は、揺動形アクチュエータ4と、揺動形アクチュエータ4の回転角度を調整する角度調整機構5と、揺動形アクチュエータ4にハンド接続部材6を介して接続されたハンド部3とを備える。角度調整機構5は、揺動形アクチュエータ4の軸4bに設けられたカム部材8と、揺動形アクチュエータ4のアクチュエータ本体4aに設けられ、カム部材8のカム面8a,8aに当接離隔可能な調整具9とを含む。カム部材8とハンド接続部材6とが一体に設けられている。調整具9は、カム面8a,8aに当接する調整ねじ4と、この調整ねじ4を取り付ける調整ねじ取付部材11とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動形アクチュエータと、
前記揺動形アクチュエータの回転角度を調整する角度調整機構と、
前記揺動形アクチュエータにハンド接続部材を介して接続されたハンド部と、を備え、
前記角度調整機構は、前記揺動形アクチュエータの軸に設けられたカム部材と、前記揺動形アクチュエータのアクチュエータ本体に設けられ、前記カム部材のカム面に当接離隔可能な調整具とを含み、
前記カム部材と前記ハンド接続部材とが一体に設けられているロボットハンド。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットハンドにおいて、前記調整具は、前記カム面に当接する調整ねじと、この調整ねじを取り付ける調整ねじ取付部材とを有し、この調整ねじ取付部材は前記アクチュエータ本体に別体に設けられているロボットハンド。
【請求項3】
請求項1に記載のロボットハンドにおいて、前記調整具は、前記カム面に当接する調整ねじと、この調整ねじを取り付ける調整ねじ取付部材とを有し、この調整ねじ取付部材は前記アクチュエータ本体に一体に設けられているロボットハンド。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のロボットハンドにおいて、前記角度調整機構には、前記カム部材のカム面と前記調整具を揺動の一方向と他方向で位置決めするための位置決め手段が複数箇所設けられているロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、産業用ロボットの先端等に使用される揺動形アクチュエータを有するロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
前記揺動形アクチュエータとして、例えば、アクチュエータ本体内の揺動室にベーン軸を介してベーンを揺動自在に設けて流体圧によりベーン軸を揺動させる軸揺動機構と、前記ベーン軸の揺動ストロークを調整するストローク調整機構とを備えたロータリアクチュエータが提案されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3-41206号公報
【特許文献2】実開平2-60704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベーン軸の両軸が突出した揺動形アクチュエータの一方の軸に特許文献1の機構を使用し、角度調整機能を実装した場合、他方の軸にハンド部を接続するためのハンド接続部材、および回転を検知するセンサを取り付けることになる。このため、揺動形アクチュエータの軸方向にロボットハンドが大きくなる。
ベーン軸に固定されたカム部材とハンド接続部材とが別体であると、衝撃等によりカム部材とベーン軸の固定ずれが発生した場合、ハンド部の動作の始点と終点が変化する。このため、ハンド部が他の部材または設備と干渉し、ロボットハンドを取り付けた装置が停止する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、ハンド部の位置が不所望に変化することを防止すると共に、小型化を図ることができるロボットハンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロボットハンドは、揺動形アクチュエータと、
前記揺動形アクチュエータの回転角度を調整する角度調整機構と、
前記揺動形アクチュエータにハンド接続部材を介して接続されたハンド部と、を備え、
前記角度調整機構は、前記揺動形アクチュエータの軸に設けられたカム部材と、前記揺動形アクチュエータのアクチュエータ本体に設けられ、前記カム部材のカム面に当接離隔可能な調整具とを含み、
前記カム部材と前記ハンド接続部材とが一体に設けられている。
前記「一体に設けられている」とは、前記カム部材と前記ハンド接続部材とが、振動、動作等により位置ずれおよび緩みを生じない状態である。
【0007】
