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特開2024-67650工具損傷検知システムを備えた工作機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067650
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】工具損傷検知システムを備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/24 20060101AFI20240510BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20240510BHJP
   B23Q 7/00 20060101ALI20240510BHJP
   B23B 15/00 20060101ALI20240510BHJP
   B23B 25/06 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B23Q17/24 Z
B23Q17/09 C
B23Q7/00 M
B23B15/00 A
B23B25/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177884
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】591014835
【氏名又は名称】高松機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】石野 嘉章
(72)【発明者】
【氏名】敷村 逹也
【テーマコード(参考)】
3C029
3C033
3C045
【Fターム(参考)】
3C029DD04
3C029DD08
3C029DD20
3C029EE20
3C033HH12
3C033HH30
3C033PP20
3C045FA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】撮影用カメラの設置位置が、加工作業の妨げにならないようにしつつ、刃先状態を鮮明に画像化しAIに認識させることで、切削工具刃先が使用可能状態か、使用不可能状態かをAIに判定させる、工作機械の生産性向上に寄与する工具損傷検知システムを備えた工作機械を提供すること。
【解決手段】画像解析用のカメラ本体20と、カメラ本体20を設置するカメラ取付け部30と、カメラ取付け部30を垂直移動させる際、ガイドレールとなる垂直方向軸体40と、垂直方向軸体40を水平方向に移動させる水平方向軸体50を備えており、水平方向軸体50は、ローダ移動用ガイドレールと同一のガイドレールを使用することを特徴とする工具損傷検知システムを備えた工作機械とした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローダ走行レール上に画像解析用のカメラを含む撮影ユニットを搭載した工具損傷検知システムを備えた工作機械であって、
画像解析用のカメラ本体と、
前記カメラ本体を設置するカメラ取付け部と、
前記カメラ取付け部を垂直移動させる際、走行レールとなる垂直方向軸体と、
前記垂直方向軸体を水平方向に移動させる水平方向軸体を備えており、
前記水平方向軸体は、ローダ走行レールを使用することを特徴とする工具損傷検知システムを備えた工作機械。
【請求項2】
前記水平方向軸体の一端側をローダが移動し、前記水平方向軸体の他端側を前記垂直方向軸体と、前記カメラ取付け部と、前記カメラ本体が一体化して移動することを特徴とする請求項1に記載の工具損傷検知システムを備えた工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローダ走行レール上に画像解析用のカメラを含む撮影ユニットを搭載した工具損傷検知システムを備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の生産性向上を目的として、工作機械に設置されたカメラからの画像にて加工作業状態を監視すること、及び加工作業毎に切削工具刃先の損傷状態を(工作機械に設置された)カメラからの画像にて監視することが行われている。さらに、AIを使った機械学習の手法等を用いて、使用可否を判定すること、即ち、切削工具刃先の損傷状態を判定すること(切削工具刃先の損傷を検知すること)が行われている。切削工具刃先の損傷状態を、AIを使った画像認識によって監視する刃先状態判定手段等により、切削工具刃先の画像から(切削工具刃先が)使用可能状態か、使用不可能状態かをAIに判定させるもので、膨大な量の切削工具刃先の画像を学習させた学習モデルを使用する。
【0003】
一方で、画像解析用のカメラを工作機械の切削工具刃先状態を撮影できる位置に設置することで、カメラの設置位置等によっては、工作機械の本来の機能である加工作業の妨げになることもあり得るし、加工作業中に発生するクーラント液、切り屑等がカメラのレンズに降りかかってくる状態では画像解析に供し得る鮮明な画像を得ることができない可能性もある。即ち、カメラの設置位置が、加工作業の妨げにならないようにしつつ、工具刃先状態を鮮明に画像化しAIに認識させるための、カメラ設置位置やカメラ移動方法等を考慮する必要がある。
【0004】
