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特開2024-67660狭隘部外観検査装置および狭隘部外観検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067660
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】狭隘部外観検査装置および狭隘部外観検査方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/013 20060101AFI20240510BHJP
   G21C 19/02 20060101ALI20240510BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240510BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20240510BHJP
【FI】
G21C17/013
G21C19/02 090
G21C19/02 020
G03B15/00 L
G03B15/00 U
G03B17/56 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177902
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高草木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】大塚 翔太
(72)【発明者】
【氏名】高林 順一
【テーマコード(参考)】
2G075
2H105
【Fターム(参考)】
2G075AA03
2G075BA16
2G075CA07
2G075CA13
2G075DA20
2G075FA13
2G075FC03
2G075FC14
2G075GA08
2H105AA02
2H105AA11
2H105AA14
2H105EE05
2H105EE11
(57)【要約】
【課題】狭隘部における検査対象へのアクセスを可能とする。
【解決手段】実施形態によれば、狭隘部にある検査対象部の外観検査のための狭隘部外観検査装置100は、検査対象部に近接して設けられる近接動作部101とこれを制御する制御装置160を備える。近接動作部101は、カメラ111を有するヘッド部110と、ヘッド部110を一方の端部で支持し螺旋状のばねを内蔵する螺旋状のアーム部120と、アーム部120を収納し110ヘッド部を検査対象部に向けて移動させるためにアーム部120を送り出し可能なアーム送り機構130と、アーム送り機構130を支持する支持機構140とを具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
狭隘部にある検査対象部の外観検査のための狭隘部外観検査装置であって、
前記検査対象部に近接して設けられる近接動作部と、
前記近接動作部を制御する制御装置と、
を備え、
前記近接動作部は、
カメラを有するヘッド部と、
前記ヘッド部を一方の端部で支持し螺旋状のばねを内蔵する螺旋状のアーム部と、
前記アーム部を収納し前記ヘッド部を前記検査対象部に向けて移動させるために前記アーム部を送り出し可能なアーム送り機構と、
前記アーム送り機構を支持する支持機構と、
を具備することを特徴とする狭隘部外観検査装置。
【請求項2】
前記ヘッド部は、当該ヘッド部の自力走行を可能とする車輪および前記車輪を駆動する駆動モータを有することを特徴とする請求項1に記載の狭隘部外観検査装置。
【請求項3】
前記アーム送り機構は、
前記アーム部を巻き付け可能なボビンと、
前記アーム部の前記ボビンへの巻き付けおよび開放を行う巻取りモータと、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の狭隘部外観検査装置。
【請求項4】
前記ヘッド部は、当該ヘッド部が前記検査対象部に到達したことを検知する検知部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の狭隘部外観検査装置。
【請求項5】
前記ヘッド部は、前記検査対象部に洗浄水を注水する水噴射ノズルをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の狭隘部外観検査装置。
【請求項6】
前記検査対象部は、原子炉容器内に配されて原子炉に冷却水を注水する注水ヘッダと前記注水ヘッダに冷却水を導く注水ラインの前記原子炉容器の貫通部における前記原子炉容器内の狭隘部であることを特徴とする請求項1に記載の狭隘部外観検査装置。
【請求項7】
前記支持機構は、
前記アーム送り機構を支持する本体部と、
前記本体部を、前記注水ヘッダに固定する締め付け機構と、
を有することを特徴とする請求項6に記載の狭隘部外観検査装置。
【請求項8】
