(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067662
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ころ軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/54 20060101AFI20240510BHJP
F16C 19/48 20060101ALI20240510BHJP
F16C 33/56 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
F16C33/54 Z
F16C19/48
F16C33/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177904
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】大村 佳子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀司
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA14
3J701AA24
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA52
3J701AA62
3J701AA72
3J701BA34
3J701BA44
3J701BA49
3J701BA50
3J701DA02
3J701DA05
3J701EA02
3J701EA14
3J701EA78
3J701FA01
3J701FA38
3J701FA44
3J701GA01
3J701XB03
3J701XB16
3J701XB26
(57)【要約】
【課題】保持器案内面の摩擦抵抗を抑制し、振動の低減および工数低減を図ることができるころ軸受を提供する。
【解決手段】ころ軸受1は、互いに軸方向に離れて対面する一対の環状部分6,6、およびこれら環状部分6,6の外径縁間に亘って円周方向の複数箇所に設けられた柱部7を有する保持器2と、この保持器2の各柱部7間のポケットPtに保持される複数のころ3とを備える。柱部7の外径部は、保持器軸方向に亘って凹形状となる凹部7aに設けられる。凹部7aの大きさA2は、柱部7の径方向肉厚t7の1%以上10%以下とし、且つ、保持器幅Wの0.1%以上である。また柱部7の外径部における径方向面取り寸法が、柱部7の径方向肉厚t7の50%を超える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに軸方向に離れて対面する一対の環状部分、およびこれら環状部分の外径縁間に亘って円周方向の複数箇所に設けられた柱部を有する保持器と、この保持器の各柱部間のポケットに保持される複数のころとを備えたころ軸受であって、
前記柱部の外径部は、保持器軸方向に亘って凹形状となる凹部に設けられ、この凹部の大きさは、前記柱部の径方向肉厚の1%以上10%以下とし、且つ、保持器幅の0.1%以上であるころ軸受。
【請求項2】
請求項1に記載のころ軸受において、前記柱部の外径部における径方向面取り寸法が、前記柱部の径方向肉厚の50%を超えるころ軸受。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のころ軸受において、内外輪のいずれか一方または両方を備えたころ軸受。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のころ軸受において、前記保持器は金属材料または非鉄金属材料から成るころ軸受。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のころ軸受において、前記保持器は浸炭材であり浸炭熱処理が施されているころ軸受。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のころ軸受において、前記保持器は表面処理が施されているころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、産業機械、自動車等に使用されるころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の
