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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067645
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】防護柵の取付構造および取替方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/10 20060101AFI20240510BHJP
   E01F 15/04 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
E01D19/10
E01F15/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177879
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】509215101
【氏名又は名称】井上 靖弘
(71)【出願人】
【識別番号】517304152
【氏名又は名称】城戸 英明
(71)【出願人】
【識別番号】517304163
【氏名又は名称】今西 登志也
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】城戸 英明
(72)【発明者】
【氏名】今西 登志也
【テーマコード(参考)】
2D059
2D101
【Fターム(参考)】
2D059AA22
2D059AA24
2D101CA06
2D101DA04
2D101EA02
2D101FA13
2D101FA23
2D101FB02
(57)【要約】
【課題】高欄等の防護柵の取替時等において、コストの削減および工期の短縮を図ることができる高欄等の防護柵の取付構造を提供する。
【解決手段】本発明は、道路側縁における突状の地覆8に防護柵を取り付けるための防護柵の取付構造を対象とする。下向きに開口する溝型の地覆カバー2が地覆8を上側から外嵌した状態に配置され、固定用ボルト27が地覆カバー2の少なくとも一方のフランジを貫通して地覆8に固定されることによって、地覆カバー2が地覆8に固定され、地覆カバー2のウエブ20に支柱3の下端が固定され、支柱3に横材が取り付けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路側縁における突状の地覆に防護柵を取り付けるための防護柵の取付構造であって、
下向きに開口する溝型の地覆カバーが地覆を上側から外嵌した状態に配置され、
固定用ボルトが前記地覆カバーの少なくとも一方のフランジを貫通して地覆に固定されることによって、前記地覆カバーが地覆に固定され、
前記地覆カバーのウエブに支柱の下端が固定され、
前記支柱に横材が取り付けられていることを特徴とする防護柵の取付構造。
【請求項2】
前記固定用ボルトが前記地覆カバーの内側フランジに設けられている請求項1に記載の防護柵の取付構造。
【請求項3】
前記固定用ボルトが前記地覆カバーの両側フランジに設けられている請求項1に記載の防護柵の取付構造。
【請求項4】
前記地覆カバーおよび地覆間にグラウトが充填されている請求項1~3のいずれか1項に記載の防護柵の取付構造。
【請求項5】
前記地覆カバーのウエブに上方に突出するようにアンカーボルトが固定され、
前記支柱は、下端にベースプレートを備え、
前記アンカーボルトを介して前記ベースプレートが固定されることによって、前記支柱が前記地覆カバーに固定されている請求項1~3のいずれか1項に記載の防護柵の取付構造。
【請求項6】
前記地覆カバーの内側フランジに対応して、地覆の内側面にフランジ収容凹部が形成され、そのフランジ収容凹部内に前記地覆カバーの内側フランジが収容されている請求項1~3のいずれか1項に記載の防護柵の取付構造。
【請求項7】
前記固定用ボルトが皿ボルトによって構成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の防護柵の取付構造。
【請求項8】
道路側縁における突状の地覆上に設置された既設防護柵を撤去した後、その撤去後に残存する地覆に新設防護柵を取り付けるようにした防護柵の取替方法であって、
前記新設防護柵は、下向きに開口する溝型の地覆カバーと、支柱と、横材とを備え、
残存する地覆を補強せずに、その地覆に前記地覆カバーを上側から外嵌し、
固定用ボルトを前記地覆カバーの少なくとも一方のフランジに貫通させて地覆に固定し、
地覆に固定された前記地覆カバーのウエブに前記支柱の下端を固定し、
