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特開2024-67659RFIDタグおよび植物用のパッシブ型RFIDタグセンサー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067659
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】RFIDタグおよび植物用のパッシブ型RFIDタグセンサー
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
A01G7/00 603
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177901
(22)【出願日】2022-11-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・刊行物:2022年度日本建築学会大会(北海道) 学術講演梗概集・建築デザイン発表梗概集 発行日:2022年(令和4年)7月20日 ・集会名:2022年度日本建築学会大会(北海道) 開催日:2022年(令和4年)9月5日~8日
(71)【出願人】
【識別番号】720008759
【氏名又は名称】渡辺 明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 明
(57)【要約】
【課題】植物の生育中の動的挙動や植物自体の温度や乾湿状態に係るパラメータをワイヤレスで計測することができる、RFIDタグおよび植物用のパッシブ型RFIDタグセンサーを提供する。
【解決手段】環状の開口を有する導体パターン11と、その開口の近傍で、導体パターン11と電気的に接続されたICチップ20とを有するインピーダンス整合部10と、インピーダンス整合部10から第1方向および第2方向に延伸する放射導体からなるアンテナ部12と、アンテナ部12に結合した、貫通孔を有する複数の中空リング30とを備えている。中空リング30内に、植物体40を保持可能であり、中空リング30内を、植物体40が動けるよう構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の開口を有する導体パターンと、
前記開口の近傍で、前記導体パターンと電気的に接続されたICチップを有するインピーダンス整合部と、
前記インピーダンス整合部から第1方向および第2方向に延伸する放射導体からなるアンテナ部と、
前記アンテナ部に結合した、貫通孔を有する複数の中空リングとを備え、
前記中空リング内に植物体を保持可能であり、前記中空リング内を前記植物体が動けるよう構成されていることを
特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
絶縁フィルムと、
前記絶縁フィルムの表面に設けられ、環状の開口を有する導体パターンと、
前記開口の近傍で、前記導体パターンと電気的に接続されたICチップを有するインピーダンス整合部と、
前記インピーダンス整合部から第1方向および第2方向に延伸しており、前記絶縁フィルムを介して連結されている複数の放射導体小片から成るアンテナ部とを備え、
植物体に装着したとき、前記絶縁フィルムの伸縮によって、前記植物体が動けるよう構成されていることを
特徴とするRFIDタグ。
【請求項3】
前記放射導体および各放射導体小片の幅が、0.01mm以上2mm以下であることを特徴とする請求項1または2記載のRFIDタグ。
【請求項4】
2個以上の前記中空リングが、前記アンテナ部に結合していることを特徴とする請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項5】
前記アンテナ部が、前記絶縁フィルムを介して連結されている4個以上の前記放射導体小片から成ることを特徴とする請求項2記載のRFIDタグ。
【請求項6】
前記絶縁フィルムの厚さが、0.01μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項2記載のRFIDタグ。
【請求項7】
請求項1記載のRFIDタグを有し、
前記インピーダンス整合部の前記ICチップからの温度コードによって、前記中空リング内に保持された前記植物体の温度を検知可能に設けられていることを
特徴とする植物用のパッシブ型RFIDタグセンサー。
【請求項8】
請求項1記載のRFIDタグを有し、
前記インピーダンス整合部の前記ICチップからのセンサーコードSによって、前記中空リング内に保持された前記植物体の乾湿状態を検知可能に設けられていることを
特徴とする植物用のパッシブ型RFIDタグセンサー。
【請求項9】
請求項1記載のRFIDタグを有し、
前記インピーダンス整合部の前記ICチップからのRSSIの値によって、前記中空リング内に保持された前記植物体の動きを検知可能に設けられていることを
特徴とする植物用のパッシブ型RFIDタグセンサー。
【請求項10】
請求項2記載のRFIDタグを有し、
前記インピーダンス整合部の前記ICチップからの温度コードによって、装着した前記植物体の温度を検知可能に設けられていることを
特徴とする植物用のパッシブ型RFIDタグセンサー。
【請求項11】
請求項2記載のRFIDタグを有し、
前記インピーダンス整合部の前記ICチップからのセンサーコードSによって、装着した前記植物体の乾湿状態を検知可能に設けられていることを
特徴とする植物用のパッシブ型RFIDタグセンサー。
【請求項12】
請求項2記載のRFIDタグを有し、
前記インピーダンス整合部の前記ICチップからのRSSIの値によって、装着した前記植物体の動きを検知可能に設けられていることを
特徴とする植物用のパッシブ型RFIDタグセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグおよび植物用のパッシブ型RFIDタグセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
閉鎖空間となる植物栽培ハウス内での植物の栽培が行われるような植物工場においては、従来、植物の生育を良好にするために、植物栽培ハウス内の光、温度、湿度などの状態を、植物の栽培に適した雰囲気に管理することが行われている(例えば、特許文献1、2、3、および4参照)。植物工場では、環境温度や環境湿度等の情報が、植物工場内に設置した各種センサーで計測され、制御部に送られて、植物の生育に好適な値となるように、エアコンや気流を発生するファンが制御されている。