この構成によると、カム部材とハンド接続部材とが一体に設けられているため、ロボットハンドの動作に起因するカム部材とハンド接続部材との位置ずれが無くなる。これによりハンド部の位置が不所望に変化することを防止することができる。したがって、ハンド部が他の部材または設備と干渉することを未然に防止し得る。またカム部材とハンド接続部材とが一体に設けられているため、揺動形アクチュエータの一方の軸側で角度調整機構およびハンド接続部材を実装できる。この場合、一方の軸側に角度調整機構を備え他方の軸側でハンド接続部材を実装する従来構造等よりも、ロボットハンド全体として軸方向の小型化を図ることが可能となる。
【0008】
前記調整具は、前記カム面に当接する調整ねじと、この調整ねじを取り付ける調整ねじ取付部材とを有し、この調整ねじ取付部材は前記アクチュエータ本体に別体に設けられていてもよい。この場合、カム部材とハンド接続部材とが一体であっても、調整ねじの向きが変更可能な調整ねじ取付部材を種々用意することで、ハンド部の動作範囲を容易に変更し得る。これによりロボットハンドの汎用性を高めることができる。調整ねじ取付部材がアクチュエータ本体に別体に設けられている分、アクチュエータ本体の加工が簡単になり、製造コストの低減を図れる。調整ねじの取付角度を変更することで、ロボットハンドの組み立て後でもハンド部の動作範囲を大きく変更することが可能となる。
【0009】
前記調整具は、前記カム面に当接する調整ねじと、この調整ねじを取り付ける調整ねじ取付部材とを有し、この調整ねじ取付部材は前記アクチュエータ本体に一体に設けられていてもよい。この場合、調整ねじ取付部材がアクチュエータ本体に別体に設けられている構造よりも調整ねじ取付部材が衝撃に対して強くなるため、揺動の始点と終点がずれにくくなる。
【0010】
前記角度調整機構には、前記カム部材のカム面と前記調整具を揺動の一方向と他方向で位置決めするための位置決め手段が複数箇所設けられてもよい。この場合、位置決め手段を複数箇所設けることで、カム面と調整具を揺動の一方向と他方向で位置決めすることができるため、角度調整機構の構造を簡単化し製造コストの低減を図れる。
【0011】
前記調整具は、前記軸の近傍である前記アクチュエータ本体の一表面に設けられ、且つ、前記ハンド部の回転モーメントが定められた値以下となる位置で前記カム面に当接させてもよい。
前記定められた値は、設計等によって任意に定める値であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な値を求めて定められる。
この場合、調整具およびカム部材のカム面に作用する衝撃を緩和することができ、ロボットハンドの耐久性を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のロボットハンドは、揺動形アクチュエータと、揺動形アクチュエータの回転角度を調整する角度調整機構と、揺動形アクチュエータにハンド接続部材を介して接続されたハンド部とを備え、角度調整機構のカム部材と、ハンド接続部材とが一体に設けられている。このため、ハンド部の位置が不所望に変化することを防止すると共に、ロボットハンドの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るロボットハンドの斜視図である。
【
図2】同ロボットハンドの角度調整機構の一態様を示す正面図である。
【
図3】同ロボットハンドの角度調整機構の他の態様を示す正面図である。
【
図4】同角度調整機構の一部を部分的に変更したロボットハンドの斜視図である。
【
図5】同ロボットハンドの角度調整機構の一態様を示す正面図である。
【
図6】同ロボットハンドの角度調整機構の他の態様を示す正面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係るロボットハンドの斜視図である。
【
図8】同ロボットハンドの角度調整機構の一態様を示す正面図である。
【
図9】同ロボットハンドの角度調整機構の他の態様を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の実施形態に係るロボットハンドを
図1ないし
図3と共に説明する。
<ロボットハンド全体の概略構成>
図1のように、ロボットハンド1は、例えば、産業用ロボットのアーム部2(
図2)の先端等に取り付けられる。産業用ロボットとして、例えば、垂直多関節ロボットまたは水平多関節ロボット等を適用可能である。ロボットハンド1は、ハンド部3の回転角度を変更する駆動源である揺動形アクチュエータ4と、揺動形アクチュエータ4の回転角度を調整する角度調整機構5と、揺動形アクチュエータ4にハンド接続部材6を介して接続されたハンド部3とを備える。例えば、定められた位置で
