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特開2024-67693複数ワークの位置決め装置、バイスの口金及び位置決め治具
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  • 特開-複数ワークの位置決め装置、バイスの口金及び位置決め治具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067693
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】複数ワークの位置決め装置、バイスの口金及び位置決め治具
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20240510BHJP
   B25B 1/02 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B23Q3/06 304C
B25B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177957
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】393028117
【氏名又は名称】株式会社テック・ヤスダ
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】安田 嘉和
(72)【発明者】
【氏名】安田 嘉宣
【テーマコード(参考)】
3C016
3C020
【Fターム(参考)】
3C016CA08
3C016CB06
3C016CC01
3C016CE07
3C020AA04
(57)【要約】
【課題】長さの異なる複数種のワークや長手方向に並べて把持した短い複数のワークの加工基準面を揃えて把持できるようにする。
【解決手段】バイスのジョーに固定する口金は、矩形の板材の一方の長辺部にコ字溝を備える。位置決め治具は、バー材と、バー材に直交する同方向に伸びる2本の腕と、これらの腕に設けた貫通孔に軸支されたロック軸とを備え、ロック軸は口金に設けたコ字溝と係脱する係合部を備える。係合部は、ロック軸の回動ないし摺動によりバイス両端のジョーに固定した口金のコ字溝と係脱自在で、係合時にバー材の長手端をバー材に当接させてワークの長手方向の位置決めをする。好ましい係合部は楕円筒部である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台の長手方向の両端部に設けた固定ジョーと可動ジョーの間に当該基台の長手方向に固定される複数の中間固定口金及び中間可動口金を備え、バイス両端のジョーと中間口金の間及び隣接する中間口金相互の間にワークを把持するワーク固定装置で把持される複数ワークの位置決め装置であって、
反基台側である上辺にワーク把持面と直交する平行な両側面を有するコ字形の溝を備えた一対の口金と位置決め治具とを備え、
当該位置決め治具は、ワークを当接するバー材と、当該バー材に少なくとも一方を摺動自在にして当該バー材と直交する同方向に伸びる2本の腕と、
当該腕の先端部に設けた前記バー材及び腕に直交する貫通孔に回動ないし摺動自在に軸支されたロック軸とを備え、
当該ロック軸の一端に前記溝の両側面と係脱自在な係合部が形成されている、ワーク位置決め装置。
【請求項2】
前記係合部が、前記コ字溝の両側面間の寸法より僅かに大きな長径と僅かに小さな短径とを備えた楕円筒部である、請求項1記載のワーク位置決め装置。
【請求項3】
ワーク把持面となる表面とバイスのジョーに固定する背面とを備えた一対の矩形の板材からなり、当該一対の板材は、その一方の長辺にその上辺及びワーク把持面と直交する互いに平行な両側面を有するコ字溝を備えている、バイスの口金。
【請求項4】
バー材と、当該バー材に少なくとも一方を摺動自在にして当該バー材と直交する同方向に伸びる2本の腕と、
当該腕の先端部に設けた前記バー材及び腕に直交する貫通孔に回動自在かつその回動角を規定して軸支されたロック軸とを備え、
当該ロック軸が、前記腕を貫通する軸方向一側に僅かな寸法差の長径と短径とを備えた楕円筒部と、軸方向他側に設けた回動操作部とを備えている、
バイスに把持された複数ワークの位置決め治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械のテーブルなどに取り付けられた複数のワークの位置決め装置並びに当該装置で用いるバイスの口金及び位置決め治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタその他の工作機械で多数のワークを加工するときは、工作機械のテーブルに多数のワークを固定して同時に加工するのが効率的である。ワークは、テーブルに固定した複数のバイスの対向するジョーの間に1個又は複数個の中間口金を配置し、この中間口金とバイスのジョーの間及び中間口金相互の間に挿入して固定される。
【0003】
横型マシニングセンタにおいて、より多数のワークを同時加工するときは、テーブルに多角柱状のコラムを立設して、その各面にバイスを取り付ける。
【0004】
細長いワークを固定するときは、ワークの長手方向に複数台のバイスを並置し、ワークの長手方向の複数個所を固定する。長さが異なる複数種のワークを固定するときは、並置したバイスの間隔を変えてワークの長短に対応させている。
【0005】