【0003】
このような閉鎖空間での植物栽培において、植物の生育を最適化するために、これまで用いられてきたのは、植物栽培ハウス内の環境に関する環境温度や環境湿度といった情報であり、植物の生育における動的な挙動や、植物自体の乾湿状態を検知するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-231721号公報
【特許文献2】特許第5841820号公報
【特許文献3】特許第6292698号公報
【特許文献4】特開2019-128703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
閉鎖空間型の植物工場内の植物栽培においては、植物栽培ハウス内の温度、湿度などの状態を、ほぼ均一に管理することが可能であり、その場合には、環境温度や環境湿度等の情報に基づいた植物栽培ハウス内の雰囲気の管理によって、植物の生育に好適な環境の制御が可能である。これに対して、開放空間型の植物工場の場合には、温度、湿度などの状態は均一ではなく、また、開放空間で計測した環境温度や環境湿度等の情報が、植物自体の状態を反映していない場合がある。植物工場ばかりではなく、開放空間で自然環境に晒されている植物の状態を検知するためには、植物自体の温度や乾湿状態に係るパラメータを計測することが必要となる。
【0006】
このような開放空間での植物の状態のセンシングをフィールドで行う場合に課題となるのが、センサー用の電源やリード線、およびデータ取得のために設置する機器類であるが、フィールドワークにおいては制約があることが多い。このため、フィールドでセンシングを行うことを可能とするような、電源の必要のないパッシブ型センサーによるワイヤレスセンシング法が必要となる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、植物の生育中の動的挙動や植物自体の温度や乾湿状態に係るパラメータをワイヤレスで計測することができる、RFIDタグおよび植物用のパッシブ型RFIDタグセンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
植物は、重力や光などの外部刺激によって、屈曲や伸長する方向を絶えず変化させながら成長している。屈性には、刺激の来る方向へ向かう正の屈性と、刺激の来る方向から遠ざかる負の屈性とがある。重力屈性は、重力によって引き起こされる屈性で、植物の茎は重力とは逆向きの方向に屈曲する負の重力屈性を示す。光屈性は、光によって引き起こされる屈性で、植物の茎や葉は、光の方向へ屈曲する光屈性を示す。
【0009】
植物体のセンシングのためには、上記のような植物の動的挙動を阻害しないようなセンシング手法が必要となる。センサーへの電力供給やデータ取得のためのリード線等は、植物への束縛因子となってしまう。このため、小型軽量のパッシブ型無線給電で動作するパッシブ型RFIDタグセンサーを用いたワイヤレスセンシングが有効な手段となる。
【0010】
第1の本発明に係るRFIDタグは、環状の開口を有する導体パターンと、前記開口の近傍で、前記導体パターンと電気的に接続されたICチップを有するインピーダンス整合部と、前記インピーダンス整合部から第1方向および第2方向に延伸する放射導体からなるアンテナ部と、前記アンテナ部に結合した、貫通孔を有する複数の中空リングとを備え、前記中空リング内に植物体を保持可能であり、前記中空リング内を前記植物体が動けるよう構成されていることを特徴とする。
【0011】
第2の本発明に係るRFIDタグは、絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの表面に設けられ、環状の開口を有する導体パターンと、前記開口の近傍で、前記導体パターンと電気的に接続されたICチップを有するインピーダンス整合部と、前記インピーダンス整合部から第1方向および第2方向に延伸しており、前記絶縁フィルムを介して連結されている複数の放射導体小片から成るアンテナ部とを備え、植物体に装着したとき、前記絶縁フィルムの伸縮によって、前記植物体が動けるよう構成されていることを特徴とする。
【0012】
第1および第2の本発明に係るRFIDタグは、前記放射導体および各放射導体小片の幅が、0.01mm以上2mm以下であることが好ましい。
【0013】
第1の本発明に係るRFIDタグは、2個以上の前記中空リングが、前記アンテナ部に結合していることが好ましい。
【0014】
第2の本発明に係るRFIDタグは、前記アンテナ部が、前記絶縁フィルムを介して連結されている4個以上の前記放射導体小片から成ることが好ましい。
【0015】
第2の本発明に係るRFIDタグは、前記絶縁フィルムの厚さが、0.01μm以上1000μm以下であることが好ましい。
【0016】
第1の本発明に係る植物用のパッシブ型RFIDタグセンサーは、第1の本発明に係るRFIDタグを有し、前記インピーダンス整合部の前記ICチップからの温度コードによって、前記中空リング内に保持された前記植物体の温度を検知可能、および/または、前記インピーダンス整合部の前記ICチップからのセンサーコードSによって、前記中空リング内に保持された前記植物体の乾湿状態を検知可能、および/または、前記インピーダンス整合部の前記ICチップからのRSSIの値によって、前記中空リング内に保持された前記植物体の動きを検知可能に設けられていることを特徴とする。
【0017】
第2の本発明に係る植物用のパッシブ型RFIDタグセンサーは、第2の本発明に係るRFIDタグを有し、前記インピーダンス整合部の前記ICチップからの温度コードによって、装着した前記植物体の温度を検知可能、および/または、前記インピーダンス整合部の前記ICチップからのセンサーコードSによって、装着した前記植物体の乾湿状態を検知可能、および/または、前記インピーダンス整合部の前記ICチップからのRSSIの値によって、装着した前記植物体の動きを検知可能に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、植物の生育中の動的挙動や植物自体の温度や乾湿状態に係るパラメータをワイヤレスで計測することができる、RFIDタグおよび植物用のパッシブ型RFIDタグセンサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)の(a)平面図、(b)断面図、(c)右端面図である。
図2】本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ(形状B)の(a)平面図及び(b)断面図である。
