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特開2024-67648車載装置、機能制御方法および機能制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067648
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】車載装置、機能制御方法および機能制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/50 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
G06F9/50 150A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177882
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】菊地 慶剛
(72)【発明者】
【氏名】河野 仁志
(72)【発明者】
【氏名】松本 真
(72)【発明者】
【氏名】井上 和之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 祐介
(57)【要約】
【課題】各コアにおいて複数の機能をより安定して実行する。
【解決手段】車両に搭載される車載装置であって、各々が、複数の機能を実行可能な複数のコアを備え、各前記コアは、自己の前記コアが実行可能な複数の機能である第1の機能群のうちの特定の機能である特定機能の実行状態と、他の前記コアが実行可能な複数の機能である第2の機能群のうちの前記特定機能の実行状態とを示す特定機能情報を取得し、取得した前記特定機能情報に基づいて、前記第1の機能群の機能のうちの、前記第2の機能群の機能と共通する共通機能であって、前記特定機能以外の前記共通機能を実行するか否かを決定する決定処理を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置であって、
各々が、複数の機能を実行可能な複数のコアを備え、
各前記コアは、自己の前記コアが実行可能な複数の機能である第1の機能群のうちの特定の機能である特定機能の実行状態と、他の前記コアが実行可能な複数の機能である第2の機能群のうちの前記特定機能の実行状態とを示す特定機能情報を取得し、取得した前記特定機能情報に基づいて、前記第1の機能群の機能のうちの、前記第2の機能群の機能と共通する共通機能であって、前記特定機能以外の前記共通機能を実行するか否かを決定する決定処理を行う、車載装置。
【請求項2】
前記各コアは、前記決定処理において、前記自己のコアが前記特定機能を実行している場合、前記自己のコアにおいて前記共通機能を実行しないことを決定し、
前記各コアは、前記決定処理において、前記自己のコアが前記特定機能を実行しておらず、かつ前記他のコアが前記特定機能を実行している場合、前記自己のコアにおいて前記共通機能を実行することを決定する、請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記車載装置は、さらに、
前記特定機能情報と、前記各コアにおける前記共通機能の実行の有無を示す情報である共通機能情報との対応関係を示す対応情報を記憶する記憶部を備え、
前記各コアは、前記記憶部における前記対応情報に基づいて、取得した前記特定機能情報に対応する前記共通機能情報に従い、前記決定処理を行う、請求項1または請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記各コアは、さらに、前記車両の状態を示す車両状態情報を取得し、
前記記憶部は、前記特定機能情報と前記車両状態情報と前記共通機能情報との対応関係を示す前記対応情報を記憶し、
前記各コアは、前記記憶部における前記対応情報に基づいて、取得した前記特定機能情報および前記車両状態情報に対応する前記共通機能情報に従い、前記決定処理を行う、請求項3に記載の車載装置。
【請求項5】
前記各コアは、前記特定機能情報、および前記車両の状態を示す車両状態情報を定期的または不定期に取得し、今回取得した前記特定機能情報および前記車両状態情報ならびに前回取得した前記特定機能情報および前記車両状態情報に基づいて、前記共通機能の実行の有無を維持するか否かを決定し、維持しない場合、前記決定処理を行う、請求項1または請求項2に記載の車載装置。
【請求項6】
前記特定機能は、OTA(Over The Air)機能である、請求項1または請求項2に記載の車載装置。
【請求項7】
車両に搭載される車載装置における機能制御方法であって、
前記車載装置は、各々が複数の機能を実行可能な複数のコアを備え、
各前記コアが、自己の前記コアが実行可能な複数の機能である第1の機能群のうちの特定の機能である特定機能の実行状態と、他の前記コアが実行可能な複数の機能である第2の機能群のうちの前記特定機能の実行状態とを示す特定機能情報を取得するステップと、
前記各コアが、取得した前記特定機能情報に基づいて、前記第1の機能群の機能のうちの、前記第2の機能群の機能と共通する共通機能であって、前記特定機能以外の前記共通機能を実行するか否かを決定する決定処理を行うステップとを含む、機能制御方法。
【請求項8】
車両に搭載される車載装置において用いられる機能制御プログラムであって、
前記車載装置は、各々が複数の機能を実行可能な複数のコアを備え、
各前記コアに、
自己の前記コアが実行可能な複数の機能である第1の機能群のうちの特定の機能である特定機能の実行状態と、他の前記コアが実行可能な複数の機能である第2の機能群のうちの前記特定機能の実行状態とを示す特定機能情報を取得するステップと、
取得した前記特定機能情報に基づいて、前記第1の機能群の機能のうちの、前記第2の機能群の機能と共通する共通機能であって、前記特定機能以外の前記共通機能を実行するか否かを決定する決定処理を行うステップとを実行させるための、機能制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載装置、機能制御方法および機能制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載装置において、プロセッサの各コアにおける処理負荷を低減するための技術が開発されている。たとえば、特許文献1(特開2018-67135号公報)には、以下のような技術が開示されている。すなわち、車両制御装置は、車両の動作を制御する車両制御装置であって、前記車両の動作を制御する制御タスクを実行すべき演算装置を定義するタスクテーブルを格納する記憶部、前記タスクテーブルの定義にしたがって前記制御タスクを実行する第1および第2演算装置、前記車両制御装置が起動または終了するとき前記タスクテーブルを更新する更新部、を備えることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-67135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車載装置の機能向上に伴い、車載装置に搭載されるプロセッサのコアが実行する機能の数が増加する傾向にあり、複数のコアを備えた車載装置の普及が望まれている。
