(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067663
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】表面材、および、当該表面材を備えた内装材または外装材
(51)【国際特許分類】
D06N 7/00 20060101AFI20240510BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20240510BHJP
B60R 13/04 20060101ALI20240510BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20240510BHJP
B32B 27/02 20060101ALI20240510BHJP
D04H 1/4382 20120101ALI20240510BHJP
D04H 1/485 20120101ALI20240510BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
D06N7/00
B60R13/02 Z
B60R13/04 Z
B32B5/26
B32B27/02
D04H1/4382
D04H1/485
E04F13/07 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177906
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 広志
【テーマコード(参考)】
3D023
4F055
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
3D023AA01
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4L047CC10
(57)【要約】
【課題】
剛性と成形性に優れリサイクル可能な、自動車などの内装材や外装材を構成可能な表面材、および、当該表面材を備えた内装材または外装材の提供を課題とする。
【解決手段】
表面材を構成する繊維層である表皮層と支持層は、いずれも、構成繊維である延伸繊維と未延伸繊維が全て同一の樹脂である。そのため、リサイクル可能な表面材を実現できる。また、支持層の構成繊維質量に占める未延伸繊維の質量割合が、表皮層の構成繊維質量に占める未延伸繊維の質量割合よりも高い。そのため、未延伸繊維による繊維接着がより効率良く発揮された剛性に富む支持層によって、成形性の低下を招く原因となり得る支持層の繊維密度を必ずしも高くすることなくとも、効率良く補強されており成形性に優れた表面材を実現できる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮層と支持層を備える、表面材であって、
前記表皮層は、構成繊維が熱可塑性樹脂の延伸繊維と前記熱可塑性樹脂の未延伸繊維である繊維層であり、
前記支持層は、構成繊維が前記熱可塑性樹脂の延伸繊維と前記熱可塑性樹脂の未延伸繊維である繊維層であり、
前記支持層の構成繊維質量に占める前記未延伸繊維の質量割合が、前記表皮層の構成繊維質量に占める前記未延伸繊維の質量割合よりも高い、
表面材。
【請求項2】
請求項1に記載の表面材を備えた、内装材。
【請求項3】
請求項1に記載の表面材を備えた、外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、自動車などの内装材や外装材を構成可能な表面材、および、当該表面材を備えた内装材または外装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、繊維層を備えた表面材へ熱と圧力を作用させ成形加工することで、自動車などの内装材や、アンダーボディシールドやホイールハウスライナーといった外装材を製造することが行われている。また、近年では持続可能な社会の構築の観点から、容易にリサイクルできる表面材が求められている。
【0003】