図3】本発明の実施の形態1および2に関し、RFIDタグの特性の評価方法を示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)を装着した植物体の、(a)重力屈性前、(b)重力屈性前拡大図、及び(c)重力屈後における形状を示す斜視図である。
図5】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)を装着した植物体の、重力屈性における(a)垂直方向変位及び(b)変位速度の時間変化を示すグラフである。
図6】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)を装着した植物体の、重力屈性における(a)温度、(b)センサーコードS、(c)リーダーRSSI、及び(d)オンチップRSSIの時間変化を示すグラフである。
図7】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)を装着した植物体の(a)脱水前及び(b)脱水後における形状を示す斜視図である。
図8】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)を装着した植物体の、脱水過程における(a)垂直方向変位及び(b)変位速度の時間変化を示すグラフである。
図9】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)を装着した植物体の、脱水過程におけるセンサーコードSの時間変化(図中のa)、及び、比較例2に係る、既に乾燥状態にある竹串(非生物体)におけるセンサーコードSの時間変化(図中のb)を示すグラフである。
図10】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)を装着した植物体の、光屈性における(a)水平方向変位及び(b)変位速度の時間変化を示すグラフである。
図11】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)を装着した植物体の、光屈性における(a)温度、(b)センサーコードS、(c)リーダーRSSI、及び(d)オンチップRSSIの時間変化を示すグラフである。
図12】本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ(形状B)の、引張力と伸びとの関係を示すグラフである。
図13】本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ(形状B)を装着した植物体の、(a)重力屈性前(0分)、(b)重力屈性時(重力屈性開始後60分)及び(c)重力屈性時(重力屈性開始後120分)における形状を示す斜視図である。
図14】本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ(形状B)を装着した植物体の、重力屈性における(a)植物体温度と環境温度との差、(b)センサーコードS、(c)リーダーRSSI、及び(d)オンチップRSSIの時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向、ならびに、同一および等しいなどの用語には、実施形態の作用及び効果を損なわない程度のずれが許容される。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。
【0021】
本発明の実施の形態のRFIDタグは、UHF帯RFIDタグの構成要素である、ICチップを有するインピーダンス整合部と、アンテナ部とを備え、さらにRFIDタグは、植物に装着した場合に、植物の動的挙動を阻害しないような構造を有している。
次に、上記のRFIDタグの各要素を詳述する。
【0022】
[RFIDタグの構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)101の平面図及び断面図を示す。RFIDタグ(形状A)101は、環状の開口を有する導体パターン11に、ICチップ20が接続されたインピーダンス整合部10と、インピーダンス整合部10から第1方向および第2方向に延伸する放射導体からなるアンテナ部12と、アンテナ部12に結合した貫通孔を有する複数の中空リング30とを備え、中空リング30内に植物体を保持することができ、中空リング30内を植物体が動ける構造となっている。
【0023】
図1のRFIDタグ(形状A)101では、6個の中空リング30が示されているが、中空リング30の数、大きさ、および幅は、RFIDタグ101を装着する植物体の形体にあわせたものであればよく、限定されない。また、中空リング30の形状も、真円である必要はなく、装着する植物体の形体にあわせたものであればよく、楕円や多角形を含む様々な形状が適用でき、限定されない。
【0024】
図1のRFIDタグ(形状A)101で示される中空リング30は、閉じたリング状構造となっているが、中空リング30内に植物を保持し、植物体が動ける構造であればよく、植物体に装着するために開閉や変形が可能な切り欠きを有する中空構造や、植物体に装着した後に張り合わせて中空構造となるようなものでもよく、限定されない。
【0025】
図1の導体パターン11の開口の形状は、X軸方向に平行な一対の長辺と、Y軸方向に平行な一対の短辺とを有する略四辺形となっている。しかし、開口の形状は、図1の形態に限られず、例えば、X軸方向に平行な一対の短辺と、Y軸方向に平行な一対の長辺とを有する略四辺形でもよい。略四辺形には、完全な四辺形が含まれてもよい。“略”とは、角又は辺が丸みを帯びていることを表す。四辺形には、長方形、ひし形、平行四辺形、正方形が含まれてもよい。開口の形状は、四辺形以外の多角形、円形、楕円形でもよい。
【0026】
RFIDタグを貼り付けた植物体が動ける構造としては、図2に示す本発明の実施の形態2に係わるRFIDタグ(形状B)102の構造も考えられる。RFIDタグ(形状B)102のアンテナ部12は、絶縁フィルム31を介して接続されている複数の放射導体小片13から成り、絶縁フィルム31の伸縮によって、RFIDタグ(形状B)102を貼り付けた植物体が動ける構造となっている。
【0027】