本願出願人は、特許文献1において、工作機械のテーブルに多数のワークを固定する際に用いるバイスの対向するジョーの間に装着して複数のワークを把持するのに用いる各種構造の中間口金を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021‐146459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、長さの異なる複数種のワークの加工をするときには、ワークの長短に対応してテーブルないしコラムに並置したバイスの間隔を変えてワークの長短に対応している。しかし並置したバイスの間隔を変える作業には相当の時間を必要とするうえ、異なる長さのワークの数がそれぞれ異なるときは、数の少ないワークについての段取替えや夜間の自動連続運転ができないなどのため、加工コストが割高になる問題があった。
【0008】
また、長いワークを把持できるように並置した複数のバイスで長さの短いワークを長手方向に例えば3個並べて把持して加工することも考えられるが、その場合には、ワークの長手方向の加工基準面を一定にして把持する作業に多大な労力を要するという問題があった。
【0009】
この発明は、並置したバイスの間隔を変えないで長さの異なる複数種のワークを把持することができ、かつ短いワークを長手方向に並べて把持したときでもそれぞれについて加工基準面を揃えて把持することができるワーク位置決め装置及び当該装置に把持されるワークの長手方向の加工基準を設定する位置決め手段を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のワーク位置決め装置は、基台32の長手方向の両端部に設けた固定ジョー31aと可動ジョー31bの間に配置した複数の中間口金4、5を取り付けたバイス3の複数個を並置して、ジョー31(31a、31b)と中間可動口金5との間及び
複数個配置した中間口金4、5の間に多数のワークW(Wa、Wb)を把持するワーク固定装置で用いるワーク位置決め装置である。
【0011】
この発明のワーク位置決め装置は、バイスのジョー31に装着される口金1と、ワーク位置決め治具2とを備えている。
【0012】
この発明のワーク位置決め装置における口金1は、通常の口金と同様な矩形の板材からなり、その一方の長辺部にその長辺及びワーク把持面と直交する互いに平行な両側面14を有するコ字溝11を備えており、前記コ字溝11を設けた長辺を反基台32側にして各バイス3両端のジョー31に取り付けられる。
【0013】
この発明のワーク位置決め装置における位置決め治具2は、ワークWの加工基準端を当接させる好ましくは均一断面かつ剛性を備えたバー材21と、バー材21に少なくとも一方22bを摺動自在にしてバー材21と直交する同方向に伸びる2本の腕22(22a、22b)と、これらの腕22に設けたバー材21及び腕22に直交する貫通孔と、この貫通孔に回動ないし摺動自在に軸支されたロック軸25とを備えている。
【0014】
ロック軸25には、一端に口金1に設けたコ字溝11と係脱する係合部26が形成されている。すなわち、口金1のコ字溝11とロック軸25に設けた係合部26とは、ロック軸25の回動ないし摺動により係脱自在で、係合時に口金の長辺13方向のバー材21の位置を規定する位置決め対となっている。好ましい係合部は、コ字溝11の溝幅より僅かに大きな長径とコ字溝11に容易に挿入できる寸法の短径とを備えた楕円筒部である。
【発明の効果】
【0015】
この発明の位置決め装置を用いることにより、多数のワークを工作機械のワーク取付面に複数のバイスを介してマトリックス状に取り付けた多数のワークの加工基準端を簡単な作業で一括して位置決めすることができ、長さ(バイスの把持方向と直交する方向の長さ)が異なる複数種のワークもバイスの装着位置を変えることなく把持及び位置決めすることができる。
【0016】
すなわち、バイスに多数のワークを軽く把持した状態で、対向するバイスのジョー31に取り付けた口金1のコ字溝11に位置決め治具2の係合部26を差し込んで係合することにより、バー材21はバイス両端の口金1の間に固定される。この状態でワークをバー材21に当接させて固定することにより、各ワークは一端を位置決めされた状態でバイスに固定される。その後、係合部26の係合を解いてロック軸25をコ字溝から抜くことにより、位置決め治具2を取り外す。
【0017】
多数のワークをマトリックス状に固定したテーブルないしコラムを5面加工機にセットしてやれば、ワーク相互の間に間隙が存在しているので、ワークの前面ないし上面、バイスの把持方向の両側面面、口金が突出している部分の把持面の5面を加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】バイスのジョーに固定する口金の正面図
図2】位置決め治具の斜視図
図3】並置された4個のバイスで2種類の長さのワークを把持した状態を示す正面図
図4図3に示したバイスの側面図
図5】中間可動口金を備えた口金ユニットを示す斜視図
図6】コ字溝と楕円筒部の係脱状態を模式的に示す図
図7】コ字溝とロック軸の他の態様を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、この発明の1実施例を説明する。図1は、この発明のバイスの口金を示す正面図、図2は位置決め治具の斜視図である。口金1は、通常の口金と同形状の矩形の板材で、バイスのジョー31に取り付けたときにバイスの反基台側となる一方の長辺にコ字溝11が設けられている。
【0020】
コ字溝11は、口金1のワーク把持面12とコ字溝11を設ける長辺13に直交する互いに平行で平滑な両側面14を備えている。口金1は、通常の口金と同様に、取付孔15に挿通したボルトでバイスのジョー31(図4参照)に取り付けられる。