このような要望を適える表面材として、例えば、特開2012-112079(特許文献1)には、天井材などの車両用不織布素材として、構成繊維が延伸ポリエチレンナフタレート繊維と未延伸ポリエチレンナフタレート繊維であって、当該未延伸繊維によって延伸繊維が繊維接着してなる繊維層を備えた不織布が開示されている。また、特許文献1には、当該構成を有する不織布はリサイクル性に優れていることが開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された不織布がリサイクル性に優れる理由として、次の理由が考えられる。構成繊維が同一の樹脂(延伸されたポリエチレンナフタレートと、延伸されていないポリエチレンナフタレート)で構成された不織布であることによって、当該不織布を溶融させてポリエチレンナフタレートを得ることができる。その結果、得られたポリエチレンナフタレートを用いて、再度同構成の不織布を製造できる(リサイクルできる)ためだと考えられる。
【0005】
なお、構成繊維が同一の樹脂で構成されていない不織布、例えば、構成繊維がポリプロピレン(PP)繊維とポリエチレン(PE)繊維である不織布などを溶融させた場合には、PPとPEの混合樹脂が得られるものとなる。その結果、このようにして得られた混合樹脂を用いても、再度同構成の不織布を製造できない(リサイクルできない)。
【0006】
また、特開2000-229369(特許文献2)には、触感や意匠性の向上を担う不織布からなる嵩高層を、当該嵩高層よりも繊維密度の高い不織布からなる剛性層で補強した不織布積層体が開示されている。このような構成の不織布積層体を用いることで、剛性に優れる自動車用内装材を提供できる。
【0007】
なお、特許文献2には、リサイクル性に優れることから、嵩高層と剛性層の構成繊維はポリエステル系繊維であるのが好ましいことが開示されている。しかし、当該嵩高層と当該剛性層の構成繊維が全て同一の樹脂で構成されていることは、開示および示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-112079
【特許文献2】特開2000-229369
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願出願人は、特許文献1に開示されているような従来技術にかかる不織布を用いて、剛性に優れる内装材や外装材を調製可能な、表面材の実現を試みた。具体的には、特許文献2の開示を参考として、当該不織布をポリエステル系繊維からなる繊維密度が高い繊維層で補強した表皮材の提供を試みた。
【0010】
しかし、このようにして調製した表面材は、ポリエチレンナフタレート繊維からなる繊維層と、ポリエステル系繊維からなる繊維密度が高い繊維層との積層構造を有するものであり、必ず、両繊維層の構成繊維が全て同一の樹脂で構成されているものではなく、リサイクルできない表面材であった。
【0011】
更に、繊維密度が高い繊維層を備える表面材は柔軟性に劣る傾向があり、熱と圧力を作用させ成形加工し難く、成形性に劣るという問題を有しているものであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明にかかる第一の発明は「表皮層と支持層を備える、表面材であって、
前記表皮層は、構成繊維が熱可塑性樹脂の延伸繊維と前記熱可塑性樹脂の未延伸繊維である繊維層であり、
前記支持層は、構成繊維が前記熱可塑性樹脂の延伸繊維と前記熱可塑性樹脂の未延伸繊維である繊維層であり、
前記支持層の構成繊維質量に占める前記未延伸繊維の質量割合が、前記表皮層の構成繊維質量に占める前記未延伸繊維の質量割合よりも高い、
表面材。」である。
本願発明にかかる第二の発明は「請求項1に記載の表面材を備えた、内装材。」である。
本願発明にかかる第三の発明は「請求項1に記載の表面材を備えた、外装材。」である。
【発明の効果】
【0013】
本願出願人が検討を続けた結果、本願発明によって上述した課題を解決可能な表面材を提供するに至った。
【0014】
つまり、本願発明にかかる表面材は、熱可塑性樹脂の延伸繊維と当該熱可塑性樹脂の未延伸繊維を構成繊維とした繊維層である表皮層と、当該熱可塑性樹脂の延伸繊維と当該熱可塑性樹脂の未延伸繊維を構成繊維とした繊維層である支持層とを、備えることを特徴としている。
【0015】
そのため、構成繊維が全て同一の樹脂(延伸された熱可塑性樹脂と、延伸されていない同一の熱可塑性樹脂)で構成されている表面材を実現できる。その結果、当該表面材や当該表面材を成形加工してなる内装材や外装材を溶融させて、当該熱可塑性樹脂を得られる。そして、得られた当該熱可塑性樹脂を用いて、再度同構成の表面材を製造できる(リサイクルできる)。