図1の導体パターン11およびアンテナ部12の材質は、特に限定はされないが、導電性を有する導体から形成され、例えば、アルミニウム、銅、金、白金、銀、ニッケル、クロム、亜鉛、鉛、タングステン、鉄等の金属であってもよい。導体パターン11およびアンテナ部12の材質は、図1(b)に示すように、酸化スズもしくはITO(酸化インジウムスズ)等の金属酸化物層、金、銀もしくは銅等の金属ナノワイヤーを用いた導電層、および樹脂に金属粉や導電性カーボン材料を混合した導電性樹脂混合物や導電性樹脂層が、絶縁膜14上に形成されたものであってもよい。導体パターン11およびアンテナ部12の導体部の厚さは、柔軟性、強度の観点から、0.01~1000μmが好ましく、1~100μmがより好ましい。
【0028】
図1(b)に示す絶縁膜14の材質は、特に限定はされないが、例えば、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化樹脂共重合体、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ樹脂、ノルボルネン樹脂、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリアセタール等の樹脂基材や、紙基材等、紙フェノール基材、紙エポキシ基材、ガラスコンポジット基材、ガラスエポキシ基材等の複合基材等が挙げられる
【0029】
図3は、本発明の実施の形態1および2に関し、UHF帯RFIDタグの特性の測定方法を示す概念図である。測定装置70は、RFIDリーダ・ライタ71と、RFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72とを有する。通信距離CLは、アンテナ72の表面と植物体40に装着したRFIDタグ73のICチップ20との間の距離として計測される。植物体40は、植物体40の茎の直径よりやや大きめの小穴を有したサンプル管スクリューキャップ75の小穴を通して、水を満たしたサンプル管瓶74に差し込まれ、サンプル管スクリューキャップ75の小穴からサンプル管瓶74の間の植物体40の茎を取り巻き、サンプル管スクリューキャップ75の小穴からの漏水を防ぐよう設けられた水耕栽培用スポンジ76によって保持される。
【0030】
本発明の実施の形態1および2のRFIDタグ101、102が適用可能な植物体40の種類は、特に限定はされないが、ここでは、エンドウの芽生えである豆苗を用いて、RFIDタグ101、102の特性について述べる。
【0031】
[RFIDタグ(形状A);植物体の重力屈性の測定]
図4は、本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)101の、植物体40に装着した使用状態の(a)重力屈性前、(b)重力屈性前拡大図、及び(c)重力屈性後における形状を示す模式図である。RFIDタグ(形状A)101の中空リング30によって、植物体40の茎を保持し、図4(b)で示すように、植物体40の茎の先端部と、RFIDタグ(形状A)101のアンテナ部12の片端とを、サージカルテープ32(厚さ8μm)を巻きつけて固定した。これによって、植物体40の屈曲や伸長成長によって、植物体40の茎は中空リング30の内部を動くことができる。
【0032】
図4(a)の状態にあった植物体40は、重力とは逆向きの方向に屈曲する負の重力屈性および伸長成長によって、図4(c)で示すような、屈曲した形状となった。RFIDタグ(形状A)101は、植物体40の屈曲や伸長成長に追従して屈曲および移動でき、植物体40の近傍に設置したICチップ20の情報を、RFIDリーダ・ライタ71に送信する。
【0033】
図5は、本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)101に関し、植物体40の重力屈性における垂直方向変位および変位速度の時間変化を示すグラフである。重力屈性の観測は、空調室に設置した暗箱内で行った。植物体(エンドウの芽生えである豆苗)40の茎の重力屈性を、暗箱中でタイムラプスカメラによって撮影し、その映像における植物体40の茎の先端部付近の動きを、動作解析ソフトによって軌跡解析することで、垂直方向変位および変位速度の時間変化を求めた。
【0034】
図5(a)の垂直方向変位においては、150分付近までの増加傾向を示し、それ以降は若干の減少はあるものの、ほぼ一定となっている。これは、植物体40の重力屈性は、略150分の時点で完了していることを示す。図5(b)の変位速度においては、80分前後のところでピークを示しており、それ以降は減少して0に近い値となっている。ここで、図5(b)で示す変位速度は、垂直方向変位に加えて水平方向変位も含む値としている。
【0035】
図6は、本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)101を装着した植物体40の重力屈性における、RFIDタグ(形状A)101により得られた(a)温度、(b)センサーコードS、(c)リーダーRSSI,及び(d)オンチップRSSIの時間変化を示すグラフである。或る種のICチップ(例えば、ICチップ20)は、温度計測機能を有しており、ICチップにより計測された温度は、温度コードとしてRFIDリーダ・ライタ71に送信される。温度コード、IC固有のパラメータ、および換算式とから、図6(a)の温度を得た。
【0036】
センサーコードSは、UHF入力で観測したRFIDタグ101のインピーダンスに関わる値である。RFIDタグ101のインピーダンス整合部10は、ICチップ20と略四辺形の開口を有する導体パターン11とからなるループ回路を形成しており、開口の形状や大きさ等を調整して、複素インピーダンスの虚部(リアクタンス)を制御することで、アンテナ部12とICチップ20との間での信号の入出力におけるインピーダンス整合を担っている。インピーダンス整合部10のインピーダンス値は、周囲環境の影響を受け変動するが、或る種のICチップ(ICチップ20)は、ICが信号を受信するのに最適なインピーダンス値にオートチューニングする機能を有しており、インピーダンスのオートチューニングに係る値を、センサーコードSとして、RFIDリーダ・ライタ71に送信する。
【0037】
センサーコードSの値は、RFIDタグ101のインピーダンス整合部10がフリースペース(空気中)にある場合には、250前後の値であり、インピーダンス整合部10が、誘電率の大きな水分を多量に含む物質に接触した場合には減少し、水滴等に接触した場合には、10前後の値となる。
【0038】