前記支柱に前記横材を取り付けるようにしたことを特徴とする防護柵の取替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、橋梁の道路側縁に沿って設置される高欄等の防護柵の取付構造および取替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の両側縁には通常、防護柵としての高欄が設けられている。比較的古い橋梁の高欄はコンクリート製のものが多いが、時代と共に要求強度が高まり、近年では金属製のものが主流となっている。高欄は、橋梁側縁に沿って連続して設けられた突状の地覆を基礎(土台)とし、その地覆に立設された支柱と、支柱に取り付けられた笠木および横梁とを備えている。
【0003】
コンクリート製の古いタイプの高欄(既設の高欄)を、新しいタイプの高強度の金属製の高欄(新設の高欄)に取り替えるような場合一般的には、地覆を残して既設の高欄を撤去し、その撤去後に、残存する地覆を利用して新設の高欄を取り付けることになる。
【0004】
一方、下記特許文献1に示すような高強度の金属製の高欄は、地覆の天面にアンカーボルトが打ち込まれ、そのアンカーボルトを介して地覆上に、支柱のベースプレートが固定されている。
【0005】
このような金属製の高欄においては、高欄の強度、つまり支柱の取付強度を十分に確保するために、アンカーボルトを地覆の深い位置まで打ち込む必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-153405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、コンクリート製の既設の高欄を、特許文献1に示すような金属製の新設の高欄に取り替える場合、既設の高欄を有する橋梁は、地覆の高さ(厚さ)が低くて、鉄筋も埋設されているため、既設の高欄を撤去した後、残存する地覆に新設の高欄のアンカーボルトを打ち込む際に、アンカーボルトを十分に深い位置まで打ち込むことができない。このため例えば、既設の高欄を撤去した後、残存する地覆上にコンクリートを打設して地覆を嵩上げし、その嵩上げした地覆に、新設の高欄のアンカーボルトを深い位置まで打ち込むようにしていた。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に示す従来の高欄の取付構造においては、高欄取替時に地覆にコンクリートを改めて打設する必要があるため、大規模な工事となり、コストの増大を来すとともに、コンクリートの養生期間も必要となり工期も長くなるという課題があった。
【0009】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、高欄等の防護柵の取替時等において、コストの削減および工期の短縮を図ることができる高欄等の防護柵の取付構造および防護柵の取替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0011】
[1]道路側縁における突状の地覆に防護柵を取り付けるための防護柵の取付構造であって、
下向きに開口する溝型の地覆カバーが地覆を上側から外嵌した状態に配置され、
固定用ボルトが前記地覆カバーの少なくとも一方のフランジを貫通して地覆に固定されることによって、前記地覆カバーが地覆に固定され、
前記地覆カバーのウエブに支柱の下端が固定され、
前記支柱に横材が取り付けられていることを特徴とする防護柵の取付構造。
【0012】
[2]前記固定用ボルトが前記地覆カバーの内側フランジに設けられている前項1に記載の防護柵の取付構造。
【0013】
[3]前記固定用ボルトが前記地覆カバーの両側フランジに設けられている前項1または2に記載の防護柵の取付構造。
【0014】
[4]前記地覆カバーおよび地覆間にグラウトが充填されている前項1~3のいずれか1項に記載の防護柵の取付構造。
【0015】
[5]前記地覆カバーのウエブに上方に突出するようにアンカーボルトが固定され、
前記支柱は、下端にベースプレートを備え、
前記アンカーボルトを介して前記ベースプレートが固定されることによって、前記支柱が前記地覆カバーに固定されている請求項1~4のいずれか1項に記載の防護柵の取付構造。
【0016】
[6]前記地覆カバーの内側フランジに対応して、地覆の内側面にフランジ収容凹部が形成され、そのフランジ収容凹部内に前記地覆カバーの内側フランジが収容されている請求項1~5のいずれか1項に記載の防護柵の取付構造。
【0017】
[7]前記固定用ボルトが皿ボルトによって構成されている請求項1~6のいずれか1項に記載の防護柵の取付構造。