【0016】
また、本願発明にかかる表面材は、支持層の構成繊維質量に占める未延伸繊維の質量割合が、表皮層の構成繊維質量に占める未延伸繊維の質量割合よりも高いことを特徴としている。
【0017】
まず、表皮層および支持層が構成繊維同士の繊維接着に寄与する成分を、繊維形状で有している(未延伸繊維を有している)、あるいは、軟化し輪郭が変形した状態の繊維形状で有している(軟化し輪郭が変形した未延伸繊維を有している)ため、支持層(表皮層も同様)の構成繊維同士を均一的に繊維接着可能である。そのため、本願発明にかかる表面材を熱及び圧力を作用させ成形加工することで、未延伸繊維による支持層(表皮層も同様)の構成繊維同士の未延伸繊維による繊維接着、あるいは、軟化し輪郭が変形した状態の未延伸繊維による繊維接着がより効率良く発揮される。
【0018】
そして、支持層は表皮層よりも未延伸繊維を割合高く含んでいるため、本願発明にかかる表面材を熱及び圧力を作用させ成形加工することで、支持層の構成繊維同士がより強固に繊維接着される。
【0019】
以上より、支持層の繊維密度を必ずしも高くすることなく、剛性に富む支持層によって表皮層を補強して剛性に優れる内装材や外装材を製造できる。そのため、本願発明によって、支持層の繊維密度を高くすることを抑制でき、表面材の柔軟性が劣るという問題が生じるのを防止して、剛性に優れる内装材や外装材を製造可能な、柔軟性に富む成形性に優れた表面材を実現できる。
【0020】
そして、本願発明にかかる表面材によって、剛性に優れる内装材や外装材を実現できる。また、本願発明によって柔軟性やリサイクル性にも富む内装材や外装材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本願発明で説明する各種測定は特に記載や規定のない限り、常圧のもと25℃温度条件下で測定を行う。そして、本願発明で説明する各種測定結果は特に記載や規定のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出する。具体例として、小数第一位までが求める値である場合、測定によって小数第二位まで値を求め、得られた小数第二位の値を四捨五入することで小数第一位までの値を算出し、この値を求める値とする。また、本願発明で例示する各上限値および各下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0022】
本願発明にかかる表面材は、いずれも繊維層である表皮層と支持層を備えている。そのため、当該表面材を成形加工してなる内装材や外装材は、表皮層由来の繊維層が支持層由来の繊維層によって補強された、繊維層の積層構造体を備えるものとなる。なお、表皮層は、表面材を成形加工してなる内装材や外装材において、主として触感や意匠性の向上を担う部材となり得る。また、支持層は、表面材を成形加工してなる内装材や外装材において、主として剛性に富むことで形状安定性の向上を担う部材である。
【0023】
そして、本願発明にかかる表皮層は、構成繊維が熱可塑性樹脂(以降、熱可塑性樹脂Aと記載することがある)の延伸繊維と、熱可塑性樹脂Aの未延伸繊維であることを特徴としている。加えて、本願発明にかかる支持層は、構成繊維が熱可塑性樹脂Aの延伸繊維と、熱可塑性樹脂Aの未延伸繊維であることを特徴としている。
【0024】
本願発明にかかる表面材では、表皮層と支持層の構成繊維は全て同一の熱可塑性樹脂Aで構成されている。そのため、表面材や当該表面材を成形加工してなる内装材や外装材を溶融させることで、溶融した熱可塑性樹脂Aや、当該溶融した熱可塑性樹脂Aを冷却してなる熱可塑性樹脂Aのペレットを得ることが可能である。そして、溶融した熱可塑性樹脂Aや熱可塑性樹脂Aのペレットを用いることで、熱可塑性樹脂Aの延伸繊維と、熱可塑性樹脂Aの未延伸繊維を製造でき、再度本願発明と同構成の表面材を製造できる(リサイクルできる)。
【0025】
本願発明にかかる表皮層と支持層は、例えば、繊維ウェブや不織布、あるいは、織物や編み物などが由来の、シート状の繊維層である。本願発明の表面材は、繊維層である表皮層と支持層を備えているため、柔軟性に富み成形性に優れる。特に、繊維ウェブや不織布由来の表皮層と支持層を備える表面材は、より柔軟性に富み成形性に優れ好ましい。