リーダーRSSI(Received Signal Strength Indicator)は、RFIDリーダ・ライタ71がRFIDタグ101から受信している電力に関わる値であり、オンチップRSSIは、RFIDタグ101がRFIDリーダ・ライタ71から受信している電力に関わる値である。これらの値は、インピーダンス整合部10とICチップ20の内部インピーダンスとの値が同等であるようなインピーダンス整合が取れている条件下ほど大きくなる。誘電率の大きな水の影響が大きいほど、インピーダンス整合条件を満たすことが難しくなり、RSSIの値は小さくなる。
【0039】
図6(a)において、植物体40の重力屈性が完了する略150分までの時間領域においては、温度の減少が示されている。植物体の重力屈性という動的挙動においては植物組織の膨圧の変化が係わっており、その駆動力の一つとしては植物組織内の水流速度の変化が挙げられる。重力屈性時に、水を満たしたサンプル管瓶74から植物体40への水流が増加することで、図6(a)に示されるような植物体40の温度の低下が起こる。このように、温度センシング機能を有するICチップ20を備えたRFIDタグ101を、植物体40に直接装着することで、植物体40自体の温度変化を直接検知することが可能となる。
【0040】
開放空間においては、周囲の環境温度が植物体40の温度を反映していない場合があり、植物体40自体の温度変化を直接検知できることによって、植物体40の生育管理をより的確に行うことが可能となる。
【0041】
図6においては、植物体40の温度の低下とともに、センサーコードSの低下も起こっている(図6(b)参照)。センサーコードSの低下は、植物体40内に誘電率の大きな水がより取り込まれた状態になったことを意味しており、これは直物体40内の温度変化から示唆された水流速度の増加の傾向と合致している。このように、センサーコードSは、植物体40の乾湿状態を反映したパラメータとなっている。
【0042】
図6においては、RFIDリーダ・ライタ71がRFIDタグ101から受信している電力に関わる値であるリーダーRSSI、および、RFIDタグ101がRFIDリーダ・ライタ71から受信している電力に関わる値であるオンチップRSSIの値も、植物体40の重力屈性とともに低下している。リーダーRSSIおよびオンチップRSSIの値は、誘電率の大きな水の存在下で低下する。図6(a)の植物体40の温度および図6(b)のセンサーコードSの低下からは、植物体40内の水流の増加が示唆されるが、それとリーダーRSSIおよびオンチップRSSIの減少とは、一致した挙動となっている。
【0043】
[RFIDタグ(形状A);植物体の脱水に伴う屈曲の測定]
図7は、本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)101を装着した植物体(エンドウの芽生えである豆苗)40の、脱水前および脱水後における形状を示す模式図である。給水を行わない状態とした植物体40は、脱水よって60分後は図7(b)に示すような下方に屈曲した形状となる。
【0044】
図8には、植物体40の茎の脱水に伴う屈曲を、暗箱中でタイムラプスカメラによって撮影し、その映像における植物体40の茎の先端部付近の動きを、動作解析ソフトによって軌跡解析することにより得た、垂直方向変位および変位速度の時間変化を示した。図8に示されるように、脱水初期に速い変位が起こって、次第に変化がゆるやかになっている。
【0045】
このときに、植物体40に装着したRFIDタグ101が備えるICチップ20によって観測されたセンサーコードSの変化を図9のaのグラフに示したが、図8の変位および変位速度の結果の傾向と一致したものになっている。また、センサーコードSの値は、脱水初期に略155、60分後には略195という値となった。センサーコードSの値は、水が存在する誘電率の高い環境ほど低い値となる。また、このとき、比較試料として用いた乾燥状態にある竹串(非生物体)のセンサーコードSは、図9のbのグラフに示すように一定で、その値は略214であった。このように、植物体40に装着したRFIDタグ101が備えるICチップ20によって観測されるセンサーコードSの値によって、植物体40の乾湿状態を検知することができる。
【0046】
[RFIDタグ(形状A);植物体の光屈性の測定]
図10は、本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)101に関し、植物体40の光屈性における水平方向変位および変位速度の時間変化を示すグラフである。暗箱内に、植物体40の真横方向にLED光源を設置することで、植物体40の光屈性による水平方向への変位を観測した。100分間の間に、連続的な水平方向の変位が起こっており、変位速度においては、60分付近にピークが表れている。
【0047】
図11は、本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)101を装着した植物体40の光屈性における(a)温度、(b)センサーコードS、(c)リーダーRSSI,および(d)オンチップRSSIの時間変化を示すグラフである。図11(a)の植物体40の温度においては、図10の水平方向変位のグラフと同様な連続的な変化が示されており、その変化方向は温度低下であることから、重力屈性の場合と同様な、屈性時の植物体40への水流の増加が起こっていることが示唆される。
【0048】
センサーコードS、リーダーRSSI、およびオンチップRSSIにおいては、図10(b)の変位速度がピークとなる60分前後の時間帯に、急激な減少が起こっている。植物体40の光屈性においては、植物体40の組織からの水の蒸散が重力屈性の場合よりも顕著であり、その影響が、センサーコードS、リーダーRSSI、およびオンチップRSSIの変化に現れている。
【0049】
[RFIDタグ(形状B);植物体の重力屈性の測定]
植物体に、図2に示すRFIDタグ(形状B)102を装着して、植物体(エンドウの芽生えである豆苗)40の重力屈性のワイヤレスセンシングを行った。RFIDタグ(形状B)102は、絶縁フィルム31と、環状の開口を有する導体パターン11にICチップ20が接続されたインピーダンス整合部10と、インピーダンス整合部10から第1方向および第2方向に延伸するアンテナ部12とを備えている。アンテナ部12は、絶縁フィルム31を介して接続されている複数の放射導体小片13から成り、絶縁フィルム31の伸縮によって、RFIDタグ(形状B)102を貼り付けた植物体40が動ける構造となっている。
【0050】
放射導体小片13の材質は、特に限定はされないが、RFIDタグ(形状A)101の環状の開口を有する導体パターン11およびアンテナ部12の材質と同様なものが挙げられる。
