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  • 特開-木質壁と躯体との接合構造 図1
  • 特開-木質壁と躯体との接合構造 図2
  • 特開-木質壁と躯体との接合構造 図3
  • 特開-木質壁と躯体との接合構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006767
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】木質壁と躯体との接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
E04B2/56 632C
E04B2/56 604F
E04B2/56 632J
E04B2/56 632W
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107957
(22)【出願日】2022-07-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)提出日 令和3年10月29日 提出先 国土交通大臣 (2)ウェブサイトの掲載日 令和4年3月11日 ウェブサイトのアドレス http://www.sendo-shien.jp/03/comment/
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】山田 徹
(72)【発明者】
【氏名】ライサミ ベン
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】菅原 和正
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 正幸
(72)【発明者】
【氏名】貞広 修
(72)【発明者】
【氏名】谷口 尚範
(72)【発明者】
【氏名】津畑 慎哉
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002FB07
2E002JA01
2E002JA02
2E002JB02
2E002JB14
(57)【要約】
【課題】せん断変形時に割裂破壊を抑制して高耐力化することができる木質壁と躯体との接合構造を提供する。
【解決手段】木質壁と躯体との接合構造100は、木質壁1の幅方向の端部の下部に設けられた第1接合部3と、躯体2Bに設けられた第2接合部4と、第1接合部3と第2接合部4とをピン接合するピン接合部5と、を備え、木質壁1は、芯材と、芯材の少なくとも一方側に面に設けられた面材と、を有し、第1接合部3は、芯材の下端部に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質壁の幅方向の端部の下部に設けられた第1接合部と、
躯体に設けられた第2接合部と、
前記第1接合部と前記第2接合部とをピン接合するピン接合部と、を備える木質壁と躯体との接合構造。
【請求項2】
前記木質壁は、
芯材と、
前記芯材の少なくとも一方側に面に設けられた面材と、を有し、
前記第1接合部は、前記芯材の下端部に設けられ、
前記面材の下端部は、前記芯材の下端部よりも下方に位置している請求項1に記載の木質壁と躯体との接合構造。
【請求項3】
前記躯体上にはスラブが設置され、
前記面材の下端部は、スラブの上面に当接している請求項2に記載の木質壁と躯体との接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質壁と躯体との接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ひき板をその繊維方向が直交するように交互に積層接着したCLT(Cross Laminated Timber、直交集成板)を躯体等に接合して耐震壁として使用する場合がある(下記の特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-80569号公報
【特許文献2】特開2018-188845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、木質壁と躯体との接合部分にせん断力が作用すると、せん断変形時に引張応力が作用し、接合部分に割裂破壊を生じる虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、せん断変形時に割裂破壊を抑制して高耐力化することができる木質壁と躯体との接合構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る木質壁と躯体との接合構造は、木質壁の幅方向の端部の下部に設けられた第1接合部と、躯体に設けられた第2接合部と、前記第1接合部と前記第2接合部とをピン接合するピン接合部と、を備える。