【0026】
表皮層と支持層の構成繊維をなす、熱可塑性樹脂の種類は適宜選択できるものであり、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をニトリル基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(以降、PETと略す)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)など、公知の樹脂を用いて構成できる。
【0027】
なお、これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、熱可塑性樹脂に他種類の熱可塑性樹脂を混ぜ合わせて調製した熱可塑性樹脂であっても良い。
【0028】
しかし、リサイクル性と耐熱性に富む表面材を実現し易いことから、熱可塑性樹脂(熱可塑性樹脂A)にPETを採用するのが好ましく、熱可塑性樹脂がPETのみであるのがより好ましい。
【0029】
なお、表面材に難燃性が求められる場合には、ハロゲン系やリン系又は金属化合物系の難燃剤を練り込んだ熱可塑性樹脂を用いても良い。また、顔料を練り込み調製された熱可塑性樹脂を用いても良い。なお、顔料と他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリプロピレン樹脂)を混錬したものを、顔料として練り込んでもよい。
【0030】
表皮層と支持層を構成する延伸繊維ならびに未延伸繊維(併せて構成繊維と称することがある)の、繊度や繊維長は適宜調整できる。
【0031】
繊度は特に限定するものではないが、剛性に優れる表面材を実現できるように、1dtex以上であるのが好ましく、1.5dtex以上であるのがより好ましく、2dtex以上であるのがより好ましい。他方、成形性や触感に優れる表面材を実現できるように、100dtex以下であるのが好ましく、50dtex以下であるのがより好ましく、30dtex以下であるのがより好ましく、10dtex以下であるのが更に好ましい。なお、触感に富む表面材を実現できるように、延伸繊維の繊度は、未延伸繊維の繊度よりも小さいのが好ましい。
【0032】
また、繊維長も特に限定するものではないが、剛性に優れる表面材を実現できるように、20mm以上であるのが好ましく、25mm以上であるのがより好ましく、30mm以上であるのが更に好ましい。他方、繊維長が110mmを超えると、成形性が劣るおそれがあることから、110mm以下であるのが好ましく、60mm以下であるのがより好ましい。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c)直接法(C法)に則って測定した値をいう。
【0033】
構成繊維は、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0034】
表皮層および/または支持層が構成繊維に捲縮性繊維を含んでいる場合には、伸縮性が増して成形性に優れ好ましい。このような捲縮性繊維として、例えば、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現した捲縮性繊維やクリンプを有する繊維などを使用することができる。
【0035】
本願発明にかかる表面材は、支持層の構成繊維質量に占める未延伸繊維の質量割合が、表皮層の構成繊維質量に占める未延伸繊維の質量割合よりも高いことを特徴としている。そのため、本願発明にかかる表面材を熱及び圧力を作用させ成形加工することで、表皮層よりも割合高く含まれている未延伸繊維によって、支持層の構成繊維同士がより強固に繊維接着される。その結果、剛性に優れた支持層が表皮層を補強してなる、内装材や外装材を製造できる。
【0036】
つまり、本願発明では、表面材を構成する支持層の繊維密度を高くしなくとも、効率良く支持層によって表皮層を補強できることから、剛性に優れる内装材や外装材を製造可能な、柔軟性に富む成形性に優れた表面材を実現できる。
【0037】
更に、繊維密度が高い支持層を備える表面材を成形加工すると、例えば、触感が硬くなる、柔軟性に欠け成型時の曲面部でシワが入るといった質感が劣る内装材や外装材になる傾向があった。それに対し、本願発明にかかる表面材では、表面材を構成する支持層の繊維密度を必ずしも高くする必要が無いことから、質感に優れる内装材や外装材を実現できる。