前記ヘッド部に接続する前記アーム部を収納した前記アーム送り機構を支持する状態の前記支持機構を、前記検査対象部の検査が可能な位置にアクセスさせる外部機構をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の狭隘部外観検査装置。
【請求項9】
前記近接動作部と、前記検査対象部に近接した位置にアクセスさせるための外部機器をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の狭隘部外観検査装置。
【請求項10】
カメラを有するヘッド部と、前記ヘッド部を一方の端部で支持し螺旋状のばねを内蔵する螺旋状のアーム部と、前記アーム部を収納し前記ヘッド部を検査対象部に向けて移動させるために前記アーム部を送り出し可能なアーム送り機構と、前記アーム送り機構を支持する支持機構と、を具備する狭隘部外観検査装置を用いて狭隘部にある前記検査対象部の外観検査のための狭隘部外観検査方法であって、
前記アーム送り機構により前記ヘッド部の前記検査対象部へ移動し、
前記ヘッド部が前記検査対象部に到達したことを検知したら前記ヘッド部を周方向に移動しながら外観検査を実施する、
ことを特徴とする狭隘部外観検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、狭隘部外観検査装置および狭隘部外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉(BWR)において、原子炉圧力容器(RPV)内に冷却水を注水、散布するために設けられた給水スパージャ、炉心スプレイライン等は、サーマルスリーブを介してRPVのノズルセーフエンドに取り付けられている。ノズル内面とサーマルスリーブ外面間の空隙は狭隘で、原子炉の冷却水が停滞しているため、最深部の空隙付根位置は腐食環境が厳しい状態となっている。このような腐食環境を考慮した疲労累積係数は、たとえば60年時点で許容値を上回ることが分かっている。許容値を超えた場合の対応は明確には規定されていないが、事前に保全策の確立が必要となる。保全策の策定にあたっては、欠陥の探傷や評価に関して具体的な検討が必要と考えられる。
【0003】
なお、空隙付根部までのアクセスが困難なことから、過去に供用期間中の検査実績はなく、洗浄のみ実施されていた。そのため、保全策の策定に向けてこれらの課題を解決していく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4262450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空隙付根部の健全性を確認する方法として、ノズル外面側からの超音波探傷法が挙げられるが、高線量環境下である上、超音波検査では採取されたエコーに関して形状エコーとの識別が困難である。このため、亀裂がかなり進展しないとそれを発見できない可能性があるという問題があった。このため、空隙付根部のような狭隘部の外観検査を可能性が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、狭隘部における検査対象へのアクセスを可能とする装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る狭隘部外観検査装置は、狭隘部にある検査対象部の外観検査のための狭隘部外観検査装置であって、前記検査対象部に近接して設けられる近接動作部と、前記近接動作部を制御する制御装置と、を備え、前記近接動作部は、カメラを有するヘッド部と、前記ヘッド部を一方の端部で支持し螺旋状のばねを内蔵する螺旋状のアーム部と、前記アーム部を収納し前記ヘッド部を前記検査対象部に向けて移動させるために前記アーム部を送り出し可能なアーム送り機構と、前記アーム送り機構を支持する支持機構と、を具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置の近接動作部の取り付け状態および構成を示す部分断面図である。
図3】第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置の近接動作部の取り付け状態および構成を示す図2のA-A矢視部分断面図である。
図4】第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置の近接動作部におけるアーム部の収納およびヘッド部の送り出しの状態を示す部分縦断面図である。
図5】第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置の近接動作部におけるアーム部の収納およびヘッド部の送り出しの状態を示す部分平断面図である。
図6】第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置の近接動作部のアーム部の構成を示す横断面図である。
図7】第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置の近接動作部のヘッド部の構成を示す平面図である。