【0051】
絶縁フィルム31の材質は、特に限定はされないが、例えば、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化樹脂共重合体、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ樹脂、ノルボルネン樹脂、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリアセタール等の樹脂基材や、紙基材等、紙フェノール基材、紙エポキシ基材、ガラスコンポジット基材、ガラスエポキシ基材等の複合基材等が挙げられる。可撓性の観点からは、樹脂や紙基材などが好ましく、伸縮性の観点からは、ポリウレタン(PU)フィルムやエラストマーフィルムなどがより好ましい。絶縁フィルム31の厚さは1μm以上1000μm以下であることが好ましく、8μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0052】
図12は、図2で示されるRFIDタグ(形状B)102(放射導体小片13:銅テープ、幅W1=略1mm、厚さ略50μm、絶縁フィルム:ポリウレタンフィルム、厚さ略8μm)の、引張力と伸びとの関係を示すグラフである。RFIDタグ(形状B)102は、0.02Nの引張力で1.0mm以上の伸びを示し、植物体40に装着しても、植物体40の屈曲や伸長成長の阻害が起こりづらい構造となっている。
【0053】
図13は、本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ(形状B)102を装着した植物体40の(a)重力屈性前(0分)、(b)重力屈性時(重力屈性開始後60分)及び(c)重力屈性時(重力屈性開始後120分)における形状を示す模式図である。RFIDタグ(形状B)102の放射導体小片13にスポット状に粘着剤を塗布し、植物体40に直接貼付することで、植物体40へRFIDタグ(形状B)102を装着した。このとき、植物体40の先端方向のRFIDタグ(形状B)102の片端を、サージカルテープ32を巻きつけることで植物体40に固定した。
【0054】
図13に示されるように、極薄のポリウレタンフィルムで連結された放射導体小片13からなるRFIDタグ(形状B)102を、植物体40に直接貼付した場合においても、植物体40は重力屈性を示した。これは、RFIDタグ(形状B)102が、極薄のポリウレタンフィルム(厚さ略8μm)の伸縮性によって、図12に示されるように非常に小さな力でも伸びが可能な構造となっているためである。
【0055】
図14は、本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ(形状B)102を装着した植物体40の重力屈性における(a)植物体温度と環境温度との差、(b)センサーコードS、(c)リーダーRSSI,および(d)オンチップRSSIの時間変化を示すグラフである。植物体40の温度は、周囲の環境温度よりも低くなっており、重力屈性が起こる100分前後までの時間帯では、ゆるやかに減少した。
【0056】
植物体40の重力屈性の進行によって、放射導体小片13を連結している極薄のポリウレタンフィルムが伸びることで、アンテナ部12として機能している放射導体小片13の間の距離が増加し、受信および送信される信号強度が減少するために、リーダーRSSIおよびオンチップRSSIは、植物体40の重力屈性とともに減少を示す。
【0057】
植物体40の重力屈性の進行によって、放射導体小片13をつないでいる極薄のポリウレタンフィルムが伸びることで、アンテナ部12全体の面積において、放射導体小片13の面積に対して、低インピーダンスのポリウレタンフィルムの面積の比が大きくなることから、図14bに示されるように、センサーコードSの増加が起こる。
【0058】
本発明により、植物自体の温度や乾湿状態に係るパラメータや、植物の生育中の屈性や伸長成長等の動的挙動をワイヤレスでセンシングするための、植物用のRFIDタグおよびパッシブ型RFIDタグセンサーを提供できる。
【0059】
[具体例]
次に、本発明の実施の形態の具体的な実施例及び、比較例について説明する。本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。なお、具体例で使用した材料および装置は、以下のとおりである。
【0060】
[材料]
(1)ICチップ20:AXZON社製;Magnus-S3、サイズ 1.6 BSC×1.6 BSC、厚さ 0.35mm。
(2)UHF帯RFIDタグ:Avery Dennison Smartrac社;Temperature Sensor Dogbone、ICチップ:Axzon Magnus-S3、周波数帯:UHF 860-960MHz、ICチップ:ICチップ20(Magnus-S3)。
(3)アルミ蒸着PETシート:ケニス製;厚さ0.05mm。
(4)銅テープ:3M製;導電性片面銅箔テープ Cu-35C、軟質圧延銅箔、厚さ略0.035mm、導電性粒子分散アクリル系粘着剤。
(5)薄型フィルムドレッシング:日東電工株式会社製;ポリウレタンフィルム、パーミロールLite、厚さ8μm。
(6)接着剤:セメダイン株式会社製;BBX、弾性粘着剤
(7)透明チューブ:住友電工ファインポリマー製:スミチューブC4C、4mm
(8)伸縮性銀ペースト:NAMICS社製;XE181G
(9)サンプル管:マルエム製;スクリュー管瓶 30mL 透明、サンプル管瓶 硼珪酸ガラス、サンプル管スクリューキャップ ポリプロピレン
(10)水耕栽培用スポンジ:uxcell製;水耕栽培スポンジ シリンダー、サイズ25mmφ×20mm。
【0061】
[装置]
(11)UHF帯RFIDリーダ・ライタ:タカヤ株式会社製;UTR-S201、特定小電力無線局タイプ、送信周波数 916.8MHz~923.2MHz(18チャンネル)、送信出力 10dBm(10mW)~24dBm(250mW)、インターフェース USBインターフェース基板TR3-IF-U1C。
(12)UHF帯外付けアンテナ(直線偏波型):タカヤ株式会社製;UTR-UA1709-1。
(13)デジタルフォースゲージ:株式会社イマダ製;センサー付け替え可能表示器eZT。
(14)デジタルフォースゲージ用ロードセル:株式会社イマダ製;圧縮・引張両用ロードセル eDPU-2N、最大荷重 2N。
(15)熱電対温度計:グラフテック製;mini LOGGER GL240。