特許文献1には、「工作機械のワーク保持部に保持されワークの加工前の位相決めや、機内での良否判定等が良好にかつ迅速に行え、加工中におけるカメラの汚れの問題も生じないワーク搬送装置を提供する(特許文献1:要約そのまま)。」ことを課題として、「ローダのチャックが取付けられるローダヘッドにカメラを設置する。カメラにより撮像した画像データから、工作機械のワーク保持部に保持された素材ワークWの位相角度θを画像処理によって求めるワーク位相角度演算手段を設ける。また、前記のワークWを撮像した画像データを処理し、ワークWの良否を判定する良否判定手段を設ける(特許文献1:要約より抜粋)。」ことを特徴とするワーク搬送装置(特許文献1:発明の名称)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-130979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係るワーク搬送装置(特許文献1:発明の名称)は、ローダのチャックが取付けられるローダヘッドにカメラを設置するものである。特許文献1に係るワーク搬送装置(特許文献1:発明の名称)は、ローダヘッドに画像解析用のカメラを取付けているので、カメラの動きはローダの動きと全く同一である。即ち、カメラはローダと独立しての動きができない、即ちローダの動きに限定されており、自由度が無いので、フレキシブルな撮影ができず全く好ましく無いと言える。
【0007】
本発明の目的は、撮影用カメラの設置位置が、加工作業の妨げにならないようにしつつ、刃先状態を鮮明に画像化しAIに認識させることで、切削工具刃先が使用可能状態か、使用不可能状態かをAIに判定させる、工作機械の生産性向上に寄与する工具損傷検知システムを備えた工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、ローダ走行レール上に画像解析用のカメラを含む撮影ユニットを搭載した工具損傷検知システムを備えた工作機械であって、画像解析用のカメラ本体と、前記カメラ本体を設置するカメラ取付け部と、前記カメラ取付け部を垂直移動させる際、走行レールとなる垂直方向軸体と、前記垂直方向軸体を水平方向に移動させる水平方向軸体を備えており、前記水平方向軸体は、ローダ走行レールを使用することを特徴とする工具損傷検知システムを備えた工作機械であることを特徴とするものである。尚、ローダとは、ワーク(加工物)を加工の工程間、又は、工作機械間に亘って搬送する機械・装置のことである。搬送装置とも言う。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1において、前記水平方向軸体の一端側をローダが移動し、前記水平方向軸体の他端側を前記垂直方向軸体と、前記カメラ取付け部と、前記カメラ本体が一体化して移動する工具損傷検知システムを備えた工作機械であることを特徴とするものである。尚、本明細書において、「水平」、及び「垂直」の概念は、工作機械を設置する面(地球の重力が作用する面)を基準とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る工具損傷検知システムを備えた工作機械は、画像解析用のカメラ本体と、カメラ本体を設置するカメラ取付け部と、カメラ取付け部を垂直移動させる際、ガイドレールとなる垂直方向軸体(以上、纏めて撮影ユニット)と、垂直方向軸体を水平方向に移動させる水平方向軸体を備えている。特徴的には、ローダ走行レールと同一の走行レールを(撮影ユニット用に)使用することを特徴とする工具損傷検知システムを備えた工作機械である。従来、ローダ走行レールと撮影ユニットのガイドレールの2本のレールが必要であったところ、ローダ走行レールのみで撮影ユニットも設置できるので、設置作業性が向上し、作業現場の省スペースにも貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る工具損傷検知システムを備えた工作機械の全体図である。
図2】撮影ユニットを説明するための図である。
図3】撮影時以外の撮影ユニットの機外退避状態を説明するための図である。
図4】撮影時の撮影ユニットの機内進入状態を説明するための図である。
図5】撮影ユニットが、機内進入する直前の状態を示す図である。
図6】垂直方向軸体をカメラ取付け部(カメラ本体も一緒に)が垂直移動した状態を示す図である。
図7】工具刃先を照射するためのライトを移動させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<工具損傷検知システムを備えた工作機械の構造>
以下、本発明に係る工具損傷検知システムを備えた工作機械の一実施形態について、図1図7に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係る工具損傷検知システムを備えた工作機械の全体図である。
【0013】
工具損傷検知システムを備えた工作機械は、図1に記載したように、工作機械のローダ(搬送装置)の走行レール(必要に応じてローダ走行レールを延長させる)に撮影ユニット10を移動自在に設置していることに特徴がある。工作機械のローダ(搬送装置)の走行レールと共用する水平方向軸体50の工作機械正面から見て右側に、移動自在に撮影ユニット10を取り付けている(図1参照)。即ち、工具損傷検知システムを備えた工作機械の水平方向軸体50は、ローダ(搬送装置)走行レールと同一の走行レールを(撮影ユニット10用の)ガイドレールとして使用する。本発明に係る工具損傷検知システムを備えた工作機械における構造の特徴は、工作機械のローダ(搬送装置)の走行レールをそのまま(水平方向軸体50として)利用して撮影ユニット10を設置していることにある。
【0014】
図2は、工具損傷検知システムを備えた工作機械の撮影ユニット10を説明するための図である。撮影ユニット10は、画像解析用のカメラ本体20と、カメラ本体20を設置するカメラ取付け部30と、カメラ取付け部30を垂直移動させる際、ガイドレールとなる垂直方向軸体40と、垂直方向軸体40を水平方向に移動させる水平方向軸体50(ローダ走行レールと共用している)を備えている。撮影ユニット10(垂直方向軸体40、カメラ取付け部30、カメラ本体20)が、(ローダ走行レールと共用している)水平方向軸体50を移動することになる。