図8】第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置の近接動作部のヘッド部の構成を示す図7のA-A矢視正面図である。
図9】第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置の近接動作部のヘッド部の変形例の構成を示す正面図である。
図10】第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置の近接動作部のアーム送り機構と支持機構との結合部を示す平面図である。
図11】第1の実施形態に係る狭隘部外観検査方法の手順を示すフロー図である。
図12】第2の実施形態に係る狭隘部外観検査装置の近接動作部のヘッド部の構成を示す正面図である。
図13】第3の実施形態に係る狭隘部外観検査装置の近接動作部のヘッド部の構成を示す正面図である。
図14】第4の実施形態に係る狭隘部外観検査装置の近接動作部のアーム部の構成を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る狭隘部外観検査装置および狭隘部外観検査方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0010】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置100の構成を示すブロック図である。
【0011】
狭隘部外観検査装置100は、図2および図3を引用しながら後述するような狭隘部に位置する検査対象部1の検査を可能とする。狭隘部外観検査装置100は、検査対象部1の近傍に設置されて検査を実施する近接動作部101と、近接動作部101を検査対象部1の近傍に移動する外部機器150と、近接動作部101の各要素を制御する制御装置160を有する。
【0012】
近接動作部101は、ヘッド部110、アーム部120、アーム送り機構130、および支持機構140を有する。
【0013】
ヘッド部110は、検査対象部1にアクセスして、検査対象部1の画像を採取する検査実施の部分である。ヘッド部110は、カメラ111、到達検知部112、カメラ111を収納する筐体113,筐体113に取り付けられた複数の車輪114,および複数の車輪114の少なくとも一部を駆動する駆動モータ115を有する。
【0014】
アーム部120は、ヘッド部110を移動させる支持部である。アーム部120は、長手方向に延びており、その第1の端部がヘッド部110に接続され、ヘッド部110を支持する。アーム部120は、ばね121、ケーブル類122,およびこれらの外側を覆う被覆123を有する。
【0015】
アーム送り機構130は、アーム部120の第2の端部と結合し、アーム部120を収納するとともに、ヘッド部110を検査対象部1にアクセスさせる場合に、アーム部120を外側に押し出す。アーム送り機構130は、アーム部120を巻き付けるボビン131,ボビン131を正逆方向に回動させる巻取りモータ132、ボビン131を収納する筐体133,および筐体133に設けられたガイド部134を有する。
【0016】
支持機構140は、近接動作部101を、検査対象部1の近傍に固定するための支持部である。支持機構140は、アーム送り機構130を支持する本体部141と、本体部141を、たとえばリングヘッダなど、検査対象部1の近傍の構造物に固定するための機構である。
【0017】
外部機器150は、近接動作部101を移送するための移送装置151と、ケーブル類152を有する。
【0018】
制御装置160は、入力部161、停止判定部162、データ収納部163、および出力部164を有する。制御装置160は、外部機器150の近傍に設置される。制御装置160は、外部機器150と一体であってもよい。なお、放射線や温度等の環境が許す場合は、近接動作部101と一体に設けられてもよい。入力部161および出力部164は、双方向に会話可能なシステム、ユーザインターフェース等であってもよい。
【0019】
図2は、第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置100の近接動作部101の取り付け状態および構成を示す部分断面図である。また、図3は、第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置100の近接動作部101の取り付け状態および構成を示す図2のA-A矢視部分断面図である。
【0020】
まず、狭隘部外観検査装置100を適用する対象として例にとって図2および図3で示すRPV内冷却水供給部20の検査対象部1について説明する。ここで、RPV内冷却水供給部20は、たとえば、沸騰水型原子炉(BWR)において、原子炉圧力容器10(RPV)内に冷却水を注水、散布するために設けられた給水スパージャ、炉心スプレイライン等である。図2および図3は、原子炉圧力容器10の内部に設けられリングヘッダ21と、原子炉圧力容器10の外側からリングヘッダ21への冷却水供給ラインが原子炉圧力容器10を貫通する部分を示している。リングヘッダ21は、原子炉圧力容器10内に冷却水を散布するために設けられた複数のノズルを有する。