図2、
図4~
図7では、柱部の外径面(外径側案内面)が軸方向に直線で繋がった保持器が開示されている。この保持器は、前記外径面の加工工数を最小限に抑え、案内面、ころと軌道面の潤滑性を維持し、且つ回転中の保持器案内面の摩擦抵抗を抑制することを可能としたものである。
【0003】
特許文献2の
図3に示す断面M形の保持器でも、案内面、ころと軌道面の潤滑性を維持し、且つ回転中の保持器案内面の摩擦抵抗を抑制することは可能である。しかし、前記保持器の外径面の形状を得るためには、例えば、プレス加工などの加工上で工程数を増やすことに加え、保持器自体に軸方向から荷重を受ける用途では、柱部の各角部に応力集中を含めた応力が発生し、負荷できる荷重が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-24018号公報
【特許文献2】特開2012-57751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の保持器に軸方向から荷重が負荷される使用条件下において、保持器外径面が外径側に膨らむ方向に変形したとき、案内面では潤滑剤は特に保持器外径面の膨らんだ部分で掻き取られることになる。これは外径面の軸方向の範囲内で前記膨らんだ部分が特に接触面圧が高くなることによって、回転中の油膜形成が保持し難くなる等の原因となる。
また、案内部の隙間は適正に設計され、荷重の変化および回転速度、あるいは潤滑剤の種類を考慮すること、および実績品を参考にして決められていることが多い。しかし、外径面の膨らみを考慮すると、案内面の隙間を大きい側に設定することになり、振動(音圧)の上昇に繋がりかねない。
【0006】
予め外径部の形状を特許文献2の
図3のごとくM形にすることで、潤滑面の問題は抑制できる。しかし、保持器に軸方向から荷重が負荷される使用条件下では、保持器が断面M形であることによる各部の変形量を算出することが難しくなること、柱部内の隅部が複数になることで応力集中が発生する部分も複数となり、隅部の寸法を管理する工数が増大する。
【0007】
本発明の目的は、保持器案内面の摩擦抵抗を抑制し、振動の低減および工数低減を図ることができるころ軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のころ軸受は、互いに軸方向に離れて対面する一対の環状部分、およびこれら環状部分の外径縁間に亘って円周方向の複数箇所に設けられた柱部を有する保持器と、この保持器の各柱部間のポケットに保持される複数のころとを備えたころ軸受であって、
前記柱部の外径部は、保持器軸方向に亘って凹形状となる凹部に設けられ、この凹部の大きさは、前記柱部の径方向肉厚の1%以上10%以下とし、且つ、保持器幅の0.1%以上である。
【0009】
この構成によると、柱部の外径部が保持器軸方向に亘って凹形状となる凹部に設けられる。このため、保持器に軸方向から荷重が負荷される使用条件下において、柱部の外径面が軸方向に直線で繋がった従来保持器等よりも、柱部が径方向に膨らむ膨らみ量を抑制することができる。
【0010】
凹部の大きさを柱部の径方向肉厚の1%以上且つ保持器幅の0.1%以上としたため、柱部の径方向の膨らみ量をより確実に抑制し得る。これにより柱部の外径部の接触面圧が不所望に高くなることを防止でき、ころ軸受の回転中、柱部の外径部つまり保持器案内面における油膜を保持し易くできる。柱部の径方向の膨らみ量を抑制し得るため、保持器案内面の隙間を適正に設定することで、保持器が振れ回ることを抑え振動の低減を図ることが可能となる。凹部の大きさの上限を柱部の径方向肉厚の10%としたため、保持器案内面の油膜形成が大きく低下することがなくなると共に、保持器が軸方向から荷重を受けた際の柱部の変形を抑制し、断面M形の従来保持器等よりも加工工程の追加を抑制することができる。したがって、保持器案内面の摩擦抵抗を抑制し、振動の低減および工数低減を図ることができる。
【0011】
前記柱部の外径部における径方向面取り寸法が、前記柱部の径方向肉厚の50%を超えるものであってもよい。このように前記径方向面取り寸法が柱部の径方向肉厚の50%を超える場合に、柱部の外径部を凹部に設けることで、保持器に軸方向から荷重が負荷される使用条件下において、柱部が径方向に膨らむ膨らみ量を適正に抑制することができる。