【0018】
[8]道路側縁における突状の地覆上に設置された既設防護柵を撤去した後、その撤去後に残存する地覆に新設防護柵を取り付けるようにした防護柵の取替方法であって、
前記新設防護柵は、下向きに開口する溝型の地覆カバーと、支柱と、横材とを備え、
残存する地覆を補強せずに、その地覆に前記地覆カバーを上側から外嵌し、
固定用ボルトを前記地覆カバーの少なくとも一方のフランジに貫通させて地覆に固定し、
地覆に固定された前記地覆カバーのウエブに前記支柱の下端を固定し、
前記支柱に前記横材を取り付けるようにしたことを特徴とする防護柵の取替方法。
【発明の効果】
【0019】
発明[1]の防護柵の取付構造によれば、地覆に支柱固定用のアンカーボルトを直接固植せずに、地覆に地覆カバーを固定して、その地覆カバーに支柱を取り付けるものであるため、防護柵取替時に既存の防護柵を撤去した後に、残存する地覆を補強せずに防護柵を構築することができる。このように防護柵取替時に、地覆の補強工事等を必要とせず、コストの削減および工期の短縮を図ることができる。さらに本発明の防護柵の取付構造は、溝型形状の地覆カバーを地覆に上側から嵌め込んでその地覆カバーのフランジを固定用ボルトによって地覆に固定して、その地覆カバーに支柱を固定するものであるため、支柱を地覆カバーを介して地覆に強固に取り付けることができ、所望の強度を有する防護柵を確実に構築することができる。
【0020】
発明[2]の防護柵の取付構造によれば、地覆カバーの内側フランジを固定用ボルトによって地覆に固定しているため、地覆カバーを地覆に安定した状態に取り付けることができる。
【0021】
発明[3]の防護柵の取付構造によれば、地覆カバーの両側フランジを固定用ボルトによって地覆に固定しているため、地覆カバーを地覆により一層強固に固定することができる。
【0022】
発明[4]の防護柵の取付構造によれば、地覆カバーおよび地覆間にグラウトを充填させているため、地覆カバーを地覆にさらに強固に取り付けることができる。
【0023】
発明[5]の防護柵の取付構造によれば、地覆カバーに固定されたアンカーボルトを介して支柱を固定するものであるため、支柱を高強度に確実に固定することができる。
【0024】
発明[6]の防護柵の取付構造によれば、地覆の内側面に設けられたフランジ収容凹部に、地覆カバーの内側フランジが収容されているため、内側フランジが地覆内側面から内方に突出することがなく、幅員が減少する等の不具合を確実に防止することができる。
【0025】
発明[7]の防護柵の取付構造によれば、固定用ボルトとして皿ボルトを用いているため、ボルト頭部が突出するのを防止でき、その突出による不具合例えば、幅員への悪影響や美観の低下等を防止することができる。
【0026】
発明[8]の防護柵の取替方法によれば上記発明[1]と同様に、残存する地覆の補強工事等を必要とせず、コストの削減および工期の短縮を図ることができるとともに、所望の強度を有する防護柵を確実に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1はこの発明の実施形態である防護柵の取付構造を示す斜視図である。
図2図2図1の分解図である。
図3図3は実施形態の防護柵の取付構造を示す側面図である。
図4図4図3の下側部の分解図である。
図5図5は実施形態の防護柵の取付構造に適用された地覆カバーを示す平面図である。
図6図6は実施形態の地覆カバーを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1はこの発明の実施形態である防護柵としての高欄の取付構造を示す斜視図、図2は実施形態の高欄の取付構造を分解して示す斜視図、図3は実施形態の高欄の取付構造を示す側面図、図4は実施形態の高欄の取付構造の下側部を分解して示す側面図、図5は実施形態の高欄の取付構造に適用された地覆カバーを示す平面図、図6は実施形態の地覆カバーを示す正面図である。なお以下の説明においては、高欄の内側とは道路側であり、その反対が外側となる。図3および図4に向かって右側が内側(道路側)であり、左側が外側となる。
【0029】
これらの図に示すように本実施形態の高欄の取付構造は、橋梁に以前に設置されていたコンクリート製等の高欄(既設の高欄)を撤去した後、その撤去跡に残存する地覆8に、新たに本実施形態の高欄(新設の高欄)1を設置するものである。なお本実施形態において単に「高欄」と称する場合には、「新設の高欄」を意味する。
【0030】
地覆8は、橋梁の両側縁部に沿って連続的に設けられた突状の構造物であり、高欄1の基礎となる部分である。