【0021】
原子炉圧力容器10には、原子炉圧力容器10の円筒部分であるRPV胴板11から外部に突出するように円筒状のRPVノズル12が設けられている。
【0022】
RPVノズル12の先端には、RPVノズル12と冷却水供給ラインとを接続するためのセーフエンド13が設けられている。セーフエンド13は、それぞれ円筒状の、ノズルとの接続部13a、サーマルスリーブとの接続部13b、および外部配管との接続部13cを有する。
【0023】
サーマルスリーブ22は、セーフエンド13のサーマルスリーブとの接続部13bと、リングヘッダ21とを接続する。サーマルスリーブ22は、直管部22aおよびレデューサ22bを有する。サーマルスリーブ22の外側表面とRPVノズル12の内側表面との間、およびサーマルスリーブ22の外側表面とセーフエンド13のノズルとの接続部13aの内側表面との間、およびセーフエンド13のズルとの接続部13aとサーマルスリーブとの接続部13bとの間には、それぞれ環状空隙部20aが形成されている。
【0024】
狭隘部としての検査対象部1は、この環状空隙部20aに面する面であり、特に、環状空隙部20aの最も奥にあるセーフエンド13までを含んでいる。なお、図2および図3に示す場合は、環状空隙部20aの径方向の幅は、10mm程度のオーダーである。
【0025】
次に、狭隘部外観検査装置100の近接動作部101の設置状態について説明する。
【0026】
図2および図3では、近接動作部101のアーム送り機構130と支持機構140を示している。
【0027】
支持機構140は、本体部141および締め付け機構142を有する。本体部141は、上下に分割された上半部と下半部に分割されている。上半部と下半部は、リングヘッダ21を挟んで上下に配されている。締め付け機構142は、上半部および下半部のそれぞれとの結合部(図示せず)と、結合部を介して上半部および下半部がリングヘッダ21を締め付けるように駆動する電動機(図示せず)を有する。
【0028】
図4は、第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置100の近接動作部101におけるアーム部120の収納およびヘッド部110の送り出しの状態を示す部分縦断面図である。また、図5は、第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置100の近接動作部101におけるアーム部120の収納およびヘッド部110の送り出しの状態を示す部分平断面図である。
【0029】
図5に示すように、アーム送り機構130の、ボビン131は円柱状であり、アーム部120が巻き付けられる部分である。ボビン131は、駆動軸131aを介して巻取りモータ132に連結している。図5では直結している場合を例示しているが、ギア等を介して連結していてもよい。
【0030】
巻取りモータ132は、たとえば、ステップモータであり正逆いずれの方向にも回動可能である。なお、巻取りモータ132は、たとえば直流モータを用いギアで減速するなど、他の方式であってもよい。
【0031】
筐体133は、ボビン131を収納する。筐体133は、駆動軸131aを回転可能に支持する。図4に示すように、筐体133は、ボビン131にアーム部120が巻き付けられた状態で、巻き付けられた破線で示すアーム部120の径方向外側に、ギャップを介して、その内面が対向する円筒状の円筒部133aを有する。また、筐体133には、アーム部120を通過させその方向を決めるガイド部134が形成されている。
【0032】
円筒部133aの内表面およびアーム部120の外表面は、それぞれ、互いの接触時の摩擦力を低く抑えるような材料となっている。また、少なくとも一方には、かじり防止、摩擦力低減のための仕上げ加工が施されていてもよい。
【0033】
図1に示した様に、アーム部120は、ばね121(図6)を有する。ばね121は、ラセン状のコイルばねである。アーム部120に外力を加えずばね121の自由な状態においては、アーム部120の内径は、サーマルスリーブ22の各部の外径のうちの最小外径より小さい状態に形成されている。また、アーム部120の内径は、この最小外径にできる限り近い径であることが好ましい。その理由は、サーマルスリーブ22の外表面に沿ってヘッド部110を移送する際に、アーム部120のばね121によるサーマルスリーブ22の外表面の締め付けによる摩擦抵抗が小さくなるためである。
【0034】
ばね121のこのような自由な状態における外径のため、ボビン131にばね121を巻き付ける際は、巻取りモータ132が巻取方向に回動し、かつ、ボビン131にばね121が巻き付いた状態で停止状態を維持する。以下では、巻取方向を正方向、その逆回動方向を逆方向と言う。
【0035】