【0005】
ここで、複数のコアを搭載するプロセッサを備える車載装置において、処理負荷の高い機能をコアが実行する場合がある。この場合、コアは、他の機能を実行できない可能性がある。また、他の機能のリアルタイム性が損なわれる可能性がある。
【0006】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、各コアにおいて複数の機能をより安定して実行することが可能な車載装置、機能制御方法および機能制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の車載装置は、車両に搭載される車載装置であって、各々が、複数の機能を実行可能な複数のコアを備え、各前記コアは、自己の前記コアが実行可能な複数の機能である第1の機能群のうちの特定の機能である特定機能の実行状態と、他の前記コアが実行可能な複数の機能である第2の機能群のうちの前記特定機能の実行状態とを示す特定機能情報を取得し、取得した前記特定機能情報に基づいて、前記第1の機能群の機能のうちの、前記第2の機能群の機能と共通する共通機能であって、前記特定機能以外の前記共通機能を実行するか否かを決定する決定処理を行う。
【0008】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える車載装置として実現され得るだけでなく、車載装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、車載装置を含むシステムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、各コアにおいて複数の機能をより安定して実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施の形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図2図2は、本開示の実施の形態に係る車載システムの構成を示す図である。
図3図3は、本開示の実施の形態に係る中継装置の構成を示す図である。
図4図4は、本開示の実施の形態に係る中継装置の第1のコアが実行する機能を示す概念図である。
図5図5は、本開示の実施の形態に係る中継装置の第2のコアが実行する機能を示す概念図である。
図6図6は、本開示の実施の形態に係る中継装置が保存するコア状態テーブルの一例を示す図である。
図7図7は、本開示の実施の形態に係る中継装置が保存する第1のコア用の動作テーブルの一例を示す図である。
図8図8は、本開示の実施の形態に係る中継装置が保存する第2のコア用の動作テーブルの一例を示す図である。
図9図9は、本開示の実施の形態に係る中継装置による決定処理の一例を説明するための図である。
図10図10は、本開示の実施の形態に係る中継装置のコアによる決定処理の動作手順を定めたフローチャートである。
図11図11は、本開示の実施の形態に係る中継装置における決定処理のシーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に、本開示の実施の形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の実施の形態に係る車載装置は、車両に搭載される車載装置であって、各々が、複数の機能を実行可能な複数のコアを備え、各前記コアは、自己の前記コアが実行可能な複数の機能である第1の機能群のうちの特定の機能である特定機能の実行状態と、他の前記コアが実行可能な複数の機能である第2の機能群のうちの前記特定機能の実行状態とを示す特定機能情報を取得し、取得した前記特定機能情報に基づいて、前記第1の機能群の機能のうちの、前記第2の機能群の機能と共通する共通機能であって、前記特定機能以外の前記共通機能を実行するか否かを決定する決定処理を行う。
【0012】
このように、複数のコアの各々の特定機能の実行状態を示す特定機能情報に基づいて、各コアにおいて特定機能以外の共通機能を実行するか否かを決定する構成により、各コアにおいて、自己のコアおよび他のコアの各々の特定機能の実行状態を把握することができるため、各コアにおける特定機能の実行状態に応じて、自己のコアにおいて共通機能を実行するか否かを決定することができる。したがって、各コアにおいて複数の機能をより安定して実行することができる。
【0013】
(2)上記(1)において、前記各コアは、前記決定処理において、前記自己のコアが前記特定機能を実行している場合、前記自己のコアにおいて前記共通機能を実行しないことを決定してもよく、前記各コアは、前記決定処理において、前記自己のコアが前記特定機能を実行しておらず、かつ前記他のコアが前記特定機能を実行している場合、前記自己のコアにおいて前記共通機能を実行することを決定してもよい。
【0014】
このような構成により、特定機能および共通機能を別々のコアにおいて実行することができるため、特定機能が、たとえば処理負荷の高い機能である場合であっても、共通機能をより確実に実行することができる。また、共通機能のリアルタイム性が低下することを抑制することができる。
【0015】
(3)上記(1)または(2)において、前記車載装置は、さらに、前記特定機能情報と、前記各コアにおける前記共通機能の実行の有無を示す情報である共通機能情報との対応関係を示す対応情報を記憶する記憶部を備えてもよく、前記各コアは、前記記憶部における前記対応情報に基づいて、取得した前記特定機能情報に対応する前記共通機能情報に従い、前記決定処理を行ってもよい。
【0016】
このような構成により、各コアにおいて、対応情報を用いて、共通機能を実行するか否かを容易に決定することができる。
【0017】
(4)上記(3)において、前記各コアは、さらに、前記車両の状態を示す車両状態情報を取得してもよく、前記記憶部は、前記特定機能情報と前記車両状態情報と前記共通機能情報との対応関係を示す前記対応情報を記憶してもよく、前記各コアは、前記記憶部における前記対応情報に基づいて、取得した前記特定機能情報および前記車両状態情報に対応する前記共通機能情報に従い、前記決定処理を行ってもよい。
【0018】
このような構成により、各コアにおける特定機能の実行状態、および車載装置が搭載される車両の状態に応じて、共通機能の実行の有無をより適切に決定することができる。
【0019】
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記各コアは、前記特定機能情報、および前記車両の状態を示す車両状態情報を定期的または不定期に取得し、今回取得した前記特定機能情報および前記車両状態情報ならびに前回取得した前記特定機能情報および前記車両状態情報に基づいて、前記共通機能の実行の有無を維持するか否かを決定し、維持しない場合、前記決定処理を行ってもよい。