【0012】
内外輪のいずれか一方または両方を備えてもよい。このように種々なころ軸受に、前述のいずれかの保持器を適用することができる。
【0013】
前記保持器は金属材料または非鉄金属材料から成るものであってもよい。この場合、保持器全体または保持器の一部をプレス加工により形成することができ、量産化を図るうえで好ましい。
【0014】
前記保持器は浸炭材であり浸炭熱処理が施されていてもよい。この場合、例えば、銅合金またはアルミニウム合金製の保持器等よりも強度に優れ、保持器案内面の摩擦抵抗をより抑制することが可能となる。
【0015】
前記保持器は表面処理が施されていてもよい。この場合、保持器案内面の摩擦係数の低減および摩耗の低減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のころ軸受は、保持器の柱部の外径部が保持器軸方向に亘って凹形状となる凹部に設けられ、この凹部の大きさは、前記柱部の径方向肉厚の1%以上10%以下とし、且つ、保持器幅の0.1%以上である。このため、保持器案内面の摩擦抵抗を抑制し、振動の低減および工数低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るころ軸受の縦断面図である。
【
図2】同ころ軸受の保持器の部分拡大断面図である。
【
図4】同ころ軸受をバックアップロールに適用した例を示す縦断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係るころ軸受の縦断面図である。
【
図7】従来例のころ軸受をバックアップロールに適用した例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
本発明の実施形態に係るころ軸受を
図1ないし
図4と共に説明する。
<ころ軸受の全体構成>
図1のように、実施形態に係るころ軸受1は、保持器2と、この保持器2のポケットPtに保持される複数のころ3とを備え、ころ3が軸4の外周面およびハウジング5の内周面に直接転接する保持器付きころ軸受である。保持器付きころ軸受は、「保持器付きころ」とも称される。ころ3は、軸受鋼等から成り、例えば、針状ころとされる。この明細書において、ころ軸受を単に軸受という場合がある。
【0019】
<保持器について>
保持器2は、一対の環状部分6,6および柱部7を有する。一対の環状部分6,6は、互いに軸方向に離れて対面する。一対の環状部分6,6は、保持器中心軸に対して垂直な平面状である鍔状の部分である。柱部7は、一対の環状部分6,6の外径縁間に亘って円周方向の複数箇所に設けられている。各柱部7は、後述するように半径方向内方に僅かに凹む略矩形状の部分であり、円周方向に並ぶ。
【0020】
保持器2は、例えば、保持器全体または一部をプレス加工し得る金属材料または非鉄金属材料から成り、環状部分6,6および柱部7が一体に設けられている。前記「一体に設けられている」とは、環状部分6,6と柱部7とが、複数の要素を結合したものではなく単一の材料から、例えば、鍛造、機械加工等により単独の物の一部または全体として成形されたことを意味する。各環状部分6の軸方向肉厚t6と、柱部7の径方向肉厚t7とは同一寸法に設定されている。前記金属材料として鋼板等を用いることができ、前記非鉄金属材料として銅合金またはアルミニウム合金等を用いることができる。
【0021】
保持器2において、円周方向に隣合う柱部7の間が、各ころ3を保持するポケットPtとなり、柱部7により各ころ3の円周方向の間隔が保持される。柱部7は、ころ3の配列のピッチ円PCDよりも外径側に位置する。
図3のように、各柱部7間のポケットの周方向幅は、ころ3の外径よりも僅かに小さく、ころ3が外径側に抜けることを柱部7で防止している。
図2のように、柱部7の外径部における径方向面取り寸法A1は、柱部7の径方向肉厚t7の50%を超えている。さらに
図1のように、柱部7の外径部は、保持器軸方向に亘って凹形状となる凹部7aに設けられ、この凹部7aの大きさA2は、柱部7の径方向肉厚t7の1%以上10%以下とし、且つ、保持器幅Wの0.1%以上である。前記凹部7aの大きさA2とは、保持器2の最大径となる位置から半径方向内方に位置する柱部7の外径部までの径方向距離である。凹部7aの大きさA2が最大となる位置は、この