【0007】
このように構成された木質壁と躯体との接合構造では、木質壁の幅方向の端部の下部に設けられた第1接合部と躯体に設けられた第2接合部とが、ピン接合部でピン接合されている。これによって、木質壁と躯体とがピン接合されている。木質壁の幅方向の端部をピン接合することで引張接合部として機能させるとともに、例えば木質壁の幅方向の中央等をせん断接合部として機能させることができる。よって、せん断変形時に引張応力が作用する木質壁の幅方向の端部で、付加曲げによる割裂破壊を抑制して高耐力化することができる。
【0008】
また、本発明に係る木質壁と躯体との接合構造では、前記木質壁は、芯材と、前記芯材の少なくとも一方側に面に設けられた面材と、を有し、前記第1接合部は、前記芯材の下端部に設けられ、前記面材の下端部は、前記芯材の下端部よりも下方に位置していてもよい。
【0009】
このように構成された木質壁と躯体との接合構造では、木質壁の面材の下端部は、芯材の下端部よりも下方に位置している。よって、芯材の下端部に設けられた第1接合部の露出が抑制され、外観を向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係る木質壁と躯体との接合構造では、前記躯体上にはスラブが設置され、前記面材の下端部は、スラブの上面に当接していてもよい。
【0011】
このように構成された木質壁と躯体との接合構造では、面材の下端部は、躯体上に設置されたスラブの上面に当接している。よって、第1接合部、第2接合部及びピン接合部の露出が抑制され、外観を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る木質壁と躯体との接合構造よれば、せん断変形時に割裂破壊を抑制して高耐力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る木質壁と躯体との接合構造を示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る木質壁と躯体との接合構造とスラブとの納まりを示し、(a)側面図であり、(b)正面図である。
図3】本発明の一実施形態の変形例1に係る木質壁と躯体との接合構造とスラブとの納まりを示し、(a)側面図であり、(b)正面図である。
図4】本発明の一実施形態の変形例2に係る木質壁と躯体との接合構造とスラブとの納まりを示し、(a)側面図であり、(b)正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る木質壁と躯体との接合構造について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る木質壁と躯体との接合構造を示す正面図である。
図1に示すように、木質壁1の上側及び下側には、それぞれ上梁2A及び下梁2Bが設置されている。本実施形態に係る木質壁と躯体との接合構造100(以下、単に「接合構造100」と称する)は、木質壁1と下梁2Bとを接合する構造である。本実施形態では、上梁2A及び下梁2Bを総称して、梁2と称することがある。
【0015】
梁2は、水平方向に沿う第1方向(図1等に示す矢印Xの方向)に延びている。木質壁1の板面は、水平方向に沿い第1方向と直交する第2方向(図1等に示す矢印Yの方向)を向いている。木質壁1は、上下方向(図1等に示す矢印Zの方向)に長い形状をしている。各構成部材において、第1方向及び第2方向で中心から離れる側を外側と称し、中心に向かう側を内側という場合がある。第1方向を、幅方向と称することがある。
【0016】
木質壁1は、板状をしている。木質壁1の板面は、Y方向を向いている。本実施形態では、木質壁1の厚さは240mmである。
【0017】
図2は、接合構造100とスラブSとの納まりを示し、(a)側面図であり、(b)正面図である。
図2に示すように、木質壁1は、芯材16と、面材17と、を有している。芯材16は、CLTで構成されている。芯材16は、板状をしている。芯材16の両側の面には、面材17が設けられている。面材17の下面17dは、芯材16の下面16dと同一の高さに位置している。
【0018】
図1に示すように、梁2は、H形鋼である。上梁2Aは、木質壁1の上側に隙間を空けて配置されている。下梁2Bは、木質壁1の下側に隙間を空けて配置されている。
【0019】
接合構造100は、木質壁1の幅方向の両端部の下側に位置している。図2に示すように、接合構造100は、第1接合金物(第1接合部)3と、第2接合金物(第2接合部)4と、ピン接合部5と、を備えている。
【0020】