【0020】
このような構成により、各コアにおける特定機能の実行状態の遷移、および車両の状態の遷移に応じて、決定処理の実行の有無を適切に決定することができる。
【0021】
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記特定機能は、OTA(Over The Air)機能であってもよい。
【0022】
このような構成により、処理負荷の高い機能であるOTA機能の各コアにおける実行状態に応じて、自己のコアにおいて共通機能を実行するか否かを決定することができる。
【0023】
(7)本開示の実施の形態に係る機能制御方法は、車両に搭載される車載装置における機能制御方法であって、前記車載装置は、各々が複数の機能を実行可能な複数のコアを備え、各前記コアが、自己の前記コアが実行可能な複数の機能である第1の機能群のうちの特定の機能である特定機能の実行状態と、他の前記コアが実行可能な複数の機能である第2の機能群のうちの前記特定機能の実行状態とを示す特定機能情報を取得するステップと、前記各コアが、取得した前記特定機能情報に基づいて、前記第1の機能群の機能のうちの、前記第2の機能群の機能と共通する共通機能であって、前記特定機能以外の前記共通機能を実行するか否かを決定する決定処理を行うステップとを含む。
【0024】
このように、複数のコアの各々の特定機能の実行状態を示す特定機能情報に基づいて、各コアにおいて特定機能以外の共通機能を実行するか否かを決定する構成により、各コアにおいて、自己のコアおよび他のコアの各々の特定機能の実行状態を把握することができるため、各コアにおける特定機能の実行状態に応じて、自己のコアにおいて共通機能を実行するか否かを決定することができる。したがって、各コアにおいて複数の機能をより安定して実行することができる。
【0025】
(8)本開示の実施の形態に係る機能制御プログラムは、車両に搭載される車載装置において用いられる機能制御プログラムであって、前記車載装置は、各々が複数の機能を実行可能な複数のコアを備え、各前記コアに、自己の前記コアが実行可能な複数の機能である第1の機能群のうちの特定の機能である特定機能の実行状態と、他の前記コアが実行可能な複数の機能である第2の機能群のうちの前記特定機能の実行状態とを示す特定機能情報を取得するステップと、取得した前記特定機能情報に基づいて、前記第1の機能群の機能のうちの、前記第2の機能群の機能と共通する共通機能であって、前記特定機能以外の前記共通機能を実行するか否かを決定する決定処理を行うステップとを実行させるためのプログラムである。
【0026】
このように、複数のコアの各々の特定機能の実行状態を示す特定機能情報に基づいて、各コアにおいて特定機能以外の共通機能を実行するか否かを決定する構成により、各コアにおいて、自己のコアおよび他のコアの各々の特定機能の実行状態を把握することができるため、各コアにおける特定機能の実行状態に応じて、自己のコアにおいて共通機能を実行するか否かを決定することができる。したがって、各コアにおいて複数の機能をより安定して実行することができる。
【0027】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0028】
[通信システム]
図1は、本開示の実施の形態に係る通信システムの構成を示す図である。図1を参照して、通信システム501は、サーバ180と、1または複数の車載システム301とを備える。車載システム301は、車両1に搭載される。
【0029】
[車載システム]
図2は、本開示の実施の形態に係る車載システムの構成を示す図である。図2を参照して、車載システム301は、たとえば、1つの中継装置101と、複数の車載機器202とを備える。車載システム301は、車両1に搭載される。中継装置101は、車両1に搭載される車載装置の一例である。
【0030】
図2に示す例では、車載システム301は、車載機器202である車載機器202A,202B,202C,202Dを備える。中継装置101および車載機器202は、車載ネットワーク401を構成する。
【0031】
なお、車載システム301は、4つの車載機器202を備える構成に限らず、2つ、3つまたは5つ以上の車載機器202を備える構成であってもよい。また、車載システム301は、1つの中継装置101を備える構成に限らず、複数の中継装置101を備える構成であってもよい。
【0032】
中継装置101は、たとえばゲートウェイ装置である。中継装置101は、自己に接続される複数の車載機器202間のデータを中継可能である。
【0033】
中継装置101および各車載機器202は、後述する各種情報を含むフレームを生成し、他の車載機器202または中継装置101へ送信する。
【0034】
[車載機器]
車載機器202は、たとえば、TCU(Telematics Communication Unit)、自動運転用ECU(Electronic Control Unit)、顔認証用ECUおよびドアロック用ECU等の車載ECUである。なお、車載機器202は、車載ECUに限らず、センサ、ナビゲーション装置、ヒューマンマシンインターフェース、カメラおよびOTAマスタ等であってもよい。
【0035】
複数の車載機器202は、たとえば、イーサネット(登録商標)ケーブル10、またはCAN(Controller Area Network)(登録商標)の規格に従うCANバス11を介して中継装置101に接続されている。以下、イーサネットケーブル10を介して中継装置101に接続される車載機器202を、「イーサネット機器」とも称する。また、CANバス11を介して中継装置101に接続される車載機器202を、「CAN機器」とも称する。
【0036】
ここでは、車載機器202A、車載機器202B、車載機器202Cおよび車載機器202Dは、それぞれTCU、OTAマスタ、車速センサおよび温度センサである。以下、車載機器202A、車載機器202B、車載機器202Cおよび車載機器202Dを、それぞれTCU202A、OTAマスタ202B、車速センサ202Cおよび温度センサ202Dとも称する。
【0037】
TCU202AおよびOTAマスタ202Bは、たとえばイーサネットケーブル10を介して中継装置101に接続されている。
【0038】
図1および図2を参照して、TCU202Aは、サーバ180と通信を行うことが可能である。TCU202Aは、たとえば、IPパケットを用いて無線基地局装置161経由でサーバ180と通信することが可能である。
【0039】
より詳細には、TCU202Aは、たとえば、LTE(Long Term Evolution)または5G等の通信規格に従って、無線基地局装置161と無線通信を行うことが可能である。
【0040】