図1の例では、柱部7の外径部における軸方向中間部である。
【0022】
<本実施形態のころ軸受と従来例のころ軸受との比較>
ここで
図6は、従来例のころ軸受の縦断面図である。同
図6のころ軸受は、保持器外径面50が相手側軌道面51となるハウジングまたは外輪の軌道面に案内され、径方向の保持器触れ回り量を規制することで回転中の振動を抑制する構造である。保持器外径面50と相手側軌道面51との間の案内部における径方向の隙間δは、振動を抑制するためには小さい方がよいとされている。一方、案内部の径方向の隙間δが小さすぎると、回転または熱による外径寸法の増大または回転中の変形によって径方向の隙間δがなくなるおそれがあるため、この点を考慮して径方向の隙間δを設定することが必要である。
【0023】
前記径方向の隙間δは、ころ軸受が広く使用される用途での検討ポイントであるが、
図7のレベラー軸受のように、保持器付き針状ころ軸受52を複列で使用することもある。レベラー軸受には、基本的にはラジアル方向の荷重が負荷されるが、取り付け誤差または軸53のたわみによってころ54が軸方向の左右いずれかに進もうとする。このときに誘起スラスト力と呼ばれる軸方向荷重が発生することが普通である。
【0024】
同
図7のレベラー軸受内の保持器55は、前記誘起スラスト力の発生によって、保持器幅面を案内する相手材と一方の保持器幅面に挟まれる状態で軸方向荷重を受けることになり、荷重が大きくなるに従って保持器55の変形量は大きくなっている。特に
図6に示した柱部56の外径面が軸方向に直線で繋がった形状の保持器55では、軸方向の荷重によって最も変形する懸念があるのは柱部56が径方向に凸部のように膨らむことである。レベラー軸受を例に挙げたが、保持器が両側の側面から挟み込まれるという荷重が発生する用途に使用されるころ軸受であれば、同様の懸念点が発生する。
【0025】
本実施形態のころ軸受では、前記柱部の膨らみの量を抑制するために、予め
図1のように、各柱部7の外径部は、保持器軸方向に亘って半径方向内方に僅かに凹む凹形状としたものである。この凹部7aの大きさA2は、保持器幅面から荷重を加えたとき
図6の形状で発生する凸部の大きさ以上としておくことが望ましい。この凸部の大きさ(高さ)を検証するために、従来例の外径φ72mm、幅24mm、柱部の径方向肉厚約1.7mmの金属製保持器を準備した。同金属製保持器につき、比較的荷重条件の厳しい基本静定格荷重の30%をラジアル荷重として負荷した場合の誘起スラスト力を実測し、幅面に荷重として加えた場合の凸部の大きさは約0.035mmとなった。この凸部の大きさは、柱部の径方向肉厚、保持器の幅によっても影響を受けるため、それぞれ比率で整理すると柱部の径方向肉厚の約2%、保持器幅の約0.15%になる。
【0026】
保持器幅寸法と板厚の比率が異なれば上記2%、0.15%の比率も軸受型番によって変わってくる。このため
図1に示す本実施形態のころ軸受1の保持器2は、少なくとも柱部7の径方向肉厚t7の1%以上、且つ、保持器幅Wの0.1%以上とすることが望ましい。これに対して凹部7aの大きさA2が大きすぎると、保持器外径面である保持器案内面の油膜形成が大きく低下することに繋がる。これと共に保持器幅面から荷重を受けた際の柱部7における変形(凹部7aの大きさの増大)の加速ならびに加工工程の追加に繋がるため、凹部7aの大きさA2は、柱部7の径方向肉厚t7の10%以下にとどめておくことが望ましい。
【0027】
柱部7の凹部7aは、プレス加工による保持器2の場合、ポケット抜きと同時に行うか、または柱部7の面押し加工工程が元々あればこの面押し加工工程と同時に行うことが望ましい。
本発明は保持器幅面から荷重を負荷する場合に常に必要とするものではなく、柱部7の変形が少ない荷重条件では必ずしも必要ではない。また荷重が大きい条件下でも柱部7の径方向肉厚t7に対し柱部7の外径部における径方向面取りが小さければ、柱部7は然程大きな変形にはならない。よって
図2のように、柱部7の外径部における径方向面取り寸法A1が、柱部7の径方向肉厚t7の50%を超える場合に、