【0038】
表皮層を構成する延伸繊維と未延伸繊維の質量割合は適宜調整するが、例えば、1質量%:99質量%~99質量%:1質量%であることができ、5質量%:95質量%~95質量%:5質量%であることができ、10質量%:90質量%~90質量%:10質量%であることができ、20質量%:80質量%~80質量%:20質量%であることができ、30質量%:70質量%~70質量%:30質量%であることができ、40質量%:60質量%~60質量%:40質量%であることができる。
【0039】
支持層を構成する、延伸繊維と未延伸繊維の質量割合は適宜調整するが、例えば、1質量%:99質量%~99質量%:1質量%であることができ、5質量%:95質量%~95質量%:5質量%であることができ、10質量%:90質量%~90質量%:10質量%であることができ、20質量%:80質量%~80質量%:20質量%であることができ、30質量%:70質量%~70質量%:30質量%であることができ、40質量%:60質量%~60質量%:40質量%であることができる。なお、剛性に優れる支持層となるよう、構成繊維の質量に占める未延伸繊維の質量割合は、延伸繊維の質量割合よりも大きいのが好ましい。このとき、支持層を構成する延伸繊維と未延伸繊維の質量割合は、例えば、45質量%:55質量%~1質量%:99質量%であることができ、40質量%:60質量%~5質量%:95質量%であることができ、30質量%:70質量%~10質量%:90質量%であることができ、20質量%:80質量%~15質量%:85質量%であることができる。
【0040】
また、表皮層の構成繊維質量に占める延伸繊維の質量割合が、支持層の構成繊維質量に占める延伸繊維の質量割合よりも高いことによって、表面に存在する延伸繊維の割合が高く質感に優れる内装材や外装材を製造可能な表面材を実現できる。
【0041】
表皮層および支持層を構成する繊維の組成、表皮層および支持層に含まれる延伸繊維と未延伸繊維の質量割合、各構成繊維の繊度や繊維長および繊維断面形状などは、表面材の製造方法を確認することで判断できる。しかし、表面材の製造方法が不明である場合には、以下の方法を用いて求めることができる。
【0042】
(表面材における両主面を構成している、繊維の組成を判断する方法)
プリント層やカバー層などの判断に不要となる層や成分を除去して、測定対象とする表面材を用意する。
まず、測定対象とする表面材における一方の主面の複数箇所に対し、赤外吸収分光法や熱分析など公知の分析方法を行う。測定結果から、いずれの箇所も同一の熱可塑性樹脂(複数種類の熱可塑性樹脂が混合してなるものであってもよい)で構成されていると判断された場合、表面材における当該主面は、同一の熱可塑性樹脂の繊維で構成されていると判断できる。
次いで、測定対象とした表面材における一方の主面の電子顕微鏡写真を撮影する。そして、上述の方法によって確認された熱可塑性樹脂における、未延伸時の軟化温度と延伸時の軟化温度を求め、表面材を未延伸時の軟化温度以上ないし延伸時の軟化温度未満の温度で加熱加圧し放冷する。その後、表面材における当該一方の主面について、再度、電子顕微鏡写真を撮影する。
撮影により得た2枚の電子顕微鏡写真を比較して、加熱後に撮影した電子顕微鏡写真中に構成樹脂が軟化することで帯状の形状を有するなど変形した繊維が存在しているか否か、ならびに、変形していない繊維が存在しているか否かを確認する。加熱によって変形した繊維は未延伸繊維であると判断できる。また、加熱によって変形していない繊維は延伸繊維であると判断できる。
以上の判断方法の結果から、表面材における一方の主面が、同一の熱可塑性樹脂の繊維で構成されていると共に未延伸繊維と延伸繊維を含んでいた場合、表面材は一方の主面に、構成繊維が熱可塑性樹脂の延伸繊維と前記熱可塑性樹脂の未延伸繊維である繊維層を有していると判断できる。なお、表面材における一方の主面が上述の判断と異なる主面を有していた場合、表面材は一方の主面に、構成繊維が熱可塑性樹脂の延伸繊維と前記熱可塑性樹脂の未延伸繊維である繊維層を有していないと判断できる。
測定対象とする表面材におけるもう一方の主面に対しても、上述した方法と同様にして、表面材はもう一方の主面に、構成繊維が熱可塑性樹脂の延伸繊維と前記熱可塑性樹脂の未延伸繊維である繊維層を有しているか否かを判断できる。