【0015】
<工具損傷検知システムを備えた工作機械に搭載された撮影ユニットの動作>
図3図7は、工具損傷検知システムを備えた工作機械に搭載された撮影ユニット10の動作を説明するための図である。即ち、工作機械に搭載された撮影ユニット10の(工具損傷検知システムとしての)工具刃先画像データ取得時における動きを説明するための図である。
【0016】
図3は、工具損傷検知システムを備えた工作機械において、撮影時以外の撮影ユニット10の機外退避状態を説明するための図である。図3に記載したように、機外退避状態(撮影時以外)においては、ローダ(搬送装置)60が機内に進入しており、一方で撮影ユニット10は、機内進入しておらず、機外退避の状態にある。尚、本明細書において機内進入・機外退避とは、工作機械の加工領域への進入・工作機械の加工領域からの退避という意味である。
【0017】
図4は、工具損傷検知システムを備えた工作機械において、撮影時の撮影ユニット10の機内進入状態を説明するための図である。図4に記載したように、機内進入状態(撮影時)においては、水平方向軸体50を走行レールとして、撮影ユニット10が機内に進入可能な状態であり、一方でローダ(搬送装置)60は、機内侵入の状態から機外退避の状態にある。撮影ユニット10の機内進入は、ローダ(搬送装置)60の機外退避と同時に行われても良いし、ローダ(搬送装置)60の機外退避の直後に行われても良い。水平方向軸体50上を、撮影ユニット10(垂直方向軸体40、カメラ取付け部30、カメラ本体20が一体化して移動して)が機内進入することになる。
【0018】
図5図7は、工具損傷検知システムを備えた工作機械において、(工具損傷検知システムとして工具刃先を撮像する時の)撮影ユニット10が、機内進入時から工具刃先撮影開始状態に至るまでの状態を説明するための図である。図5は、撮影ユニット10が、機内進入する直前の状態を示す図であり、図6は、垂直方向軸体40とカメラ取付け部30(カメラ本体20も一緒に)が機内進入した状態を示す図であり、図7は、図6の状態から工具刃先を照射するためのライトを移動させた状態を示す図である。尚、図4図5は、いずれも同じ状態であるが(視点が90度異なり)正面図と側面図の関係にある。
【0019】
撮影ユニット10は、水平方向軸体50を走行レールとして、機内進入する直前の図5の状態から、垂直方向軸体40をカメラ取付け部30(カメラ本体20も一緒に)が垂直下方向に移動して機内進入した状態になり(図6の矢印分、下降する)、工具刃先を撮影するための(撮影ユニット10)位置決め完了状態となる(図6参照)。さらに、工具刃先を照射するためのライトを移動させた状態になり(図6の矢印分、斜め下に下降する)撮影開始状態に移行することになる(図7参照)。
【0020】
<工具損傷検知システムを備えた工作機械の効果>
本発明に係る工具損傷検知システムを備えた工作機械は、従来、ローダ走行レールとは別に、撮影ユニット10用の走行レールの2本の走行レールを設置する必要であったところ、ローダ走行レールのみで(撮影ユニット10も)設置できるので、設置作業性が向上し、作業現場の省スペースに貢献するものである。即ち、ローダ走行レールを共用することで、(そのために別途新設する)取り付け面や取り付け穴等を準備しなくても良いので、設置コストが抑えられる。さらに、ローダの走行レールを共用することで、撮影ユニット10の後付けが簡単になり、ローダ走行レールを活用することで、既存のシャッター(遮蔽板)が、「クーラント液、切り屑、ミスト等の対策」で利用できるので「クーラント液、切り屑、ミスト等の対策」専用の対策カバーが不要となりコスト的にも良好である。
【0021】
本発明に係る工具損傷検知システムを備えた工作機械の撮影ユニット10は、機外設置であるので、機内設置との比較において、機内の加工スペースが狭くならないため、加工前の段取りがし易いし、機内設置に比べて、加工スペースが狭くならないためワークサイズに制約が生じなくなった。そして、機外設置にすることでクーラント液、及び切り屑対策が容易になった。さらに、ローダ(搬送装置)60と撮影ユニット10を別々に、かつ、独立した動きができるように設置することで、ローディング時のエアブロー等の悪影響(付着物の除去作業,並びにそれで生じる振動等)を考慮する必要が無くなった。
【0022】
<工具損傷検知システムを備えた工作機械の変更例>
本発明に係る工具損傷検知システムを備えた工作機械は、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、撮影ユニット、カメラ本体、カメラ取付け部、垂直方向軸体、水平方向軸体等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。例えば、ローダ(搬送装置)が機械仕様に無い場合においても、本発明に係る(撮影ユニットを)ローダ(搬送装置)に取付ける構造(取付け面・取付け穴等)を用いて撮影ユニットを配置することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る工具損傷検知システムを備えた工作機械は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、切削工具刃先の損傷状態が、使用可能状態か、使用不可能状態かをAIに判定させる工具損傷検知システムを備えた工作機械として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0024】
10・・撮影ユニット
20・・カメラ本体
30・・カメラ取付け部
40・・垂直方向軸体
50・・水平方向軸体
60・・ローダ(搬送装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7