【0031】
一方、本実施形態において、高欄1は、地覆カバー(地覆カバープレート)2と、支柱3と、笠木4と、上段横梁(主要横梁)5と、下段横梁6とを備えている。本実施形態においては笠木4および横梁5,6によって横材が構成されている。
【0032】
本実施形態において地覆カバー2は、鋳鉄品によって構成されている。地覆カバー2は、下向きに開口された溝型形状を有しており、内側フランジ21と、外側フランジ22と、両フランジ21,22の上端部間を連結するウエブ20とを一体に備えている。地覆カバー2は後述するように、凹溝内に地覆8を収容するように外嵌して配置できるように構成されており、外嵌した際に、内側フランジ21は、橋梁を基準に内側(道路側)に配置されるとともに、外側フランジ22は、外側に配置されるようになっている。
【0033】
なお言うまでもなく地覆カバー2は、鋳鉄品に限られず、プレス成形品や複数の部材をボルト留め等によって作製するようにしても良い。
【0034】
地覆カバー2において内側フランジ21の寸法(上下方向の寸法)は、地覆8の道路面から地覆高さに対応する長さに形成されるとともに、外側フランジ22の寸法は、内側フランジ21の寸法よりも長く形成されている。
【0035】
地覆カバー2におけるウエブ20および外側フランジ22の中間部は薄肉に形成されることにより、凹陥部25が形成されている。
【0036】
さらにウエブ20の凹陥部25には、4本のアンカーボルト26の下端がねじ留めや溶接等によって固定されており、この4本のアンカーボルト26がウエブ20の凹陥部25の上面から上方に突出するように配置されている。
【0037】
また地覆カバー2における内側フランジ21に3つのボルト挿通孔23が形成されるとともに、外側フランジ22の凹陥部25に3つのボルト挿通孔23が形成されている。
【0038】
一方、地覆8における地覆カバー2を取り付ける領域において、地覆カバー2の内側フランジ21に対応する領域は、はつり等の削り加工によってフランジ収容凹部81が形成されるとともに、ウエブ20および外側フランジ22に対応する領域は、チッピング等によって粗面に形成されている。フランジ収容凹部81の深さは、地覆8の内部の鉄筋80(図4参照)を傷付けない深さで、かつ内側フランジ21の厚みとほぼ同じに設定されている。
【0039】
また地覆8の内側面および外側面には、地覆カバー2の両側フランジ21,22のボルト挿通孔23に対応して、掘削孔が形成され、その掘削孔内に打込アンカー(埋込ナット部材)9が打ち込まれて固定されている。
【0040】
この地覆8に地覆カバー2が上側から外嵌されることによって、地覆カバー2が地覆8の天面および内外両面を覆う態様に配置される。この嵌合状態では、地覆カバー2の両フランジ21,22のボルト挿通孔23が、地覆8の打込アンカー9に対応して配置される。さらに地覆カバー2の内側フランジ21が地覆8のフランジ収容凹部81内に配置されることにより、地覆カバー2の内側フランジ21の表面が、地覆8における地覆カバー2が取り付けられていない領域の内側面とほぼ同一平面内に配置される。つまり地覆カバー2の内側フランジ21が地覆8の内側面よりも内側に突出しないように構成されている。
【0041】
また、地覆カバー2のボルト挿通孔23には、皿ボルトによって構成される固定用ボルト27が挿通されて地覆8の打込アンカー9にねじ留め固定される。これにより地覆カバー2が地覆8を被覆した状態で強固に固定される。
【0042】
さらに地覆カバー2および地覆8間の隙間には、エポキシ樹脂、無収縮モルタル等のグラウト91が充填されて硬化している(図3参照)。なお、本実施形態においては、地覆8における地覆カバー2に対応する領域が、粗面やはつり部(フランジ収容凹部81)に形成されているため、地覆カバー2との滑り止めが確実に図られて、地覆カバー2および地覆8間がグラウト91によってより強固に固着されている。
【0043】
支柱3は、支柱本体31と、支柱本体31の下端に溶接等によって固定されたベースプレート35とを備えている。
【0044】
支柱本体31は、基本的にI型ないしH型の断面形状を有するI型鋼ないしH型鋼によって構成されており、内面側および外面側に配置される一対のフランジ32と、両フランジ32間を連結するウエブ33とを備えている。
【0045】
図3に示すように、支柱本体31の上側部は、外面側のフランジ32が切除されて、内面側のフランジ32のみが残されている。
【0046】
ベースプレート35には、上記地覆カバー2の4本のアンカーボルト26に対応して、4つのボルト挿通孔36が形成されている。