具体的には、無線基地局装置161は、サーバ180からインターネット等の外部ネットワーク170経由でIPパケットを受信すると、受信したIPパケットを無線信号に含めてTCU202Aへ送信する。
【0041】
TCU202Aは、サーバ180からのIPパケットを含む無線信号を無線基地局装置161から受信すると、受信した無線信号からIPパケットを取得し、取得したIPパケットをフレームに格納して中継装置101へ送信する。
【0042】
サーバ180は、たとえばOTAサーバであり、車両1の外部に設けられる。サーバ180は、車載ネットワーク401において用いられる各種ソフトウェアを更新するための更新用プログラムを保持している。
【0043】
OTAマスタ202Bは、車載ネットワーク401において用いられる各種ソフトウェアの更新を制御する。OTAマスタ202Bは、サーバ180において上記更新用プログラムが存在するか否かを確認するための確認情報を、中継装置101およびTCU202A経由でサーバ180へ送信する。サーバ180は、TCU202Aから受信した確認情報に対する応答として、確認結果を示す情報をTCU202Aおよび中継装置101経由でOTAマスタ202Bへ送信する。
【0044】
OTAマスタ202Bは、サーバ180において中継装置101に組み込まれたソフトウェアを更新するための更新用プログラムが存在することを確認した場合、当該更新用プログラムのインストールを指示するための更新情報を中継装置101へ送信する。
【0045】
中継装置101は、OTAマスタ202Bから更新情報を受信すると、TCU202A経由でサーバ180から更新用プログラムを受信する。そして、中継装置101は、受信した更新用プログラムをインストールすることで、自己に組み込まれたソフトウェアの更新を行う。
【0046】
車速センサ202Cおよび温度センサ202Dは、たとえばCANバス11を介して中継装置101に接続されている。
【0047】
車速センサ202Cは、たとえば定期的に、車両1の車速を計測し、計測結果を示す計測情報が格納されたフレームを中継装置101または他の車載機器202へ送信する。
【0048】
温度センサ202Dは、たとえば定期的に、車両1の外気温を測定し、測定結果を示す計測情報が格納されたフレームを中継装置101または他の車載機器202へ送信する。
【0049】
なお、中継装置101は、イーサネットケーブル10およびCANバス11を介して車載機器202と接続される構成に限らず、たとえば、CAN FD(CAN with Flexible Data Rate)、FlexRay(登録商標)、MOST(Media Oritend System Transport)(登録商標)およびLIN(Local Interconnect Network)等の通信規格に従うバスを介して車載機器202と接続される構成であってもよい。
【0050】
[中継装置]
図3は、本開示の実施の形態に係る中継装置の構成を示す図である。図3を参照して、中継装置101は、通信ポート51と、中継部52と、処理部53とを備える。処理部53は、複数のコア61と、記憶部62とを含む。中継部52および処理部53の一方または両方は、たとえば、1または複数のプロセッサを含む処理回路(Circuitry)により実現される。ここでは、コア61が、プロセッサに相当する。
【0051】
通信ポート51は、たとえば、イーサネットケーブル10またはCANバス11を接続可能な端子である。図3に示す例では、中継装置101は、複数の通信ポート51である4つの通信ポート51A,51B,51C,51Dを備える。中継装置101において、通信ポート51A,51Bには、TCU202AおよびOTAマスタ202Bがイーサネットケーブル10を介してそれぞれ接続され、通信ポート51Cには、CANバス11を介して車速センサ202Cおよび温度センサ202Dが接続されている。
【0052】
なお、中継装置101は、4つの通信ポート51を備える構成に限らず、2つ以上の通信ポート51を備える構成であればよい。
【0053】
中継部52は、車載機器202間で送受信されるデータを中継する中継処理を行う。中継部52は、通信プロトコルの変換を伴う中継処理を行うことが可能である。具体的には、中継部52は、CANの通信規格に従ってCAN機器からフレームを受信すると、受信したフレームのフォーマットをイーサネットの通信規格に従うフォーマットに変更し、フォーマット変更後のフレームをイーサネットの通信規格に従ってイーサネット機器へ送信する。
【0054】
また、中継部52は、イーサネットの通信規格に従ってイーサネット機器からフレームを受信すると、受信したフレームのフォーマットをCANの通信規格に従うフォーマットに変更し、フォーマット変更後のフレームをCANの通信規格に従ってCAN機器へ送信する。
【0055】
また、中継部52は、通信プロトコルの変換を伴わない中継処理を行うことが可能である。具体的には、中継部52は、イーサネットの通信規格に従ってイーサネット機器からフレームを受信すると、受信したフレームをイーサネットの通信規格に従って他のイーサネット機器へ送信する。
【0056】
また、中継部52は、CANの通信規格に従ってCAN機器からフレームを受信すると、受信したフレームをCANの通信規格に従って他のCAN機器へ送信する。
【0057】
[コア]
中継装置101では、複数のコア61の各々が、複数の機能を実行可能である。図3に示す例では、中継装置101は、複数のコア61である第1のコア61Aおよび第2のコア61Bを備える。なお、「第1」および「第2」の記載は、優先順位を意味するものではない。
【0058】
ここで、中継装置101における記憶部62のコード領域には、各コア61が実行する各機能のプログラムが格納されている。各コア61は、記憶部62に保存されている制御プログラムを読み出して実行することにより、各機能を実行する。また、記憶部62は、コア61ごとに、各機能の実行状態を示す実行フラグを記憶している。
【0059】
図4は、本開示の実施の形態に係る中継装置の第1のコアが実行する複数の機能を示す概念図である。図5は、本開示の実施の形態に係る中継装置の第2のコアが実行する複数の機能を示す概念図である。
【0060】
図4を参照して、第1のコア61Aは、中継機能21、監視機能22、演算機能23、プロトコル変換機能31、OTA機能41および状態管理機能42を実行可能である。図5を参照して、第2のコア61Bは、中継機能21、監視機能22、演算機能23、ダイアグ機能32、OTA機能41および状態管理機能42を実行可能である。
【0061】
中継機能21は、中継装置101に接続される複数の車載機器202間のデータを中継する機能である。監視機能22は、たとえば、車載機器202および中継装置101、または複数の車載機器202間で送受信されるデータを監視する機能である。演算機能23は、各種演算処理を行う機能である。
【0062】