図2のようにハンド部3によりワークWを把持した後、
図3のようにワークWの姿勢を変更し同ワークWを所定位置に設置し得る。
【0015】
<揺動形アクチュエータ>
図1の揺動形アクチュエータ4は、例えば、圧縮空気等の流体を用いて動作する。揺動形アクチュエータ4は、例えば、直方体形状で揺動室を備えたアクチュエータ本体4aと、前記揺動室内で揺動自在に回転するベーンを有する軸4bとを含むベーン形のアクチュエータである。揺動形アクチュエータ4はロータリアクチュエータとも称される。前記軸4bは、アクチュエータ本体4aである筐体から軸方向C1の一方に所定長さ突出している。揺動形アクチュエータ4は、角度調整機構5で調整可能な範囲以上の動作範囲を有する。揺動形アクチュエータ4の内部に、動作角度を制限する図示外の機構を備えてもよい。
【0016】
<ハンド部>
ハンド部3は、定められたワークを着脱自在であり、本実施形態では、圧縮空気で把持部7,7を開閉動作する平行チャックが適用されている。揺動形アクチュエータ4の軸4bにハンド部3が回転自在に接続され、ハンド部3の回転角度を揺動形アクチュエータ4が変更する。平行チャックは、チャック本体3aと、チャック本体3aの先端部に平行に且つ摺動自在に支持された把持部7,7とを備える。平行チャックは、把持部7,7によりワークが着脱自在である。ハンド部3は、平行チャック以外に図示外の三つ爪、四つ爪等の圧縮空気で動作するチャック、吸着パッド、電動ハンド等を適用可能である。
【0017】
<角度調整機構等について>
角度調整機構5は、カム部材8と、カム部材8のカム面8a,8aに当接離隔可能な調整具9とを含む。本実施形態の角度調整機構5は、アクチュエータ本体4aの外部に設けられている。カム部材8は、アクチュエータ本体4aから軸方向一方に突出する軸4bに固定され、略三角柱形状である。カム部材8は、軸4bに対し相対回転不能に固定されている。カム部材8は、略三角柱形状の底面がアクチュエータ本体4aの一表面に臨み、二側面がカム面8a,8aを成す。
図2および
図3のように、カム部材8の接触面であるカム面8a,8aは、定められた角度に設定されている。
【0018】
図1のように、調整具9は、アクチュエータ本体4aに設けられている。角度調整機構5には、カム部材8のカム面8a,8aと調整具9を揺動の一方向と他方向で位置決めするための位置決め手段である調整ねじ10が複数箇所(少なくとも2箇所)設けられている。具体的には、
図2および
図3のように、調整具9は、カム面8a,8aに当接する2本の調整ねじ10,10と、2本の調整ねじ10,10を取り付ける調整ねじ取付部材11とを有する。
【0019】
図1のように、調整具9は、軸4bの近傍であるアクチュエータ本体4aの一表面に設けられ、且つ、ハンド部3の回転モーメントが定められた値以下となる位置でカム面8a,8aに当接させる。前記定められた値は、設計等によって任意に定める値であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な値を求めて定められる。調整ねじ取付部材11は、アクチュエータ本体4aに別体に設けられている。具体的には、調整ねじ取付部材11は、アクチュエータ本体4aの一表面に、複数のボルト12により着脱自在に設けられている。調整ねじ取付部材11の長手方向両端部には、各ボルト12が挿通される貫通孔が軸方向に平行に設けられている。アクチュエータ本体4aには、前記貫通孔に挿通された各ボルト12が螺着される雌ねじが設けられている。
【0020】
調整ねじ取付部材11には、2本の調整ねじ10,10を取り付けるつまり移動自在に支持するための雌ねじがそれぞれ設けられている。本実施形態の調整ねじ取付部材11では、調整ねじ10,10が所定間隔を隔てて平行に且つ前記軸方向に直交するように配置される。各調整ねじ10は、例えば、六角穴付き止めねじであり、六角穴に工具を差し込み回転させることで調整ねじ取付部材11からの調整ねじ10の突出長さを変更可能である。
図2および
図3のように、カム部材8のカム面8a,8aと、調整ねじ取付部材11に取り付けられた2本の調整ねじ10,10の先端面10a,10aが接触することで、ロボットハンド1の動作角度が決定する。
【0021】
図1のように、カム部材8とハンド接続部材6とは一体に設けられている。具体的には、ハンド接続部材6は、カム部材8のうちカム面8a,8aに隣接する一側面から突出する長板状に形成される。カム部材8の前記一側面に、ハンド接続部材6が一体に設けられている。これらカム部材8およびハンド接続部材6は、例えば、アルミニウム等の非鉄金属または鋼板等の単一の材料から成る。前記「一体に設けられている」とは、原則、カム部材8とハンド接続部材6とが複数の要素をボルト等で結合したものではなく単一の材料から、例えば、鍛造、機械加工等により単独の物の一部または全体として成形されたことを意味する。但し、複数の要素を、熔接、鋳込み、インサート成形等で一体化することも含む。