一方、図4および図5において、破線で示すヘッド部110および2点鎖線で示すアーム部120は、ヘッド部110を検査対象部1に向かって移動させる状態を示している。この状態においては、巻取りモータ132は、逆方向に順次回動し、巻取状態を維持しながらも、アーム部120を順次開放している。このため、アーム部120は、ガイド部134を経由して外側に押し出され、ヘッド部110を検査対象部1に向かって移動させる。
【0036】
また、後述するように、ヘッド部110は、車輪114および駆動モータ115を有し、自力走行が可能であることから、ヘッド部110の検査対象部1への移動をさらに確実にする。
【0037】
図6は、第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置100の近接動作部101のアーム部120の構成を示す横断面図である。
【0038】
アーム部120は、ばね121、複数のケーブル類122およびこれらを収納する被覆123を有する。ケーブル類122は、ヘッド部110の駆動モータ115用の動力線122a、カメラ111の照明用の動力線122b、および信号ケーブル122cを有する。信号ケーブル122cは、駆動モータ115への信号線、カメラ用の映像データの送信用ケーブル、到達検知部112からの検出信号ケーブル等を含む。
【0039】
被覆123は、その表面が接触する相手との間の摩擦係数が小さい材料である。また、表面に摩擦係数が小さくなるような処理が施されていてもよい。接触する相手としては、アーム送り機構130の筐体133の円筒部133aの内面、RPVノズル12、セーフエンド13およびサーマルスリーブ22の環状空隙部20a側の表面がある。
【0040】
図7は、第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置100の近接動作部101のヘッド部110の構成を示す平面図である。また、図8は、第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置の近接動作部のヘッド部の構成を示す図7のA-A矢視正面図である。
【0041】
ヘッド部110に接続されているアーム部120については図示を省略している。
【0042】
ヘッド部110は、図1に示したように、カメラ111、到達検知部112、筐体113、車輪114、駆動モータ115を有する。
【0043】
カメラ111は、筐体113の前面に設けられカメラ支持部113aにより支持されている。カメラ111は、中央に配されたレンズ111aと、レンズ111aの周囲に配され、レンズ111aの前面を照射する複数の照明111bを有する。カメラ111は、たとえばPTZカメラである。
【0044】
筐体113には、複数の車輪114が取り付けられている。図7では、車輪114が4つすなわち4輪車の場合を例にとって示しているがこれに限定されず、3輪車あるいは6輪車であってもよい。筐体113は、これらの車輪114を駆動する図示しない駆動モータ115および伝達装置を収納している。なお、駆動モータ115が停止中は、伝達機構は非結合状態、すなわち車輪114は駆動モータ115に連結していないものとする。
【0045】
図8の高さ方向、すなわち図8の上下方向が、環状空隙部20aの径方向に当たる。前述のように、環状空隙部20aの径方向の幅は、10mmのオーターである。ヘッド部110の高さ、すなわち筐体113に車輪114が設けられた以上のような構成の場合、その外形の高さ寸法は、環状空隙部20aの径方向の幅おり小さい寸法とすることは、十分に可能である。
【0046】
到達検知部112は、筐体113に取り付けられており、環状空隙部20aに面する検査対象部1の最も奥の部分に到達したことを検知する。検査対象部1の最も奥の部分は、本実施形態の例の場合は、セーフエンド13のノズルとの接続部13aとサーマルスリーブとの接続部13bとの間の凹部すなわちセーフエンド空隙付根部である。
【0047】
到達検知部112は、リミットスイッチである。リミットスイッチがセーフエンド空隙付根部と接触すると、リミットスイッチが作動し、制御装置160の停止判定部162が停止を判定し、アーム送り機構130の巻取りモータ132およびヘッド部110の駆動モータ115を停止させるとともに、出力部164がその旨を表示する。表示の際は作業員への注意喚起のために警報を発する等をしてもよい。
【0048】
図9は、第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置100の近接動作部101のヘッド部の変形例110aの構成を示す正面図である。この変形例においては、ヘッド部110aが、第1の実施形態とは異なる到達検知部112を有する。具体的には、第1の実施形態の到達検知部112がリミットスイッチ112aを用いているのに対して、本実施形態では、超音波距離計112bを用いている。
【0049】
図10は、第1の実施形態に係る狭隘部外観検査装置100の近接動作部101のアーム送り機構130と支持機構140との結合部を示す平面図である。
【0050】