【0043】
(支持層の構成繊維質量に占める未延伸繊維の質量割合と、表皮層の構成繊維質量に占める未延伸繊維の質量割合を判断する方法)
両主面に、構成繊維が熱可塑性樹脂の延伸繊維と前記熱可塑性樹脂の未延伸繊維である繊維層を有していると判断された表面材を用意する。
そして、測定対象とした表面材における一方の主面の電子顕微鏡写真を撮影する。
次いで、表面材を、上述の方法によって確認された熱可塑性樹脂における、未延伸時の軟化温度以上ないし延伸時の軟化温度未満の温度で加熱加圧し放冷する。その後、表面材における前記一方の主面の電子顕微鏡写真を撮影する。
撮影により得た2枚の電子顕微鏡写真を比較して、電子顕微鏡写真に写る加熱加圧によって変形していない繊維(延伸繊維)の本数に対する、電子顕微鏡写真に写る加熱加圧によって変形した繊維(未延伸繊維)の面積の割合を算出する。
測定対象とした表面材におけるもう一方の主面に対しても、上述した方法と同様にして、電子顕微鏡写真に写る加熱加圧によって変形していない繊維(延伸繊維)の本数に対する、電子顕微鏡写真に写る加熱加圧によって変形した繊維(未延伸繊維)の面積の割合を算出する。
算出した割合が高い方の繊維層(算出した割合が高い方の主面)は、表面材が備える支持層であると判断でき、当該割合が低い方の繊維層は表皮層であると判断できる。
【0044】
以上の判断方法を用いることで、本願発明にかかる表皮層と支持層を備える表面材であるか否かを判断できる。
【0045】
更に、表皮層や支持層を構成する延伸繊維と未延伸繊維の繊度や繊維長および繊維断面形状については、表面材の表皮層と支持層からランダムに複数本採取した延伸繊維と未延伸繊維を分析することで確認できる。
【0046】
延伸繊維および未延伸繊維の調製方法は適宜選択できるが、連続長を有する未延伸繊維を延伸することによって、連続長を有する延伸繊維を調製可能である。そして、連続長を有する未延伸繊維および延伸繊維を特定長にカットすることで、特定長を有する未延伸繊維および延伸繊維を調製できる。
【0047】
上述の構成繊維を混綿しカード装置やエアレイ装置などへ供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法などによって、繊維ウェブを調製できる。そして、調製した繊維ウェブの構成繊維を絡合および/または一体化させて不織布を調製できる。構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウェブを加熱加圧処理へ供するなどして、未延伸繊維によって構成繊維同士を接着一体化させる方法などを挙げることができる。
【0048】
加熱加圧処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱した後に圧力を作用させる方法、無圧下で赤外線を照射し加熱した後に圧力を作用させる方法などを用いることができる。
【0049】
表皮層と支持層の積層態様は適宜調整でき、未延伸繊維による構成繊維同士の接着一体化によって層間が積層一体化している態様であっても、層間に存在する構成繊維同士が交絡(あるいは、交絡および未延伸繊維による構成繊維同士の接着一体化)して積層一体化している態様であってもよい。あるいは、表皮層ならびに支持層の構成繊維と同熱可塑性樹脂からなる糸を用いた縫製、超音波シール、高周波ウェルダーなどで部分的に接着することで積層一体化している態様であってもよい。
【0050】
表皮層および支持層の、例えば、厚み、目付、密度などの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜調整する。表皮層および支持層の厚みは、各々、0.5~5mmであることができ、1~3mmであることができ、1.1~1.9mmであることができる。また、表皮層および支持層の目付は、各々、例えば、50~500g/m2であることができ、80~300g/m2であることができ、100~250g/m2であることができる。
【0051】
また、表皮層の密度は、0.1~0.7g/cm3であることができ、0.1~0.5g/cm3であることができ、0.1~0.3g/cm3であることができる。そして、支持層の密度は、0.3~1.2g/cm3であることができ、0.4~0.9g/cm3であることができ、0.5~0.8g/cm3であることができる。
【0052】