プロトコル変換機能31は、異なる通信プロトコル間のプロトコル変換を行う機能である。ここでは、プロトコル変換機能31は、CANおよびイーサネットの通信プロトコル間のプロトコル変換を行う機能である。ダイアグ機能32は、たとえば、自己の中継装置101における故障を診断するためのダイアグ処理を行う機能である。
【0063】
OTA機能41は、OTAマスタ202Bから更新情報を受信した場合、TCU202A経由でサーバ180から更新用プログラムを受信し、当該更新用プログラムをインストールすることにより、記憶部62に保存されているプログラムを更新する機能である。OTA機能41は、中継機能21、監視機能22、演算機能23、プロトコル変換機能31およびダイアグ機能32と比べて、コア61における処理負荷の高い機能である。
【0064】
以下、第1のコア61Aが実行するOTA機能41を「OTA機能41A」とも称する。また、第2のコア61Bが実行するOTA機能41を「OTA機能41B」とも称する。図4及び図5に示す状態管理機能42については、後述する。
【0065】
[課題の説明]
上述したように、OTA機能41A,41Bは、コア61における処理負荷の高い機能である。そのため、たとえば、中継装置101における第1のコア61Aが、OTA機能41Aを実行している場合、OTA機能41A以外の他の機能を実行できない可能性があり、また、中継機能21、監視機能22および演算機能23の処理遅延が発生し、各機能のリアルタイム性が損なわれる可能性がある。
【0066】
これに対して、本開示の実施の形態に係る中継装置101では、以下のような構成および動作により、このような課題を解決する。
【0067】
[中継装置]
(特定機能情報)
図4および図5を参照して、第1のコア61Aおよび第2のコア61Bは、状態管理機能42を実行する。
【0068】
状態管理機能42は、自己のコア61が実行可能な複数の機能(以下、「第1の機能群」とも称する。)のうちの特定の機能(以下、「特定機能」とも称する。)の実行状態と、他のコア61が実行可能な複数の機能(以下、「第2の機能群」とも称する。)のうちの特定機能の実行状態とを示す特定機能情報を取得する機能である。各コア61は、取得した特定機能情報を記憶部62に保存する。ここでは、特定機能は、OTA機能41である。
【0069】
より詳細には、各コア61は、特定機能情報を定期的または不定期に取得する。具体的には、各コア61は、記憶部62に保存されている実行フラグを参照することにより、自己のコア61においてOTA機能41を実行しているか否かを確認する。
【0070】
また、各コア61は、他のコア61におけるOTA機能41の実行状態を示す情報を要求するための情報要求通知を他のコア61へ出力する。他のコア61は、情報要求通知を受けると、記憶部62に保存されている実行フラグを参照することにより、当該他のコア61におけるOTA機能41の実行状態を示す実行フラグを、情報要求通知の出力元のコア61へ出力する。
【0071】
各コア61は、特定機能情報として、自己のコア61におけるOTA機能41の実行状態を示す実行フラグと、他のコア61から受けた当該他のコア61におけるOTA機能41の実行状態を示す実行フラグとの組を記憶部62に保存する。
【0072】
(車両状態情報)
状態管理機能42は、さらに、車両1の状態を示す車両状態情報を定期的または不定期に取得する機能である。各コア61は、取得した車両状態情報を記憶部62に保存する。ここでは、車両状態情報は、たとえば、車両1の走行状態を示す走行情報と、車両1において電力を供給する電源部の動作状態を示す電源情報とを含む。
【0073】
各コア61は、たとえば、車速センサ202Cから受信したフレームに含まれる計測情報に基づいて、車両1の走行状態を判断する。
【0074】
より詳細には、各コア61は、車速がゼロの状態が一定時間以上継続する場合、車両1が停止していると判断し、車速がゼロの状態が一定時間以上継続しない場合、車両1が走行していると判断する。
【0075】
電源情報は、たとえば、車両1のイグニッション電源の動作状態と、車両1のバッテリの動作状態とを示す。
【0076】
各コア61は、たとえば、イグニッション電源の出力電圧を監視することにより、イグニッション電源のオンおよびオフの切り替わりを検知する。
【0077】
より詳細には、各コア61は、計測した電圧値が所定の閾値以上である場合、イグニッション電源がオン状態であると判断し、計測した電圧値が閾値未満である場合、イグニッション電源がオフ状態であると判断する。
【0078】
また、各コア61は、たとえば、バッテリの出力電圧を監視することにより、バッテリのオンおよびオフの切り替わりを検知する。
【0079】
より詳細には、各コア61は、計測した電圧値が所定の閾値以上である場合、バッテリがオン状態であると判断し、計測した電圧値が閾値未満である場合、バッテリがオフ状態であると判断する。
【0080】
(決定処理)
状態管理機能42は、さらに、取得した特定機能情報に基づいて、第1の機能群の機能のうちの、第2の機能群の機能と共通する共通機能20であって、特定機能以外の共通機能20を実行するか否かを決定する決定処理を行う機能である。図4および図5に示す例では、第1のコア61Aおよび第2のコア61Bの各々は、共通機能20である上述の中継機能21、監視機能22および演算機能23を実行する。
【0081】
たとえば、記憶部62は、特定機能情報と、車両状態情報と、各コア61における共通機能20の実行の有無を示す情報(以下、「共通機能情報」とも称する。)との対応関係を示す対応情報を記憶する。ここでは、記憶部62は、特定機能情報と、車両状態情報と、第1のコア61Aにおける共通機能情報との対応関係を示す対応情報を含む第1のコア61A用の動作テーブルTb21を記憶する。また、記憶部62は、特定機能情報と、車両状態情報と、第2のコア61Bにおける共通機能情報との対応関係を示す対応情報を含む第2のコア61B用の動作テーブルTb22を記憶する。
【0082】
各コア61は、記憶部62に保存されている動作テーブルTb21,Tb22、および状態テーブルTb11を用いて、決定処理を行う。
【0083】
(状態テーブル)
図6は、本開示の実施の形態に係る中継装置が保存する状態テーブルの一例を示す図である。
【0084】
図6を参照して、状態テーブルTb11は、特定機能情報と車両状態情報との対応関係を示す対応情報を含む。状態テーブルTb11では、特定機能情報と車両状態情報との組み合わせごとに、コア61の状態Sが定義されている。図6に示す「条件」については、後述する。
【0085】
図6に示す状態テーブルTb11において、コア61の状態S1では、OTA機能41Aが停止状態であり、OTA機能41Bが停止状態であり、車両1が走行状態であり、イグニッション電源がオン状態であり、バッテリがオン状態である。コア61の状態S2では、OTA機能41Aが実行中の状態であり、OTA機能41Bが停止状態であり、車両1が停車状態であり、イグニッション電源がオフ状態であり、バッテリがオン状態である。コア61の状態S3では、OTA機能41Aが実行中の状態であり、OTA機能41Bが停止状態であり、車両1が走行状態であり、イグニッション電源がオン状態であり、バッテリがオン状態である。コア61の状態S4では、OTA機能41Aが停止状態であり、OTA機能41Bが実行中の状態であり、車両1が停車状態であり、イグニッション電源がオフ状態であり、バッテリがオン状態である。