(16)温度センサー:理化工業株式会社製;ST-51-100-C、K熱電対。
(17)タイムラプスカメラ;Brinno製;TLC200Pro。
(18)白色LED:ジェネリックLED社;3W、色温度4500K。
【0062】
[ソフトウェア]
(19)UHF帯RFIDリーダ・ライタ用ソフトウェア:タカヤ株式会社製;UTRRWManager Version1.3.2。
(20)UHF帯RFIDリーダ・ライタ用自作ソフトウェア:タカヤ株式会社UTR通信プロトコルver1.15とシリアルポート制御モジュールEasyCommとを用いて、Microsoft Excelから、RFIDリーダ・ライタの制御およびデータ取得を行った。ICチップ20(Magnus-S3)からのリーダーRSSIの取得は、タカヤ株式会社UTR通信プロトコルに従って行った。ICチップ20(Magnus-S3)からのセンサーコードSの取得は、RFmicron社の資料(AN002F40:Reading Magnus(登録商標)-S Sensors)で公開されている、メモリーバンク(RESERVED)、ワードアドレス(C)、およびビット数(9)の情報に従って行った。
(21)動作解析ソフト;KINOVEA製;オープンソースの動作分析ソフトウェア Kinovea、https://www.kinovea.org/。
【実施例0063】
[RFIDタグ(形状A)101の作製]
図1に示すRFIDタグ(形状A)101を、以下のように作製した。
アルミ蒸着PETシートを、図1の形状Aの平面図の形に切り出した(L=90mm、LA1=略70mm、LA2=略20mm、LI=略10mm、W1=略1mm)。この時、環状の開口を有する導体パターン11のインピーダンス整合部10において、ICチップ20を取り付ける部分には、切り欠きを設けた。UHF帯RFIDタグからICチップ20が装着されたアルミニウム蒸着PET部分を矩形状に切り出して、その切り欠きを跨ぐように貼り付けた。
【0064】
UHF帯RFIDタグから切り出したICチップ20が装着された導体パターン11の表面を覆っている保護フィルムを剥離・除去し、アンテナ部12との接合部に銀ペーストを塗布することで、環状の開口を有する導体パターン11と電気的に接続した。
【0065】
次に、貫通孔を有する中空リング30として、複数個の透明チューブ(外形D1=略4mm、幅L2=略2mm)を、略30mmの間隔で、アルミ蒸着PETシートからなるアンテナ部12に弾性粘着剤で取り付けることで、図1に示すRFIDタグ(形状A)101を作製した。
【実施例0066】
[RFIDタグ(形状B)102の作製]
図2に示すRFIDタグ(形状B)102を、以下のように作製した。
UHF帯RFIDタグから、ICチップ20と環状の開口を有する導体パターン11とを備えるインピーダンス整合部10を切りだし(LI=略15mm)、表面を覆っている保護フィルムを剥離・除去した。インピーダンス整合部10を、厚さ8μmのポリウレタンフィルムの粘着面に貼り付けた。
【0067】
インピーダンス整合部10を貼付した厚さ8μmのポリウレタンフィルムの上に、銅テープ(L=80mm、幅W1=略1mm)を貼り付け、略5mmの間隔で銅テープ部分をカットすることで、図2に示すような放射導体小片13からなるアンテナ部12を作成した。インピーダンス整合部10と接触する放射導体小片13の接合部に銀ペーストを塗布することで、環状の開口を有する導体パターン11と電気的に接続した。さらに、その上に厚さ8μmのポリウレタンフィルムを貼り付け、矩形状(L=略80mm、LA1=略50mm、LA2=略30mm、W2=略3mm)に切り出し、ポリウレタンフィルムの粘着面の反対側の面を覆っている保護フィルムを剥離・除去することで、図2に示すRFIDタグ(形状B)102を作製した。
【実施例0068】
[RFIDタグ(形状A)101による植物の重力屈性の観察]
図3には、RFIDタグの特性の評価に用いた測定系の概念図を示した。測定装置70は、RFIDリーダ・ライタ71と、RFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72とを有する。アンテナ72の表面と、植物体40に装着したRFIDタグ73のICチップ20との間の距離を、通信距離CLとした。植物体40(豆苗の茎)の片端を、植物体40の茎の直径よりやや大きめの小穴を有したサンプル管スクリューキャップ75の小穴を通して、水を満たしたサンプル管瓶74に差し込んだ。植物体40の茎を水耕用栽培用スポンジ76で取り巻き、その水耕用栽培用スポンジ76をサンプル管スクリューキャップ75の内側に装着して、サンプル管スクリューキャップ75をサンプル管瓶74にねじ込むことで、サンプル管スクリューキャップ75の小穴からの漏水を防いだ。
【0069】
RFIDタグ(形状A)101の中空リング30に植物体40(豆苗の茎)を通し、図4(a)に示したような状態になるように、RFIDタグ(形状A)101を植物体40に装着して、特性評価を行った。このとき、図4(b)に示すように、豆苗の茎の先端方向のRFIDタグの片端を、ポリウレタンフィルム製のサージカルテープ32(厚さ8μm)で豆苗の茎に巻きつけて、粘着して固定した。先端部に固定した部分を除いて、RFIDタグの他の部分では、中空リング30の中を植物の茎が動くことができるので、RFIDタグの装着による植物の生長伸長や屈曲の阻害を極力低減することができる。図4(c)には、重力屈性後(120分後)の、RFIDタグ(形状A)101を装着した豆苗の茎の形状を示した。植物の重力屈性は、120分前後の時間で起こることが知られている。
【0070】
図5には、RFIDタグ(形状A)101を装着した植物体40(豆苗の茎)の重力屈性における垂直方向変位および変位速度の時間変化を示した。豆苗の茎の重力屈性の様子を、側面方向からタイムラプスカメラで撮影し、動作解析ソフトKinoveaを用いて、豆苗の茎の先端の軌跡解析を行うことで、垂直方向変位および変位速度の時間変化を求めた。
【0071】
図6には、RFIDタグ(形状A)101を装着した植物体40(豆苗の茎)の重力屈性における(a)温度、(b)センサーコードS、(c)リーダーRSSI、および(d)オンチップRSSIの時間変化を示した。このとき、通信距離CLは28cmとした。図5図6とを比較すると、両方とも略150分まで変化が継続して起こっており、その変化の度合いは、80分前後で最も大きくなっており、良い一致が示された。
【0072】