【0021】
位置決め治具2は、バー材21と、一方22aがバー材21に固定され他方22bがバー材21に沿って移動自在かつ固定ネジ23を回動することによってバー材21に固定される可動腕22bとを備えている。腕22(22a、22b)は、バー材21の長手直交方向に伸びており、その先端部にバー材21及び腕22と直交する貫通孔(図には表れてない)を備えている。
【0022】
この貫通孔には、係合部26となる一側を楕円筒に加工し、他側に操作部27を取り付けたロック軸25が回動角を略90度に規制して貫通している。楕円筒部26の断面は、長径と短径との寸法差が僅かな楕円断面であり、長径は口金のコ字溝11の幅(両側面間の寸法)より僅かに大きく、短径はコ字溝11に円滑に挿入できる寸法としてある。
【0023】
図6(a)に示すように、ロック軸25を一方の回動端に回して楕円筒の長軸dをコ字溝11と平行にして楕円筒部26をコ字溝11に挿入し、ロック軸25を回動させることにより図6(b)で示す状態となってロック軸25の軸心、従って腕22に設けた貫通孔の軸心がコ字溝11の幅中心に位置決めされてコ字溝の側壁との摩擦力により腕22が口金1に固定される。
【0024】
図3は、横型マシニングセンタの回転テーブルに固定したコラム6の垂直なワーク取付面に細長い4個のバイス3(3a-3d)を装着して複数のワークWを把持している状態を示した正面図であり、図4は、図3のバイス3の側面図である。
【0025】
図において、6は下面を図示しない横型マシニングセンタのテーブルに固定されたコラムで、コラム6のワーク取付面に4個の細長いバイス3がそれらの固定ジョー31aを下方にして互いに平行に取り付けられている。各バイス3のジョー31には、この発明の口金1が装着されている。
【0026】
コラムに取り付けた複数のバイス3は、全て同一構造のもので、側面にガイド溝33を設けた基台32の一端に固定ジョー31aが固定され、他端にガイド溝33に案内されて進退する可動ジョー31bが装着されている。バイスの両端のジョー31aと31bの間には、スペーサ34を挟んで口金ブロック41がガイド溝33に沿って移動自在に設けられ、バイスのジョー31a、31bに把持されて固定されている。スペーサ34の上面中央には、それぞれ2個の口金ユニット51が並置されて固定されている。口金ブロック41の両側面は中間固定口金4となり、口金ユニット51の進退する両側の部材が中間可動口金5となっている。
【0027】
口金ユニット51は、例えば特許文献1に記載された図5に示す構造の両側に中間可動口金5を備えた部品である。図の口金ユニット51は、正面中央の操作ボルト52と、駆動楔55と、その両側の中間可動口金5と復帰バネ56とを備えた構造で、操作ボルト52の回動により駆動楔55を進退させることにより、駆動楔55の両側に配置した中間可動口金5が、背面の階段状楔面と駆動楔55の楔面との楔作用と両中間可動口金5に掛止した復帰バネ56のバネ力とにより、ワーク把持方向に進退する構造である。
【0028】
図3には、上記の構造のバイスの4個3a~3dを等間隔に並置してコラム6のワーク取付面に取付け、長さの異なるワークWaとWbをそれぞれ4個ずつ把持した状態が示されている。
【0029】
このようにして、長さの異なるワークWa、Wbの複数個を固定したとき、一方のワークWaについては、取付け治具2のバー材21をバイス3aを図3の左側の位置にしてロックピンの楕円筒部26をバイス3aの口金1のコ字溝11に挿入して操作部27を回動してロックし、ワークWaをバー材21に当接させることにより、複数のワークWaの図の左端が位置決めされるから、その状態で口金ユニット51の操作ボルト52を締めてワークWaを固定する。
【0030】
次に、位置決め治具のバー材21をバイス3bと3cの間の間隙に位置させてロックピンの楕円筒部26をバイス3cの口金1のコ字溝11に挿入して操作部27を回動してロックし、ワークWbをバー材21に当接させることにより、複数のワークWbの図の左端が位置決めされるから、その状態で口金ユニット51の操作ボルト52を締めてワークWbを固定する。
【0031】
上記の手順により、長さの異なるワークWa、Wbの複数個が固定されるから、それらのワークWa、Wbの図の左端を加工基準にした加工を連続して行うことができる。なお、位置決め治具2を上下逆にして同様な方法でワークの右端を位置決めすることもできる。
【0032】
口金1に設けるコ字溝11の位置は、一般的には長辺の中心であるが、口金自体はワークの形状や寸法に応じて製作されることが多い部材であるので、ワークの寸法差の種類に応じて中心からずらして設けることも容易に可能であり、加工しようとするワークの形状や長さの種類に応じて最も適当と考えられる位置に設けてやれば良い。
【0033】
また、ロック軸25に設ける係合部は、実施例で示した楕円筒形状が最も適当と考えられるが、図7に示すように、軸方向移動によりコ字溝11に係脱する緩い角度の円錐形状など、他の形状とすることも可能で、要は、ロック軸25の回動ないし軸方向移動により、口金1の長辺方向の位置をコ字溝11で位置決めされる形状であれば良い。
【符号の説明】
【0034】
1 口金
2 ワーク位置決め治具
3 バイス
4 中間口金
5 中間可動口金
11 コ字溝
13 長辺
14 両側面
21 バー材
22a、22b 腕
25 ロック軸
26 係合部
31a 固定ジョー
31b 可動ジョー
32 基台
W(Wa、Wb) ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7