【0086】
(動作テーブル)
図7は、本開示の実施の形態に係る中継装置が保存する第1のコア用の動作テーブルの一例を示す図である。
【0087】
図7を参照して、動作テーブルTb21は、状態テーブルTb11において定義されるコア61の状態Sと、第1のコア61Aにおける共通機能20の実行の有無と、第1のコア61Aにおけるプロトコル変換機能31の実行の有無との対応関係を示す。
【0088】
動作テーブルTb21において、第1のコア61Aは、コア61の状態Sが「S1」および「S4」である場合、中継機能21、監視機能22、演算機能23およびプロトコル変換機能31を実行する。第1のコア61Aは、コア61の状態Sが「S2」および「S3」である場合、中継機能21、監視機能22および演算機能23を実行せず、プロトコル変換機能31を実行する。
【0089】
図8は、本開示の実施の形態に係る中継装置が保存する第2のコア用の動作テーブルの一例を示す図である。
【0090】
図8を参照して、動作テーブルTb22は、状態テーブルTb11において定義されるコア61の状態Sと、第2のコア61Bにおける共通機能20の実行の有無と、第2のコア61Bにおけるダイアグ機能32の実行の有無との対応関係を示す。
【0091】
動作テーブルTb22において、第2のコア61Bは、コア61の状態Sが「S1」、「S2」および「S3」である場合、中継機能21、監視機能22、演算機能23およびダイアグ機能32を実行する。第2のコア61Bは、コア61の状態Sが「S4」である場合、中継機能21、監視機能22および演算機能23を実行せず、ダイアグ機能32を実行する。
【0092】
状態テーブルTb11、動作テーブルTb21および動作テーブルTb22は、たとえば、車両1の出荷時に、車両1の製造事業者によって記憶部62に登録される。なお、状態テーブルTb11、動作テーブルTb21および動作テーブルTb22は、車両1の出荷後に更新されてもよい。
【0093】
各コア61は、記憶部62における動作テーブルTb21,Tb22に基づいて、取得した特定機能情報および車両状態情報に対応する共通機能情報に従い、決定処理を行う。
【0094】
より詳細には、各コア61は、特定機能情報および車両状態情報を取得した場合、記憶部62における状態テーブルTb11を参照し、取得した特定機能情報と車両状態情報との組み合わせに対応するコア61の状態Sを特定する。
【0095】
そして、各コア61は、記憶部62における動作テーブルTb21,Tb22を参照し、特定したコア61の状態Sに対応する、自己のコア61における特定機能以外の機能の実行の有無を特定する。
【0096】
図9は、本開示の実施の形態に係る中継装置による決定処理の一例を説明するための図である。図9では、第1のコア61Aおよび第2のコア61Bにおいて、枠が破線によって示されている機能は実行されないことを示し、枠が実線によって示されている機能は実行されることを示す。
【0097】
各コア61は、決定処理において、自己のコア61が特定機能を実行している場合、自己のコア61において共通機能20を実行しないことを決定する。
【0098】
また、各コア61は、決定処理において、自己のコア61が特定機能を実行しておらず、かつ他のコア61が特定機能を実行している場合、自己のコア61において共通機能20を実行することを決定する。
【0099】
具体的には、図9を参照して、第1のコア61Aは、自己がOTA機能41Aを実行しているため、共通機能20を実行しない。第2のコア61Bは、自己がOTA機能41Bを実行しておらず、かつ第1のコア61AがOTA機能41Aを実行しているため、共通機能20を実行する。また、第1のコア61Aおよび第2のコア61Bは、自己においてOTA機能41を実行しているか否かに関わらず、プロトコル変換機能31およびダイアグ機能32をそれぞれ実行する。
【0100】
また、たとえば、第1のコア61Aおよび第2のコア61Bは、第1のコア61Aおよび第2のコア61Bの両方においてOTA機能41を実行している場合、決定処理を行わない。
【0101】
(決定処理の実行判断)
上述したように、中継装置101における各コア61は、特定機能情報および車両状態情報を定期的または不定期に取得する。各コア61は、今回取得した特定機能情報および車両状態情報ならびに前回取得した特定機能情報および車両状態情報に基づいて、共通機能20の実行の有無を維持するか否かを決定し、維持しない場合、決定処理を行う。
【0102】
より詳細には、再び図3および図6を参照して、各コア61は、特定機能情報および車両状態情報を新たに取得した場合、記憶部62に保存されている、前回取得した特定機能情報および車両状態情報を読み出し、記憶部62における状態テーブルTb11を参照することにより、自己のコア61における共通機能20の実行の有無を維持するか否かを決定する。
【0103】
状態テーブルTb11は、共通機能20の実行の有無を維持するか否かを決定するための条件を示す条件情報を含む。条件情報は、たとえば、前回取得した特定機能情報および車両状態情報に対応するコア61の状態Sを示す。
【0104】
図6に示す例では、今回取得した特定機能情報および車両状態情報に対応するコア61の状態Sが「S1」および「S4」である場合、条件情報は「なし」である。この場合、各コア61は、前回取得した特定機能情報および車両状態情報に対応するコア61の状態Sに関わらず、決定処理を行う。
【0105】
一方、今回取得した特定機能情報および車両状態情報に対応するコア61の状態Sが「S2」である場合、条件情報は「S1」である。この場合、各コア61は、前回取得した特定機能情報および車両状態情報に対応するコア61の状態Sが「S1」である場合、決定処理を行う。また、今回取得した特定機能情報および車両状態情報に対応するコア61の状態Sが「S2」である場合、条件情報は「S1orS4」である。この場合、各コア61は、前回取得した特定機能情報および車両状態情報に対応するコア61の状態Sが「S1」または「S4」である場合、決定処理を行う。
【0106】
[動作の流れ]
図10は、本開示の実施の形態に係る中継装置のコアによる決定処理の動作手順を定めたフローチャートである。
【0107】
図10を参照して、まず、コア61は、特定機能情報を取得する。たとえば、上述したように、コア61は、特定機能情報として、自己のコア61におけるOTA機能41の実行状態を示す実行フラグと、他のコア61におけるOTA機能41の実行状態を示す実行フラグとを取得する。コア61は、取得した特定機能情報を記憶部62に保存する(ステップS101)。