【0047】
この支柱3のベースプレート35が、その各ボルト挿通孔36内に地覆カバー2の各アンカーボルト26が挿通されて上方に引き出されるように配置された状態で、地覆カバー2のウエブ20上に載置される。その状態で、各アンカーボルト26にナット37がそれぞれ締結されてベースプレート35に圧接される。これにより地覆カバー2上に支柱3が高強度に固定される。
【0048】
なお図示は省略するが、本実施形態においては、ベースプレート35の上面側に露出したアンカーボルト26やナット37を被覆するようにキャップが設けられており、アンカーボルト26やナット37の防錆等の劣化を防止しつつ、意匠性も向上させるようにしている。
【0049】
こうして地覆8に沿って複数本の支柱3が地覆カバー2をそれぞれ介して所定の間隔おきに固定される。
【0050】
また隣合う支柱3間には、笠木4、上段横梁5および下段横梁6等の横材が取り付けられる。すなわち、丸パイプ状ないし円筒状の複数本の笠木4が各間にスリーブ41を介して直列状に配置され、その笠木4のスリーブ連結部において、対応する支柱3の内側のフランジ32にその外側からボルト38が貫通され、さらにそのボルト38が笠木4の周壁に貫通されてスリーブ41にねじ留め固定される。こうして複数の支柱3の各間に架け渡されるようにして笠木4が取り付けられる。
【0051】
さらに上段横梁5および下段横梁6も同様に取り付けられる。すなわち、複数の横梁5,6がスリーブ51,61を介して直列状に配置され、その横梁5,6のスリーブ連結部において、対応する支柱3の内側のフランジ32にその外側からボルト38が貫通され、さらにそのボルト38が横梁5,6の周壁に貫通されてスリーブ51,61にねじ留め固定される。こうして複数の支柱3間に横梁5,6が取り付けられる。
【0052】
以上のように構成された本実施形態の高欄の取付構造においては、コンクリート製等の既設の高欄を撤去した後、その撤去後に残存した地覆8を、コンクリート等で補強することなく、削り加工等の簡単な作業を行った後、地覆カバー2を介して支柱3を取り付けるものであるため、補強用のコンクリートを改めて打設するような大規模な工事が必要なく、コストを削減できるとともに、コンクリートの養生期間も不要となり工期を短縮することができる。
【0053】
また本実施形態の高欄の取付構造においては、溝型形状の金属製地覆カバー2を地覆8に上側から嵌め込んでその地覆カバー2の両側フランジ21,22を固定用ボルト27によって地覆8にボルト留めして固定するとともに、その地覆カバー2に固定されたアンカーボルト26を介して金属製の支柱3を固定するものであるため、地覆カバー2を地覆8に強固に取り付けることができとともに、支柱3を地覆8に地覆カバー2を介して強固に取り付けることができる。こうして支柱3を十分な取付強度で取り付けることができ、所望の強度を有する高欄1を確実に構築することができる。
【0054】
さらに本実施形態においては、地覆カバー2および地覆8間にグラウト91を充填して硬化させているため、地覆カバー2を地覆8に一層強固に取り付けることができ、支柱3の取付強度を一層向上させることができる。
【0055】
なお地覆カバー2の外側フランジ22は、内側フランジ21よりも寸法を長く形成して、地覆8の外側面との接触面積を十分に大きく確保しているため、地覆カバー2の地覆8に対する取付強度をより確実に向上させることができる。
【0056】
また本実施形態においては、地覆8における地覆カバー取付領域の内側面にフランジ収容凹部81を形成して、その凹部81内に地覆カバー2の内側フランジ21を収容するようにしているため、内側フランジ21が地覆内側面から内方に突出することがなく、地覆カバー2の部位が建築限界を超えることがなく、幅員が減少する等の不具合を確実に防止することができる。
【0057】
また本実施形態においては、地覆カバー2の内側フランジ21を地覆8に固定する固定用ボルト27として、皿ボルトを用いているため、このボルト27の頭部が内側に突出することがなく、幅員の減少等の悪影響を回避できるとともに、良好な美観を確保することができる。さらに地覆カバー2の外側フランジ22を地覆8に固定する固定用ボルト27も皿ボルトによって構成しているため、ボルト27の頭部が外側に突出することがなく、良好な美観を確保することができる。
【0058】
また本実施形態においては、地覆カバー2におけるウエブ20および外側フランジ22の中間部を薄肉に形成しているためその分、軽量化を図ることができ、地覆カバー2の搬入搬出作業はもちろん、施工工事自体も容易に行うことができる。