第1接合金物3は、端面プレート部31と、接合プレート部32と、を有している。端面プレート部31は、木質壁1の幅方向の両端部の芯材16の下面16dに沿って配置されている。ボルト34が端面プレート部31に形成された取付孔に挿通され、芯材16にねじ込まれている。ボルト34における芯材16の下面16dよりも突出している部分には、ナット35が締結している。これによって、端面プレート部31は芯材16の下面16dに接合されている。ボルト34として、例えば棒状のねじつき鋼製部材であるラグスクリューボルトを採用することができる。接合プレート部32は、端面プレート部31から下方に延びている。
【0021】
第2接合金物4は、固定プレート部41を有している。固定プレート部41は、下梁2Bの上側フランジ26に溶接等によって固定されている。固定プレート部41は、接合プレート部32の下方に配置されている。固定プレート部41の板面は、接合プレート部32の板面と同一の方向を向いている。
【0022】
ピン接合部5は、木質壁1に接合された第1接合金物3と、下梁2Bに固定された第2接合金物4とをピン接合している。換言すると、木質壁1は、ピン接合部5を介して下梁2Bに回転可能にピン接合されている。
【0023】
ピン接合部5は、スプライスプレート51と、固定ボルト52と、構造ピン55と、を有している。
【0024】
スプライスプレート51は、接合プレート部32及び固定プレート部41の両側に配置されている。スプライスプレート51は、接合プレート部32及び固定プレート部41に跨って配置されている。スプライスプレート51の板面は、接合プレート部32の板面及び固定プレート部41の板面と同一の方向を向いている。
【0025】
固定ボルト52は、一方のスプライスプレート51に形成されたボルト孔、固定プレート部41に形成されたボルト孔及び他方のスプライスプレート51に形成されたボルト孔に挿通されてナット53が締結されている。これによって、スプライスプレート51は、固定プレート部41に接合されている。スプライスプレート51と固定プレート部41との接合は、回転が生じない剛接合である。
【0026】
構造ピン55は、一方のスプライスプレート51に形成されたボルト孔、接合プレート部32に形成されたボルト孔及び他方のスプライスプレート51に形成されたボルト孔に挿通されてナット56が締結されている。これによって、スプライスプレート51は、接合プレート部32に接合されている。スプライスプレート51と接合プレート部32との接合は、回転可能なピン接合である。
【0027】
スラブSは、下梁2B上に設置されている。ピン接合部5が設置される箇所では、スラブSは、ピン接合部5の形状に対応して切り欠かれている。スラブSの上面Suと木質壁1の下面16d,17dとの間の距離L1は、例えば約145mm程度である。
【0028】
図1に示すように、木質壁1の幅方向の中央には、芯材16の下面16dに接続金物13が固定されている。下梁2Bの上部には、接続金物23が固定されている。接続金物13と接続金物23とは、スプライスプレート等を介してボルト18で接合されている。
【0029】
木質壁1の幅方向の両端部の上部において、接続金物11がボルト12で固定されている。ボルト12として、例えば棒状のねじつき鋼製部材であるラグスクリューボルトを採用することができる。木質壁1の幅方向の中央において、接続金物13が固定されている。
【0030】
上梁2Aの下部には、接続金物11に対応する箇所に、接続金物21が固定されている。上梁2Aの下部には、接続金物13に対応する箇所に、接続金物23が固定されている。接続金物11と接続金物21とは、スプライスプレート等を介してボルト接合されている。接続金物13と接続金物23とは、スプライスプレート等を介してボルト接合されている。
【0031】
このように構成された接合構造100では、木質壁1の下部に設けられた第1接合金物3と下梁2Bに設けられた第2接合金物4とが、ピン接合部5でピン接合されている。これによって、木質壁1と下梁2Bとがピン接合されている。木質壁1の幅方向の端部をピン接合することで、引張接合部として機能させる。木質壁1の幅方向の中央を、ボルト18で剛接合することで、せん断接合部として機能させる。よって、せん断変形時に引張応力が作用する木質壁1の幅方向の端部で、付加曲げによる割裂破壊を抑制して高耐力化することができる。
【0032】
(変形例1)
次に、変形例1について、主に図3を用いて説明する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態と同一又は同様な部材及び部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施形態と異なる構成について説明する。
【0033】
図3は、本発明の一実施形態の変形例1に係る木質壁と躯体との接合構造とスラブとの納まりを示し、(a)側面図であり、(b)正面図である。