【0108】
次に、コア61は、車両状態情報を取得する。たとえば、上述したように、コア61は、車両状態情報として、車両走行情報および電源情報を取得する。コア61は、取得した車両状態情報を記憶部62に保存する(ステップS102)。ステップS101およびステップS102は、順序を入れ替えて実行してもよいし、並行して実行してもよい。
【0109】
次に、コア61は、自己のコア61においてOTA機能41を実行中であるか否かを確認する(ステップS103)。
【0110】
次に、各コア61は、自己のコア61においてOTA機能41を実行していない場合(ステップS103においてNO)、他のコア61においてOTA機能41を実行中であるか否かを確認する(ステップS104)。
【0111】
コア61は、他のコア61においてOTA機能41を実行している場合(ステップS104においてYES)、または自己のコア61においてOTA機能41を実行している場合(ステップS103においてYES)、今回取得した特定機能情報および車両状態情報ならびに前回取得した特定機能情報および車両状態情報に基づいて、共通機能20の実行の有無を維持するか否かを決定する。たとえば、上述したように、コア61は、記憶部62に保存されている、今回取得した特定機能情報および車両状態情報ならびに前回取得した特定機能情報および車両状態情報と、記憶部62における状態テーブルTb11に含まれる条件情報とを参照することにより、共通機能20の実行の有無を維持するか否かを決定する(ステップS105)。
【0112】
次に、コア61は、共通機能20の実行の有無を維持する場合(ステップS105においてYES)、決定処理を行わない(ステップS106)。
【0113】
一方、コア61は、共通機能20の実行の有無を維持しない場合(ステップS105においてNO)、決定処理を行う。たとえば、上述したように、コア61は、記憶部62における状態テーブルTb11および動作テーブルTb21,Tb22を参照し、取得した特定機能情報と車両状態情報との組み合わせに対応するコア61の状態Sを特定し、特定したコア61の状態Sに対応する共通機能20の実行の有無を特定する(ステップS106)。
【0114】
図11は、本開示の実施の形態に係る中継装置における決定処理のシーケンスの一例を示す図である。図11は、第1のコア61Aが共通機能20を実行し、かつ第2のコア61Bが共通機能20を実行していない状態において行われる決定処理の一例を示している。
【0115】
図11を参照して、まず、第1のコア61Aは、自己が共通機能20を実行中であり(ステップS201)、かつ第2のコア61Bが共通機能20の実行を停止している状態において(ステップS202)、第2のコア61BにおけるOTA機能41Bの実行状態を示す実行フラグを要求するための情報要求通知を第2のコア61Bへ出力する(ステップS203)。
【0116】
次に、第2のコア61Bは、情報要求通知を受けると、記憶部62に保存されている、自己におけるOTA機能41Bの実行状態を示す実行フラグを第1のコア61Aへ出力する(ステップS204)。
【0117】
次に、第1のコア61Aは、自己におけるOTA機能41Aの実行状態と、第2のコア61BにおけるOTA機能41Bの実行状態とを示す特定機能情報を取得する。たとえば、上述したように、第1のコア61Aは、自己におけるOTA機能41Aの実行状態を示す実行フラグと、第2のコア61BにおけるOTA機能41Bの実行状態を示す実行フラグとを取得する。第1のコア61Aは、取得した特定機能情報を記憶部62に保存する(ステップS205)。
【0118】
次に、第1のコア61Aは、車両状態情報を取得する。たとえば、上述したように、第1のコア61Aは、車両状態情報として、車両走行情報および電源情報を取得する。第1のコア61Aは、取得した車両状態情報を記憶部62に保存する(ステップS206)。
【0119】
次に、第2のコア61Bは、第1のコア61AにおけるOTA機能41Aの実行状態を示す実行フラグを要求するための情報要求通知を第1のコア61Aへ出力する(ステップS207)。
【0120】
次に、第1のコア61Aは、情報要求通知を受けると、記憶部62に保存されている実行フラグを参照し、自己におけるOTA機能41Aの実行状態を示す実行フラグを確認し、当該実行フラグを第2のコア61Bへ出力する(ステップS208)。
【0121】
次に、第2のコア61Bは、自己におけるOTA機能41Bの実行状態と、第1のコア61AにおけるOTA機能41Aの実行状態とを示す特定機能情報を取得する。たとえば、上述したように、第2のコア61Bは、自己におけるOTA機能41Bの実行状態を示す実行フラグと、第1のコア61AにおけるOTA機能41Aの実行状態を示す実行フラグとを取得する。第2のコア61Bは、取得した特定機能情報を記憶部62に保存する(ステップS209)。
【0122】
次に、第2のコア61Bは、車両状態情報を取得する。たとえば、上述したように、第2のコア61Bは、車両状態情報として、車両走行情報および電源情報を取得する。第2のコア61Bは、取得した車両状態情報を記憶部62に保存する(ステップS210)。なお、ステップS203からステップS206までの処理、およびステップS207からステップS210までの処理は、順序を入れ替えて実行してもよいし、並行して実行してもよい。
【0123】
次に、第1のコア61Aおよび第2のコア61Bの各々は、記憶部62に保存されている特定機能情報を参照することにより、第1のコア61AにおいてOTA機能41Aを実行中であること、および第2のコア61BにおいてOTA機能41Bを実行していないことを確認する(ステップS211からステップS214)。
【0124】
次に、第1のコア61Aおよび第2のコア61Bの各々は、記憶部62に保存されている、今回取得した特定機能情報および車両状態情報ならびに前回取得した特定機能情報および車両状態情報と、記憶部62における状態テーブルTb11に含まれる条件情報とを参照することにより、決定処理を行うことを決定する(ステップS215およびステップS216)。
【0125】
次に、第1のコア61Aは、今回取得した特定機能情報および車両状態情報に基づいて、共通機能20を実行するか否かを決定する決定処理を行う。ここでは、第1のコア61Aは、自己がOTA機能41Aを実行しているため、共通機能20を実行しないことを決定する(ステップS217)。
【0126】
また、第2のコア61Bは、今回取得した特定機能情報および車両状態情報に基づいて、共通機能20を実行するか否かを決定する決定処理を行う。ここでは、第2のコア61Bは、自己がOTA機能41Bを実行しておらず、かつ第1のコア61AがOTA機能41Aを実行しているため、共通機能20を実行することを決定する(ステップS218)。
【0127】