支持機構140には凸部145が設けられている。アーム送り機構130の筐体133には、凸部145と係合する受け部135が形成されている。これにより、アーム送り機構130は支持機構140から取り外しが可能となっている。この結果、様々な径の部分に対応する支持機構140にアーム送り機構130を取り付けることができる。
【0051】
図11は、第1の実施形態に係る狭隘部外観検査方法の手順を示すフロー図である。
【0052】
狭隘部外観検査方法は、大きく、検査準備ステップS10、検査実施ステップS20、および検査後処理ステップS30を有する。以下、それぞれの内容を説明する。
【0053】
まず、検査準備ステップS10について説明する。
【0054】
検査準備ステップS10においては、まず、外部機器150を設置する(ステップS11)。たとえば、検査対象部1が、BWRの給水スパージャあるいは炉心スプレイライン等の場合は、外部機器150は、RPVの外側の運転床等に設置される。
【0055】
次に、近接動作部101の検査対象部1近傍への移送を行う(ステップS12)。詳細には、外部機器150の移送装置151が、近接動作部101を、検査対象部1近傍へ移送する。
【0056】
次に、検査対象部1の近傍への近接動作部101の固定が行われる(ステップS13)。詳細には、まず、移送装置151が、支持機構140を、検査対象部1の近傍の構造物に固定可能な位置まで移送する。すなわち、本体部141の上半部と下半部が、たとえばリングヘッダを挟むような位置まで、支持機構140を移送する。次に、締め付け機構142が、本体部141を締め付けて、本体部141が固定された状態とする。
【0057】
次に、検査実施ステップS20について説明する。
【0058】
検査実施ステップS20においては、まず、アーム送り機構130によるヘッド部110の検査対象部1への移動が行われる(ステップS21)。詳細には、制御装置160の出力部164が、アーム送り機構130の巻取りモータ132およびヘッド部110の駆動モータ115の動作指令を近接動作部101に出力する。
【0059】
出力部164からの動作指令を受けて、アーム送り機構130の巻取りモータ132が逆方向に回動し、この結果、ボビン131に強制的に巻き付けられていたアーム部120のばね121が開放される。この結果、ばね121は、筐体133の円筒部133aの内面まで広がり、円筒部133aの内面で径方向への広がりを阻止される。さらに広がろうとするばね121の開放力により、バネ121は筐体133の外側に向かって延びる。この結果、筐体133に収納されていたアーム部120は、ガイド部134を経由して、筐体133の外側に延びる。ばね121の自由状態の形状が、らせん状であるため、図4および図5に示したように、アーム部120の先端に取り付けられたヘッド部110は、サーマルスリーブ22の外表面に沿いながら、らせん状に環状空隙部20aの奥に向かって進む。
【0060】
また、ヘッド部110の駆動モータ115は、出力部164からの動作指令を受けて、車輪114を進行方向に駆動する。この結果、ヘッド部110が自力でも、サーマルスリーブ22の外表面に沿いながら、らせん状に環状空隙部20aの奥に向かって進む。
【0061】
次に、停止判定部162が、ヘッド部110が検査対象部1に到達したか否かを判定する(ステップS22)。詳細には、到達検知部112であるリミットスイッチ112aの動作信号が出力されたか否かを停止判定部162が判定する。
【0062】
停止判定部162により到達検知部112の動作信号が出力されたと判定されない場合(ステップS22 NO)は、ステップS21およびステップS22を繰り返す。
【0063】
停止判定部162により到達検知部112の動作信号が出力されたと判定された場合(ステップS22 YES)は、停止および注意喚起を行う(ステップS23)。詳細には、出力部164が、アーム送り機構130の巻取りモータ132およびヘッド部110の駆動モータ115の停止指令を近接動作部101に出力する。また、出力部164は、ヘッド部110が検査対象部1に到達したことを、試験員が認識できるような表示、あるいは警報等により注意喚起を行う。
【0064】
次に、ヘッド部を周回しながら外観検査を行う(ステップS24)。詳細には、まず、出力部164が、再度、アーム送り機構130の巻取りモータ132およびヘッド部110の駆動モータ115の起動指令を近接動作部101に出力する。なお、この際の巻取りモータ132および駆動モータ115の回転速度、あるいはギア比は、ヘッド部110の移動速度を、ステップS21における移動速度より遅い移動速度とする速度とを実現するものであってもよい。
【0065】
ヘッド部110が環状空隙部20aの最奥部の検査対象部1に到達している状態で、ヘッド部110を周方向に移動させながら、制御装置160のデータ収納部163は、ヘッド部110のカメラ111による映像データを集積する。検査対象部1が暗い場合は、出力部164は、カメラ111に付属する照明111bを点灯させる。なお、データ収納部163によるカメラ111の映像データの集積は、ステップS21のヘッド部110の検査対象部1への移動段階においても実施されてもよい。
【0066】