【0022】
図2および
図3のように、カム部材8の接触面であるカム面8aと調整ねじ10の先端面10aは、接触時に互いに平行になるように、ハンド接続部材6と調整ねじ10の角度を設計する。これにより、カム部材8の接触面と調整ねじ10の先端面10aの接触時の圧力を低減すると共に、繰り返し使用することによるロボットハンド1の動作角度のずれを防止し得る。
【0023】
図1のように、カム部材8と調整ねじ10の接触時の衝撃、振動によって調整ねじ10に緩みが発生しないように、調整ねじ10をナット13で固定するか、または調整ねじ10に緩み止め剤を塗布するか、それらの両方を実施するとよい。なお各調整ねじ10を2個のナットで強固に固定してもよい。カム部材8およびハンド接続部材6の一体品と調整ねじ10との干渉を避けるため、調整ねじ10を設置する位置は、カム部材8およびハンド接続部材6の一体品におけるカム部材8の設計によって変更可能である。
【0024】
ハンド接続部材6の表面における長手方向先端部および長手方向中間部には、座繰部14が形成されると共に、各座繰部14の中央付近部に、前記軸方向C1に平行な貫通孔がそれぞれ設けられている。チャック本体3aの一側面には、前記貫通孔に挿通された各ボルト15が螺着される雌ねじが設けられている。このようにハンド接続部材6にハンド部3が固定される。
【0025】
<作用効果>
以上説明したロボットハンド1によると、カム部材8とハンド接続部材6とが一体に設けられているため、ロボットハンド1の動作に起因するカム部材8とハンド接続部材6との位相のずれつまり位置ずれが無くなる。これによりハンド部3の位置が不所望に変化することを防止することができる。したがって、ハンド部3が他の部材または設備と干渉することを未然に防止し得る。またカム部材8とハンド接続部材6とが一体に設けられているため、揺動形アクチュエータ4の一方の軸4b側で角度調整機構5およびハンド接続部材6を実装できる。この場合、一方の軸側に角度調整機構を備え他方の軸側でハンド接続部材を実装する従来構造等よりも、ロボットハンド全体として軸方向の小型化を図ることが可能となる。
【0026】
調整具9は、カム面8a,8aに当接する調整ねじ10,10と、調整ねじ10,10を取り付ける調整ねじ取付部材11とを有し、調整ねじ取付部材11はアクチュエータ本体4aに別体に設けられている。このため、カム部材8とハンド接続部材6とが一体であっても、調整ねじ10の向きが変更可能な調整ねじ取付部材11を種々用意することで、ハンド部3の動作範囲を容易に変更し得る。これによりロボットハンド1の汎用性を高めることができる。調整ねじ取付部材11がアクチュエータ本体4aに別体に設けられている分、アクチュエータ本体4aの加工が簡単になり、製造コストの低減を図れる。
【0027】
角度調整機構5には、カム部材8のカム面8a,8aと調整具9を揺動の一方向と他方向で位置決めするための位置決め手段である調整ねじ10が複数箇所設けられている。位置決め手段である調整ねじ10を複数箇所設けることで、カム面8a,8aと調整具9を揺動の一方向と他方向で位置決めすることができるため、角度調整機構5の構造を簡単化し製造コストの低減を図れる。
【0028】
調整具9は、軸4bの近傍であるアクチュエータ本体4aの一表面に設けられ、且つ、ハンド部3の回転モーメントが定められた値以下となる位置でカム面8a,8aに当接させる。このため、この場合、調整具9およびカム部材8のカム面8a,8aに作用する衝撃を緩和することができ、ロボットハンド1の耐久性を高めることができる。
【0029】
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している実施形態と同様とする。同一の構成は同一の作用効果を奏する。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0030】
[角度調整機構の変更形態:
図4~6]
図4は、調整ねじ10の取付角度を変更し、ハンド部3の動作範囲を大きく変更できることを示す図である。この変更形態では、角度調整機構5が作用した
図5および
図6に示すように、ハンド部3の動作範囲を60度にしている。
図4の調整ねじ取付部材11Aは、2本の調整ねじ10,10が所定間隔を隔てて先端面に向かう従って互いに近づく非平行に且つ前記軸方向C1に直交するように配置される。
【0031】
第1の実施形態の調整ねじ取付部材11(
図1)を同