アンテナ72としては、直線偏波型のものを用いたが、円偏波型のものも、本発明の実施の形態のRFIDタグとの通信に用いることができる。円偏波型のアンテナを用いた場合には、直線偏波型のアンテナを用いた場合に比べて、通信距離はやや減少するが、RFIDタグに対して、より広い角度からの電波照射での通信が可能となる。
【0073】
[比較例1:中空リング30を有さないRFIDタグの場合]
RFIDタグ(形状A)101と同様な形状で、中空リング30を有さないRFIDタグを作成し、粘着剤によって植物体40(豆苗の茎)に直接貼り付けたところ、植物体40は重力屈性を示さなくなった。これは、植物体40に直接貼り付けたRFIDタグが伸縮性を有さないために、植物の生長伸長や屈曲の阻害が起こるためである。
【実施例0074】
[RFIDタグ(形状A)101による植物の脱水過程の観察]
前記の実施例3と同様に、RFIDタグ(形状A)101を植物体40(豆苗の茎)に装着して、水を満たしていない空のサンプル管瓶74に取り付けることで、植物体40の脱水過程における、RFIDタグ(形状A)101からの信号変化についての検討を行った。
【0075】
図7には、脱水前後での、RFIDタグ(形状A)101を装着した植物体40(豆苗の茎の形状の変化を示した。脱水によって豆苗の茎は萎れることで、図4(b)のように下方へ屈曲した。脱水過程を側面方向からタイムラプスカメラで撮影し、動作解析ソフトKinoveaを用いて、豆苗の茎の先端の軌跡解析を行うことで、垂直方向変位および変位速度の時間変化を求め、図8に示した。
【0076】
図9のaのグラフには、RFIDタグ(形状A)101を装着した植物体40(豆苗の茎)の脱水過程におけるセンサーコードSの時間変化を示した。このとき、通信距離CLは28cmとした。センサーコードSの値は、水が存在する誘電率の高い環境ほど低い値であるが、図9のaのグラフでは時間の経過とともに緩やかなセンサーコードSの値の増加がみられ、これは植物体40の脱水に伴う萎れによる植物体40の下方への屈曲挙動(図8(a)参照)の傾向と同様であった。
【0077】
[比較例2:非生物体にRFIDタグ(形状A)101を装着した場合]
既に乾燥状態にある竹串(非生物体)にRFIDタグ(形状A)101を装着した場合のセンサーコードSの時間変化を観測したところ、図9のbのグラフに示すように一定であった。
【実施例0078】
[RFIDタグ(形状A)101による植物体の光屈性の観察]
RFIDタグ(形状A)101を植物体40(豆苗の茎)に装着し、側面から白色LED光を照射することで、豆苗の茎の光屈性過程でのRFIDタグ(形状A)101からのパラメータの変化を観測した。RFIDタグ(形状A)101を装着した植物体40(豆苗の茎)は、実施例3と同様に、水を満たしたサンプル管瓶74に取りつけた。
【0079】
光屈性におけるRFIDタグ(形状A)101を装着した植物体40(豆苗の茎)の挙動を、上方からタイムラプスカメラで撮影し、動作解析ソフトKinoveaを用いて、豆苗の茎の先端の軌跡解析を行うことで、水平方向変位および変位速度の時間変化を求め、図10に示した。
【0080】
図11には、RFIDタグ(形状A)101を装着した植物体40(豆苗の茎)の光屈性における(a)温度、(b)センサーコードS、(c)リーダーRSSI,および(d)オンチップRSSIの時間変化を示した。このとき、通信距離CLは23cmとした。図10図11とを比較すると、どちらの場合も、60分前後で最も大な変化が観測され、一致した挙動となった。
【実施例0081】
[RFIDタグ(形状B)102の特性評価]
図12には、RFIDタグ(形状B)102の引張力と伸びとの関係を示した。RFIDタグ(形状B)102の、放射導体小片13が、極薄のポリウレタンフィルムで連結された構造からなるアンテナ部12は、0.02Nの引張力で1.0mm以上伸長するような伸縮性の高い構造となっている。
【0082】
図13には、RFIDタグ(形状B)102を装着した植物体40(豆苗の茎)の(a)重力屈性前(0分)、(b)重力屈性時(重力屈性開始後60分)、および(c)重力屈性時(重力屈性開始後120分)における形状を示した。RFIDタグ(形状B)102の放射導体小片13にスポット状に粘着剤を塗布し、植物体40に貼付することで、植物体40へのRFIDタグ(形状B)102の装着を行った。RFIDタグ(形状B)102は、伸縮性の高い構造となっているため、植物体40に直接貼付した場合においても、重力屈性が起こった。
【0083】
図14には、RFIDタグ(形状B)102を装着した植物体40(豆苗の茎)の重力屈性における(a)植物体温度と環境温度との差、(b)センサーコードS、(c)リーダーRSSI,および(d)オンチップRSSIの時間変化を示した。このとき、通信距離CLは10cmとした。熱電対温度計をRFIDタグ(形状B)102を装着した植物体40の近傍に設置することで、周囲の環境温度を測定し、植物体温度と環境温度との差を求めた。植物体40の重力屈性に伴う、RFIDタグ(形状B)102からの各パラメータの変化が観測された。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明において、温度や乾湿状態に係るパラメータを計測することのできる小型のICチップを備えたセンサーによって、植物の生育中の動的挙動や植物自体の温度や乾湿状態に係るパラメータをワイヤレスで計測するための、植物用のRFIDタグおよびパッシブ型RFIDタグセンサーを提供することができ、温度、湿度などの状態に分布のある開放空間型の植物工場での植物栽培管理等に、好適に利用できる。また、センサー用の電源やリード線、およびデータ取得のために設置する機器類等の利用が困難なフィールドにおいて、植物の生育状態のセンシングを行うために、好適に利用できる。
【0085】
以上、実施形態を説明したが、本発明の技術は上記の実施形態に限定されない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 インピーダンス整合部
11 導体パターン
12 アンテナ部
13 放射導体小片
14 絶縁膜
20 ICチップ
30 中空リング
31 絶縁フィルム
32 サージカルテープ
40 植物体
70 測定装置
71 RFIDリーダ・ライタ
72 (RFIDリーダ・ライタの)アンテナ
73 RFIDタグ
74 サンプル管瓶
75 サンプル管スクリューキャップ
76 水耕栽培用スポンジ
101、102 RFIDタグ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14