図3に示すように、本変形例に係る接合構造100Aでは、木質壁1の面材17の下面17dは、芯材16の下面16dよりも下方に位置している。図3(b)に示すように、
正面視で、面材17の下端部17aは、第1接合金物3の端面プレート部31、ナット35及びボルト18のうち上側のボルト18aと重なって配置され、ナット35及び上側のボルト18aの露出が抑制されている。
【0034】
正面視で、面材17の下端部17aは、構造ピン55及びボルト18のうち下側のボルト18bとは重なっていない。スラブSの上面Suと木質壁1の面材17の下面17dとの間の距離L2は、例えば約55mm程度である。
【0035】
このように構成された接合構造100Aでは、木質壁1の下部に設けられた第1接合金物3と下梁2Bに設けられた第2接合金物4とが、ピン接合部5でピン接合されている。これによって、木質壁1と下梁2Bとがピン接合されている。木質壁1の幅方向の端部をピン接合することで、引張接合部として機能させる。木質壁1の幅方向の中央を、ボルト18で剛接合することで、せん断接合部として機能させる。よって、せん断変形時に引張応力が作用する木質壁1の幅方向の端部で、付加曲げによる割裂破壊を抑制して高耐力化することができる。
【0036】
また、木質壁1の面材17の下面17dは、芯材16の下面16dよりも下方に位置している。正面視で、面材17の下端部17aは、第1接合金物3の端面プレート部31、ナット35及び上側のボルト18aと重なって配置されている。よって、第1接合金物3の端面プレート部31、ナット35及び上側のボルト18aの露出が抑制され、外観を向上させることができる。
【0037】
(変形例2)
次に、変形例2について、主に図4を用いて説明する。
図4は、本発明の一実施形態の変形例2に係る木質壁と躯体との接合構造とスラブとの納まりを示し、(a)側面図であり、(b)正面図である。
図4に示すように、本変形例に係る接合構造100Bでは、木質壁1の面材17の下面17dは、芯材16の下面16dよりも下方に位置していて、スラブSの上面Suに当接している。
【0038】
図4(b)に示すように、正面視で、面材17の下端部17aには、下側のボルト18bに対応する位置に貫通孔17bが形成されている。貫通孔17bの径は、ボルト18bの径よりもわずかに大きい。
【0039】
このように構成された接合構造100Aでは、木質壁1の下部に設けられた第1接合金物3と下梁2Bに設けられた第2接合金物4とが、ピン接合部5でピン接合されている。これによって、木質壁1と下梁2Bとがピン接合されている。木質壁1の幅方向の端部をピン接合することで、引張接合部として機能させる。木質壁1の幅方向の中央を、ボルト18で剛接合することで、せん断接合部として機能させる。よって、せん断変形時に引張応力が作用する木質壁1の幅方向の端部で、付加曲げによる割裂破壊を抑制して高耐力化することができる。
【0040】
また、正面視で、面材17の下端部17aには、下側のボルト18bに対応する位置に貫通孔17bが形成されている。よって、貫通孔17bからボルト18bの締結作業をすることができ、作業性が良い。
【0041】
また、面材17の下面17dは、下梁2B上に設置されたスラブSの上面Suに当接している。よって、第1接合金物3、第2接合金物4及びピン接合部5の露出が抑制され、外観を向上させることができる。
【0042】
なお、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0043】
例えば、上記に示す実施形態では、木質壁1が接合構造100で接合される躯体として、下梁2Bを例に挙げて説明しているが、これに限られない。躯体は、別の形態の躯体や鉄筋コンクリート造であってもよい。
【0044】
上記に示す実施形態では、第1接合金物3と第2接合金物4とは、スプライスプレート51を介して構造ピン55でピン接合されているが、これに限られない。第1接合金物3と第2接合金物4とを直接構造ピン55でピン接合する構成であってもよい。
【0045】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施形態に係る接合構造100は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「15.陸の豊かさを守ろう」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0046】
1 木質壁
2B 下梁(躯体)
3 第1接合金物(第1接合部)
4 第2接合金物(第2接合部)
5 ピン接合部
16 芯材
17 面材
100,100A,100B 接合構造(木質壁と躯体との接合構造)
S スラブ
Su 上面
図1
図2
図3
図4