図4に示すような調整ねじ取付部材11Aに変更するだけで、容易にハンド部3の動作範囲を変更し得る。よってロボットハンド1の汎用性を高めることができる。調整ねじ10の取付角度を変更することで、ロボットハンド1の組み立て後でもハンド部3の動作範囲を大きく変更することが可能となる。本変更形態では、ハンド部3を60度の動作範囲に変更することのみを示しているが、調整ねじ10の取付角度によってハンド部3の動作範囲を任意に変更可能である。その他変更形態のロボットハンド1は、第1の実施形態と同様の構成を備え、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0032】
[第2の実施形態:調整ねじ取付部材一体化、
図7~
図9]
図7のように、調整具9は、カム面8a,8aに当接する調整ねじ10,10と、この調整ねじ10,10を取り付ける調整ねじ取付部材11Bとを有し、この調整ねじ取付部材11Bはアクチュエータ本体4aに一体に設けられていてもよい。具体的には、調整ねじ取付部材11Bは、アクチュエータ本体4aの一表面のうち同
図7の右側部から軸方向に突出する矩形板状に形成される。アクチュエータ本体4aの前記一表面に調整ねじ取付部材11Bが一体に設けられている。
【0033】
これらアクチュエータ本体4aおよび調整ねじ取付部材11Bは、例えば、アルミニウムまたは鋼板等の単一の材料から成る。前記「一体に設けられている」とは、原則、アクチュエータ本体4aと調整ねじ取付部材11Bとが複数の要素をボルト等で結合したものではなく単一の材料から、例えば、鍛造、機械加工等により単独の物の一部または全体として成形されたことを意味する。但し、複数の要素を、熔接、鋳込み、インサート成形等で一体化することも含む。
【0034】
図8および
図9は、角度調整機構5が作用した図である。調整ねじ取付部材11Bがアクチュエータ本体4aに一体に設けられている構成によると、調整ねじ取付部材がアクチュエータ本体に別体に設けられている構造よりも調整ねじ取付部材11Bが衝撃に対して強くなるため、揺動の始点と終点がずれにくくなる。
【0035】
角度調整機構は、アクチュエータ本体の内部に設けられてもよい。アクチュエータ本体の少なくとも一部を覆うカバー等の覆い部材を着脱自在に設け、角度調整機構を覆い部材で覆うようにしてもよい。この場合、角度調整機構の調整時に覆い部材をアクチュエータ本体から離脱して調整を容易に行うことができ、ロボットハンドの運転時に角度調整機構を覆い部材で覆うことで角度調整機構の可動部が露出することを防止し得る。
【0036】
揺動形アクチュエータにおいて、前記ベーンを有する軸は、アクチュエータ本体である筐体の軸方向両方から突出してもよい。この場合、揺動形アクチュエータの一方の軸側に角度調整機構およびハンド接続部材を実装でき、他方の軸側に回転角度を検出する回転センサ等を取り付けることができる。
揺動形アクチュエータは、ベーン形に限定されるものではなくピストン形であってもよく、作動流体として油を用いることも可能である。その他電動式の揺動形アクチュエータを適用することも可能である。
カム部材の接触面であるカム面と調整ねじの先端面の接触時の衝撃を低減するために、調整ねじの先端面またはカム部材のカム面に、弾性体等の衝撃吸収部材を取り付けてもよい。衝撃を低減するための機構として、調整ねじをショックアブソーバとしてもよい。
【0037】
調整ねじ取付部材がアクチュエータ本体に別体に設けられる構成において、調整ねじ取付部材を交換等するときの取付位置のずれを防止するため、揺動型アクチュエータに位置決めピン等の位置固定手段を設けてもよい。例えば、
図4のアクチュエータ本体4aの一表面のうち、調整ねじ取付部材11Aとの合わせ面に位置決めピンが設けられる。この位置決めピンは、調整ねじ取付部材11Aの長手方向に沿って複数設けられる。このような位置固定手段により調整ねじ取付部材11Aを交換等するときの取付位置のずれをより確実に且つ簡易に防止することができ、ハンド部3を高精度に位置決めすることができる。
【0038】
直交3軸方向に延びるXYZ形の直動アクチュエータの出力部に、ロボットハンドを取り付けてもよく、直交2軸方向に延びる直動アクチュエータの出力部に、ロボットハンドを取り付けてもよい。
【0039】
以上、本発明の実施形態を説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0040】
1…ロボットハンド、3…ハンド部、4…揺動形アクチュエータ、4a…アクチュエータ本体、4b…軸、5…角度調整機構、6…ハンド接続部材、8…カム部材、8a…カム面、9…調整具、10…調整ねじ(位置決め手段)、11,11A,11B…調整ねじ取付部材