なお、本開示の実施の形態に係る中継装置101では、2つのコア61を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。中継装置101は、3つ以上のコア61を備える構成であってもよい。3つ以上のコア61を備える中継装置101において、各コア61は、特定機能を実行していない他の別のコア61が存在する場合、所定条件をさらに満たす場合に自己のコア61において共通機能20を実行することを決定してもよい。
【0128】
具体的には、記憶部62は、予め設定された、決定処理を行うコア61の優先順位を示す優先順位情報を記憶する。各コア61は、特定機能情報および車両状態情報を取得した場合、記憶部62に保存されている優先順位情報、状態テーブルTb11および動作テーブルに基づいて、決定処理を行う。
【0129】
また、本開示の実施の形態に係る車載システム301では、1つの中継装置101における処理部53が、複数のコア61を含む構成であるとしたが、これに限定するものではない。たとえば、複数の中継装置101を備える車載システム301において、複数のコア61が、互いに異なる中継装置101にそれぞれ設けられ、各中継装置101におけるコア61が決定処理を行ってもよい。この場合、記憶部62は、各中継装置101に設けられてもよいし、複数の中継装置101の一部に設けられてもよいし、中継装置101以外の他の車載装置に設けられてもよい。
【0130】
また、本開示の実施の形態に係る中継装置101では、記憶部62が、コア61ごとの動作テーブルTb21,Tb22を記憶する構成であるとしたが、これに限定するものではない。記憶部62は、たとえば、2つの動作テーブルTb21,Tb22の内容を含む1つの動作テーブルを記憶してもよい。
【0131】
また、本開示の実施の形態に係る中継装置101では、記憶部62は、特定機能情報と車両状態情報と共通機能情報との対応関係を示す対応情報を含む動作テーブルTb21,Tb22を記憶し、また、各コア61は、当該動作テーブルTb21,Tb22を用いて決定処理を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。記憶部62は、車両状態情報を示さず、かつ特定機能情報と共通機能情報との対応関係を示す対応情報を記憶する構成であってもよい。この場合、各コア61は、記憶部62における当該対応情報に基づいて、取得した特定機能情報に対応する共通機能情報に従い、決定処理を行う。
【0132】
また、本開示の実施の形態に係る中継装置101では、各コア61が、今回取得した特定機能情報および車両状態情報ならびに前回取得した特定機能情報および車両状態情報に基づいて、共通機能20の実行の有無を維持するか否かを決定する構成であるとしたが、これに限定するものではない。各コア61は、前回取得した特定機能情報および車両状態情報に関わらず、決定処理を行う構成であってもよい。
【0133】
また、本開示の実施の形態に係る中継装置101では、特定機能は、OTA機能41であるとしたが、これに限定するものではない。特定機能は、OTA機能41以外の他の機能であってもよい。
【0134】
また、本開示の実施の形態に係る車載システム301では、中継装置101が複数のコア61を備え、各コア61が状態管理機能42を実行する構成であるとしたが、これに限定するものではない。車載ECU等の中継装置101以外の他の車載装置が複数のコア61を備え、当該他の車載装置における各コア61が状態管理機能42を実行する構成であってもよい。
【0135】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0136】
上述の実施の形態の各処理(各機能)は、1または複数のプロセッサを含む処理回路により実現される。上記処理回路は、上記1または複数のプロセッサに加え、1または複数のメモリ、各種アナログ回路、各種デジタル回路が組み合わされた集積回路等で構成されてもよい。上記1または複数のメモリは、上記各処理を上記1または複数のプロセッサに実行させるプログラム(命令)を格納する。上記1または複数のプロセッサは、上記1または複数のメモリから読み出した上記プログラムに従い上記各処理を実行してもよいし、予め上記各処理を実行するように設計された論理回路に従って上記各処理を実行してもよい。上記プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、およびASIC(Application Specific Integrated Circuit)等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサであってよい。なお、物理的に分離した上記複数のプロセッサが互いに協働して上記各処理を実行してもよい。たとえば、物理的に分離した複数のコンピュータのそれぞれに搭載された上記プロセッサがLAN(Local Area Network)、WAN (Wide Area Network)、およびインターネット等のネットワークを介して互いに協働して上記各処理を実行してもよい。上記プログラムは、外部のサーバ装置等から上記ネットワークを介して上記メモリにインストールされても構わないし、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、および半導体メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通し、上記記録媒体から上記メモリにインストールされても構わない。
【0137】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
車両に搭載される車載システムであって、
複数の車載装置を備え、
各前記車載装置は、複数の機能を実行可能なコアを含み、
前記コアは、自己の前記コアが実行可能な複数の機能である第1の機能群のうちの特定の機能である特定機能の実行状態と、他の前記コアが実行可能な複数の機能である第2の機能群のうちの前記特定機能の実行状態とを示す特定機能情報を取得し、取得した前記特定機能情報に基づいて、前記第1の機能群の機能のうちの、前記第2の機能群の機能と共通する共通機能であって、前記特定機能以外の前記共通機能を実行するか否かを決定する決定処理を行う、車載システム。
【符号の説明】
【0138】
1 車両
10 イーサネットケーブル
11 CANバス
21 中継機能
22 監視機能
23 演算機能
31 プロトコル変換機能
32 ダイアグ機能
41,41A,41B OTA機能
42 状態管理機能
51,51A,51B,51C,51D 通信ポート
52 中継部
53 処理部
61 コア
61A 第1のコア
61B 第2のコア
62 記憶部
101 中継装置
161 無線基地局装置
170 外部ネットワーク
180 サーバ
202,202A,202B,202C,202D 車載機器
301 車載システム
401 車載ネットワーク
501 通信システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11