なお、剛性に富む表面材を実現できるよう、支持層の厚みや目付あるいは密度を、表皮層よりも大きくしてもよい。
【0053】
本願発明において厚みとは主面と垂直方向へ20g/cm2圧縮荷重をかけた時の当該垂直方向の長さをいい、目付とは測定対象物の最も広い面積を有する面(主面)における1m2あたりの質量をいう。また、密度は目付を厚みで除し算出できる。
【0054】
上述した各値は、表面材の一方の主面(表皮層)から採取した切片、および、表面材のもう一方の主面(支持層)から採取した切片の目付と厚みから、表面材を構成している表皮層や支持層の目付と厚みを算出できる。また、当該切片の密度を、表面材を構成している表皮層や支持層の密度とすることができる。
【0055】
なお、表面材の少なくとも一方の主面における、全面あるいは一部に柄を備えていても良い。凹凸を備えた型を表面材へ加圧してなる加圧部において、未延伸繊維を変形させて柄が付与された表面材を調製できる。
【0056】
柄の存在態様は、適宜調整できる。例えば、平行線や格子状などのパターンを有する柄や、ドット状あるいは不定形状などの柄をなし、表面材の少なくとも一方の主面上全体にわたって、部分的に存在する態様であることができる。
【0057】
また、表面材は、香料、顔料、抗菌剤、抗カビ材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0058】
次に、本願発明の表面材の製造方法について説明する。なお、上述の表面材について説明した項目と構成を同じくする点については説明を省略する。本願発明にかかる表面材の製造方法は適宜選択することができるが、一例として、
1.熱可塑性樹脂の延伸繊維と前記熱可塑性樹脂の未延伸繊維が混綿してなる、繊維ウェブAを用意する工程、
2.前記熱可塑性樹脂の延伸繊維と前記熱可塑性樹脂の未延伸繊維が混綿してなる、別の繊維ウェブBを用意する工程、
3.繊維ウェブAと繊維ウェブBを積層して積層体を形成する工程、
4.積層体の構成繊維同士を絡合する工程、
を備える、表面材の製造方法を挙げることができる。
【0059】
工程1および工程2について説明する。
【0060】
工程1で用意する繊維ウェブAは、表面材が備える表皮層を構成する前駆構造体である。本製造方法を経ることで、表面材の表皮層を構成する。また、工程2で用意する繊維ウェブBは、表面材が備える支持層を構成する前駆構造体である。本製造方法を経ることで、表面材の支持層を構成する。
【0061】
なお、加熱加圧処理へ供することで、構成繊維に含まれる未延伸繊維を軟化させた後に冷却して、構成繊維同士が未延伸繊維によって繊維接着してなる繊維ウェブAおよび/または繊維ウェブBを用いてもよい。
【0062】
なお、繊維ウェブAを構成する延伸繊維と繊維ウェブBを構成する延伸繊維とは、延伸繊維を構成する樹脂が共に同一の熱可塑性樹脂である以外は、繊度や繊維長あるいは繊維断面形状などの他の構成は同一でも異なっていても良い。同様に、繊維ウェブAを構成する未延伸繊維と繊維ウェブBを構成する未延伸繊維とは、前述した延伸繊維を構成する樹脂と同一の熱可塑性樹脂である(当然、繊維ウェブAを構成する未延伸繊維と、繊維ウェブBを構成する未延伸繊維とは同一の熱可塑性樹脂である)以外は、繊度や繊維長あるいは繊維断面形状などの他の構成は同一でも異なっていても良い。
【0063】
また、支持層の構成繊維質量に占める未延伸繊維の質量割合が、表皮層の構成繊維質量に占める未延伸繊維の質量割合よりも高い表面材を実現できるよう、繊維ウェブBの構成繊維質量に占める未延伸繊維の質量割合が、繊維ウェブAの構成繊維質量に占める未延伸繊維の質量割合よりも高くなるよう、繊維ウェブAおよび繊維ウェブBの構成繊維における混綿割合を調製する。
【0064】
更に、繊維ウェブAと繊維ウェブBの、目付や厚さあるいは密度などの諸構成は同一でも異なっていても良い。繊維ウェブAよりも目付や厚さあるいは密度が高い繊維ウェブBを採用することで、剛性に優れる内装材や外装材を提供可能な表面材を調製し易い。
【0065】
工程3および工程4について説明する。
【0066】
工程3で形成した積層体の構成繊維同士を絡合する方法は、適宜選択可能であるが、剛性に優れる内装材や外装材を提供可能な表面材を調製し易いことから、ニードルパンチ処理へ供することによって繊維ウェブAおよび繊維ウェブBを交絡させるのが好ましい。このときニードルパンチ処理の条件など絡合条件は適宜調整するが、触感に優れる内装材や外装材を提供可能な表面材を調製し易いことから、繊維ウェブB側から絡合処理を施すのが好ましい。