図1のように、柱部7の外径部を保持器軸方向に亘って凹形状となる凹部7aとし、この凹部7aの大きさA2を、柱部7の径方向肉厚t7の1%以上10%以下とし、且つ、保持器幅Wの0.1%以上とすればよい。但し、径方向面取り寸法A1が径方向肉厚t7の50%以下であっても、凹部7aの大きさA2を、柱部7の径方向肉厚t7の1%以上10%以下とし、且つ、保持器幅Wの0.1%以上としてもよい。
【0028】
<ころ軸受の使用例>
図4は、本実施形態のころ軸受1をバックアップロール8に適用した例を示す。この例のバックアップロール8は、ロール軸9の回りに嵌めた円筒形のロール部材10を、両者の間に介在させた軸受11,1で回転自在に支持している。軸方向両端部に位置する軸受11の軸方向外側には、ロール軸9とロール部材10との間にシール12を介在させ、洗浄液の使用等に対してロール部材10内の密封を図っている。軸方向中間部に位置する複列(この例では2列)の軸受1として、ラジアル荷重を主に支持する本実施形態の保持器付きころ軸受を用い、軸方向両端部に位置する軸受11として、アキシアル荷重を支持するシール付きの深溝玉軸受を用いている。
【0029】
<作用効果>
以上説明した
図1のころ軸受1によると、柱部7の外径部が保持器軸方向に亘って凹形状となる凹部7aに設けられる。このため、保持器2に軸方向から荷重が負荷される使用条件下において、柱部の外径面が軸方向に直線で繋がった従来保持器等よりも、柱部7が径方向に膨らむ膨らみ量を抑制することができる。
【0030】
凹部7aの大きさA2を柱部7の径方向肉厚t7の1%以上且つ保持器幅Wの0.1%以上としたため、柱部7の径方向の膨らみ量をより確実に抑制し得る。これにより柱部7の外径部の接触面圧が不所望に高くなることを防止でき、ころ軸受1の回転中、柱部7の外径部つまり保持器案内面における油膜を保持し易くできる。柱部7の径方向の膨らみ量を抑制し得るため、保持器案内面の隙間を適正に設定することで、保持器2が振れ回ることを抑え振動の低減を図ることが可能となる。凹部7aの大きさA2の上限を柱部7の径方向肉厚t7の10%としたため、保持器案内面の油膜形成が大きく低下することがなくなると共に、保持器2が軸方向から荷重を受けた際の柱部7の変形を抑制し、断面M形の従来保持器等よりも加工工程の追加を抑制することができる。したがって、保持器案内面の摩擦抵抗を抑制し、振動の低減および工数低減を図ることができる。
【0031】
図2のように、柱部7の外径部における径方向面取り寸法A1が、柱部7の径方向肉厚t7の50%を超える場合に、
図1のように、柱部7の外径部を凹部7aに設けることで、保持器2に軸方向から荷重が負荷される使用条件下において、柱部7が径方向に膨らむ膨らみ量を適正に抑制することができる。
【0032】
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している実施形態と同様とする。同一の構成は同一の作用効果を奏する。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0033】
[第2の実施形態]
図5のように、第2の実施形態に係るころ軸受1Aは、内外輪13,14の両方を備えている。内外輪13,14のいずれか一方を備えたころ軸受1Aとしてもよい。このように種々なころ軸受に、前述の柱部7の外径部に凹部7aが設けられた保持器2を適用することができる。
【0034】
保持器2は、強度面からSCM材等の浸炭材を適用してもよく、その他、プレス成型が容易なSPC材等の冷間圧延鋼材を適用してもよい。保持器2は、これら浸炭材、冷間圧延鋼材を強化するための窒化処理または浸炭窒化処理等の浸炭熱処理が施されてもよい。
さらに保持器案内面の摩擦係数の低減および摩耗の低減を目的として、例えば、ニッケル、銅、銀、金等のメッキ処理、リン酸塩皮膜処理、黒染め処理等の表面処理を保持器に施すことも有効である。
前述の柱部7の外径部に凹部7aが設けられた保持器2は、種々の産業機械、自動車等に適用可能である。
【0035】
以上、本発明の実施形態を説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0036】
1,1A…ころ軸受、2…保持器、3…ころ、6…環状部分、7…柱部、7a…凹部、13…内輪、14…外輪、t7…径方向肉厚、W…保持器幅