制御装置160の出力部164が、データ収納部163に収納された映像データに基づいて映像を、逐一表示する。
【0067】
ステップS24の外観検査を終了した後に、アーム送り機構はヘッドを回収する(ステップS25)。すなわち、出力部164が、アーム送り機構130の巻取りモータ132およびヘッド部110の駆動モータ115の停止を指令した後に、アーム送り機構130の巻取りモータ132に正方向(巻取方向)の回動を指示する。ヘッド部110の駆動モータ115は停止しているため、車輪114は空回り状態にある。このため、巻取りモータ132によるアーム部120の巻き取り時に、ヘッド部110の移動はスムーズであり負荷が低減される。
【0068】
以上の検査実施ステップS20の後に、検査後処置を行う(ステップS30)。検査後処置は、検査準備ステップS10の逆手順で、当該試験の実施前の状態に復帰する。
【0069】
以上のように、本実施形態によれば、狭隘部における検査対象部1へのアクセスが可能となる。
【0070】
[第2の実施形態]
図12は、第2の実施形態に係る狭隘部外観検査装置100の近接動作部101のヘッド部110bの構成を示す正面図である。
【0071】
ヘッド部110bは、ガイド部116をさらに有する。ガイド部116は、筐体113等が検査対象部1を傷つけないように検査対象部1を保護する。また、検査対象部1に付着するクラッドやスラッジ等を除去するために、ガイド部116の表面にはブラシあるいは研磨剤が設けられ、あるいはガイド部116の表面にはやすり状に形成されている。
【0072】
なお、本実施形態においては、到達検知部112として、超音波距離計112bが設けられている。
【0073】
以上のように、本実施形態によれば、検査対象部1の保護、および清浄状態の維持を図ることができる。
【0074】
[第3の実施形態]
図13は、第3の実施形態に係る狭隘部外観検査装置100の近接動作部101のヘッド部110cの構成を示す正面図である。
【0075】
本実施形態は、第1の実施形態の変形であり、本実施形態によるヘッド部110cは、水噴射ノズル117をさらに有する。
【0076】
また、アーム部120は、水噴射ノズル117に噴射用の水を供給する導水管(図示しない)をさらに収納する。また、外部機器150も、水噴射ノズル117に噴射用の水を供給する導水管(図示しない)および給水源(図示しない)をさらに有する。
【0077】
本実施形態によれば、水噴射ノズル117からの水流によって、水中に浮遊したクラッドやスラッジ等を検査対象部1から排除し、良好な状態で検査を実施することができる。
【0078】
[第4の実施形態]
図14は、第4の実施形態に係る狭隘部外観検査装置100の近接動作部101のアーム部120dの構成を示す横断面図である。
【0079】
本実施形態は、第1の実施形態の変形であり、アーム部120dにおいては、被覆123aが透明である。また、被覆123aの内側には、LEDチューブ124が設けられている。外部機器150のケーブル類152は、LEDチューブ124への電力供給ケーブルを含む。
【0080】
本実施形態によれば、アーム部120d全体が光源となることから、環状空隙部20a内の暗い箇所でも十分な照度で検査が可能となる。
【0081】
以上、説明した実施形態によれば、狭隘部における検査対象へのアクセスを可能とする装置および方法を提供することができる。
【0082】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1…検査対象部、10…原子炉圧力容器、11…RPV胴板、12…RPVノズル、13…セーフエンド、13a…ノズルとの接続部、13b…サーマルスリーブとの接続部、13c…外部配管との接続部、20…RPV内冷却水供給部、20a…環状空隙部、21…リングヘッダ、22…サーマルスリーブ、22a…直管部、22b…レデューサ、100…狭隘部外観検査装置、101…近接動作部、110、110a、110b、110c…ヘッド部、111…カメラ、111a…レンズ、111b…光源、112…到達検知部、112a…リミットスイッチ、112b…超音波距離計、113…筐体、113a…カメラ支持部、114…車輪、115…駆動モータ、116…ガイド部、117…水噴射ノズル、120、120d…アーム部、121…バネ、122…ケーブル類、122a…カメラ用ケーブル、122b…駆動モータ用ケーブル、122c…到達検知部用ケーブル、123、123a…被覆、124…LEDチューブ、130…アーム送り機構、131…ボビン、131a…駆動軸、132…巻取りモータ、133…筐体、133a…円筒部、134…ガイド部134…受け部、140…支持機構、141…本体部、142…締め付け機構、145…凸部、150…外部機器、151…移送装置、152…ケーブル類、160…制御装置、161…入力部、162…停止判定部、163…データ収納部、164…出力部
図1
図2
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図14