【0059】
次にコンクリート製の既設の高欄が構築された橋梁に対し、本実施形態の高欄の取付構造の施工手順(取替方法)について説明する。なお本発明において施工手順は以下の手順に限定されるものではなく、どのような手順で施工するようにしても良い。
【0060】
まず始めに、地覆8を残しつつ、コンクリート製の既設の高欄を撤去する。
【0061】
次に残存する地覆8における地覆カバー2の取付領域において、地覆カバー2の内側面をはつり等の削り加工によってフランジ収容凹部81を形成するとともに、天面(上側面)および外側面をチッピング等によって粗面に形成する。
【0062】
次に地覆8における地覆カバー2の取付領域において、地覆8の両側面にボルト止め位置に掘削孔を形成して、その掘削孔内に打込アンカー9を打ち込んで固定する。
【0063】
その後、地覆カバー2をその内側フランジ21を地覆8のフランジ収容凹部81内に配置しつつ、地覆8に上側から被せるように嵌め込み、地覆カバー2によって地覆8の天面および内外両側面を被覆する。
【0064】
続いて、地覆カバー2の両側フランジ21,22におけるボルト挿通孔23に、固定用ボルト27を挿通して、地覆8に固定された打込アンカー9にねじ込んで固定する。
【0065】
次に地覆カバー2および地覆8間の隙間の開口部を、シリコンやエポキシ樹脂等のシール材でシールし、その状態で、地覆カバー2および地覆8間の隙間にグラウト91を注入して充填する。
【0066】
そしてグラウト91が硬化した後、支柱3を取り付ける。すなわち支柱3のベースプレート35の各ボルト挿通孔36に、地覆カバー2の各アンカーボルト26を挿入して、ベースプレート35を地覆カバー2のウエブ20上に載置する。その状態で、各アンカーボルト26にナット37をそれぞれ締結固定することにより、地覆カバー2上に支柱3を固定する。こうして複数本の支柱3を地覆カバー2をそれぞれ介して地覆8に沿って所定間隔おきに固定する。
【0067】
その後、隣合う支柱3間に、既述したように、笠木4、上段横梁5および下段横梁6を取り付けて、本実施形態の高欄1を構築することができる。
【0068】
なお上記実施形態においては、本発明の防護柵の取付構造を、橋梁の高欄に適用する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明は橋梁とは異なる箇所に設ける防護柵にも適用することができる。
【0069】
また上記実施形態においては、横材として、パイプ型の笠木4、横梁5,6を用いるようにしているが、本発明はそれだけに限られず、横材として、ガードレール部品のビーム型のもの、ケーブル(ワイヤー)型のもの等を採用するようにしても良いし、横材の数も限定されるものではない。
【0070】
また上記実施形態においては、本発明を車両用防護柵に適用する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明は、歩行者自転車用柵や、歩行者自転車用柵兼用車両用防護柵にも適用することができる。
【0071】
また上記実施形態においては、地覆プレート2の両側フランジ21,22の双方を固定用ボルト27によって共に地覆8に固定するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、地覆プレート2の少なくともいずれか一方のフランジを固定用ボルトによって固定すれば良い。地覆プレート2の一方のフランジのみを地覆に固定する場合には、強度上の面から、外側フランジよりも内側フランジを地覆に固定するのが好ましい。
【0072】
また上記実施形態においては、支柱3として、I型ないしH型形状のものを用いるようにしているが、本発明において、支柱3の形状は特に限定されるものではなく、パイプ状のものや、溝型(コ字型)のもの、アングル状のもの等を用いるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0073】
この発明の防護柵の取付構造は、既設の防護柵を撤去した後、残存する地覆を利用して新たに防護柵を取り付ける際に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
1:高欄(防護柵)
2:地覆カバー
20;ウエブ
21:内側フランジ
22:外側フランジ
25:凹陥部
26:アンカーボルト
27:固定用ボルト
3:支柱
31:支柱本体
35:ベースプレート
4:笠木(横材)
5:上段横梁(横材)
6:下段横梁(横材)
8:地覆
81:フランジ収容凹部
91:グラウト
図1
図2
図3
図4
図5
図6