【0067】
なお、構成繊維同士が未延伸繊維によって繊維接着してなる繊維ウェブAおよび/または繊維ウェブBの積層体へ、絡合処理を施してもよい。
【0068】
なお、積層体あるいは絡合処理を施した後の積層体の密度は、0.3~1.1g/cm3であることができ、0.4~0.9g/cm3であることができ、0.5~0.8g/cm3であることができる。
【0069】
以上のようにして、繊維ウェブA由来の繊維層である表皮層と、繊維ウェブB由来の繊維層である支持層とが積層一体化してなる、表面材を調製できる。なお、このようにして調製した表面材を加熱加圧処理へ供することで、表面材に含まれる未延伸繊維を軟化させた後に冷却して、構成繊維同士が未延伸繊維によって繊維接着してなる表面材としてもよい。
【0070】
調製した表面材に対し、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を積層する工程、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜くなどして加工する工程などの、各種二次工程を備えていてもよい。また、リライアントプレス処理などの、表面を平滑とするための加圧処理工程を備えていてもよい。
【0071】
そして、本願発明にかかる表面材へ熱と圧力を作用させ成形加工することで、剛性に優れる内装材や外装材を提供できる。具体的には、本願発明にかかる表面材を成形型へ供することで加熱加圧し成形加工した後、冷却することによって、自動車などの内装材や、アンダーボディシールドやホイールハウスライナーといった外装材を製造できる。
【実施例0072】
以下、実施例によって本願発明を具体的に説明するが、これらは本願発明の範囲を限定するものではない。
【0073】
(使用する繊維)
連続長を有する未延伸PET繊維(繊度:4.4dtex、軟化温度:80℃、融点:260℃)を用意する。そして、当該連続長を有する未延伸PET繊維を特定長にカットして、未延伸PET短繊維(繊維長:38mm、繊度:4.4dtex、軟化温度:80℃、融点:260℃)を得る。
また、当該連続長を有する未延伸PET繊維を延伸することで、連続長を有する延伸PET繊維(繊度:2.2dtex、軟化温度:220℃、融点:260℃)を得る。そして、連続長を有する延伸PET繊維を特定長にカットして、延伸PET短繊維(繊維長:38mm、繊度:2.2dtex、軟化温度:220℃、融点:260℃)を得る。
【0074】
(実施例1)
延伸PET短繊維90質量%と未延伸PET短繊維10質量%を混綿した後、カード機により開繊して繊維ウェブA(目付:400g/m2)を形成する。
次いで、延伸PET短繊維60質量%と未延伸PET短繊維40質量%を混綿した後、カード機により開繊して繊維ウェブB(目付:800g/m2)を形成する。
繊維ウェブAと繊維ウェブBを重ね合わせた後、繊維ウェブB側からニードルパンチ処理を施して、繊維ウェブAと繊維ウェブBを絡合一体化してニードルパンチウェブ(目付:1000g/m2、厚み:8mm)を調製する。
そして、ニードルパンチウェブをオーブン(オーブン加熱温度:160℃)へ供した後、20℃に温度調整したプレス機(上型と下型ともに平面、上型/下型間に2.0mmのブロックゲージを設置した)へ供し加圧後、放冷することで冷却して、構成繊維同士が未延伸PET短繊維によって繊維接着してなる、不織布(目付:1200g/m2、厚み:2mm)を調製する。このようにして得られた不織布単体を、表面材とする。
【0075】
なお、このようにして調製する表面材は、繊維ウェブA由来の繊維層である表皮層と、繊維ウェブB由来の繊維層である支持層とが積層した構造を備えている。そして、支持層の構成繊維質量に占める未延伸PET短繊維の質量割合が、表皮層の構成繊維質量に占める未延伸PET短繊維の質量割合よりも高いものとなる。
本願発明の表面材は、天井、ドアサイド、ピラーガーニッシュ、リヤパッケージなどの自動車用内装材、アンダーボディシールドやホイールハウスライナーなどの自動車用外装材:パーティションなどのインテリア用内装材:壁装材などの建材用内装材などに、好適に使用することができる。